(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性シリコンの含量は、シリコン系合金で、活性シリコン及び非活性シリコンの総含量を基にして、40ないし80原子%であることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池用電極。
前記シリコン−M−A合金でのシリコンの含量は、60ないし75原子%であり、Mの含量は、5ないし25原子%であり、Aの含量は、15ないし25原子%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【発明を実施するための形態】
【0012】
リチウム二次電池用電極は、シリコン系合金を含み、電極の表面粗度が1ないし10μmであり、前記表面粗度偏差が5μm以下である。
【0013】
電極活物質として、一般的に利用されるシリコン系合金は、高容量などのために、高い含量のシリコンを含んでおり、かようなシリコン含量を有するシリコン系合金を利用して、電極を形成すれば、シリコン系合金の結晶サイズが大きくなることにより、電極の表面粗度が10μmを超える範囲に大きくなり、電極に対する電解液含浸性が低下し、これによって、シリコンの体積膨脹時に、持続的なSEI(solid electrolyte interface)膜の形成により、電極を採用したリチウム二次電池の初期効率低下と、C.R.R.(capacity retention rate)の急激な低下によって、寿命が低下することがある。
【0014】
これにより、本発明者らは、前述の問題点を解消すべく、シリコン系合金でのシリコンの含量と、活性シリコンと非活性シリコンとの混合比とを適切に制御しつつ、シリコン系合金を利用した電極製造時に、シリコン系合金、結合剤及び導電剤の混合、並びに粉砕工程条件を最適化することにより、前述のシリコン含量を有するシリコン系合金を使いつつも、電極の表面粗度が0.5ないし12μm、例えば1ないし10μmであり、表面粗度偏差が5μm以下に制御する。
【0015】
前記シリコン系合金でのシリコンの含量は、60ないし75原子%である。シリコン系合金でのシリコンの含量が、前記範囲であるとき、シリコン系合金を利用した電極の表面粗度及び粗度偏差特性にすぐれる。
【0016】
前記シリコン系合金を構成するシリコンは、非活性シリコンと活性シリコンとが混合している。前記活性シリコンは、シリコン系合金の容量と直接に関連しており、非活性シリコンは、非活性マトリックス構造を有しつつ、シリコン系合金の体積膨脹を抑制する役割を行う。
【0017】
前記活性シリコンの含量は、シリコン系合金で、活性シリコン及び非活性シリコンの全100原子%に対して、40ないし80原子%範囲であってもよい。活性シリコンの含量が前記範囲であるとき、それを利用した電極の充放電時に、シリコン系合金の体積膨脹を効率的に抑制することができ、電極の容量特性にすぐれる。
【0018】
前記シリコン系合金は、シリコン合金系マトリックス内に、シリコン粒子が中間に析出された構造を有する。かような構造及び組成を有することにより、充放電時にシリコン粒子が膨脹する場合、シリコン粒子を取り囲んだシリコン合金系マトリックスが、シリコンの体積変化を効率的に制御する。従って、かようなシリコン系合金を負極活物質として使用すれば、充放電時に電極の膨張率が低下する。
【0019】
前述のように、充放電時電極の膨張率が低下することにより、電極の膨脹によって生じる問題点、すなわち、シリコン合金系マトリックスの破壊によって、さらなるSEI膜が形成され、リチウムの非可逆容量が増加し、寿命特性が低下するという現象をあらかじめ予防することができる。
【0020】
また、前記電極は、前述の表面粗度及び表面粗度偏差特性を有し、初期電解液含浸性が改善され、局所的なオーバーポテンシャルによる偏差が減少し、寿命が改善されるだけではなく、電池製造収率が向上するという利点がある。
【0021】
図1を参照しつつ、本発明の一具現例によるリチウム二次電池用電極について、さらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0022】
図1でAは、電極極板の表面粗度が均一である場合を示したものであり、Bは、Aの場合に比べて、電極極板の表面粗度偏差が大きい場合を示したものである。
【0023】
これを参照すれば、電極極板の粗度がAのように、均一に制御されれば、電極極板表面での非表面積の増大によって、電解液の含浸特性が向上する。このように、電解液の含浸特性が向上すれば、シリコン合金マトリックスは、SEI膜の形成を抑制することにより、シリコン合金系物質を含んだ負極が、充放電後に膨脹することを効果的に抑制することができる。
【0024】
前述のように、充放電後に、膨脹が抑制された電極を採用すれば、初期効率、容量維持率及び寿命特性が向上したリチウム二次電池を製作することができる。
【0025】
前記電極の粗度標準偏差は、例えば、2μm以下、具体的には、0.1ないし2μmである。
【0026】
前記用語「表面粗度」は、ピンホール(pin hole)や突起、異物混入、クラック、縞模様、塊物質などのレベルを判断することができるが、電極の表面粗度算術平均値を示す。
【0027】
一具現例による電極の合剤密度は、0.80ないし0.90g/cc、例えば0.83ないし0.88g/ccである。
