【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0058】
[撥水膜形成用組成物]
本発明の撥水膜形成用組成物に配合する各成分は、以下のとおりである。
<化合物(1)>
化合物(i):CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2SiCl
3 (シンクエスト社製)
【0059】
<化合物(2)>
化合物(ii−1)は、以下のようにして調製した。
(工程1−1)
300mLの3つ口丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム粉末の14.1gを取り入れ、AK−225(製品名、旭硝子社製、HCFC225)の350gを加えた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、内温が10℃を超えないように化合物(4)の100g、メタノールの15.8g、およびAK−225の22gを混合した溶液を滴下漏斗からゆっくり滴下した。全量滴下した後、更にメタノールの10gとAK−225の10gを混合した溶液を滴下した。その後、氷浴を取り外し、室温までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温で12時間撹拌後、再び氷浴で冷却し、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。反応終了後、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、固形分をフィルタによりろ過し、エバポレータで濃縮した。回収した濃縮液を減圧蒸留し、化合物(5)の80.6g(収率88%)を得た。
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2COOCH
3 ・・・(4)、
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2CH
2OH ・・・(5)。
【0060】
化合物(5)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):2.2(1H)、4.1(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−85.6(2F)、−114.0(1F)、−122.2(1F)、−123.3(2F)、−127.4(2F)、−135.2(1F)。
【0061】
(工程1−2)
還流冷却器を接続した100mLのナスフラスコに、TFEOの6.64gを取り入れ、炭酸カリウム粉末の7.32gを加えた。窒素雰囲気下、75℃で撹拌しながら、工程1−1で得た化合物(5)の19.87gを加え、1時間撹拌した。続いて120℃まで昇温し、化合物(5)の113.34gを内温が130℃以下になるように制御しながら、ゆっくりと滴下した。全量滴下した後、120℃に保ちながら更に1時間撹拌し、加熱を止めて室温に下がるまで撹拌を続けた。塩酸水溶液を加えて、過剰の炭酸カリウムを処理し、水とAK−225を加えて分液処理を行った。3回の水洗後、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することによって、高粘度のオリゴマーを得た。再び、AK−225の150gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AK−225)に展開して分取した。各フラクションについて、単位数(n+1)の平均値を
19F−NMRの積分値から求めた。下式(6)中、(n+1)の平均値が7〜10のフラクションを合わせた化合物(6−i)の48.5g、(n+1)の平均値が13〜16のフラクションを合わせた化合物(6−ii)の13.2gを得た。
CF
3CH
2−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−H ・・・(6)。
【0062】
化合物(6−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重アセトン、基準:TMS) δ(ppm):4.1(2H)、4.8(16H)、6.7〜6.9(8H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重アセトン、基準:CFCl
3) δ(ppm):−74.2(3F)、−84.3〜−85.1(16F)、−89.4〜−90.5(16F)、−120.2(14F)、−122.0(2F)、−126.6(14F)、−127.0(2F)、−145.1(8F)。
単位数(n+1)の平均値:8。
【0063】
化合物(6−ii)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重アセトン、基準:TMS) δ(ppm):4.1(2H)、4.8(28H)、6.7〜6.9(14H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重アセトン、基準:CFCl
3) δ(ppm):−74.2(3F)、−84.3〜−85.1(28F)、−89.4〜−90.5(28F)、−120.2(26F)、−122.0(2F)、−126.6(26F)、−127.0(2F)、−145.1(14F)。
単位数(n+1)の平均値:14。
【0064】
(工程1−3)
還流冷却器を接続した300mLのナスフラスコに、工程1−2で得た化合物(6−i)の113.33g、フッ化ナトリウム粉末の5.0g、およびAK−225の150gを取り入れ、CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COFの84.75gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で13時間撹拌した後、70℃で3時間撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COFとAK−225を減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:AK−225)で高極性の不純物を除去し、下式(7)中、単位数(n+1)の平均値が8である、化合物(7−i)の100.67g(収率80%)を得た。
