特許第6264064号(P6264064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264064
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】光変調素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   G02F1/035
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-17056(P2014-17056)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143770(P2015-143770A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年8月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人情報通信研究機構、高度通信・放送研究開発委託研究/高い臨時設営性を持つ有無線両用通信技術の研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝利
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185977(JP,A)
【文献】 特開2010−078914(JP,A)
【文献】 特開2002−122834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0093982(US,A1)
【文献】 特開2012−163882(JP,A)
【文献】 特開2011−100168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12
G02F 1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を有する基板と、
前記光導波路を伝搬する光を変調するための第1信号電極及び第2信号電極と、を備え、
前記基板は、第1方向に沿って順に配置された第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域の分極方向は、前記第2領域の分極方向と反対であり、
前記光導波路は、互いに並行して配置された第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部を有し、
前記第1マッハツェンダ部は、第1分岐導波路及び第2分岐導波路を有し、
前記第2マッハツェンダ部は、第3分岐導波路及び第4分岐導波路を有し、
前記第1分岐導波路、前記第2分岐導波路、前記第3分岐導波路及び前記第4分岐導波路の各々は、前記第1方向に沿って延びており、
前記第1分岐導波路、前記第2分岐導波路、前記第3分岐導波路及び前記第4分岐導波路は、その順に前記第1方向と交差する第2方向に沿って配置されており、
前記第1信号電極は、前記第1領域において前記第1分岐導波路上に設けられ、前記第2領域において前記第2分岐導波路上に設けられ、
前記第2信号電極は、前記第1領域において前記第4分岐導波路上に設けられ、前記第2領域において前記第3分岐導波路上に設けられ、
前記第1信号電極は、前記第1マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第1変調信号を、前記第1領域側から前記第2領域側に向けて伝送し、
前記第2信号電極は、前記第2マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第2変調信号を、前記第1領域側から前記第2領域側に向けて伝送し、
前記第1マッハツェンダ部と前記第2マッハツェンダ部とは、前記基板上の前記第1方向に延びる仮想線に対して線対称であり、
前記第1信号電極と前記第2信号電極とは、前記仮想線に対して線対称であることを特徴とする光変調素子。
【請求項2】
前記光導波路を伝搬する光を変調するための第3信号電極及び第4信号電極をさらに備え、
前記光導波路は、前記第1マッハツェンダ部及び前記第2マッハツェンダ部を挟んで互いに並行して配置された第3マッハツェンダ部及び第4マッハツェンダ部をさらに有し、 前記第3マッハツェンダ部は、第5分岐導波路及び第6分岐導波路を有し、
前記第4マッハツェンダ部は、第7分岐導波路及び第8分岐導波路を有し、
前記第5分岐導波路、前記第6分岐導波路、前記第7分岐導波路及び前記第8分岐導波路の各々は、前記第1方向に沿って延びており、
前記第5分岐導波路、前記第6分岐導波路、前記第1分岐導波路、前記第2分岐導波路、前記第3分岐導波路、前記第4分岐導波路、前記第7分岐導波路及び前記第8分岐導波路は、その順に前記第2方向に沿って配置されており、
前記第3信号電極は、前記第1領域において前記第5分岐導波路上に設けられ、前記第2領域において前記第6分岐導波路上に設けられ、
前記第4信号電極は、前記第1領域において前記第8分岐導波路上に設けられ、前記第2領域において前記第7分岐導波路上に設けられ、
前記第3信号電極は、前記第3マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第3変調信号を、前記第1領域側から前記第2領域側に向けて伝送し、
前記第4信号電極は、前記第4マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第4変調信号を、前記第1領域側から前記第2領域側に向けて伝送することを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
【請求項3】
前記第1マッハツェンダ部及び前記第3マッハツェンダ部は、対を成して第1信号光成分を生成し、
前記第2マッハツェンダ部及び前記第4マッハツェンダ部は、対を成して第2信号光成分を生成することを特徴とする請求項2に記載の光変調素子。
【請求項4】
記第3マッハツェンダ部と前記第4マッハツェンダ部とは、前記仮想線に対して線対称であり、
記第3信号電極と前記第4信号電極とは、前記仮想線に対して線対称であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光変調素子。
【請求項5】
前記仮想線は、前記第2方向における前記基板の中心線であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光変調素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学効果を奏する基板と、基板に設けられたマッハツェンダ型の光導波路と、光導波路を伝搬する光を変調するための信号電極と、を備える光変調素子がある。例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載の光変調素子では、光のチャープ発生を抑制するために、基板は第1領域及び第1領域と分極方向が反対の第2領域を有し、信号電極は第1領域において一方の分岐導波路上に設けられ、第2領域において他方の分岐導波路上に設けられている。
【0003】
上記光導波路型の変調素子を駆動する信号電極としては、マイクロストリップライン電極やコプレーナ電極が用いられることが多く、電極の曲がり部において伝搬信号の劣化が起きやすい。非特許文献3には、コプレーナ電極においては特定の周波数帯において伝搬信号の劣化が起きやすいことが示されている。非特許文献4には、信号電極間のクロストークが発生しやすいことが示されている。
【0004】
また、電気光学効果を奏する基板材料として、ニオブ酸リチウムが広く使われている。ニオブ酸リチウムのように誘電率の大きい材料を用いる場合は、コプレーナ電極の信号電極の幅に比べて信号電極と接地電極との間隔を広くすることが有効であることが、特許文献1に示されている。しかし、信号電極と接地電極との間隔が広いコプレーナ電極においては、電気力線が回り込む範囲が広いので、隣接信号電極とのクロストークが起きやすいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−142566号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N. Courjal, H. Porte, A.Martinez and J.P. Goedgebuer, "LiNb03 Mach-Zehnder ModulatorWith Chirp Adjusted by Ferroelectric Domain Inversion", IEEE PHOTONICSTECHNOLOGY LETTERS, VOL.14, NO.11 , NOVEMBER 2002, pp.1509-1511
【非特許文献2】H. Porte,N. Courjal, J. Hauden, P. Mollier, "10Gb/s transmission using alow chirp modulator integrated in poled Z-cut LiNbO3 substrate",ECOC-IOOC, 2003, Rimini, Italy, vol. 1, pp. 118-119.
