(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第2の末端に、第2の末端原子が炭素原子である場合は炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基が、第2の末端原子が酸素原子である場合は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が結合している、請求項1に記載の含フッ素エーテル化合物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
【0015】
(メタ)アクリロイル基とは、後述の−C(=O)C(R)=CH
2基をいい、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称である。
(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
重合性単量体とは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。
エーテル性酸素原子とは、炭素原子−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子である。
連結基とは、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖と(メタ)アクリロイル基とを連結するための基であり、たとえば、後述する式(1)中のBから−C(=O)C(R)=CH
2を除いた基であり、該基自体が前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖に属さない他のオキシペルフルオロアルキレン基を有していてもよい。
有機基とは、炭素原子を有する基である。
【0016】
[含フッ素エーテル化合物]
本発明の含フッ素エーテル化合物(以下、本化合物とも記す。)は、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基と、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖(以下、第1実施形態とも記す。)または炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基と該基以外のオキシペルフルオロアルキレン基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖(以下、第2実施形態とも記す。)のいずれかと、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第1の末端に結合した連結基と、連結基に結合した(メタ)アクリロイル基の1つ以上とを有する化合物である。
【0017】
本化合物は、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖に属さない他のオキシペルフルオロアルキレン基を有していてもよい。
本化合物は、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第1の末端のみに連結基を有していてもよく、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の両方の末端(すなわち第1の末端と第2の末端)に連結基を有していてもよい。ハードコート層において、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第2の末端に結合した末端基が自由端となり、ハードコート層に防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第1の末端のみに連結基を有することが好ましい。
本化合物は、単一化合物であってもよく、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、末端基、連結基等が異なる2種類以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記2種類のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の一方(第1実施形態)は、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基と、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基とが結合してなる単位が繰り返しからなる。
炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基は、炭素数が同じ1種のオキシペルフルオロアルキレン単位のみから構成されていてもよく、炭素数が異なる2種のオキシペルフルオロアルキレン単位から構成されていてもよい。炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基としては、炭素数2のペルオキシアルキレン基の1〜3つからなる基が好ましい。炭素数2のペルオキシアルキレン基としては、直鎖状のペルオキシアルキレン基であるオキシペルフルオロジメチレン基(CF
2CF
2O)が好ましい。
【0019】
炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基は、炭素数が同じ1種のオキシペルフルオロアルキレン単位のみから構成されていてもよく、炭素数が異なる2種以上のオキシペルフルオロアルキレン単位から構成されていてもよい。
炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基としては、ハードコート層に油性インクはじき性を充分に付与する点から、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基を有するものが好ましく、(CF
2CF
2CF
2CF
2O)を有するものが好ましい。
【0020】
本化合物が、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基を有することによってハードコート層に指紋汚れ除去性を付与できる。また、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基を有することによってハードコート層に油性インクはじき性を付与できる。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は上記2種の基が結合してなる単位の繰り返しによって構成される。単位の繰り返しは、上記2種の基がランダム、ブロック、交互のいずれで配置されてもよいが、交互に配置されることが好ましい。上記2種の基が交互に配置されると、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基による特性および炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基による特性の両方を効率的に発揮できる。すなわち、ハードコート層は防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)に加えて、耐摩耗性にも優れる。
【0021】
前記2種類のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖のもう一方(第2実施形態)は、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基と該基以外のオキシペルフルオロアルキレン基とが結合してなる単位が繰り返しからなる。
炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基としては分岐を有するオキシペルフルオロアルキレン基でもよいが、直鎖状のオキシペルフルオロアルキレン基であるオキシペルフルオロテトラメチレン基(CF
2CF
2CF
2CF
2O)がより好ましい。
他方のオキシペルフルオロアルキレン基としては、炭素数1、2、3、5または6の直鎖状または分岐状のオキシペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数2のペルオキシアルキレン基が特に好ましい。炭素数2のペルオキシアルキレン基としては、直鎖状のペルオキシアルキレン基であるオキシペルフルオロジメチレン基(CF
2CF
2O)が好ましい。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖中の単位はすべて同一であってもよく、一部の単位は他の単位と異なっていてもよい。2つの単位が異なるとは炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基以外のオキシペルフルオロアルキレン基が異なることをいう。
【0022】
本化合物が、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基を有することによってハードコート層が油性インクはじき性に優れる。ただし、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基のみからなるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の結晶性が高く、指紋汚れ除去性が不充分となる。そこで、それ以外のオキシペルフルオロアルキレン基を含ませることによって、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の結晶性が低下し、ハードコート層が油性インクはじき性および指紋汚れ除去性に優れるものとなる。
【0023】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖においては、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基とそれ以外のオキシペルフルオロアルキレン基とがランダム、ブロック、交互のいずれで配置されてもよいが、交互に配置されることが好ましい。交互に配置されると、ハードコート層は防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)に加えて、耐摩耗性にも優れる。
ブロックの場合も、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第1の末端のみに連結基を有することが好ましい。その際、ペルフルオロアルキル基に近い側が、炭素数の少ないペルフルオロアルキレン基、(メタ)アクリロイル基に近い側が、炭素数の多いペルフルオロアルキレン基であると、ハードコート層が防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)により優れる。たとえば、ペルフルオロアルキル基に近い側が、炭素数が1〜3のオキシペルフルオロアルキレン基のブロック、(メタ)アクリロイル基に近い側が、炭素数が4のオキシペルフルオロアルキレン基を必須とする炭素数が4〜15のオキシペルフルオロアルキレン基のブロック、であることが好ましい。
【0024】
上記2種のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖のうち第1実施形態のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖としては、炭素数2のオキシペルフルオロアルキレン基と炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が好ましい。そのうちでも、オキシペルフルオロジメチレン基とオキシペルフルオロテトラメチレン基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が特に好ましい。
上記2種のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖のうち第2実施形態のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖としては、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基と炭素数2のオキシペルフルオロアルキレン基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であることが好ましい。そのうちでも、オキシペルフルオロテトラメチレン基とオキシペルフルオロジメチレン基とが結合してなる単位が繰り返されたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が特に好ましい。
