特許第6263384号(P6263384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田通商株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ 近江鉱業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000008
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000009
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000010
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000011
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000012
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000013
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000014
  • 特許6263384-蓄熱管理システム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263384
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】蓄熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   F28D20/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-269137(P2013-269137)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124931(P2015-124931A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591117516
【氏名又は名称】近江鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇志
(72)【発明者】
【氏名】山下 真彦
(72)【発明者】
【氏名】志満津 孝
(72)【発明者】
【氏名】板原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂弘
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−004794(JP,A)
【文献】 特開2009−041895(JP,A)
【文献】 特開平07−083590(JP,A)
【文献】 特開平07−113592(JP,A)
【文献】 特開平02−259392(JP,A)
【文献】 特開2008−157578(JP,A)
【文献】 特開2007−064614(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0277747(US,A1)
【文献】 特開2015−124946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱供給部或いは熱需要部と熱交換するための熱媒体を循環する第1熱媒流路を備えた第1熱交換器を具備する1又は2以上の蓄放熱設備と、
脱水反応により蓄熱し水和反応により放熱する化学蓄熱材を内封し、当該化学蓄熱材と熱交換するための熱媒体を循環する第2熱媒流路を備えた第2熱交換器を具備する着脱式蓄熱容器とを有し、
前記蓄放熱設備から前記着脱式蓄熱容器を離脱して保管又は移送し、当該着脱式蓄熱容器を同一又は異なる蓄放熱設備に装着して蓄熱した熱量を利用するにあたり、
前記着脱式蓄熱容器への蓄熱段階において、前記第1熱媒流路と前記第2熱媒流路とを流路接続部において連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させることにより前記蓄放熱設備で発生した熱量を前記化学蓄熱材に供給して脱水反応を生じさせて当該着脱式蓄熱容器に蓄熱し、
前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送する管理段階において、前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から前記流路接続部において連通解除した状態で当該着脱式蓄熱容器を保管又は移送し、
前記着脱式蓄熱容器からの放熱段階において、前記第2熱媒流路と前記第1熱媒流路とを前記流路接続部において連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させることにより前記化学蓄熱材に蓄熱した熱量を前記化学蓄熱材の水和反応で放熱して前記蓄放熱設備で利用するようにした蓄熱管理システムであって、
前記流路接続部は、前記第1熱媒流路と前記第2熱媒流路とを互いに接続・接続解除する管継手を有し、前記第1熱媒流路及び前記第2熱媒流路には、それぞれ、前記管継手を介した両側に各流路を連通・連通解除する各バルブを備え、
前記管継手を介した前記各バルブの間の熱媒流路を配管接続部として、
前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路と連通する際に、これらの熱媒流路間を前記管継手によって配管接続する接続操作を行い、この接続操作の後に前記配管接続部に残留する残留ガスを排除する排気操作を行い、この排気操作の後に当該第2熱媒流路を前記第1熱媒流路と連通して前記配管接続部に熱媒体を充填する連通操作を行う一方、
前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から連通解除する際に、当該第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から連通解除する連通解除操作を行い、この連通解除操作を行った後に前記配管接続部に残留する熱媒体を排除する排液操作を行い、この排液操作を行った後にこれらの熱媒流路間を前記管継手によって接続解除する接続解除操作を行うことを特徴とする蓄熱管理システム。
【請求項2】
前記蓄放熱設備は、熱供給を行う第1蓄放熱設備と、熱需要を行う第2蓄放熱設備とからなり、
前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送することにより前記第1蓄放熱設備で発生する熱量を前記第2蓄放熱設備で利用するにあたり、
前記管理段階において、前記第2熱媒流路を前記第1蓄放熱設備の第1熱媒流路及び前記第2蓄放熱設備の第1熱媒流路から連通解除した状態で当該着脱式蓄熱容器を保管又は移送することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱管理システム。
【請求項3】
前記管理段階において前記第2熱媒流路内に熱媒体を充填した状態で前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱管理システム。
【請求項4】
前記管理段階において前記第2熱媒流路内の熱媒体を排除した状態で前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送するために、
前記排液操作において前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記配管接続部及び前記第2熱媒流路内に残留する残留ガスを排除した後に、前記連通操作において前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に熱媒体を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱管理システム。
【請求項5】
前記排液操作において前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方を減圧することにより熱媒体の一部が気化し液体の熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記化学蓄熱材から前記第2熱交換器を介して供給される熱量により前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を気化することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する前記残留ガスを排除することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システム。
【請求項6】
前記化学蓄熱材から前記第2熱交換器を介して供給される熱量は、当該化学蓄熱材の脱水反応における顕熱、又は、当該化学蓄熱材の水和反応における反応熱を利用することを特徴とする請求項5に記載の蓄熱管理システム。
【請求項7】
前記排液操作において熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する前記残留ガスを排除することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システム。
【請求項8】
前記排液操作において不活性ガスを供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方を減圧することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する不活性ガス及び前記残留ガスを排除することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に放出される排熱などの熱エネルギーを着脱式蓄熱容器に蓄熱し、この着脱式蓄熱容器を保管又は熱エネルギーが必要な場所に移送して利用する蓄熱管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇、原子力依存からの脱却、或いは、自然環境の破壊と地球温暖化などの問題が取り上げられ、環境に放出されている熱エネルギーを有効に利用する技術への関心が高まっている。特に、ゴミ焼却施設、発電所、製鉄所、各種工場等から放出される高温の熱エネルギーが利用されないまま多量の廃熱として環境に放出されているのが現状である。これらの環境に放出されている熱エネルギーを回収し、有効に利用することを目的として種々の蓄熱技術が検討されている。
【0003】
一般に蓄熱技術は、物質の顕熱や潜熱といった熱エネルギーを利用する直接蓄熱と、化学エネルギーを利用する間接蓄熱の2種類に分類される。直接蓄熱における顕熱蓄熱は、物質の温度上昇の形で熱エネルギーを蓄熱する方法であり、蓄熱材の取扱い容易性、装置の簡易性など経済性の点で好ましい方法である。しかし、物質の蓄熱密度が小さく、長距離の移送や長期間の蓄熱では熱損失が大きいという問題がある。また、直接蓄熱における潜熱蓄熱は、物質の溶解、凝固、蒸発、凝縮、昇華などの相変化の形で熱エネルギーを蓄熱する方法であり、顕熱蓄熱に比べれば蓄熱密度が大きく、蓄熱・放熱の温度が一定である。しかし、潜熱蓄熱においても長距離の移送や長期間の蓄熱では熱損失が大きいという問題がある。
【0004】
一方、間接蓄熱における化学蓄熱は、物質の吸脱着熱、融解熱、希釈熱などの化学反応の形で熱エネルギーを蓄熱する方法であり、顕熱蓄熱や潜熱蓄熱に比べ蓄熱密度が非常に大きくなる。また、化学反応前後の物質が安定であれば、放熱ロスが殆どなく長距離の移送や長期間の蓄熱においても熱損失が生じない。更に、化学蓄熱においては、蓄熱温度と異なる温度、場合によっては蓄熱温度よりも高温で熱エネルギーを放出することのできるケミカルヒートポンプ機能も有している。そこで、化学蓄熱は、熱エネルギーを化学物質に変換して長期間保管し或いは遠隔地に安定して移送することができるので、蓄熱管理システムとして好適である。
【0005】
ところが、蓄熱管理システムの開発や実用化においては、その多くの事例が潜熱蓄熱によるものである。例えば、下記特許文献1に係る熱エネルギー供給方法においては、蓄熱材を収容する主蓄熱ユニットに熱エネルギーを蓄熱した状態で搬送するというものであるが、これに使用する蓄熱材は潜熱蓄熱材を充填した蓄熱カプセルを利用するものである。また、下記特許文献2に係る熱貯蔵ユニットにおいては、蓄熱材とこの蓄熱材と直接接触することにより熱交換する熱交換媒体とが収容された蓄熱容器を蓄熱した状態でトラックなどの移送手段で移送するというものであるが、この蓄熱材も潜熱蓄熱材が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−316958号公報
【特許文献2】特開2005−188916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの潜熱蓄熱材を利用した蓄熱管理システムは、100℃前後或いはそれ以下の比較的低温の熱エネルギーを簡単な設備で近距離の移送をするものである。しかし、潜熱蓄熱材の利用は、上述のように、長距離の移送や長期間の蓄熱では熱損失が大きいという問題があり、ゴミ焼却施設、発電所、製鉄所、各種工場等から放出され利用されないまま環境に放出されている多量の廃熱を有効に利用するには限界がある。また、従来利用が難しかった数百度の高温の廃熱を効率よく利用する上でも化学蓄熱による蓄熱管理システムの開発が望まれている。
【0008】
そこで、化学蓄熱による蓄熱管理システムを効率よく稼働させるには、蓄熱容器に化学蓄熱材と熱交換器を収容し、この熱交換器の熱媒体が蓄熱容器と熱供給設備(熱源部)或いは熱需要設備(熱利用部)との間を循環することで、化学蓄熱材と外部環境との間で熱エネルギーを移動させる方法が望ましいとされている。
【0009】
特に、高温で排出されるゴミ焼却施設、発電所、製鉄所などの廃熱との間で熱交換する熱媒体や、蓄熱温度と放熱温度を変化させたヒートポンプとして使用する際の熱媒体には、高温域を含む広範囲の温度域で液体状態を維持し、且つ、効率的な熱媒機能を発揮することのできる熱媒体を採用しなければならない。このような熱媒体として、例えば、シリコーンオイル系の熱媒体が使用されるが、これらの熱媒体を高温で使用する際に空気中の酸素や水分が混入すると熱媒体が劣化して熱媒機能が低下するという問題があった。
【0010】
特に、蓄熱管理システムにおいて、蓄熱或いは放熱する際には、蓄熱容器の熱媒流路を熱供給設備或いは熱需要設備の熱媒流路と接続して熱媒体を循環する。一方、蓄熱容器を保管又は移送する際には、熱媒体の循環を停止して蓄熱容器の熱媒流路を熱供給設備或いは熱需要設備の熱媒流路から切り離さなければならない。すなわち、熱媒流路の切り離しの際に熱媒体の劣化要因(空気或いは水分)が熱媒流路に侵入し、或いは、熱媒流路の接続の際に熱媒流路に侵入したこれらの劣化要因が熱媒体に混入するということが生じる。このようにして熱媒流路に熱媒体の劣化要因が浸入し熱媒体に混入すると、化学蓄熱材の蓄熱段階或いは放熱段階において熱媒体が劣化して熱媒機能が低下するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、蓄熱容器への蓄熱、蓄熱容器の保管や移送及び蓄熱容器からの放熱の各段階において、熱媒流路内に熱媒体の劣化要因となる空気或いは水分などが混入することがなく、蓄熱温度及び放熱温度の温度域を広く確保すると共に効率的な熱保管や熱移送を実現できる蓄熱管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、蓄熱容器と熱供給設備或いは熱需要設備(以下、これらを「蓄放熱設備」ともいう)との間で熱媒流路の配管接続部分の排液操作と排気操作を適切に行うことのできる配管構造を検討し本発明の完成に至った。
