特許第6265578号(P6265578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265578デバイス及びデバイスの製造方法並びにアレイ型の超音波プローブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6265578
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】デバイス及びデバイスの製造方法並びにアレイ型の超音波プローブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20180115BHJP
   G01N 29/34 20060101ALI20180115BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61B8/08
   G01N29/34
   H04R17/00 332B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-550660(P2017-550660)
(86)(22)【出願日】2017年8月15日
(86)【国際出願番号】JP2017029364
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-175076(P2016-175076)
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】不破 耕
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
(72)【発明者】
【氏名】大橋 靖知
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝博
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松永 忠雄
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−53562(JP,A)
【文献】 特開昭60−86999(JP,A)
【文献】 特開平5−292598(JP,A)
【文献】 特開2006−94459(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0312681(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0328504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
G01N 29/00
H04R 17/00
H04R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さの機能素子の複数を備えるデバイスであって、
アレイ状に開設された複数の第1開口を有し、各第1開口の周縁部で密着して機能素子を部分的に露出させた状態で夫々支持する第1ドライフィルムレジストと、
第1ドライフィルムレジストに積層されると共に各機能素子を夫々囲繞する第2開口を有する、機能素子と同等の厚さの第2ドライフィルムレジストと、
第2ドライフィルムレジストに積層されると共に第3開口を有し、当該第3開口の周縁部で密着して機能素子を部分的に露出させた状態で、第1ドライフィルムレジストとの間で各機能素子を夫々挟持する第3ドライフィルムレジストとを備える構造を持つことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のデバイスであって、前記機能素子を圧電素子として、生体の血管径をパルスエコー法を用いて計測するアレイ型の超音波プローブとして構成したものにおいて、
前記第1ドライフィルムレジストと前記各圧電素子の一方の主面との間に形成される全面電極と、各圧電素子の他方の主面に夫々形成される部分電極と、部分電極を覆うバッキング材とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
所定の厚さの機能素子の複数を有するデバイスの製造方法であって、
支持体の一方の面に剥離シートを介して第1ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して複数の第1開口をアレイ状に形成する工程と、
第1ドライフィルムレジスト表面に、機能素子と同等の厚さを有する第2ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して各第1開口の直上に当該第1開口より大きい第2開口を夫々形成する工程と、
第1開口の周縁部で支持されるように第2開口内側に機能素子を配置する工程と、
加熱下で、第2ドライフィルムレジスト表面に第3ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して第1ドライフィルムレジストと共に機能素子が挟持されるように第3開口を夫々形成する工程と、
第3ドライフィルムレジスト表面に担持体を形成し、第1ドライフィルムレジストと剥離シートとの間の界面で剥離する工程とを含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項4】