なお、以下、上記2種類のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を総称して単にポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖ともいう。
【0025】
オキシペルフルオロジメチレン基と炭素数3以上のオキシペルフルオロアルキレン基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)とが結合した単位が繰り返したポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は、米国特許第5134211号明細書に記載の公知の方法を使用して製造できる。この公知の方法により、水素原子を有するポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖を有する化合物が製造できる。この公知方法により得られた化合物のポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖の水素原子をフッ素原子に変換してポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖とすることができる。
すなわち、上記公知の方法では、「CF
2=CFOR
4CF
2CH
2OH」の重付加反応により「[CF
2CFHOR
4CF
2CH
2O]」の繰り返しからなるポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖を有する化合物が製造できる(上記「R
4」はペルフルオロアルキレン基や「[CF
2CF(CF
3)O]
n(CF
2)
m」等である。)。したがって、次に、「[CF
2CFHOR
4CF
2CH
2O]」をフッ素化することにより「[CF
2CF
2OR
4CF
2CF
2O]」を単位とするポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖とすることができる。水素原子のフッ素原子への置換は元素状フッ素を用いる直接フッ素化法を用いることが好ましい。
よって、本発明におけるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は、この方法で製造できるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であることが好ましい。
【0026】
前記公知の方法で、「CF
2=CFOR
4CF
2CH
2OH」の重付加反応により「[CF
2CFHOR
4CF
2CH
2O]」の繰り返しからなるポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖を有する化合物を製造する際に、アルカノールやポリフルオロアルカノールを開始剤として使用すると、ポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖のCF
2CFHO側末端の炭素原子にアルコキシ基やポリフルオロアルコキシ基が結合した化合物が生成する。したがって、アルコキシ基やポリフルオロアルコキシ基が結合したポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖を有する化合物をフッ素化することにより、末端のオキシペルフルオロジメチレン基の炭素原子にペルフルオロアルコキシ基が結合したポリ(オキシポリフルオロアルキレン)鎖を形成することができる。アルコキシ基やポリフルオロアルコキシ基の代わりに、エーテル性酸素原子を有する、アルカノールやポリフルオロアルカノールを使用することにより、同様にエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルコキシ基を形成できる。
【0027】
本化合物は、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の第2の末端に、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基が結合している化合物が好ましく、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が結合している化合物が特に好ましい。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の2つの末端の結合手は炭素原子の結合手と酸素原子の結合手からなる。したがって、上記ペルフルオロアルキル基とエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキル基はいずれも、第2の末端が炭素原子の結合手側である場合には酸素原子を介して結合し、第2の末端が酸素原子の結合手側である場合には直接結合する。すなわち、第2の末端が炭素原子の結合手側である場合には、炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルコキシ基が第2の末端に結合する。
このような構成であると、ハードコート層に著しく優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与できる。ペルフルオロアルキル基としては、CF
3−またはCF
3CF
2−が特に好ましい。
【0028】
本化合物は、(オキシペルフルオロアルキレン)鎖において、第1実施形態ではペルフルオロアルキル基に近い側が、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基であり、(メタ)アクリロイル基に近い側が、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種の1〜3つからなる基である化合物が好ましい。ペルフルオロアルキル基に近い方が、オキシペルフルオロジメチレン基であり、(メタ)アクリロイル基に近い側が、もう一方のオキシペルフルオロアルキレン基である化合物が特に好ましい。
(オキシペルフルオロアルキレン)鎖において、第2実施形態では、ペルフルオロアルキル基に近い側が、炭素数4以外のオキシペルフルオロアルキレン基であり、(メタ)アクリロイル基に近い側が、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基である化合物が好ましい。ペルフルオロアルキル基に近い方が、オキシペルフルオロジメチレン基であり、(メタ)アクリロイル基に近い側が、炭素数4のオキシペルフルオロアルキレン基である化合物が特に好ましい。
このような構成であると、ハードコート層が防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)に著しく優れる。この理由は、柔軟性の高いオキシペルフルオロジメチレン基が自由端であるペルフルオロアルキル基に近い側に存在でき、ペルフルオロアルキル基の運動性が高くなるためと考えられる。
【0029】
本化合物の数平均分子量は、2,000〜40,000が好ましい。数平均分子量が該範囲内であれば、ハードコート層形成用組成物における他の成分との相溶性に優れる。本化合物の数平均分子量は、2,100〜10,000がより好ましく、2,400〜6,000が特に好ましい。
【0030】
本化合物は、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有するため、フッ素原子の含有量が多い。さらに、上述したように、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の結晶性を低下させ、ハードコート層に指紋汚れ除去性を付与する炭素数の少ないオキシペルフルオロアルキレン基(特に、オキシペルフルオロジメチレン基)と、ハードコート層に油性インクはじき性を付与する炭素数の多いオキシペルフルオロアルキレン基(特に、オキシペルフルオロテトラメチレン基)とが交互に配置されるように連結している。そのため、本化合物は、ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与できる。
【0031】
(化合物(1))
本化合物としては、第1実施形態に係る化合物として、下式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)とも記す。)が好ましい。
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−B ・・・(1)
ただし、式(1)中の記号は以下の通りである。
n:2以上の整数。
R
f1:ペルフルオロジメチレン基。
R
f2:炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3〜18のペルフルオロアルキレン基。
A:炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基、またはB。
B:下式(2)で表される基。
−R
f3(CX
2)
m1−Y
1−Q−[Y
2C(=O)C(R)=CH
2]
m2 ・・・(2)
ただし、式(2)中の記号は下記の通りである。
R
f3:炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基。
X:水素原子またはフッ素原子。
m1:0または1。
Y
1:単結合、−C(=O)NH−(ただし、QはNに結合する。)、−OC(=O)NH−(ただし、QはNに結合する。)、−O−、−C(=O)O−(ただし、QはOに結合する。)、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−または−NHC(=O)O−(ただし、QはOに結合する)。
Q:単結合または(m2+1)価の有機基。
Y
2:−O−、−NH−または−NHC(=O)O−(C
kH
2k)−O−(ただし、kは1〜10の整数であり、QはNに結合する)。
R:水素原子またはメチル基。
m2:1以上の整数。
ただし、式(2)において、m1が0のとき、Y
1が−O−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)−であることはない。また、Y
1が−C(=O)NH−、−OC(=O)NH−、−O−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−または−NHC(=O)O−であるとき、Qは(m2+1)価の有機基である。また、Y
1とY
2とが−O−のとき、Qは単結合ではない。
【0032】
式(1)において、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は[R
f1O−R
f2O]
nで表された部分である。
式(1)中のnは、2以上の整数である。化合物(1)の数平均分子量が大きすぎると、単位分子量当たりに存在する(メタ)アクリロイル基の数が減少し、耐摩耗性が低下する点から、nの上限は45が好ましい。nは、4〜40が好ましく、5〜35が特に好ましい。
【0033】
式(1)中のR
f1は、ペルフルオロジメチレン基(すなわち、CF
2CF
2)である。R
f1がペルフルオロジメチレン基(すなわち、CF
2CF
2)であることより、化合物(1)は、熱的、化学的な安定性が高く、ハードコート層に優れた指紋汚れ除去性を付与する。
【0034】
式(1)中のR
f2は、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3〜18のペルフルオロアルキレン基である。R
f2は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ハードコート層に優れた油性インクはじき性を付与する点からは、直鎖状が好ましい。R
f2は、炭素数3〜6のペルフルオロアルキレン基であるか、または、エーテル性酸素原子を介して炭素数3〜6のペルフルオロアルキレン基が2つまたは3つ繰り返した構造を有する、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数6〜18のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
