特許 6263810 透過模様印刷物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6263810

(24)【登録日】2018年1月5日

(45)【発行日】2018年1月24日

(54)【発明の名称】透過模様印刷物

(51)【国際特許分類】

   B41M 3/14 20060101AFI20180115BHJP

   B42D 25/378 20140101ALI20180115BHJP

   B42D 25/333 20140101ALI20180115BHJP

【ＦＩ】

   B41M3/14

   B42D15/10 378

   B42D15/10 333

【請求項の数】4

【全頁数】15

(21)【出願番号】特願2014-98403(P2014-98403)

(22)【出願日】2014年5月12日

(65)【公開番号】特開2015-214091(P2015-214091A)

(43)【公開日】2015年12月3日

【審査請求日】2016年9月7日

(73)【特許権者】

【識別番号】303017679

【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局

(72)【発明者】

【氏名】森永 匡

【審査官】 島▲崎▼ 純一

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１４−０５１０７３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−２１９５２７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開昭５８−２２５１７１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００５−３２９７０６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ４１Ｍ ３／１４

Ｂ４２Ｄ ２５／３３３

Ｂ４２Ｄ ２５／３７８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

基材上の少なくとも一部の光透過性を有する領域に、反射光下で等色の重畳領域と第一の領域から成る印刷模様を備え、
前記重畳領域は、前記第一の領域より反射光下で明度が高い第二の領域と、前記第二の領域と同一形状、かつ、同じ大きさであり、有色浸透インキで形成された浸透領域が積層されて成り、
透過光下において、前記重畳領域が前記第一の領域との光透過性の差により、前記第一の領域より明度の高い色彩となって、前記印刷模様が視認できることを特徴とする透過模様印刷物。

【請求項2】

前記第二の領域の彩度は、前記第一の領域より高いことを特徴とする請求項１記載の透過模様印刷物。

【請求項3】

前記浸透領域の明度は、前記第一の領域と前記第二の領域の明度の差であることを特徴とする請求項１又は２記載の透過模様印刷物。

【請求項4】

反射光下で異なる色彩の前記印刷模様が複数配置され、前記複数の印刷模様がそれぞれ有する前記浸透領域は、同じ有彩色の前記有色浸透インキで形成され、
前記複数の印刷模様がそれぞれ有する色彩は、前記有彩色の色彩と共通する色成分を有することを特徴とする請求項１乃至３のいずれか一項記載の透過模様印刷物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、反射光下と透過光下で画像の一部の色彩が変化する透過模様印刷物に関わるものである。

【背景技術】

【0002】

近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのため、前述したような複製や偽造を防止するため、プリンタやコピー機では再現不可能な様々な偽造防止技術が必要とされている。

【0003】

この偽造防止技術の一つとして、用紙の薄厚や繊維の粗密によって模様を形成して透過光下で視認させる、いわゆる透かし技術が存在する。この透かし技術は、一定量以上の光さえ存在すれば、あらゆる環境下で真偽判別が可能な技術であり、また、知名度も抜群に高いことから、古くから存在する古典的な技術であるにも関わらず、今なお世界中の銀行券で用いられている。

【0004】

透かし技術は、用紙の製造段階で形成する必要があることから、用紙メーカでなければ製造不可能であり、加えて用紙メーカが製造した場合でも製造コストが高くなるという問題があることから、これを擬似的に再現する方法として、印刷工程で特殊な浸透型インキを用いて、この透かしに相当する透過画像を印刷で形成する偽造防止技術が存在する（例えば、特許文献１参照）。

【0005】

しかしながら、浸透型インキを用いて透過光下で透かしのような透過画像を認証する透かし印刷を用いた偽造防止技術に関しては、浸透型インキ自体が多くのメーカから市販されており、一般人であっても容易に入手可能であることから、偽造者にとっても作製が容易であるという問題があった。

【0006】

このような問題を解決するために、本出願人はすでに、反射光下では等色に観察されるが、透過率が異なる二つのインキをペアインキとして用いて印刷画像を形成する技術であって、反射画像と透過画像を形成してなる真偽判別と偽造防止効果に優れた透過潜像印刷物を出願している（例えば、特許文献２、特許文献３参照）。

【0007】

また、本出願人は、浸透型インキに着色顔料を混合した有色浸透インキと、有色浸透インキと等色な反射インキをペアインキとして、特殊で複雑な網点構成によって画像を形成する印刷物であって、反射光下で観察できる画像と透過光下で観察できる画像とが全く相関のない異なる画像であることを特徴とする透過潜像印刷物をすでに出願している（例えば、特許文献４参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】特開平６−２２８９００号公報

