【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、成形加工シンポジア’12平成24年11月22日発行第347−348ページに発表、平成24年11月30日に開催された社団法人プラスチック成形加工学会第20回秋季大会で発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物である。
「単量体に由来する単位」とは、単量体が重合することによって形成された単量体分子から構成される構成単位であり、単量体分子の一部が分解によって消失していてもよい。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
「分岐構造」とは、単位の繰り返しからなる分子鎖が途中で分岐した構造を意味し、単位を構成する単量体の一部であるペンダント基からなる分岐は、分岐構造には含めない。
「線形領域」とは、
図1の実線に示すように、伸長粘度を測定した際に伸長粘度がひずみ速度に依存せず、同一の時間依存性を示す領域である。
「非線形領域」とは、
図1の破線に示すように、伸長粘度を測定した際に伸張粘度が伸張時間とともに線形領域から外れて増大する領域である。
「ひずみ硬化性」とは、伸長粘度を測定した際に高ひずみ領域において伸長粘度が線形領域から外れて急激に上昇する性質である。
「ひずみ硬化度SH」とは、ひずみ硬化性の程度を示すパラメータである。ひずみ硬化度は、温度270℃、ひずみ速度ε
・:1.0s
−1の条件下で一軸伸長粘度を測定し、下式(1)〜(3)から求める。
SH=dlnλ
n(t)/dε(t) ・・・(1)
λ
n(t)=η
E+(t)/3η(t) ・・・(2)
ε(t)=ε
・・t ・・・(3)
ただし、SHはひずみ硬化度であり、lnは自然対数であり、λ
n(t)は非線形性パラメータであり、η
E+(t)は非線形領域における伸長粘度であり、η(t)は温度270℃、角周波数ω:0.1〜100(rad/s)の条件下でせん断動的粘弾性測定によってωの関数として得られた複素粘度の絶対値をt=1/ωとして時間の関数に変換することで得られる線形の伸長粘度であり、ε(t)はヘンキーひずみであり、tは伸長時間である。
3η(t)は、横軸t=1/ωとし、縦軸ηを3倍にした値をプロットすることでせん断動的粘弾性測定から予測される線形領域における伸長粘度(
図1における実線)である。式(2)で求められる非線形性パラメータλ
n(t)は、各時間での伸長粘度とせん断動的粘弾性測定から予測される線形領域における伸長粘度との比である。
図2に示すように、ひずみ硬化性を有する樹脂材料においては、伸長変化とともに(すなわち伸長時間tの経過とともに)非線形性パラメータλ
n(t)の対数がヘンキーひずみε(t)に対して直線的に増加することが知られている。式(1)は、該直線の傾きを求める式であり、該傾き(すなわちひずみ硬化度SH)が大きいほど、ひずみ硬化性が顕著になる。
【0019】
<発泡体>
本発明の発泡体は、後述する熱可塑性フッ素樹脂材料を溶融発泡成形したものである。
発泡体の形状等は、特に限定されない。
溶融発泡成形法としては、公知の溶融成形法が挙げられる。
【0020】
(熱可塑性フッ素樹脂材料)
熱可塑性フッ素樹脂材料は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位を有する共重合体(A)(すなわち、ETFE系共重合体)の1種以上からなる樹脂成分(X)を含む。熱可塑性フッ素樹脂材料は、樹脂成分(X)のみからなるものであってもよく、樹脂成分(X)と他の成分(他の樹脂成分、添加剤成分)とを含むものであってもよい。
【0021】
(共重合体(A))
共重合体(A)は、下記の2種類に大きく分けられる。
共重合体(A1):単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位と、単量体(c)に由来する単位または単量体(d)に由来する単位(ただし、ラジカル発生基は分解して該単位には残存していない。)とを有する共重合体(すなわち、分岐構造を有するETFE系共重合体)。
共重合体(A2):単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位を有し、単量体(c)に由来する単位および単量体(d)に由来する単位を有さない共重合体(すなわち、分岐構造を有さない直鎖のETFE系共重合体)。
【0022】
(共重合体(A1))
共重合体(A1)は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位と、単量体(c)に由来する単位または単量体(d)に由来する単位とを有し、必要に応じて他の単量体(e)に由来する単位を有していてもよい。
【0023】
単量体(a):
単量体(a)は、テトラフルオロエチレンである。共重合体(A1)が単量体(a)に由来する単位を有することによって、発泡体の耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア性が良好となる。
【0024】
単量体(b):
単量体(b)は、エチレンである。共重合体(A1)が単量体(b)に由来する単位を有することによって、熱可塑性フッ素樹脂材料の溶融流動性および発泡体の機械的特性が良好になる。