【0013】
即ち、本発明に係る蓄熱管理システムは、請求項1の記載によれば、
熱供給部或いは熱需要部と熱交換するための熱媒体を循環する第1熱媒流路(17、27)を備えた第1熱交換器(12、22)を具備する1又は2以上の蓄放熱設備(10、20)と、
脱水反応により蓄熱し水和反応により放熱する化学蓄熱材(31)を内封し、当該化学蓄熱材と熱交換するための熱媒体を循環する第2熱媒流路(33)を備えた第2熱交換器(32)を具備する着脱式蓄熱容器(30)とを有し、
前記蓄放熱設備から前記着脱式蓄熱容器を離脱して保管又は移送し、当該着脱式蓄熱容器を同一又は異なる蓄放熱設備に装着して蓄熱した熱量を利用するにあたり、
前記着脱式蓄熱容器への蓄熱段階において、前記第1熱媒流路と前記第2熱媒流路とを流路接続部において連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させることにより前記蓄放熱設備で発生した熱量を前記化学蓄熱材に供給して脱水反応を生じさせて当該着脱式蓄熱容器に蓄熱し、
前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送する管理段階において、前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から前記流路接続部において連通解除した状態で当該着脱式蓄熱容器を保管又は移送し、
前記着脱式蓄熱容器からの放熱段階において、前記第2熱媒流路と前記第1熱媒流路とを前記流路接続部において連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させることにより前記化学蓄熱材に蓄熱した熱量を前記化学蓄熱材の水和反応で放熱して前記蓄放熱設備で利用するようにした蓄熱管理システムであって、
前記流路接続部は、前記第1熱媒流路と前記第2熱媒流路とを互いに接続・接続解除する管継手を有し、前記第1熱媒流路及び前記第2熱媒流路には、それぞれ、前記管継手を介した両側に各流路を連通・連通解除する各バルブを備え、
前記管継手を介した前記各バルブの間の熱媒流路を配管接続部として、
前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路と連通する際に、これらの熱媒流路間を前記管継手によって配管接続する接続操作を行い、この接続操作の後に前記配管接続部に残留する残留ガスを排除する排気操作を行い、この排気操作の後に当該第2熱媒流路を前記第1熱媒流路と連通して前記配管接続部に熱媒体を充填する連通操作を行う一方、
前記第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から連通解除する際に、当該第2熱媒流路を前記第1熱媒流路から連通解除する連通解除操作を行い、この連通解除操作を行った後に前記配管接続部に残留する熱媒体を排除する排液操作を行い、この排液操作を行った後にこれらの熱媒流路間を前記管継手によって接続解除する接続解除操作を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記蓄放熱設備は、熱供給を行う第1蓄放熱設備(10)と、熱需要を行う第2蓄放熱設備(20)とからなり、
前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送することにより前記第1蓄放熱設備で発生する熱量を前記第2蓄放熱設備で利用するにあたり、
前記管理段階において、前記第2熱媒流路を前記第1蓄放熱設備の第1熱媒流路及び前記第2蓄放熱設備の第1熱媒流路から連通解除した状態で当該着脱式蓄熱容器を保管又は移送することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記管理段階において前記第2熱媒流路内に熱媒体を充填した状態で前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1又は2に記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記管理段階において前記第2熱媒流路内の熱媒体を排除した状態で前記着脱式蓄熱容器を保管又は移送するために、
前記排液操作において前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記配管接続部及び前記第2熱媒流路内に残留する残留ガスを排除した後に、前記連通操作において前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に熱媒体を充填することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記排液操作において前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方を減圧することにより熱媒体の一部が気化し液体の熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記化学蓄熱材から前記第2熱交換器を介して供給される熱量により前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を気化することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する前記残留ガスを排除することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項5に記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記化学蓄熱材から前記第2熱交換器を介して供給される熱量は、当該化学蓄熱材の脱水反応における顕熱、又は、当該化学蓄熱材の水和反応における反応熱を利用することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記排液操作において熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する前記残留ガスを排除することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、請求項8の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蓄熱管理システムにおいて、
前記排液操作において不活性ガスを供給することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する一方、
前記排気操作において前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方を減圧することにより前記配管接続部又は前記配管接続部と前記第2熱媒流路内の両方に残留する不活性ガス及び前記残留ガスを排除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記請求項1に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、1又は2以上の蓄放熱設備と着脱式蓄熱容器とを有しており、着脱式蓄熱容器を保管又は移送することにより蓄放熱設備で発生する熱量を同一又は異なる蓄放熱設備で有効に利用することができる。
【0022】
着脱式蓄熱容器は、その内部に化学蓄熱材を内封しており、この化学蓄熱材の脱水反応により蓄放熱設備で発生する熱量を蓄熱する一方、化学蓄熱材の水和反応により蓄熱した熱量を放熱して同一又は異なる蓄放熱設備で利用する。このように、蓄熱管理システムが化学蓄熱材を採用するので、蓄熱温度及び放熱温度の温度域を広く確保することができると共に、蓄熱温度と放熱温度を変化させたヒートポンプとして使用することができる。
【0023】
蓄放熱設備と着脱式蓄熱容器とは、それぞれ熱媒流路を備えた熱交換器を具備し、互いの熱媒流路間で熱媒体を循環させることにより蓄熱及び放熱を効率よく行うことができる。
【0024】
また、請求項1に記載の蓄熱管理システムは、着脱式蓄熱容器への蓄熱段階において、蓄放熱設備が具備する第1熱交換器の第1熱媒流路と着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路とを連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させる。この熱媒体の循環により、蓄放熱設備で発生した熱量を化学蓄熱材に供給して脱水反応を生じさせ、着脱式蓄熱容器に効率よく蓄熱することができる。
【0025】
一方、請求項1に記載の蓄熱管理システムは、着脱式蓄熱容器から同一又は異なる蓄放熱設備への放熱段階において、着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路と蓄放熱設備が具備する第1熱交換器の第1熱媒流路とを連通して、これらの熱媒流路の間で熱媒体を循環させる。この熱媒体の循環により、着脱式蓄熱容器に蓄熱した熱量を化学蓄熱材の水和反応で放熱し効率よく蓄放熱設備で利用することができる。
【0026】
また、請求項1に記載の蓄熱管理システムは、着脱式蓄熱容器を蓄放熱設備から離脱して保管又は移送する管理段階において、着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路を蓄放熱設備が具備する第1熱交換器の第1熱媒流路から連通解除した状態で保管又は移送する。
【0027】
この管理段階において、着脱式蓄熱容器の第2熱媒流路を蓄放熱設備の第1熱媒流路と連通又は連通解除する際に、これらの熱媒流路中或いはこれらの接続配管中に空気或いは水分などが浸入し、これらが残留ガスとして熱媒体に混入することにより熱媒体の劣化を招くこととなり熱媒機能を低下させることとなる。
【0028】
そこで、請求項1に記載の蓄熱管理システムにおいては、各熱媒流路間の連通に際して、まず、熱媒流路間を配管接続する接続操作を行い、この接続操作の後に配管接続部に残留する残留ガスを排除する排気操作を行う。次に、この排気操作の後に第2熱媒流路を第1熱媒流路と連通して配管接続部に熱媒体を充填する連通操作を行うようにする。このことにより、管理段階において配管接続部に侵入した残留ガスを効率よく排除することができ、蓄熱段階及び放熱段階における熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。
【0029】
一方、各熱媒流路間の連通解除に際して、まず、第2熱媒流路を第1熱媒流路から連通解除する連通解除操作を行い、この連通解除操作を行った後に配管接続部に残留する熱媒体を排除する排液操作を行う。次に、この排液操作を行った後にこれらの熱媒流路間を接続解除する接続解除操作を行うようにする。このことにより、蓄熱段階及び放熱段階における熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。
【0030】
よって、上記請求項1に記載の構成によれば、蓄熱容器への蓄熱、蓄熱容器の保管や移送及び蓄熱容器からの放熱の各段階において、熱媒流路内に熱媒体の劣化要因となる空気或いは水分などが混入することがなく、蓄熱温度及び放熱温度の温度域を広く確保すると共に効率的な熱保管や熱移送を実現できる蓄熱管理システムを提供することができる。
【0031】
また、上記請求項2に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、2以上の蓄放熱設備を有しており、熱供給を行う第1蓄放熱設備で発生する熱量を熱需要を行う第2蓄放熱設備で利用する。そこで、請求項2に記載の蓄熱管理システムは、管理段階において着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路を第1蓄放熱設備が具備する第1熱交換器の第1熱媒流路或いは第2蓄放熱設備が具備する第1熱交換器の第1熱媒流路から連通解除した状態で当該着脱式蓄熱容器を保管又は移送する。よって、上記請求項2に記載の構成においても、請求項1と同様の作用効果を達成することができる。
【0032】
また、上記請求項3に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、着脱式蓄熱容器を保管又は移送する管理段階において、着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路内に熱媒体を充填した状態で保管又は移送する。そのことにより、第2熱媒流路内に熱媒体が有する顕熱も利用することができる。よって、上記請求項3に記載の構成においても、請求項1又は2と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0033】
また、上記請求項4に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、着脱式蓄熱容器を保管又は移送する管理段階において、着脱式蓄熱容器が具備する第2熱交換器の第2熱媒流路内から熱媒体を排除した状態で保管又は移送する。そこで、請求項4に記載の蓄熱管理システムは、排液操作において配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を排除する。このことにより、管理段階における着脱式蓄熱容器の重量が軽量化され、着脱式蓄熱容器の蓄熱密度が向上し遠隔地に移送する際にも移送コストが削減されるなど効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。
【0034】
一方、蓄熱管理システムでは、特に配管接続部、場合によっては第2熱媒流路内に空気或いは水分などが浸入することが考えられる。そこで、排気操作において配管接続部及び第2熱媒流路内に残留する空気或いは水分などの残留ガスを排除した後に、連通操作において配管接続部と第2熱媒流路内の両方に熱媒体を充填する。このことにより、蓄熱段階及び放熱段階に熱媒流路内を循環する熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。よって、上記請求項4に記載の構成においても、請求項1又は2と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0035】
また、上記請求項5に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、排液操作において配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する際に、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方を減圧するようにしてもよい。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を効率的に排除することができ、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方への空気或いは水分などの浸入を抑えることができる。
【0036】
