特許第6265789号(P6265789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265789シリコン用導電ペースト、銀電極の製造方法、及び太陽電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265789
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】シリコン用導電ペースト、銀電極の製造方法、及び太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20180115BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20180115BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20180115BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180115BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20180115BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20180115BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180115BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B22F1/02 A
   H01L31/04 264
   H01B5/00 C
   H01B13/00 501Z
   H01B1/00 C
   H01B1/22 A
   H01B1/00 L
   B22F1/00 K
   B22F9/00 B
   H01B5/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-45618(P2014-45618)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-208882(P2014-208882A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-60566(P2013-60566)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】野上 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】長原 愛子
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−306701(JP,A)
【文献】 特開2004−162164(JP,A)
【文献】 特開2010−062319(JP,A)
【文献】 特開平05−159618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/02
H01B 1/14−1/22
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル含有率が0.01質量%以上30質量%以下であるニッケル被覆銀粉とニッケルが被覆されていない銀粉との混合粉を含有する導電ペーストであって、
前記混合粉におけるニッケル含有率が0.01質量%以上0.07質量%以下であることを特徴とするシリコン用導電ペースト。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン用導電ペーストをシリコンに塗布し焼成することを特徴とする銀電極の製造方法
【請求項3】
請求項1に記載のシリコン用導電ペーストをシリコンに塗布し焼成して銀電極とする工程を含む太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀電極と半導体層の界面における接触抵抗値を低減させるニッケル被覆銀粉、その製造方法、ニッケル被覆銀粉を含有する導電ペースト、及びこの導電ペーストを焼成して成形した銀電極を備える太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーに関する社会的関心の高まりとともに、太陽電池に対する関心も高まっている。太陽電池は、部材の差異に起因した多様な種類があり、それぞれ特徴を有している。結晶シリコン型太陽電池は、その発電効率の高さから注目され続けており、更なる発電効率の向上が期待されている。例えば、特許文献1では、太陽電池製造用導電ペーストに用いる銀粉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池の発電効率を向上させるには、光電変換により生じた電流の伝播の際の抵抗ロスを低くする、すなわち太陽電池素子の直列抵抗値を下げることが重要である。太陽電池の表面電極は、銀ペーストを印刷し焼成して得られた銀電極である。従来の技術に係る銀ペーストは、銀粉、ガラスフリット、樹脂バインダー、及び溶剤からなる。従来の技術に係る銀ペーストを太陽電池の構成部材に印刷して焼成すると、銀ペーストに含まれるガラスフリットが太陽電池の構成部材である反射防止層を溶解することにより(ファイヤースルー)、焼成銀が太陽電池の部材であるN型またはP型、のシリコン層と接触して銀電極が形成される。この銀電極とシリコン層との間には、接触抵抗が存在する。表面電極だけでなく、バックコンタクト電極においても同様に銀電極とシリコンとの間に接触抵抗が存在する。
【0005】
例えば、結晶シリコン型太陽電池において、シリコン半導体エミッタ層(日光暴露表面)と銀グリッド線との接触抵抗値は約10−3Ω・cm台である。この接触抵抗値は、半導体集積回路デバイス内で達しえる接触抵抗値(例えば、約10−7Ω・cm程度)よりも数桁大きい値である。このように接触抵抗値が大きい原因としては、ガラスフリットが非導電性であること、シリコン半導体エミッタ層と銀電極グリッド線との間の有効接触面積が小さいこと、シリコン半導体エミッタ層と銀電極グリッド線との間の有効接触面において、シリコンと銀とがシリサイドを形成しないこと、等が考えられる。
【0006】