【0025】
単量体(c):
単量体(c)は、重合性炭素−炭素二重結合を2つ以上有する単量体である(ただし、単量体(d)を除く)。単量体(c)に由来する単位は、分子鎖の分岐点となるため、共重合体(A1)が単量体(c)に由来する単位を有することによって、共重合体(A1)に分岐構造が導入される。
【0026】
単量体(c)としては、下式(4)で表される化合物が挙げられる。
Y
1−R
f−Z
1 ・・・(4)
ただし、R
fはポリフルオロアルキレン基であり、Y
1およびZ
1はそれぞれビニル基、トリフルオロビニル基またはトリフルオロビニルオキシ基である。
Y
1およびZ
1は、共重合性が良好である点から、ビニル基またはトリフルオロビニルオキシ基が好ましい。Y
1およびZ
1は、入手の容易性の点から、同一であることが好ましい。
【0027】
式(4)で表される化合物としては、下記のものが挙げられる。
CH
2=CH−R
f1−CH=CH
2
CF
2=CF−R
f1−CH=CH
2
CF
2=CF−R
f1−CF=CF
2
CF
2=CF−O−R
f1−CH=CH
2
CF
2=CF−O−R
f1−CF=CF
2
CF
2=CF−O−R
f2−O−CF=CF
2
ただし、R
f1は単結合または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、R
f2は炭素数1〜8のフルオロアルキル基である。
R
fは、共重合体(A1)の物性が良好である点から、ペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数2〜8のペルフルオロアルキレン基がより好ましく、入手の容易性の点から、炭素数4または6のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0028】
単量体(c)としては、入手の容易性の点から、下記のものが好ましい。
CH
2=CH−(CF
2)
n1−CH=CH
2
CF
2=CF−O−(CF
2)
n1−O−CF=CF
2
ただし、n1は4〜8の整数である。
単量体(c)としては、下記のもの(以下、単量体(c1)と記す。)が特に好ましい。
CH
2=CH−(CF
2)
n2−CH=CH
2
ただし、n2は4または6である。
単量体(c1)は、重合性炭素−炭素二重結合がビニル基であるため、重合性から単量体(a)に由来する単位と隣接する確率が高く、単量体(b)に由来する単位と隣接する確率は低い。したがって、炭化水素鎖が並ぶ可能性が低く、共重合体(A1)は熱的に安定となる。
【0029】
単量体(d):
単量体(d)は、ラジカル発生基を有する単量体である。単量体(d)に由来する単位は、ラジカル発生基が分解した後に分子鎖の分岐点となるため、共重合体(A1)が単量体(d)に由来する単位を有することによって、共重合体(A1)に分岐構造が導入される。
【0030】
単量体(d)における重合性炭素−炭素二重結合の数は、1または2が好ましい。単量体(d)における重合性炭素−炭素二重結合の数が2の場合は、2つの重合性炭素−炭素二重結合の間にラジカル発生基が存在することが好ましい。単量体(d)における重合性炭素−炭素二重結合の数は1がより好ましい。重合性炭素−炭素二重結合の数が2の単量体(d)を用いる場合は、重合性炭素−炭素二重結合の数が1の単量体(d)に比べ少量用いることが好ましい。
【0031】
ラジカル発生基は、熱によってラジカルを発生し得る基が好ましく、ペルオキシ基がより好ましい。ラジカル発生基は、後述する樹脂成分(X2)の製造方法における1段階目の重合条件では実質的にラジカルを発生しない。「実質的にラジカルを発生しない」とは、ラジカルが全く発生しないか、発生したとしてもごくわずかであることを意味し、結果として、重合が起こらないか、重合が起こったとしても樹脂成分(X2)の物性には影響を与えないことを意味する。
【0032】
ラジカル発生基の、10時間半減期温度で定義される分解温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。後述する樹脂成分(X2)の製造方法における1段階目の重合条件および2段階目の重合条件における重合温度は、選択した単量体(d)におけるラジカル発生基の分解温度で調整される。したがって、ラジカル発生基の分解温度が低すぎる場合は、1段階目の重合条件下で重合を行うために、ラジカル発生基の分解温度よりもさらに低い分解温度の重合開始剤が必要となり、1段階目の重合条件の制約が厳しくなる。また、ラジカル発生基の分解温度が高すぎる場合は、2段階目の重合条件における重合温度が高くなり、2段階目の重合条件の制約が厳しくなる。
【0033】
単量体(d)としては、下記のものが挙げられる。
アルキルヒドロペルオキシドと不飽和カルボン酸とのエステル、
アルキルヒドロペルオキシドのアルケニルカーボネート、
不飽和アシル基を有するジアシルペルオキシド、
ジアルケニルヒドロペルオキシド、
ジアルケニルジカーボネート、等。
【0034】
単量体(d)としては、アルキルヒドロペルオキシドと不飽和カルボン酸とのエステル、アルキルヒドロペルオキシドのアルケニルカーボネートが好ましい。
アルキルヒドロペルオキシドとしては、t−ブチルヒドロペルオキシドが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸が好ましい。
