(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッド摩耗決定部は、摩耗していない前記研磨パッドの表面高さと、摩耗した前記研磨パッドの表面高さとの差から前記研磨パッドの厚さの変化量を決定することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
前記パッド摩耗決定部は、摩耗していない前記研磨パッドを用いて第1の基板を研磨したときに取得された前記渦電流式膜厚センサの出力値と、摩耗した前記研磨パッドを用いて第2の基板を研磨したときに取得された前記渦電流式膜厚センサの出力値との偏差から前記研磨パッドの厚さの変化量を決定することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
前記位置調整装置は、前記センサコイルを移動させる移動装置と、前記研磨パッドの厚さの変化量に基づいて前記移動装置を操作する操作制御部とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、ウェハ上に形成された金属膜などの導電性膜を研磨する研磨工程が行われる。例えば、配線溝が形成された下地層上に金属膜を形成した後、化学的機械的研磨(CMP)を行って、余分な金属膜を除去することで金属配線を形成する。この研磨工程においては、所望のターゲット膜厚に到達した時点である研磨終点を検出するために、渦電流式膜厚センサを用いて導電性膜の膜厚を検出することが行われている。
【0003】
渦電流式膜厚センサは、導電性膜を感知するためのセンサコイルを有している。センサコイルは、研磨パッドを支持する研磨テーブル内部に配置されており、ウェハを研磨するために回転している研磨テーブルと共に回転する。センサコイルには高周波交流電流が流されており、センサコイルがウェハを横切る時に、高周波交流電流の影響でウェハの導電性膜に渦電流が発生する。渦電流式膜厚センサは、この渦電流によって形成される磁界の強さに従って変化するインピーダンスから膜厚指標値を取得する。
【0004】
ウェハは、研磨パッドに押し付けられながら研磨される。また、研磨パッドは、その研磨面(上面)を再生するために、定期的にドレッシングされる。したがって、研磨パッドは、ウェハの研磨および研磨パッドのドレッシングを繰り返すにつれて徐々に摩耗する。研磨パッドは渦電流式膜厚センサのセンサコイルとウェハとの間に介在しているので、研磨パッドが摩耗すると、センサコイルとウェハとの間の距離が変化する。この結果、膜厚指標値が変化してしまう。
【0005】
従来は、研磨パッドの摩耗に伴う膜厚指標値の変化を、ソフトウェア処理を行うことにより補正していた。しかしながら、このソフトウェア処理は、膜厚検出のための計算式を変更する必要が生じるなど、非常に複雑であるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、研磨パッドが摩耗しても、複雑なソフトウェア処理を行わずに基板の膜厚を正確に検出しながら基板を研磨することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けて、前記基板を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨テーブル
に設けられた窪み内に配置されたセンサコイルを有する渦電流式膜厚センサと、
前記窪みの上部を閉じ、前記センサコイルを覆う蓋体と、前記研磨パッドの厚さの変化量に基づいて前記センサコイルを前記研磨パッドから離間する方向に移動させる位置調整装置とを備え
、前記位置調整装置は前記窪み内に配置されていることを特徴とする研磨装置である。
【0009】
好ましい態様は、前記研磨パッドの厚さの変化量を決定するパッド摩耗決定部をさらに備えたことを特徴とする。
好ましい態様は、前記パッド摩耗決定部は、摩耗していない前記研磨パッドの表面高さと、摩耗した前記研磨パッドの表面高さとの差から前記研磨パッドの厚さの変化量を決定することを特徴とする。
好ましい態様は、前記パッド摩耗決定部は、摩耗していない前記研磨パッドを用いて第1の基板を研磨したときに取得された前記渦電流式膜厚センサの出力値と、摩耗した前記研磨パッドを用いて第2の基板を研磨したときに取得された前記渦電流式膜厚センサの出力値との偏差から前記研磨パッドの厚さの変化量を決定することを特徴とする。