【0028】
用語「電極の合剤密度」は、負極で集電体を除いた成分(活物質、導電剤、結合剤など)の重量を体積で割って計算されたものである。
【0029】
前記電極の合剤密度が前記範囲であるとき、電極板の表面粗度特性が適切な範囲内に制御され、かような表面粗度を有する電極を採用すれば、寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製作することができる。
【0030】
前記シリコン系合金は、シリコン;及びアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びチタン(Ti)のうち選択された一つ以上の金属;を含む。
【0031】
前記シリコン系合金は、例えば、シリコン−M−A合金であると表示される。前記M及びAは、互いに異なって選択され、Mは、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)または鉄(Fe)であり、Aは、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)またはマンガン(Mn)である。
【0032】
前記シリコン−M−A合金でのシリコンの含量は、60ないし75原子%、例えば60ないし72原子%である。
【0033】
前記Mの含量は、5ないし25例えば7ないし20原子%であり、Aの含量は、15ないし25原子%である。
【0034】
前記シリコン系合金は、例えば、Si
68Al
8Ni
24、Si
60Ti
20Ni
20、Si
70Fe
15Mn
15、Si
70Al
15Fe
15、Si
70Al
15Mn
15、Si
70Ti
15Fe
15、Si
65Ti
17.5Ni
17.5、またはSi
68Ti
16Ni
16を挙げることができる。
【0035】
以下、シリコン系合金を含んだリチウム二次電池用電極の製造方法について説明する。
【0036】
シリコン系合金、導電剤及びバインダの混合条件は、最終的に得られた電極の表面粗度特性に重要な影響を及ぼす。
【0037】
一具現例によれば、電極活物質であるシリコン系合金、導電剤及び結合剤を含む電極活物質層形成用の組成物は、下記過程によって製造される。
【0038】
電極活物質層形成用の組成物を構成するシリコン系合金、導電剤及び結合剤を混合する過程は、ミリング機(milling machine)に溶媒をまず込め、液相条件にした後、活物質、導電剤及び結合剤を付加及び混合する工程による。ここで、活物質、導電剤及び結合剤を付加する順序は、特別に制限されるものではないが、例えば、活物質をまず込め、導電剤及び結合剤を後で付加することにより、活物質の微粉化を抑制することができる。前記ミリング機は、例えば、粉砕機である。
【0039】
前記活物質、導電剤及び結合剤の付加工程及び混合工程は、液相条件下で、湿式混合及び粉砕工程を介して実施される。かような湿式混合及び粉砕工程を介して、活物質、導電剤及び結合剤の酸化を防ぐことができるだけではなく、活物質の粒径を10μm以下、例えば、1ないし7μmの範囲に制御する。このように、活物質の粒径を前述の範囲に制御すれば、充放電時に生じるシリコン系粒子の体積膨脹による問題点をあらかじめ予防することができ、活物質表面に電解液が均一にウェッティング(wetting)されるように、活物質表面特性を最適化させることができる。
【0040】
前述のように、活物質の粒径を12μm以下、例えば10μm以下、具体的に1ないし7μmに制御しつつ、活物質の表面特性を制御すれば、電極の表面粗度が0.5ないし12μmであり、粗度偏差が5μm以下に調節することができる。その結果、電極製造のための圧延過程、及び電極を採用したリチウム二次電池の充放電過程において、電極活物質の微分化あるいは損傷を効果的に抑制することができる。
【0041】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、純水などを使用する。
【0042】
前記溶媒の含量は、電極活物質層形成用の組成物で、固形分含量が30ないし60重量%、例えば30ないし50重量%、具体的に40ないし50重量%範囲になるように付加する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、活物質の粒径を、10μm以下範囲にその大きさを制御することができ、活物質層形成用の組成物の各構成成分の分散性にすぐれ、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0043】
前記湿式混合工程及び粉砕工程を実施する粉砕機としては、例えば、ビーズミルを利用する。粉砕機としてビーズミルを利用する場合、活物質であるシリコン系合金、導電剤及び結合剤が適切な粒子サイズに粉砕されつつ、均一に分散する効果によって、これを利用して形成された電極の表面粗度特性に非常にすぐれる。
【0044】
前述のように、活物質の粒径を10μm以下範囲に制御すれば、充放電過程及び/または電極圧延過程で、活物質であるシリコン系合金の過度微分化を防ぐことができるという利点がある。
【0045】