【特許文献2】特許第５２３３０５７号公報

【特許文献3】特許第５３１５５８０号公報

【特許文献4】特開２０１２−２２３９０５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

特許文献２から特許文献４に記載の技術はすべて、一色を表現するのに、有色インキとそれと同じ色彩の有色浸透インキという二つのインキを用いて形成する技術であるため、仮に複数の異なる色を有する透過潜像印刷物を作製するためには、その色数と同じ数の有色浸透インキが必要となる。よって、用いるインキは、「色数×２」分の数だけ必要となる。仮に赤、青、黄の色相の異なる三色で印刷模様（３）が構成され、それぞれの色が透過光下では別の色に区分けされて観察できるような構成としたならば、印刷模様（３）を形成するためだけに「三色×２」で六色のインキが必要となり、この場合、六個の印刷ユニットを備えた六色印刷機でなければ一回でこの印刷模様（３）を形成することはできないという問題があった。

【0010】

一方で、印刷機が一度に使用できるインキの色数には当然のことながら制約があり、例えば、セキュリティ印刷物を印刷するために四色印刷機を用いた場合、この潜像画像を印刷するためだけに、等色ペアインキを使用しなければならず、同じ色彩のインキによって二色分のユニットが占有される。そのため、現実的には単色構成に制限されるという問題があった。

【0011】

加えて、特許文献２から特許文献４に記載の技術で用いる等色ペアインキは、それぞれの技術の効果を高める上で、等色ペアインキは極端に淡い色彩であることが要求される。等色ペアインキが極端に淡い色彩である場合には、潜像画像以外のセキュリティ印刷物に必要とされる他の印刷要素、例えば、地紋模様や彩紋、文字、マーク、記号、記載事項等への流用も困難である。そのため、一般的な四色印刷機を使用した場合には、このような専用のペアインキによって印刷機の印刷胴を少なくとも２胴も占有してしまうため、潜像画像以外の領域を二種類の色ですべて形成する必要がある。

【0012】

例え機能が優先されるセキュリティ印刷物であっても、印刷物上の色数が多く、色鮮やかな表現が成されたものがより見栄えが良いことはいうまでもなく、潜像画像の形成にあたって、前述したように流用の効かない極端に淡い二種類のインキを使用しなければならないことは、セキュリティ印刷物全体としての色彩設計上の大きな負荷となっていた。

【0013】

本発明は、前述した課題の解決を目的とし、反射光下で等色に観察でき、透過光下で部分的に色彩が変化する印刷模様を有する印刷物であって、色彩が淡い濃度に制限されることなく、デザイン上や製造上の自由度が高い透過模様印刷物を提供するものである。さらに、印刷模様の色数が増えたとしても、一種類の有色浸透インキを用いて、「色数＋１」分の数のインキで形成可能な透過模様印刷物を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0014】

本発明における透過模様印刷物は、基材上の少なくとも一部の光透過性を有する領域に、反射光下で等色の重畳領域と第一の領域から成る印刷模様を備え、重畳領域は、第一の領域より反射光下で明度が高い第二の領域と、第二の領域と同一形状、かつ、同じ大きさであり、有色浸透インキで形成された浸透領域が積層されて成り、透過光下において、重畳領域が第一の領域との光透過性の差により、第一の領域より明度の高い色彩となって、印刷模様が視認できることを特徴とする。

【0015】

また、透過模様印刷物の第二の領域の彩度は、第一の領域より高いことを特徴とする。

【0016】

また、透過模様印刷物の浸透領域の明度は、第一の領域と第二の領域の明度の差であることを特徴とする。

【0017】

さらに、透過模様印刷物は、反射光下で異なる色彩の印刷模様が複数配置され、複数の印刷模様がそれぞれ有する浸透領域は、同じ有彩色の有色浸透インキで形成され、複数の印刷模様がそれぞれ有する色彩は、有彩色の色彩と共通する色成分を有することを特徴とする。

【発明の効果】

【0018】

本発明の透過模様印刷物は、複数の異なる色を有する印刷模様を形成する場合に、従来技術のように、それぞれの色ごとにペアインキを用いるのではなく、着色画像を形成するインキと、透過効果を担うインキとして、インキの役割を完全に分けた構成であるため、従来技術のように「色数×２」の数ではなく、「色数＋１」の数のインキがあれば良い。このため、従来の技術よりも印刷模様を多色構成とすることが容易となった。

【0019】

本発明の透過模様印刷物は、極端に濃度が淡くなくとも充分な効果を発揮するため、印刷模様の色彩については自由に設計することができる。また、少なくともペアインキのうちの一方のインキは、通常濃度を有した一般的な着色インキを使用することができる。そのため、印刷模様を形成した着色インキを、セキュリティ印刷物の中の印刷模様が付与された以外の領域にも流用することができ、セキュリティ印刷物全体としても色彩豊かなデザインとすることができる。