R
f2は、ハードコート層に油性インクはじき性を充分に付与する点からは、炭素数4のペルフルオロアルキレン基であることが好ましく、ペルフルオロテトラメチレン基(すなわち、CF
2CF
2CF
2CF
2)であることが特に好ましい。
【0035】
単位[R
f1O−R
f2O]の具体例としては、下記が挙げられる。
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O)等。
【0036】
[R
f1O−R
f2O]以外の本発明におけるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の単位の具体例としては、下記が挙げられる。
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2O−CF
2CF
2O)、
(CF
2OCF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O−CF
2CF
2OCF
2CF
2O)等。
【0037】
単位[R
f1O−R
f2O]としては、ハードコート層に著しく優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、下記が好ましい。
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)。
【0038】
<A基>
末端基Aは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基、またはBである。ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が特に好ましい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0039】
Aの具体例としては、下記が挙げられる。
炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基として:
CF
3−、CF
3CF
2−、CF
3(CF
2)
2−、CF
3(CF
2)
3−、CF
3(CF
2)
4−、CF
3(CF
2)
5−、CF
3CF(CF
3)−等。
【0040】
エーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基として:
CF
3OCF
2CF
2−、CF
3O(CF
2)
3−、CF
3O(CF
2)
4−、CF
3O(CF
2)
5−、CF
3OCF
2CF
2OCF
2CF
2−、CF
3CF
2OCF
2CF
2−、CF
3CF
2O(CF
2)
3−、CF
3CF
2O(CF
2)
4−、CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2−、CF
3(CF
2)
2OCF
2CF
2−、CF
3(CF
2)
2O(CF
2)
3−、CF
3(CF
2)
2OCF(CF
3)CF
2−、CF
3CF(CF
3)OCF
2CF
2−、CF
3CF(CF
3)O(CF
2)
3−、CF
3CF(CF
3)OCF(CF
3)CF
2−、CF
3(CF
2)
3OCF
2CF
2−等。
【0041】
Aとしては、ハードコート層に著しく優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、CF
3−またはCF
3CF
2−が好ましい。
【0042】
<B基>
化合物(1)において、Bが分子内に2つある場合には、同一であってもよく、異なっていてもよい。
Bとしては、式(2)におけるY
1、Q、Y
2、m1の組み合わせが下記1〜5のものが好ましい。
1.Y
1:単結合、Q:単結合、Y
2:−O−、m1=1
2.Y
1:−C(=O)NH−、Q:(m2+1)価の有機基、Y
2:−O−または−NH−、m1=0
3.Y
1:−OC(=O)NH−、Q:(m2+1)価の有機基、Y
2:−O−または−NH−、m1=1
4.Y
1:−O−、Q:(m2+1)価の有機基、Y
2:−O−、m1=1
5.Y
1:−OC(=O)NH−、Q:(m2+1)価の有機基、Y
2:−NHC(=O)O−(C
kH
2k)−O−、m1=1
【0043】
Bとしては、化合物(1)の製造が容易な点から、式(2−1)〜(2−6)で表される基が特に好ましい。
−R
f3CX
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(2−1)
−R
f3−C(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(2−2)
−R
f3−C(=O)NH−Q
2−NHC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(2−3)
−R
f3CX
2−OC(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(2−4)
−R
f3CX
2−O−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(2−5)
−R
f3CX
2−OC(=O)NH−Q−[NHC(=O)O−(C
kH
2k)−OC(=O)C(R)=CH
2]
m2 ・・・(2−6)
ただし、Q
2は、2価の有機基であり、Q
3は、3価の有機基である。CX
2の2つのXは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、式(2−6)のQはQ
2またはQ
3であり、QがQ
2の場合m2は1、QがQ
3の場合m2は2である。
また、CX
2はCH
2またはCFHであることが好ましく、CH
2であることが特に好ましい。(C
kH
2k)は、直鎖状や分岐状のアルキレン基であり、(CH
2)
kであることが好ましく、kは、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましく、2が特に好ましい。式(2−6)のQがQ
2の場合、Q
2は、Q
2(−NCO)
2で表されるジイソシアネート化合物から2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。式(2−6)のQがQ
3の場合、Q
3は、Q
3(−NCO)
3で表されるトリイソシアネート化合物から3個のイソシアネート基を除いた3価の基である。
【0044】
以下、Bが式(2−1)で表される基である化合物(1)を化合物(1−1)、Bが式(2−2)で表される基である化合物(1)を化合物(1−2)、Bが式(2−3)で表される基である化合物(1)を化合物(1−3)、Bが式(2−4)で表される基である化合物(1)を化合物(1−4)、Bが式(2−5)で表される基である化合物(1)を化合物(1−5)、Bが式(2−6)で表される基である化合物(1)を化合物(1−6)または化合物(1−7)と記す。
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−1)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3−C(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−2)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3−C(=O)NH−Q
2−NHC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−3)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−OC(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−4)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−O−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−5)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−OC(=O)NH−Q
3−[NHC(=O)O−(C
kH
2k)−OC(=O)C(R)=CH
2]
2 ・・・(1−6)
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−OC(=O)NH−Q
2−NHC(=O)O−(C
kH
2k)−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−7)
【0045】
R
f3は、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。後述の化合物(1)の好ましい製造方法が示すように、R
f3は、[(R
f1O)(R
f2O)]の誘導体であることが好ましい。すなわち、[R
f1O−R
f2O]の(R
f2O)側末端CF
2OがCX
2に変換された基であることが好ましい。たとえば、[R
f1O−R
f2O]が[CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O]である場合、−R
f3CX
2−は−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CX
2−、すなわちR
f3はCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2であることが好ましい。
ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、下記が好ましい。
−CF
2CF
2OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)−。
【0046】
Qは、単結合または(m2+1)価の有機基である。(m2+1)価の有機基としては、Q
2、Q
3等が挙げられる。
Q
2としては、アルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキレン基の水素原子の一部が水酸基に置換された基等が挙げられる。Q
2としては、工業的な製造が容易な点から、炭素数2〜6のアルキレン基、該アルキレン基の水素原子の一部が水酸基に置換された基が好ましい。
Q
3としては、ジイソシアネートの3量体に由来するイソシアヌレート環、ビウレット、アダクト等が挙げられる。
【0047】
m2は、1以上の整数であり、工業的な製造が容易な点から、1または2が好ましい。
m2が2以上である場合、1分子中に存在する複数のQ
2およびRは、それぞれ互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。原料の入手容易性や製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
【0048】
<好ましい態様>
化合物(1)としては、上述した好ましいAと、上述した好ましい単位[R
f1O−R
f2O]とを組み合わせた化合物が好ましく、下式で表される化合物が特に好ましい。下式で表される化合物は、工業的に製造しやすく、取扱いやすく、ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与できる。
【0049】
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−1a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−C(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−2a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−C(=O)NH−Q