前記湿式混合工程及び粉砕工程で、ビーズ(bead)を使用するが、ビーズの粒径は、例えば、0.25ないし3mm、具体的に0.5ないし2mmであり、粉砕機の分当たり回転数は、例えば、1,000ないし2,000rpmである。ビーズの粒径及び粉砕機の分当たり回転数が前記範囲であるとき、電極活物質層形成用の組成物の分散性にすぐれ、活物質の微粉化を抑制することができる。
【0046】
前記ビーズの材質は、非制限的な例として、ジルコニアビーズまたはアルミナビーズを挙げることができる。
【0047】
前記混合及び粉砕を経た結果物を電極集電体上にコーティングし、極板形態にした後、それを乾燥させ、かつ圧延(pressing)して電極を製造する。
【0048】
前記乾燥は、100ないし150℃、例えば、100ないし110℃または120ないし140℃で実施される。乾燥時間は、例えば2ないし6時間範囲、具体的に3ないし5時間範囲である。
【0049】
前記電極活物質は、例えば、負極活物質であり、前記電極は、例えば、負極である。
【0050】
前記負極活物質は、前述のシリコン系合金を必須成分とし、該必須成分以外に、リチウム二次電池で一般的に使用される負極活物質材料を、追加して使用することができる。
【0051】
前記負極活物質材料としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる黒鉛、炭素のような炭素系材料、リチウムまたはその合金、シリコン酸化物系物質、及びそれらの混合物からなる群から選択された第2物質を挙げることができる。
【0052】
一具現例によれば、前記負極活物質として、シリコン系合金と炭素系材料とを使用し、前記炭素系材料としては、黒鉛または非晶質カーボンであるピッチを使用する。
【0053】
このように、炭素系材料を共に使用すれば、活物質であるシリコン系合金の酸化反応を抑制し、SEI膜形成を効果的に抑制して安定した被膜を形成し、導電度の向上をもたらし、リチウムの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0054】
前記炭素系材料を利用する場合、例えば、前記炭素系材料は、活物質であるシリコン系合金の表面にコーティングされもする。
【0055】
前記シリコン系合金と共に使用される第2物質の含量は、シリコン系合金と負極活物質材料との総含量100重量部を基にして、1ないし99重量部である。
【0056】
前記負極活物質で、シリコン系合金が主成分(major component)である場合には、シリコン系合金の含量は、例えば、第2物質とシリコン系合金との総含量100重量部に対して、95ないし99重量部である。前記第2物質として、黒鉛または非晶質カーボンであるピッチを使用する場合には、黒鉛または非晶質カーボンであるピッチが、シリコン系合金の表面にコーティングされる。
【0057】
前記負極活物質で、シリコン系合金が副成分(minor component)である場合には、シリコン系合金の含量は、例えば、第2物質とシリコン系合金との総含量100重量部に対して、1ないし5重量部である。前記第2物質として、黒鉛または非晶質カーボンであるピッチを使用する場合には、黒鉛または非晶質カーボンであるピッチが、シリコン系合金のバッファ役割を行い、電極の寿命がさらに改善される。
【0058】
前記結合剤は、負極活物質の総重量100重量部を基準に、1ないし15重量部、例えば1ないし10重量部、具体的に5ないし9重量部で添加される。前記結合剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、カルボン酸基・エポキシ基・ヒドロキシル基・カルボニル基のうち選択された1個以上の官能基を有するフッ化ビニリデン共重合体などを挙げることができる。
【0059】
結合剤の含量が前記範囲であるとき、集電体に対する活物質の結着力がさらに改善され、寿命及び安定性が向上した電極及び電池を製作することができる。
【0060】
前記導電剤は、負極活物質の総重量100重量部を基にして、1ないし10重量部、例えば2ないし7重量部を使用する。導電剤の含量が前記範囲であるとき、最終的に得られた電極の伝導度特性にすぐれる。
【0061】
前記導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボン系物質;炭素ファイバや金属ファイバなどの導電性ファイバ;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用される。
【0062】
前記負極集電体は、一般的に3ないし500μm厚に作られる。かような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面に、カーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが使用されもする。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されもする。
【0063】
以下、前述の負極を利用したリチウム二次電池を製造する過程について説明するが、一具現例によるリチウム二次電池は、例えば、正極、負極、リチウム塩含有非水電解質及びセパレータを有する。
【0064】
まず、正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合し、正極活物質層形成用の組成物を得て、これを集電体上にコーティングして乾燥させ、正極を形成することができる。
【0065】