【0020】

以上の手法で形成した透過模様印刷物は、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしても透過画像の再現は不可能であることから、偽造防止効果に優れる。また、特別な道具を用いることがなく透かすだけで認証できるため、判別性に優れる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】本発明における透過模様印刷物を示す。

【図2】本発明における透過模様印刷物の構成の概要を示す。

【図3】本発明における透過模様印刷物の層構造の一例を示す。

【図4】（ａ１）及び（ａ２）は、本発明における透過模様印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ１）及び（ｂ２）は、本発明における透過模様印刷物が透過光下で視認される画像を示す。

【図5】本発明における透過模様印刷物を示す。

【図6】本発明における透過模様印刷物の構成の概要を示す。

【図7】（ａ１）及び（ａ２）は、本発明における透過模様印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ１）及び（ｂ２）は、本発明における透過模様印刷物が透過光下で視認される画像を示す。

【発明を実施するための形態】

【0022】

本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
（第一の実施の形態）

【0023】

図１に、本発明における透過模様印刷物（１）を示す。透過模様印刷物（１）は、基材（２）の上の少なくとも一部の領域（Ｚ）に、基材（２）と異なる色を有する印刷模様（３）が形成されて成る。

【0024】

本発明における透過模様印刷物（１）を構成する基材（２）の上の少なくとも一部の領域（Ｚ）は、上質紙やコート紙、透明フィルムやプラスティックのように、光を透過する特性、いわゆる光透過性を有する必要がある。不透明なプラスティックや金属では透過光下での効果は得られない。基材（２）や印刷模様（３）の色彩については特に制約はない。また、少なくとも印刷模様（３）が形成される領域（Ｚ）が光透過性を有していれば、基材（２）は光透過性を有しなくてもよく、さらには、基材（２）自体が光透過性を有していても良い。以下、基材（２）自体が光透過性を有するとして説明する。

【0025】

図２に、印刷模様（３）の構成の概要を示す。印刷模様（３）は、第一の領域（４）と重畳領域（５）を有する。本実施の形態において、印刷模様（３）は桜の花びら全体を表し、第一の領域（４）は三つの花びら、重畳領域（５）は二つの花びらを表して成る。印刷模様（３）は、基材（２）と異なる色彩を有していれば、透明以外の如何なる色彩であっても良い。

【0026】

本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、後述する「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域（４００〜７００ｎｍ）の特定の波長の強弱の分布を示すものである。本発明における「色相が同じ」とは、二つの色において赤、青、黄といった色の様相が一致し、可視光領域の波長の強弱の分布が二つの色において相関を有することであり、以下説明を省略する。

【0027】

反射光下において、第一の領域（４）と重畳領域（５）は等色に観察される。本発明でいう等色とは、観察者が注意を払わずに領域を一瞥した場合に、同じ色彩であると感じられる程度に二つの色彩が近い状態を指すこととする。具体的には色差ΔEが９以下の数値までを本発明上の等色と定義する。

【0028】

第一の領域（４）と重畳領域（５）とは、それぞれ構成するインキが異なる。第一の領域（４）は、透明以外の、基材（２）と異なる色彩の通常の着色インキのみで形成されて成り、一方の重畳領域（５）は二つの色彩の異なるインキの重ね合わせによって形成されて成る。

【0029】

第一の領域（４）は、網点面積率１００％の、いわゆるベタ刷りや、ハーフトーンからハイライトの低い網点面積率から成る画像や万線（直線、曲線、波線、点線や破線の分断線等）で形成しても良い。以降の実施の形態に記載する印刷模様（３）を構成する各領域についても同様であるため説明は省略する。

【0030】

印刷模様（３）の重畳領域（５）は、図２に示すように、浸透領域（６）と第二の領域（７）が重畳して成る。浸透領域（６）と第二の領域（７）は、重畳領域（５）とそれぞれ同一形状で、かつ同じ大きさである。一方の第一の領域（４）は、浸透領域（６）と重なることはない。

【0031】

印刷模様（３）の第一の領域（４）と重畳領域（５）とは、反射光下において同じ色彩である必要があることから、浸透領域（６）と第二の領域（７）とを重畳した場合に、第一の領域（４）と同じ色彩となるように色彩設計する必要があり、具体的には浸透領域（６）の色彩と、第二の領域（７）の色彩とを減法混色した場合に、第一の領域（４）の色彩と同じとなる構成とする必要がある。

【0032】

浸透領域（６）は、透明以外の色彩を有する必要があり、浸透型インキに着色染料や着色顔料を混合したインキを用いた有色浸透インキで形成する必要がある。有色浸透インキとは、印刷した領域が透過光下で透けて見える（非印刷部よりも明度が高く観察される）効果を有する浸透成分を含む浸透型インキに、色材を混合することで形成したインキである。以下にこの有色浸透インキについて具体的に説明する。