一方、上記請求項5に記載の蓄熱管理システムは、排気操作において化学蓄熱材から第2熱交換器を介して供給される熱量により配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を気化するようにしてもよい。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する残留ガスを効率的に排除することができ、蓄熱段階及び放熱段階における熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。よって、上記請求項5に記載の構成においても、請求項1〜4のいずれか1つと同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0037】
また、上記請求項6に記載の構成によれば、蓄熱管理システムにおいて、化学蓄熱材から第2熱交換器を介して供給される熱量は、化学蓄熱材の脱水反応における顕熱、又は、化学蓄熱材の水和反応における反応熱を利用するようにしてもよい。このことにより、外部から他の熱量を供給することなく、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を気化させて、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する残留ガスを効率的に排除することができる。よって、上記請求項6に記載の構成においても、請求項5と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0038】
また、上記請求項7に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、排液操作において配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する際に、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に、熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給するようにしてもよい。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を低沸点成分が効率的に排除することができ、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方への空気或いは水分などの浸入をより一層抑えることができる。
【0039】
一方、請求項7に記載の蓄熱管理システムは、排気操作においても配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に、熱媒体が含有する或いは熱媒体が一部分解した低沸点成分を供給するようにしてもよい。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する残留ガスを効率的に排除することができ、蓄熱段階及び放熱段階における熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。よって、上記請求項7に記載の構成においても、請求項1〜4のいずれか1つと同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0040】
また、上記請求項8に記載の構成によれば、蓄熱管理システムは、排液操作において配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方から熱媒体を排除する際に、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に不活性ガスを供給するようにしてもよい。この不活性ガスは、熱媒体を劣化させることがない。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に残留する熱媒体を不活性ガスが効率的に排除することができ、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方への空気或いは水分などの浸入をより一層抑えることができる。
【0041】
一方、請求項8に記載の蓄熱管理システムは、排気操作において配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方を減圧することにより配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に充填された不活性ガス及び混入した残留ガスを排除するようにしてもよい。このことにより、配管接続部又は配管接続部と第2熱媒流路内の両方に充填された不活性ガス及び混入した残留ガスを効率的に排除することができ、蓄熱段階及び放熱段階における熱媒体の劣化を防止して効率的な熱保管又は熱移送を行うことができる。よって、上記請求項8に記載の構成においても、請求項1〜4のいずれか1つと同様の作用効果をより一層達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る蓄熱管理システムの熱移送に関する実施形態を示す概念図である。
図2】本発明に係る蓄熱管理システムの熱保管に関する他の実施形態を示す概念図である。
図3】第1実施形態における着脱式蓄熱容器と熱供給設備(又は熱需要設備)との関係を示す構成概略図である。
図4】第1実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。
図5】水酸化カルシウム系蓄熱材の脱水反応・水和反応の相平衡に関する圧力‐温度線図である。
図6】第2実施形態における着脱式蓄熱容器と熱供給設備(又は熱需要設備)との関係を示す構成概略図である。
図7】第2実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。
図8】第3実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明において、蓄放熱設備とは、蓄熱容器に熱量を放出して熱供給を行う設備、装置或いは施設、蓄熱容器から熱量の供給を受けて熱需要を行う設備、装置或いは施設、又は、熱供給と熱需要の両方を行う設備、装置或いは施設のいずれかをいうものとする。従って、本発明においては、熱供給のみを行う設備、装置或いは施設を熱供給設備ということもある。また、熱需要のみを行う設備、装置或いは施設を熱需要設備ということもある。
【0044】
本発明において、化学蓄熱材とは、特に限定するものではなく、吸脱着熱、融解熱、希釈熱などの化学反応の形で熱エネルギーを蓄熱する物質を全て包含するものである。本発明においては、これらの物質の中でも、特に、脱水反応・水和反応により吸熱・発熱を生ずる物質を使用することが好ましい。
【0045】
例えば、水酸化カルシウム系蓄熱材(CaOとCa(OH)2の反応)、水酸化バリウム系蓄熱材(BaOとBa(OH)2の反応)、水酸化マグネシウム系蓄熱材(MgOとMg(OH)2の反応)などのアルカリ土類金属の酸化物と水酸化物の反応、及び、水酸化ニッケル系蓄熱材(NiOとNi(OH)2の反応)、水酸化コバルト(II)系蓄熱材(CoOとCo(OH)2の反応)、水酸化コバルト(III)系蓄熱材(Co23とCo(OH)3の反応)、水酸化銅(II)系蓄熱材(CuOとCu(OH)2の反応)などの遷移金属の酸化物と水酸化物の反応、並びに、水酸化アルミニウム系蓄熱材(Al23とAl(OH)3の反応)などの典型金属の酸化物と水酸化物の反応などが挙げられる。これらの反応は、いずれか1種を採用してもよく、或いは、2種以上を組み合わせて採用するようにしてもよい。
【0046】
これらの反応の中でも、水酸化カルシウム系蓄熱材(CaOとCa(OH)2の反応)は、400℃を超える高温域での蓄熱・放熱の繰り返し操作を安定して行うことができるので、本発明における化学蓄熱材として好適である。一方、マグネシウム系蓄熱材(MgOとMg(OH)2の反応)は、カルシウム系蓄熱材よりも低温域での蓄熱・放熱が可能であるので、この蓄熱材も本発明における化学蓄熱材として好適である。
【0047】
また、本発明において、化学蓄熱材の組成について特に限定するものではなく、上記各化学蓄熱材のみからなるものでもよく、或いは、化学蓄熱材と他の成分との複合体であってもよい。ここで、他の成分としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイトなどの層状複水酸化物、表面に水酸基又は酸化物膜を有する伝熱体、粘土、炭素、銅(Cu)等からなり、その内部に化学蓄熱材を保持することが可能な空隙を持つ籠状物質、及び、上記物質の組み合わせなどであってもよい。
【0048】
また、本発明において、化学蓄熱材の構造と形状について特に限定するものではなく、上記各化学蓄熱材を含む粉末、化学蓄熱材を含む粉末をプレス成形することにより得られる成形体、或いは、当該成形体を加熱し、粒子を部分的に焼結させた多孔質の焼結体などであってもよい。
【0049】
また、本発明において、熱媒体とは、化学蓄熱材との間で熱交換をして、熱を移動させる媒体となる物質であり、特に、熱交換器を介して化学蓄熱材と間接的に接触し熱移動する物質をいう。これらの熱媒体としては、既知の物質を任意の組成にて使用することができる。例えば、各種シリコーンオイル、流動パラフィン等の飽和炭化水素系オイル、ハロゲン化ビフェニル等の芳香族炭化水素系オイル、空気、窒素、アルゴン、水、水蒸気、グリコール水溶液等が挙げられる。これらの中で、本発明においては、高温で反応する化学蓄熱材と安定して熱交換する熱媒体として、耐熱性のシリコーンオイル系熱媒体を採用することが好ましい。
【0050】
なお、本発明においては、数百度の高温の熱量を熱交換することもあり、この場合には、熱媒体の高温による劣化が問題となる。例えば、シリコーンオイル系熱媒体を採用した場合には、空気中の酸素や水分の混入による変性(酸素による脱水重合での高分子化)や分解(解重合や環状シロキサンの生成による低分子化)が生じる場合がある。
【0051】
そこで、熱媒体の使用時における膨張タンク内に不活性ガスを採用するなどの管理が必要となる。更に、本発明においては、後述するように、着脱式蓄熱容器を熱供給設備(又は熱需要設備)から切り離して移送する。この切り離しの際又は移送段階において、熱媒体或いは熱媒流路内に空気中の酸素或いは水分が混入すると熱媒体が劣化して、安定な蓄熱管理システムが維持できなくなる。本発明は、特にこの熱媒体の劣化に着目して成されたものである。
【0052】
以下、本発明に係る蓄熱管理システムの各実施形態を図面に従って説明する。なお、本発明は、下記に示す各実施形態に限定されるものではない。
【0053】
図1は、本発明に係る蓄熱管理システムの熱移送に関する実施形態を示す概念図である。図1の熱移送においては、まず、熱供給設備10が放出する廃熱を着脱式蓄熱容器30に蓄熱する。次に、この着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10と離隔した位置にある熱需要設備20まで移送する。更に、この着脱式蓄熱容器30に蓄熱した熱量を放熱して熱需要設備20に供給する。
【0054】
一方、図2は、本発明に係る蓄熱管理システムの熱保管に関する他の実施形態を示す概念図である。図2の熱保管において、熱量を放出して熱供給を行うと共に必要に応じて熱量の供給を受けて熱需要も行う蓄放熱設備(熱供給設備であると共に熱需要設備でもある)10と、複数の着脱式蓄熱容器30を保管する保管庫Aが設置されている。図2の熱保管においては、まず、蓄放熱設備10が放出する熱量を着脱式蓄熱容器30に蓄熱する。次に、この着脱式蓄熱容器30を蓄放熱設備10から離脱して保管庫Aに保管する。この保管庫Aには、蓄熱後の複数の着脱式蓄熱容器30が保管されている。
【0055】
更に、蓄放熱設備10が熱量の供給を必要とするときには、保管庫Aから取り出した着脱式蓄熱容器30を蓄放熱設備10に装着して放熱を行い、蓄放熱設備10に熱量を供給する。このような熱保管は、蓄放熱設備10を熱供給ステーションとする蓄熱管理システムとして活用することができる。
【0056】
第1実施形態:
本第1実施形態は、熱移送を行う実施形態である(図1参照)。本第1実施形態に係る蓄熱管理システムは、熱供給設備10が放出する400℃を超える高温(本第1実施形態においては、426℃とする)の廃熱を着脱式蓄熱容器30に蓄熱し、この着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20まで移送して蓄熱した熱量Qを放熱して熱需要設備20に供給するものである。
【0057】
本第1実施形態は、着脱式蓄熱容器30と熱供給設備10或いは熱需要設備20との間で、熱媒流路を接続解除する際或いは熱媒流路を接続する際に、配管接続部から熱媒流路内に侵入する空気或いは水分を排除する方法として、熱交換器内の熱媒体の気化時の圧力を利用するものである(詳細は後述する)。
【0058】
図3は、本第1実施形態における着脱式蓄熱容器30と熱供給設備10(又は熱需要設備20)との関係を示す構成概略図である。図3において、熱供給設備10から着脱式蓄熱容器30への蓄熱段階(以下、単に「蓄熱段階」という)においては、図3は着脱式蓄熱容器30と熱供給設備10との関係を表している。一方、着脱式蓄熱容器30から熱需要設備20への放熱段階(以下、単に「放熱段階」という)においては、図3は着脱式蓄熱容器30と熱需要設備20との関係(カッコ内の符号は放熱段階)を表している。
【0059】
図3において、着脱式蓄熱容器30は、その内部に化学蓄熱材31を内封し、この化学蓄熱材31と熱交換するための熱交換器32を備えている。この熱交換器32には、蓄熱段階の化学蓄熱材31に熱量Qを供給し、また、放熱段階の化学蓄熱材31から熱量Qを受給するための液体の熱媒体(本第1実施形態においては、シリコーンオイル系熱媒体を採用)が循環する熱媒流路33が設けられている。
【0060】
なお、本第1実施形態においては、化学蓄熱材31として熱供給設備10が放出する400℃を超える高温の廃熱を有効に利用するために水酸化カルシウム系蓄熱材を採用する。水酸化カルシウム系蓄熱材において、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)は、熱量Qの供給を受けると脱水反応により酸化カルシウム(CaO)に変化する。この反応は、吸熱反応であり下記の式(1)、
Ca(OH)2 → CaO+H2O:ΔH=−63.6kJ/mol・・・(1)
に示すように蓄熱作用として発現する。
【0061】
一方、酸化カルシウム(CaO)は、水を供給すると水和反応により水酸化カルシウム(Ca(OH)2)となる。この反応は、発熱反応であり下記の式(2)、
CaO+H2O → Ca(OH)2:ΔH=+63.6kJ/mol・・・(2)
に示すように放熱作用として発現する。
【0062】
このように本第1実施形態においては、水酸化カルシウム系蓄熱材を採用することにより可逆的に高温の廃熱を効率よく蓄熱して利用することができる。
【0063】
ここで、水酸化カルシウム系蓄熱材を採用する際には、脱水反応及び水和反応として水が関与する(上記式(1)及び式(2)参照)。本第1実施形態においては、装置の構造が比較的簡単で化学蓄熱材31との水の供給或いは排除が均一に行える水蒸気収脱着法を採用する。この方法においては、脱水反応で発生した水蒸気を化学蓄熱材31から排除する必要がある。一方、水和反応に必要な水蒸気を化学蓄熱材31に供給する必要がある。そこで、本第1実施形態の着脱式蓄熱容器30においては、化学蓄熱材31との間で水蒸気のやり取りを行う蒸発凝縮器(後述する)を採用する。