前記正極活物質としては、リチウム二次電池で一般的に使用するリチウム遷移金属酸化物を使用することができる。
【0066】
前記リチウム遷移金属活物質としては、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(Ni
aCo
bMn
c)O
2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi
1−yCo
yO
2(0≦y<1)、LiCo
1−yMn
yO
2(0≦y<1)、LiNi
1−yMn
yO
2(0≦y<1)、LiMn
2−zNi
zO
4(0<z<2)、LiMn
2−zCo
zO
4(0<z<2)、LiCoPO
4及びLiFePO
4からなる群から1種以上選択されるものを使用することができる。
【0067】
前記結合剤及び導電剤は、前述の負極製造時と同一の種類及び含量を有する結合剤を使用することができる。前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、純水などを使用する。
【0068】
前記溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基にして、1ないし500重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0069】
前記正極集電体は、3ないし500μmの厚みであり、当該電池に化学的変化を誘発させずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したものなどが使用される。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0070】
前記過程によって製作された正極と、前述の負極との間にセパレータを介在させる。
【0071】
前記セパレータは、気孔径が0.01〜10μmであり、厚みは、一般的に5〜300μmであるもの使用する。具体的な例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフイン系ポリマー;またはガラス・ファイバーで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0072】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水系有機溶媒とリチウム塩とからなる。非水系電解質としては、非水系電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0073】
前記非水系有機溶媒としては、非制限的な例として、N−メチル−2−ピロリジノン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ガンマ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、N,N−ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン、エーテル、プロピオン酸メチルまたはプロピオン酸エチルが使用される。
【0074】
前記有機固体電解質としては、非制限的な例として、ポリエチレン、ポリ酸化エチレン、ポリ酸化プロピレン、リン酸エステルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用される。
【0075】
前記無機固体電解質としては、非制限的な例として、Li
3N、LiI、Li
5NI
2、Li
3N−LiI−LiOH、Li
2SiS
3、Li
4SiO
4、Li
4SiO
4−LiI−LiOH、またはLi
3PO
4−Li
2S−SiS
2が使用される。
【0076】
前記リチウム塩は、前記非水系有機溶媒に溶解されやすい物質であり、非制限的な例として、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Liまたは(CF
3SO
2)
2NLiが使用される。
【0077】
図2は、本発明の一具現例によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に図示したものである。
【0078】
図2を参照すれば、前記リチウム二次電池30は、正極23、負極22、及び前記正極23と負極22との間に配置されたセパレータ24、前記正極23・負極22及びセパレータ24に含浸された電解質(図示せず)、電池容器25、及び前記電池容器25を封入する封入部材26を主な部分にして構成されている。
【0079】
前記リチウム二次電池30は、正極23、セパレータ24、及び本発明の一具現例による負極22を順に積層した後、巻き取られた状態で電池容器25に収納して構成される。以下、下記実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、下記実施例だけに限定されるものではない。
【0080】
実施例1:負極の製造
