(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、その総量100質量部に対し、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)を0質量部を超えて100質量部以下含む、請求項1に記載の偏光板用接着剤組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例における偏光板の製造工程を説明するための概略図である。
【
図2】実施例における初期硬化性試験の方法を説明するための概略図である。
【
図3】実施例における温水浸漬試験の方法を説明するための概略図である。
【
図4】実施例における剥離試験の方法を説明するための概略図である。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は特許請求の範囲により定められるべきものであり、以下の形態のみに限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜60%の条件で測定する。
【0016】
<偏光板用接着剤組成物>
本発明の第一の形態は、エポキシ基含有化合物(A)50〜90質量部と、(メタ)アクリレートモノマー(B)10〜50質量部(この際、(A)成分および(B)成分の総量は100質量部である)と、光酸発生剤(C)1〜7質量部と、光増感剤および/または光重合開始剤(D)0.1〜7質量部とを含有する偏光板用接着剤組成物に関する。そして、エポキシ基含有化合物(A)は、その総量100質量部に対し、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)50〜95質量部と、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)1〜50質量部とを含む点に特徴を有する。なお、本明細書において、「偏光板用接着剤組成物」を、単に「接着剤組成物」とも称する。
【0017】
上述したように、カチオン重合性化合物およびラジカル重合性化合物を併用したハイブリッド型接着剤は、信頼性(例えば、熱衝撃試験においてクラック(割れ)が発生しにくい)や接着性の点で未だ十分ではなかった。本形態では、カチオン重合性化合物としてエポキシ基含有化合物を含有し、ラジカル重合性化合物として(メタ)アクリレートモノマーを含有する偏光板接着剤組成物において、エポキシ基含有化合物として脂環式エポキシ基含有化合物(A1)と、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)とを組み合わせて用いることにより、優れた接着性および信頼性を発揮させることを可能としたものである。以下、本形態の接着剤組成物の構成成分について詳細に説明する。
【0018】
[エポキシ基含有化合物(A)]
本形態の接着剤組成物は、エポキシ基含有化合物(A)を含有する。エポキシ基含有化合物(A)は、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)および芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)を必須に含み、任意に脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)を含みうる。
【0019】
(脂環式エポキシ基含有化合物(A1))
脂環式エポキシ基含有化合物(A1)は、分子内に脂環式エポキシ基を有する化合物を意味する。脂環式エポキシ基とは、下記一般式(1)で示すように、脂環(シクロアルキル)基の隣り合う2つの炭素原子がエポキシ基を構成している構造を有する官能基を意味する。
【0020】
【化1】
【0021】
脂環式エポキシ基含有化合物(A1)は、1分子内に脂環式エポキシ基を少なくとも1つ有していればよいが、1分子内に2以上の脂環式エポキシ基を有していることが好ましい。これにより、架橋構造が形成され、硬化後の接着剤層の弾性率が高くなる。その結果、熱による体積変化が小さくなり、内部応力の発生、言い換えると強度の低下が抑制され、熱衝撃試験による偏光子の割れがより一層低減されうる。なお、脂環式エポキシ基中の脂環基は、メチル基、エチル基などで置換されていてもよい。
【0022】
具体的な脂環式エポキシ基含有化合物(A1)としては、例えば、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス−(6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。なかでも、初期硬化性と信頼性の観点から、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、が好ましい。
【0023】
脂環式エポキシ基含有化合物(A1)は、従来公知の知見を参照して合成することによって準備してもよいし、市販品を購入してもよい。市販品としては、例えば、エポリード(登録商標)シリーズ、セロキサイド(登録商標)シリーズ(以上、ダイセル化学株式会社製)などが挙げられる。なお、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0024】
(芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2))
芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)は、分子内に芳香族基およびエポキシ基を有する化合物であって、上記脂環式エポキシ基含有化合物(A1)以外の化合物(すなわち、脂環式エポキシ基を有しない化合物)を意味する。芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)は、1分子内にエポキシ基を少なくとも1つ有していればよいが、1分子内に2以上のエポキシ基を有していることが好ましい。これにより、架橋構造が形成され、硬化後の接着剤層の弾性率が高くなる。その結果、熱による体積変化が小さくなり、内部応力の発生、言い換えると強度の低下が抑制され、熱衝撃試験による偏光子の割れがより一層低減されうる。
【0025】
芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型ジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールのグリシジルエーテル化物、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、ナフトールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールジシクロペンタジエン樹脂のグリシジルエーテル化物、1,3−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物、1,4−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物、3−アミノフェノールのグリシジルアミノ化物およびグリジシジルエーテル化物、4−アミノフェノールのグリシジルアミノ化物およびグリジシジルエーテル化物、などが挙げられる。なかでも、接着性の観点から、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0026】
芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)は、従来公知の知見を参照して合成することによって準備してもよいし、市販品を購入してもよい。市販品としては、例えば、エピクロン(登録商標)EXA−830CRP(DIC株式会社株式会社製)、デナコール(登録商標)EX−201、デナコールEX−721、デナコールEX−141(以上、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。なお、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0027】
(脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3))
脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)は、分子内に脂環(シクロアルキル)基およびエポキシ基を有する化合物であって、上記脂環式エポキシ基含有化合物(A1)および芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)以外の化合物(すなわち、脂環式エポキシ基および芳香族基を有しない化合物)を意味する。脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)は、1分子内にエポキシ基を少なくとも1つ有していればよいが、1分子内に2以上のエポキシ基を有していることが好ましい。これにより、架橋構造が形成され、硬化後の接着剤層の弾性率が高くなる。その結果、熱による体積変化が小さくなり、内部応力の発生、言い換えると強度の低下が抑制され熱衝撃試験による偏光子の割れがより一層低減されうる。
【0028】
脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)としては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンテニルジアルコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシテルペンジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、接着性の観点から、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0029】
脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)は、従来公知の知見を参照して合成することによって準備してもよいし、市販品を購入してもよい。市販品としては、例えば、デナコールEX−216L(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。なお、脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0030】
[(メタ)アクリレートモノマー(B)]
本形態の接着剤組成物は(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有する。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリレートモノマー(B)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(B1)、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)のいずれであってもよく、これらを併用してもよい。
【0031】