アルケニル基としては、ビニル基またはアリル基が好ましい。
単量体(d)の具体例としては、t−ブチルペルオキシメタクリレート、t−ブチルペルオキシクロトネート、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート等が挙げられる。
【0035】
単量体(e):
単量体(e)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)および単量体(d)以外の単量体である。共重合体(A1)は、単量体(e)に由来する単位を有することが好ましい。
【0036】
単量体(e)としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
炭化水素系オレフィン:プロピレン、ブテン等(ただし、エチレンを除く。)。
不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン:フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、下式(5)で表される化合物(以下、単量体(e1)と記す。)等。
CH
2=CX
2(CF
2)
n3Y
2 ・・・(5)
ただし、X
2およびY
2はそれぞれ水素原子またはフッ素原子であり、n3は2〜10の整数である。
不飽和基に水素原子を有さないフルオロオレフィン:クロロトリフルオロエチレン等(ただし、テトラフルオロエチレンを除く)。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル):ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等。
ビニルエーテル:アルキルビニルエーテル、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等。
ビニルエステル:酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等。
(メタ)アクリレート:(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等。
酸無水物:無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0037】
単量体(e)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(e)としては、単量体(e1)が好ましい。共重合体(A1)が単量体(e1)に由来する単位を有すると、発泡体にクラック等が生じにくく、発泡体の耐久性が良好となる。
単量体(e1)におけるX
2は、入手の容易性の点から、水素原子が好ましい。単量体(e1)におけるY
2は、熱安定性の点から、フッ素原子が好ましい。単量体(e1)におけるn3は、共重合体(A1)の物性の点から、2〜6の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましい。
【0038】
単量体(e1)の具体例としては、下記のものが挙げられる。
CH
2=CF(CF
2)
n3F
CH
2=CF(CF
2)
n3H
CH
2=CH(CF
2)
n3F
CH
2=CH(CF
2)
n3H
ただし、n3は2〜10の整数である。
単量体(e1)としては、下記のものが好ましい。
CH
2=CF(CF
2)
n4F
CH
2=CH(CF
2)
n4F
CH
2=CH(CF
2)
n4H
CH
2=CF(CF
2)
n4H
ただし、n4は2〜6の整数である。
単量体(e1)としては、下記のものがより好ましい。
CH
2=CH(CF
2)
n4F
ただし、n4は2〜6の整数である。
単量体(e1)としては、下記のものが特に好ましい。
CH
2=CH(CF
2)
2F
CH
2=CH(CF
2)
4F
【0039】
組成:
共重合体(A1)における単量体(a)に由来する単位と単量体(b)に由来する単位とのモル比((a)/(b))は、20/80〜80/20が好ましく、40/60〜70/30がより好ましく、50/50〜60/40が特に好ましい。(a)/(b)が下限値以上であれば、発泡体の耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア性が良好となる。(a)/(b)が上限値以下であれば、熱可塑性フッ素樹脂材料の溶融流動性、発泡体の機械的特性が良好となる。
【0040】
共重合体(A1)が単量体(c)に由来する単位を有する場合、単量体(c)に由来する単位の割合は、少量であるため現状の分析技術では測定が困難である場合がある。単量体(c)に由来する単位が、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、0.3モル%以上存在すれば、測定が可能になると思われる。単量体(c)に由来する単位の測定が困難なため、後述する製造方法で得られる樹脂成分(X1)(単量体(c)に由来する単位を有する共重合体(A1)を含む。)の物性を見ながら、重合時の単量体(c)の仕込量を調整することになる。重合時の単量体(c)の仕込量は、単量体(c)の反応性によって若干変わってくるが、樹脂成分(X1)の特性を、従来の市販のETFE系共重合体の特性に比べて大きく変化させずに、ひずみ硬化度を充分大きくするためには、単量体(a)および単量体(b)の合計仕込み量100モル%に対して、0.01〜0.2モル%が好ましく、0.03〜0.1モル%がより好ましい。なお、後述するように、ひずみ硬化度の大きい樹脂成分(X1)を用いて、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整することができる。