【0033】

この有色浸透インキとは、基材（２）に印刷した場合に、反射光下では、はっきりと視認できる色彩を有した領域を形成できる一方、透過光下では、その領域を極端に淡く変化させる効果を有する。言い換えると、通常の着色インキと比較して、「透かすと領域がより淡く見える」効果を有したインキである。有色浸透インキは、浸透成分と色材とを含んで構成され、浸透成分が基材（２）内部の光の散乱を抑制することで生じさせる透過率の上昇によって、領域が淡く見える効果を実現している。

【0034】

浸透成分が透かしインキとして一般に販売されているインキに相当する程度の性能を備えていれば、一定量の色材を混合して「透かすと領域が淡く見える」効果を有する有色浸透インキとすることは可能である。有色浸透インキに混合する色材は、着色顔料や着色染料として販売されている印刷色材を用いれば良い。印刷物として市場に流通させることを目的とすると、長期にわたる堅牢性が得られやすい着色顔料を用いることが望ましい。

【0035】

なお、本発明における浸透成分とは、印刷時に用紙内部へと浸透して印刷領域の透過率を上昇させる働きを成す成分のことを指し、具体的には、セルロースの屈折率（１．４９）に近い樹脂やワックス、動植物油等を指す。これらの成分は、印刷した場合に用紙の中に存在するセルロース繊維間の空隙を埋め、主として用紙内部における光の散乱を抑制することで光の透過率を上げる働きを成す。

【0036】

また、有色浸透インキの色彩を灰色から黒色までの無彩色とした場合、透過時の色変化は最も大きくなる。有色浸透インキで形成した領域は、透かすと明度が上昇する効果を有するが、色相を変化させる効果はないため、仮に青色の有色浸透インキで形成した領域は透かすと水色には変化するものの、透過光下では必ず青味が視認され、領域が完全に消失する効果を得るまでには至らない。

【0037】

しかし、無彩色である灰色や黒色の場合、色彩が明度の差だけで表現されているために、透過時に領域の明度が上昇すれば色味が残らず、条件が整えば領域全体が消失するまでの効果を実現することができる。以上のように、仮に領域全体が消失するまでに至らなくても、有色浸透インキの色彩を灰色から黒色の無彩色とした場合の色変化は有彩色と比較して極めて大きく感じられるため、本発明の効果を高める上ではより望ましい。

【0038】

なお、本発明における「浸透型インキ」とは、前述した浸透成分を含み、主に透かしインキとして販売されているインキを指す。このようなインキとしては、株式会社Ｔ＆Ｋ ＴＯＫＡ製ベストワン透かしインキ、帝国インキ製造株式会社製ユニマーク、東洋インキ株式会社製ＳＭＸすかしインキ、合同インキ株式会社製Ｅ２ニス等が存在する。また、グロスニスやオーバーコートニスのような透明なインキでも粘度が低ければ一定の浸透効果を発揮する。本発明の有色浸透インキは、これらのインキを用いても作製可能である。以上が有色浸透インキの説明である。

【0039】

第一の領域（４）と重畳領域（５）とは、反射光下において同じ色彩であり、かつ重畳領域（５）を構成する二つの領域のうちの一つである浸透領域（６）は、透明以外の色彩を有することから、第二の領域（７）は、第一の領域（４）よりも明度の高い色彩を有する必要がある。これは、二つの色彩を減法混色して出来上がる色彩は、必ず明度が低下した色彩となるため、結果として明度の低い色彩となるためである。

【0040】

よって、重畳領域（５）を構成する、浸透領域（６）及び第二の領域（７）が、いずれも有彩色の場合、第一の領域（４）よりも第二の領域（７）を明度の高い色彩としていなければ、第二の領域（７）と浸透領域（６）が重なった場合に、第一の領域（４）と重畳領域（５）を等色とすることは不可能である。

【0041】

なお、重畳領域（５）を構成する、浸透領域（６）及び第二の領域（７）が、いずれも灰色、黒等の無彩色の場合、彩度の影響がない。よって、第一の領域（４）よりも第二の領域（７）の明度を高い色彩とする必要はない。ただし、二つの色彩のいずれかが有彩色の場合、当然のことながら、異なる色彩同士の減法混色では彩度も低下するため、第一の領域（４）よりも第二の領域（７）を彩度の高い色彩とする。

【0042】

第二の領域（７）と浸透領域（６）の積層順には制約はないが、浸透領域（６）に用いる浸透成分によっては重ね刷りをしたインキを受理せず、トラッピング不良が発生する可能性があることから、図３に示すように、基材（２）上に形成した第二の領域（７）の上に浸透領域（６）を重ねる順序に印刷することが望ましい。