CF
3CH
2−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−C(=O)CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3 ・・・(7)。
【0065】
化合物(7−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):4.4(16H)、4.9(2H)、6.0−6.2(8H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−75.2(3F)、−80.0(1F)、−81.9(3F)、−82.7(3F)、−84.7〜−85.0(16F)、−86.0(1F)、−90.5〜−93.0(16F)、−121.1(2F)、−121.5(14F)、−128.0(16F)、−130.3(2F)、−132.5(1F)、−145.3(8F)。
単位数(n+1)の平均値:8。
【0066】
(工程1−4)
オートクレーブ(ニッケル製、内容積1L)を用意し、オートクレーブのガス出口に、0℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また−10℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにR−113(CF
2ClCFCl
2)の750gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスと記す。)を、25℃、流速3.2L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、工程1−3で得た化合物(7−i)の130gをR−113の448gに溶解した溶液を、22時間かけて注入した。
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、R−113中に0.015g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の8mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。20分撹拌した後、再びベンゼン溶液の4mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作を更に7回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.6gであった。
更に、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、下式(8)中、単位数(n)の平均値が7である、化合物(8−i)の152.1g(収率99%)を得た。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O−C(=O)CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3 ・・・(8)。
【0067】
化合物(8−i)のNMRスペクトル;
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−80.0(1F)、−82.0〜−82.5(6F)、−84.0(30F)、−86.7〜87.8(6F)、−89.2(34F)、−126.5(32F)、−130.4(2F)、−132.4(1F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0068】
(工程1−5)
500mLのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(以下、PFAと記す。)製丸底ナスフラスコに、工程1−4で得た化合物(8−i)の120gおよびAK−225の240gを入れた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、メタノールの6.1gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。窒素でバブリングしながら12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、下式(9)中、単位数(n)の平均値が7である、前駆体(9−i)の108.5g(収率100%)を得た。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2C(=O)OCH
3 ・・・(9)。
【0069】
前駆体(9−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.0(30F)、−88.2(3F)、−89.2(34F)、−119.8(2F)、−126.5(30F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0070】
(工程1−6)
300mLのナスフラスコに、工程1−5で得た前駆体(9−i)の92.5gおよびH
2NCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3の6.51gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、前駆体(9−i)の98%が化合物(10−i)に変換していることを確認した。また、H
2NCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3のすべてが反応しており、副生物であるメタノールが生成していた。このようにして、下式(10)中、単位数(n)の平均値が7である、化合物(10−i)を97%含む組成物を得た。この組成物を化合物(ii−1)として使用した。化合物(10−i)の数平均分子量は、2,900であった。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2C(=O)NHCH
2CH
2CH