【0041】
共重合体(A1)が単量体(d)に由来する単位を有する場合、単量体(d)に由来する単位の割合は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、0.01〜10モル%が好ましい。共重合体(A1)の特性を、従来の市販のETFE系共重合体の特性に比べて大きく変化させずに、ひずみ硬化度を充分大きくするためには、重合性炭素−炭素二重結合の数が1の単量体(d)の場合、0.01〜5モル%がより好ましく、重合性炭素−炭素二重結合の数が2の単量体(d)の場合、0.01〜1モル%がより好ましい。単量体(d)に由来する単位の割合が前記範囲よりも少ないと、共重合体(A1)のひずみ硬化度の向上の効果が少なく、前記範囲を超えると、共重合体(A1)のひずみ硬化度が大きくなりすぎる。なお、後述するように、共重合体(A1)における単量体単位の組成などを調整することにより、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整することができる。
【0042】
共重合体(A1)が単量体(e)に由来する単位を有する場合、単量体(e)に由来する単位の割合は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、0.01〜20モル%が好ましく、0.05〜15モル%がより好ましく、0.1〜10モル%がさらに好ましく、0.1〜7モル%が特に好ましい。
共重合体(A1)が単量体(e1)に由来する単位を有する場合、単量体(e1)に由来する単位の割合は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、0.1〜7モル%が好ましく、0.5〜5モル%がより好ましく、0.5〜3.5モル%がさらに好ましく、0.7〜3.5モル%が特に好ましい。
単量体(e)に由来する単位の割合が下限値以上であれば、発泡体にストレスクラック等が生じにくく、発泡体の耐久性が良好となる。単量体(e)に由来する単位の割合が上限値以下であれば、共重合体(A1)の結晶性が高くなるため、共重合体(A1)の融点が充分に高くなり、発泡体の硬度が充分に高くなる。
【0043】
(共重合体(A2))
共重合体(A2)は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位を有し、単量体(c)に由来する単位および単量体(d)に由来する単位を有さない。共重合体(A2)は、必要に応じて他の単量体(e)に由来する単位をさらに有していてもよい。
【0044】
単量体(a)、単量体(b)および単量体(e)としては、共重合体(A1)において例示したものと同様なものが挙げられ、単量体(a)、単量体(b)および単量体(e)の好ましい態様も共重合体(A1)と同様である。
単量体(a)に由来する単位、単量体(b)に由来する単位および単量体(e)に由来する単位の割合も、共重合体(A1)における割合と同様であり、好ましい割合も、共重合体(A1)における好ましい割合と同様である。
【0045】
共重合体(A2)のメルトフローレートは、1〜1000g/10分が好ましく、3〜500g/10分がより好ましく、5〜300g/10分が特に好ましい。メルトフローレートが下限値以上であれば、熱可塑性フッ素樹脂材料の溶融流動性が良好となる。メルトフローレートが上限値以下であれば、発泡体の機械的特性が良好となる。
メルトフローレートは、共重合体(A2)の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。メルトフローレートが大きいほど分子量が低く、小さいほど分子量が高い。共重合体(A2)のメルトフローレートは、ASTM D−3159に準じて温度が297℃、荷重が5kgの条件下で測定した、直径2mm、長さ8mmのオリフィスから10分間に流れ出す共重合体(A2)の質量である。
【0046】
(樹脂成分(X))
樹脂成分(X)は、共重合体(A)(すなわち、ETFE系共重合体)の1種以上からなり、かつ共重合体(A)の少なくとも1種が共重合体(A1)(すなわち、分岐構造を有するETFE系共重合体)である。樹脂成分(X)が共重合体(A1)を含むことによって、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を0.1以上にすることができる。樹脂成分(X)は、必要に応じて共重合体(A2)(すなわち、直鎖のETFE系共重合体)を含んでいてもよい。
すなわち、樹脂成分(X)は、共重合体(A1)の1種のみからなるものであってもよく、共重合体(A1)の1種のみと共重合体(A2)の1種のみとからなるものであってもよく、共重合体(A1)の1種のみと共重合体(A2)の2種以上とからなるものであってもよく、共重合体(A1)の2種以上と共重合体(A2)の1種のみとからなるものであってもよく、共重合体(A1)の2種以上と共重合体(A2)の2種以上とからなるものであってもよい。