好ましい態様は、前記位置調整装置は、前記センサコイルを移動させる移動装置と、前記研磨パッドの厚さの変化量に基づいて前記移動装置を操作する操作制御部とを有することを特徴とする。
好ましい態様は、前記移動装置は、前記センサコイルに連結されたボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するサーボモータとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の
一参考例は、研磨テーブル内に配置されたセンサコイルを有する渦電流式膜厚センサの出力値を取得しながら基板を研磨する方法であって、前記研磨テーブル上の研磨パッドの厚さの変化量に基づいてセンサコイルを前記研磨パッドから離間する方向に移動させ、その後、回転する前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに基板を押圧して、当該基板を研磨しながら、前記渦電流式膜厚センサの出力値を取得することを特徴とする。
好ましい態様は、前記研磨パッドの厚さの変化量を決定する工程をさらに含むことを特徴とする。
好ましい態様は、前記研磨パッドの厚さの変化量を決定する工程は、前記研磨パッドの表面高さを測定し、前記表面高さの測定値を前記研磨パッドの初期表面高さから減算することにより前記研磨パッドの厚さの変化量を決定する工程であることを特徴とする。
好ましい態様は、前記研磨パッドの厚さの変化量を決定する工程は、摩耗していない前記研磨パッドを用いて第1の基板を研磨し、前記第1の基板を研磨しているときの前記渦電流式膜厚センサの出力値を基準出力値として取得し、摩耗した前記研磨パッドを用いて第2の基板を研磨し、前記第2の基板を研磨しているときの前記渦電流式膜厚センサの出力値を調整出力値として取得し、前記基準出力値からの前記調整出力値の偏差を算出し、前記偏差を前記研磨パッドの厚さの変化量に変換する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨パッドが摩耗してその厚さが変化したとしても、センサコイルと基板との間の距離が変わらないように、センサコイルの位置が調整される。したがって、センサコイルと基板との間の距離が一定に保たれるので、渦電流式膜厚センサは基板の膜厚を正確に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の研磨方法について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル12と、支軸14の上端に連結された研磨ヘッド揺動アーム16と、研磨ヘッド揺動アーム16の自由端に取り付けられた研磨ヘッドシャフト18と、研磨ヘッドシャフト18の下端に連結された研磨ヘッド20と、を備えている。
図1においては図示しないが、研磨ヘッドシャフト18は、タイミングベルト等の連結手段を介して研磨ヘッド回転モータに連結されて回転駆動されるようになっている。この研磨ヘッドシャフト18の回転により、研磨ヘッド20が矢印で示す方向に研磨ヘッドシャフト18周りに回転するようになっている。
【0014】
研磨テーブル12は、テーブル軸12aを介してその下方に配置されるテーブル回転モータ70に連結されており、このテーブル回転モータ70により研磨テーブル12がテーブル軸12a周りに矢印で示す方向に回転駆動されるようになっている。この研磨テーブル12の上面には研磨パッド22が貼付されており、研磨パッド22の上面22aがウェハなどの基板を研磨する研磨面を構成している。
【0015】
研磨ヘッドシャフト18は、上下動機構24により研磨ヘッド揺動アーム16に対して上下動するようになっており、この研磨ヘッドシャフト18の上下動により研磨ヘッド20が研磨ヘッド揺動アーム16に対して上下動するようになっている。研磨ヘッドシャフト18の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0016】