単官能(メタ)アクリレートモノマー(B1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ウレタン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールのモノε−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールのジε−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールのモノβ−メチル−δ−バレロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールのジβ−メチル−δ−バレロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0032】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、フェノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
なかでも、接着性の観点から、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、信頼性の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレートであることが好ましい。
【0034】
上記のアクリル系モノマーは、市販品を使用してもよく、例えば、KAYARADシリーズ(日本化薬株式会社製)、NKエステルシリーズ(新中村化学工業株式会社製)、コーエイハードシリーズ(広栄化学工業株式会社製)、セイカビーム(登録商標)シリーズ(大日精化工業株式会社製)、KRMシリーズ(ダイセル・サイテック株式会社製)、EBシリーズ、UVECRYL(登録商標)シリーズ(ダイセル・ユーシービー株式会社製)、アクリディックシリーズ(DIC株式会社製)、オーレックス(登録商標)シリーズ(中国塗料株式会社製)、サンラッド(登録商標)シリーズ(三洋化成工業株式会社製)、RCCシリーズ(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックス(登録商標)シリーズ(東亞合成株式会社製)、ライトアクリレートシリーズ(共栄社化学株式会社製)等を使用できる。なお、(メタ)アクリレートモノマー(B)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0035】
[成分(A)および(B)の含有量]
本形態の接着剤組成物は、エポキシ基含有化合物(A)および(メタ)アクリレートモノマー(B)の総量100質量部に対し、エポキシ基含有化合物(A)を50〜90質量部、(メタ)アクリレートモノマー(B)を10〜50質量部の割合で含有することを必須とする。なお、この際、エポキシ基含有化合物(A)は、その総量100質量部に対し、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)を50〜95質量部、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)を1〜50質量部の割合で含む。
【0036】
上記エポキシ基含有化合物(A)の含有量が50質量部未満(すなわち、(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が50質量部超)であると、所望の接着性および信頼性が得られないおそれがある。一方、エポキシ基含有化合物(A)の含有量が90質量部超(すなわち、(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が10質量部未満)であると、初期硬化性が十分でないおそれがある。
【0037】
また、エポキシ基含有化合物(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)が50質量部未満(すなわち、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)が50質量部超)であると、初期硬化性や信頼性が低下するおそれがある。一方、エポキシ基含有化合物(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)が95質量部超(すなわち、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)が5質量部未満)であると、接着性が低下するおそれがある。
【0038】
本形態の接着剤組成物は、上述のように、特定の構造を有するエポキシ基含有化合物(A)を主成分とする。これらのエポキシ基含有化合物(A)は、硬化歪(硬化時の体積収縮)が小さいため、これにより接着性が向上しているものと考えられる。また、エポキシ基含有化合物(A)として、剛構造である脂環式エポキシ基含有化合物(A1)と柔構造である芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)とを所定の範囲で配合しているため、剥離応力が加わった際に、接着剤層が変形しつつも高い剛性が発現し、剥離強度が向上するものと考えられる。
【0039】
本形態の接着剤組成物は、エポキシ基含有化合物(A)として、脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)を任意成分として、エポキシ基含有化合物(A)の総量100質量部に対し、0質量部を超えて40質量部以下含みうる。脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)は、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)よりも柔構造であるため、剥離応力が加わった際に、接着剤層がより柔軟に変形し得る。その結果、接着剤組成物において十分な信頼性を維持しつつ、より高い接着性を発揮させることが可能となる。