【0047】
共重合体(A1)単独でも、共重合体(A1)における単量体単位の組成や分岐の長さを調整することによって樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲にすることは可能であるが、共重合体(A1)および共重合体(A2)を含む方が、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整しやすい。よって、樹脂成分(X)は、共重合体(A)の2種以上からなり、共重合体(A)の少なくとも1種が、共重合体(A1)であり、共重合体(A)の少なくとも1種が、共重合体(A2)であることが好ましい。
【0048】
樹脂成分(X)のひずみ硬化度SHは、0.10〜0.50であり、0.15〜0.50が好ましく、0.20〜0.50がより好ましい。樹脂成分(X)のひずみ硬化度が下限値以上であれば、溶融成形性が良好となる。樹脂成分(X)のひずみ硬化度が上限値以下であれば、機械的特性が良好な発泡体を得ることができる。
【0049】
樹脂成分(X)のひずみ硬化度は、樹脂成分(X)への分岐構造の導入の度合いによって決まる。樹脂成分(X)への分岐構造の導入の度合いは、共重合体(A1)における単量体単位の組成や分岐の長さを調整する、または共重合体(A1)と共重合体(A2)との割合を調整することによって調整できる。共重合体(A1)と共重合体(A2)との割合を調整する方が、樹脂成分(X)への分岐構造の導入の度合いを調整しやすい。なお、樹脂成分(X)に含まれる共重合体(A1)と共重合体(A2)との割合は、現状の分析技術では測定が困難である場合がある。したがって、実際には、後述する樹脂成分(X1)または樹脂成分(X2)の製造条件(単量体の仕込量、重合条件等)を調整する、樹脂成分(X1)または樹脂成分(X2)にさらに共重合体(A2)を混合する等によって、樹脂成分(X)のひずみ硬化度が特定の範囲となるように、共重合体(A1)と共重合体(A2)との割合、すなわち樹脂成分(X)への分岐構造の導入の度合いを調整する。
【0050】
樹脂成分(X)のメルトフローレートは、1〜200g/10分であり、3〜50g/10分が好ましく、5〜20g/10分がより好ましい。樹脂成分(X)のメルトフローレートが下限値以上であれば、溶融流動性が良好となる。樹脂成分(X)のメルトフローレートが上限値以下であれば、機械的特性が良好な発泡体を得ることができる。
【0051】
樹脂成分(X)のメルトフローレートは、ASTM D−3159に準じて温度が297℃、荷重が5kgの条件下で測定した、直径2mm、長さ8mmのオリフィスから10分間に流れ出す樹脂成分(X)の質量である。
樹脂成分(X)のメルトフローレートは、樹脂成分(X)のひずみ硬化度と同様にして調整できる。
【0052】
(樹脂成分(X)の製造方法)
樹脂成分(X)は、製造方法によって下記のものに大きく分けられる。
(α)単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分(X1)。
(β)単量体(a)、単量体(b)および単量体(d)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分の存在下に、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分(X2)。
(γ)単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分(X1)と、単量体(a)および単量体(b)を含み、単量体(c)および単量体(d)を含まない単量体成分を重合して得られた共重合体(A2)とを混合して得られた樹脂成分(X)。
(δ)単量体(a)、単量体(b)および単量体(d)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分の存在下に、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分を重合して得られた樹脂成分(X2)と、単量体(a)および単量体(b)を含み、単量体(c)および単量体(d)を含まない単量体成分を重合して得られた共重合体(A2)とを混合して得られた樹脂成分(X)。
【0053】
樹脂成分(X1)は、特許文献2に記載された製造方法によって製造できる。
樹脂成分(X2)は、特許文献1に記載された製造方法によって製造できる。
共重合体(A2)は、公知のETFE系共重合体の製造方法によって製造できる。
【0054】
樹脂成分(X1)または樹脂成分(X2)の製造条件(単量体の仕込量、重合条件等)を調整することによって、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整できる。樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整しやすい点からは、ひずみ硬化度が比較的大きい(たとえば0.55超の)樹脂成分(X1)または樹脂成分(X2)を得た後、これに共重合体(A2)を混合することによって、樹脂成分(X)のひずみ硬化度を特定の範囲に調整する方が好ましい。すなわち、樹脂成分(X)としては、前記(γ)の樹脂成分(X)または前記(δ)の樹脂成分(X)が好ましく、製造が容易である点から、前記(γ)の樹脂成分(X)がより好ましい。