生体の血管径をパルスエコー法を用いて計測するためのアレイ型の超音波プローブの製造方法であって、
同等の厚さを有する圧電素子の複数を準備し、各圧電素子の一方の主面にその全面に亘って第1電極膜を形成する工程と、
支持体の一方の面に剥離シートを介して第1ドライフィルムレジストを貼付し、第1ドライフィルムレジストを露光現像して複数の第1開口をアレイ状に形成する工程と、
第1ドライフィルムレジスト表面にパターニングして第2電極膜を形成する工程と、
第2電極膜が形成された第1ドライフィルムレジスト表面に、圧電素子と同等の厚さを有する第2ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して各第1開口の直上に当該第1開口より大きい第2開口を夫々形成する工程と、
第1開口の周縁部で支持されるように、第2開口の内側に、第1電極膜が形成された主面側から圧電素子を配置し、第1電極膜と第2電極膜とが接続した全面電極とする工程と、
加熱下で、圧電素子の他方の主面を含む第2ドライフィルムレジスト表面に第3ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して第1開口と共に圧電素子が挟持されるように第3開口を形成する工程と、
他方の主面に部分電極を夫々形成する工程と、
第3ドライフィルムレジストと部分電極とを覆う担持体としてのバッキング材を形成し、第1ドライフィルムレジストと剥離シートとの間の界面で剥離する工程とを含むことを特徴とするアレイ型の超音波プローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス及びデバイスの製造方法に関し、特に、生体の血管径、より詳しくは、手首橈骨動脈の血管径をパルスエコー法を用いて計測するデバイスとしての超音波プローブとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会をむかえ、使用者が容易に取り扱うことができてヘルスケアに必要な生体情報が簡単に取得できるようにした機器が種々開発されている。このような機器の一例として、手首橈骨動脈の血管径をパルスエコー法を用いて計測する超音波プローブが知られている。超音波プローブとしては、超音波を送受信する機能素子としての圧電素子の複数がアレイ状に配置されたウェアラブルかつフレキシブルなアレイ型のものが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。このように多数の圧電素子をアレイ状に配置しておけば、臨床医や臨床工学技士などの専門家に依らず、使用者が手首の撓骨動脈上の皮膚に装着し、超音波による血管径の伸縮を計測し、血圧に換算することができる。また、血管の脈動を計測することで、血圧計測に留まらず、脈波と心拍計測はもちろん血管伸縮の経時変化から血管の硬さを評価できる。その結果、動脈硬化や心疾患などの血管疾患を日常的にモニターすることが可能となる。血管内皮障害との相関から高血圧症や糖尿病の予防・ケアに応用することも期待されている。
【0003】
上記従来例のものでは、所定の厚さを持つブロック状の圧電体に対してダイサーを用いて溝を形成し、この形成した溝内に絶縁性の樹脂を充填した後、厚さ方向の両側の主面を研磨装置により夫々研磨する。そして、圧電体の両主面に、スパッタリング法やメッキ法により分割電極と全面電極とを夫々形成することで、超音波を送受信する圧電素子の各々が一定の間隔でアレイ状に配置されたものを製作している。
【0004】
ここで、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスや、PMN−PTなどの圧電単結晶で構成される圧電体はその厚さで発振周波数が決まることが知られている。この場合、例えば、超音波を送受信する超音波プローブ用の圧電素子としてPMN−PTを用いる場合、数μmの厚さが変化するだけで、特性が損なわれる。このため、上記従来例の製造方法のように、個々の圧電素子に分離するために樹脂を充填してその主面を研磨する方法では、各圧電素子の厚さを互いに一致させることが難しく、ひいては、各圧電素子の発振周波数を揃えることができないという問題を招来する。この場合、アレイ状に配列された各圧電素子の中から発振周波数の異なるものだけを交換したりすることもできないので、厚さの揃った機能素子の複数が一定の間隔でアレイ状に配列されたものを如何に製品歩留まり良く製作するか、そのためのデバイスの構造やその製造方法の開発が急務の課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−51105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、機能素子の複数が一定の間隔でアレイ状に配列されたものを製品歩留まり良く製作するための構造を持つデバイス及びその製造方法並びにアレイ型の超音波プローブの製造方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、所定の厚さの機能素子の複数を備える本発明のデバイスは、アレイ状に開設された複数の第1開口を有し、各第1開口の周縁部で密着して機能素子を部分的に露出させた状態で夫々支持する第1ドライフィルムレジストと、第1ドライフィルムレジストに積層されると共に各機能素子を夫々囲繞する第2開口を有する、機能素子と同等の厚さの第2ドライフィルムレジストと、第2ドライフィルムレジストに積層されると共に第3開口を有し、当該第3開口の周縁部で密着して機能素子を部分的に露出させた状態で、第1ドライフィルムレジストとの間で各機能素子を夫々挟持する第3ドライフィルムレジストとを備える構造を持つことを特徴とする。