【0040】
より好ましい形態としては、より高い接着性を発揮させるために、エポキシ基含有化合物(A)は、その総量100質量部に対し、上記(A1)〜(A3)成分の割合を(A1):(A2):(A3)=50〜80:1〜40:1〜40(質量部)とすることが好ましく、55〜80:10〜25:10〜25の割合とすることがより好ましい。上記範囲とすることにより、十分な信頼性および初期硬化性を維持しつつ、より高い接着性を有する接着剤組成物とすることができる。
【0041】
また、本形態の接着剤組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(B)は、その総量100質量部に対し、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)を0質量部を超えて100質量部以下含むことが好ましい(すなわち、(メタ)アクリレートモノマー(B)の少なくとも一部が多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)であることが好ましい)。さらには、(メタ)アクリレートモノマー(B)に対する多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が30〜100質量部であることがより好ましく、50〜100質量部であることがさらに好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)を配合することにより、架橋構造が形成され、硬化後の接着剤層の弾性率が高くなる。その結果、熱による接着剤層の体積変化が小さくなり、内部応力の発生、言い換えると強度の低下が抑制され、熱衝撃試験による偏光子の割れがより一層低減されうる。
【0042】
より好ましい形態としては、より高い信頼性を発揮させるために、(メタ)アクリレートモノマー(B)に対する多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が100質量部である場合において、脂環式エポキシ基含有化合物(A1)を60〜95質量部、芳香族基含有エポキシ基含有化合物(A2)を5〜40質量部とすることが好ましい。上記範囲とすることにより、十分な接着性を維持しつつ、より高い信頼性を有する接着剤組成物とすることができる。
【0043】
[光酸発生剤(C)]
光酸発生剤は光を照射すると強酸を発生させるものであり、強酸がエポキシ基含有化合物を攻撃し、エポキシ基含有化合物の重合が開始される。光酸発生剤としては、従来公知の光酸発生剤を特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩、鉄−アレン錯体などが挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなどが挙げられる。
【0045】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0046】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムのリン酸塩などが挙げられる。
【0047】
鉄−アレン錯体としては、例えば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなどが挙げられる。
【0048】
光酸発生剤は市販品を用いてもよく、例えば、CPI−100P、101A、200K、210S(以上、サンアプロ株式会社製)、カヤラッド(登録商標)PCI−220、PCI−620(以上、日本化薬株式会社製)、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマー(登録商標)SP−150、SP−170(以上、株式会社ADEKA製)、CI−5102、CIT−1370、1682、CIP−1866S、2048S、2064S(以上、日本曹達株式会社製)、DPI−101、102、103、105、MPI−103、105、BBI−101、102、103、105、TPS−101、102、103、105、MDS−103、105、DTS−102、103(以上、みどり化学株式会社製)、PI−2074(ローディアジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
光酸発生剤の使用量は、重合性成分(エポキシ基含有化合物(A)および(メタ)アクリレートモノマー(B)の総量)100質量部に対して、1〜7質量部であり、好ましくは1.5〜4質量部である。光酸発生剤の使用量を1質量部以上とすることにより、紫外線照射後の接着剤組成物の硬化性が良好となる。一方、使用量を7質量部以下とすることにより、ブリートアウト成分により接着性や耐久性が不十分となるのを抑制することができる。
【0050】
[光重合開始剤、光増感剤(D)]
本形態の接着剤組成物は、さらに、光重合開始剤および光増感剤の少なくとも一方を含む。光重合開始剤として特に制限はなく、従来公知の光重合開始剤を好ましく使用できる。光重合開始剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
光重合開始剤は、具体的には、過酸化水素、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、t−ブチルヒドロパーオキサイド、過酸化t−ジブチル、クメンヒドロパーオキサイド、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイルおよび過酸化ラウロイル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩およびアゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0052】