【非特許文献3】澤佐博行,太田義昭,中野秀樹,越地耕二,周英明,“曲がり部の曲率に対する共平面形線路の透過特性”,信学技報,MW93−93,pp.17−24 (1993)
【非特許文献4】澤佐博行,中野秀樹,越地耕二,周英明,“共平面形線路の曲がり部のクロストーク”,電学論,Vol.115,No.4,pp.545−550 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記光変調素子の構成を、複数のマッハツェンダ型の光導波路を有する光変調素子に適用した場合、信号電極の配置によっては信号電極間にクロストークが生じる場合がある。クロストークの問題は、信号電極としてコプレーナ電極、特に高周波に対応した信号電極と接地電極との間隔が広いコプレーナ電極を用いた際に顕著である。また、基板の熱膨張率と信号電極の熱膨張率とは異なるので、基板に応力が生じ、基板が捻れたり歪んだりするおそれがある。非対称な応力及び応力に起因する基板の捻れや非対称な歪みは、マッハツェンダ干渉計のアーム間の実効的な光路長差の変動を誘発し、デバイスの動作状態を不安定にすることがある。このような基板の捻れ及び信号電極間のクロストークは、光変調素子の性能を低下させるおそれがある。
【0008】
本発明は、基板の捻れを抑制するとともに、信号電極間のクロストークを低減可能な構造を有する光変調素子を提供することを目的とする。なお「捻れ」とは、非対称な応力が付与されている状態及び応力に起因して基板が物理的に非対称に屈曲したり非対称に変形している状態になっていて、マッハツェンダ干渉計のアーム間の実効的な光路長差の変動を誘発する状態になっている様態を指す。またクロストークとは、信号電極を伝送する制御信号が、隣り合う信号電極に漏れて伝わることに起因して、隣り合う信号電極を伝わる信号にノイズが載る、あるいは、相互に干渉して、制御信号の品質が悪化している状態のことを指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る光変調素子は、光導波路を有する基板と、光導波路を伝搬する光を変調するための第1信号電極及び第2信号電極と、を備える。基板は、第1方向に沿って順に配列された第1領域及び第2領域を有し、第1領域の分極方向は、第2領域の分極方向と反対である。光導波路は、互いに並行して配置された第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部を有し、第1マッハツェンダ部は、第1分岐導波路及び第2分岐導波路を有し、第2マッハツェンダ部は、第3分岐導波路及び第4分岐導波路を有する。第1分岐導波路、第2分岐導波路、第3分岐導波路及び第4分岐導波路の各々は、第1方向に沿って延びており、第1分岐導波路、第2分岐導波路、第3分岐導波路及び第4分岐導波路は、その順に第1方向と交差する第2方向に沿って配置されている。第1信号電極は、第1領域において第1分岐導波路上に設けられ、第2領域において第2分岐導波路上に設けられ、第2信号電極は、第1領域において第4分岐導波路上に設けられ、第2領域において第3分岐導波路上に設けられている。第1信号電極は、第1マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第1変調信号を、第1領域側から第2領域側に向けて伝送し、第2信号電極は、第2マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第2変調信号を、第1領域側から第2領域側に向けて伝送する。
【0010】
この光変調素子によれば、第1分岐導波路、第2分岐導波路、第3分岐導波路及び第4分岐導波路が第1方向に沿って延びており、その順に第2方向に沿って配置されている。そして、第1信号電極が第1領域において第1分岐導波路上に設けられ、第2領域において第2分岐導波路上に設けられている。また、第2信号電極が第1領域において第4分岐導波路上に設けられ、第2領域において第3分岐導波路上に設けられている。このため、第1信号電極と第2信号電極との線対称性が向上する。したがって、第1信号電極及び第2信号電極の熱膨張率と基板の熱膨張率との差に基づく応力の線対称性を向上させることができ、応力による基板の捻れを抑制することが可能となる。また、変調信号のエネルギーは、信号電極の電気抵抗等によって上流側よりも下流側において減衰するので、第1変調信号及び第2変調信号のエネルギーは、第1領域側よりも第2領域側において減衰する。この光変調素子によれば、第1変調信号及び第2変調信号の上流側である第1領域における第1信号電極と第2信号電極との間隔が、第1変調信号及び第2変調信号の下流側である第2領域における第1信号電極と第2信号電極との間隔よりも大きくなるように配置されている。このため、第1信号電極と第2信号電極との間のクロストークを低減できる。その結果、基板の捻れに起因する光変調素子の性能低下を抑制するとともに、第1信号電極と第2信号電極との間のクロストークに起因する光変調素子の性能低下を抑制することが可能となる。
【0011】
光変調素子は、光導波路を伝搬する光を変調するための第3信号電極及び第4信号電極をさらに備えてもよい。光導波路は、第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部を挟んで互いに並行して配置された第3マッハツェンダ部及び第4マッハツェンダ部をさらに有してもよい。第3マッハツェンダ部は、第5分岐導波路及び第6分岐導波路を有してもよく、第4マッハツェンダ部は、第7分岐導波路及び第8分岐導波路を有してもよい。第5分岐導波路、第6分岐導波路、第7分岐導波路及び第8分岐導波路の各々は、第1方向に沿って延びており、第5分岐導波路、第6分岐導波路、第1分岐導波路、第2分岐導波路、第3分岐導波路、第4分岐導波路、第7分岐導波路及び第8分岐導波路は、その順に第2方向に沿って配置されてもよい。第3信号電極は、第1領域において第5分岐導波路上に設けられてもよく、第2領域において第6分岐導波路上に設けられてもよく、第4信号電極は、第1領域において第8分岐導波路上に設けられてもよく、第2領域において第7分岐導波路上に設けられてもよい。第3信号電極は、第3マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第3変調信号を、第1領域側から第2領域側に向けて伝送してもよく、第4信号電極は、第4マッハツェンダ部を伝搬する光を変調するための第4変調信号を、第1領域側から第2領域側に向けて伝送してもよい。
【0012】
この場合、第5分岐導波路、第6分岐導波路、第1分岐導波路、第2分岐導波路、第3分岐導波路、第4分岐導波路、第7分岐導波路及び第8分岐導波路が、第1方向に沿って延びており、その順に第2方向に沿って配置されている。そして、第3信号電極が、第1領域において第5分岐導波路上に設けられ、第2領域において第6分岐導波路上に設けられている。また、第4信号電極が、第1領域において第8分岐導波路上に設けられ、第2領域において第7分岐導波路上に設けられている。このため、第3信号電極と第4信号電極との線対称性が向上する。このため、第3信号電極及び第4信号電極の熱膨張率と基板の熱膨張率との差に基づく応力の線対称性を向上させることができ、応力による基板の捻れを抑制することが可能となる。また、第1信号電極及び第3信号電極は、第1領域において第6分岐導波路を挟んで第1分岐導波路及び第5分岐導波路に設けられ、第2領域において第1分岐導波路を挟んで第2分岐導波路及び第6分岐導波路に設けられている。また、第2信号電極及び第4信号電極は、第1領域において第7分岐導波路を挟んで第4分岐導波路及び第8分岐導波路に設けられ、第2領域において第4分岐導波路を挟んで第3分岐導波路及び第7分岐導波路に設けられている。このように、第1信号電極及び第3信号電極、並びに、第2信号電極及び第4信号電極は、1つの分岐導波路を挟んで互いに対向する2つの分岐導波路に設けられる。このため、第1信号電極及び第3信号電極の間隔、並びに、第2信号電極及び第4信号電極の間隔を確保することができ、第1信号電極及び第3信号電極の間のクロストーク、並びに、第2信号電極及び第4信号電極の間のクロストークを低減することが可能となる。その結果、基板の捻れに起因する光変調素子の性能低下を抑制するとともに、第1信号電極及び第3信号電極の間のクロストーク、並びに、第2信号電極及び第4信号電極の間のクロストークに起因する光変調素子の性能低下を抑制することが可能となる。
【0013】
第1マッハツェンダ部及び第3マッハツェンダ部は、対を成して第1信号光成分を生成してもよく、第2マッハツェンダ部及び第4マッハツェンダ部は、対を成して第2信号光成分を生成してもよい。この場合、対を成すマッハツェンダ部に設けられた2つの信号電極間の間隔を確保することができ、対を成すマッハツェンダ部に設けられた2つの信号電極間のクロストークを低減することが可能となる。
【0014】
第1マッハツェンダ部と第2マッハツェンダ部とは、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して線対称であってもよく、第1信号電極と第2信号電極とは、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して線対称であってもよい。この場合、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して、第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部、並びに、第1信号電極及び第2信号電極が線対称であるので、基板の捻れをさらに低減できる。その結果、基板の捻れに起因する光変調素子の性能低下をさらに抑制することが可能となる。