【0008】
なお、本発明において、機能素子には、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスや、PMN−PTなどの圧電単結晶で構成される圧電素子の他、マイクロレンズ等のようにデバイスの機能を発揮するために必要な機能部品も含まれる。そして、前記機能素子を圧電素子として、生体の血管径をパルスエコー法を用いて計測するアレイ型の超音波プローブとして構成する場合、前記第1ドライフィルムレジストと前記各圧電素子の一方の主面との間に形成される全面電極と、各圧電素子の他方の主面に夫々形成される部分電極と、部分電極を覆うバッキング材とを備える構成を採用すればよい。また、「機能素子と同等の厚さ」といった場合、第1及び第3のフィルムレジストで挟持する部分の厚さが同等であれば、その他の部分が同等である必要はない。
【0009】
また、上記課題を解決するために、所定の厚さの機能素子の複数を有する本発明のデバイスの製造方法は、支持体の一方の面に剥離シートを介して第1ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して複数の第1開口をアレイ状に形成する工程と、第1ドライフィルムレジスト表面に、機能素子と同等の厚さを有する第2ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して各第1開口の直上に当該第1開口より大きい第2開口を夫々形成する工程と、第1開口の周縁部で支持されるように第2開口内側に機能素子を配置する工程と、加熱下で、第2ドライフィルムレジスト表面に第3ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して第1ドライフィルムレジストと共に機能素子が挟持されるように第3開口を夫々形成する工程と、第3ドライフィルムレジスト表面に担持体を形成し、第1ドライフィルムレジストと剥離シートとの間の界面で剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
更に、上記課題を解決するために、生体の血管径をパルスエコー法を用いて計測するための本発明のアレイ型の超音波プローブの製造方法は、同等の厚さを有する圧電素子の複数を準備し、各圧電素子の一方の主面にその全面に亘って第1電極膜を形成する工程と、支持体の一方の面に剥離シートを介して第1ドライフィルムレジストを貼付し、第1ドライフィルムレジストを露光現像して複数の第1開口をアレイ状に形成する工程と、第1ドライフィルムレジスト表面にパターニングして第2電極膜を形成する工程と、第2電極膜が形成された第1ドライフィルムレジスト表面に、圧電素子と同等の厚さを有する第2ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して各第1開口の直上に当該第1開口より大きい第2開口を夫々形成する工程と、第1開口の周縁部で支持されるように、第2開口の内側に、第1電極膜が形成された主面側から圧電素子を配置し、第1電極膜と第2電極膜とが接続した全面電極とする工程と、加熱下で、圧電素子の他方の主面を含む第2ドライフィルムレジスト表面に第3ドライフィルムレジストを貼付し、露光現像して第1開口と共に圧電素子が挟持されるように第3開口を形成する工程と、他方の主面に部分電極を夫々形成する工程と、第3ドライフィルムレジストと部分電極とを覆う担持体としてのバッキング材を形成し、第1ドライフィルムレジストと剥離シートとの間の界面で剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
以上によれば、デバイスをアレイ型の超音波プローブとした場合を例に説明すれば、上記従来例のようにデバイスの製作過程で機能素子としての圧電素子を研磨するのではなく、ブロック状のものから予め所定の厚さに研磨された、即ち、発振周波数の揃った複数の圧電素子を準備し、第1ドライフィルムレジストを露光現像して形成した各第1開口に対して各圧電素子を設置するようにしたため、第1開口から臨む圧電素子が所定の間隔でアレイ状に配置されたものにできる。そして、少なくとも第3ドライフィルムレジストを第2ドライフィルムレジスト表面に貼付するときには、これら積層したものを加熱することで、例えば第2開口と圧電素子との間に微細な隙間があったとしても、各ドライフィルムレジストの一部が溶けて当該隙間を埋めることで、圧電素子が第1〜第3の各ドライフィルムレジストで強固に保持されて各圧電素子が確実に電気的に絶縁される。しかも、第1〜第3の各ドライフィルムレジストで機能素子を保持する構成を採用しているから、デバイスとしての可撓性も損なわれない。このように本発明によれば、機能素子の複数が所定の間隔でアレイ状に配置されたものを製品歩留まり良く製作することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のアレイ型の超音波プローブの構成を説明する部分断面図。