2−Si(OCH
3)
3 ・・・(10)。
【0071】
化合物(10−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):0.6(2H)、1.6(2H)、2.8(1H)、3.3(2H)、3.5(9H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(30F)、−87.9(3F)、−89.3(34F)、−120.8(2F)、−126.6(28F)、−127.2(2F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0072】
化合物(ii−2)は、以下のようにして調製した。
(工程2−1)
還流冷却器を接続した200mLのナスフラスコに、工程1−2で得た化合物(6−ii)の114.72g、フッ化ナトリウム粉末の8.1g、およびAK−225の101.72gを取り入れ、CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COFの95.18gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で12時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COFとAK−225を減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:AK−225)で高極性の不純物を除去し、上式(7)中、単位数(n+1)の平均値が14である、化合物(7−ii)の94.57g(収率77%)を得た。
【0073】
化合物(7−ii)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):4.4(28H)、4.9(2H)、6.0−6.2(14H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−75.2(3F)、−80.0(1F)、−81.9(3F)、−82.7(3F)、−84.7〜−85.0(28F)、−86.0(1F)、−90.5〜−93.0(28F)、−121.1(2F)、−121.5(26F)、−128.0(28F)、−130.3(2F)、−132.5(1F)、−145.3(14F)。
単位数(n+1)の平均値:14。
【0074】
(工程2−2)
オートクレーブ(ニッケル製、内容積3L)を用意し、オートクレーブのガス出口に、0℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また−10℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにR−113の2,350gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、20%フッ素ガスを、25℃、流速4.2L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、工程2−1で得た化合物(7−ii)の213gをR−113の732gに溶解した溶液を、29時間かけて注入した。
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、R−113中に0.009g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の4mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。20分撹拌した後、再びベンゼン溶液の5mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作を更に7回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.4gであった。
更に、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、上式(8)中、単位数(n)の平均値が13である、化合物(8−ii)の250.1g(収率99%)を得た。
【0075】
化合物(8−ii)のNMRスペクトル;
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−80.3(1F)、−82.0〜−82.5(6F)、−84.2(54F)、−86.9〜88.0(6F)、−89.4(58F)、−126.6(56F)、−130.4(2F)、−132.4(1F)。
単位数(n)の平均値:13。
【0076】
(工程2−3)
500mLのPFA製丸底ナスフラスコに、工程2−2で得た化合物(8−ii)の110gおよびAK−225の220gを入れた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、メタノールの3.5gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。窒素でバブリングしながら12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、上式(9)中、単位数(n)の平均値が13である、前駆体(9−ii)の103g(収率100%)を得た。
【0077】
前駆体(4a−1ii)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.0(54F)、−88.2(3F)、−89.2(58F)、−119.8(2F)、−126.5(54F)。
単位数(n)の平均値:13。
【0078】
(工程2−4)
300mLのナスフラスコに、工程2−3で得た前駆体(9−ii)の100.5gおよびH
2NCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3の4.38gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、前駆体(9−ii)の98%が化合物(10−ii)に変換していることを確認した。また、H
2NCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3のすべてが反応しており、副生物であるメタノールが生成していた。このようにして、上式(10)中、単位数(n)の平均値が13である、化合物(10−ii)を97%含む組成物を得た。この組成物を、化合物(ii−2)として使用した。化合物(10−ii)の数平均分子量は、4,900であった。
【0079】
化合物(10−ii)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):0.6(2H)、1.6(2H)、2.8(1H)、3.3(2H)、3.5(9H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(54F)、−87.9(3F)、−89.3(58F)、−120.8(2F)、−126.6(52F)、−127.2(2F)。
単位数(n)の平均値:13。
【0080】
化合物(ii−3)は、以下のようにして調製した。
(工程3−1)
500mLの3つ口ナスフラスコに、塩化リチウムの0.92gをエタノールの91.6gに溶解させた。これに工程1−5で得た前駆体(9−i)の120.0gを加えて氷浴で冷却しながら、水素化ホウ素ナトリウムの3.75gをエタノールの112.4gに溶解した溶液をゆっくり滴下した。その後、氷浴を取り外し、室温までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温で12時間撹拌後、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。AK−225の100mLを添加し、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をエバポレータで濃縮し、下式(11)中、単位数(n)の平均値が7である、化合物(11−i)の119.0g(収率100%)を得た。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2OH ・・・(11)。
【0081】
化合物(11−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):1.8(1H)、4.0(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(30F)、−87.7(3F)、−89.3(34F)、−123.7(2F)、−126.6(28F)、−127.8(2F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0082】
(工程3−2)
500mLの3つ口ナスフラスコ内にて、水素化ナトリウムの2.26gをテトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)の22.6gに懸濁した。これに工程3−1で得た化合物(11−i)の118.5gをAC−2000(製品名、旭硝子社製)の212.4gで希釈した溶液を滴下し、更に臭化アリルの15.7gを滴下した。油浴で70℃として5時間撹拌した。得られた反応粗液を水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をシリカゲルカラムに通し、回収した溶液をエバポレータで濃縮し、ヘキサンで3回洗浄し、下式(12)中、単位数(n)の平均値が7である、前駆体(12−i)の99.9g(収率83%)を得た。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2O−CH
2CH=CH
2 ・・・(12)。
【0083】
前駆体(12−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):3.8(2H)、4.1(2H)、5.2(2H)、5.9(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(30F)、−87.7(3F)、−89.3(34F)、−120.5(2F)、−126.6(28F)、−127.6(2F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0084】
(工程3−3)
100mLのポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)製密閉式耐圧容器に、工程3−2で得た前駆体(12−i)の49.0g、ジ−tert−ブチルペルオキシドの0.26g、トリクロロシランの23.7gおよびHFE−7300(製品名、3M社製)の24.5gを入れ、120℃で8時間撹拌した。減圧濃縮して未反応物や溶媒等を留去した後、滴下ロートを備えたフラスコに入れ、HFE−7300の50gを入れて室温で撹拌した。オルトギ酸トリメチルとメタノールの混合溶液15.0g(オルトギ酸トリメチル:メタノール=25:1[mol:mol])を滴下し、60℃にて3時間反応させた。反応終了後、溶媒等を減圧留去し、残渣に0.05gの活性炭を加えて1時間撹拌した後、0.5μm孔径のメンブランフィルタでろ過し、下式(13)中、単位数(n)の平均値が7である、化合物(13−i)と、下式(14)中、単位数(n)の平均値が7である、化合物(14−i)との混合物の49.5g(収率97%)を得た。化合物(13−i)と化合物(14−i)とのモル比は、NMRより93:7であった。混合物の数平均分子量は、2,900であった。この混合物を、化合物(ii−3)として使用した。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2OCH
2CH
2CH
2−Si(OCH
3)
3 ・・・(13)、
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2OCH
2CH(CH
3)−Si(OCH
3)
3 ・・・(14)。
【0085】
化合物(13−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):0.7(2H)、1.7(2H)、3.6(11H)、3.8(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(30F)、−87.7(3F)、−89.3(34F)、−120.8(2F)、−126.6(28F)、−127.6(2F)。