【0043】

また、第一の領域（４）と第二の領域（７）は、反射光下において明度が異なるが、これは、同じインキを使って形成しても、全く別のインキを使って形成しても良い。例えば、明度の低いインキを用いて第一の領域（４）を形成し、明度の高いインキを用いて第二の領域（７）を形成しても良い。

【0044】

一方、現実的な生産を考えると、コスト面、管理面から印刷模様（３）の形成に用いるインキの数は当然のことながら少ないほうが良いため、同じインキを用いて面積率を変えることで第一の領域（４）と第二の領域（７）の明度の違いを表現しても良い。例えば、同じインキを用いた場合でも、第一の領域（４）は高い面積率で構成して明度を低く形成し、第二の領域（７）は低い面積率で構成して明度を高く形成しても良い。

【0045】

また、別な方法として、同じインキを用いて同じ面積率で第一の領域（４）と第二の領域（７）を形成し、第一の領域（４）の上にだけ、別な色のインキを重ね合わせて第一の領域（４）の明度を低くし、第一の領域（４）と第二の領域（７）の明暗の違いを表現しても良い。例えば、第一の領域（４）と第二の領域（７）を同じインキを用いて同じ色彩で形成したのち、浸透領域（６）と同じ色彩を有する通常の着色インキを用いて第一の領域（４）の上に刷り重ねて、第一の領域（４）の明度を低くしても良い。

【0046】

また、有色浸透インキで形成する浸透領域（６）の明度を、第一の領域（４）と第二の領域（５）の明度の差に相当する明度とすることで、第一の領域（４）と第二の領域（５）とが、反射光下において等しい色彩としている。仮に、第一の領域（４）の明度がＬ＊で５０であって、第二の領域（５）の明度がＬ＊で７０であれば、浸透領域（６）の明度はその差にあたるＬ＊２０とすれば良い。浸透領域（６）の明度Ｌ＊２０を、第一の領域（４）の明度Ｌ＊で５０と第二の領域（５）の明度Ｌ＊で７０の差に相当する明度とすることで、浸透領域（６）の上に第二の領域（５）を刷り重ねた場合、減法混色により、反射光下において、第一の領域（４）と重畳領域（５）は等しい色彩で視認することが可能となる。

【0047】

以上の構成で形成した透過模様印刷物（１）の効果を図４に説明する。図４（ａ１）に示すように、透過模様印刷物（１）を反射光下で観察した場合、観察者（９）には、第一の領域（４）と重畳領域（５）とが等色に視認され、印刷模様（３）全体が同じ色彩で視認される。

【0048】

また、図４（ｂ１）に示すように、透過模様印刷物（１）を透過光下で観察した場合、観察者（９）には、第一の領域（４）と重畳領域（５）とが異なる色彩に視認され、印刷模様（３）が区分けされて視認される。具体的には、第一の領域（４）は明度が低い色彩で、重畳領域（５）はより明度の高い色彩で視認される。

【0049】

以上のように本発明の透過模様印刷物（１）は、観察条件に応じて、印刷模様（３）中の第一の領域（４）と重畳領域（５）が等色となり、もしくは第一の領域（４）と重畳領域（５）が異色となる効果を有する。

【0050】

なお、本発明における「反射光下での観察」とは、図４（ａ２）に示すように、観察者の視点（９）が、光源（８）の正反射光がほとんど存在しない領域中にあって透過模様印刷物（１）を可視光下で観察している状況を示しており、本発明における「透過光下での観察」とは、図４（ｂ２）に示すように、観察者の視点（９）が、光源（８）の透過光下の領域中にあって透過模様印刷物（１）を観察している状況を示している。

【0051】

本発明の第一の実施の形態における透過模様印刷物（１）の最大の特徴は、明暗の異なる二つの領域、すなわち明度の低い色彩の第一の領域（４）と明度の高い色彩の第二の領域（５）のうちの明度の低い色彩の第一の領域（４）に、二つの領域とは色相の異なる有色浸透インキからなる浸透領域（６）を重ね合わせて形成した重畳領域（５）を、明度の低い色彩の第一の領域（４）と等色とすることにある。このように、非等色なインキを用いて等色な印刷模様（３）を形成する主な二つの理由について以下に記す。

【0052】

非等色なインキを用いて等色の印刷模様（３）を構成する二つの理由のうち、一つについて以下に説明する。発明が解決しようとする課題でも触れたが、従来のような等色ペアインキで印刷模様（３）を形成する場合、印刷模様（３）が異なる複数の色によって表現されていれば、「色数×２」の数のインキが必要となる。

