特許第6263085号(P6263085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6263085-リン含有重合体 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263085
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】リン含有重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20180104BHJP
   C08G 75/02 20160101ALI20180104BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 79/06 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08G65/40
   C08G75/02
   C08G73/06
   C08L71/10
   C08L81/02
   C08L79/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-112496(P2014-112496)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227392(P2015-227392A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591028577
【氏名又は名称】純正化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】大石 好行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 操
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−504693(JP,A)
【文献】 米国特許第05534573(US,A)
【文献】 特開平07−224162(JP,A)
【文献】 米国特許第05652327(US,A)
【文献】 特開2009−001658(JP,A)
【文献】 特開昭63−273644(JP,A)
【文献】 特開平06−136182(JP,A)
【文献】 米国特許第05314937(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08G 65/40
C08G 73/06
C08G 75/02
C08L 71/10
C08L 79/06
C08L 81/02
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するリン含有重合体。
【化1】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、Xは、O、またはSを示し、Arは、2価の芳香族基を示す。)
【請求項2】
Xが、Oである請求項1記載のリン含有重合体。
【請求項3】
1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基である請求項1又は2記載のリン含有重合体。
【請求項4】
Arが、炭素数6〜30の2価の芳香族基である請求項1〜3のいずれかに記載のリン含有重合体。
【請求項5】
GPC-LALLSによる数平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項1〜4のいずれかに記載のリン含有重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のリン含有重合体を含有する透明な耐熱性材料又は難燃性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性材料又は難燃性材料として有用なリン含有重合体に関するものであり、透明性を有する新規なプラスチック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラという)、特に、ポリカーボネートは、耐衝撃性などの機械的特性、耐熱性、透明性などに優れているため、自動車分野、電機・電子分野、オプティカル分野、精密機械分野、保安・医療分野、シート分野などの広範な分野で用いられている。一方、近年は電気火災などの火災防止のため、プラスチック材料
の難燃性が要求されており、ポリカーボネートにおいても難燃剤を配合した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物など様々な難燃性エンプラが開発されている。しかしながら、難燃性発現の基本コンセプトがハロゲン系難燃剤を用いずに、リン系の様々な低分子難燃剤を用いた事例がほとんどである(特許文献1〜3)。このリン系低分子難燃剤の多くは常温で粘稠性液体や固体であっても融点が150℃以下の化合物が多く、難燃性の発現のために樹脂に添加して成形した場合、難燃性樹脂組成物の流動性が極端に高くなりすぎて成形不能になるケースが多い。難燃剤の分解成分による着色、成形物の外観の悪さ、成形物の物理的・機械的物性の極端な低下、耐候性や耐水性の低下など成形製品に問題点が多く見られる。また、融点が150℃以上の固体や融点を持たない固体の場合、成形性の悪さはもとより、樹脂との相溶性の悪さなどからブルーミングが生じる問題もある。また、エンプラ用の難燃剤は樹脂の混錬温度が250℃以上のケースが多く揮発によるヒュームの発生が見られるなどの問題もある。更に、製品廃棄時には練り込まれたリン系低分子難燃剤が土壌に徐々に放出されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−175985公報
【特許文献2】特開2003−201384公報
【特許文献3】特開2013−028731公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、合成樹脂自体の性質を低下させることなく成形加工が可能な透明で耐熱性又は難燃性を有する新規な合成樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