2−NHC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−3a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−4a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−O−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−5a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
3−[NHC(=O)O−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2]
2 ・・・(1−6a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
2−NHC(=O)O−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−7a)
ただし、A
1は、CF
3−またはCF
3CF
2−である。
【0050】
上記化合物のうちより好ましい化合物は、下記の化合物である。
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−1a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−4a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
3−[NHC(=O)O−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2]
2 ・・・(1−6a)
A
1−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)NH−Q
2−NHC(=O)O−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2 ・・・(1−7a)
【0051】
(化合物(111))
本化合物としては、第2実施形態に係る化合物として、下式(111)で表される化合物(以下、化合物(111)とも記す。)が好ましい。
A−O−[(R
f11O)
x1(R
f12O)
x2]−B ・・・(111)
ただし、式(111)中の記号は以下の通りである。
x1およびx2:それぞれ独立に1以上の整数である。
R
f11:炭素数4のペルフルオロアルキレン基。
R
f12:炭素数4以外のペルフルオロアルキレン基。
A:炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基またはB。
B:下式(2)で表される基。
−R
f3(CX
2)
m1−Y
1−Q−[Y
2C(=O)C(R)=CH
2]
m2 ・・・(2)
ただし、式(2)中の記号は前述の通りである。
【0052】
式(111)中のR
f1は、炭素数4のペルフルオロアルキレン基である。R
f1は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ハードコート層に優れた油性インクはじき性を付与する点からは、直鎖状、すなわちCF
2CF
2CF
2CF
2が好ましい。
【0053】
式(111)中のx2は、1以上の整数である。ハードコート層に優れた指紋汚れ除去性を付与する点から、3以上の整数が好ましく、5以上の整数が特に好ましい。化合物(11)がハードコート層形成用組成物における他の成分との相溶性に優れる点から、20以下の整数が好ましく、10以下の整数が特に好ましい。
【0054】
式(111)中のR
f2は、炭素数4以外のペルフルオロアルキレン基である。R
f2は、炭素数2以上の場合、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ハードコート層に優れた油性インクはじき性を付与する点からは、直鎖状が好ましい。
R
f2は、化合物(111)がハードコート層形成用組成物における他の成分との相溶性に優れる点からは、炭素数1〜3のペルフルオロアルキレン基および炭素数5〜15のペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のペルフルオロアルキレン基および炭素数5〜6のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。ハードコート層に優れた指紋汚れ除去性を付与する点からは、炭素数1〜2のペルフルオロアルキレン基が好ましい。熱的または化学的安定性の点からは、炭素数1以外のペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種が好ましい。R
f2としては、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、炭素数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
式(111)において、[(R
f1O)
x1(R
f2O)
x2]で表された部分は、(R
f1O)と(R
f2O)の結合順序は限定されない。ランダム、ブロック、交互に配置されてもよく、ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点から、交互に配置されることが好ましく、加えてAに近い側が(R
f2O)であり、Bに近い側が(R
f1O)であることが特に好ましい。
【0056】
[(R
f1O)
x1(R
f2O)
x2]としては、ハードコート層に優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与する点からは、下記のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が特に好ましい。
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n
[(CF
2CF
2O)
x1(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
x2]
ただし、nは、上記2種オキシペルフルオロアルキレン基からなる繰返し単位の単位数であり、1以上の整数である。
【0057】
<A基、B基>
種類や好ましい範囲は前述と同様である。
【0058】
<好ましい態様>
化合物(111)としては、上述した化合物(1−1a)〜(1−7a)が挙げられ、より好ましい化合物は(1−1a)、(1−4a)、(1−6a)、(1−7a)である。
【0059】
[含フッ素エーテル化合物の製造方法]
化合物(1−1)は、塩基(トリエチルアミン等)の存在下、下式(5)で表される化合物(5)とClC(=O)C(R)=CH
2とを反応させる方法によって、製造できる。
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3CX
2−OH ・・・(5)
【0060】
化合物(1−2)は、塩基(トリエチルアミン等)の存在下、下式(4)で表される化合物(4)とClC(=O)C(R)=CH
2とを反応させる方法によって、製造できる。
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3−C(=O)NH−Q
2−OH ・・・(4)
【0061】
化合物(1−3)は、塩基(トリエチルアミン等)の存在下、下式(3)で表される化合物(3)とClC(=O)C(R)=CH
2とを反応させる方法によって、製造できる。
A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−R
f3−C(=O)NH−Q
2−NH
2 ・・・(3)
【0062】
化合物(1−4)は、ウレタン化触媒の存在下、化合物(5)とOCN−Q
2−OC(=O)C(R)=CH
2とを反応させる方法によって、製造できる。
【0063】
化合物(1−5)は、化合物(5)とEp−R
3−OC(=O)C(R)=CH
2とを反応させる方法によって、製造できる。Epはエポキシ基であり、R
3はアルキレン基である。反応後、Ep−R
3−は、−CH
2CH(OH)−R
3−、すなわちQ
2となる。
【0064】
化合物(1−6)は、ウレタン化触媒の存在下、化合物(5)およびHO−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2とトリイソシアネート化合物(ジイソシアネート化合物の3量体等)とを反応させる方法によって、製造できる。
化合物(1−7)は、ウレタン化触媒の存在下、化合物(5)およびHO−(CH
2)
2−OC(=O)C(R)=CH
2とジイソシアネート化合物とを反応させる方法によって、製造できる。
【0065】
化合物(5)、化合物(4)または化合物(3)は、A−O−[R
f1O−R
f2O]
n−の構造に応じて公知の方法で製造できる。化合物(5)、化合物(4)または化合物(3)の製造方法は、たとえば、下記の通りである。
【0066】
(化合物(5)の製造方法)
化合物(5)の製造方法について、下式(5a)で表される化合物(5a)を例にとり、説明する。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(5a)
【0067】
<化合物(5a)の製造方法>
下式(12a)で表される化合物(12a)を、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等)を用いて水素還元することによって、下式(11a)で表される化合物(11a)を得る。
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2C(=O)OCH
3 ・・・(12a)
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2CH
2OH ・・・(11a)
【0068】
化合物(11a)とアルカノールやポリフルオロアルカノール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等。以下、A
2−OHと記す。)とを塩基あるいは4級アンモニウム塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水素化ナトリウム、tert−ブトキシカリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等)の存在下で反応させて、下式(10a)で表される化合物(10a)を得る。
A
2−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−H ・・・(10a)
【0069】
化合物(11a)に対するA
2−OHの使用量を制御することによって、目的とする数平均分子量を有する化合物(10a)を合成できる。または、A
2−OHが化合物(11a)自身であってもよく、反応時間の制御や生成物の分離精製によって、目的とする数平均分子量を有する化合物(10a)を合成できる。
化合物(11a)の合成およびその重付加反応による化合物(10a)の合成は、米国特許第5134211号明細書に記載の公知の方法にしたがって実施できる。
【0070】
化合物(10a)とClC(=O)R
4とのエステル化反応によって、下式(9a)で表される化合物(9a)を得る。なお、R
4は、炭素数1〜11のアルキル基、ポリフルオロアルキル基もしくはペルフルオロアルキル基、またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜11のアルキル基、ポリフルオロアルキル基もしくはペルフルオロアルキル基である。
A
2−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−C(=O)R
4 ・・・(9a)
【0071】
さらに、フッ素ガスを用いて化合物(9a)の水素原子をフッ素原子に置換することによって、下式(7a)で表される化合物(7a)を得る。なお、R
f4は、炭素数1〜11のペルフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜11のペルフルオロアルキル基である。Aは、A
2に含まれる水素原子がフッ素原子に置換された基である。該フッ素化工程は、たとえば、国際公開第2000/56694号に記載の方法等にしたがって実施できる。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2O−C(=O)R
f4 ・・・(7a)
【0072】