【0053】

一方、本発明の構成を用いれば、「色数＋１（有色浸透インキ）」の数のインキで同じ印刷模様が構成可能となる。仮に赤、青、黄の色相の異なる色で印刷模様（３）が構成され、それぞれの色が透過光下では別の色に区分けされて観察できるような構成としたならば、「三色＋１色（有色浸透インキ）」の４色のインキで同じ印刷模様（３）が構成可能であり、４色印刷機で印刷することができる。また、前述した従来の構成より用いるインキの種類が少ないことから、コストも低くなり、品質管理の負荷も減るというメリットがある。これが従来のように等色ペアインキを用いず、非等色なインキを用いて構成する理由の一つであり、同じ色数の印刷模様（３）を表現するのであれば、特に色数が多いほどその特徴が活かせる。

【0054】

続いて、非等色なインキを用いて等色の印刷模様（３）を構成する二つの理由のうち、もう一つの理由について以下に説明する。引用文献２から引用文献４までに挙げた潜像印刷物を印刷する場合、用いる等色ペアインキは、いずれも極めて淡い濃度であるために潜像画像以外の他の部分への流用も難しい。さらには、このような専用のペアインキによって印刷機の印刷胴を少なくとも２胴も占有してしまうため、潜像画像以外に使用できる色数が限定され、セキュリティ印刷物全体の色彩をデザインする上で大きな制約となっていた。

【0055】

本技術では、印刷模様（３）の形成にあたって、第一の領域（４）及び第二の領域（７）の形成に用いる通常の着色インキと、浸透領域（６）の形成に用いる有色浸透インキとは、色彩だけでなく、色相さえも同じである必要がなく、全く異なる色の非等色なインキを用いることで、この問題を解決した。

【0056】

具体的には、二つのインキを、第一の領域（４）及び第二の領域（７）である着色画像を形成するインキと、浸透領域（６）を形成する透過効果を担うインキとして、それぞれの役割を完全に分け、第一の領域（４）と第二の領域（７）をそれぞれ形成する非等色なインキのうち、少なくとも一方の領域を形成するインキを、通常の着色インキを一般のインキと同じ程度の濃度のインキとすることで、このインキは印刷模様（３）以外のセキュリティ印刷物に必要とされる他の印刷要素、地紋模様や彩紋、文字、マーク、記号、記載事項等への流用することが可能となった。このような構成を用いることで、従来の技術と比較して印刷胴は１胴余るため、他の任意の色を用いることができる。これが非等色なインキを用いて構成するもう一つの理由である。

【0057】

本発明の透過模様印刷物（１）を形成する場合に、それぞれのインキに脱刷や印刷不良等の発生の有無を見極めることを目的又は真偽判別性の向上を目的として、蛍光顔料や蛍光染料、燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料や発光染料、赤外線吸収材料や赤外反射材料等の機能性材料を添加しても何ら問題ない。

【0058】

本発明の透過模様印刷物（１）の印刷方式は、オフセット印刷で十分な効果を発揮するが、製造者のシーズに応じてフレキソ印刷やグラビア印刷、凹版印刷やスクリーン印刷等で形成しても良く、ＩＪＰやレーザープリンタを用いて形成しても良い。また、第一の領域（４）と第二の領域（７）はプリンタを用いて形成し、浸透領域（６）のみ印刷で形成する方法を用いても何ら問題ない。

【0059】

第一の実施の形態における透過模様印刷物（１）は単一の色彩で構成されたシンプルな印刷模様（３）であったが、第二の実施の形態では、多色で構成された色彩豊かな印刷模様（３）の透過模様印刷物（１）について説明する。
（第二の実施の形態）

【0060】

図５に、第二の実施の形態における透過模様印刷物（１´）を示す。透過模様印刷物（１´）は、基材（２´）上の少なくとも一部の光透過性を有する領域（Ｚ´）に、反射光下において基材（２´）と異なる複数の色彩を有する印刷模様（３´）が形成されて成る。

【0061】

図６に印刷模様（３´）の概要を示す。五枚の花びらから成る桜の模様が三つ配置された印刷模様（３´）は、第一の色彩からなる第一の印刷模様（３ａ´）と、第二の色彩からなる第二の印刷模様（３ｂ´）と、第三の色彩からなる第三の印刷模様（３ｃ´）との、三つの異なる色彩の桜の模様の集合から成る。このように、印刷模様（３´）は、異なる色彩の印刷模様（３ａ´、３ｂ´、３ｃ´）が、複数配置されて成る。

【0062】

それぞれ第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩は、明度だけでなく、それぞれ色相も異なる全く別の色彩であっても良い。印刷模様（３´）全体としては、第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩の三つの異なる色彩を有するが、印刷模様（３´）を構成する、第一の印刷模様（３ａ´）、第二の印刷模様（３ｂ´）、第三の印刷模様（３ｃ´）は、それぞれの模様において単一の色彩から成る。すなわち、第一の印刷模様（３ａ´）は模様全体が第一の色彩のみから成り、第二の印刷模様（３ｂ´）は模様全体が第二の色彩のみから成り、第三の印刷模様（３ｃ´）は模様全体が第三の色彩のみから成る。