新たな難燃性発現の基本コンセプトは、リン系低分子難燃剤を用いずに高分子材料自体がエンプラ例えばポリカーボネートと同等な耐熱性と機械的特性を有していて、且つ優れた難燃性を保持する新規なエンプラを創出するという理想的な新規エンプラの開発である。また、機械的特性がやや不十分な場合は、エンプラとの相溶性と成形性が優れて耐熱性と難燃性が高ければ、リン系低分子難燃剤の欠点を解決する新規リン系高分子難燃剤としてポリマーブレンドでの利用が可能となる。更に、構造材料としての機械的特性が不要の場合、線状高分子である必要はなく、エンプラとの相溶性が優れる耐熱性と難燃性を保有する分岐高分子やハイパーブランチポリマーなどの機能性添加物として用いられる。以上のすべてを可能にする繰り返し単位構造の設計が重要である。
【0006】
そこで本発明者は、耐熱性が高く難燃性を保持する新たなプラスチック材料を得るべく種々検討した結果、主鎖にトリアジン骨格と芳香族基とを有し、かつホスホン酸基を有する繰り返し単位構造からなるリン含有重合体が、優れた耐熱性と難燃性を有し、かつ透明性も高いことから、光学系を含む種々の分野における耐熱性又は難燃性材料として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するリン含有重合体。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、Xは、O、またはSを示し、Arは、2価の芳香族基を示す。)
〔2〕Xが、Oである〔1〕記載のリン含有重合体。
〔3〕R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基である〔1〕又は〔2〕記載のリン含有重合体。
〔4〕Arが、炭素数6〜30の2価の芳香族基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のリン含有重合体。
〔5〕GPC-LALLSによる数平均分子量が1,000〜1,000,000である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のリン含有重合体。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のリン含有重合体を含有する透明な耐熱性材料又は難燃性材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリン含有重合体は、優れた耐熱性及び難燃性を有し、かつ透明性も良好であることから、単独で難燃性又は耐熱性材料として使用できるだけでなく、他の合成樹脂と混合して難燃性又は耐熱性材料とすることもできる。
用途分野としては、電気・電子・OA機器として、例えば、電気製品・パソコン類のハウジング関連向けやLED照明関連向けの材料、シート・フィルム用途として、例えば、アーケードドーム、窓ガラス代替、遮音壁などの厚物シートや自動車計器盤など一般産業資材向けの薄物シート関連向け材料、光学メディア用途関連材料、自動車・車両用途として、ヘッドランプレンズ、メーター板、ドアハンドル、軽量化用途など向け材料など様々な分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】Poly(DEPDT−BisA)の空気中又は窒素中におけるTG曲線を示す(昇温速度10℃/min)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のリン含有重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、Xは、O、またはSを示し、Arは、2価の芳香族基を示す。)
【0015】
式(1)中、R1及びR2で示されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。
【0016】
1及びR2で示されるアリール基としては、炭素数6〜14のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、インデニル基等が挙げられる。このうち、炭素数6〜12のアリール基がより好ましい。
【0017】
1及びR2で示されるアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、C6-14アリール−C1-6アルキル基がより好ましく、C6-12アリール−C1-6アルキル基がさらに好ましい。C6-14アリール基としては、前記のアリール基が例示できる。C6-14アリール−C1-6アルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0018】
Xは、O、またはSを示すが、Oがより好ましい。
【0019】
Arで示される2価の芳香族基としては、炭素数6〜30の2価の芳香族基が好ましく、特に炭素数7〜30のビスフェノール類由来の2価の芳香族基が好ましい。例えば、次の式(2)〜(4)で表されるビスフェノール類由来の基が好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基又はフェニル基を示すか、R3とR4が一緒になってジクロロメチリデン基又はシクロヘキシル基を示し;R5とR6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す)
【0022】
より具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH及びビスフェノールZから選ばれるビスフェノール類由来の2価の基が挙げられる。
【0023】
式(1)で表される繰り返し単位としては、Xが、O又はSであり;R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり;Arが、炭素数6〜30の2価の芳香族基であるものが好ましい。
【0024】
また、XがOであり;R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり;Arが炭素数7〜30のビスフェノール類由来の2価の芳香族基であるものがより好ましい。
【0025】
本発明のリン含有重合体の末端基は、水素原子又はハロゲン原子であるのが好ましい。また、本発明のリン含有重合体の分子量は、GPC−LALLSによる数平均分子量が1,000〜1,000,000であるのが好ましい。
【0026】
本発明のリン含有重合体は、例えば、次の反応式に従って製造することができる。
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、Halはハロゲン原子を示し、R1、R2、X及びArは前記と同じ)
【0029】