【0015】
第3マッハツェンダ部と第4マッハツェンダ部とは、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して線対称であってもよく、第3信号電極と第4信号電極とは、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して線対称であってもよい。この場合、第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部にさらに第3マッハツェンダ部及び第4マッハツェンダ部が加わったため、各電極の配置を考慮しないと基板での応力がさらに増加し基板が捻れるおそれがある。しかし、基板上の第1方向に延びる仮想線に対して、第3マッハツェンダ部及び第4マッハツェンダ部、並びに、第3信号電極及び第4信号電極が線対称であるので、マッハツェンダ部が増加しても基板の捻れを低減できる。その結果、基板の捻れに起因する光変調素子の性能低下を抑制することが可能となる。
【0016】
仮想線は、第2方向における基板の中心線であってもよい。この場合、基板の中心線に対してマッハツェンダ部及び信号電極がそれぞれ線対称となるので、基板の応力を中心線に対して均等にすることができる。その結果、基板の捻れをさらに低減でき、基板の捻れに起因する光変調素子の性能低下をさらに抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の捻れを抑制するとともに、信号電極間のクロストークを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。
図2】第2実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。
図3】第3実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。図1に示されるように、光変調素子1は、電気信号である変調信号S1(第1変調信号)及び変調信号S2(第2変調信号)に基づいて入力光Linを変調して、変調光Loutを出力する素子である。変調信号S1及び変調信号S2は、高周波の電気信号であって、変調信号S1及び変調信号S2の周波数は、例えば40Gbpsもしくは100Gbpsのデジタル信号周波数、または、それらに対応したクロック周波数である。光変調素子1は、基板10と、信号電極12(第1信号電極)と、信号電極13(第2信号電極)と、接地電極14と、接地電極15と、接地電極16と、を備えている。高周波特性を確保するため、信号電極12と接地電極14及び接地電極15との間隔は、信号電極12の幅より広くしてもよい。同様に、信号電極13と接地電極14及び接地電極16との間隔も、信号電極13の幅より広くしてもよい。
【0021】
基板10は、一方向(以下、「方向A(第1方向)」という。)に沿って延びる板状部材であって、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO、以下「LN」という。)などの電気光学効果を奏する誘電体材料から構成されている。基板10は、例えば矩形状を呈している。基板10の方向Aに沿った長さは例えば80mm程度、基板10の方向Aと直交する方向(以下、「方向B(第2方向)」という。)に沿った長さは例えば2.5mm程度である。基板10の厚さは、例えば1.0mm程度である。基板10は、方向Aにおける両端部である端部10a及び端部10bと、方向Bにおける両端部である側端部10c及び側端部10dと、を有している。
【0022】
基板10は、第1領域10eと、第2領域10fと、を有している。第1領域10e及び第2領域10fは、方向Aに沿って順に配置されている。第1領域10eでは、例えば基板10の主面10mの法線軸NV方向に誘電体材料の結晶軸方向Zが向いている。第2領域10fでは、例えば基板10の主面10mの法線軸NV方向と反対方向に誘電体材料の結晶軸方向Zが向いている。ここで、誘電体材料の分極方向は、結晶軸方向Zと同じ方向である。すなわち、第1領域10eの分極方向は、第2領域10fの分極方向と反対である。第1領域10eと第2領域10fとの境界Dは、基板10の方向Aにおける中心線に一致してもよい。
【0023】
基板10は、光導波路11を有している。光導波路11は、例えばマッハツェンダ(Mach-Zehnder:MZ)型の光導波路であって、光変調素子1の変調方式に応じた構造を有する。第1実施形態では、光変調素子1の変調方式は、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動4値位相変調)方式である。この場合、光導波路11は、入力導波路11aと、分岐導波路11bと、分岐導波路11cと、出力導波路11dと、を有し、2つの分岐導波路11b,11c上に、MZ部21(第1マッハツェンダ部)及びMZ部22(第2マッハツェンダ部)が設けられた構造を有する。MZ部21及びMZ部22は、互いに並行して配置され、方向Bに沿って順に配置されている。MZ部21は、分岐導波路21a(第1分岐導波路)及び分岐導波路21b(第2分岐導波路)を有している。MZ部22は、分岐導波路22a(第3分岐導波路)及び分岐導波路22b(第4分岐導波路)を有している。
【0024】
入力導波路11aは、基板10の端部10aから方向Aに沿って延び、分岐導波路11b及び分岐導波路11cに分岐される。分岐導波路11bは、方向Aに沿って延び、MZ部21の分岐導波路21a及び分岐導波路21bに分岐される。MZ部21の分岐導波路21a及び分岐導波路21bは方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路11bに合流する。分岐導波路11cは、方向Aに沿って延び、MZ部22の分岐導波路22a及び分岐導波路22bに分岐される。MZ部22の分岐導波路22a及び分岐導波路22bは方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路11cに合流する。分岐導波路11b及び分岐導波路11cは、出力導波路11dに合流する。出力導波路11dは、方向Aに沿って端部10bまで延びている。分岐導波路21a、分岐導波路21b、分岐導波路22a及び分岐導波路22bは、方向Aに沿って互いに略平行に延びており、その順に方向Bに沿って配置されている。
【0025】
信号電極12は、MZ部21を伝搬する光を変調するための変調信号S1を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S1に応じた電界をMZ部21の分岐導波路21a及び分岐導波路21bに印加する。信号電極12は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極12は、第1領域10eにおいて分岐導波路21a上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路21b上に設けられている。
【0026】
具体的に説明すると、信号電極12は、第1部分12aと、第2部分12bと、第3部分12cと、第4部分12dと、第5部分12eと、を有している。第1部分12aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分12aは、基板10の側端部10cからMZ部21の分岐導波路21a上まで方向Bに延びている。第1部分12aの一端は、変調信号S1を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分12bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路21a上に設けられている。第2部分12bは、第1部分12aの他端から境界Dまで延びている。第2部分12bの一端は第1部分12aの他端に接続されている。
【0027】
第3部分12cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分12cは、分岐導波路21aから分岐導波路21bまで延びている。第3部分12cの一端は第2部分12bの他端に接続されている。第4部分12dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路21b上に設けられている。第4部分12dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分12dの一端は、第3部分12cの他端に接続されている。第5部分12eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分12eは、第4部分12dの他端から側端部10cまで方向Bと反対方向に延びている。第5部分12eの一端は第4部分12dの他端に接続され、第5部分12eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0028】