より具体的には、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン類;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
【0053】
光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えばIRGACURE(登録商標)−184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、DAROCUR−TPO(以上、BASFジャパン株式会社製)、ダロキュア(登録商標)−1173(メルク株式会社製)、エザキュアKIP150、TZT(以上、DKSHジャパン株式会社製)、カヤキュア(登録商標)BMS、DMBI(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0054】
無機過酸化物および有機過酸化物に対しては、エチルアミン、トリエタノールアミンおよびジメチルアニリン等のアミン、ポリアミン、2価鉄塩化合物、アンモニア、トリエチルアルミニウム、トリエチルほう素、ジエチル亜鉛等の有機金属化合物、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ナフテン酸コバルト、スルフィン酸、メルカプタン等の適切な還元剤を併用してもよい。
【0055】
本形態の接着剤組成物は、光重合開始剤の代わりに、または光重合開始剤と併用して光増感剤を使用してもよい。光増感剤として特に制限はなく、従来公知の光増感剤を好ましく使用できる。光増感剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
光増感剤の具体例としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられ、これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0057】
さらに具体的な光増感剤としては、例えば、下記一般式(2)で表わされるアントラセン化合物;ピレン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンなどのベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンなどのアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。
【0058】
【化2】
【0059】
式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、炭素数1〜18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基、または炭素数2〜18のエーテル基を表し、R”は、水素原子または炭素数1〜18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を表す。
【0060】
上記一般式(2)において、R、R’、およびR”で表される炭素数1〜18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、またはオクタデシル基等が挙げられる。RおよびR’で表される炭素数2〜18のエーテル基としては、例えば、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、3−メトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−フェノキシプロピル基、2−メトキシ−1−メチルエチル基、2−メトキシ−2−メチルエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−フェノキシエチル基等が挙げられる。ここでいうエーテル基とは、以上の例示からもわかるように、少なくとも1個のエーテル結合を有する炭化水素基であり、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基などを包含する概念である。
【0061】
光増感剤は合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、カヤキュア(登録商標)−DMBI、BDMK、BP−100、BMBI、DETX−S、EPA(以上、日本化薬株式会社製)、アントラキュア(登録商標)UVS−1331、UVS−1221(以上、川崎化成工業株式会社製)、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0062】
光重合開始剤および光増感剤の少なくとも一方の使用量(光重合開始剤と光増感剤とを併用する場合においては、その合計の使用量)は、重合性成分(エポキシ基含有化合物(A)および(メタ)アクリレートモノマー(B)の総量)100質量部に対して、0.1〜7質量部であり、好ましくは0.5〜2.5質量部である。該使用量が0.1質量部未満であると、紫外線照射によっても硬化しにくく、7質量部を超えると、ブリートアウト成分により接着性や耐久性が不十分となる可能性がある。
【0063】
[他の成分]
本形態の接着剤組成物には、必要に応じて、上記の(A)〜(D)成分以外にも、接着剤組成物の効果を著しく減じない限度において、他の成分を含んでもよい。
【0064】