【0063】

また、それぞれの印刷模様（３ａ´、３ｂ´、３ｃ´）は、それぞれの浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）と、第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）及び第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）から成る。それぞれ対となる第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）は同じ色相であり、第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）は、第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）よりも明度の高い領域である。

【0064】

すなわち、第一の色彩の第一の印刷模様（３ａ´）における第一の領域（４ａ´）と第二の領域（７ａ´）は同じ色相であって、かつ、第二の領域（７ａ´）の色彩は、第一の領域（４ａ´）よりも明度が高い。また、第二の色彩の第二の印刷模様（３ｂ´）における第一の領域（４ｂ´）と第二の領域（７ｂ´）は同じ色相であって、かつ、第二の領域（７ｂ´）の色彩は、第一の領域（４ｂ´）よりも明度が高い。さらに、第三の色彩の第三の印刷模様（３ｃ´）における第一の領域（４ｃ´）と第二の領域（７ｃ´）は同じ色相であって、かつ、第二の領域（７ｃ´）の色彩は、第一の領域（４ｃ´）よりも明度が高い。

【0065】

一方、それぞれの浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）は、すべて同じ単一の色彩から成る。それぞれの浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）は、対と成る第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）と同一形状、かつ、同じ大きさであり、それぞれの浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）と、対と成る第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）とは完全に重畳され、それぞれ重畳領域（５ａ´、５ｂ´、５ｃ´）と成る。

【0066】

このように、印刷模様（３´）を複数の異なる色彩で構成する場合、すべて同じ色彩でなる浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）が、それぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）と重畳することで、第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と同じ色彩と成る必要があることから、浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩と、それぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）の色彩とを減法混色した場合に、それぞれ第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩となる色彩関係を有している必要がある。このため、第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩には、共通した色成分が必要であり、その共通した色成分を浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩とする必要がある。

【0067】

例えば、第一の色彩が橙色、第二の色彩が緑色、第三の色彩が黄色である場合、それぞれの色彩に共通の色成分は黄色であることから、浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩は黄系の色彩とすれば良く、第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）の色彩は、それぞれの第一の色彩が橙色、第二の色彩が緑色、第三の色彩が黄色から黄色の色成分を差し引いた色彩、すなわち、桃色、水色、やや薄い黄色とすれば、必要とされる色彩関係を満足することができる。

【0068】

なお、実際の色彩設計の具体的な手順としては、前述のように第一の色彩や第二の色彩、第三の色彩を先に決定するのではなく、それぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）を決定したほうがスムーズである。具体的には、まず第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）の色彩を任意に決定し、次に浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩を任意に決定する。最後にそれぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）の色彩と浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩を減法混色した色彩を、それぞれ第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩とする。これが最も容易な方法である。このような色成分の設計は、一般的なペイント系の画像処理ソフト（例えば、アドビシステムズ株式会社製Photoshop：登録商標）を用いれば容易に行うことができる。

【0069】

本発明の効果が最も高まるのは、浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩に有色浸透インキの効果が最も高くなる色彩、すなわち無彩色である灰色から黒色の色彩を用いた場合である。浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の色彩に無彩色を用いた場合、第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）色彩である、第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩は彩度を高く設計できないという制約は生じるものの、いかなる色相であってもそれぞれの第一の色彩、第二の色彩、第三の色彩に適用することができるため、それぞれの色相選択の自由度も高くなり、無彩色の有色浸透インキは明度変化が最も大きいため、透過時の色変化も最も大きくなることから望ましい。

【0070】

以上の構成で形成した透過模様印刷物（１´）の効果を図７に説明する。図７（ａ２）に示すように、透過模様印刷物（１´）の印刷模様（３´）を反射光下で観察した場合、観察者（９´）には、図７（ａ１）に示すように、第一の印刷模様（３ａ´）中の第一の領域（４ａ´）と重畳領域（５ａ´）とが第一の色彩で等色に視認され、第二の印刷模様（３ｂ´）中の第一の領域（４ｂ´）と重畳領域（５ｂ´）とが第二の色彩で等色に視認され、第三の印刷模様（３ｃ´）中の第一の領域（４ｃ´）と重畳領域（５ｃ´）とが第三の色彩で等色に視認される。