ビーズミル(NETZSCH社のLabStar)に、まずN−メチルピロリドン(NMP)を投入し、液相条件にした後、活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)(活性シリコンの含量:約79.4原子%)、導電剤であるケッチェンブラック、及び結合剤であるポリアミドイミド(PAI:polyamide imide)を、88:4:8の重量比で順次に投入し、ビーズミル工程を約1,000rpmで約30分間進め、湿式混合及び粉砕を実施し、負極活物質層形成用の組成物を準備した。前記ビーズミル工程で使用されたビーズの粒径は、約0.5mmであり、前記NMPは、負極活物質層形成用の組成物で、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0081】
前記負極活物質層形成用の組成物を約14μm厚に、銅箔(Cu−foil)上にコーティングし、薄極板の形態にした後、これを約135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延(pressing)して負極を製造した。
【0082】
実施例2:負極の製造
シリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)の代わりに、シリコン系合金(Si
60Ti
20Ni
20)(活性シリコンの含量:約41.7原子%)を使用したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0083】
実施例3:負極の製造
ビーズミル工程で使用されたビーズの粒径が約2mmであり、ビーズミルの分当たり回転数が約2,000rpmに変化されたことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0084】
実施例4:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物製造時、シリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)の代わりに、シリコン系合金(Si
65Ti
17.5Ni
17.5)(活性シリコンの含量:約52.9原子%)を使用したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0085】
実施例5:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物製造時、シリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)の代わりに、シリコン系合金(Si
68Ti
16Ni
16)(活性シリコンの含量:約58.8原子%)を使用したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0086】
比較例1:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0087】
ペイントシェーカに、活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)、導電剤であるケッチェンブラック及び結合剤であるポリアミドイミド(PAI)を、88:4:8の重量部で込め、ドライミキシングを30分間実施した。次に、前記ドライミキシングされた結果物にNMPを付加及び混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0088】
前記負極活物質層形成用の組成物で、NMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された
【0089】
比較例2:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0090】
シンキーミキサ(Thinky mixer)に、活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)、及び導電剤であるケッチェンブラックを込め、ドライミキシングを30分間実施した。次に、前記結果物に、NMPと、結合剤であるポリアミドイミド(PAI)とを付加及び混合し、これをビーズミルで30分間混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0091】
前記活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)、導電剤であるケッチェンブラック及び結合剤であるポリアミドイミド(PAI)は、88:4:8の重量比で混合し、前記ビーズミル工程で使用されたビーズの粒径は、約2mmであり、ビーズミルの分当たり回転数は、約2,000rpmであり、負極活物質層形成用の組成物でNMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0092】
比較例3:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例1と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0093】
ペイントシェーカに、活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)及び導電剤であるケッチェンブラックを込め、ドライミキシングを30分間実施した。次に、前記結果物に、NMPと、結合剤であるポリアミドイミド(PAI)とを付加し、これをビーズミルで30分間混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0094】