信号電極13は、MZ部22を伝搬する光を変調するための変調信号S2を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S2に応じた電界をMZ部22の分岐導波路22a及び分岐導波路22bに印加する。信号電極13は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極13は、第1領域10eにおいて分岐導波路22b上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路22a上に設けられている。
【0029】
具体的に説明すると、信号電極13は、第1部分13aと、第2部分13bと、第3部分13cと、第4部分13dと、第5部分13eと、を有している。第1部分13aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分13aは、基板10の側端部10dからMZ部22の分岐導波路22b上まで方向Bと反対方向に延びている。第1部分13aの一端は、変調信号S2を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分13bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路22b上に設けられている。第2部分13bは、第1部分13aの他端から境界Dまで延びている。第2部分13bの一端は第1部分13aの他端に接続されている。
【0030】
第3部分13cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分13cは、分岐導波路22bから分岐導波路22aまで方向Bと反対方向に延びている。第3部分13cの一端は第2部分13bの他端に接続されている。第4部分13dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路22a上に設けられている。第4部分13dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分13dの一端は、第3部分13cの他端に接続されている。第5部分13eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分13eは、第4部分13dの他端から側端部10dまで方向Bに延びている。第5部分13eの一端は第4部分12dの他端に接続され、第5部分13eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0031】
接地電極14は、接地電位に接続された電極であって、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。接地電極14は、基板10の主面10m上に設けられ、信号電極12と信号電極13との間に配置されている。接地電極14は、基板10において方向Aに沿って延びる仮想線Cに対して線対称であってもよい。なお、本明細書において、「線対称」とは、完全な線対称だけでなく、完全な線対称とした場合と同程度の効果が得られる範囲内であれば「線対称」と見なすことができる。
【0032】
接地電極15は、接地電位に接続された電極であって、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。接地電極15は、基板10の主面10m上に設けられ、信号電極12を挟んで接地電極14と対向するように配置されている。
【0033】
接地電極16は、接地電位に接続された電極であって、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。接地電極16は、基板10の主面10m上に設けられ、信号電極13を挟んで接地電極14と対向するように配置されている。接地電極15及び接地電極16は、仮想線Cに対して線対称であってもよい。また、光導波路11は、接地電極14、接地電極15及び接地電極16のエッジに沿って設けられてもよい。
【0034】
以上のように構成された光変調素子1では、端部10aから入力導波路11aに入力光Linが入力される。入力光Linは、入力導波路11aを伝搬し、分岐導波路11b及び分岐導波路11cに分岐される。分岐導波路11bに分岐された光は、MZ部21の分岐導波路21a及び分岐導波路21bにさらに分岐される。そして、分岐導波路21aに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極12により伝送される変調信号S1に基づいて変調される。分岐導波路21bに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極12により伝送される変調信号S1に基づいて変調される。分岐導波路21aにおいて変調された光及び分岐導波路21bにおいて変調された光は、分岐導波路11bにおいて合波される。
【0035】
同様に、分岐導波路11cに分岐された光は、MZ部22の分岐導波路22a及び分岐導波路22bにさらに分岐される。そして、分岐導波路22aに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極13により伝送される変調信号S2に基づいて変調される。分岐導波路22bに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極13により伝送される変調信号S2に基づいて変調される。分岐導波路22aにおいて変調された光及び分岐導波路22bにおいて変調された光は、分岐導波路11cにおいて合波される。そして、分岐導波路11bにおいて合波された光及び分岐導波路11cにおいて合波された光は、位相調整手段(不図示)により90度の位相差を付与され、出力導波路11dにおいて合波されて変調光Loutとして端部10bから出力される。
【0036】
ここで、第1領域10eにおける誘電体材料の結晶軸方向Zは、基板10の主面10mの法線軸NV方向に向いている。第2領域10fにおける誘電体材料の結晶軸方向Zは、基板10の主面10mの法線軸NV方向と反対方向に向いている。また、第1領域10e内の分岐導波路21a及び第2領域10f内の分岐導波路21bには、変調信号S1に応じた同じ向きの電界が印加される。このため、分岐導波路21aと分岐導波路21bとの間では電気光学効果による屈折率変化が逆符号となる。そして、方向Aに対する第1領域10eでの作用長(分岐導波路21を伝搬する光が信号電極12による電界の作用を受ける長さ)及び第2領域10fでの作用長を略等しくすることにより、分岐導波路21aを伝搬する光と分岐導波路21bを伝搬する光との位相関係が逆符号で位相変化量が略等しくなる。これにより、分岐導波路21a及び分岐導波路21bを伝搬する光の和で表される分岐導波路11bにおける合波光の位相変化が略ゼロとなり、変調光のチャープが低減される。
【0037】
同様に、第1領域10e内の分岐導波路22a及び第2領域10f内の分岐導波路22bには、変調信号S2に応じた同じ向きの電界が印加される。このため、分岐導波路22aと分岐導波路22bとの間では電気光学効果による屈折率変化が逆符号となる。そして、方向Aに対する第1領域10eでの作用長(分岐導波路22を伝搬する光が信号電極13による電界の作用を受ける長さ)及び第2領域10fでの作用長を略等しくすることにより、分岐導波路22aを伝搬する光と分岐導波路22bを伝搬する光との位相関係が逆符号で位相変化量が略等しくなる。これにより、分岐導波路22a及び分岐導波路22bを伝搬する光の和で表される分岐導波路11cにおける合波光の位相変化が略ゼロとなり、変調光のチャープが低減される。
【0038】
次に、光変調素子1の作用効果について説明する。光変調素子1では、分岐導波路21a、分岐導波路21b、分岐導波路22a及び分岐導波路22bが方向Aに沿って互いに並行に配置されるとともに、その順に方向Bに沿って配置されている。そして、信号電極12の第2部分12bが基板10の第1領域10eにおいて分岐導波路21a上に設けられ、信号電極12の第4部分12dが基板10の第2領域10fにおいて分岐導波路21b上に設けられている。また、信号電極13の第2部分13bが基板10の第1領域10eにおいて分岐導波路22b上に設けられ、信号電極13の第4部分13dが基板10の第2領域10fにおいて分岐導波路22a上に設けられている。このため、信号電極12と信号電極13との線対称性が向上する。したがって、信号電極12及び信号電極13の熱膨張率と基板10の熱膨張率との差に基づく応力の線対称性を向上させることができ、応力による基板10の捻れを抑制することが可能となる。
【0039】
また、信号電極12は、変調信号S1を基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送する。信号電極13は、変調信号S2を基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送する。ここで、電気信号のエネルギーは、伝送経路の電気抵抗等により、伝送経路の上流側よりも下流側において減衰する。このため、変調信号S1及び変調信号S2のエネルギーは、第1領域10e側よりも第2領域10f側において減衰する。そして、第1領域10eにおける信号電極12(第2部分12b)と信号電極13(第2部分13b)との間隔は、第2領域10fにおける信号電極12(第4部分12d)と信号電極13(第4部分13d)との間隔よりも大きい。このように、光変調素子1では、変調信号S1及び変調信号S2のエネルギーがより大きい第1領域10eにおいて、信号電極12と信号電極13とが離れるように配置され、変調信号S1及び変調信号S2のエネルギーが減衰した第2領域10fにおいて、信号電極12と信号電極13とが近づくように配置されている。このため、信号電極12と信号電極13との間のクロストークを低減でき、光変調素子1の性能低下を抑制することが可能となる。