【0055】
(他の成分)
熱可塑性フッ素樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、他の樹脂成分、他の添加剤成分等が挙げられる。
他の樹脂成分としては、ETFE系共重合体以外の熱可塑性フッ素樹脂、末端基にアミノ基を有するポリアミド系樹脂(PA11,PA12,PA612,PA6,PA66,PA6T,PA9T等)およびそのエラストマー、水酸基を有するポリエステル系樹脂(PET,PBT等)、水酸基を有するポリビニリアルコール系樹脂、エポキシ基を有するエチレン−グリシジルメタアクリレート系共重合体等が挙げられる。
他の添加剤成分としては、顔料、紫外線吸収剤、充填剤、架橋剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、核剤、油剤、染料等が挙げられる。
【0056】
(機械的特性)
熱可塑性フッ素樹脂材料のMITは、20,000回以上であることが好ましく、30,000回以上であることがより好ましい。MITが前記範囲であれば、発泡体の機械的特性(特に耐折り曲げ性)が良好となる。
MITは、ASTM D−2176に準じて熱可塑性フッ素樹脂材料からなる幅12.5mm、長さ130mm、厚さ0.23mmのダンベル状の試験片を作製し、荷重が1.25kg、折り曲げ角度が左右それぞれ135度、1分間の折り曲げ回数が175回の条件下で、試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数である。
【0057】
(作用効果)
以上説明した本発明の発泡体にあっては、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位を有する共重合体(A)の1種以上からなる樹脂成分(X)を含み、共重合体(A)の少なくとも1種が、単量体(c)に由来する単位または単量体(d)に由来する単位をさらに有する共重合体(A1)であり、樹脂成分(X)のひずみ硬化度が、0.1〜0.5であり、樹脂成分(X)のメルトフローレートが、1〜200g/10分である熱可塑性フッ素樹脂材料を用いているため、材料の溶融発泡性、溶融流動性が良好となることから、良好な気泡が形成され、かつ生産性がよい。また、該熱可塑性フッ素樹脂材料を用いているため、機械的特性(引張破断強度、引張破断伸度、耐折り曲げ性等)が良好である。
【0058】
ひずみ硬化性は、材料を伸ばせば伸ばすほど、材料の粘度が高くなる性質であるため、ひずみ硬化度が0.1以上であれば、溶融発泡時に伸ばされた部分は、粘度が大きくなるため伸びすぎず、伸びていない部分は、粘度が低いため伸ばされる。その結果、溶融発泡成形においては、良好な気泡を形成しやすい。すなわち、気泡が小さく、気泡の大きさが不均一になりにくく、発泡体の比重が低く、空隙率が高く、気泡数密度が高く、発泡倍率が高い発泡体が得られる。
ただし、材料のひずみ硬化度が0.55を超えると、発泡体の機械的特性(引張破断強度、引張破断伸度、耐折り曲げ性等)が低下する。これは、材料のひずみ硬化度が0.55を超えると、分岐構造の導入の度合いが多くなりすぎ、その結果、引張伸度が低下し、機械的強度が低下するからである。本発明においては、材料のひずみ硬化度を0.5以下とすることによって、発泡体の機械的特性(引張破断強度、引張破断伸度、耐折り曲げ性等)の低下を充分に抑えている。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
例2〜6は実施例であり、例1、7〜9は比較例である。
【0060】
(樹脂成分(X1)の製造)
100Lの撹拌機付き圧力容器に、脱気後、CF
3(CF
2)
5H(以下、C6Hと記す。)の90.5kg、メタノールの0.925kg、CH
2=CH(CF
2)
4F(以下、PFBEと記す。)の0.496kg、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2(以下、「ジエン」と記す。)の0.030kg、テトラフルオロエチレンの11.1kgおよびエチレンの0.666kgを室温において仕込んだ。ついで66℃に昇温させ、t−ブチルペルオキシピバレート(10時間半減期温度55℃)の1質量%溶液(溶媒:C6H)の77mLを仕込み、重合を開始させた。重合の進行に伴い圧力が低下するため、圧力が一定になるように混合ガス(テトラフルオロエチレン/エチレン=54/46モル比)を連続的に仕込んだ。前記混合ガスに対して0.06モル%に相当する比率でジエンを連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガス量が6.66kgになった時点で内温を室温まで冷却し、未反応ガスを空放し、圧力容器を開放した。圧力容器の内容物をC6Hで洗浄し、ガラスフィルタでろ過し、乾燥させて樹脂成分(X1−1)の6.81kgを得た。