前記活物質であるシリコン系合金(Si
68Al
8Ni
24)、導電剤であるケッチェンブラック及び結合剤であるポリアミドイミド(PAI)は、88:4:8の重量比で混合し、前記ビーズミル工程で使用されたビーズの粒径は、約2mmであり、ビーズミルの分当たり回転数は、約2,000rpmであり、負極活物質層形成用の組成物でNMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0095】
比較例4:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例2と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0096】
ペイントシェーカに、活物質であるシリコン系合金、導電剤であるケッチェンブラック、結合剤であるポリアミドイミド(PAI)を、88:4:8の重量部で込め、ドライミキシングを30分間実施し、ここにNMPを付加及び混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0097】
前記負極活物質層形成用の組成物でNMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0098】
比較例5:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例4と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0099】
ペイントシェーカに、活物質であるシリコン系合金、導電剤であるケッチェンブラック及び結合剤であるポリアミドイミド(PAI)を、88:4:8の重量部で込め、ドライミキシングを30分間実施し、ここにNMPを付加及び混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0100】
前記負極活物質層形成用の組成物でNMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0101】
比較例6:負極の製造
負極活物質層形成用の組成物を、下記過程によって製造したことを除き、実施例5と同一の方法によって実施して負極を製造した。
【0102】
シンキーミキサに、活物質であるシリコン系合金、導電剤であるケッチェンブラック、結合剤であるポリアミドイミド(PAI)を、88:4:8の重量部で込め、ドライミキシングを30分間実施し、ここにNMPを付加及び混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0103】
前記負極活物質層形成用の組成物でNMPは、固形分総含量が48重量%になる含量で使用された。
【0104】
製作例1:コインセルの製造
負極として、前記実施例1によって製造された負極を使用した。
【0105】
前記負極、相対電極としてリチウム、セパレータとしてポリプロピレン隔離膜(separator;Cellgard 3510)を使用し、1.3M LiPF
6が、炭酸エチレン(EC)+炭酸ジエチル(DEC)(3:7重量比)に溶けている溶液を電解質として使用し、CR−2016規格のコインセルを製造した。
【0106】
製作例2ないし5:コインセルの製造
実施例1の負極の代わりに、実施例2ないし5の負極を使用したことを除き、製作例1と同一の方法によって実施 し、コインセルを製造した。
【0107】
比較製作例1ないし6:コインセルの製造
実施例1の負極の代わりに、比較例1ないし6の負極を使用したことを除き、製作例1と同一の方法によって実施し、コインセルを製造した。
【0108】
評価例1:電子走査顕微鏡分析
前記実施例1及び比較例2によって製造された負極を、電子走査顕微鏡を利用して観察し、その結果をそれぞれ
図3及び
図4に示した。ここで、前記負極は、活物質層形成用の組成物を集電体にコーティングして乾燥させた後、圧延する以前の状態である。
【0109】
図4を参照すれば、比較例2による負極は、活物質の微粉化が観察された。一方、
図3を参照すれば、実施例1による負極は、ビーズミルを介した湿式混合工程及び粉砕工程により、活物質の微粉化が起きていないということが確認することができた。
【0110】
評価例2:負極の表面粗度
前記実施例1ないし5及び比較例1ないし6の負極表面の表面粗度及び粗度偏差を特定し、下記表1に示した。
【0111】
前記負極の表面粗度は、負極を圧延した後の表面粗度であり、表面粗度測定方法は、次の通りである。
【0112】
実施例1ないし5及び比較例1ないし6による負極極板を切って試料を採取した後、この試料を非接触レーザ表面分析機(NanoFocus AG社のusurf custom)を利用して9回スキャン(スキャン間隔:約2.5mm、スキャン範囲:約25mm)し、9回の表面粗度平均値と表面偏差とを求める。かように得た平均値を、それぞれ表面粗度及び粗度偏差と定めた。
【0114】
前記表1を参照すれば、実施例1ないし5の負極は、比較例1ないし6の場合と比べ、表面粗度が低減されつつも、表面粗度が均一に制御されるということが分かった。
【0115】
評価例3:負極の合剤密度及び電流密度