図2】(a)〜(e)は、図1に示すアレイ型の超音波プローブの製作工程を夫々示す断面図。
図3】(a)〜(d)は、図1に示すアレイ型の超音波プローブの製作工程を夫々示す断面図。
図4】本発明の他の実施形態に係るデバイスとしてのイメージセンサの構成を説明する部分断面図。
図5】本発明の更に他の実施形態に係るデバイスとしてのガスセンサの構成を説明する部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、機能素子として超音波を送受信する圧電素子を用い、生体の血管径をパルスエコー法を用いて計測するアレイ型の超音波プローブとしてデバイスを構成したものを例に本発明の実施形態のデバイス及びデバイスの製造方法を説明する。以下において、上、下等の方向を示す用語は、図1に示す超音波部プローブの測定対象に対する装着姿勢を基準とする。
【0014】
図1を参照して、APは、手首Wの所定位置に装着して測定対象としての手首橈骨動脈の血管Bの径を測定する本発明の実施形態のアレイ型の超音波プローブである。超音波プローブAPは、バッキング材1と、超音波送受信部2と、音響整合部3とを備え、ポリイミド等から構成され、表面に所定のパターンで金属配線されたフレキシブル配線基板4にそのバッキング材1側から接合されている。
【0015】
超音波送受信部2は、パルス電圧が印加されて血管Bに向けて超音波を発振し、血管Bに衝突して反射する反射波を受信する機能素子としての複数の圧電素子21と、アレイ状に開設された複数の第1開口22aを有し、各第1開口22aの周縁部で密着して圧電素子21を部分的に露出させた状態で夫々支持する第1ドライフィルムレジスト22と、第1ドライフィルムレジスト22上に積層されると共に各圧電素子21を夫々囲繞する第2開口23aを有する、圧電素子21と同等の厚さの第2ドライフィルムレジスト23と、第2ドライフィルムレジスト23上に積層されると共に第3開口24aを有し、当該第3開口24aの周縁部で密着して圧電素子21を部分的に露出させた状態で、第1ドライフィルムレジスト22との間で各圧電素子21を夫々挟持する第3ドライフィルムレジスト24とで構成されている。第1ドライフィルムレジスト22と、各圧電素子21の一方の主面21a(圧電素子21の下面)との間には全面電極25が形成され、各圧電素子21の他方の主面21b(圧電素子21の上面)には、その全面に亘って部分電極26が夫々形成されている。
【0016】
バッキング材1は、各圧電素子21から超音波を血管Bに向けて効率よく照射すると共に、バッキング材1と超音波送受信部2と音響整合部3とを備えるデバイスを担持する担持体としての役割を持つものであり、金属粉とエポキシ樹脂の混合物等で構成される。この場合、バッキング材1は、各圧電素子21がアレイ状に配置された領域を囲むように、部分電極26を含む第3ドライフィルムレジスト24上に形成され、その厚さが100μm〜300μmの範囲に設定される。圧電素子21の各々は、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスや、PMN−PTなどの圧電単結晶で構成され、両主面21a,21bの面積が0.5mmで、80μm〜120μmの範囲の所定厚さ(好ましくは、90μm)を持つ直方体形状に加工されている。音響整合部3としては、ポリフッ化ビニリデン等の超音波発振面の表面に適当な音響インピーダンスを持つ素材で構成され、板状に加工され、その厚さが10μm〜50μmの範囲に設定される。音響整合部3の貼り付けには、接着剤を用いる他、溶剤を用いて貼り付けする方法、蒸着重合を応用し形成する方法などを用いることができる。蒸着重合を使用する場合には、使用される樹脂としてポリイミド、パリレン、ポリ尿素等が挙げられる。
【0017】
第1〜第3のドライフィルムレジスト22,23,24は、厚さのみが異なる同一形態のもので構成され、このような第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24としては、例えば光硬化性や熱溶融性といった機能を持つものであり、樹脂製のシート状支持体表面に感光性樹脂組成物が形成された公知のものが利用できる(例えば、TOKTMMF−S20シリーズ(東京応化工業社製))。この場合、第1及び第3のドライフィルムレジスト22,24としては、20μm〜45μmの範囲の所定厚さのものが選択される。そして、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24に対し、図外のフォトマスクを配置して第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24を夫々露光し、次に、フォトマスクを除去した後に現像する。このとき、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24がネガ型の場合には、未露光部分が除去されて、夫々が予め設定された同一の開口面積を持つ第1〜第3の各開口22a,23a,24aがアレイ状にパターニングされて開設される。第1〜第3の各開口22a,23a,24aは、矩形の輪郭を持つように形成されるが、例えば圧電素子21の主面21a,21bの輪郭に応じて適宜変更することもできる。