【0064】
また、図3において、蓄熱段階における熱供給設備10(放熱段階においては熱需要設備20)は、熱供給部11(熱需要設備では熱需要部21)、熱交換器12(熱需要設備では22)、蒸発凝縮器13(熱需要設備では23)、反応水タンク14(熱需要設備では24)、膨張タンク15(熱需要設備では25)及び回収タンク16(熱需要設備では26)を備えている。
【0065】
熱供給設備10における蓄熱段階においては、熱供給部11は化学蓄熱材31に供給する熱量Qを放出する。一方、熱需要設備20における放熱段階においては、熱需要部21は化学蓄熱材31が放出した熱量Qを需要する。
【0066】
熱交換器12(22)は、熱供給部11(又は熱需要部21)と熱交換するためのものであり、この熱交換器12(22)には、蓄熱段階の熱供給部11から熱量Qを受給し、且つ、放熱段階の熱需要部21に熱量Qを供給するための液体の熱媒体(シリコーンオイル系熱媒体)が循環する熱媒流路17(熱需要設備では27)が設けられている。この熱媒流路17(27)は、2つの流路接続部40、50によって着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33と接続・連通されて、両熱媒流路間を液体の熱媒体が循環する(詳細は後述する)。なお、熱媒を循環させる手段は特に限定するものではないが、例えば、過流タービンポンプやキャンドモータポンプなどの熱媒循環ポンプ(図示しない)を使用することが好ましい。
【0067】
蒸発凝縮器13(23)は、着脱式蓄熱容器30に内封された化学蓄熱材31の脱水反応の際に発生する水蒸気を凝縮させると共に、化学蓄熱材31の水和反応の際には反応水を蒸発させて水和反応に必要な水蒸気を供給する。この蒸発凝縮器13(23)は、水蒸気流路13a(熱需要設備では23a)を介して着脱式蓄熱容器30内の化学蓄熱材31と水蒸気のやり取りを行う。本第1実施形態においては、この蒸発凝縮器13(23)の構造と容量に関しては特に限定するものではなく、対応する化学蓄熱材31の種類と量、蓄熱温度、発熱温度及びその他の条件により適宜選定すればよい。
【0068】
反応水タンク14(24)は、化学蓄熱材31の脱水反応の際に蒸発凝縮器13(23)で凝縮した凝縮水を分離回収すると共に、化学蓄熱材31の水和反応の際には水蒸気を発生させるために蒸発凝縮器13(23)に反応水を供給する。この反応水タンク14(24)は、反応水流路14a(熱需要設備では24a)を介して蒸発凝縮器13(23)と反応水のやり取りを行う。本第1実施形態においては、この反応水タンク14(24)の構造と容量に関しては特に限定するものではなく、対応する蒸発凝縮器13(23)の容量及びその他の条件により適宜選定すればよい。なお、反応水タンク14(24)を採用することにより、蒸発凝縮器13(23)に供給する反応水として脱水反応の際に回収した凝縮水を再利用することができる。
【0069】
本第1実施形態においては、蒸発凝縮器13(23)及び反応水タンク14(24)は、熱供給設備10(又は熱需要設備20)が有している。従って、本第1実施形態における移送段階においては、蒸発凝縮器13(23)及び反応水タンク14(24)を着脱式蓄熱容器30から分離して着脱式蓄熱容器30のみを移送する。これに対して、蒸発凝縮器13(23)及び反応水タンク14(24)を着脱式蓄熱容器30から分離せず、これらを一体のものとして移送するようにしてもよい。
【0070】
なお、本第1実施形態においては、蒸発凝縮器13(23)を着脱式蓄熱容器30から分離して移送する場合の蒸発凝縮器13(23)と着脱式蓄熱容器30との接続及び連通に関しては、特に限定するものではなく、どのような方法を採用するようにしてもよい。
【0071】
膨張タンク15(25)は、熱交換器12(22)が具備する熱媒流路17(27)の流路に設けられ、熱媒流路17(27)内を循環する液体の熱媒体が熱交換によって膨張と収縮を繰り返す際に熱媒流路17(27)内の圧力を一定にして熱媒体の流量を均一にするために設けられている。また、膨張タンク15(25)は、高温の熱媒操作で劣化した熱媒体の低沸点成分を熱媒流路17(27)内から分離する。
【0072】
回収タンク16(26)は、回収流路16a(熱需要設備では26a)を介して膨張タンク15(25)と接続・連通し、膨張タンク15(25)内の余剰の熱媒体を回収し、或いは、高温の熱媒操作で劣化した熱媒体の低沸点成分を回収する。また、回収タンク16(26)は、回収流路16b(熱需要設備では26b)を介して流路接続部50に誘導されて熱媒流路17(27)と接続・連通する(詳細は後述する)。
【0073】
ここで、上記図3の構成において、熱供給設備10の熱媒流路17(27)と着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33とが、流路接続部40、50によって接続・連通される状態について説明する。
【0074】
図4は、本第1実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。流路接続部40において、熱媒流路17(27)と熱媒流路33とは、管継手41によって接続・接続解除が行われる。ここで、接続とは、2つの熱媒流路間の配管を接続することをいい、2つの熱媒流路間を熱媒体が循環して流れることを意味するものではない。一方、接続解除とは、2つの熱媒流路間の配管の接続を切り離すことをいう。
【0075】
また、流路接続部40内の熱媒流路17(27)の流路にはバルブ42が設けられ、このバルブ42の開閉によりバルブ42の前後において熱媒流路17(27)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33の流路には、熱交換器32と管継手41との間にバルブ43が設けられ、このバルブ43の開閉によりバルブ43の前後において熱媒流路33の連通・連通解除が行われる。ここで、連通とは、2つの熱媒流路間を熱媒体が循環して流れる状態にすることをいう。一方、連通解除とは、2つの熱媒流路間の熱媒体の循環を遮断して流れない状態にすることをいう。
【0076】
また、流路接続部40内の熱媒流路17(27)の流路は、バルブ42と管継手41との間から回収流路16b(26b)を介して回収タンク16(26)(図4において省略)に接続されている。更に、流路接続部40内の回収流路16b(26b)の流路にはバルブ44が設けられ、このバルブ44の開閉により熱媒流路17(27)と回収タンク16(26)との連通・連通解除が行われる。
【0077】
次に、流路接続部50において、熱媒流路17(27)と熱媒流路33とは、管継手51によって接続・接続解除が行われる。また、流路接続部50内の熱媒流路17(27)の流路にはバルブ52が設けられ、このバルブ52の開閉によりバルブ52の前後において熱媒流路17(27)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33の流路には、熱交換器32と管継手51との間にバルブ53が設けられ、このバルブ53の開閉によりバルブ53の前後において熱媒流路33の連通・連通解除が行われる。
【0078】
また、流路接続部50内の熱媒流路17(27)の流路は、バルブ52と管継手51との間から回収流路16b(26b)を介して回収タンク16(26)(図4において省略)に接続されている。更に、流路接続部50内の回収流路16b(26b)の流路にはバルブ54が設けられ、このバルブ54の開閉により熱媒流路17(27)と回収タンク16(26)との連通・連通解除が行われる。
【0079】
ここで、本第1実施形態に係る蓄熱管理システムにおいては、熱供給設備10から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器30に蓄熱する工程(ステップ1)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10から連通解除・接続解除する工程(ステップ2)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20に移送する工程(ステップ3)、移送後の着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20に接続・連通する工程(ステップ4)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30から熱量Qを放熱して熱需要設備20に供給する工程(ステップ5)、放熱後の着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20から連通解除・接続解除する工程(ステップ6)、放熱後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10に移送する工程(ステップ7)、及び、移送後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10に接続・連通する工程(ステップ8)の各工程からなるサイクルを繰り返す。以下、これらの工程について説明する。
【0080】
≪ステップ1≫
ステップ1は、熱供給設備10から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器30に蓄熱する工程である。この蓄熱段階においては、着脱式蓄熱容器30が熱供給設備10に組み込まれ(図3参照)、着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33が熱供給設備10の熱媒流路17に接続されて熱媒流路33と熱媒流路17が連通し、熱媒循環ポンプ(図示しない)の作動により液体の熱媒体が循環している(図4参照)。
【0081】
この蓄熱段階においては、熱媒流路33と熱媒流路17とが管継手41及び51により接続されている。また、熱媒流路33のバルブ43及び53、並びに、熱媒流路17のバルブ42及び52がいずれも開放されており、回収流路16bのバルブ44及び54がいずれも閉鎖されている(図4参照)。
【0082】
この蓄熱段階においては、熱供給部11で発生した熱量Qが熱交換器12を介して熱媒体に回収され、この熱媒体が熱媒流路17及び熱媒流路33を循環することにより熱交換器32を介して化学蓄熱材31に供給される。このことにより、化学蓄熱材31の脱水反応が生じて熱量Qが着脱式蓄熱容器30内の化学蓄熱材31に蓄熱される。これに並行して、化学蓄熱材31の脱水反応で発生した水蒸気は、水蒸気流路13aを介して蒸発凝縮器13に導入されて凝縮し、その凝縮水は反応水流路14aを介して反応水タンク14に蓄えられる(図3参照)。
【0083】
ここで、図5は、水酸化カルシウム系蓄熱材の脱水反応・水和反応の相平衡に関する圧力‐温度線図である。図5において、本第1実施形態における熱供給部11の温度が426℃であることから、同圧力において426℃の化学蓄熱材31(図5のA点)と平衡状態にある水蒸気(図5のB点)の温度は60℃であり、蒸発凝縮器13を60℃より低温(図5のb点)に設定することにより、水和反応で発生した水蒸気を凝縮して回収することができる。
【0084】
このようにして、着脱式蓄熱容器30の化学蓄熱材31が脱水反応を完了した時点において、化学蓄熱材31の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が酸化カルシウム(CaO)に変化してステップ1が終了する。
【0085】
≪ステップ2≫
ステップ2は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10から連通解除・接続解除する工程である。表1は、蓄熱工程(ステップ1)が終了した後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10から接続解除する各操作を示している。なお、表1においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1において、操作1は着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33が熱供給設備10の熱媒流路17に接続され、熱媒流路33と熱媒流路17が連通して液体の熱媒体が循環している初期状態を示している(図4参照)。
【0088】
操作1の初期状態においては、熱媒流路33と熱媒流路17とが管継手41及び51により接続されている。また、熱媒流路33のバルブ43及び53、並びに、熱媒流路17のバルブ42及び52がいずれも開放されており、回収流路16bのバルブ44及び54がいずれも閉鎖されている。
【0089】
ステップ2における連通解除・接続解除の操作は、まず、操作2において、熱媒循環ポンプの作動を停止し、熱媒流路17のバルブ42及び52を閉鎖する。このことにより、熱媒流路33と熱媒流路17とが連通解除され熱媒体の循環が停止する。
【0090】
次に、操作3において、回収流路16bのバルブ44及び54を開放する。このことにより、バルブ42とバルブ43との間の熱媒流路(以下「配管接続部45」という)及びバルブ52とバルブ53との間の熱媒流路(以下「配管接続部55」という)、並びに、バルブ43とバルブ53との間の熱媒流路33(熱交換器32を含む)が回収流路16bを介して回収タンク16に連通する。
【0091】
次に、操作4は、バルブの開閉を操作3と同様に維持した状態で配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に充填された熱媒体を回収する排液操作である。この操作4においては、蓄熱工程(ステップ1)が終了した段階で熱交換器32の温度が廃熱の温度に近い400℃を超える高温に維持されており、熱媒流路33内の熱媒体はこの温度に対応した圧力で液体状態を維持している。
【0092】
そこで、操作4において、回収タンク16内の圧力を熱交換器32近傍の温度で熱媒体中の低沸点成分が気化する圧力に減圧する。ここで、熱媒体中の低沸点成分とは、熱媒体を構成する化合物(本第1実施形態においては、シリコーンオイル)のうち分子量分布により当初から含まれている低分子量の化合物、又は、高温での熱媒使用により当初の熱媒体の一部が劣化して解重合した低分子量の化合物などをいう。
【0093】
この操作4における回収タンク16内の減圧操作により、熱交換器32が持つ顕熱により近傍の熱媒体中の低沸点成分が気化し始める。この低沸点成分の気化により、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33に充填された熱媒体が回収流路16bを介して回収タンク16内に回収される。
【0094】
次に、操作5において、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内の熱媒体が排除された段階で、回収流路16bのバルブ44及び54を閉鎖する。配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内の熱媒体が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、蓄熱管理システムの構成条件により予め設定した時間で管理するようにしてもよい。或いは、バルブ44及び54の近傍の回収タンク16側に液体センサーを配設して液体の熱媒体を検知しなくなった段階で管理するようにしてもよい。