【0040】
特に電極の構成が進行波電極の場合、クロストークした信号は、その後も光導波路に作用し続けるため、変調信号S1及び変調信号S2のエネルギーが大きい第1領域10eにおいてクロストークさせない構成とすることで本発明の効果がより顕著となる。また、変調信号S1,S2がそれぞれ信号電極12,13を伝搬し、信号電極12の第2部分12b及び信号電極13の第2部分13bに入った時点では、信号の伝搬が不安定なため放射及びクロストークが大きい。このため、変調信号S1及び変調信号S2のエネルギーが大きい第1領域10eにおいてクロストークさせない構成とすることで、それらの問題点を抑制することができる。
【0041】
以上のように、光変調素子1では、信号電極12及び信号電極13が、仮想線Cに対する線対称性が向上するように配置されるとともに、変調信号の上流側における信号電極12と信号電極13との間隔が変調信号の下流側における信号電極12と信号電極13との間隔よりも大きくなるように配置されている。このため、基板10の捻れに起因する光変調素子1の性能低下を抑制するとともに、信号電極12と信号電極13との間のクロストークに起因する光変調素子1の性能低下を抑制することが可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。図2に示されるように、光変調素子1Aは、変調方式において光変調素子1と相違している。すなわち、光変調素子1Aの変調方式は、DP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying:偏波多重4値位相変調)方式である。具体的には、光変調素子1Aは、光変調素子1に対して、変調信号S1及び変調信号S2に代えて変調信号S11(第3変調信号)、変調信号S12(第1変調信号)、変調信号S21(第2変調信号)及び変調信号S22(第4変調信号)に基づいて変調を行う点、光導波路11に代えて光導波路31を備えている点、信号電極12及び信号電極13に代えて信号電極32(第3信号電極)、信号電極33(第1信号電極)、信号電極34(第2信号電極)及び信号電極35(第4信号電極)を備えている点、並びに、偏波調整部36をさらに備えている点で相違している。なお、図2では、接地電極は省略されているが、光変調素子1と同様に光変調素子を動作させる上で適当な位置に設けられている。
【0043】
変調信号S11、変調信号S12、変調信号S21及び変調信号S22は、高周波の電気信号であって、変調信号S11、変調信号S12、変調信号S21及び変調信号S22の周波数は、例えば40Gbpsもしくは100Gbpsのデジタル信号周波数、または、それらに対応したクロック周波数である。
【0044】
光導波路31は、基板10の主面10m上に設けられている。光導波路31は、入力導波路31aと、分岐導波路31bと、分岐導波路31cと、出力導波路31dと、を有し、2つの分岐導波路31b,31c上に、MZ部40及びMZ部50が設けられた構造を有する。さらに、MZ部40の分岐導波路40a上に、サブMZ部41(第3マッハツェンダ部)が設けられ、MZ部40の分岐導波路40b上にサブMZ部42(第1マッハツェンダ部)が設けられ、MZ部50の分岐導波路50a上にサブMZ部51(第2マッハツェンダ部)が設けられ、MZ部50の分岐導波路50b上にサブMZ部52(第4マッハツェンダ部)が設けられている。サブMZ部41及びサブMZ部42は、対を成して第1信号光成分を生成する。サブMZ部51及びサブMZ部52は、対を成して第2信号光成分を生成する。
【0045】
サブMZ部41、サブMZ部42、サブMZ部51及びサブMZ部52は、方向Aに沿って互いに並行に配置され、方向Bに沿って順に配置されている。言い換えると、サブMZ部41及びサブMZ部52は、サブMZ部42及びサブMZ部51を挟んで互いに並行して配置されている。サブMZ部41は、分岐導波路41a(第5分岐導波路)及び分岐導波路41b(第6分岐導波路)を有している。サブMZ部42は、分岐導波路42a(第1分岐導波路)及び分岐導波路42b(第2分岐導波路)を有している。サブMZ部51は、分岐導波路51a(第3分岐導波路)及び分岐導波路51b(第4分岐導波路)を有している。サブMZ部52は、分岐導波路52a(第7分岐導波路)及び分岐導波路52b(第8分岐導波路)を有している。
【0046】
入力導波路31aは、基板10の端部10aから方向Aに沿って延び、分岐導波路31b及び分岐導波路31cに分岐される。分岐導波路31bは、方向Aに沿って延び、MZ部40の分岐導波路40a及び分岐導波路40bに分岐される。分岐導波路40aは、方向Aに沿って延び、サブMZ部41の分岐導波路41a及び分岐導波路41bに分岐される。分岐導波路41a及び分岐導波路41bは、方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路40aに合流する。分岐導波路40bは、方向Aに沿って延び、サブMZ部42の分岐導波路42a及び分岐導波路42bに分岐される。分岐導波路42a及び分岐導波路42bは、方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路40bに合流する。分岐導波路40a及び分岐導波路40bは方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路31bに合流する。
【0047】
分岐導波路31cは、方向Aに沿って延び、MZ部50の分岐導波路50a及び分岐導波路50bに分岐される。分岐導波路50aは、方向Aに沿って延び、サブMZ部51の分岐導波路51a及び分岐導波路51bに分岐される。分岐導波路51a及び分岐導波路51bは、方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路50aに合流する。分岐導波路50bは、方向Aに沿って延び、サブMZ部52の分岐導波路52a及び分岐導波路52bに分岐される。分岐導波路52a及び分岐導波路52bは、方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路50bに合流する。分岐導波路50a及び分岐導波路50bは方向Aに沿って互いに略平行に延び、分岐導波路31cに合流する。分岐導波路31b及び分岐導波路31cは、出力導波路31dに合流する。出力導波路31dは、方向Aに沿って端部10bまで延びている。分岐導波路41a、分岐導波路41b、分岐導波路42a、分岐導波路42b、分岐導波路51a、分岐導波路51b、分岐導波路52a及び分岐導波路52bは、方向Aに沿って互いに略平行に延びており、その順に方向Bに沿って配置されている。
【0048】
信号電極32は、サブMZ部41を伝搬する光を変調するための変調信号S11を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S11に応じた電界をサブMZ部41の分岐導波路41a及び分岐導波路41bに印加する。信号電極32は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極32は、第1領域10eにおいて分岐導波路41a上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路41b上に設けられている。
【0049】
具体的に説明すると、信号電極32は、第1部分32aと、第2部分32bと、第3部分32cと、第4部分32dと、第5部分32eと、を有している。第1部分32aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分32aは、基板10の側端部10cからサブMZ部41の分岐導波路41a上まで方向Bに延びている。第1部分32aの一端は、変調信号S11を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分32bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路41a上に設けられている。第2部分32bは、第1部分32aの他端から境界Dまで延びている。第2部分32bの一端は第1部分32aの他端に接続されている。
【0050】
第3部分32cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分32cは、分岐導波路41aから分岐導波路41bまで延びている。第3部分32cの一端は第2部分32bの他端に接続されている。第4部分32dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路41b上に設けられている。第4部分32dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分32dの一端は、第3部分32cの他端に接続されている。第5部分32eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分32eは、第4部分32dの他端から基板10の側端部10cまで方向Bと反対方向に延びている。第5部分32eの一端は第4部分32dの他端に接続され、第5部分32eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0051】