【0018】
上記超音波プローブAPでは、特に図示して説明しないが、既知のパルス電源からフレキシブル配線基板4を介して、各圧電素子21に対して選択的に所定のパルス電圧が印加される。この場合、40〜100Vの範囲のパルス電圧を印加すると、約20MHzの超音波を発振し、血管Bで反射した超音波により圧電素子21が振動し、その振動が電気信号に変換されることで反射波が計測される。なお、超音波プローブAPを用いた生体の血管径の測定方法については公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明を省略する。以下に、図2及び図3を参照して、上記超音波プローブの製造方法を説明する。
【0019】
先ず、上述した厚さの(即ち、発振周波数の揃った)圧電素子21の複数を準備し、各圧電素子21の一方の主面21aに対してその全面に亘って第1電極膜25aを形成する(図2(d)の仮想線で示すものを参照)。併せて、シリコン等の剛性を持つ支持体5の上面全面に亘って熱剥離性の剥離シート6を貼付したものを準備する。なお、剥離シート6としては公知のものが利用でき、また、紫外線硬化性の剥離シートを用いることもできる。支持体5が準備されると、剥離シート6上に第1ドライフィルムレジスト22を貼付する。この場合、剥離シート6全面に亘って密着性良く第1フィルムレジスト22を貼付するために、加熱しながらロールで圧着するロール式や、減圧下の真空チャンバ内で加熱圧着する真空式のラミネート装置が利用されるが、これに限定されるものではない。
【0020】
次に、図外のフォトマスクを配置して第1ドライフィルムレジスト22を露光し、フォトマスクを除去した後に現像して複数の第1開口22aをアレイ状に開設する(図2(a)参照)。本実施形態では、第1開口22aの開設と同時に、フレキシブル配線基板4との配線接続を行うための配線層形成用の開口22bを第1ドライフィルムレジスト22に形成している。なお、露光、現像、露光部分または未露光部分の除去については公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。第1開口22a及び配線層形成用の開口22bを形成した後、第1ドライフィルムレジスト22にパターニングして第2電極膜25bを形成する(図2(b)参照)。第1及び第2の電極膜25a,25bとしては、例えば、金、銅やクロム等の導電性の金属材料が用いられ、また、電極膜25a,25bの形成には、スパッタリング装置や真空蒸着装置等が用いられる。
【0021】
次に、第2電極膜25bが形成された第1ドライフィルムレジスト22上に、上記と同様にして、圧電素子21と同等の厚さを有する第2ドライフィルムレジスト23を貼付し、露光現像して各第1開口22aの直上に当該第1開口22aより大きい第2開口23aを夫々形成する(図2(c)参照)。この場合、第2開口23aは、圧電素子21の輪郭より僅かに大きくなるように設定され、また、配線層形成用の開口22bの直上にも他の配線層形成用の開口23bが開設される。そして、第1開口22aの周縁部で支持されるように、第2開口23aの内側に、第1電極膜25aが形成された主面21a側から圧電素子21を夫々配置する。これにより、第1電極膜25aと第2電極膜25bとが接続した全面電極25となる(図2(d)参照)。各圧電素子21が配置されると、上記と同様にして、圧電素子21の他方の主面21bを含む第2ドライフィルムレジスト23上に第3ドライフィルムレジスト24を貼付し、露光現像して第1開口22aと共に圧電素子21が挟持されるように第3開口24aを形成する(図2(e)参照)。
【0022】
次に、第3開口24aが開設されると、各圧電素子21の他方の主面21bに、第3ドライフィルムレジスト24の上面までのびるように部分電極26を夫々形成する(図3(a)参照)。部分電極26としては、全面電極25と同様に、例えば、金、銅やクロム等の導電性の金属材料が用いられ、スパッタリング装置や真空蒸着装置等を用いて形成される。そして、各部分電極26を含む第3ドライフィルムレジスト24上にはバッキング材1が形成される。なお、バッキング材1の形成に先立って、配線層形成用の開口22b,23b,24bで画成される空間には、例えば、銀ペースト7が充填され、配線を強化するようにしている(図3(a)参照)。
【0023】
バッキング材1の形成に際しては、先ず、上記と同様にして、各部分電極26を含む第3ドライフィルムレジスト24上に第4ドライフィルムレジスト8を貼付し、各圧電素子21がアレイ状に配置された領域を囲むように単一の第4開口81を形成する(図3(b)参照)。そして、第4開口81に、例えば金属粉とエポキシ樹脂の混合物を充填し、硬化させることでバッキング材1が形成される(図3(c)参照)。最後に、支持体5を加熱して第1ドライフィルムレジスト22と剥離シート6との間の界面で剥離する(図3(d)参照)。そして、第1ドライフィルムレジスト22の下面に音響整合部3を装着した後、フレキシブル配線基板4にそのバッキング材1側から接合される。なお、特に図示して説明しないが、フレキシブル配線基板4と、全面電極25及び各部分電極26とが接続されてアレイ型の超音波プローブAPが製作される。