前記実施例1及び比較例1ないし4の負極の合剤密度及び電流密度を測定し、下記表2に示した。
【0116】
(1)合剤密度
負極で、集電体を除いた成分(活物質、導電剤、結合剤など)の重量を体積で割って計算した。
【0118】
前記表2から、実施例1の負極は、比較例1ないし4の負極と比べ、合剤密度及び電流密度特性にすぐれるということが分かった。
【0119】
評価例4:負極の体積容量及び膨張率
前記実施例1及び比較例1ないし4の負極の体積容量、膨張率及び膨脹考慮の体積容量の測定結果を、
図5及び表3に示した。前記体積容量、膨張率及び膨脹考慮の体積容量は、下記方法によって評価した。
(1)体積容量
下記数式1によって体積容量を計算した。
体積容量={(負極活物質組成物で負極活物質の重量比率)*測定容量(measured capacity)(mAh/g)*合剤密度(g/cc)} (数式1)
(2)膨張率
前記実施例1及び比較例1ないし4による負極を具備した製作例1及び比較製作例1ないし4によるコインセルで、0.1C充電した後、ドライルームでコインセルを解体した。解体されたコインセルで、負極極板の高さが増大した程度を測定し、負極の膨張率を下記数式2によって計算した。
膨張率={(膨脹後の極板厚−基材厚)/(初期極板厚−基材厚)}×100 (数式2)
(3)膨脹考慮の体積容量
前記体積容量と膨張率とを利用し、下記数式3によって計算した。
膨脹考慮の体積容量=体積容量/(1+(膨張率×0.01)) (数式3)
【0121】
前記表3及び
図5を参照すれば、実施例1の負極は、比較例1ないし4の負極に比べ、膨張率が改善され、膨脹考慮の体積容量が向上するということが分かった。
【0122】
評価例5:充放電実験
前記製作例1及び比較製作例1ないし4によって製作されたコインセルにおいて、I.C.E.(initial charge efficiency)及び放電容量を測定し、下記表4に示した。
【0123】
前記製作例1及び比較製作例1ないし4でそれぞれ製造されたコインセルについて、まず0.1Cで1回充放電を実施して化成(formation)を進め、その後、0.2C充放電1回で初期充放電特性を確認し、1Cで100回充放電を反復しつつ、サイクル特性を調べた。充電時には、CC(constant current)モードで始め、その後、CV(constant voltage)に変え、0.01Cでカットオフされるようにセッティングを行い、放電時には、CCモードで、1.5Vでカットオフされるようにセッティングした。
(1)初期充放電効率
下記数式4によって測定した。
初期充放電効率[%]=[最初のサイクル放電容量/最初のサイクル充電容量]×100 (数式4)
(2)放電容量
最初の充電後に放電する容量と、2回目の充電後に放電する容量とを測定した。
【0125】
前記表4から、製作例1のリチウム二次電池は、比較製作例1ないし4のリチウム二次電池と比べ、I.C.E.及び放電容量が改善されるということが分かった。
【0126】
評価例6:サイクル寿命
前記製作例1及び比較製作例1,2,3及び5によって製造されたコインセルについて、まず、0.1Cで1回充放電を行って化成(formation)を進め、その後、0.2C充放電1回で初期充放電特性を確認し、1Cで100回充放電を反復しつつ、サイクル特性を調べた。充電時には、CCモードで始め、その後、CVに変え、0.01Cでカットオフされるようにセッティングを行い、放電時には、CCモードで、1.5Vでカットオフされるようにセッティングした。
【0127】
前記サイクルによる放電容量変化を評価し、
図6に示した。
【0128】
図6を参照すれば、製作例1のリチウム二次電池は、比較製作例1,2,3及び5の場合に比べ、サイクル寿命特性にすぐれるということが分かった。
【0129】
評価例7:寿命特性
前記製作例2,4,5及び比較製作例2,5及び6によって製造されたコインセルについて、まず0.1Cで1回充放電を行って化成(formation)を進め、その後、0.2C充放電1回で初期充放電特性を確認し、1Cで100回充放電を反復しつつ、サイクル特性を調べた。充電時には、CCモードで始め、その後、CVに変え、0.01Cでカットオフされるようにセッティングを行い、放電時には、CCモードで1.5Vでカットオフされるようにセッティングした。
【0130】
100回目のサイクルでの容量維持率は、下記数式5で表示され、その結果は、下記表5の通りである。
100回目のサイクルでの容量維持率[%]=[100回目のサイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量]×100 (数式5)
【0132】
前記表5を参照すれば、製作例2,4及び6のコインセルは、比較製作例5ないし7のコインセルに比べ、容量維持率が向上するということが分かった。
【0133】
以上、本発明の望ましい製造例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者であるならば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び領域からはずれない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることが可能であるということを理解することができるであろう。