(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265419
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】磁気検出装置、電流センサ及び磁気検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/07 20060101AFI20180115BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20180115BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
G01R33/07
G01R15/20 A
H01L43/06 Z
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-43980(P2014-43980)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-169517(P2015-169517A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】野平 隆二
【審査官】
荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−224958(JP,A)
【文献】
米国特許第04945306(US,A)
【文献】
国際公開第2008/123144(WO,A1)
【文献】
特開2006−126012(JP,A)
【文献】
特開平03−176682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00−15/26
G01R 33/00−33/26
H01L 43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインホール素子と、
前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、
平面視において前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、
平面視において前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、を備え、
前記第1磁場発生コイルに流れる第1コイル電流は、前記第2磁場発生コイルに流れる第2コイル電流と逆の向きに流れ、
前記メインホール素子は、前記第1磁場発生コイルから発生する第1磁場と前記第2磁場発生コイルから発生する第2磁場とが打ち消し合う領域を含む範囲に配置される磁気検出装置。
【請求項2】
メインホール素子と、
前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、
平面視において前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、
平面視において前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、を備え、
前記第1磁場発生コイルに流れる第1コイル電流は、前記第2磁場発生コイルに流れる第2コイル電流と逆の向きに流れ、
前記第1磁場発生コイル及び前記第2磁場発生コイルは、前記メインホール素子を挟んで配置される磁気検出装置。
【請求項3】
前記メインホール素子は、平面視において、前記第1磁場発生コイルの中心点までの距離と前記第2磁場発生コイルの中心点までの距離とが等しい点を含む範囲に配置される請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記メインホール素子の中心点は、平面視において、前記第1磁場発生コイルの中心点までの距離と前記第2磁場発生コイルの中心点までの距離とが等しい点と一致する請求項3に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記メインホール素子は、平面視において、前記第1サブホール素子の中心点までの距離と前記第2サブホール素子の中心点までの距離とが等しい点を含む範囲に配置される請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記メインホール素子の中心点は、平面視において、前記第1サブホール素子の中心点までの距離と前記第2サブホール素子の中心点までの距離とが等しい点と一致する請求項5に記載の磁気検出装置。
【請求項7】
前記第1磁場発生コイルは、平面視において、前記メインホール素子の中心点を通る直線を挟んで対称な位置にある2点のうちの1点を含む範囲に配置され、前記第2磁場発生コイルは、前記対称な位置にある2点のうちの他の1点を含む範囲に配置される請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項8】
平面視において、前記第1磁場発生コイルの中心点が前記対称な位置にある2点のうちの1点と一致し、前記第2磁場発生コイルの中心点が前記対称な位置にある2点のうちの他の1点と一致する請求項7に記載の磁気検出装置。
【請求項9】
前記第1サブホール素子は、平面視において、前記メインホール素子の中心点を通る直線を挟んで対称な位置にある2点のうちの1点を含む範囲に配置され、前記第2サブホール素子は、前記対称な位置にある2点のうちの他の1点を含む範囲に配置される請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項10】
平面視において、前記第1サブホール素子の中心点が前記対称な位置にある2点のうちの1点と一致し、前記第2サブホール素子の平面視における中心点が前記対称な位置にある2点のうちの他の1点と一致する請求項9に記載の磁気検出装置。
【請求項11】
前記メインホール素子は、前記第1磁場発生コイルの外縁と前記第2磁場発生コイルの外縁とに接する第1接線と、前記第1接線と平行であって、かつ、前記第1磁場発生コイルの外縁と前記第2磁場発生コイルの外縁とに接する第2接線と、の間に設置される請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項12】
前記第1サブホール素子と前記第2サブホール素子とは、前記メインホール素子を挟んで対向して配置される請求項1から11のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項13】
メインホール素子と、
前記メインホール素子を通る第1直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、
前記メインホール素子を通り、前記第1直線と直交する第2直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子及び第4サブホール素子と、
平面視において、前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、
平面視において、前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、
平面視において、前記第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイルと、
平面視において、前記第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルと、を備え、