化合物(14−i)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):1.1(3H)、1.8(1H)、3.6(11H)、3.8(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.1(30F)、−87.7(3F)、−89.3(34F)、−120.8(2F)、−126.6(28F)、−127.6(2F)。
単位数(n)の平均値:7。
【0086】
化合物(ii−4)は、特開2011−116947号公報の実施例1に従って合成した。化合物(ii−4)は以下の構造を有し、(15a)50モル%、(15b)25モル%及び(15c)25モル%よりなる混合物である。数平均分子量は、4400である。
F
3C(OC
2F
4)
p(OCF
2)
q-OCF
2CH
2OC
3H
6Si(OCH
3)
3 (15a)
(CH
3O)
3SiC
3H
6OCH
2-CF
2-(OC
2F
4)
p(OCF
2)
q-OCF
2CH
2OC
3H
6Si(OCH
3)
3 (15b)
F
3C(OC
2F
4)
p(OCF
2)
q-OCF
3 (15c)
(p/q=0.9,p+q≒45)
【0087】
化合物(ii−5)は、オプツールDSX(ダイキン工業社製)であり、以下の構造を有する。数平均分子量は約4000である。
上記した化合物(ii−1)〜化合物(ii−5)は、本発明の化合物(2)の実施例に係わる化合物である。
【化1】
【0088】
化合物(ii−6):CF
3O(CF
2CF
2O)
aCF
2CONHC
3H
6Si(OCH
3)
3
(aは7〜8であり、平均値:7.3。数平均分子量:1200)
上記した化合物(ii−6)は、本発明の化合物(2)に対する比較例に係わる化合物である。
【0089】
[撥水膜形成用組成物の調液]
酢酸ブチル(純正化学社製)及びハイドロフルオロエーテル(AE3000、旭硝子社製、CF
3CH
2OCF
2CHF
2)の混合溶媒(酢酸ブチル:AE3000が質量比で2:8)を用いて、化合物(A)に相当する成分と、化合物(B)に相当する成分を表1に示す量比で含む混合物を、混合溶媒を100質量%とした場合に、7質量%となるように希釈し、60分間撹拌して、撥水膜形成用組成物を得た。
【0090】
[下地膜形成用組成物の調製]
酢酸ブチル(純正化学社製)で、テトライソシアナトシラン(マツモトファインケミカル社製)を5質量%となるように希釈して、下地膜形成用成物を得た。
【0091】
[撥水膜の形成]
基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライムガラス基板(水接触角5度、300mm×300mm×厚さ3mm)を用い、該ガラス基板の表面に、上記で得られた下地層形成用組成物0.5gをスキージコート法によって塗布し、25℃で1分間乾燥し下地層(未硬化)を形成した。次いで、形成した下地層(未硬化)の表面に、上記で得られた撥水層形成用組成物のいずれかの0.5gをスキージコート法によって塗布し、50℃、60%RHに設定された恒温恒湿槽で48時間保持して撥水層を形成すると同時に下地層の硬化を行った後、撥水層の表面を2−プロパノールを染み込ませた紙ウェスで拭き上げることで、基体側から順に下地層/撥水層からなる撥水膜を有する撥水膜付き基体を得た。
【0092】
[評価]
上記の例で得られた撥水膜付き基体の評価を、以下のように行った。
<撥水性>
撥水性は以下の方法で測定した水接触角(CA)で評価した。まず、以下の各試験を行う前に初期値を測定した。なお、初期の水接触角(CA)が100°以上であれば、実使用に充分耐える撥水性を有するといえる。
(水接触角(CA))
撥水膜付き基体の撥水膜表面に置いた、直径1mmの水滴の接触角をDM−701(協和界面科学社製)を用いて測定した。撥水膜表面における異なる5ヶ所で測定を行い、その平均値を算出した。
【0093】
<耐薬品性>
(耐アルカリ性試験)
撥水膜付き基体を1規定NaOH水溶液(pH:14)に2時間浸漬した後、水洗、風乾し、上記方法により水接触角を測定した。上記試験後における水接触角(CA)が70°以上であれば、実使用に充分な耐アルカリ性を有するといえる。
(塩水噴霧試験(SST))
JIS H8502に準拠して塩水噴霧試験を行った。すなわち、撥水膜付き基体の撥水膜表面を、塩水噴霧試験機(スガ試験機社製)内で300時間塩水雰囲気に暴露した後、上記方法により水接触角を測定した。上記試験後における水接触角(CA)が70°以上であれば、実使用に充分な耐塩水性を有するといえる。
【0094】
<耐光性>
(耐光性試験)
撥水膜付き基体の撥水膜表面に対し、東洋精機社製SUNTEST XLS+を用いて、ブラックパネル温度63℃にて、光線(650W/m
2、300〜700nm)を1500時間照射した後、上記方法により水接触角を測定した。上記試験後における水接触角(CA)が100°以上であれば、実使用に充分な耐光性を有するといえる。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、実施例の撥水膜付き基体は、初期撥水性に優れ、かつ耐アルカリ性試験、塩水噴霧試験及び耐光性試験後にも、良好な撥水性を維持していることがわかる。特に、(B)成分の量が増加すると、耐アルカリ性試験、塩水噴霧試験及び耐光性試験後における、撥水性の維持が一層、良好になる傾向があることがわかる。また、化合物(ii−1)及び(ii−2)を用いた実施例の撥水膜付き基体は、耐光性試験後の撥水性の維持の点で優れていることがわかる。
一方、比較例1〜3では、本発明の(B)成分に相当する成分の数平均分子量が小さい組成物が用いられているが、耐アルカリ性試験後に撥水性を維持することができず、また、比較例1及び2では、塩水噴霧試験後の水接触角の低下幅も大きかった。さらに、比較例4では、本発明の(A)成分のみを含む組成物が用いられているが、耐アルカリ性試験後、塩水噴霧試験後及び耐光性試験後の水接触角の低下幅が大きく、比較例5では、本発明の(B)成分のみを含む組成物が用いられているが、耐光性試験後の水接触角の低下幅が大きかった。