樹脂成分(X1−1)(単量体(c)に由来する単位を有する共重合体(A1)を含む。)における単量体(a)に由来する単位と単量体(b)に由来する単位とのモル比((a)/(b))は、54/46であり、重合時の単量体(c)の仕込量は、単量体(a)および単量体(b)の合計仕込み量100モル%に対して、0.06モル%であり、単量体(e)に由来する単位の割合は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、1.4モル%である。
【0061】
(共重合体(A2)の製造)
100Lの撹拌機付き圧力容器に、脱気後、C6Hの90.5kg、メタノールの0.925kg、PFBEの0.496kg、テトラフルオロエチレンの11.1kgおよびエチレンの0.666kgを室温において仕込んだ。ついで66℃に昇温させ、t−ブチルペルオキシピバレートの1質量%溶液(溶媒:C6H)の77mLを仕込み、重合を開始させた。重合の進行に伴い圧力が低下するため、圧力が一定になるように混合ガス(テトラフルオロエチレン/エチレン=54/46モル比)を連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガス量が6.66kgになった時点で内温を室温まで冷却し、未反応ガスを空放し、圧力容器を開放した。圧力容器の内容物をC6Hで洗浄し、ガラスフィルターでろ過し、乾燥させて共重合体(A2−1)の6.74kgを得た。共重合体(A2−1)のメルトフローレートは、29g/10分である。
共重合体(A2−1)における単量体(a)に由来する単位と単量体(b)に由来する単位とのモル比((a)/(b))は、54/46であり、単量体(e)に由来する単位の割合は、単量体(a)に由来する単位および単量体(b)に由来する単位の合計100モル%に対して、1.4モル%である。
【0062】
(例1〜9)
二軸押出機(テノベル社製、KZW15TW−45HG1100、スクリュー径:15mmΦ、L/D:45)を用い、表1に示す割合の樹脂成分(X1−1)および共重合体(A2−1)を下記条件にてペレット化して、例1の共重合体(A2)のペレットおよび例2〜9の樹脂成分(X)(すなわち熱可塑性フッ素樹脂材料)のペレットを得た。
シリンダ、ヘッドおよびダイの設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/D/H=250/260/270/280/280/280/280/280℃、
材料投入量:4.0kg/時間、
スクリュー回転数:200rpm。
【0063】
(一軸伸長粘度)
ひずみ制御型の回転レオメータ(ARES、TA Instruments社製)の伸長冶具(ARES−EVF)を用い、窒素雰囲気、温度:270℃、ひずみ速度ε
・:1.0s
−1の条件下で例1の共重合体(A2)および例2〜9の樹脂成分(X)の伸長粘度η
E+(t)を測定した。
【0064】
(せん断動的粘弾性)
ひずみ制御型の回転レオメータ(ARES、TA Instruments社製)を用い、窒素雰囲気、温度:270℃、周波数:0.01〜100rad/s、ひずみ:Strain Sweep Testでの線形範囲内の条件下で例1の共重合体(A2)および例2〜9の樹脂成分(X)のせん断動的粘弾性測定を行い、複素粘度の絶対値η(t)を得た。
【0065】
(ヘンキーひずみ)
ヘンキーひずみε(t)は、ひずみ速度ε
・と時間tの積によって得られる。
【0066】
(ひずみ硬化度)
一軸伸長粘度測定で得られた非線形領域における伸長粘度η
E+(t)、せん断動的粘弾性で得られた複素粘度の絶対値から算出した線形領域における伸長粘度3η(t)、およびヘンキーひずみε(t)に基づき、前記式(1)〜(2)から例1の共重合体(A2)および例2〜9の樹脂成分(X)のひずみ硬化度SHを求めた。結果を表1に示す。
【0067】
(メルトフローレート)
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、ASTM D−3159に準じて温度:297℃、荷重:5kgの条件下で、直径:2mm、長さ:8mmのオリフィスから10分間に流れ出す例1の共重合体(A2)および例2〜9の樹脂成分(X)の質量を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(引張破断強度、引張破断伸度)
ASTM D−638に準じて、例1の共重合体(A2−1)および例2〜9の樹脂成分(X)からなるダンベル状の試験片(Type−V、厚さ:0.3mm)を作製し、引張速度:50mm/分で引張破断強度および引張破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(MIT)
ASTM D−2176に準じて例1の共重合体(A2)および例2〜9の樹脂成分(X)からなる幅:12.5mm、長さ:130mm、厚さ:0.23mmのダンベル状の試験片を作製し、MIT測定器(東洋精機社製)を用い、荷重:1.25kg、折り曲げ角度:左右それぞれ135度、1分間の折り曲げ回数:175回の条件下で、試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示す結果から、ひずみ硬化度SHが0.1〜0.5である例2〜6の樹脂成分(X)(熱可塑性フッ素樹脂材料)の試験片は、ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の試験片に比べ、機械的特性(引張破断強度、引張破断伸度、耐折り曲げ性)が低下しているものの、ひずみ硬化度が0.5超である例7〜9の樹脂成分(X)(熱可塑性フッ素樹脂材料)の試験片に比べ、機械的特性(引張破断強度、引張破断伸度、耐折り曲げ性)が良好であることがわかる。