前記第1磁場発生コイルと前記第2磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第3磁場発生コイルと前記第4磁場発生コイルとが対向して配置され、
前記第1磁場発生コイルを流れる第1コイル電流、前記第2磁場発生コイルを流れる第2コイル電流、前記第3磁場発生コイルを流れる第3コイル電流及び前記第4磁場発生コイルを流れる第4コイル電流は、少なくとも一方の側に隣接して配置される他の磁場発生コイルを流れる電流と逆向きに流れる磁気検出装置。
【請求項14】
前記第1コイル電流、前記第2コイル電流、前記第3コイル電流及び前記第4コイル電流は、互いに対向して配置される他の磁場発生コイルを流れる電流と同じ向きに流れる請求項13に記載の磁気検出装置。
【請求項15】
メインホール素子と、
前記メインホール素子を通る第1直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、
前記メインホール素子を通り、前記第1直線と直交する第2直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子及び第4サブホール素子と、
平面視において、前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、
平面視において、前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、
平面視において、前記第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイルと、
平面視において、前記第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルと、を備え、
前記第1磁場発生コイルと第2磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第3磁場発生コイルと前記第4磁場発生コイルとが対向して配置され、
前記第1磁場発生コイルを流れる第1コイル電流、前記第2磁場発生コイルを流れる第2コイル電流、前記第3磁場発生コイルを流れる第3コイル電流及び前記第4磁場発生コイルを流れる第4コイル電流は、両方の側に隣接して配置される他の磁場発生コイルを流れる電流と逆の向きに流れる磁気検出装置。
【請求項16】
前記第1コイル電流は前記第2コイル電流と同じ向きに流れ、前記第3コイル電流は前記第4コイル電流と同じ向きに流れる請求項15に記載の磁気検出装置。
【請求項17】
平面視において、前記メインホール素子の中心点から前記第1サブホール素子の中心点までの距離、前記メインホール素子の中心点から前記第2サブホール素子の中心点までの距離、前記メインホール素子の中心点から前記第3サブホール素子の中心点までの距離及び前記メインホール素子の中心点から前記第4サブホール素子の中心点までの距離が、全て等しい請求項13から請求項16のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項18】
平面視において、前記第1サブホール素子及び前記第2サブホール素子は、前記第2直線に対して互いに対称な位置に配置され、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子は、前記第2直線と直交する第1直線に対して互いに対称な位置に配置される請求項13から請求項16のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項19】
前記第1磁場発生コイル、前記第2磁場発生コイル、前記第3磁場発生コイル及び前記第4磁場発生コイルに電流を供給する配線を備え、
前記配線は、前記メインホール素子が形成された領域または前記第1サブホール素子、前記第2サブホール素子、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子が形成された領域の外側に配置されている請求項13から請求項18のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項20】
前記配線は、該配線を流れる配線電流が第1方向に流れる第1配線部と、前記第1配線部と電気的に接続すると共に前記第1配線部と平行に配置され、前記第1方向と反対の第2方向に配線電流が流れる第2配線部と、を含む請求項19に記載の磁気検出装置。
【請求項21】
前記配線は、前記第1配線部及び前記第2配線部によって前記メインホール素子が形成された領域または前記第1サブホール素子、前記第2サブホール素子、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子が形成された領域の少なくとも一部を二重に囲むように配置される請求項20に記載の磁気検出装置。
【請求項22】
前記第1磁場発生コイル、前記第2磁場発生コイル、前記第3磁場発生コイル及び前記第4磁場発生コイルに供給される配線電流を生成する電流源を備える請求項13から請求項21のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項23】
前記メインホール素子は、外部磁場を検出する検出用ホール素子であり、
前記第1サブホール素子、前記第2サブホール素子、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子は、前記メインホール素子の感度を調整するための感度調整用ホール素子である請求項13から請求項22のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項24】
前記感度調整用ホール素子は、前記第1磁場発生コイル、前記第2磁場発生コイル、前記第3磁場発生コイル及び前記第4磁場発生コイルが発生する磁場によるホール起電力信号を出力し、前記ホール起電力信号に基づいて、前記検出用ホール素子の感度を調整する請求項23に記載の磁気検出装置。
【請求項25】
前記メインホール素子、前記第1サブホール素子、前記第2サブホール素子、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子は、シリコン基板上に形成され、
前記第1サブホール素子、前記第2サブホール素子、前記第3サブホール素子及び前記第4サブホール素子及び前記配線は、前記シリコン基板上の配線層で形成されている請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか1項に記載した磁気検出装置を有する電流センサ。
【請求項27】
メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子が配置され、平面視において前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルに第1コイル電流を流す第1ステップと、
平面視において前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルに、前記第1コイル電流と逆の向きに、第2コイル電流を流す第2ステップと、
前記メインホール素子に駆動電流を流す第3ステップと、
前記第1磁場発生コイル及び前記第2磁場発生コイルの間に配置されたメインホール素子から外部磁場に応じて出力されるメインホール起電力信号を検出する第4ステップと、
を含む磁気検出方法。
【請求項28】