研磨ヘッド20は、その下面にウェハを保持できるように構成されている。研磨ヘッド揺動アーム16は支軸14を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハを保持した研磨ヘッド20は、研磨ヘッド揺動アーム16の旋回によりウェハの受取位置から研磨テーブル12の上方に移動される。そして、研磨ヘッド20を下降させてウェハを研磨パッド22の上面(研磨面)22aに押圧する。ウェハの研磨中は、研磨ヘッド20および研磨テーブル12をそれぞれ回転させ、研磨テーブル12の上方に設けられた研磨液供給ノズル(図示せず)から研磨パッド22上に研磨液を供給する。このように、ウェハを研磨パッド22の研磨面22aに摺接させてウェハの表面を研磨する。
【0017】
研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド20を昇降させる昇降機構24は、軸受26を介して研磨ヘッドシャフト18を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ機構32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたACサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介して研磨ヘッド揺動アーム16に連結されている。
【0018】
ボールねじ機構32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。研磨ヘッドシャフト18は、ブリッジ28と一体となって昇降(上下動)するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ機構32を介してブリッジ28が上下動し、これにより研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド20が上下動する。
【0019】
この研磨装置は、研磨テーブル12の研磨面22aをドレッシングするドレッシングユニット40を備えている。このドレッシングユニット40は、研磨面22aに摺接されるドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51の上端に設けられたエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持するドレッサ揺動アーム55とを備えている。ドレッサ50の下面はドレッシング面50aを構成し、このドレッシング面50aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56はドレッサ揺動アーム55に固定されている。
【0020】
ドレッサ揺動アーム55は図示しないモータにより駆動されて、支軸58を中心として旋回するように構成されている。ドレッサシャフト51は、図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサシャフト51の回転により、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに矢印で示す方向に回転するようになっている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50を上下動させ、ドレッサ50を所定の押圧力で研磨パッド22の研磨面22aに押圧する。
【0021】
研磨パッド22の研磨面22aのドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサ50はドレッサシャフト51周りに回転され、図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面22aに供給される。ドレッサ50はエアシリンダ53により研磨面22aに押圧され、ドレッシング面50aを研磨面22aに摺接させる。さらに、ドレッサ揺動アーム55を、支軸58を中心として旋回させてドレッサ50を研磨面22aの半径方向に揺動させる。研磨パッド22はドレッサ50により削り取られ、これにより研磨面22aがドレッシング(再生)される。
【0022】
研磨装置は、このドレッサ50の鉛直方向の位置を利用して研磨パッド22の厚さの変化量、すなわち研磨パッド22の摩耗量を決定するパッド摩耗決定部65を備えている。このパッド摩耗決定部65は、パッド高さセンサ60およびパッド摩耗算出器47を有している。パッド高さセンサ60は、ドレッサ50の鉛直方向の位置から研磨パッド22の表面高さを間接的に測定するパッド高さ測定器である。研磨パッド22の表面高さとは、研磨パッド22の上面、すなわち研磨面22aの高さである。そして、この研磨パッド22の表面高さの変化量が研磨パッド22の厚さの変化量、すなわち研磨パッド22の摩耗量である。