【0072】
(発泡実験)
例1の共重合体(A2)のペレットまたは例4の樹脂成分(X)のペレットを、温度:300℃、余熱:10分、加圧:3分、冷却(水冷):10分の条件にてプレスして、シートを作製した。
成形時の残留応力を除去する目的で、オーブンを用いて、シートに200℃で30分間の熱処理を施した。
バッチ式発泡装置を用い、温度:190〜230℃、圧力:15.0MPaの条件にてシートに超臨界二酸化炭素を3時間含浸させた。
含浸後、減圧することによって発泡させ、発泡体をすぐに水中で冷却した。
【0073】
(発泡体のSEM観察)
210℃または220℃で発泡させた発泡体について、凍結破断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。210℃で発泡させた例1の共重合体(A2)の発泡体の断面の走査型電子顕微鏡写真を
図3に、210℃で発泡させた例4の樹脂成分(X)の発泡体の断面の走査型電子顕微鏡写真を
図4に、220℃で発泡させた例1の共重合体(A2)の発泡体の断面の走査型電子顕微鏡写真を
図5に、220℃で発泡させた例4の樹脂成分(X)の発泡体の断面の走査型電子顕微鏡写真を
図6に示す。
【0074】
(発泡体の気泡径分布)
SEM写真における各気泡の径を測定し、気泡径分布を求めた。210℃で発泡させた例1の共重合体(A2)の発泡体および例4の樹脂成分(X)の発泡体の気泡径分布を結果を
図7に、220℃で発泡させた例1の共重合体(A2)の発泡体および例4の樹脂成分(X)の発泡体の気泡径分布を
図8に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、気泡が細かく、かつ均一であった。
【0075】
(発泡体の比重)
発泡体の比重は、発泡成形体の寸法および質量を測定することで算出した。
発泡温度に対する発泡体の比重をプロットした。結果を
図9に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、比重が低いことがわかった。
【0076】
(発泡体の空隙率)
発泡体の空隙率を下式(7)から求めた。
V
f=1−ρ
f/ρ
0 ・・・(7)
ただし、V
fは空隙率であり、ρ
fは発泡体の比重であり、ρ
0は未発泡体の比重(ETFE系共重合体=1.73)である。
発泡温度に対する発泡体の空隙率をプロットした。結果を
図10に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、空隙率が高いことがわかった。
【0077】
(発泡体の気泡数密度)
発泡体の気泡数密度を下式(8)から求めた。
N
0=(n/A)
3/2 ・・・(8)
ただし、N
0は気泡数密度であり、nはSEM写真内の気泡数であり、AはSEM写真の面積である。
発泡温度に対する発泡体の気泡数密度をプロットした。結果を
図11に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、気泡数密度が高いことがわかった。
【0078】
(発泡体の平均気泡径)
SEM写真における各気泡の径を測定し、平均気泡径を求めた。
発泡温度に対する発泡体の平均気泡径をプロットした。結果を
図12に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、平均気泡径が小さいことがわかった。
【0079】
(発泡体の発泡倍率)
発泡体の発泡倍率を下式(9)から求めた。
ρ
0/ρ
f ・・・(9)
発泡温度に対する発泡体の発泡倍率をプロットした。結果を
図13に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1〜0.5である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、発泡倍率が高いことがわかった。
【0080】
(発泡体の平均気泡径)
例1の共重合体(A2)の発泡体、例4、6、7、9の樹脂成分(X)の発泡体について、平均気泡径を求めた。
発泡温度に対する発泡体の平均気泡径をプロットした。結果を
図14に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1以上である例4、6、7、9の樹脂成分(X)の発泡体は、平均気泡径が小さいことがわかった。
【0081】
(発泡体の気泡数密度)
例1の共重合体(A2)の発泡体、例4、6、7、9の樹脂成分(X)の発泡体について、気泡数密度を求めた。
発泡温度に対する発泡体の気泡数密度をプロットした。結果を
図15に示す。
ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)の発泡体に比べ、ひずみ硬化度が0.1以上である例4の樹脂成分(X)の発泡体は、気泡数密度が高いことがわかった。
【0082】
また、発泡実験全体から、ひずみ硬化度が0である例1の共重合体(A2)は、ひずみ硬化度が0.1以上ある樹脂成分(X)に比べ、発泡体が形成される温度範囲が狭いことがわかった。