平面視において、メインホール素子を通る直線上に配置された第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイル、前記直線上に前記第1サブホール素子と前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイル、前記直線と直交する他の直線上に配置された第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイル及び前記他の直線上に前記第2サブホール素子と前記メインホール素子を挟んで配置される第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルに対し、隣接する前記第1磁場発生コイル、前記第2磁場発生コイル、前記第3磁場発生コイル及び前記第4磁場発生コイルのいずれかを流れる電流とは反対の向きに電流が流れるように電流を供給する第1ステップと、
前記第1磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第1サブホール素子が出力する第1起電力信号、前記第2磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第2サブホール素子が出力する第2起電力信号、前記第3磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第3サブホール素子が出力する第3起電力信号及び前記第4磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第4サブホール素子が出力する第4起電力信号を検出する第2ステップと、
前記第1起電力信号、前記第2起電力信号、前記第3起電力信号及び前記第4起電力信号を加算又は平均化して感度調整信号を生成する第3ステップと、
前記感度調整信号に応じて前記メインホール素子に供給される駆動電流を制御する第4ステップと、
前記第4ステップにおいて制御された前記駆動電流により、前記メインホール素子から外部磁場に応じて出力されるメインホール起電力信号を検出する第5ステップと、
を含む磁気検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出装置、電流センサ及び磁気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサとしては、ホール素子を使った構成が公知である。磁気センサは、磁石の位置の検出、近接センサ、リニア位置センサ及び回転角センサ等に用いられるばかりでなく、電流量を非接触で測定する電流センサにも使用されている。なお、電流量の測定は、電流導体を流れる電流によって誘起される磁界を検出することによって行われる。
電流センサのうち、特にモータのインバータ電流の検出に使用される電流センサには、モータ制御を効率的に行うため、高い周波数でスイッチングするインバータ電流を高精度で検出することが求められている。
【0003】
ホール素子は、入力された磁界の強度に応じたホール起電力信号を発生する磁電変換機能を有するため、磁気センサとして広く用いられている。しかし、ホール素子は、基板からの応力や温度の変化等によって磁気感度が変動する。ホール素子の磁気感度の変動を抑えるため、磁気感度変動の補正や調整を行う技術が公知である。ホール素子の磁気感度を調整する公知の磁気センサは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、磁気感知素子の感度を直接的、または間接的に測定し、測定された磁気センサの感度を調整する回路が記載されている。
【0004】
このような特許文献1には、磁気感知素子として機能するホール効果素子(以下、「検出用ホール素子」と記す)と、検出用ホール素子の感度を調整するために基板に生じる歪みを測定するピエゾ素子と、ピエゾ素子の周囲に巻き回された電流導体(以下、「内蔵コイル」と記す)と、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−224958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1記載の磁気センサでは、検出用ホール素子に係る歪みを測定する際に、ピエゾ素子の周囲に配置された内蔵コイルによって生じる磁気が、検出用ホール素子の出力信号にも及ぶ。このような特許文献1に記載の磁気センサでは、正確な検出用ホール素子の出力信号を検出するためには、出力信号から内蔵コイルの影響によって生じた成分を分離する必要があるため、公知の磁気センサは、高い精度でホール素子の感度を調整することができなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、高い精度でホール素子の感度を調整することができる磁気検出装置、このような磁気検出装置を備えた電流センサ及び磁気検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の磁気検出装置の一態様は、メインホール素子と、前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、平面視において前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、平面視において前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、を備え、前記第1磁場発生コイルに流れる第1コイル電流は、前記第2磁場発生コイルに流れる第2コイル電流と逆の向きに流れ、前記メインホール素子は、前記第1磁場発生コイルから発生する第1磁場と前記第2磁場発生コイルから発生する第2磁場とが打ち消し合う領域を含む範囲に配置される。
【0008】
また、本発明の磁気検出装置の一態様は、メインホール素子と、前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、平面視において前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、平面視において前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、を備え、前記第1磁場発生コイルに流れる第1コイル電流は、前記第2磁場発生コイルに流れる第2コイル電流と逆の向きに流れ、前記第1磁場発生コイル及び前記第2磁場発生コイルは、前記メインホール素子を挟んで配置される。
【0009】
また、本発明の磁気検出装置の一態様は、メインホール素子と、前記メインホール素子を通る第1直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、前記メインホール素子を通り、前記第1直線と直交する第2直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子及び第4サブホール素子と、平面視において、前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、平面視において、前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、平面視において、前記第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイルと、平面視において、前記第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルと、を備え、前記第1磁場発生コイルと前記第2磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第3磁場発生コイルと前記第4磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第1磁場発生コイルを流れる第1コイル電流、前記第2磁場発生コイルを流れる第2コイル電流、前記第3磁場発生コイルを流れる第3コイル電流及び前記第4磁場発生コイルを流れる第4コイル電流は、少なくとも一方の側に隣接して配置される他の磁場発生コイルを流れる電流と逆向きに流れる。