信号電極33は、サブMZ部42を伝搬する光を変調するための変調信号S12を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S12に応じた電界をサブMZ部42の分岐導波路42a及び分岐導波路42bに印加する。信号電極33は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極33は、第1領域10eにおいて分岐導波路42a上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路42b上に設けられている。
【0052】
具体的に説明すると、信号電極33は、第1部分33aと、第2部分33bと、第3部分33cと、第4部分33dと、第5部分33eと、を有している。第1部分33aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分33aは、基板10の側端部10cからサブMZ部42の分岐導波路42a上まで例えば湾曲して延びている。第1部分33aの一端は、変調信号S12を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分33bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路42a上に設けられている。第2部分33bは、第1部分33aの他端から境界Dまで延びている。第2部分33bの一端は第1部分33aの他端に接続されている。
【0053】
第3部分33cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分33cは、分岐導波路42aから分岐導波路42bまで延びている。第3部分33cの一端は第2部分33bの他端に接続されている。第4部分33dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路42b上に設けられている。第4部分33dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分33dの一端は、第3部分33cの他端に接続されている。第5部分33eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分33eは、第4部分33dの他端から基板10の側端部10cまで方向Bと反対方向に例えば湾曲して延びている。第5部分33eの一端は第4部分33dの他端に接続され、第5部分33eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0054】
信号電極34は、サブMZ部51を伝搬する光を変調するための変調信号S21を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S21に応じた電界をサブMZ部51の分岐導波路51a及び分岐導波路51bに印加する。信号電極34は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極34は、第1領域10eにおいて分岐導波路51b上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路51a上に設けられている。
【0055】
具体的に説明すると、信号電極34は、第1部分34aと、第2部分34bと、第3部分34cと、第4部分34dと、第5部分34eと、を有している。第1部分34aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分34aは、基板10の側端部10dからサブMZ部51の分岐導波路51b上まで方向Bと反対方向に例えば湾曲して延びている。第1部分34aの一端は、変調信号S21を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分34bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路51b上に設けられている。第2部分34bは、第1部分34aの他端から境界Dまで延びている。第2部分34bの一端は第1部分34aの他端に接続されている。
【0056】
第3部分34cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分34cは、分岐導波路51bから分岐導波路51aまで方向Bと反対方向に延びている。第3部分34cの一端は第2部分34bの他端に接続されている。第4部分34dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路51a上に設けられている。第4部分34dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分34dの一端は、第3部分34cの他端に接続されている。第5部分34eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分34eは、第4部分34dの他端から側端部10dまで方向Bに例えば湾曲して延びている。第5部分34eの一端は第4部分34dの他端に接続され、第5部分34eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0057】
信号電極35は、サブMZ部52を伝搬する光を変調するための変調信号S22を、基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送し、変調信号S22に応じた電界をサブMZ部52の分岐導波路52a及び分岐導波路52bに印加する。信号電極35は、例えば金、銀、銅またはアルミニウム等の金属から構成されている。信号電極35は、第1領域10eにおいて分岐導波路52b上に設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路52a上に設けられている。
【0058】
具体的に説明すると、信号電極35は、第1部分35aと、第2部分35bと、第3部分35cと、第4部分35dと、第5部分35eと、を有している。第1部分35aは、基板10の第1領域10eにおける主面10m上に設けられている。第1部分35aは、基板10の側端部10dからサブMZ部52の分岐導波路52b上まで方向Bと反対方向に延びている。第1部分35aの一端は、変調信号S22を供給するための外部回路に電気的に接続されている。第2部分35bは、基板10の第1領域10eにおける分岐導波路52b上に設けられている。第2部分35bは、第1部分35aの他端から境界Dまで延びている。第2部分35bの一端は第1部分35aの他端に接続されている。
【0059】
第3部分35cは、境界D上における主面10m上に設けられている。第3部分35cは、分岐導波路52bから分岐導波路52aまで方向Bと反対方向に延びている。第3部分35cの一端は第2部分35bの他端に接続されている。第4部分35dは、基板10の第2領域10fにおける分岐導波路52a上に設けられている。第4部分35dは、境界Dから方向Aに延びている。第4部分35dの一端は、第3部分35cの他端に接続されている。第5部分35eは、基板10の第2領域10fにおける主面10m上に設けられている。第5部分35eは、第4部分35dの他端から側端部10dまで方向Bに延びている。第5部分35eの一端は第4部分35dの他端に接続され、第5部分35eの他端は終端回路に電気的に接続されている。
【0060】
偏波調整部36は、光波の偏波方向を調整するものであり、例えば1/2波長板等の光学素子が用いられる。偏波調整部36は、例えば出力側の分岐導波路31c上に設けられ、分岐導波路31cを伝搬する光波の偏波方向を調整する。偏波調整部36は、例えば分岐導波路31cを伝搬する光波の偏波方向を90度回転させる。
【0061】
以上のように構成された光変調素子1Aでは、端部10aから入力導波路31aに入力光Linが入力される。入力光Linは、入力導波路31aを伝搬し、分岐導波路31b及び分岐導波路31cに分岐される。分岐導波路31bに分岐された光は、分岐導波路40a及び分岐導波路40bに分岐される。さらに、分岐導波路40aに分岐された光は、サブMZ部41の分岐導波路41a及び分岐導波路41bに分岐される。そして、分岐導波路41aに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極32により伝送される変調信号S11に基づいて変調される。分岐導波路41bに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極32により伝送される変調信号S11に基づいて変調される。分岐導波路41aにおいて変調された光及び分岐導波路41bにおいて変調された光は、分岐導波路40aにおいて合波される。
【0062】