すなわち、式(5)で表されるトリアジンホスホン酸エステルと式(6)で表されるビスフェノールまたは芳香族ジチオールとを、相間移動触媒の存在下に反応させれば、リン含有重合体(1)が得られる。
【0030】
原料である式(5)で表されるトリアジンホスホン酸エステルは、例えばシアヌル酸クロリド等のシアヌル酸ハライドと亜リン酸トリエステルを反応させることにより得ることができる。この反応は、例えばジクロロメタン等の不活性溶媒中、−10〜室温で10分〜10時間行えばよい。
【0031】
一方、式(6)で表される化合物は、公知のビスフェノール類および芳香族ジチオール類を使用できる。

【0032】
式(5)のトリアジンホスホン酸ジエステルと式(6)で表される化合物の反応に用いる相間移動触媒としては、界面重縮合に用いることができる長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、クラウンエーテルが好ましく、例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(セチルトリメチルアンモニウムブロミド:CTMAB)等をより好ましく用いることができる。
反応系は、水と有機溶媒の二相系であり、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン等の有機溶媒と水との二相系とするのが好ましい。反応に際しては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を添加して、−10℃〜100℃で20〜120時間行うのが好ましい。
【0033】
上記の如くして得られるリン含有重合体(1)は、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム等の極性溶媒に対する溶解性が高く、容易にフィルム等を作製することができる。また、極性溶媒に溶解する各種ポリマーとの混合が可能である。
また、リン含有重合体(1)は、熱分解温度が250℃程度であるが、これは早い段階で炭化形成が促進するようリン酸エステルが脱離することに起因すると考えられる。空気中での700℃における炭化収率は、リンをまったく含まないポリシアヌレートが0%であるのに対し、22%と高い値を示し、耐熱性が優れている。また、本発明のリン含有重合体は、透明であり、透明性が必要な光学材料へも応用可能である。
従って、本発明のリン含有重合体(1)は、優れた耐熱性、難燃性を有し、かつ透明であるから、種々の耐熱性、難燃性を必要とする合成樹脂として有用である。さらに、他の合成樹脂と均一に混合することが可能であり、本発明のリン含有重合体(1)と他の合成樹脂との混合物もまた透明で耐熱性又は難燃性の材料として有用である。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
合成例1
2−ジエトキシホスフィニル−4,6−ジクロロ−s−トリアジン(DEPDT)の合成
攪拌子、温度計、側管付き滴下ロートを備えた三口フラスコ(500mL)にシアヌル酸クロリド(18.44g、0.10mol)およびジクロロメタン(140mL)を入れ、窒素雰囲気下で完全に溶解させた。ジクロロメタン(40mL)に溶解させた亜リン酸トリエチル(16.62g、0.10mol)を側管付き滴下ロート(200mL)に入れ、上記の三口フラスコへ反応温度−5〜0℃を保ちながら30分かけゆっくり滴下した。滴下終了後、その温度を保ちながら3時間攪拌しながら反応させた。
反応終了後、反応溶液を蒸留水で分液し、有機層をナスフラスコ(300mL)へ移した後、エバポレータで濃縮した。
濃縮した反応溶液をろ過し、ナスフラスコ(100mL)へ移し、減圧蒸留器具により、65℃/0.15Torrで、未反応のシアヌル酸クロリドを昇華させて取り除いた。
その後、新たな減圧蒸留器具を用いて、98℃/0.15Torrで減圧蒸留した。無色透明の液体として、DEPDT(10.01g、収率35.0%)を得た。
【0036】
1H-NMR [400 MHz, CDCl3-d1, TMS, ppm] :
δ=1.44 (t, 6H, CH3), 4.40 (q, 4H, CH2).
13C-NMR [101 MHz, CDCl3-d1, TMS, ppm] :
δ=16.4, 65.4, 172.4, 172.6, 174.0, 176.7.
FT-IR [KBr (cm-1)] :
2980 (C-H), 1500 (C=N), 1250 (P=O), 1000 (O-CH2), 840 (P-O).
元素分析
Calcd. for C7H10Cl2N3O3P
Calcd. C:29.39, H:3.52, N:14.69(%)
Found. C:28.90, H:3.54, N:14.43(%)
【0037】
実施例1
リン含有重合体Poly(DEPDT−BisA)の合成
ナス型フラスコ(100mL)にビスフェノールA(0.285g、1.25mmol)およびNaOH溶液(1M、2.5mL)を順に加えて攪拌し、完全に溶解させた。次に、相間移動触媒として、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMAB)(0.139g、0.38mmol、30mol%)を加えた。
スクリュー栓付きサンプル瓶に、合成例1で得た2−ジエトキシホスフィニル−4,6−ジクロロ−s−トリアジン(DEPDT)(0.358g、1.25mmol)を入れ、有機溶媒(2.0mL)を加えて溶解させた。この溶液を上記のナス形フラスコに素早く加え、そのサンプル瓶をさらに有機溶媒(0.5mL)で洗浄し、ナス形フラスコに加えた。ナス形フラスコに平栓をして、所定の温度で24時間激しく攪拌した。
ビーカー(500mL)に蒸留水(400mL)と酢酸(100mL)を入れ、重合溶液を投入してポリマーを析出させた。30分間攪拌した後、吸引濾過をし、シャーレに移して80℃で12時間減圧乾燥し、白色ポリマーを得た。
乾燥させたポリマーを少量のアセトンに溶解させ、この溶液をひだ折濾紙を通して、攪拌させながら蒸留水(400mL)中に滴下することにより再沈殿させた。得られたポリマーを吸引濾過してシャーレに移し80℃で12時間減圧乾燥し、Poly(DEPDT−BisA)〔R1=R2=Et、X=O〕を得た。
【0038】
1H-NMR [400 MHz, DMSO-d6, ppm] :
δ=1.19 (t, 6H, CH3), 1.63 (s, 6H, CH3), 4.21 (m, 4H, CH2), 7.10 (d, 4H, 芳香環), 7.28 (d, 4H, 芳香環).