【0010】
また、本発明の磁気検出装置の一態様は、メインホール素子と、前記メインホール素子を通る第1直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子と、前記メインホール素子を通り、前記第1直線と直交する第2直線上に前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子及び第4サブホール素子と、平面視において、前記第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルと、平面視において、前記第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルと、平面視において、前記第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイルと、平面視において、前記第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルと、を備え、前記第1磁場発生コイルと第2磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第3磁場発生コイルと前記第4磁場発生コイルとが対向して配置され、前記第1磁場発生コイルを流れる第1コイル電流、前記第2磁場発生コイルを流れる第2コイル電流、前記第3磁場発生コイルを流れる第3コイル電流及び前記第4磁場発生コイルを流れる第4コイル電流は、両方の側に隣接して配置される他の磁場発生コイルを流れる電流と逆の向きに流れる。
【0011】
また、本発明の電流センサの一態様は、請求項1から請求項25のいずれか1項に記載した磁気検出装置を有する。
また、本発明の磁気検出方法の一態様は、メインホール素子を挟んで配置される第1サブホール素子及び第2サブホール素子が配置され、平面視において第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイルに第1コイル電流を流す第1ステップと、平面視において第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイルに、第1コイル電流と逆の向きに、第2コイル電流を流す第2ステップと、メインホール素子に駆動電流を流す第3ステップと、第1磁場発生コイル及び前記第2磁場発生コイルの間に配置されたメインホール素子から外部磁場に応じて出力されるメインホール起電力信号を検出する第4ステップと、を含む。
【0012】
また、本発明の磁気検出方法の一態様は、平面視において、メインホール素子を通る直線上に配置された第1サブホール素子を囲んで配置される第1磁場発生コイル、前記直線上に前記第1サブホール素子と前記メインホール素子を挟んで配置される第3サブホール素子を囲んで配置される第3磁場発生コイル、前記直線と直交する他の直線上に配置された第2サブホール素子を囲んで配置される第2磁場発生コイル及び前記他の直線上に前記第2サブホール素子と前記メインホール素子を挟んで配置される第4サブホール素子を囲んで配置される第4磁場発生コイルに対し、隣接する前記第1磁場発生コイル、前記第2磁場発生コイル、前記第3磁場発生コイル及び前記第4磁場発生コイルのいずれかを流れる電流とは反対の向きに電流が流れるように電流を供給する第1ステップと、前記第1磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第1サブホール素子が出力する第1起電力信号、前記第2磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第2サブホール素子が出力する第2起電力信号、前記第3磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第3サブホール素子が出力する第3起電力信号及び前記第4磁場発生コイルが発生した磁場に応じて前記第4サブホール素子が出力する第4起電力信号を検出する第2ステップと、前記第1起電力信号、前記第2起電力信号、前記第3起電力信号及び前記第4起電力信号を加算又は平均化して感度調整信号を生成する第3ステップと、前記感度調整信号に応じて前記メインホール素子に供給される駆動電流を制御する第4ステップと、前記第4ステップにおいて制御された前記駆動電流により、前記メインホール素子から外部磁場に応じて出力されるメインホール起電力信号を検出する第5ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明は、高い精度でホール素子の感度を調整することができる磁気検出装置、電流センサ、磁気検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の矩形型の感磁部を有する対称型ホール素子を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態の十字型の対称型ホール素子を示した図である。
【
図3】本実施形態の磁気検出装置のホール素子を例示した図である。
【
図4】
図3に示した磁場発生コイルを示した上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の磁場発生コイルを示した上面図である。
【
図6】本発明の一実施形態のサブホール素子と磁場発生コイルとを2つ設けた場合の位置関係を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態のサブホール素子と磁場発生コイルとを4つ設けた場合の位置関係を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態の配線を例示した図である。
【
図9】本発明の一実施形態の配線の他の例を示した図である。
【
図10】本発明の一実施形態のメインホール素子とサブホール素子との駆動電流の方向を説明するための図である。
【
図11】本発明の一実施形態の配線の他の例を示した図である。
【
図12】本発明の一実施形態のメインホール素子とサブホール素子との配置の例を示した図である。
【
図13】本発明の一実施形態の電流センサの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
[ホール素子]
磁電変換機能を有するホール素子としては、主としてSpinning Current Methodを適用することが可能な、いわゆる対称型ホール素子がある。
図1、
図2は、対称型ホール素子の構成を説明するための図である。
図1に示した対称型ホール素子10は、矩形の形状を有する感磁部11を有している。感磁部11の角部には、ホール素子電源端子12、14、ホール起電圧出力端子13、15が設けられている。ホール素子電源端子12とホール素子電源端子14とは互いに対向して配置され、ホール起電圧出力端子13とホール起電圧出力端子15とは互いに対向して配置されている。