【0023】
ドレッサシャフト51にはプレート61が固定されており、パッド高さセンサ60はプレート61に固定されている。ドレッサ50の上下動にともなって、プレート61およびパッド高さセンサ60が一体に上下動する。パッド高さセンサ60は、ドレッサ揺動アーム55の上面に対するプレート61の相対位置(すなわち、ドレッサ50の相対位置)を測定するように構成されている。
【0024】
エアシリンダ53を駆動すると、ドレッサ50、ドレッサシャフト51、プレート61、およびパッド高さセンサ60が一体に上下動する。一方、ドレッサ揺動アーム55の鉛直方向の位置は固定である。パッド高さセンサ60は、ドレッサ50が研磨パッド22の研磨面22aに接触しているときに、ドレッサ揺動アーム55の上面に対するドレッサ50の鉛直方向の相対位置を測定することにより、研磨パッド22の研磨面22aの高さを間接的に測定する。なお、この例では、パッド高さセンサ60として接触式パッド高さセンサが用いられているが、非接触式パッド高さセンサを用いてもよい。具体的には、リニアスケール、レーザ式センサ、超音波センサ、渦電流センサ、または距離センサなどをパッド高さセンサ60として用いることができる。
【0025】
研磨パッド22の厚さの変化量は、次のようにして求められる。まず、エアシリンダ53を駆動させてドレッサ50を、摩耗していない研磨パッド22の研磨面22aに当接させる。この状態で、パッド高さセンサ60はドレッサ50の初期位置(研磨パッド22の初期表面高さ)を測定し、パッド摩耗算出器47はそのドレッサ50の初期位置(研磨パッド22の初期表面高さ)の測定値を取得する。そして、一枚の、または複数枚のウェハの研磨処理が終了した後、再びドレッサ50を研磨面22aに当接させ、この状態でパッド高さセンサ60はドレッサ50の位置を再度測定する。パッド摩耗算出器47はそのドレッサ50の位置(すなわち、摩耗した研磨パッド22の表面高さ)の測定値を取得する。ドレッサ50は研磨パッド22の摩耗に従って下方に変位するため、パッド摩耗算出器47は、研磨パッド22の初期表面高さの測定値と、摩耗した研磨パッド22の表面高さの測定値との差から、研磨パッド22の厚さの変化量を決定することができる。
【0026】
通常、ドレッシングユニット40は、1枚のウェハを研磨するたびに研磨パッド22のドレッシングを行なう。ドレッシングは、ウェハ研磨の前または後、あるいはウェハの研磨中に実施される。また、ウェハ研磨の前または後、およびウェハの研磨中にドレッシングが実施される場合もある。研磨パッド22の厚さの変化量の算出には、いずれかのドレッシング時に取得されたパッド高さセンサ60の測定値が使用される。
【0027】
ドレッサ50は、ドレッサ揺動アーム55の揺動により、ドレッシング中研磨パッド22上をその半径方向に揺動する。研磨パッド22の表面高さの測定値は、パッド高さセンサ60からパッド摩耗算出器47に送られ、ここでドレッシング中の研磨パッド22の表面高さの測定値の平均が求められる。なお、1回のドレッシング動作につき、ドレッサ50は、1回または複数回研磨パッド22上を往復する。
【0028】
研磨装置は、ウェハWの膜厚を検出するための渦電流式膜厚センサ74を備えている。渦電流式膜厚センサ74は、センサコイル75と電流信号処理部76とを備えている。センサコイル75は、研磨テーブル12に埋設されており、研磨テーブル12と一体に回転する。電流信号処理部76は研磨テーブル12内に配置されてもよく、または研磨テーブル12外に配置されてもよい。
【0029】
渦電流信号処理部76はセンサコイル75に所定の高周波交流電流を流すように構成されている。このセンサコイル75がウェハWを横切る時に、センサコイル75に流れる高周波交流電流の影響でウェハWに形成された導電性膜に渦電流が発生する。電流信号処理部76は、この渦電流によって形成される磁界の強さに従って変化するインピーダンスから膜厚指標値を生成する。この膜厚指標値は、渦電流式膜厚センサ74の出力値である。以下の説明では、膜厚指標値を渦電流式膜厚センサ74の出力値ということがある。
【0030】