13C-NMR [101 MHz, DMSO-d6, ppm] :
δ=16.0, 30.5, 42.1, 64.1, 121.0, 127.7, 147.9, 149.2, 171.6, 171.8, 173.9, 176.5.
FT-IR [KBr (cm-1)]:
3020 (芳香環C-H), 2980 (CH2, CH3), 1600 (C=C), 1500 (C=N), 1350 (C-O), 1250 (P=O), 1200 (O-C), 1000 (O-CH2), 840 (P-O).
【0039】
表1に、有機溶媒を変化させた場合の結果を示す。また、表2に有機溶媒をクロロホルムに固定し、反応温度を変化させた場合の結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
試験例1
(1)リン含有重合体の溶解性
ポリマーの溶解性試験の結果を表3示した。得られたポリマーはDMAcやTHF、クロロホルムなど極性溶媒へ溶解したことから、高い溶解性を有していることがわかった。このリン含有ポリマーはTHFに溶解させ、キャスト法により容易にフィルムを作成することができた。
【0043】
【表3】
【0044】
(2)リン含有重合体の熱特性
高分子の熱特性は物理的耐熱性と化学的耐熱性に起因している。物理的耐熱性を示すガラス転移温度は、分子屈曲性や対称性が関係している。一方、化学的耐熱性を示す熱分解温度は骨格構造の結合解離エネルギーに関係している。そこで、ポリマーの熱的性質としてガラス転移温度および熱分解温度について評価した。
表4には、得られたリン含有重合体の熱特性を示した。ガラス転移温度は125℃、空気中での5%重量減少温度は261℃であった。これは、早い段階で、炭化形成が促進するようホスホン酸エステル基が脱離したことに起因すると考えられる。また、図1には、TG曲線を示した。空気中での700℃における炭化収率はリンを全く含まないポリシアヌレートであるPoly(AnTD−BisA)では0%であるのに対し、Poly(DEPDT−BisA)は22%と高い値を示した。これは、リンがトリアジン骨格とビスフェノールAの炭化皮膜の形成を促進させたためであると考えられる。
【0045】
【表4】
【0046】
(3)リン含有重合体の光学特性
リン含有ポリマーの透明性評価は、紫外−可視領域(200〜800nm)におけるUV−Vis測定によって行った。真に実用を考えた場合、光学材料にとって、透明性は特に重要なものとなってくる。
表5に、リン含有重合体をTHFに溶解させてキャストし、作成したフィルムのUV−Visスペクトルの測定結果を示した。カットオフ波長は308nm、80%の時点で348nmとなることから、リン含有ポリマーはポリマーとしての透明性が十分であることが示された。
【0047】
【表5】
【0048】
実施例2
(1)ポリカーボネート/リン含有重合体ブレンドフィルムの作製
ポリカーボネート(PC)と本発明のリン含有重合体Poly(DEPDT−BisA)10wt%を塩化メチレンに溶解させ、キャストしフィルムを作成した。この時の膜厚は33μmとなった。
【0049】
【化5】
【0050】
(2)ポリカーボネート/リン含有重合体ブレンドフィルムの性質
(a)フィルムの熱特性
表6に、単体のPoly(DEPDT−BisA)と単体のPC、そしてPoly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムの熱特性について示した。PC単体では、600℃ですでに炭化収率が0%に達しているが、Poly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムにおいては、700℃において10%もの炭化収率の向上が見られた。これは、Poly(DEPDT−BisA)のホスホン酸エステル基が早い段階で炭化することで、BisAだけでなく、PCの炭化をも促進させたために、大幅な炭化収率が見られたと考えられる。また、Poly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムのガラス転移温度が137℃の一点のみしか現れなかったことから、Poly(DEPDT−BisA)とPCの良好な相溶性が確認できた。
【0051】
【表6】
【0052】
(b)フィルムの光学特性
表7に、単体のPoly(DEPDT−BisA)と単体のPC、そしてPoly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムのUV−Visスペクトルの測定結果を示した。単体PCと比べ、Poly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムのカットオフ波長、80%透過率がほぼ変わらない値となり、Poly(DEPDT−BisA)/PCのブレンドフィルムは高い透明性を有していた。
【0053】
【表7】
図1