【0095】
次に、操作6において、熱媒流路33のバルブ43及び53を閉鎖する。この段階において、バルブ43とバルブ53の間の熱媒流路33には、気化した熱媒体が充填されている。この状態でバルブ43及び53を閉鎖することにより、熱媒流路33内に空気或いは水分が浸入することを排除し気化した熱媒体の劣化を防止することができる。
【0096】
次に、操作7において、熱媒流路33と熱媒流路17とを接続する管継手41及び51を接続解除する。このことにより、着脱式蓄熱容器30が熱供給設備10から切り離され、この着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20の位置まで移送できる状態となる。
【0097】
≪ステップ3≫
ステップ3は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10から熱需要設備20に移送する工程である。着脱式蓄熱容器30を移送する方法に関しては、特に限定するものではなく、着脱式蓄熱容器30の容量と重量、熱供給設備10から熱需要設備20までの距離などにより適宜選定すればよい。例えば、遠距離の移送の場合には、車両、鉄道、或いは、船舶などを利用するようにしてもよい。また、近距離の移送、例えば、工場内での保管又は移送などの場合には、リフト、エレベーター、コンベアーなどを利用するようにしてもよい。
【0098】
いずれの場合においても、本第1実施形態においては、化学蓄熱材31として水酸化カルシウム系蓄熱材を採用するので、移送時の安全性が高く、且つ、放熱ロスが殆どなく長距離の移送や長期間の蓄熱においても熱損失が生じない。また、本第1実施形態においては、着脱式蓄熱容器30内に熱媒体を残留させることなく移送することができるので、着脱式蓄熱容器30の総重量が軽減され効率的な熱保管や熱移送を実現することができる。
【0099】
≪ステップ4≫
ステップ4は、移送後の着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20に接続・連通する工程である。表2は、熱供給設備10から移送してきた着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20に接続する各操作を示している。なお、表2においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2において、操作11は、着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10から熱需要設備20まで移送し、熱需要設備20に接続する前の初期状態を示している(図4参照)。
【0102】
操作11の初期状態においては、熱媒流路33と熱媒流路27とが管継手41及び51の部分で接続解除された状態にある。また、熱媒流路33のバルブ43及び53、熱媒流路27のバルブ42及び52、並びに、回収流路26bのバルブ44及び54がいずれも閉鎖されている。
【0103】
この操作11の初期状態においては、着脱式蓄熱容器30の化学蓄熱材31は、蓄熱後の状態にあり、本第1実施形態においては、酸化カルシウム(CaO)となっている。この状態において、着脱式蓄熱容器30と熱需要設備20との接続・連通操作を行う。
【0104】
ステップ4における接続・連通の操作は、まず、操作12において、熱媒流路33と熱媒流路27とを管継手41及び51の部分で接続する。このことにより、着脱式蓄熱容器30が熱需要設備20に組み込まれ、熱需要設備20に熱量Qを供給する前段階となる。
【0105】
次に、操作13においては、バルブの開閉を操作12と同様に維持した状態で着脱式蓄熱容器30の化学蓄熱材31の水和反応を開始する。この化学蓄熱材31の水和反応は、反応水経路24aを介して反応水タンク24内の反応水を蒸発凝縮器23に供給して水蒸気を発生し、水蒸気流路23aを介して発生した水蒸気を着脱式蓄熱容器30内の化学蓄熱材31に供給することにより開始する。
【0106】
このようにして、操作13において、化学蓄熱材31の水和反応が開始することにより、熱交換器32の温度が化学蓄熱材31の発熱温度まで上昇していく。ここで、化学蓄熱材31の水和反応による発熱温度は、任意の温度に設定することができる。図5の水酸化カルシウム系蓄熱材の脱水反応・水和反応の相平衡に関する圧力‐温度線図において、化学蓄熱材31に供給する水蒸気の温度と圧力を調整することにより、これと平衡状態にある化学蓄熱材31の発熱温度を設定することができる。
【0107】
例えば、図5において、368℃の発熱を求める場合には、同圧力において368℃の化学蓄熱材31(図5のC点)と平衡状態にある水蒸気(図5のD点)の温度は20℃であり、蒸発凝縮器23を20℃より高温(図5のd点)に設定することにより、蒸発した水蒸気による水和反応で化学蓄熱材31の発熱温度を368℃にすることができる。なお、本第1実施形態においては、図5の圧力‐温度線図を使用して化学蓄熱材31に供給する水蒸気の温度と圧力を調整(図5のF点より高温)することにより、蓄熱時の温度426℃よりも高温の発熱(図5のE点、600℃)を発現することもできる。
【0108】
このように化学蓄熱材31の水和反応により熱交換器32の温度が上昇して、熱媒流路33の内壁に残留した熱媒体の温度が沸点以上となったところで、操作14において、熱媒流路33のバルブ43及び53、並びに、回収流路26bのバルブ44及び54を開放する。この操作14は、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に残留する空気或いは水分を排除する排気操作である。この操作14により、熱媒流路33に残留していた熱媒体、及び、熱媒体の低沸点成分が気化、膨張することにより、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に残留する空気或いは水分が回収流路26bを介して回収タンク26に排出される。
【0109】
一方、ステップ1の蓄熱段階における脱水反応により化学蓄熱材31に多量の顕熱が蓄積している場合には、上記操作13において化学蓄熱材31の水和反応を開始することなく、この顕熱により熱媒流路33に残留していた熱媒体、及び、熱媒体の低沸点成分を気化、膨張させることにより、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に残留する空気或いは水分が回収流路26bを介して回収タンク26に排出されるようにしてもよい。
【0110】
このように、操作14における配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内の排気操作により、熱媒流路33と熱媒流路27とが連通して熱媒体が高温で循環する場合でも、熱媒体に空気或いは水分が混入することがなく、熱媒体の劣化を防止することができる。
【0111】
次に、操作15において、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内の空気或いは水分が排除された段階で、回収流路26bのバルブ44及び54を閉鎖する。配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内の空気或いは水分が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、蓄熱管理システムの構成条件により予め設定した時間で管理するようにしてもよい。或いは、バルブ44及び54の近傍の回収タンク26側に酸素センサー及び必要により水分センサーを配設して空気或いは水分を検知しなくなった段階で管理するようにしてもよい。
【0112】
次に、操作16において、熱媒流路27のバルブ42及び52を開放する。このことにより、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に熱媒流路27から熱媒が流入し、着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33と熱需要設備20の熱媒流路27とが連通し、液体の熱媒体が各流路内を循環できる状態になる。
【0113】
≪ステップ5≫
ステップ5は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器30から熱量Qを放熱して熱需要設備20に供給する工程である。この放熱段階においては、着脱式蓄熱容器30が熱需要設備20に組み込まれ(図3参照)、着脱式蓄熱容器30の熱媒流路33が熱需要設備20の熱媒流路27に接続されて熱媒流路33と熱媒流路27が連通し、熱媒循環ポンプの作動により液体の熱媒体が循環している(図4参照)。
【0114】
この放熱段階においては、熱媒流路33と熱媒流路27とが管継手41及び51により接続されている。また、熱媒流路33のバルブ43及び53、並びに、熱媒流路27のバルブ42及び52がいずれも開放されており、回収流路26bのバルブ44及び54がいずれも閉鎖されている(図4参照)。
【0115】
この放熱段階においては、操作13で開始された化学蓄熱材31の水和反応が進行しており、化学蓄熱材31で発生した熱量Qが熱交換器32を介して熱媒体に回収され、この熱媒体が熱媒流路33及び熱媒流路27を循環することにより熱交換器22を介して熱需要部21に供給される。このことにより、着脱式蓄熱容器30内の化学蓄熱材31に蓄熱されている熱量Qが熱需要設備20の熱需要部21に供給される(図3参照)。
【0116】
このようにして、着脱式蓄熱容器30の化学蓄熱材31が水和反応を完了した時点において、化学蓄熱材31の酸化カルシウムに(CaO)が水酸化カルシウム(Ca(OH)2)に変化してステップ5が終了する。
【0117】
≪ステップ6≫
ステップ6は、放熱後の着脱式蓄熱容器30を熱需要設備20から連通解除・接続解除する工程である。このステップ6は、上述のステップ2と同様の操作をするものであり、工程2の熱供給設備10を熱需要設備20に置き換えたものである。
【0118】
但し、熱需要設備20に対するステップ6では、熱需要設備20への放熱工程(ステップ5)が終了した段階において、熱交換器32の温度が放熱温度に近い高温に維持されており、熱媒流路33内の熱媒体はこの温度に対応した圧力で液体状態を維持している。
【0119】
そこで、熱需要設備20に対する操作(ステップ2の操作4に対応)においても、回収タンク26内の圧力を熱交換器32近傍の温度で熱媒体中の低沸点成分が気化する圧力に減圧する。この回収タンク26内の減圧操作により、熱交換器32近傍の熱媒体中の低沸点成分が気化し、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33に充填された熱媒体が回収流路26bを介して回収タンク26内に回収される。
【0120】
≪ステップ7≫
ステップ7は、放熱後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10に移送する工程である。このステップ7は、上述のステップ3と同様の操作をするものである。
【0121】
≪ステップ8≫
ステップ8は、移送後の着脱式蓄熱容器30を熱供給設備10に接続・連通する工程である。このステップ8は、上述のステップ4と同様の操作をするものであり、ステップ4の熱需要設備20を熱供給設備10に置き換えたものである。
【0122】
但し、熱供給設備10に対するステップ8では、放熱段階における水和反応により化学蓄熱材31には、多量の顕熱が蓄積している。この顕熱により熱媒流路33の内壁に残留した熱媒体を気化し、また、熱媒流路33に残留していた熱媒体の低沸点成分を膨張することができる。このことにより、配管接続部45及び55、並びに、熱媒流路33内に残留する空気或いは水分が回収流路16bを介して回収タンク16に排出される。
【0123】
第2実施形態:
次に、本発明に係る蓄熱管理システムの第2実施形態を説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と同様に、熱供給設備110が放出する400℃を超える高温の廃熱を着脱式蓄熱容器130に蓄熱し、この着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120まで移送して蓄熱した熱量Qを放熱して熱需要設備120に供給する蓄熱管理システムに関するものである(図1参照)。
【0124】
本第2実施形態は、着脱式蓄熱容器130と熱供給設備110或いは熱需要設備120との間で、熱媒流路を接続解除する際或いは熱媒流路を接続する際に、配管接続部から熱媒流路内に侵入する空気或いは水分を排除する方法として、回収タンク内で液化した熱媒体の低沸点成分を利用するものである(詳細は後述する)。
【0125】
図6は、本第2実施形態における着脱式蓄熱容器130と熱供給設備110(又は熱需要設備120)との関係を示す構成概略図である。図6において、熱供給設備110から着脱式蓄熱容器130への蓄熱段階(以下、単に「蓄熱段階」という)においては、図6は着脱式蓄熱容器130と熱供給設備110との関係を表している。一方、着脱式蓄熱容器130から熱需要設備120への放熱段階(以下、単に「放熱段階」という)においては、図6は着脱式蓄熱容器130と熱需要設備120との関係(カッコ内の記号は放熱段階)を表している。
【0126】
図6において、着脱式蓄熱容器130は、その内部に化学蓄熱材131を内封し、この化学蓄熱材131と熱交換するための熱交換器132を備えている。この熱交換器132には、蓄熱段階の化学蓄熱材131に熱量Qを供給し、また、放熱段階の化学蓄熱材131から熱量Qを受給するための液体の熱媒体(本第2実施形態においても、シリコーンオイル系熱媒体を採用)が循環する熱媒流路133が設けられている。
【0127】
なお、本第2実施形態においても、化学蓄熱材131として熱供給設備110が放出する400℃を超える高温の廃熱を有効に利用するために水酸化カルシウム系蓄熱材を採用する。このように本第2実施形態においても、水酸化カルシウム系蓄熱材を採用することにより可逆的に高温の廃熱を効率よく蓄熱して利用することができる。
【0128】
また、本第2実施形態においても、装置の構造が比較的簡単で化学蓄熱材131との水の供給或いは排除が均一に行える水蒸気収脱着法を採用する。そこで、本第2実施形態の着脱式蓄熱容器130においては、化学蓄熱材131との間で水蒸気のやり取りを行う蒸発凝縮器を採用する。
【0129】
また、図6において、蓄熱段階における熱供給設備110(放熱段階においては熱需要設備120)は、熱供給部111(熱需要設備では熱需要部121)、熱交換器112(熱需要設備では122)、蒸発凝縮器113(熱需要設備では123)、反応水タンク114(熱需要設備では124)、膨張タンク115(熱需要設備では125)及び回収タンク116(熱需要設備では126)を備えている。
【0130】
熱供給設備110における蓄熱段階においては、熱供給部111は化学蓄熱材131に供給する熱量Qを放出する。一方、熱需要設備120における放熱段階においては、熱需要部121は化学蓄熱材131が放出した熱量Qを需要する。
【0131】