【0016】
図2は、Popovicらによって考案された十字型形状の対称型ホール素子の構成を説明するための図である。
図2に示した対称型ホール素子20は、十字型の形状を有する感磁部21を有している。感磁部21の凸部には、ホール素子電源端子22、24、ホール起電圧出力端子23、25が設けられている。ホール素子電源端子22とホール素子電源端子24とは、互いに対向して配置され、ホール起電圧出力端子23とホール起電圧出力端子25とは互いに対向して配置されている。
図1及び
図2に示した対称型ホール素子10、20は、いずれもホール素子電源端子同士が図中に示したy方向に沿って対向して配置され、ホール起電圧出力端子同士が図中に示したx方向に沿って対向して配置されている。ただし、「対称型ホール素子」とは、ホール素子電源端子の対とホール起電圧出力端子の対の配置を入れ替えても幾何学的形状は同一となることを意味し、換言すれば、対称型ホール素子とは、全体の形状が中心点(図示せず)を通る軸を回転軸として4回回転対称である(4回対称)ホール素子を意味する。
【0017】
[磁気検出装置]
(1)磁場発生コイル及びホール素子の配置
1.1 磁場発生コイルを2つ設ける例
図3は、本実施形態の磁気検出装置(以下、「磁気センサ」と記す)におけるホール素子の一例を説明するための図であって、ホール素子を上面から見た上面図である。
図3は、メインホール素子33と、サブホール素子31、32と、磁場発生コイル35、36の配置を例示している。なお、本実施形態は、メインホール素子、サブホール素子及び磁場発生回路等の配置を、全て平面視において図示し、説明する。
【0018】
図3では、x、y、z軸を示している。本実施形態では、サブホール素子31及び磁場発生コイル35とサブホール素子32及び磁場発生コイル36とが、メインホール素子33を挟んでx軸方向に沿って配置される。本実施形態では、このような配置を、以降、サブホール素子31とサブホール素子32とが「対向する」とも記す。
メインホール素子33及びサブホール素子31、32は、いずれも
図2に示した十字形状の対称型ホール素子である。メインホール素子33は、外部から入力される磁場を検出するための検出用ホール素子である。メインホール素子33は、感磁部331、ホール素子電源端子332、334、ホール起電圧出力端子333、335を有している。また、サブホール素子31は、感磁部311、ホール素子電源端子312、314、ホール起電圧出力端子313、315を有し、サブホール素子32は、感磁部321、ホール素子電源端子322、324、ホール起電圧出力端子323、325を有している。
【0019】
磁場発生コイル35、36は、磁気センサの感度を調整するための内蔵コイルである。磁場発生コイル35、36は、メインホール素子33、サブホール素子31、32と同一基板上に形成可能な配線層で使用されるメタル材料で形成される。磁場発生コイル35、36をサブホール素子31、32等と同一基板上に形成することで、磁場発生コイル35、36を磁場センサ近くに設けることが可能となり、磁気センサ上の磁場強度を高めることができる。
磁場発生コイル35、36は、導体の一部を巻き回して形成されている。本実施形態では、導体のうち、巻き回された部分を磁場発生コイルと記し、磁場発生コイルと電力源とを接続する部分を「配線」と記す。配線については、後に詳述する。また、本明細書では、コイルを流れる電流を「コイル電流」と記し、配線を流れる電流を「配線電流」と記す。
【0020】
さらに、磁場発生コイル35、36の形成に半導体の多層プロセスを用いることにより、磁場発生コイルのターン数を調整することも可能である。磁場発生コイル35、36にそれぞれ一定方向のコイル電流を流すことにより、磁場発生コイル35、36に囲まれた領域に任意の磁場を発生することができる。なお、本実施形態でいう「囲まれた領域」の文言は、磁場発生コイル35、36によって形成される平面的な閉空間をいい、平面的な閉空間が一部解放された部分sを有するものであってもよい。
サブホール素子31は、磁場発生コイル35が生じる磁場を検出する感度調整用ホール素子として機能する。サブホール素子32は、磁場発生コイル36が生じる磁場を検出する感度調整用ホール素子として機能する。
【0021】
上記したように、サブホール素子31、32は、メインホール素子33を挟んで配置される。磁場発生コイル35は、サブホール素子31を囲んで配置される。磁場発生コイル36は、サブホール素子32を囲んで配置される。また、
図3に示した構成では、磁場発生コイル35に流れるコイル電流Iaと磁場発生コイル36に流れるコイル電流Ibとが互いに逆向きに流れている。メインホール素子33は、磁場発生コイル35から発生する磁場と磁場発生コイル36から発生する磁場とが打ち消し合う領域(
図3中に示した線分A1上の点)を含む範囲に配置される。即ち、本実施形態のメインホール素子33は、線分A1上に設置される。なお、線分A1の範囲については、後に
図5を使って具体的に説明する。
【0022】
また、本実施形態では、サブホール素子31の中心点と磁場発生コイル35の中心点とが一致し、サブホール素子32の中心点と磁場発生コイル36の中心点とが一致している。このため、本実施形態では、以降の説明において、サブホール素子31の中心点及び磁場発生コイル35の中心点をいずれも中心点o1とし、サブホール素子32の中心点及び磁場発生コイル36の中心点をいずれも中心点o2とする。
さらに、本実施形態では、
図3において、メインホール素子33の中心点を中心点o3とする。
図3に示した例では、中心点o3が線分A1上の点と一致するようにメインホール素子33が配置されている。
【0023】
図3に示した例では、磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaの値と磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibの値とが等しい。また、
図3に示した例では、サブホール素子31、32とメインホール素子33とを同一サイズ、同一形状のものとした。サブホール素子31、32とメインホール素子33とを同一サイズ、同一形状のものとすることにより、基板に係る応力や温度等による歪みに応じた感度の変動を高い精度で調整することができる。ただし、本実施形態は、サブホール素子31、32とメインホール素子33とのサイズや形状を必要に応じて変更するものであってもよい。
【0024】
1.2 零磁場領域
ここで、磁場発生コイル35、36によって発生する磁場が互いに打ち消し合うことを説明する。
図4は、
図3に示した磁場発生コイル35を示した上面図である。磁場発生コイル35には、矢線が示す方向(所謂時計回り)にコイル電流が流れている。このような場合、磁場発生コイル35の内側には、−z方向(紙面奥向き)に向かう磁束が発生する。一方、磁場発生コイル35の外側の線分A上の点においては、z方向(紙面手前側)に向かう磁束が発生する。磁束密度は、磁場発生コイル35を流れるコイル電流の大きさに比例し、磁場発生コイル35からの距離に反比例する。
【0025】
図5は、磁場発生コイル35及び磁場発生コイル36を示した上面図である。
図4で説明したように、磁場発生コイル35の内側には−z方向に向かう磁束が発生し、外側にはz方向に向かう磁束が発生する。磁場発生コイル36には磁場発生コイル35を流れるコイル電流の向きと逆向きのコイル電流が流れているため、磁場発生コイル36の内側にはz方向に向かう磁束が発生し、外側には−z方向に向かう磁束が発生する。なお、本実施形態において、「電流の向きが逆」とは、例えば、サブホール素子に対して、磁場発生コイルに流れるコイル電流が、時計回りと反時計回りの関係、または右回りと左回りの関係にあるものをいう。