【0024】
以上の実施形態によれば、上記従来例のようにデバイスの製作過程で圧電素子を研磨するのではなく、予め所定の厚さに研磨された、即ち、発振周波数の揃った複数の圧電素子21を準備しておき、第1ドライフィルムレジスト22を露光現像してアレイ状に第1開口22aを形成し、各第1開口22aに対して各圧電素子21を配置するため、第1開口22から臨む各圧電素子21が所定の間隔でアレイ状に配置されたものにできる。そして、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24を加熱下で貼付するようにしたため、例えば第2開口23aと圧電素子21との間に微細な隙間があったとしても、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24の一部が溶けて当該隙間を埋めることで、圧電素子21が第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24で強固に保持されて各圧電素子21が確実に電気的に絶縁されたものになる。しかも、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24で各圧電素子21を保持する構成を採用しているから、デバイスとしての可撓性も損なわれない。このように本発明によれば、圧電素子21の複数が所定の間隔でアレイ状に配置されたものを製品歩留まり良く製作することが可能になる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、積層されるドライフィルムレジストにより機能素子(機能部品を含む)が保持されるという本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形することが可能であり、特に、厚さで発現する機能が異なる機能素子の複数を備えるような場合には、本発明のデバイスの構造及びその製造方法は好適である。上記実施形態では、機能素子を圧電素子とし、デバイスとしてのアレイ型の超音波プローブに適用したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0026】
図4に示すように、機能部品であるマイクロレンズ100と受光素子101とを備えるデバイスとしてのイメージセンサISでは、マイクロレンズ100の厚さが感度に影響を与える。そこで、本発明の他の実施形態に係るイメージセンサISでは、所定の厚さに研磨されたマイクロレンズ100の複数を準備し、上記実施形態と同様の製作工程により、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24で保持することでイメージセンサISを製作している。この場合、第2ドライフィルムレジスト23は、マイクロレンズ100の所定厚さを持つ基端部100aと同等の厚さのものが選択され、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24で保持した状態ではレンズ部100bが第1開口22a内に突出するように第1ドライフィルムレジスト22の厚さが設定される。
【0027】
また、図5に示すように、機能素子である水晶振動子200を備えるデバイスとしてのガスセンサGSでは、水晶振動子200の厚さが感度に影響を与える。そこで、本発明の更に他の実施形態に係るガスセンサGSでは、所定の厚さに研磨された水晶振動子200の複数を準備し、上記実施形態と同様の製作工程により、第1〜第3の各ドライフィルムレジスト22,23,24で保持することでガスセンサGSを製作している。なお、図5中、201は、被測定ガスである。
【符号の説明】
【0028】
AP…超音波プローブ(デバイス)、2…超音波送受信部、3…圧電素子(機能素子)、22…第1ドライフィルムレジスト、22a…第1開口、23…第2ドライフィルムレジスト、23a…第2開口、24…第3ドライフィルムレジスト、23a…第1開口、4…バッキング材(担持体)、5…支持体、6…熱剥離シート(剥離シート)、IM…イメージセンサ(デバイス)、100…マイクロレンズ(機能部品)、GS…ガスセンサ(デバイス)、200…水晶振動子(機能素子)。
【要約】
圧電素子の複数が一定の間隔でアレイ状に配列されたものを製品歩留まり良く製作するための構造を持つデバイスとしてのアレイ型の超音波プローブを提供する。
本発明の超音波プローブ(AP)は、アレイ状に開設された複数の第1開口(22a)を有し、各第1開口の周縁部で密着して圧電素子(21)を部分的に露出させた状態で夫々支持する第1ドライフィルムレジスト(22)と、第1ドライフィルムレジストに積層されると共に各機能素子を夫々囲繞する第2開口(23a)を有する、圧電素子と同等の厚さの第2ドライフィルムレジスト(23)と、第2ドライフィルムレジストに積層されると共に第3開口(24a)を有し、当該第3開口の周縁部で密着して圧電素子を部分的に露出させた状態で、第1ドライフィルムレジストとの間で各圧電素子を夫々挟持する第3ドライフィルムレジスト(24)とを備える構造を持つ。
図1
図2
図3
図4
図5