熱交換器112(122)は、熱供給部111(又は熱需要部121)と熱交換するためのものであり、この熱交換器112(122)には、蓄熱段階の熱供給部111から熱量Qを受給し、且つ、放熱段階の熱需要部121に熱量Qを供給するための液体の熱媒体(シリコーンオイル系熱媒体)が循環する熱媒流路117(熱需要設備では127)が設けられている。この熱媒流路117(127)は、2つの流路接続部140、150によって着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133と接続・連通されて、両熱媒流路間を液体の熱媒体が循環する(詳細は後述する)。なお、熱媒を循環させる手段は特に限定するものではないが、例えば、過流タービンポンプやキャンドモータポンプなどの熱媒循環ポンプ(図示しない)を使用することが好ましい。
【0132】
蒸発凝縮器113(123)は、着脱式蓄熱容器130に内封された化学蓄熱材131の脱水反応の際に発生する水蒸気を凝縮させると共に、化学蓄熱材131の水和反応の際には反応水を蒸発させて水和反応に必要な水蒸気を供給する。この蒸発凝縮器113(123)は、水蒸気流路113a(熱需要設備では123a)を介して着脱式蓄熱容器130内の化学蓄熱材131と水蒸気のやり取りを行う。本第2実施形態においては、この蒸発凝縮器113(123)の構造と容量に関しては特に限定するものではなく、対応する化学蓄熱材131の種類と量、蓄熱温度、発熱温度及びその他の条件により適宜選定すればよい。
【0133】
反応水タンク114(124)は、化学蓄熱材131の脱水反応の際に蒸発凝縮器113(123)で凝縮した凝縮水を分離回収すると共に、化学蓄熱材131の水和反応の際には水蒸気を発生させるために蒸発凝縮器113(123)に反応水を供給する。この反応水タンク114(124)は、反応水流路114a(熱需要設備では124a)を介して蒸発凝縮器113(123)と反応水のやり取りを行う。本第2実施形態においては、この反応水タンク114(124)の構造と容量に関しては特に限定するものではなく、対応する蒸発凝縮器113(123)の容量及びその他の条件により適宜選定すればよい。なお、反応水タンク114(124)を採用することにより、蒸発凝縮器113(123)に供給する反応水として脱水反応の際に回収した凝縮水を再利用することができる。
【0134】
本第2実施形態においては、蒸発凝縮器113(123)及び反応水タンク114(124)は、熱供給設備110(又は熱需要設備120)が有している。従って、本第2実施形態における移送段階においては、蒸発凝縮器113(123)及び反応水タンク114(124)を着脱式蓄熱容器130から分離して着脱式蓄熱容器130のみを移送する。これに対して、蒸発凝縮器113(123)及び反応水タンク114(124)を着脱式蓄熱容器130から分離せず、これらを一体のものとして移送するようにしてもよい。
【0135】
なお、本第2実施形態においては、蒸発凝縮器113(123)を着脱式蓄熱容器130から分離して移送する場合の蒸発凝縮器113(123)と着脱式蓄熱容器130との接続及び連通に関しては、特に限定するものではなく、どのような方法を採用するようにしてもよい。
【0136】
膨張タンク115(125)は、熱交換器112(122)が具備する熱媒流路117(127)の流路に設けられ、熱媒流路117(127)内を循環する液体の熱媒体が熱交換によって膨張と収縮を繰り返す際に熱媒流路117(127)内の圧力を一定にして熱媒体の流量を均一にするために設けられている。また、膨張タンク115(125)は、高温の熱媒操作で劣化した熱媒体の低沸点成分を熱媒流路117(127)内から分離する。
【0137】
回収タンク116(126)は、回収流路116a(熱需要設備では126a)を介して膨張タンク115(125)と接続・連通し、膨張タンク115(125)内の余剰の熱媒体を回収し、或いは、高温の熱媒操作で劣化した熱媒体の低沸点成分を回収する。また、回収タンク116(126)は、回収流路116b(熱需要設備では126b)を介して流路接続部150に誘導されて熱媒流路117(127)と接続・連通する(詳細は後述する)。
【0138】
この回収タンク116(126)内には、回収した熱媒体のうち高温での熱媒使用などにより当初の熱媒体の一部が劣化して解重合した低分子量の低沸点成分(以下「低沸点熱媒」という)が含まれる。これらの低沸点熱媒は、一部或いは全部が気化した状態で回収流路116b(126b)を介して回収され、回収タンク内の温度と圧力(熱媒流路内より低温、低圧)により液化した状態で分離され維持されている。
【0139】
ここで、回収タンク116(126)は、低沸点熱媒流路116c(熱需要設備では126c)を介して流路接続部150に誘導されて熱媒流路117(127)と接続・連通する。この低沸点熱媒流路116c(126c)は、回収タンク116(126)内の液体の低沸点熱媒を熱媒流路117(127)に導入する(詳細は後述する)。
【0140】
ここで、上記図6の構成において、熱供給設備110の熱媒流路117(127)と着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133とが、流路接続部140、150によって接続・連通される状態について説明する。
【0141】
図7は、本第2実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。流路接続部140において、熱媒流路117(127)と熱媒流路133とは、管継手141によって接続・接続解除が行われる。
【0142】
また、流路接続部140内の熱媒流路117(127)の流路にはバルブ142が設けられ、このバルブ142の開閉によりバルブ142の前後において熱媒流路117(127)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133の流路には、熱交換器132と管継手141との間にバルブ143が設けられ、このバルブ143の開閉によりバルブ143の前後において熱媒流路133の連通・連通解除が行われる。
【0143】
また、流路接続部140内の熱媒流路117(127)の流路は、バルブ142と管継手141との間から回収流路116b(126b)を介して回収タンク116(126)(図7において省略)に接続されている。更に、流路接続部140内の回収流路116b(126b)の流路にはバルブ144が設けられ、このバルブ144の開閉により熱媒流路117(127)と回収タンク116(126)との連通・連通解除が行われる。
【0144】
次に、流路接続部150において、熱媒流路117(127)と熱媒流路133とは、管継手151によって接続・接続解除が行われる。また、流路接続部150内の熱媒流路117(127)の流路にはバルブ152が設けられ、このバルブ152の開閉によりバルブ152の前後において熱媒流路117(127)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133の流路には、熱交換器132と管継手151との間にバルブ153が設けられ、このバルブ153の開閉によりバルブ153の前後において熱媒流路133の連通・連通解除が行われる。
【0145】
また、流路接続部150内の熱媒流路117(127)の流路は、バルブ152と管継手151との間から回収流路116b(126b)を介して回収タンク116(126)(図7において省略)に接続されている。更に、流路接続部150内の回収流路116b(126b)の流路にはバルブ154が設けられ、このバルブ154の開閉により熱媒流路117(127)と回収タンク116(126)との連通・連通解除が行われる。
【0146】
また、流路接続部150内の熱媒流路117(127)の流路は、バルブ152と管継手151との間から低沸点熱媒流路116c(126c)を介して回収タンク116(126)(図7において省略)に接続されている。更に、流路接続部150内の低沸点熱媒流路116c(126c)の流路にはバルブ156が設けられ、このバルブ156の開閉により熱媒流路117(127)と回収タンク116(126)との連通・連通解除が行われる。
【0147】
ここで、本第2実施形態に係る蓄熱管理システムにおいては、熱供給設備110から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器130に蓄熱する工程(ステップ11)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110から連通解除・接続解除する工程(ステップ12)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120に移送する工程(ステップ13)、移送後の着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120に接続・連通する工程(ステップ14)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130から熱量Qを放熱して熱需要設備120に供給する工程(ステップ15)、放熱後の着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120から連通解除・接続解除する工程(ステップ16)、放熱後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110に移送する工程(ステップ17)、及び、移送後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110に接続・連通する工程(ステップ18)の各工程からなるサイクルを繰り返す。以下、これらの工程について説明する。
【0148】
≪ステップ11≫
ステップ11は、熱供給設備110から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器130に蓄熱する工程である。このステップ11は、上記第1実施形態におけるステップ1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0149】
≪ステップ12≫
ステップ12は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110から連通解除・接続解除する工程である。表3は、蓄熱工程(ステップ11)が終了した後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110から接続解除する各操作を示している。なお、表3においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表す。
【0150】
【表3】
【0151】
表3において、操作21は着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133が熱供給設備110の熱媒流路117に接続され、熱媒流路133と熱媒流路117が連通して液体の熱媒体が循環している初期状態を示している(図6参照)。
【0152】
操作21の初期状態においては、熱媒流路133と熱媒流路117とが管継手141及び151により接続されている。また、熱媒流路133のバルブ143及び153、並びに、熱媒流路117のバルブ142及び152がいずれも開放されている。更に、回収流路116bのバルブ144及び154、並びに、低沸点熱媒流路116cのバルブ156がいずれも閉鎖されている。
【0153】
ステップ12における連通解除・接続解除の操作は、まず、操作22において、熱媒循環ポンプの作動を停止し、低沸点熱媒流路116cのバルブ156を開放する。このことにより、回収タンク116内の液体の低沸点熱媒が低沸点熱媒流路116cを介して、バルブ142とバルブ143との間の熱媒流路(以下「配管接続部145」という)及びバルブ152とバルブ153との間の熱媒流路(以下「配管接続部155」という)、並びに、バルブ143とバルブ153との間の熱媒流路133(熱交換器132を含む)に導入される。なお、液体の低沸点熱媒の導入には、液体ポンプなどを使用して強制的に圧入することが好ましい。
【0154】
この操作22は、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133内に充填された液体の熱媒体(以下、本第2実施形態において「通常熱媒」という)を排除する排液操作である。この操作22の液体の低沸点熱媒の導入により、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133内の通常熱媒が低沸点熱媒によって押し戻され、これらの熱媒流路内の通常熱媒が低沸点熱媒に置換されていく。なお、低沸点熱媒によって押し戻された通常熱媒は、一時的に膨張タンク115に貯留される。また、操作22においては、熱媒流路133内の置換された低沸点熱媒が化学蓄熱材31の顕熱により膨張或いは一部気化することにより、通常熱媒の排除をより有効にすることもできる。
【0155】
これらの熱媒流路内の通常熱媒が排除された段階で、続く操作23において、熱媒流路133のバルブ143及び153、並びに、熱媒流路117のバルブ142及び152を閉鎖する。これらの熱媒流路内の通常熱媒が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、低沸点熱媒の導入を開始してから通常熱媒が排除されるまでの時間を予め測定して決定するようにしてもよい。
【0156】
この段階において、バルブ143とバルブ153の間の熱媒流路133(熱交換器132を含む)には、低沸点熱媒が充填されている。このことにより、熱媒流路133内に空気或いは水分が浸入することを排除し気化した低沸点熱媒の劣化を防止することができる。一方、熱媒流路133と接続解除された配管接続部145及び155にも低沸点熱媒が充填されている。
【0157】
次に、操作24において、低沸点熱媒流路116cのバルブ156を閉鎖する。更に、続く操作25において、回収流路116bのバルブ144及び154を開放する。このとき、回収タンク16内の圧力を低沸点熱媒が気化する圧力に減圧するようにしてもよい。このことにより、配管接続部145及び155が回収流路116bを介して回収タンク116に連通し、配管接続部145及び155の低沸点熱媒が回収タンク116に流入し回収される。
【0158】
次に、操作26において、配管接続部145及び155の低沸点熱媒が排除された段階で、回収流路116bのバルブ144及び154を閉鎖する。配管接続部145及び155の低沸点熱媒が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、蓄熱管理システムの構成条件により予め設定した時間で管理するようにしてもよい。或いは、バルブ144及び154の近傍の回収タンク116側に液体センサーを配設して液体の低沸点熱媒を検知しなくなった段階で管理するようにしてもよい。
【0159】
次に、操作27において、熱媒流路133と熱媒流路117とを接続する管継手141及び151を接続解除する。このことにより、着脱式蓄熱容器130が熱供給設備110から切り離され、この着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120の位置まで移送できる状態となる。
【0160】
≪ステップ13≫
ステップ13は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110から熱需要設備120に移送する工程である。このステップ13は、上記第1実施形態におけるステップ3と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0161】
≪ステップ14≫