同様に、分岐導波路40bに分岐された光は、サブMZ部42の分岐導波路42a及び分岐導波路42bにさらに分岐される。そして、分岐導波路42aに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極33により伝送される変調信号S12に基づいて変調される。分岐導波路42bに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極33により伝送される変調信号S12に基づいて変調される。分岐導波路42aにおいて変調された光及び分岐導波路42bにおいて変調された光は、分岐導波路40bにおいて合波される。そして、分岐導波路40aにおいて合波された光及び分岐導波路40bにおいて合波された光は、位相調整手段(不図示)により90度の位相差を付与され、分岐導波路31bにおいて合波されて第1信号光成分を成す。
【0063】
一方、分岐導波路31cに分岐された光は、分岐導波路50a及び分岐導波路50bに分岐される。分岐導波路50aに分岐された光は、サブMZ部51の分岐導波路51a及び分岐導波路51bに分岐される。そして、分岐導波路51aに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極34により伝送される変調信号S21に基づいて変調される。分岐導波路51bに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極34により伝送される変調信号S21に基づいて変調される。分岐導波路51aにおいて変調された光及び分岐導波路51bにおいて変調された光は、分岐導波路50aにおいて合波される。
【0064】
同様に、分岐導波路50bに分岐された光は、サブMZ部52の分岐導波路52a及び分岐導波路52bにさらに分岐される。そして、分岐導波路52aに分岐された光は、基板10の第2領域10fにおいて、信号電極35により伝送される変調信号S22に基づいて変調される。分岐導波路52bに分岐された光は、基板10の第1領域10eにおいて、信号電極35により伝送される変調信号S22に基づいて変調される。分岐導波路52aにおいて変調された光及び分岐導波路52bにおいて変調された光は、分岐導波路50bにおいて合波される。そして、分岐導波路50aにおいて合波された光及び分岐導波路50bにおいて合波された光は、位相調整手段(不図示)により90度の位相差を付与され、分岐導波路31cにおいて合波される。さらに、分岐導波路31cにおいて合波された光は、偏波調整部36によって偏波方向を調整されて第2信号光成分を成す。第1信号光成分及び第2信号光成分は、出力導波路31dにおいて合波されて、変調光Loutとして端部10bから出力される。
【0065】
ここで、第1領域10eにおける誘電体材料の結晶軸方向Zは、基板10の主面10mの法線軸NV方向に向いている。第2領域10fにおける誘電体材料の結晶軸方向Zは、基板10の主面10mの法線軸NV方向と反対方向に向いている。このため、光変調素子1と同様の理由により、分岐導波路40a、分岐導波路40b、分岐導波路50a及び分岐導波路50bにおいて合波された光におけるチャープが低減される。
【0066】
以上の第2実施形態の光変調素子1Aでは、光変調素子1と同様に、信号電極33と信号電極34との仮想線Cに対する線対称性が向上し、信号電極32と信号電極35との仮想線Cに対する線対称性が向上する。このため、信号電極32、信号電極33、信号電極34及び信号電極35の熱膨張率と基板10の熱膨張率との差に基づく応力の仮想線Cに対する線対称性を向上させることができる。このため、応力による基板10の捻れを抑制でき、光変調素子1Aの性能低下を抑制することが可能となる。
【0067】
また、光変調素子1Aでは、分岐導波路41a、分岐導波路41b、分岐導波路42a、分岐導波路42b、分岐導波路51a、分岐導波路51b、分岐導波路52a及び分岐導波路52bが方向Aに沿って互いに並行に配置されるとともに、その順に方向Bに沿って配置されている。そして、信号電極33の第2部分33bが基板10の第1領域10eにおいて分岐導波路42a上に設けられ、信号電極33の第4部分33dが基板10の第2領域10fにおいて分岐導波路42b上に設けられている。信号電極34の第2部分34bが基板10の第1領域10eにおいて分岐導波路51b上に設けられ、信号電極34の第4部分34dが基板10の第2領域10fにおいて分岐導波路51a上に設けられている。信号電極33は、変調信号S12を基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送する。信号電極34は、変調信号S21を基板10の第1領域10e側から第2領域10f側に向けて伝送する。
【0068】
ここで、電気信号のエネルギーは、伝送経路の電気抵抗等により、伝送経路の上流側よりも下流側において減衰する。このため、変調信号S12及び変調信号S21のエネルギーは、第1領域10e側よりも第2領域10f側において減衰する。そして、第1領域10eにおける信号電極33(第2部分33b)と信号電極34(第2部分34b)との間隔は、第2領域10fにおける信号電極33(第4部分33d)と信号電極34(第4部分34d)との間隔よりも大きい。このように、光変調素子1Aでは、変調信号S12及び変調信号S21のエネルギーがより大きい第1領域10eにおいて、信号電極33と信号電極34とが離れ、変調信号S12及び変調信号S21のエネルギーが減衰した第2領域10fにおいて、信号電極33と信号電極34とが近づくように、信号電極33及び信号電極34が配置されている。このため、信号電極33と信号電極34との間のクロストークを低減でき、光変調素子1Aの性能低下を抑制することが可能となる。
【0069】
さらに、サブMZ部41とサブMZ部42とは対を成して第1信号光成分を生成する。信号電極32は、サブMZ部41を伝搬する光を変調するための変調信号S11を伝送し、信号電極33は、サブMZ部42を伝搬する光を変調するための変調信号S12を伝送する。そして、信号電極32及び信号電極33は、第1領域10eにおいて分岐導波路41bを挟んで分岐導波路41a及び分岐導波路42aに設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路42aを挟んで分岐導波路41b及び分岐導波路42bに設けられている。このように、第1領域10eにおける信号電極32と信号電極33との間隔は、第2領域10fにおける信号電極33(第4部分33d)と信号電極34(第4部分34d)との間隔よりも大きくなるように配置されている。
【0070】
また、サブMZ部51とサブMZ部52とは対を成して第2信号光成分を生成する。信号電極34は、サブMZ部51を伝搬する光を変調するための変調信号S21を伝送し、信号電極35は、サブMZ部52を伝搬する光を変調するための変調信号S22を伝送する。そして、信号電極34及び信号電極35は、第1領域10eにおいて分岐導波路52aを挟んで分岐導波路51b及び分岐導波路52bに設けられ、第2領域10fにおいて分岐導波路51bを挟んで分岐導波路51a及び分岐導波路52aに設けられている。このように、第1領域10eにおける信号電極34と信号電極35との間隔は、第2領域10fにおける信号電極33(第4部分33d)と信号電極34(第4部分34d)との間隔よりも大きくなるように配置されている。
【0071】
したがって、信号電極32及び信号電極33の間隔、並びに、信号電極34及び信号電極35の間隔を確保することができ、信号電極32及び信号電極33の間のクロストーク、並びに、信号電極34及び信号電極35の間のクロストークを低減することが可能となる。その結果、光変調素子1Aの性能低下を抑制することが可能となる。
【0072】
以上のように、光変調素子1Aでは、信号電極33及び信号電極34が、仮想線Cに対する線対称性が向上するように配置されるとともに、変調信号S12及び変調信号S21の上流側における信号電極33と信号電極34との間隔が変調信号S12及び変調信号S21の下流側における信号電極33と信号電極34との間隔よりも大きくなるように配置されている。さらに、信号電極32及び信号電極35が、仮想線Cに対する線対称性が向上するように配置されるとともに、信号電極32と信号電極33との間隔及び信号電極34と信号電極35との間隔が、変調信号S12及び変調信号S21の下流側における信号電極33と信号電極34との間隔よりも大きくなるように配置されている。
【0073】
このように、光変調素子1Aでは、仮想線Cに対する線対称性が向上するように複数の信号電極を配置する際に、対を成す(同系統の)サブMZ部に配置される2つの信号電極の間隔を一定以上に確保して、同系統の信号電極間のクロストークを低減することを優先している。そして、互いに異なる系統に属するサブMZ部に配置される2つの信号電極については、変調信号のエネルギーがより大きい第1領域10eにおいて、2つの信号電極が離れるように配置され、変調信号のエネルギーが減衰した第2領域10fにおいて、2つの信号電極が近づくように配置されることで、他系統の信号電極間のクロストークを低減している。これは、同一トリビュタリ信号内のクロストークノイズによる誤変調、つまり同系統のサブMZ部に設けられた信号電極間におけるクロストークによる誤変調よりも、各トリビュタリ間のクロストークノイズによる誤変調、つまり互いに異なる系統のサブMZ部に設けられた信号電極間におけるクロストークによる誤変調の方が、受信装置において信号を復号できる可能性が高いことによる。このため、光変調素子1Aにおいても、基板10の捻れに起因する光変調素子1Aの性能低下を抑制するとともに、信号電極間のクロストークに起因する光変調素子1Aの性能低下を抑制することが可能となる。