【0071】

また、図７（ｂ２）に示すように、透過模様印刷物（１´）の印刷模様（３´）を透過光下で観察した場合、観察者（９´）には、図７（ｂ１）に示すように、第一の印刷模様（３ａ´）中の第一の領域（４ａ´）と重畳領域（５ａ´）とが異なる色彩で視認され、第二の印刷模様（３ｂ´）中の第一の領域（４ｂ´）と重畳領域（５ｂ´）とが異なる色彩で視認され、第三の印刷模様（３ｃ´）中の第一の領域（４ｃ´）と重畳領域（５ｃ´）とが異なる色彩で視認される。具体的には、それぞれの第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）は明度が低い色彩で、それぞれの重畳領域（５ａ´、５ｂ´、５ｃ´）はより明度が高い色彩で、印刷模様（３´）が区分けして視認される。

【0072】

以上のように本発明の透過模様印刷物（１´）は、印刷模様（３´）が異なる複数の色で構成されていた場合でも、観察条件に応じて、印刷模様（３´）中のそれぞれの第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と重畳領域（５ａ´、５ｂ´、５ｃ´）が等色となり、もしくは第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と重畳領域（５ａ´、５ｂ´、５ｃ´）が異色となる効果を有する。

【0073】

以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した透過模様印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。

【実施例1】

【0074】

本実施例は、第二の実施の形態同様に図５から図７までを用いて説明する。図５に実施例１における透過模様印刷物（１´）を示す。透過模様印刷物（１´）は、基材（２´）の上に、赤、青、黄の異なる複数の色彩を有した印刷模様（３´）が形成されて成る。それぞれ赤、青、黄の色彩はやや明度が低い、彩度のやや低めな色彩とした。基材（２´）には、一般的な白色上質紙（日本製紙株式会社製 しらおい）を使用した。

【0075】

印刷模様（３´）は、図６に示すように、印刷模様（３´）は、赤色の第一の印刷模様（３ａ´）と、青色の第二の印刷模様（３ｂ´）と、黄色の第三の印刷模様（３ｃ´）との、三つの異なる色彩の模様の集合から成る。

【0076】

また、それぞれの印刷模様（３ａ´、３ｂ´、３ｃ´）は、それぞれの浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）と、第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）及び第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）から成る。それぞれ対となる第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）は同じ色相であり、第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）は、第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）よりも明度の高い色彩とした。具体的には、すべての浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）は無彩色の灰色とし、表１に示す有色浸透インキを用いて形成した。あらかじめ浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）の反射濃度を測定したところ、黒成分が反射濃度で０．１５であったことから、画像処理ソフトを用いてそれぞれの第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）の色彩である赤、青、黄の反射濃度から黒成分を０．１５分差し引いた色彩を、それぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）の色彩とした。すなわち、それぞれの第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）は淡い赤色、淡い青色、淡い黄色とした。

【0077】

【表1】

【0078】

以上のように色彩設計した第一の領域（４ａ´、４ｂ´、４ｃ´）と第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）をカラーレーザプリンタ（株式会社リコー製 ＩＰＳｉＯ ＳＰ Ｃ８２０）で印刷し、その第二の領域（７ａ´、７ｂ´、７ｃ´）上に同じ形状の浸透領域（６ａ´、６ｂ´、６ｃ´）をオフセット印刷によって網点面積率１００％で形成した。

【0079】

以上の構成で形成した透過模様印刷物（１´）の効果を図７に説明する。図７（ａ）に示すように、透過模様印刷物（１´）の印刷模様（３´）を反射光下で観察した場合、観察者（９´）には、第一の印刷模様（３ａ´）中の第一の領域（４ａ´）と重畳領域（５ａ´）とが同じ赤色に視認され、第二の印刷模様（３ｂ´）中の第一の領域（４ｂ´）と重畳領域（５ｂ´）とが同じ青色に視認され、第三の印刷模様（３ｃ´）中の第一の領域（４ｃ´）と重畳領域（５ｃ´）とが同じ黄色に視認された。

【0080】

また、図７（ｂ）に示すように、透過模様印刷物（１´）の印刷模様（３´）を透過光下で観察した場合、観察者（９´）には、第一の印刷模様（３ａ´）中の第一の領域（４ａ´）が赤色で、重畳領域（５ａ´）が淡い赤色で視認され、第二の印刷模様（３ｂ´）中の第一の領域（４ｂ´）が青色で、重畳領域（５ｂ´）が淡い青色で視認され、第三の印刷模様（３ｃ´）中の第一の領域（４ｃ´）が黄色で、重畳領域（５ｃ´）が淡い黄色で視認された。

【符号の説明】

【0081】

１、１´ 透過模様印刷物
２、２´ 基材
３、３´、３ａ´、３ｂ´、３ｃ´ 印刷模様
４、４ａ´、４ｂ´、４ｃ´ 第一の領域
５、５ａ´、５ｂ´、５ｃ´ 重畳領域
６、６ａ´、６ｂ´、６ｃ´ 浸透領域
７、７ａ´、７ｂ´、７ｃ´ 第二の領域
８ 光源
９ 観察者の視点

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】