化合物(7a)にアルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等。以下、R
2OHと記す。R
2は、アルキル基である。)とを反応させることによって、下式(6a)で表される化合物(6a)を得る。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2C(=O)OR
2 ・・・(6a)
【0073】
化合物(6a)を、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等)を用いて水素還元することによって、化合物(5a)を得る。
【0074】
(化合物(4)の製造方法)
化合物(4)の製造方法について、下式(4a)で表される化合物(4a)を例にとり、説明する。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−C(=O)NH−Q
2−OH ・・・(4a)
【0075】
<化合物(4a)の製造方法>
化合物(7a)とH
2N−Q
2−OHとを反応させることによって、化合物(4a)を得る。
【0076】
(化合物(3)の製造方法)
化合物(3)の製造方法について、下式(3a)で表される化合物(3a)を例にとり、説明する。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−C(=O)NH−Q
2−NH
2 ・・・(3a)
【0077】
<化合物(3a)の製造方法>
前記化合物(6a)の末端OR
2を常法で塩素原子に変換してなる下式(8a)で表される化合物(8a)と、H
2N−Q
2−NH
2とを反応させることによって、化合物(3a)を得る。
A−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−C(=O)Cl ・・・(8a)
【0078】
[ハードコート層形成用組成物]
本発明のハードコート層形成用組成物(以下、本組成物とも記す。)は、本化合物と、光重合性化合物(ただし、本化合物を除く。)と、光重合開始剤とを含む。本発明のハードコート層形成用組成物は、必要に応じて媒体、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0079】
(光重合性化合物)
光重合性化合物は、後述する光重合開始剤の存在下、活性エネルギー線を照射することで重合反応を開始する単量体である。
光重合性化合物としては、多官能性重合性単量体(a1)(以下、単量体(a1)とも記す。)、単官能性重合性単量体(a2)(以下、単量体(a2)とも記す。)が挙げられる。ただし、本化合物は除く。
光重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光重合性化合物としては、ハードコート層に優れた耐摩耗性を付与する点から、単量体(a1)を必須成分として含むものが好ましい。
【0080】
単量体(a1)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基は1分子中に3つ以上有することが好ましく、3〜30個有することが特に好ましい。
単量体(a1)としては、ハードコート層に優れた耐摩耗性を付与する点から、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3つ以上有し、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が120以下である単量体(a11)が好ましい。
【0081】
単量体(a11)としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはポリペンタエリスリトールと、アクリル酸またはメタクリル酸との反応生成物であり、かつ(メタ)アクリロイル基を3つ以上、より好ましくは4〜20個有する化合物が挙げられる。具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
単量体(a1)としては、ウレタン結合が水素結合の作用で擬似架橋点として働き、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が小さくなくてもハードコート層に優れた耐摩耗性を付与する点から、ウレタン結合を分子内に有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1分子中に3つ以上有する単量体(a12)も好ましい。
【0083】
単量体(a12)としては、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートや下記の化合物等が挙げられる。
・ペンタエリスリトールまたはポリペンタエリスリトールと、ポリイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物であり、かつ(メタ)アクリロイル基を3つ以上、より好ましくは4〜20個有する化合物。
・水酸基を有するペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートまたは水酸基を有するポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、かつ(メタ)アクリロイル基を3つ以上、より好ましくは4〜20個有する化合物。
【0084】
単量体(a2)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1つ有する化合物が挙げられる。具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
アルキル基の炭素数1〜13のアルキル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等。
【0085】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤が使用できる。たとえば、アリールケトン系光重合開始剤(たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシルオキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(たとえば、スルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド類(たとえば、アシルジアリールホスフィンオキシド等)、その他の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光重合開始剤は、アミン類等の光増感剤と併用してもよい。
【0086】
光重合開始剤の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、(1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム)、α−アシルオキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート。
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等。
【0087】
(媒体)
本組成物は、必要に応じて媒体をさらに含んでいてもよい。媒体を含むことによって、本組成物の形態、粘度、表面張力等を調整でき、塗布方法に適した液物性に制御できる。媒体を含むハードコート層形成用組成物の塗膜は、媒体を除去したのち硬化させてハードコート層とする。
【0088】
媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、本組成物の塗布方法に適した沸点を有する有機溶媒が好ましい。
有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であってもよく、非フッ素系有機溶媒であってもよく、両溶媒を含んでもよい。
【0089】
フッ素系有機溶媒としては、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
フルオロアルカンとしては、炭素数4〜8の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばC
6F
13H(AC−2000:製品名、旭硝子社製)、C
6F
13C
2H
5(AC−6000:製品名、旭硝子社製)、C
2F
5CHFCHFCF
3(バートレル:製品名、デュポン社製)等が挙げられる。
フルオロ芳香族化合物としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4〜12の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばCF
3CH
2OCF
2CF
2H(AE−3000:製品名、旭硝子社製)、C
4F
9OCH
3(ノベック−7100:製品名、3M社製)、C
4F
9OC
2H
5(ノベック−7200:製品名、3M社製)、C
6F
13OCH
3(ノベック−7300:製品名、3M社製)等が挙げられる。
フルオロアルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
フッ素系有機溶媒としては、本化合物が溶解しやすい点で、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルコール、フルオロアルキルエーテルが好ましく、フルオロアルコールおよびフルオロアルキルエーテルが特に好ましい。
【0090】
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、グリコールエーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン等が好ましい。
アルコール系有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が好ましい。
ケトン系有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。
エーテル系有機溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。
グリコールエーテル系有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。
エステル系有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が好ましい。
非フッ素系有機溶媒としては、本化合物の溶解性の点で、グリコールエーテル系有機溶媒およびケトン系有機溶媒が特に好ましい。
【0091】
媒体としては、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルコール、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、ならびに、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒が好ましい。特に、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物およびフルオロアルキルエーテルおよびフルオロアルコールから選ばれるフッ素系有機溶媒が好ましい。
媒体としては、フッ素系有機溶媒であるフルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルコール、非フッ素系有機溶媒である水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒を、合計で媒体全体の90質量%以上含むことが、本化合物の溶解性を高める点で好ましい。
【0092】
(他の添加剤)
本組成物は、必要に応じて他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
他の添加剤としては、コロイダルシリカ、紫外線吸収剤、光安定剤、熱硬化安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、界面活性剤(防曇剤、レベリング剤等)、金属酸化物粒子、各種樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等)等が挙げられる。