【0026】
このような磁場発生コイル35、36によれば、磁場発生コイル35の中心点o1までの距離と磁場発生コイル36の中心点o2までの距離とが等しい連続する複数の点の集合で表される領域は磁場が打ち消し合う。磁場が打ち消し合う領域を、本実施形態では、零磁場領域と記す。
図3、
図5中に示した例では、
図3、
図5中の線分A1が零磁場領域となる。
また、線分A1上の点から外れた領域であっても、線分A1上に比較的近い領域では、磁場が打ち消し合って弱め合う効果を得ることができる。本実施形態では、磁場発生コイル35の外縁と磁場発生コイル36の外縁とに接する接線Lt1と、接線Lt1と平行であって、かつ、磁場発生コイル35の外縁と磁場発生コイル36の外縁とに接する接線Lt2と、磁場発生コイル36に向かって突出する側の磁場発生コイル35の外縁と、磁場発生コイル35に向かって突出する側の磁場発生コイル36の外縁との間を、完全に零磁場とならないまでも磁場の減衰効果を得られる領域(以下、「準零磁場領域」と記す)A2とする。
【0027】
なお、本実施形態は、中心点o1までの距離と中心点o2までの距離とが等しい点上であっても、準零磁場領域A2の外部は磁場発生コイル35が発生する磁場と磁場発生コイル36が発生する磁場の相乗効果が及ばない範囲として問題としない。線分A1で表される零磁場領域は、準零磁場領域A2の内部にあって、磁場発生コイル35、36が発生する磁場が弱め合う効果が特に高い領域である。
本実施形態は、準零磁場領域A2の内部にメインホール素子33を設置する。このような構成により、本実施形態は、メインホール素子33に対する第1磁場発生コイル35、36の磁場の影響を軽減あるいは排除することができる。
【0028】
また、本実施形態は、準零磁場領域A2の内部にメインホール素子33を設置する際、メインホール素子33を、磁場発生コイル35の中心点o1までの距離と磁場発生コイル36の中心点o2までの距離とが等しい線分A1上を含む範囲に設置するようにする。このとき、第1実施形態は、
図3に示したメインホール素子33の中心点o3が、線分A1上の1点と一致するようにメインホール素子33を配置することができる。このようにすれば、メインホール素子33の中心を零磁場領域である線分A1上に設置することができる。
【0029】
また、本実施形態は、メインホール素子33を、サブホール素子31の中心点o1までの距離とサブホール素子32の中心点o2までの距離とが等しい領域を含む範囲に設置するようにしてもよい。このとき、メインホール素子33の中心点o3を、サブホール素子31の中心点o1までの距離とサブホール素子32の中心点o2までの距離とが等しい領域(
図5においては線分A1と一致する)上の1点と一致するようにしてもよい。
さらに、上記したメインホール素子33等の配置は、換言すれば、磁場発生コイル35がメインホール素子33の中心点o3を通る直線(
図5においては線分A1と一致する)を挟んで対称な2点のうちの一点を含む範囲に配置され、磁場発生コイル36が、対称な2点のうちの他の一点を含む範囲に配置されることになる。また、このとき、本実施形態は、磁場発生コイル35の中心点o1と対称な位置にある2点のうちの一点とが一致するように磁場発生コイル35を配置することができる。また、磁場発生コイル36の中心点o2と対称な位置にある2点のうちの他の一点とが一致するように磁場発生コイル36を配置することができる。
【0030】
また、本実施形態は、サブホール素子31がメインホール素子33の中心点o3を通る直線(
図5においては線分A1に一致する)を挟んで対称な位置にある2点のうちの一点を含む範囲に配置され、サブホール素子32が対称な位置にある2点のうちの他の一点を含む範囲に配置されるようにしてもよい。このとき、中心点o1が対称な位置にある2点のうちの一点に一致するようにサブホール素子31を設置し、中心点o2が対称な位置にある2点のうちの他の一点に一致するようにサブホール素子31を設置してもよい。
【0031】
図6は、本実施形態のサブホール素子31と磁場発生コイル35との位置関係を説明するための図である。なお、本実施形態では、サブホール素子32と磁場発生コイル36との位置関係もサブホール素子31と磁場発生コイル35との位置関係と同様であるから、サブホール素子32と磁場発生コイル36との位置関係の説明を省く。
本実施形態では、磁場発生コイル35の中心点o1がサブホール素子31の中心点と一致するように磁場発生コイル35及びサブホール素子31を配置している。このようにすれば、サブホール素子31は磁場発生コイル35が発生した磁束のうち、一定の方向に向かう磁束のみを検出することができる。このため、本実施形態は、サブホール素子31が発生する磁束密度を高い精度で検出することができる。
【0032】
1.3 磁場発生コイルを4つ設ける例
次に、本実施形態の磁場センサにおいて、磁場発生コイルを4つ設ける例を説明する。
図7(a)、
図7(b)は、磁場発生コイルを4つ設けた本実施形態の磁場センサを例示した図である。
図7(a)、
図7(b)に示した例では、いずれも、メインホール素子33及びサブホール素子31、32、71、77を破線で示す。
図7(a)、(b)に示した例では、メインホール素子33を通る直線Ls1上にメインホール素子33を挟んで配置されるサブホール素子31及びサブホール素子32と、メインホール素子33を通り、直線Ls1と直交する直線Ls2上にメインホール素子33を挟んで配置されるサブホール素子71及びサブホール素子72と、サブホール素子31を囲んで配置される磁場発生コイル35と、サブホール素子32を囲んで配置される磁場発生コイル36と、サブホール素子71を囲んで配置される磁場発生コイル75と、サブホール素子72を囲んで配置される磁場発生コイル76と、を備えている。
【0033】
上記構成において、磁場発生コイル35と磁場発生コイル36とが対向して配置され、磁場発生コイル75と磁場発生コイル76とが対向して配置される。このような磁場発生コイルの配置を、本実施形態では、磁場発生コイルを「点対称に配置する」とも記す。
磁場発生コイル35、36、75、76を点対称に配置する構成は、換言すれば、メインホール素子33の中心点o3からサブホール素子の中心点o1までの距離、中心点o3からサブホール素子32の中心点o2までの距離、中心点o3からサブホール素子71の中心点o4までの距離及び中心点o3からサブホール素子72の中心点o5までの距離が、全て等しくなるように磁場発生コイル35、36、75、76を配置するとも言える。
【0034】
さらに、磁場発生コイル35、36、75、76を点対称に配置する構成は、換言すれば、サブホール素子31及びサブホール素子32がサブホール素子71の中心点o4とサブホール素子72の中心点o5とを通る直線Ls2に対して互いに対称な位置に配置され、サブホール素子71及びサブホール素子72がサブホール素子31の中心点o1とサブホール素子32の中心点o2とを通り、かつ、直線Ls
2と直交する直線Ls
1に対して互いに対称な位置に配置されると言える。
また、磁場発生コイル35を流れるコイル電流Ia、磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ib、磁場発生コイル75を流れるコイル電流Ic及び磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idは、少なくとも一方の側に隣接して配置される他の磁場発生コイルを流れるコイル電流と逆の向きに流れている。