ステップ14は、移送後の着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120に接続・連通する工程である。表4は、熱供給設備110から移送してきた着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120に接続する各操作を示している。なお、表4においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表す。
【0162】
【表4】
【0163】
表4において、操作31は、着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110から熱需要設備120まで移送し、熱需要設備120に接続する前の初期状態を示している(図7参照)。
【0164】
操作31の初期状態においては、熱媒流路133と熱媒流路127とが管継手141及び151の部分で接続解除された状態にある。また、熱媒流路133のバルブ143及び153、並びに、熱媒流路127のバルブ142及び152がいずれも閉鎖されている。更に、回収流路126bのバルブ144及び154、並びに、低沸点熱媒流路126cのバルブ156がいずれも閉鎖されている。
【0165】
この操作31の初期状態においては、着脱式蓄熱容器130の化学蓄熱材131は、蓄熱後の状態にあり、本第2実施形態においては、酸化カルシウム(CaO)となっている。この状態において、着脱式蓄熱容器130と熱需要設備120との接続・連通操作を行う。
【0166】
ステップ14における接続・連通の操作は、まず、操作32において、熱媒流路133と熱媒流路127とを管継手141及び151の部分で接続する。このことにより、着脱式蓄熱容器130が熱需要設備120に組み込まれ、熱需要設備120に熱量Qを供給する前段階となる。
【0167】
次に、操作33においては、熱媒流路133のバルブ143及び153、回収流路126bのバルブ144及び154、並びに、低沸点熱媒流路126cのバルブ156を開放する。この操作33は、配管接続部145及び155に残留する空気或いは水分を排除する排気操作である。
【0168】
この操作33により、回収タンク126内の液体の低沸点熱媒が低沸点熱媒流路126cを介して配管接続部145及び155に流入する。なお、バルブ143とバルブ153の間の熱媒流路133には、低沸点熱媒が充填された状態にある(ステップ12の操作23参照)。そこで、配管接続部145及び155に流入した低沸点熱媒により、配管接続部145及び155に残留する空気或いは水分が回収流路126bを介して回収タンク126に排出される。なお、この段階において、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133には、低沸点熱媒が充填された状態にある。
【0169】
このように、操作33における配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133の排気操作により、熱媒流路133と熱媒流路127とが連通して熱媒体が高温で循環する場合でも、熱媒体に空気或いは水分が混入することがなく、熱媒体の劣化を防止することができる。
【0170】
次に、操作34において、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133内の空気或いは水分が排除された段階で、回収流路126bのバルブ144及び154、並びに、低沸点熱媒流路126cのバルブ156を閉鎖する。配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133内の空気或いは水分が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、蓄熱管理システムの構成条件により予め設定した時間で管理するようにしてもよい。或いは、バルブ144及び154の近傍の回収タンク126側に酸素センサー及び必要により水分センサーを配設して空気或いは水分を検知しなくなった段階で管理するようにしてもよい。
【0171】
次に、操作35において、熱媒流路127のバルブ142及び152を開放する。この段階においては、上述のように、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133には、低沸点熱媒が充填された状態にある。この操作35により、配管接続部145及び155、並びに、熱媒流路133内の低沸点熱媒は、熱媒流路127から流入した通常熱媒と混合され、着脱式蓄熱容器130の熱媒流路133と熱需要設備120の熱媒流路127とが連通し、液体の熱媒体が各流路内を循環できる状態になる。なお、通常熱媒に混合された低沸点熱媒は、通常熱媒の循環により膨張タンク125を介して、再び回収タンク126内に回収され液化される。
【0172】
≪ステップ15≫
ステップ15は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器130から熱量Qを放熱して熱需要設備120に供給する工程である。このステップ15は、上記第1実施形態におけるステップ5と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0173】
≪ステップ16≫
ステップ16は、放熱後の着脱式蓄熱容器130を熱需要設備120から連通解除・接続解除する工程である。このステップ16は、上述のステップ12と同様の操作をするものであり、ステップ12の熱供給設備110を熱需要設備120に置き換えたものである。
【0174】
≪ステップ17≫
ステップ17は、放熱後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110に移送する工程である。このステップ17は、上述のステップ13と同様の操作をするものである。
【0175】
≪ステップ18≫
ステップ18は、移送後の着脱式蓄熱容器130を熱供給設備110に接続・連通する工程である。このステップ18は、上述のステップ14と同様の操作をするものであり、ステップ14の熱需要設備120を熱供給設備110に置き換えたものである。
【0176】
第3実施形態:
次に、本発明に係る蓄熱管理システムの第3実施形態を説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と同様に、熱供給設備210が放出する400℃を超える高温の廃熱を着脱式蓄熱容器230に蓄熱し、この着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220まで移送して蓄熱した熱量Qを放熱して熱需要設備220に供給する蓄熱管理システムに関するものである(図1参照)。
【0177】
本第3実施形態は、着脱式蓄熱容器230と熱供給設備210或いは熱需要設備220との間で、熱媒流路を接続解除する際或いは熱媒流路を接続する際に、配管接続部から熱媒流路内に侵入する空気或いは水分を排除する方法として、管内への窒素ガスの導入及び管内の減圧操作(真空引き)を利用するものである(詳細は後述する)。
【0178】
本第3実施形態における着脱式蓄熱容器230と熱供給設備210(又は熱需要設備220)との関係は、上記第2実施形態に示す構成概略図(図6参照)と略同様である。但し、本第3実施形態においては、図6における回収タンク116(126)を採用せず、真空ポンプ及び窒素ガスタンク(いずれも図示せず)を採用する(詳細は後述する)。
【0179】
本第3実施形態において、着脱式蓄熱容器230は、その内部に化学蓄熱材231を内封し、この化学蓄熱材231と熱交換するための熱交換器232を備えている。この熱交換器232には、蓄熱段階の化学蓄熱材231に熱量Qを供給し、また、放熱段階の化学蓄熱材231から熱量Qを受給するための液体の熱媒体(本第3実施形態においても、シリコーンオイル系熱媒体を採用)が循環する熱媒流路233が設けられている。
【0180】
なお、本第3実施形態においても、化学蓄熱材231として熱供給設備210が放出する400℃を超える高温の廃熱を有効に利用するために水酸化カルシウム系蓄熱材を採用する。このように本第3実施形態においても、水酸化カルシウム系蓄熱材を採用することにより可逆的に高温の廃熱を効率よく蓄熱して利用することができる。
【0181】
本第3実施形態においても、装置の構造が比較的簡単で化学蓄熱材231との水の供給或いは排除が均一に行える水蒸気収脱着法を採用する。そこで、本第3実施形態の着脱式蓄熱容器230においては、化学蓄熱材231との間で水蒸気のやり取りを行う蒸発凝縮器を採用する。
【0182】
本第3実施形態において、蓄熱段階における熱供給設備210(放熱段階においては熱需要設備220)は、熱供給部211(熱需要設備では熱需要部221)、熱交換器212(熱需要設備では222)、蒸発凝縮器213(熱需要設備では223)、反応水タンク214(熱需要設備では224)及び膨張タンク215(熱需要設備では225)備えている(図6参照)。なお、上記第2実施形態と異なり回収タンクを必要とせず、代わりに窒素ガスタンク216(熱需要設備では226)及び真空ポンプ257(熱需要設備においても同じ)を備えている。
【0183】
熱供給設備210における蓄熱段階においては、熱供給部211は化学蓄熱材231に供給する熱量Qを放出する。一方、熱需要設備220における放熱段階においては、熱需要部221は化学蓄熱材231が放出した熱量Qを需要する。
【0184】
熱交換器212(222)は、熱供給部211(又は熱需要部221)と熱交換するためのものであり、この熱交換器212(222)には、蓄熱段階の熱供給部211から熱量Qを受給し、且つ、放熱段階の熱需要部221に熱量Qを供給するための液体の熱媒体(シリコーンオイル系熱媒体)が循環する熱媒流路217(熱需要設備では227)が設けられている。この熱媒流路217(227)は、2つの流路接続部240、250によって着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233と接続・連通されて、両熱媒流路間を液体の熱媒体が循環する(詳細は後述する)。なお、熱媒体を循環させる手段は特に限定するものではないが、例えば、過流タービンポンプやキャンドモータポンプなどの熱媒循環ポンプを使用することが好ましい。
【0185】
蒸発凝縮器213(223)及び反応水タンク214(224)の構造については、上記第2実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。なお、本第3実施形態においても、蒸発凝縮器213(223)及び反応水タンク214(224)は、熱供給設備210(又は熱需要設備220)が有している。従って、本第3実施形態における移送段階においては、蒸発凝縮器213(223)及び反応水タンク214(224)を着脱式蓄熱容器230から分離して着脱式蓄熱容器230のみを移送する。これに対して、蒸発凝縮器213(223)及び反応水タンク214(224)を着脱式蓄熱容器230から分離せず、これらを一体のものとして移送するようにしてもよい。
【0186】
なお、本第3実施形態においては、蒸発凝縮器213(223)を着脱式蓄熱容器230から分離して移送する場合の蒸発凝縮器213(223)と着脱式蓄熱容器230との接続及び連通に関しては、特に限定するものではなく、どのような方法を採用するようにしてもよい。
【0187】
膨張タンク215(225)は、熱交換器212(222)が具備する熱媒流路217(227)の流路に設けられ、熱媒流路217(227)内を循環する液体の熱媒体が熱交換によって膨張と収縮を繰り返す際に熱媒流路217(227)内の圧力を一定にして熱媒体の流量を均一にするために設けられている。また、膨張タンク215(225)は、高温の熱媒操作で劣化した熱媒体の低沸点成分を熱媒流路217(227)内から分離する。
【0188】
窒素ガスタンク216(226)は、熱媒流路217(227)と熱媒流路233との接続部分及び熱媒流路233内に窒素ガスを供給するためのものである(詳細は後述する)。なお、本第3実施形態においては窒素ガスを採用するが、これに限定されるものではなく、他の不活性ガスを採用するようにしてもよい。
【0189】
真空ポンプ257は、熱媒流路217(227)と熱媒流路233との接続部分及び熱媒流路233内に充填された窒素ガスを系外に排気するためのものである(詳細は後述する)。
【0190】
ここで、上記構成(図6参照)において、熱供給設備210の熱媒流路217(227)と着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233とが、流路接続部240、250によって接続・連通される状態について説明する。
【0191】
図8は、本第3実施形態における熱媒流路間の接続を示す構成概略図である。流路接続部240において、熱媒流路217(227)と熱媒流路233とは、管継手241によって接続・接続解除が行われる。
【0192】
また、流路接続部240内の熱媒流路217(227)の流路にはバルブ242が設けられ、このバルブ242の開閉によりバルブ242の前後において熱媒流路217(227)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233の流路には、熱交換器232と管継手241との間にバルブ2143が設けられ、このバルブ243の開閉によりバルブ243の前後において熱媒流路233の連通・連通解除が行われる。
【0193】
また、流路接続部240内の熱媒流路217(227)の流路は、バルブ242と管継手241との間から排気流路216b(熱需要設備では226b)を介して真空ポンプ257に接続されている。更に、流路接続部240内の排気流路216b(226b)の流路にはバルブ244が設けられ、このバルブ244の開閉により熱媒流路217(227)と真空ポンプ257との連通・連通解除が行われる。
【0194】
次に、流路接続部250において、熱媒流路217(227)と熱媒流路233とは、管継手251によって接続・接続解除が行われる。また、流路接続部250内の熱媒流路217(227)の流路にはバルブ252が設けられ、このバルブ252の開閉によりバルブ252の前後において熱媒流路217(227)の連通・連通解除が行われる。一方、着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233の流路には、熱交換器232と管継手251との間にバルブ253が設けられ、このバルブ253の開閉によりバルブ253の前後において熱媒流路233の連通・連通解除が行われる。
【0195】
また、流路接続部250内の熱媒流路217(227)の流路は、バルブ252と管継手251との間から排気流路216b(226b)を介して真空ポンプ257に接続されている。また、流路接続部250内の排気流路216b(226b)の流路にはバルブ254が設けられ、このバルブ254の開閉により熱媒流路217(227)と真空ポンプ257との連通・連通解除が行われる。
【0196】
また、流路接続部250内の熱媒流路217(227)の流路は、バルブ252と管継手251との間から窒素ガス流路216c(熱需要設備では226c)を介して窒素ガスタンク216(熱需要設備では226)(図8において省略)に接続されている。更に、流路接続部250内の窒素ガス流路216c(226c)の流路にはバルブ256が設けられ、このバルブ256の開閉により熱媒流路217(227)と窒素ガスタンク216(226)との連通・連通解除が行われる。