研磨テーブル12が回転するたびにセンサコイル75がウェハWの表面を走査するので、電流信号処理部76は、研磨テーブル12が回転するたびに膜厚指標値を取得する。この膜厚指標値は、ウェハWの導電性膜の厚さを直接的または間接的に示す値であり、ウェハWの導電性膜の厚さに従って変化する。したがって、電流信号処理部76は、この膜厚指標値に基づいてウェハWの研磨進捗を監視することができる。例えば、電流信号処理部76は、膜厚指標値が所定のしきい値に達した時点である研磨終点を決定することができる。
【0031】
研磨パッド22の厚さは、ウェハWの研磨および研磨パッド22のドレッシングを繰り返すにしたがって徐々に減少していく。研磨パッド22の厚さが減少すると、センサコイル75とウェハWとの間の距離も変化し、渦電流式膜厚センサ74の出力値(膜厚指標値)が変化する。そこで、研磨装置は、
図2および
図3に示されるように、研磨パッド22の厚さの変化に基づいて、センサコイル75の鉛直方向の位置を調整する位置調整装置77を有している。
図2は、
図1に示した研磨テーブル12の断面図であり、
図3は、センサコイル75および位置調整装置77を示す拡大図である。
【0032】
位置調整装置77は、センサコイル75を、研磨パッド22の厚さの変化量(研磨パッド22の摩耗量)に等しい距離だけ下方に移動させる。研磨パッド22の厚さの変化量は、上述したパッド高さセンサ60およびパッド摩耗算出器47から構成されるパッド摩耗決定部65により取得することができる。
【0033】
図3に示されるように、位置調整装置77は、センサコイル75を鉛直方向に移動させる移動装置78と、研磨パッド22の厚さの変化量に基づいて移動装置78を操作する操作制御部79とを有する。センサコイル75は、移動装置78に連結されている。センサコイル75および移動装置78は、研磨テーブル12に設けられた窪み13内に配置されている。この窪み13内に研磨液や純水などの処理液が浸入しないように、窪み13の上部は蓋体89で閉じられている。この蓋体89は、センサコイル75を覆うように設けられる。操作制御部79は、研磨テーブル12内に設けられてもよいし、研磨テーブル12外に設けられてもよい。
【0034】
図3に示される移動装置78は、ねじ軸80と当該ねじ軸80が螺合するナット81とを有するボールねじ機構83と、ナット81に下端が接続され、センサコイル75に上端が接続された複数のロッド85と、ねじ軸80を回転させるサーボモータ86と、ナット81が連結された直動ガイド87と、を備えている。図示した例では、ロッド85は2本設けられ、当該ロッド85を介して、センサコイル75がナット81に連結されている。直動ガイド87は、ナット81の上下動を許容するが、ナット81の回転は許容しないように構成されている。ナット81の上下動は直動ガイド87によってガイドされる。
【0035】
サーボモータ86を正逆方向に回転させることにより、ねじ軸80が正逆方向に回転し、ねじ軸80に螺合するナット81が直動ガイド87に沿って上下動する。したがって、ナット81にロッド85を介して連結されているセンサコイル75も、ナット81の上下動に伴って鉛直方向に移動する。これにより、センサコイル75の鉛直方向の位置を調整することが可能である。サーボモータ86とボールねじ機構83の組み合わせに代えて、エアシリンダを移動装置78として用いてもよく、または圧電素子を移動装置78として用いてもよい。
【0036】
パッド摩耗決定部65のパッド摩耗算出器47は操作制御部79に接続されており、研磨パッド22の厚さの変化量はパッド摩耗決定部65から操作制御部79に送られる。操作制御部79は移動装置78を操作して、移動装置78により、研磨パッド22の厚さの変化量に等しい距離だけセンサコイル75を研磨パッド22から離間する方向に移動(すなわち下降)させる。したがって、研磨パッド22の摩耗にかかわらず、センサコイル75とウェハWとの間の距離が一定に保たれる。結果として、研磨パッド22が摩耗しても、複雑なソフトウェア処理を用いたセンサキャリブレーションを行う必要がない。
【0037】
センサコイル75の位置調整は、ウェハが研磨される前に実行される。したがって、渦電流式膜厚センサ74は、研磨パッド22の摩耗に影響されない正確な膜厚測定値をウェハの研磨中に取得することができる。正確な膜厚測定値を取得するために、センサコイル75の位置調整は、1枚のウェハが研磨されるたびに実施されることが好ましいが、複数枚のウェハが研磨されるたびに実施されてもよい。