また、本化合物を使用する際、本化合物の製造上不可避の化合物(以下、不純物とも記す。)を同伴してもよい。具体的には、本化合物の製造工程で生成した副生成物および本化合物の製造工程で混入した成分である。不純物の含有量は、本化合物(100質量%)に対して5質量%以下が好ましく、2質量%以下が特に好ましい。不純物の含有量が前記範囲であれば、ハードコート層に著しく優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を付与できる。
本化合物中の副生成物の同定および定量は、
1H−NMR(300.4MHz)および
19F−NMR(282.7MHz)によって行う。
【0093】
(組成)
本化合物の含有量は、本組成物の固形分(100質量%)のうち0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜4質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。本化合物の含有量が上記範囲内であれば、本組成物の貯蔵安定性、ハードコート層の外観、耐摩耗性および防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)が良好となる。
【0094】
光重合性化合物の含有量は、本組成物の固形分(100質量%)のうち20〜98.99質量%が好ましく、50〜98.99質量%がより好ましく、60〜98.99質量%がさらに好ましく、80〜98.99が特に好ましい。光重合性化合物の含有量が上記範囲内であれば、本組成物の貯蔵安定性、ハードコート層の外観、耐摩耗性および防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)が良好となる。
【0095】
光重合開始剤の含有量は、本組成物の固形分(100質量%)のうち1〜15質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であれば、光重合性化合物との相溶性が良好である。また、本組成物の硬化性が良好であり、形成する硬化膜は硬度に優れる。
【0096】
媒体を含ませる場合、媒体の含有量は、本組成物(100質量%)のうち50〜95質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、60〜85質量%が特に好ましい。
他の添加剤を含ませる場合、他の添加剤の含有量は、本組成物の固形分(100質量%)のうち0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
【0097】
本組成物の固形分濃度は、塗布方法に適した液物性となるように調整すればよい。本組成物の固形分濃度は、たとえば、5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
【0098】
[物品]
本発明の物品は、基材と、本組成物から形成したハードコート層とを有する。基材とハードコート層との密着性を向上させる点から、基材とハードコート層との間にプライマ層をさらに有していてもよい。
ハードコート層の厚さは、耐摩耗性および防汚性の点から、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmが特に好ましい。
【0099】
(基材)
基材は、耐摩耗性および防汚性が必要とされる種々の物品(光学レンズ、ディスプレイ、光記録媒体等)の本体部分、または該物品の表面を構成する部材である。
基材の表面の材料としては、金属、樹脂、ガラス、セラミック、石、これらの複合材料等が挙げられる。光学レンズ、ディスプレイ、光記録媒体における基材の表面の材料としては、ガラスまたは透明樹脂基材が好ましい。
ガラスとしては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学強化したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。透明樹脂基材の材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0100】
本組成物を用いることで、耐摩耗性および防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)に優れるハードコート層が得られる。該ハードコート層を有する物品は、タッチパネルを構成する部材として好適である。タッチパネルとは、指等による接触によってその接触位置情報を入力する装置と表示装置とを組み合わせた入力/表示装置(タッチパネル装置)の、入力装置である。タッチパネルは、基材と、入力検出方式に応じて、透明導電膜、電極、配線、IC等とから構成されている。物品のハードコート層を有する面をタッチパネルの入力面とすることによって、優れた防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)を有するタッチパネルが得られる。タッチパネル用基材の材質は、透光性を有する。具体的には、JIS R 3106に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上である。
【0101】
(プライマ層)
プライマ層としては、公知のものが挙げられる。プライマ層は、たとえばプライマ層形成用組成物を基材の表面に塗布し、乾燥させることによって形成される。
【0102】
(物品の製造方法)
物品は、たとえば、下記の工程(I)および工程(II)を経て製造される。
(I)必要に応じて、プライマ層形成用組成物を基材の表面に塗布し、乾燥させてプライマ層を形成する工程。
(II)本組成物を基材またはプライマ層の表面に塗布して塗膜を得て、媒体を含む塗膜の場合は媒体を除去し、光硬化させてハードコート層を形成する工程。
【0103】
工程(I):
塗布方法としては、公知の手法を適宜用いることができる。該塗布方法としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法等が挙げられる。
乾燥温度は、50〜140℃が好ましい。
乾燥時間は、5分間〜3時間が好ましい。
【0104】
工程(II):
塗布方法としては、工程(I)で例示した公知の塗布方法が挙げられる。
【0105】
本組成物が媒体を含む場合、光硬化させる前に、塗膜から媒体を除去して乾燥膜とする。媒体の除去方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。該除去方法としては、加熱、減圧、減圧下で加熱する方法が挙げられる。なお、得られた乾燥膜は、媒体を10質量%未満含むことが好ましく、1質量%未満含むことが特に好ましい。
加熱する場合の温度は、50〜120℃が好ましい。
溶媒の除去時間は、0.5分間〜3時間が好ましい。
【0106】
光硬化は、本組成物が媒体を含まない場合には塗膜に対して、本組成物が媒体を含む場合には乾燥膜に対して行うことが好ましい。
光硬化は、活性エネルギー線を照射することによって行われる。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波線等が挙げられ、波長180〜500nmの紫外線が経済的に好ましい。
活性エネルギー線源としては、紫外線照射装置(キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等)、電子線照射装置、X線照射装置、高周波発生装置等が使用できる。
活性エネルギー線の照射時間は、本化合物の種類、光重合性化合物の種類、光重合開始剤の種類、塗膜の厚さ、活性エネルギー線源等の条件により適宜変え得る。通常は、0.1〜60秒間照射することにより目的が達成される。
硬化反応を完結させる目的で、活性エネルギー線の照射後に加熱してもよい。加熱温度は、50〜120℃が好ましい。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」である。なお、例1、2、5〜7は実施例、例3および4は比較例である。
【0108】
[測定・評価]
(数平均分子量(Mn))
分子量測定用の標準試料として市販されている重合度の異なる数種の単分散ポリメチルメタクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を、市販のGPC測定装置(東ソー社製、装置名:HLC−8220GPC)にて、溶離液にアサヒクリンAK−225(製品名、旭硝子社製、C
3F
5HCl
2):ヘキサフルオロイソプロパノール=99:1(体積比)の混合溶媒を用いて測定し、ポリメチルメタクリレートの分子量と保持時間(リテンションタイム)との関係をもとに検量線を作成した。
含フッ素エーテル化合物を前記混合溶媒で1.0質量%に希釈し、0.5μmのフィルタに通過させた後、含フッ素エーテル化合物についてのGPCを、前記GPC測定装置を用いて測定した。
前記検量線を用いて、含フッ素エーテル化合物のGPCスペクトルをコンピュータ解析することによって含フッ素エーテル化合物の数平均分子量(Mn)を求めた。
【0109】
(水接触角)
JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、ハードコート層の5ヶ所に水滴を載せ、各水滴について静滴法によって水接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は20℃で行った。水接触角は、5測定値の平均値(n=5)で示す。なお、防汚性の点から、水接触角は95度以上が好ましい。
【0110】
(ノルマルヘキサデカン接触角)
JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、ハードコート層の3ヶ所にノルマルヘキサデカン滴を載せ、各ノルマルヘキサデカン滴について静滴法によってノルマルヘキサデカン接触角を測定した。液滴は2μL/滴であり、測定は20℃で行った。接触角は、3測定値の平均値(n=3)で示す。なお、防汚性の点から、ノルマルヘキサデカン接触角は60度以上が好ましい。
【0111】
(ハードコート層外観)
下記の基準にしたがい、目視によってハードコート層の外観を評価した。
○(良好):異物が確認できず、膜厚が均一である。
△(可) :異物は確認できないが、膜厚にムラがある。
×(不良):異物が確認され、膜厚にムラがある。
【0112】
(油性インクはじき性)
ハードコート層の表面にフェルトペン(ゼブラ社製、製品名:マッキー極細黒色)で線を描き、油性インクの付着状態を目視で観察することによって評価した。評価基準は下記の通りである。
◎(優良):油性インクを玉状にはじく。
○(良好):油性インクを玉状にはじかず、線状にはじき、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%未満である。
△(可) :油性インクを玉状にはじかず、線状にはじき、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%以上100%未満である。
×(不良):油性インクを玉状にも線状にもはじかず、表面にきれいに線が描ける。
【0113】
(指紋汚れ除去性)
人工指紋液(オレイン酸とスクアレンとからなる液)を、シリコンゴム栓の平坦面に付着させた後、余分な油分を不織布(旭化成社製、製品名:ベンコットM−3)にて拭き取り、指紋のスタンプを準備した。該指紋スタンプを、ハードコート層を有する物品上に乗せ、1kgの荷重にて10秒間押しつけた。指紋が付着した箇所のヘーズをヘーズメータ(東洋精機社製)にて測定した。次に、指紋が付着した箇所について、ティッシュペーパを取り付けた、往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、荷重500gにて拭き取りを行った。拭き取り一往復毎にヘーズの値を測定し、10往復拭き取るまでの間に、ヘーズが目視で確認できない場合を○(良好)、ヘーズが目視で確認できる場合を×(不良)とした。
【0114】
(耐摩耗性)
ハードコート層を有する物品について、JIS L 0849に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、セルロース製不織布(クラレ社製、製品名:クラフレックス)を荷重500gで5,000回往復させた後、水接触角およびノルマルヘキサデカン接触角を測定した。
摩擦回数を増大させたときの水接触角およびノルマルヘキサデカン接触角の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩耗性に優れる。