【0074】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る光変調素子の構成を概略的に示す平面図である。図3に示されるように、光変調素子1Bは、変調方式において光変調素子1及び光変調素子1Aと相違している。すなわち、光変調素子1Bの変調方式は、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)変調方式である。具体的には、光変調素子1Bは、光変調素子1Aに対して、偏波調整部36を備えていない点で相違している。
【0075】
以上の第3実施形態の光変調素子1Bによっても、上述した第2実施形態の光変調素子1Aと同様の効果が奏される。QAM変調方式では多値の信号レベル判定を行っており、クロストークノイズの影響がより顕著であるため、クロストーク対策が一層重要である。第3実施形態では、サブMZ部41,42を駆動電圧2Vπのフルスイング駆動し、サブMZ部51,52を駆動電圧Vπで駆動することにより、16QAM変調を実現することができる。この動作方式の場合、信号電極32,33における信号強度に比べ、信号電極34,35における信号強度が小さいため、サブMZ部51,52は、サブMZ部41,42からのクロストークノイズの影響を受けやすい。第3実施形態のように、信号電極32,33及び信号電極34,35の間を優先的に低減する構成が、クロストークノイズの影響を低減する上で特に有効である。また、第3実施形態では、分岐導波路31bと分岐導波路31cとを伝搬する光量の比率を4:1あるいは1:4にすることにより、16QAM変調を実現できる。この動作方式の場合、各サブMZ部をフルスイング駆動してデジタル的な変調をしているため、動作クロストークノイズによる影響は比較的小さい。どのサブMZ部の間のクロストークノイズを優先して抑圧すべきかについては、データトリビュタリの各サブMZ部への割り当ての設計に依存する問題となる。しかしながら、クロストークの発生が最も懸念される信号電極同士の最近接箇所を、信号レベルが最も高い位置から避けて配置すること、及び、クロストークノイズの光への作用が少なくなるよう、入力側から遠い位置に配置することは、いずれの形状の集積型光変調器においてもクロストークノイズの影響を抑制するのに有効である。
【0076】
なお、本発明に係る光変調素子は上記実施形態に限定されない。例えば、MZ部の数は2つまたは4つに限定されない。光変調素子は、2以上のMZ部を備えていればよく、そのうちの2つのMZ部における信号電極の配置が光変調素子1における信号電極12及び信号電極13の配置と同様であればよい。
【0077】
また、光変調素子が偶数(2)個のMZ部を備えている場合、2個のMZ部のうち2n−1個のMZ部は仮想線Cに対して側端部10c側に配置され、それ以外の2n−1個のMZ部は仮想線Cに対して側端部10d側に配置されてもよい。この場合、仮想線Cに対して側端部10c側のMZ部に設けられた信号電極の配置が、光変調素子1Aの信号電極32及び信号電極33の配置と同様であってもよく、仮想線Cに対して側端部10d側のMZ部に設けられた信号電極の配置が、光変調素子1Aの信号電極34及び信号電極35の配置と同様であってもよい。このようにすることで、光変調素子の仮想線Cに対する線対称性を向上することができる。このため、基板10の応力の仮想線Cに対する線対称性を向上することができ、基板10の捻れによる光変調素子の性能の低下を抑制することが可能となる。また、仮想線Cを挟んで互いに隣り合う2つの信号電極は、変調信号の入力側(第1領域10e側)において、離れて配置されている。このため、仮想線Cを挟んで互いに隣り合う2つの信号電極間のクロストークを低減することが可能となる。
【0078】
また、光変調素子が奇数個のMZ部を備えている場合、完全な対称性を保った配置はできないため、中央に位置するMZ部の電極のみを非対称な配置とし、他のMZ部では、電極の配置を含めて対称にする。これにより、基板10の捻れを抑制できる。
【0079】
また、光変調素子1の光導波路11は、方向Aに沿って延びる仮想線Cに対して線対称であってもよい。この場合、入力導波路11a及び出力導波路11dは、仮想線C上に配置され、MZ部21及びMZ部22は、仮想線Cに対して線対称となる。この場合、信号電極12と信号電極13とが仮想線Cに対して線対称に配置される。このため、信号電極12及び信号電極13の熱膨張率と基板10の熱膨張率との差に基づく応力を、仮想線Cに対して線対称に生じさせることができる。このため、応力による基板10の捻れを抑制でき、光変調素子1の性能低下を抑制することが可能となる。
【0080】
光変調素子1A及び光変調素子1Bの光導波路31は、方向Aに沿って延びる仮想線Cに対して線対称であってもよい。この場合、入力導波路31a及び出力導波路31dは、仮想線C上に配置され、サブMZ部42及びサブMZ部51、並びに、サブMZ部41及びサブMZ部52は、仮想線Cに対して線対称となる。この場合、信号電極33と信号電極34とが仮想線Cに対して線対称に配置される。また、信号電極32と信号電極35とが仮想線Cに対して線対称に配置される。このため、信号電極32、信号電極33、信号電極34及び信号電極35の熱膨張率と基板10の熱膨張率との差に基づく応力を、仮想線Cに対して線対称に生じさせることができる。このため、応力による基板10の捻れを抑制でき、光変調素子1の性能低下を抑制することが可能となる。
【0081】
また、これまでの説明において仮想線Cは電極及び光導波路等の配置に関する対称軸として説明してきたが、仮想線Cは基板10の方向Bにおける中心線であってもよい。この場合、基板10を含めて光変調素子1,1A,1Bを仮想線Cに対して線対称とすることができ、基板10の捻れによる光変調素子1,1A,1Bの性能低下をさらに抑制することが可能となる。
【0082】
また、光変調素子1では、信号電極12の第1部分12a及び信号電極13の第1部分13aは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよく、信号電極12の第5部分12e及び信号電極13の第5部分13eは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよい。
【0083】
同様に、光変調素子1A,1Bでは、信号電極32の第1部分32a及び信号電極35の第1部分35aは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよく、信号電極32の第5部分32e及び信号電極35の第5部分35eは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよい。さらに、光変調素子1A,1Bでは、信号電極33の第1部分33a及び信号電極34の第1部分34aは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよく、信号電極33の第5部分33e及び信号電極34の第5部分34eは、仮想線Cに対して線対称でなくてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、基板10は、第1領域10e及び第2領域10fの領域に2分割される構成としたが、これに限定されない。基板10は、3以上の領域に分割される構成としてもよい。この場合、互いに隣り合う領域における分極方向は反対であってもよい。また各信号電極は各領域における分極方向に応じて適宜配置される。また、それぞれの分極方向ごとの作用長の和を略等しくすることにより、変調光のチャープを低減できる。
【0085】
また、光変調素子1,1A,1Bは、バイアス制御用の電極をさらに備えてもよい。また、光変調素子1,1A,1Bは、位相調整手段に位相調整用の電極をさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B…光変調素子、10…基板、10e…第1領域、10f…第2領域、11,31…光導波路、12…信号電極(第1信号電極)、13…信号電極(第2信号電極)、21…MZ部(第1マッハツェンダ部)、21a…分岐導波路(第1分岐導波路)、21b…分岐導波路(第2分岐導波路)、22…MZ部(第2マッハツェンダ部)、22a…分岐導波路(第3分岐導波路)、22b…分岐導波路(第4分岐導波路)、32…信号電極(第3信号電極)、33…信号電極(第1信号電極)、34…信号電極(第2信号電極)、35…信号電極(第4信号電極)、41…サブMZ部(第3マッハツェンダ部)、41a…分岐導波路(第5分岐導波路)、41b…分岐導波路(第6分岐導波路)、42…サブMZ部(第1マッハツェンダ部)、42a…分岐導波路(第1分岐導波路)、42b…分岐導波路(第2分岐導波路)、51…サブMZ部(第2マッハツェンダ部)、51a…分岐導波路(第3分岐導波路)、51b…分岐導波路(第4分岐導波路)、52…サブMZ部(第4マッハツェンダ部)、52a…分岐導波路(第7分岐導波路)、52b…分岐導波路(第8分岐導波路)、A…方向(第1方向)、B…方向(第2方向)、C…仮想線、S1…変調信号(第1変調信号)、S2…変調信号(第2変調信号)、S11…変調信号(第3変調信号)、S12…変調信号(第1変調信号)、S21…変調信号(第2変調信号)、S22…変調信号(第4変調信号)。
図1
図2
図3