【0038】
パッド高さ測定器60を用いて研磨パッド22の厚さの変化量を実際に測定する上記実施形態以外にも、渦電流式膜厚センサ74の出力値と予め取得された基準出力値(基準膜厚指標値)の差から研磨パッド22の厚さの変化量を推定することも可能である。以下、基準出力値(基準膜厚指標値)を用いて研磨パッド22の厚さの変化量を推定する実施形態について説明する。
【0039】
図4は、基準出力値(基準膜厚指標値)を用いて研磨パッド22の厚さの変化量を推定する実施形態を説明する図である。この実施形態では、上述した実施形態のパッド摩耗決定部65に代えて、または追加して、パッド摩耗決定部90が設けられている。このパッド摩耗決定部90は、渦電流式膜厚センサ74の電流信号処理部76および位置調整装置77の操作制御部79に接続されている。
【0040】
この実施形態では次のようにして研磨パッド22の厚さの変化量が決定される。まず、所定の初期膜厚を有する第1のウェハ(第1の基板)が、摩耗していない研磨パッド22に押し付けられて研磨される。この第1のウェハを研磨しているときの渦電流式膜厚センサ74の出力値、すなわち膜厚指標値はパッド摩耗決定部90に送られる。パッド摩耗決定部90は、渦電流式膜厚センサ74の出力値を基準出力値(基準膜厚指標値)として取得する。この基準出力値はパッド摩耗決定部90に記憶される。第1のウェハは、基準出力値を取得するための専用基準ウェハ(基準基板)であってもよいし、または、同一膜厚を有する複数枚のウェハからなる1つのロッド内の最初に研磨されるウェハであってもよい。
【0041】
次に、第1のウェハと同じ初期膜厚を有する第2のウェハ(第2の基板)が、摩耗した研磨パッド22に押し付けられて研磨される。この第2のウェハを研磨しているときの渦電流式膜厚センサ74の出力値、すなわち膜厚指標値はパッド摩耗決定部90に送られる。パッド摩耗決定部90は、この渦電流式膜厚センサ74の出力値を調整出力値(調整膜厚指標値)として取得する。
【0042】
パッド摩耗決定部90は、基準出力値からの調整出力値の偏差を算出する。
図5は、基準出力値からの調整出力値の偏差を表すグラフである。
図5において、横軸が膜厚を表し、縦軸が渦電流式膜厚センサ74の出力値を表している。
図5から分かるように、研磨パッド22が摩耗した結果、ウェハが同じ初期膜厚を有していても、渦電流式膜厚センサ74の出力値が相違する。第1のウェハと第2のウェハは同じ初期膜厚を有しているので、初期膜厚における調整出力値の基準出力値からの偏差は、研磨パッド22の厚さの変化量に対応する。そこで、パッド摩耗決定部90は、調整出力値の基準出力値からの偏差を算出し、さらに、偏差を研磨パッド22の厚さの変化量に変換する。
【0043】
図6は、基準出力値からの調整出力値の偏差と、研磨パッド22の厚さの変化量との相関を示すグラフの一例を示す図である。渦電流式膜厚センサ74の出力は、当該渦電流式膜厚センサ74と計測対象物(すなわち、ウェハ)との距離が近くなると増加し、渦電流式膜厚センサ74と計測対象物との距離が遠くなると減少する。すなわち、研磨パッド22が摩耗した結果、計測対象物と渦電流式膜厚センサ74の距離が近くなると、渦電流式膜厚センサ74の出力は増加する。よって、基準出力値からの調整出力値の偏差と、研磨パッド22の厚さの変化量との相関は、例えば、計測対象物と渦電流式膜厚センサ74の距離のn乗(n:少数、整数)から導くことができる。パッド摩耗決定部90は、調整出力値の偏差と研磨パッド22の厚さの変化量との相関を示すデータテーブルまたは変換式を予め記憶しており、データテーブルまたは変換式を用いて偏差を研磨パッド22の厚さの変化量に変換する。このようにして得られた研磨パッド22の厚さの変化量は、操作制御部79に送られる。
【0044】
第2のウェハの研磨が終了した後、操作制御部79は移動装置78を操作して、移動装置78により、研磨パッド22の厚さの変化量に等しい距離だけセンサコイル75を研磨パッド22から離間する方向に移動(すなわち下降)させる。この状態で、次のウェハ(第3のウェハ)が研磨パッド22に押し付けられて研磨される。研磨パッド22の摩耗にかかわらず、センサコイル75とウェハWとの間の距離は一定に保たれるので、渦電流式膜厚センサ74は、研磨パッド22の摩耗に影響されない正確な膜厚測定値をウェハの研磨中に取得することができる。