【0115】
(鉛筆硬度)
JIS K 5600に準じて測定した。
【0116】
[化合物]
(光重合性化合物)
(a−1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(単量体(a11)に該当)。
(a−2):トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(単量体(a12)に該当)。(光重合開始剤)
(b−1):2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。(有機溶媒)
(c−1):2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール。
(c−2):プロピレングリコールモノメチルエーテル。
(c−3):酢酸ブチル。
【0117】
[ハードコート層形成用組成物]
30mLのバイアル管に、下記の例で製造した含フッ素エーテル化合物またはそれを含む混合物の2mg、光重合性化合物(a−1)の94mg、光重合性化合物(a−2)の94mg、光重合開始剤(b−1)の12mg、有機溶媒(c−1)の150mg、有機溶媒(c−2)の120mgおよび有機溶媒(c−3)の180mgを入れ、常温および遮光にした状態で、1時間撹拌して、ハードコート層形成用組成物を得た。
次いで、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す。)基材の表面にハードコート層形成用組成物をバーコートにより塗布し、塗膜を形成し、50℃のホットプレートで1分間乾燥させ、基材の表面に乾燥膜を形成した。次いで、高圧水銀ランプを用いて紫外線(光量:300mJ/cm
2、波長365nmの紫外線積算エネルギー量)を照射し、基材の表面に厚さ5μmのハードコート層を形成した。ハードコート層形成用組成物の組成およびハードコート層の評価結果を表1に示す。
【0118】
[例1:化合物(1−1a−1)の製造]
(例1−1)
300mLの3つ口丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム粉末の14.1gを取り入れ、アサヒクリンAK−225の350gを加えた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、内温が10℃を超えないように化合物(12a)の100g、メタノールの15.8g、アサヒクリンAK−225の22gを混合した溶液を滴下漏斗からゆっくり滴下した。全量滴下した後、さらにメタノールの10gとアサヒクリンAK−225の10gを混合した溶液を滴下した。その後、氷浴を取り外し、室温までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温で12時間撹拌後、再び氷浴で冷却し、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。反応終了後、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、固形分をフィルタによりろ過し、エバポレータで濃縮した。回収した濃縮液を減圧蒸留し、化合物(11a)の80.6g(収率88%)を得た。
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2C(=O)OCH
3 ・・・(12a)
CF
2=CFO−CF
2CF
2CF
2CH
2OH ・・・(11a)
【0119】
化合物(11a)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):2.2(1H)、4.1(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−85.6(2F)、−114.0(1F)、−122.2(1F)、−123.3(2F)、−127.4(2F)、−135.2(1F)。
【0120】
(例1−2)
還流冷却器を接続した50mLのナスフラスコに、例1−1で得た化合物(11a)の5.01g、メタノールの5.06gを取り入れ、水酸化カリウムのペレットの0.54gを加えた。窒素雰囲気下、25℃で終夜撹拌した後、塩酸水溶液を加えて、過剰の水酸化カリウムを処理し、水とアサヒクリンAK−225とを加えて分液処理を行った。3回の水洗後、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することで、メタノール付加体の5.14gを得た。再び、還流冷却器を接続した50mLナスフラスコに、メタノール付加体の1.0g、水酸化カリウムのペレットの0.13gを加え、100℃に加熱しながら、化合物(11a)の10.86gを滴下した。100℃を保ったまま、さらに9時間撹拌した後、塩酸水溶液を加えて、過剰の水酸化カリウムを処理し、水とアサヒクリンAK−225とを加えて分液処理を行った。3回の水洗後、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することによって、高粘度のオリゴマーの11gを得た。再び、アサヒクリンAK−225で2倍に希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:アサヒクリンAK−225)に展開して分取した。各フラクションについて、単位数(n+1)の平均値を
19F−NMRの積分値から求めた。下式(10a−1)中、(n+1)の平均値が7〜10のフラクションを合わせた化合物(10a−1)の4.76gを得た。
CH
3−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−H ・・・(10a−1)
【0121】
化合物(10a−1)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:TMS) δ(ppm):3.7(3H)、4.0(2H)、4.4(18.4H)、6.0〜6.2(9.2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム、基準:CFCl
3) δ(ppm):−84.7〜−87.0(18.4F)、−89.4〜−91.6(18.4F)、−121.5(16.4F)、−123.4(2F)、−128.0(18.4F)、−145.3(9.2F)。
単位数(n+1)の平均値:9.2。
【0122】
(例1−3)
還流冷却器を接続した200mLのナスフラスコに、例1−2で得た化合物(10a−1)の100gを加え、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら塩化アセチルの28.6gを20分かけて滴下した。50℃で4.5時間撹拌した後、
1H−NMRで原料の消失を確認した。反応溶液をエバポレータで濃縮した。濃縮後の溶液をアサヒクリンAK−225で希釈し、シリカゲルの20gで処理した後、ろ過で固形物を除去した。エバポレータで再度濃縮することで、下式(9a−1)中、単位数(n+1)の平均値が9.2である、化合物(9a−1)の98.1g(収率97%)を得た。
CH
3−O−(CF
2CFHO−CF
2CF
2CF
2CH
2O)
n+1−C(=O)CH
3 ・・・(9a−1)
【0123】
化合物(9a−1)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113(CCl
2FCClF
2)、基準:TMS) δ(ppm):2.0(3H)、3.6(3H)、4.4〜4.9(18.4H)、6.0〜6.2(9.2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:CFCl
3) δ(ppm):−85.5〜−86.7(18.4F)、−91.5〜−93.9(18.4F)、−121.7〜−122.8(18.4F)、−128.4〜−129.6(18.4F)、−145.9(9.2F)。
単位数(n+1)の平均値:9.2。
【0124】
(例1−4)
オートクレーブ(ニッケル製、内容積1L)を用意し、オートクレーブのガス出口に、25℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および0℃に保持した冷却器を直列に設置した。また、0℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す、液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにR−419(CF
2ClCFClCF
2OCF
2CF
2Cl)の750gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスとも記す。)を、25℃、流速5.3L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、例1−3で得た化合物(9a−1)の70gをR−419の136gに溶解した溶液を、7.4時間かけて注入した。
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、R−419中に0.0056g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の4mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。20分撹拌した後、再びベンゼン溶液の4mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作をさらに4回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.1gであった。
さらに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、下式(7a−1)中、単位数(n)の平均値が8.2である、化合物(7a−1)の82.3g(収率97%)を得た。
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O−C(=O)CF
3 ・・・(7a−1)
【0125】
化合物(7a−1)のNMRスペクトル;
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:CFCl
3) δ(ppm):−57.3(3F)、−77.5(3F)、−85.0(34.8F)、−88.5(2F)、−90.5(34.8F)、−92.5(2F)、−127.5(36.8)。
単位数(n)の平均値:8.2。
【0126】
(例1−5)
500mLのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(PFA)製丸底ナスフラスコに、例1−4で得た化合物(7a−1)の82.3gおよびアサヒクリンAK−225の250mLを入れた。窒素雰囲気下、メタノールの3.9gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、下式(6a−1)中、単位数(n)の平均値が8.2である、化合物(6a−1)の77.7g(収率100%)を得た。
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2C(=O)OCH
3 ・・・(6a−1)
【0127】
化合物(6a−1)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:TMS) δ(ppm):3.8(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:CFCl
3) δ(ppm):−57.3(3F)、−84.9(34.8F)、−90.5(34.8F)、−92.5(2F)、−120.2(2F)、−127.3(32.8F)、128.2(2F)。
単位数(n)の平均値:8.2。
【0128】
(例1−6)
500mLのガラス製丸底ナスフラスコに、塩化リチウムの0.52g、例1−5で得た化合物(6a−1)の77.7g、および脱水エタノールの51.6mgを入れた。得られた混合溶液を10℃で撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウムの2.11gを脱水エタノールの63.3gに溶解した溶液を30分間かけて滴下した。18時間撹拌した後、10%塩酸を溶液が酸性になるまで添加した。アサヒクリンAK−225の100mLで希釈した後、水の100mLで2回洗浄した。有機相を回収し、エバポレータで濃縮し、真空乾燥を行うことで、下式(5a−1)中、単位数(n)の平均値が8.2である、化合物(5a−1)の74.9g(収率97.3%)を得た。