【0197】
ここで、本第3実施形態に係る蓄熱管理システムにおいては、熱供給設備210から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器230に蓄熱する工程(ステップ21)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210から連通解除・接続解除する工程(ステップ22)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220に移送する工程(ステップ23)、移送後の着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220に接続・連通する工程(ステップ24)、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230から熱量Qを放熱して熱需要設備220に供給する工程(ステップ25)、放熱後の着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220から連通解除・接続解除する工程(ステップ26)、放熱後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210に移送する工程(ステップ27)、及び、移送後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210に接続・連通する工程(ステップ28)の各工程からなるサイクルを繰り返す。以下、これらの工程について説明する。
【0198】
≪ステップ21≫
ステップ21は、熱供給設備210から発生する熱量Qを着脱式蓄熱容器230に蓄熱する工程である。このステップ21は、上記第1実施形態におけるステップ1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0199】
≪ステップ22≫
ステップ22は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210から連通解除・接続解除する工程である。表5は、蓄熱工程(ステップ21)が終了した後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210から接続解除する各操作を示している。なお、表5においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表し、真空ポンプの作動状態を○、真空ポンプの停止状態を×で表す。
【0200】
【表5】
【0201】
表5において、操作41は着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233が熱供給設備210の熱媒流路217に接続され、熱媒流路233と熱媒流路217が連通して液体の熱媒体が循環している初期状態を示している。
【0202】
操作41の初期状態においては、熱媒流路233と熱媒流路217とが管継手241及び251により接続されている。また、熱媒流路233のバルブ243及び253、並びに、熱媒流路217のバルブ242及び252がいずれも開放されている。更に、排気流路216bのバルブ244及び254、並びに、窒素ガス流路216cのバルブ256がいずれも閉鎖され、真空ポンプ257が停止している。
【0203】
ステップ22における連通解除・接続解除の操作は、まず、操作42において、熱媒循環ポンプの作動を停止し、窒素ガス流路216cのバルブ256を開放する。このことにより、窒素ガスタンク216内の窒素ガスが窒素ガス流路216cを介して、バルブ242とバルブ243との間の熱媒流路(以下「配管接続部245」という)及びバルブ252とバルブ253との間の熱媒流路(以下「配管接続部255」という)、並びに、バルブ243とバルブ253との間の熱媒流路233(熱交換器232を含む)に導入される。
【0204】
この操作42は、配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内に充填された液体の熱媒体を排除する排液操作である。この操作42の窒素ガスの導入により、配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内の液体の熱媒体が窒素ガスによって押し戻され、これらの熱媒流路内の液体の熱媒体を完全に排除して窒素ガスに置換される。
【0205】
これらの熱媒流路内の液体の熱媒体が排除された段階で、続く操作43において、熱媒流路233のバルブ243及び253、並びに、熱媒流路217のバルブ242及び252を閉鎖する。これらの熱媒流路内の液体の熱媒体が排除されるタイミングを決定する方法は、特に限定するものではなく、例えば、窒素ガスの導入を開始してから液体の熱媒体が排除されるまでの時間を予め測定して決定するようにしてもよい。或いは、配管接続部245のバルブ242の外側及び配管接続部255のバルブ252の外側に液体センサーを配設して液体の熱媒体を検知しなくなった段階で管理するようにしてもよい。
【0206】
この段階において、配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内には、導入された窒素ガスが充填されている。このことにより、熱媒流路233内に空気或いは水分が浸入することを排除することができる。
【0207】
次に、操作44において、窒素ガス流路216cのバルブ256を閉鎖する。更に、操作45において、熱媒流路233と熱媒流路217とを接続する管継手241及び251を接続解除する。このことにより、着脱式蓄熱容器230が熱供給設備210から切り離され、この着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220の位置まで移送できる状態となる。
【0208】
≪ステップ23≫
ステップ23は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210から熱需要設備220に移送する工程である。このステップ23は、上記第1実施形態におけるステップ3と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0209】
≪ステップ24≫
ステップ24は、移送後の着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220に接続・連通する工程である。表6は、熱供給設備210から移送してきた着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220に接続する各操作を示している。なお、表6においては、管継手の接続状態を○、管継手の接続解除状態を×で表し、バルブの開放状態を○、バルブの閉鎖状態を×で表し、真空ポンプの作動状態を○、真空ポンプの停止状態を×で表す。
【0210】
【表6】
【0211】
表6において、操作51は、着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210から熱需要設備220まで移送し、熱需要設備220に接続する前の初期状態を示している(図8参照)。
【0212】
操作51の初期状態においては、熱媒流路233と熱媒流路227とが管継手241及び251の部分で接続解除された状態にある。また、熱媒流路233のバルブ243及び253、並びに、熱媒流路227のバルブ242及び252がいずれも閉鎖されている。更に、排気流路226bのバルブ244及び254、並びに、窒素ガス流路216cのバルブ256がいずれも閉鎖されている。
【0213】
この操作51の初期状態においては、着脱式蓄熱容器230の化学蓄熱材231は、蓄熱後の状態にあり、本第3実施形態においては、酸化カルシウム(CaO)となっている。この状態において、着脱式蓄熱容器230と熱需要設備220との接続・連通操作を行う。
【0214】
ステップ24における接続・連通の操作は、まず、操作52において、熱媒流路233と熱媒流路227とを管継手241及び251の部分で接続する。このことにより、着脱式蓄熱容器230が熱需要設備220に組み込まれ、熱需要設備220に熱量Qを供給する前段階となる。
【0215】
次に、操作53において、熱媒流路233のバルブ243及び253を開放する。更に、操作54において、排気流路226bのバルブ244及び254を開放すると共に、真空ポンプ257を作動して真空引きを行う。この操作54は、配管接続部245及び255に侵入した空気或いは水分、及び、熱媒流路233内に充填された窒素ガスを排除する排気操作である。
【0216】
このように、操作54における配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内の排気操作により、熱媒流路233と熱媒流路227とが連通して熱媒体が高温で循環する場合でも、熱媒体に空気或いは水分が混入することがなく、熱媒体の劣化を防止することができる。
【0217】
次に、操作55において、排気流路226bのバルブ244及び254を閉鎖すると共に、真空ポンプ257を停止する。この状態において、配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内は、真空状態に有りこれらの熱媒流路内に空気或いは水分が侵入することはない。
【0218】
次に、操作56において、熱媒流路227のバルブ242及び252を開放する。このことにより、配管接続部245及び255、並びに、熱媒流路233内に熱媒流路227から熱媒が流入し、着脱式蓄熱容器230の熱媒流路233と熱需要設備220の熱媒流路227とが連通し、液体の熱媒体が各流路内を循環できる状態になる。
【0219】
≪ステップ25≫
ステップ25は、蓄熱後の着脱式蓄熱容器230から熱量Qを放熱して熱需要設備220に供給する工程である。このステップ25は、上記第1実施形態におけるステップ5と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0220】
≪ステップ26≫
ステップ26は、放熱後の着脱式蓄熱容器230を熱需要設備220から連通解除・接続解除する工程である。このステップ26は、上述のステップ22と同様の操作をするものであり、ステップ22の熱供給設備210を熱需要設備220に置き換えたものである。
【0221】
≪ステップ27≫
ステップ27は、放熱後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210に移送する工程である。このステップ27は、上述のステップ23と同様の操作をするものである。
【0222】
≪ステップ28≫
ステップ28は、移送後の着脱式蓄熱容器230を熱供給設備210に接続・連通する工程である。このステップ28は、上述のステップ24と同様の操作をするものであり、ステップ24の熱需要設備220を熱供給設備210に置き換えたものである。
【0223】
以上説明したように、本発明においては、蓄熱容器への蓄熱、蓄熱容器の保管や移送及び蓄熱容器からの放熱の各段階において、熱媒流路内に熱媒体の劣化要因となる空気或いは水分などが混入することがなく、蓄熱温度及び放熱温度の温度域を広く確保すると共に効率的な熱保管や熱移送を実現できる蓄熱管理システムを提供することができる。
【0224】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態においては、いずれも、2つの蓄放熱設備を熱供給設備と熱需要設備とに区別し、熱供給設備から熱需要設備まで移送する熱移送(図1参照)について説明する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、1つの蓄放熱設備(熱供給設備であると共に熱需要設備でもある)において、1つ又は2つ以上の着脱式蓄熱容器を利用して熱保管(図2参照)を行うようにしてもよい。この場合には、熱需要設備の近傍に設けられた保管庫に複数の着脱式蓄熱容器を保管し、熱需要設備の必要に応じて熱供給するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、いずれも、熱供給設備が放出する廃熱の温度が400℃を超える高温であり、この高温の廃熱を利用するために化学蓄熱材として水酸化カルシウム系蓄熱材を採用するものであるが、これに限定されるものではなく、熱供給設備が放出する熱量の温度に合わせて化学蓄熱材の種類を適宜選定することにより、様々な温度領域の熱量に対しても本発明を適用することができる。
(3)上記各実施形態においては、いずれも、熱媒流路内の熱媒体を排除した状態で着脱式蓄熱容器を移送するが、これに限定されるものではなく、熱媒流路内に熱媒体を充填した状態で着脱式蓄熱容器を保管又は移送するようにしてもよい。この場合には、熱供給設備或いは熱需要設備との熱交換の際に熱媒体が維持する顕熱も保管又は移送することができる。
(4)上記各実施形態においては、いずれも、化学蓄熱材の脱水反応の際の凝縮器と水和反応の際の蒸発器を一体のものとした蒸発凝縮器を採用するが、これに限定するものではなく、これらの機器を別個の機器として採用するようにしてもよい。このように蒸発凝縮器を分離した機器とする場合には、熱供給設備において脱水反応の際の凝縮器を配し、熱需要設備において水和反応の際の蒸発器を配するようにしてもよい。
(5)上記各実施形態においては、いずれも、化学蓄熱材の脱水反応の際の凝縮器と水和反応の際の蒸発器を一体のものとした蒸発凝縮器を採用するが、これに限定するものではなく、熱供給設備において脱水反応の際の凝縮器を採用せず、化学蓄熱材の脱水反応で発生した水蒸気を着脱式蓄熱容器の外部にそのまま放出するようにしてもよい。一方、熱需要設備において水和反応の際の蒸発器を採用せず、施設内の水蒸気配管からの水蒸気を着脱式蓄熱容器の内部に直接供給するようにしてもよい。更に、水蒸気ではなく着脱式蓄熱容器の内部に反応水を直接供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0225】
10、20、110、120、210、220…蓄放熱設備(熱供給設備又は熱需要設備)、
30、130、230…着脱式蓄熱容器、31、131、231…化学蓄熱材、
11、111、211…熱供給部、21、121、221…熱需要部、
12、22、32、112、122、132、212、222、232…熱交換器、
13、23、113、123、213、223…蒸発凝縮器、
14、24、114、124、214、224…反応水タンク、
15、25、115、125、215、225…膨張タンク、
16、26、116、126…回収タンク、16a、16b、26a、26b、116a、116b、126a、126b…回収流路、
216、226…窒素ガスタンク、216c、226c…窒素ガス流路、
17、27、33、117、127、133、217、227、233…熱媒流路、
40、50、140、150、240、250…流路接続部、
41、51、141、151、241、251…管継手、
42、43、44、52、53、54、142、143、144、152、153、
154、156、242、243、244、252、253、254、256…バルブ、
45、55、145、155、245、255…配管接続部、
257…真空ポンプ、A…保管庫、熱量Q…熱量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8