他の成分としては、例えば、上記以外の他の重合性成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、シランカップリング剤、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、紫外線遮断剤、蛍光増白剤、分散剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤などが挙げられる
上記他の成分は、本形態の接着剤組成物の総量100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、5質量部以下であることが最も好ましい。他の成分の含有量を上記範囲とすることによって、本形態の接着剤組成物の効果を十分に発揮させることができる。
【0065】
[偏光板用接着剤組成物の製造方法]
本形態の接着剤組成物の製造方法は、特に制限はなく、通常は、上記の成分を混合して接着剤組成物が得られる。粘度調整のために適宜有機溶媒を使用してもよい。混合方法にも特に制限はなく、UV光を遮光した部屋で、室温(25℃)で、液体内が均一になるまで十分に攪拌混合すればよい。
【0066】
<偏光板>
本発明の第二の形態によれば、偏光子と保護フィルムとを含み、当該偏光子および保護フィルムが、上記第一の形態の偏光板用接着剤組成物を用いて接着された偏光板が提供される。本形態の偏光板は、製造時の工程性に優れ、十分な接着性および信頼性を有する。以下、本形態の偏光板の構成について説明する。
【0067】
[偏光子]
本形態の偏光子は、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0068】
このうち、平均重合度2000〜2800、ケン化度90〜100モル%のポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、5〜6倍に一軸延伸して製造した偏光子が特に好ましい。より具体的には、このような偏光子は、例えばポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素の水溶液に浸漬して染色し、延伸して得られる。ヨウ素の水溶液としては、例えば、ヨウ素/ヨウ化カリウムの0.1〜1.0重量%水溶液に浸漬することが好ましい。必要に応じて50〜70℃のホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬してもよく、洗浄や染色むら防止のために、25〜35℃の水に浸漬してもよい。延伸はヨウ素で染色した後に行っても、染色しながら延伸しても、延伸してからヨウ素で染色してもよい。染色および延伸後は、水洗し、35〜55℃で1〜10分程度乾燥してもよい。
【0069】
[保護フィルム]
保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる材料が好ましい。例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、または前記樹脂のブレンドなどが挙げられる。
【0070】
上記のうち、偏光板用保護フィルムには、セルロースと脂肪酸のエステルであるセルロース系樹脂、または、シクロオレフィンポリマー(COPフィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、あるいはアクリル系樹脂が好ましい。セルロース系樹脂としては、セルローストリアセテート(TACフィルム)、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、入手し易さやコストの点からセルローストリアセテート(TACフィルム)、シクロオレフィンポリマー(COPフィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、あるいはアクリル系樹脂が好ましく、入手し易さや水分の透過性の観点を考慮するとシクロオレフィンポリマー(COPフィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、あるいはアクリル系樹脂が好ましい。保護フィルムの水分透過性が高いと水分が保護フィルムを透過して容易に偏光子側に入ってきてしまい、偏光子の品質が低下するおそれがあるが、シクロオレフィンポリマー(COPフィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、あるいはアクリル系樹脂を用いるとそれを有意に抑制することができる。特に、シクロオレフィンポリマー(COPフィルム)とポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)との組み合わせが好ましい。
【0071】
なお、セルローストリアセテートは、ケン化されたものも使用できるが、未ケン化のものがより好ましい。シクロオレフィンポリマーとしては、特公平2−9619号公報記載のテトラシクロドデセン類の開環重合体等を水素添加反応させて得られた重合体を構成成分とするポリマーが挙げられる。
【0072】
COPフィルムの市販品としては、JSR株式会社製アートン(登録商標)や、日本ゼオン株式会社製ゼオネックス(登録商標)シリーズ、ゼオノア(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0073】
PETフィルムの市販品としては、東洋紡績株式会社製コスモシャイン(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0074】
アクリル系樹脂フィルムの市販品としては、クラレ株式会社製アクリルフィルムRT、SO、HIシリーズ等が挙げられる。