【0035】
即ち、
図7(a)に示した例では、磁場発生コイル35は、磁場発生コイル75と磁場発生コイル76の両方に隣接している。磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaは、磁場発生コイル75を流れるコイル電流Icと逆の向きに流れ、磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idと同じ向きに流れている。また、磁場発生コイル75は、磁場発生コイル35と磁場発生コイル36の両方に隣接している。磁場発生コイル75を流れるコイル電流Icは、磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaと逆の向きに流れ、磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibと同じ向きに流れている。磁場発生コイル36は、磁場発生コイル75と磁場発生コイル76の両方に隣接している。磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibは、磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idと逆の向きに流れ、磁場発生コイル75を流れるコイル電流Icと同じ向きに流れている。さらに、磁場発生コイル76は、磁場発生コイル36と磁場発生コイル35の両方に隣接している。磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idは、磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibと逆の向きに流れ、磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaと同じ向きに流れている。
【0036】
また、
図7(b)に示した例では、磁場発生コイル35は、磁場発生コイル75と磁場発生コイル76の両方に隣接している。磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaは、磁場発生コイル75を流れるコイル電流Ic及び磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idの両方に対して逆の向きに流れている。磁場発生コイル75は、磁場発生コイル35と磁場発生コイル36の両方に隣接している。磁場発生コイル75を流れるコイル電流Icは、磁場発生コイル35を流れるコイル電流Ia及び磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibの両方に対して逆の向きに流れている。磁場発生コイル36は、磁場発生コイル75と磁場発生コイル76の両方に隣接している。磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ibは、磁場発生コイル75を流れるコイル電流Ic及び磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idの両方に対して逆の向きに流れている。さらに、磁場発生コイル76は、磁場発生コイル36と磁場発生コイル35の両方に隣接している。磁場発生コイル76を流れるコイル電流Idは、磁場発生コイル36を流れるコイル電流Ib及び磁場発生コイル35を流れるコイル電流Iaの両方に対して逆の向きに流れている。
なお、
図7(b)に示した構成において、コイル電流Iaは対向する磁場発生コイル36を流れる電流Ibと同じ向きに流れ、コイル電流Icは対向する磁場発生コイル76を流れる電流Idと同じ向きに流れる。
【0037】
以上説明した磁場発生コイル及びホール素子の配置によれば、
図7(a)に示した線分A3上に零磁場領域が形成される。線分A3は、サブホール素子31の中心点o1までの距離とサブホール素子71の中心点o4までの距離、あるいはサブホール素子32の中心点o2までの距離とサブホール素子72の中心点o5までの距離とが等しい連続する複数の点の集合で表される。また、
図7(b)に示した例では、線分A3及び線分A4上に零磁場領域が形成される。線分A4は、中心点o1までの距離と中心点o5までの距離、あるいは中心点o4までの距離と中心点o2までの距離とが等しい連続する複数の点の集合で表される。
【0038】
なお、
図7(a)、
図7(b)に示した磁場発生コイルを4つ設ける構成では、4つの磁場発生コイル35、36、75、76のうち、隣接して配置される磁場発生コイルの外縁部に接する4つの接線Lt3、Lt4、Lt5、Lt6を規定する。そして、接線Lt3〜Lt6及び4つの磁場発生コイル35、36、75、76の外縁部とによって囲まれた範囲を準零磁場領域A5とする。A3及び線分A4によって表される零磁場領域は、準零磁場領域A5内の範囲で規定される。即ち、線分A3及び線分A4は、直線のうち、準零磁場領域A5と重なる部分をいう。
このように、本実施形態は、等しい値の電流が流れる磁場発生コイルを偶数個組み合わせることにより、全ての磁場発生コイルの中心から等距離にある点を含む領域に零磁場領域を生成することができる。また、磁場発生コイルの組合せ方によっては、このような領域以外にも零磁場領域を複数形成することができる。
【0039】
(2)配線
図8は、4つの磁場発生コイルにコイル電流を供給する配線を説明するための図である。なお、
図8に示した構成は、
図7に示したメインホール素子33、サブホール素子31、32、71、72を備えているが、説明の簡単のために図示を省いている。
図8に示した例では、
図7に示した磁場発生コイル75に電源VCC81を接続し、磁場発生コイル35に電源VCC82を接続し、磁場発生コイル76に電源VCC83を接続し、磁場発生コイル36に電源VCC84を接続している。電源VCC81〜VCC84のそれぞれには、GNDに接地された同電流の電流源を含む電流源群85によって電力が供給される。
図8に示した配線86は、メインホール素子及びサブホール素子31、32、71、72が形成されている領域の外側に配置される。
【0040】
配線86は、配線電流が方向d1に流れる配線部86aと、配線86a部と電気的に接続すると共に配線部86aと平行に配置され、方向d1と反対の方向d2に配線電流が流れる配線部86bと、を含んでいる。また、配線86は、配線電流が方向d1に流れる配線部86cと、配線部86cと電気的に接続すると共に配線部86cと平行に配置され、方向d1と反対の方向d2に配線電流が流れる配線部86dと、を含んでいる。
即ち、本実施形態では、
図8に示したように、平行な配線部86aと配線部86b及び配線部86cと配線部86dとを形成し、両者を流れる電流を並走させると共に、配線部86aと配線部86bとの間で配線電流が流れる向きを反対方向とする。このような本実施形態によれば、配線部86aが発生する磁場と配線部86bが発生する磁場とが少なくとも一部打ち消し合い、配線86が発生する磁場のメインホール素子及びサブホール素子に対する影響を低減することができる。
【0041】
図9(a)、
図9(b)は、本実施形態の配線の他の例を説明するための図である。
図9(a)に示した例では、磁場発生コイル75、35に電源VCC81を接続し、磁場発生コイル76、36に電源VCC84を接続している。電源VCC81、84の各々にはGNDに接地された同電流の電流源を含む電流源群95が接続されている。このような