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(5a−1)
【0129】
化合物(5a−1)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:TMS) δ(ppm):4.0(2H)、2.8(1H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:CFCl
3) δ(ppm):−57.1(3F)、−84.9(34.8F)、−90.0(34.8F)、−92.1(2F)、−124.4(2F)、−127.2(32.8F)、−128.6(2F)。
単位数(n)の平均値:8.2。
【0130】
(例1−7)
200mLのガラス製丸底ナスフラスコに、例1−6で得た化合物(5a−1)の37g、アサヒクリンAK−225の100mL、トリエチルアミンの1.68g、およびQ−1301(製品名、和光純薬工業社製)の約1mgを加えた。得られた溶液を室温で撹拌しながら、メタクリル酸クロリドの1.49gを滴下した。室温で4時間撹拌した後、
1H−NMRで反応の進行を追跡したところ、化合物(5a−1)の残存が確認されたため、トリエチルアミンの0.5g、メタクリル酸クロリドの0.5gをそれぞれ添加した。さらに室温で16時間撹拌した後、
1H−NMRで反応の進行を追跡したところ、化合物(5a−1)がすべて消費されていた。水の50mLを溶液に加え、有機相を分離した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の50mLを用いて2回、飽和食塩水の50mLを用いて1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、固形分をフィルタによりろ過し、エバポレータで濃縮することで、化合物(1−1a−1)の36.4g(収率94.9%)を得た。数平均分子量(Mn)は2,837であった。
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CH
2−OC(=O)C(CH
3)=CH
2 ・・・(1−1a−1)
【0131】
化合物(1−1a−1)のNMRスペクトル;
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:TMS) δ(ppm):6.2(1H)、5.6(1H)、4.5(2H)、2.0(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:重クロロホルム+R−113、基準:CFCl
3) δ(ppm):−57.3(3F)、−84.9(34.8F)、−90.0(34.8F)、−92.2(2F)、−121.4(2F)、−127.4(32.8F)、−128.5(2F)。
単位数(n)の平均値:8.2。
【0132】
[例2:化合物(1−6a−1)の製造およびハードコート層の形成]
(例2−1)
滴下ロート、コンデンサ、温度計、撹拌装置を装着した2Lの3口フラスコにヘキサメチレンジイソシアナートの環状3量体(旭化成ケミカルズ社製、製品名:DURANATE THA−100)の1.0g、アサヒクリンAK−225の2.9gを入れ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬社製、一級試薬)の7.5mgを加え、空気中、室温で撹拌しながら50分かけて、例1−6で得た化合物(5a−1)の2.0gをアサヒクリンAK−225の2.9gに溶かした溶液を滴下し、室温で12時間撹拌した。45℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレートの0.76gを2分で滴下し3時間撹拌した。赤外吸収スペクトルによってイソシアネート基の吸収が完全に消失していることを確認できたため、得られた反応溶液にヘキサンの5.0gを加え、上澄みを分離した。フェノチアジンの0.4mgおよびアセトンの9gを加え、5分間撹拌した後、エバポレータで濃縮し、下式(13)のG
1〜G
3の1つが下式(14)で表される基であり、残りが下式(15)で表される基である化合物(1−6a−1)と;G
1〜G
3の2つが下式(14)で表される基であり、残りが下式(15)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて下式(14)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて下式(15)で表される基である化合物との混合物の2.0gを得た。混合物の数平均分子量(Mn)は928であり、化合物(1−6a−1)の数平均分子量(Mn)は3,417であった。
【0133】
【化1】
【0134】
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CH
2−O− ・・・(14)
CH
2=CHC(=O)O−CH
2CH
2−O− ・・・(15)
【0135】
(例2−2)
化合物(1−6a−1)を含む混合物を使用してハードコート層形成用組成物(2)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0136】
[例3:化合物(16)の製造およびハードコート層の形成]
(例3−1)
特許文献2の実施例1に記載の方法にしたがって、(CF
2O)と(CF
2CF
2O)との組み合わせからなるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の両末端にアクリロイルオキシ基を有する含フッ素化合物と、ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合させたのち、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させて得られる化合物(16)を合成した(数平均分子量(Mn):2,400)。
【0137】
(例3−2)
例3−1で製造した化合物(16)を使用してハードコート層形成用組成物(3)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0138】
[例4:化合物(1−6a−4)の製造およびハードコート層の形成]
(例4−1)
特許文献1の実施例2、3に記載の方法にしたがって、式(13)のG
1〜G
3の1つが下式(14−2)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物(1−6a−4)と;G
1〜G
3の2つが下式(14−2)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて下式(14−2)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて式(15)で表される基である化合物との混合物を合成した。混合物の数平均分子量(Mn)は1,159であり、化合物(1−6a−4)の数平均分子量(Mn)は3,160であった。
【0139】
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2CH
2−O− ・・・(14−2)
【0140】
(例4−2)
例4−1で製造した化合物(1−6a−4)を含む混合物を使用してハードコート層形成用組成物(4)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0141】
[例5:化合物(18)の製造およびハードコート層の形成]
(例5−1)
例1−6で得た化合物(5a−1)を用いて、特許第4923572号公報の段落[0140]に記載の方法にしたがって、下式(18)で表される化合物(化合物(18))を合成した(数平均分子量(Mn):3,826)。
CF
3−O−(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n−CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CH
2−O−CH
2CH
2O−{(C=O)CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2O}
2−C(=O)NH−CH
2CH
2−O−C(=O)−CH=CH
2 ・・・(18)
単位数(n)の平均値:5.2。
【0142】
(例5−2)
例5−1で製造した化合物(18)を使用してハードコート層形成用組成物(5)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0143】
[例6:化合物(1−6a−2)を含む混合物の製造およびハードコート層の形成]
(例6−1)
化合物(5a−1)の代わりに単位数(n)の平均値が6である化合物(5a−2)を使用した以外は、例2−1と同様にして式(13)のG
1〜G
3の1つが式(14)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物(1−6a−2)と;G
1〜G
3の2つが式(14)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて式(14)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて式(15)で表される基である化合物との混合物を得た。混合物の数平均分子量(Mn)は842であり、化合物(1−6a−2)の数平均分子量は2,740であった。
【0144】
(例6−2)
例6−1で製造した化合物(1−6a−2)を含む混合物を使用してハードコート層形成用組成物(6)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0145】
[例7:化合物(1−6a−3)を含む混合物の製造およびハードコート層の形成]
(例7−1)
化合物(5a−1)の代わりに単位数(n)の平均値が15の化合物(5a−3)を使用した以外は、例2−1と同様にして式(13)のG
1〜G
3の1つが式(14)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物(1−6a−3)と;G
1〜G
3の2つが式(14)で表される基であり、残りが式(15)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて式(14)で表される基である化合物と;G
1〜G
3がすべて式(15)で表される基である化合物との混合物を得た。混合物の数平均分子量(Mn)は1,254であり、化合物(1−6a−3)の数平均分子量は5,710であった。
【0146】
(例7−2)
例7−1で製造した化合物(1−6a−3)を含む混合物の1mgを使用した以外は、前記ハードコート層形成用組成物と同じ組成のハードコート層形成用組成物(7)を得て、ハードコート層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
本化合物を用いて形成した例2、5〜7のハードコート層は、防汚性(油性インクはじき性、指紋汚れ除去性)、外観、耐摩耗性が良好であった。
従来の含フッ素エーテル化合物を用いて形成した例3のハードコート層は、水接触角、ノルマルヘキサデカン接触角、油性インクはじき性が不充分であった。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が炭素数3以上のペルフルオロアルキレン基([CF
2CF
2CF
2CF
2O]等)を有さず、またポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖のどちらの末端にもペルフルオロアルキル基を有しないためであると推察される。
例4のハードコート層は、耐摩耗性試験後の水接触角とノルマルヘキサデカン接触角のいずれも不充分であった。これは、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が単一のオキシペルフルオロアルキレン基しか有さないためであると推察される。