【0075】
TACフィルムの市販品としては、富士フイルム株式会社製UV−50、UV−80、SH−80、TD−80U、TD−TAC、UZ−TAC、コニカミノルタオプト株式会社製のKCシリーズ等が挙げられる。
【0076】
保護フィルム表面は、コロナ放電処理によって改質されていることが好ましい。コロナ放電処理の方法としては特に制限はなく、一般的なコロナ放電処理装置(例えば、春日電機株式会社製)を用いて処理できる。コロナ放電処理することによって、保護フィルム表面には例えばヒドロキシ基等の活性基が形成され、これがより接着性の向上に寄与すると考えられる。保護フィルムとしてケン化されたセルローストリアセテートを使用する場合には、コロナ放電処理と同様の接着性向上の効果が期待できるため、コロナ放電処理は必ずしも必要ではない。しかし、ケン化処理は工程が複雑であり高コストとなるため、未ケン化のセルローストリアセテートをコロナ放電処理して用いる方が製造工程上は好ましい。
【0077】
コロナ処理の際の放電量としては、特に制限はないが、30〜300W・min/m
2が好ましく、より好ましくは50〜250W・min/m
2である。このような範囲であると、保護フィルム自体を劣化させることなく保護フィルムと接着剤との接着性を向上でき好ましい。ここで、放電量とは、下記式によって求まるコロナ放電による対象物への仕事量であり、これを基準としてコロナ放電電力が決定される。
【0078】
【数1】
【0079】
(C)偏光板の製造方法
偏光板の製造方法は、特に制限はなく、従来公知の方法によって保護フィルムと偏光子とを、上述の接着剤組成物を用いて貼り合わせることによって製造し得る。塗布した接着剤組成物は、紫外線照射により接着性を発現して接着層を構成する。
【0080】
接着剤組成物を塗布する際は、保護フィルム、偏光子のいずれに塗布してもよく、双方に塗布してもよい。接着剤組成物は、乾燥後の接着層の厚みが10nm〜5μmになるように塗布するのが好ましい。接着層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得ることから、より好ましくは500nm〜3μmである。接着層の厚みは、接着剤組成物の溶液中の固形分濃度や接着剤組成物の塗布装置によって調整することができる。また、接着層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって断面を観察することにより、確認できる。接着剤組成物を塗布する方法にも特に制限はなく、接着剤組成物を直接滴下する方法、ロールコート法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
【0081】
接着剤組成物を塗布した後は、偏光子と保護フィルムとをロールラミネーター等により貼り合わせる。
【0082】
貼り合せた後、接着剤組成物硬化のために偏光板に紫外線を照射する。紫外線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線照射量は特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の紫外線照射量が100〜2000mJ/cm
2であることが好ましい。この範囲であれば、反応時間が適当であり、ランプから輻射される熱および重合時の発熱により、接着剤自体や偏光フィルムの劣化を生じる恐れがない。
【0083】
紫外線照射後は、エポキシ樹脂については暗反応が進行するため、偏光板は紫外線照射直後から16〜30時間程度室温(23℃)で保管する。硬化の完了によって偏光板が完成する。
【0084】
<画像表示装置>
本発明の第三の形態によれば、上述の偏光板を有する、画像表示装置が提供される。画像表示装置としては、特に制限はないが、液晶表示装置に適用することが好ましい。本形態の画像表示装置は、特に、過酷な温度条件においても優れた耐久性を発揮することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0086】
[実施例1〜15および比較例1〜4]
<接着剤組成物の調製>
表1に示される成分を、表1に示される配合量に従って、23℃、相対湿度50%の恒温室内で、目視で均一になるまで攪拌混合し、実施例1〜15および比較例1〜4の接着剤組成物を得た。なお、表1中の単位は「g」である。
【0087】
<偏光板の製造>
偏光子は、以下の方法で作製した。平均重合度2400、ケン化度99.9%の厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、28℃の温水中に90秒間浸漬し膨潤させ、次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比2/3)の濃度0.6重量%の水溶液に浸漬し、2.1倍に延伸させながらポリビニルアルコールフィルムを染色した。その後、60℃のホウ酸エステル水溶液中で合計の延伸倍率が5.8倍となるように延伸を行い、水洗、45℃で3分乾燥を行い、偏光子(厚み25μm)を作製した。
【0088】
図1は、本実施例での偏光板の製造方法を示す概略図である。
図1に示すように、保護フィルム3(COPフィルム;日本ゼオン株式会社製、接着面をコロナ処理、厚み50μm)と保護フィルム4(PETフィルム;コスモシャインA4300、東洋紡株式会社製、厚み100μm)との間に偏光子1を挟み、上記で得られた接着剤組成物2を、保護フィルム3および偏光子1、保護フィルム4および偏光子1の間にそれぞれスポイトによって適量滴下し、ロール6、7を備えるロールプレスによって貼り合わせた。
【0089】
このように貼り合わせた紫外線照射前偏光板5に、1000mJ/cm