【0045】
このように、ウェハを1枚研磨するたびに、パッド摩耗決定部90は、初期膜厚における調整出力値を渦電流式膜厚センサ74から取得し、この取得された膜厚指標値と基準膜厚指標値との間の偏差を計算し、偏差を研磨パッド22の厚さの変化量に変換する。そして、次のウェハが研磨される前に、センサコイル75は、研磨パッド22の厚さの変化量に等しい距離だけ、上述した移動装置78により移動させられる。
【0046】
複数枚のウェハを研磨するたびに、研磨パッド22の厚さの変化量を決定し、センサコイル75の位置を調整してもよい。
【0047】
次に、渦電流式膜厚センサ74についてより詳細に説明する。
図7は、渦電流式膜厚センサ74を示す模式図である。この渦電流式膜厚センサ74は、センサコイル75と、このセンサコイル75に接続される交流電源103と、センサコイル75を含む電気回路の抵抗成分X,誘導リアクタンス成分Yを検出する同期検波部105とを有している。交流電源103と同期検波部105とは、電流信号処理部76に設けられている。導電性膜mfは、例えばウェハW上に形成された銅、タングステン、タンタル、チタニウムなどの導電材料からなる薄膜である。センサコイル75と導電性膜mfとの距離Gは、例えば0.5mm〜5mmに設定される。
【0048】
図8は、
図7に示す渦電流式膜厚センサ74のセンサコイル75の構成例を示す。センサコイル75は、ボビン111に巻回された3層のコイル112,113,114により構成されている。中央のコイル112は、交流電源103に接続される励磁コイルである。この励磁コイル112は、交流電源103より供給される交流電流により磁界を形成し、ウェハW上の導電性膜に渦電流を発生させる。励磁コイル112の上側(導電性膜側)には、検出コイル113が配置され、導電性膜を流れる渦電流により発生する磁束を検出する。検出コイル113と反対側にはバランスコイル114が配置されている。
【0049】
コイル113,114は、同じターン数(1〜500)のコイルにより形成されることが好ましいが、コイル112のターン数は特に限定されない。検出コイル113とバランスコイル114とは互いに逆相に接続されている。導電性膜が検出コイル113の近傍に存在すると、導電性膜中に形成される渦電流によって生じる磁束が検出コイル113とバランスコイル114とに鎖交する。このとき、検出コイル113のほうが導電性膜に近い位置に配置されているので、両コイル113,114に生じる誘起電圧のバランスが崩れ、これにより導電性膜の渦電流によって形成される鎖交磁束を検出することができる。
【0050】
図9は、渦電流式膜厚センサ74の詳細な構成を示す模式図である。交流電源103は、水晶発振器からなる固定周波数の発振器を有しており、例えば、1〜50MHzの固定周波数の交流電流をセンサコイル75に供給する。交流電源103で形成された交流電流は、バンドパスフィルタ120を介してセンサコイル75に供給される。センサコイル75の端子から出力された信号は、ブリッジ回路121および高周波アンプ123を経て、cos同期検波回路125およびsin同期検波回路126からなる同期検波部105に送られる。ここで、交流電源103で形成される発振信号からは、位相シフト回路124により交流電源103の同相成分(0゜)と直交成分(90゜)の2つの信号が形成され、それぞれcos同期検波回路125とsin同期検波回路126とに導入される。そして、同期検波部105によりインピーダンスの抵抗成分と誘導リアクタンス成分とが取り出される。
【0051】
同期検波部105から出力された抵抗成分と誘導リアクタンス成分からは、ローパスフィルタ127,128により不要な高周波成分(例えば5kHz以上の高周波成分)が除去され、インピーダンスの抵抗成分としての信号Xと誘導リアクタンス成分としての信号Yとがそれぞれ出力される。さらに、ベクトル演算回路130により、X信号とY信号とから、インピーダンスZ[Z=(X
2+Y
2)
1/2]が得られる。また、θ処理回路131により、同様にX信号とY信号とから、位相出力θ[θ=tan
−1Y/X]が得られる。ベクトル演算回路130から出力されるインピーダンスZが、膜厚に従って変化する上記膜厚指標値である。
【0052】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。