図9(a)に示した構成では、磁場発生コイル35及び磁場発生コイル75が共通の配線を有し、磁場発生コイル36及び磁場発生コイル76が共通の配線を有することになる。
【0042】
図9(a)において、磁場発生コイル35、36、75、76に配線電流を供給する配線96は、配線部96a、96b及び配線部96c、96dを含んでいる。配線部96a、96cにおいては配線電流が方向d1に向かって流れ、配線部96b、96dにおいては配線電流が方向d2に向かって流れている。
また、
図9(b)に示した例では、磁場発生コイル35、36、75、76に電源VCC81を接続し、電源VCC81にGNDに接地された単一の電流源91を接続する。このような
図9(b)に示した構成では、配線97が、磁場発生コイル35、36、75、76の全てに共通の配線となる。
【0043】
図9(b)において、配線97は、配線部97a、97b、配線部97c、97d及び配線部97e、97fを含んでいる。配線部97a、97c、97eにおいては配線電流が方向d1に向かって流れ、配線部97b、97d、97fにおいては配線電流が方向d2に向かって流れている。
このような
図9(a)、
図9(b)に示した本実施形態の構成は、
図8に示した構成と同様に、配線96、97が発生する磁場のメインホール素子及びサブホール素子に対する影響を低減することができる。また、配線のうち、配線部が占める割合が大きいほど配線が発生する磁場の影響を低減する効果が高くなる。
【0044】
図10は、メインホール素子33とサブホール素子31、32、71、72の駆動電流の方向を説明するための図である。
図10に示した磁場センサは、磁場発生コイル75に電源VCC81を接続し、GNDに接地した単一の電流源91によって駆動される。
図10に示した磁場センサでは、磁場発生コイル35の中心とサブホール素子31の中心が一致している。また、磁場発生コイル36の中心とサブホール素子32の中心、磁場発生コイル75の中心とサブホール素子71の中心、磁場発生コイル76の中心とサブホール素子72の中心とがそれぞれ一致している。
【0045】
このような構成により、サブホール素子31、32、71、72は、一定の方向に向かう磁場のみを検出することができる。また、メインホール素子33の感磁部を線分A3、A4が交差する交点を含む零磁場領域に配置することにより、メインホール素子33は、磁場発生コイル35、36、75、76が発生する磁場を検出することがない。このとき、本実施形態は、サブホール素子31、32、71、72とメインホール素子33の駆動電流方向(
図10中に矢線Dで示す)を同一にすることで、サブホール素子31、32、71、72とメインホール素子33の感度が基板からの応力、温度等に対して同一の影響を受けることが期待される。
【0046】
図11は、メインホール素子33のみを囲んで形成される配線116を説明するための図である。
図11に示した磁場センサでは、磁場発生コイル35、36、75、76に接続された配線部116aに電源VCC81を接続し、GNDに接地した単一の電流源91によって磁場センサを駆動する。
図11に示した例では、サブホール素子31、32、71、72が、それぞれ感磁部と磁場発生コイル35、36、75、76の中心点とが重なるように配置される。このような構成により、サブホール素子31、32、71、72は、一定の方向に向かう磁場のみを検出することができる。また、メインホール素子33の感磁部を線分A3、A4の交点を含む零磁場領域に配置することにより、メインホール素子33は、磁場発生コイル35、36、75、76が発生する磁場を検出することがない。
【0047】
さらに、配線116でメインホール素子33のみを囲む場合にも、
図8、
図9(a)、
図9(b)に示した配線と同様に、配線部116a、116bに互いに向きが反対の配線電流を供給し、配線116a、116bで生じる磁界を打ち消すことができる。また、配線116でメインホール素子33のみを囲む構成は、配線116をサブホール素子31、32、71、72の外部に設けるよりも素子面積を効率的に利用することが可能となる。
また、メインホール素子33及びサブホール素子31、32、71、72をそれぞれ配置するときの角度は、
図12に示す通り、x軸及びy軸方向に対して、45度方向回転した角度で配置する形態であってもよい。
【0048】
[電流センサ及び信号処理方法]
図13は、以上説明した磁場センサを用いた電流センサを説明するための図である。ここでは、電流センサが磁場センサから出力された信号を処理する磁気検出方法を説明する。
図13に示した電流センサは、サブホール素子121、122、メインホール素子124、磁場発生コイル、感度調整信号生成回路123、信号処理回路125を備えている。サブホール素子121、122には各々電流源126が接続されていて、サブホール素子121、122の磁場発生コイルには電流源128が接続されている。また、メインホール素子124には電流源127が接続されている。
【0049】
本実施形態において、サブホール素子121、122は、各磁場発生コイルにより生じる磁場とサブホール素子121、122に流れる駆動電流とにより、サブホール起電力を出力する。感度調整信号生成回路123は、サブホール素子121、122から検出されたサブホール起電力信号を加算、または平均して感度調整信号を生成する。磁場発生コイルを使用することにより、感度調整信号は、基板からの応力や温度の変化量を含む信号となる。
感度調整信号は、電流源127によってメインホール素子124に流れる駆動電流を制御する。メインホール素子124と制御された駆動電流によって外部磁場を検出する。
【0050】
以上説明した本実施形態の電流センサは、応力等により、メインホール素子の感度が変動しても、各サブホール素子と各磁場発生コイルによって感度調整信号を精度良く生成することができる。そのため、応力等によるメインホール素子の感度変動を精度良く補正、調整することができる。
なお、本実施形態は、メインホール素子による磁気検出と、サブホール素子による感度調整と同時に行うものに限定されるものでなく、間欠動作するものであってもよい。また、本実施形態は、テスト工程等において、サブホール素子によるメインホール素子の感度調整を予め行うものであってもよい。また、ホール素子として
図1及び
図2に示すホール素子を例として挙げたが、縦型ホール素子であってもよい。また、内蔵コイルの形状は、平面視で円形に限られず、多角形形状や、楕円形状、コの字形状等、どのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明した磁気検出装置、電流センサ及び磁気検出方法は、応力や温度の変化によって感度が変化し得る環境で使用される磁気検出装置や電流センサ全般に好適である。
【符号の説明】
【0052】
10,20 対称型ホール素子
11,21,311,321,331 感磁部
12,14,22,24,312,314,322,324,332,334 ホール素子電源端子
13,15,23,25,313,315,323,325,333,335 ホール起電圧出力端子
31,32,71,72,121,122 サブホール素子
33,124 メインホール素子
35,36,75,76 磁場発生コイル
84 電源
85,95 電流源群,
86,96,97 配線
86a,86b,86c,86d,96a,96b,96c,96d,97a,97b,97c,97d,97e,97f,116a,116b :配線部
91 電流源
125 信号処理回路
126,127,128 電流源