2(365nm、メタルハライドランプ)の照射量の紫外線を保護フィルム3側から照射した。なお、接着剤組成物を用いた偏光子と保護フィルムとの貼り合せの工程から紫外線照射までは、23℃、相対湿度50%で行った。
【0090】
紫外線照射後、偏光板は恒温室(23℃、相対湿度50%)で24時間保管し、接着剤組成物を硬化させ、偏光板を完成させた。完成した偏光板中の接着剤層の厚みは、2.0μmであった。
【0091】
得られた偏光板は、下記のようにして、紫外線照射直後に初期硬化性試験を実施し、さらに紫外線照射後室温(23℃)で24時間保管後、剥離強度、裁断試験、温水浸漬試験、および熱衝撃試験を実施し、評価した。
【0092】
<初期硬化性試験>
上記で作製した紫外線照射直後の偏光板を、
図2に示すように、折り曲げた偏光板8の間隔が10mmとなるように(R10mm)折り曲げ、保護フィルムの剥離があるかないかを目視で判定した。剥離が観察されなかった場合は○、観察された場合は×とした。評価結果を下記表1に示す。
【0093】
<剥離強度>
上記で作製した偏光板を、剥離強度測定用試料として150mm×25mmに裁断し、PETフィルム側を両面テープでステンレス鋼(SUS)板に固定した。偏光板の偏光子とPETフィルムとの界面(接着剤層)で剥離できるよう端面にナイフを入れ、はがし代を作った。このはがし代部を引張試験機を用いて剥離角90°、剥離速度300mm/分で剥離し、偏光子とPETフィルムとの剥離強度(剥離強度PET)を測定した。評価結果を下記表1に示す。好ましい結果は3(N/25mm)以上であり、より好ましくは5(N/25mm)以上である。
【0094】
同様に、剥離強度測定用試料のCOPフィルム側を両面テープでステンレス鋼(SUS)板に固定した。偏光板の偏光子とCOPフィルムとの界面(接着剤層)で剥離できるよう端面にナイフを入れ、はがし代を作った。このはがし代部を引張試験機を用いて剥離角90°、剥離速度300mm/分で剥離し、偏光子とCOPフィルムとの剥離強度(剥離強度COP)を測定した。評価結果を下記表1に示す。好ましい結果は2(N/25mm)以上である。
【0095】
<裁断試験>
上記で作製した偏光板を、トムソン刃で5cm×5cmの大きさに裁断し、裁断の際の端部の剥がれの状態を目視で観察した。評価基準としては、0.5mm以下を合格とした。評価結果を表1に示す。好ましい結果は、0.3mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。
【0096】
<温水浸漬試験>
上記で作製した偏光板を、トムソン刃で5cm×5cmの大きさに裁断し、温水浸漬試験用試料とした。当該試料を60℃の温水に浸漬し、2時間保持した。その後、温水から試料を取り出し、偏光子の収縮の大きさを測定した。
図3(A)に示すように、試験前の偏光板8の端部から、
図3(B)に示すように、延伸方向に収縮した偏光板8の端部までを測定し、収縮の大きさ9とした。接着剤の接着性が高ければより収縮は小さく、接着性が十分でなければ偏光板の収縮はより大きい値となる。評価基準としては、収縮の大きさが2.0mm以下を合格とした。評価結果を表1に示す。好ましい結果は、0.5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.1mm以下である。
【0097】
<熱衝撃試験(偏光子割れ)>
上記で作製した偏光板を、トムソン刃で5cm×5cmの大きさに裁断し、熱衝撃試験用試料とした。次いで
図4(A)に示すように、ガラス板10に、ノンサポートテープ11(CS−9621T、日東電工株式会社製)を用いて上記試料を貼り合わせ、室温(23℃)で24時間保管した試験片で熱衝撃試験を行った。
【0098】
なお、熱衝撃試験は、−40℃で30分間、85℃で30分間放置することを100サイクル繰り返すものとした。熱衝撃を与えた後、
図4(B)に示すように、偏光子1の延伸方向(矢印方向)に偏光板の端部から偏光子割れ12が存在するかを観察し、偏光子割れ12が観察された場合にはその割れの長さを測定した。割れが複数観察される場合には、その平均値を用いて評価するものとした。偏光子割れが観察されなかった場合は◎、偏光子割れの長さが0.5mm未満の場合は○、偏光子割れの長さが0.5mm以上の場合は×とした。評価結果を下記表1に示す。
【0099】
【表1-1】
【0100】
【表1-2】
【0101】
上記表1に示されるように、実施例1〜15では、初期硬化性、剥離強度、裁断試験、温水試験、および熱衝撃試験のすべてにおいて良好な結果が得られた。これに対して、比較例1〜7では、裁断試験および温水試験の結果がいずれも評価基準を満たさず、また、剥離強度、熱衝撃性試験の結果も実施例と比較して劣るものであった。また、比較例2〜6については、初期硬化性の結果も十分ではなかった。
【0102】
実施例1〜5、7、8では、他の実施例と比較して、相対的に高い剥離強度の結果が得られた。脂環基含有エポキシ基含有化合物(A3)を含有することにより、硬化歪がより小さくなり、体積収縮による接着性の低下が抑制されたためであると考えられた。
【0103】
実施例7〜15では、他の実施例と比較して、相対的に熱衝撃試験の結果がより優れていた。これは多官能(メタ)アクリレートモノマー(B2)を含有することにより、(A)成分と(B2)成分とが架橋後に互いに複雑に絡み合った網目構造を構成し、高い弾性率を有する接着剤層とすることができるため、熱衝撃による偏光子割れがより効果的に抑制されたためであると考えられた。
【0104】
上記のように、実施例と比較例との対比から、本発明の接着剤組成物は、偏光板に使用した際に、優れた初期硬化性、接着性、および信頼性を発揮できることが示された。