特許文献1では、この問題を解決するために、パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を形成し、この開口部の中をシリコンとシリサイドを形成するコンタクト金属で選択的にメッキし、さらにコンタクト金属の上部に金属含有層を堆積して金属グリッド線を形成し焼結することで太陽電池の電極を成形する。しかし、特許文献1の方法は、従来の印刷法と比較すると、製造工程が非常に複雑で製造コストが増大するため、大量生産には適さない。
【0007】
本発明は、上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、銀ペーストの塗布する際の最も簡便で一般的な方式であるスクリーン印刷法に適した、直列抵抗値の低い銀電極を構成できる導電ペーストを提供することである。さらには、この導電ペーストの構成材料であるニッケル被覆銀粉及びその製造方法、並びにこの導電ペースト(以下、単に「ペースト」と記載する場合がある)を焼成した銀電極を備える太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る第一の手段は、ニッケルが銀粉を被覆したニッケル被覆銀粉であって、前記ニッケル被覆銀粉におけるニッケル含有率が0.01質量%以上30質量%以下のものである。
【0009】
本発明に係る第二の手段は、第一の手段において、前記ニッケルが湿式法により析出した金属ニッケルであるものである。
【0010】
本発明に係る第三の手段は、第一又は第二の手段において、太陽電池製造用の導電ペーストに用いられるものである。なお、太陽電池製造用の導電ペーストに用いられるとは、太陽電池の構成部材である銀電極の製造に用いられる導電ペーストの材料として使用されることをいう。
【0011】
本発明に係る第四の手段は、ニッケル塩及びクエン酸塩を含む溶液に銀粉及び還元剤を加え、前記ニッケル塩を還元してニッケルを析出させることにより、ニッケル被覆銀粉の質量に対して0.01質量%以上30質量%以下の前記ニッケルを前記銀粉の表面に被覆させることである。
【0012】
本発明に係る第五の手段は、第一の手段であるニッケル被覆銀粉及びニッケルが被覆されていない銀粉の混合粉と、ガラスフリットと、樹脂バインダーと、溶剤と、分散剤とを含むものである。
【0013】
本発明に係る第六の手段は、第一の手段であるニッケル被覆銀粉とニッケルが被覆されていない銀粉との混合粉を含有する導電ペーストであって、前記混合粉におけるニッケル含有率が0.01質量%以上0.07質量%以下のものである。
【0014】
本発明に係る第七の手段は、第五又は第六の手段において、太陽電池製造用のものである。なお、太陽電池製造用とは、太陽電池の構成部材である銀電極の製造に用いられることをいう。
【0015】
本発明に係る第八の手段は、第五〜第七のいずれかの手段において、導電ペーストを基板に塗布し焼成した銀電極を備えるものである。
【0016】
本発明に係る第九の手段は、第五〜第七のいずれかの手段である導電ペーストを基板に塗布し焼成して銀電極とする工程を含むことである。
【0017】
本発明の第十の手段は、ニッケル及び銀を含有し、かつ、前記ニッケル及び前記銀の合計質量に対する前記ニッケルの含有率が0.01質量%以上0.07質量%以下である銀電極を備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ニッケル被覆銀粉を含有する導電ペーストを半導体層上で焼成することにより銀電極を成形するため、半導体層との界面に存在する銀粒子の表面に付着したニッケルが焼成時に半導体層とシリサイドを形成することから、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値を低減できる。また、本発明によれば、導電ペーストにおけるニッケル含有率が低く抑えられるので、銀電極の体積抵抗値の増大を抑制できる。よって、本発明に係る太陽電池によれば、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗が低減し、かつ、銀電極の体積抵抗値が低く抑えられることから、高い開放電圧と高い変換効率が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るニッケル被覆銀粉のSEM写真である(実施例1)。
図2】本発明に係るニッケル被覆銀粉のSEM写真である(実施例2)。
図3】本発明に係るニッケル被覆銀粉のFE−AESによる定性分析結果を示す図である。
図4】本発明に係るニッケル被覆銀粉のFE−AESによるSEM像と元素マッピング分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「銀粒子」とは、個々の銀粒子に着目した場合の表現であり、一方で「銀粉」とは、多数の銀粒子を集合体として扱う場合の表現である。
【0021】
太陽電池の銀電極には、低い体積抵抗値と強い耐酸化性が求められる。この特性を実現するには、銀電極は、表面が被覆されていない銀粉(以下、「非被覆銀粉」と称する)のみで構成されることが最適である。しかし、非被覆銀粉のみからなる銀電極は、銀がシリコンとシリサイドを形成しないため、半導体層との界面における接触抵抗値が高いという問題がある。一方で、ニッケルはシリコンとシリサイドを形成するので、ニッケルが銀電極と半導体層との界面に存在すれば、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値を低減できる。しかし、ニッケルは銀よりも体積抵抗値が高い。そのため、銀電極のニッケル含有率が高くなるにしたがって、銀電極の体積抵抗値が増大していき、ニッケルのシリサイド形成による接触抵抗値の低減効果が減少する。つまり、銀電極のニッケル含有率が所定値を超えると、太陽電池素子の直列抵抗値(接触抵抗値、体積抵抗値、及び固有抵抗値の総和)は、非被覆銀粉のみからなる銀電極で構成される太陽電池素子の直列抵抗値よりも高くなる。そこで、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値を低下させると共に、銀電極の体積抵抗値を抑制することによって太陽電池素子の直列抵抗値を低減させるため、銀電極の構成材料として、非被覆銀粉とニッケル被覆銀粉とを併用する。
【0022】
(ニッケル被覆銀粉)
ニッケル被覆銀粉は、個々の銀粒子の表面を湿式法によりニッケルで金属メッキして被覆膜が形成されたものである。ニッケル被覆銀粉は、その芯材が銀粒子であるため、銀電極の構成材料として使用されても、銀電極の体積抵抗値を著しく増大させることはない。一方で、銀電極と半導体層との界面では、ニッケル被覆銀粉の表面のニッケルが半導体層のシリコンとシリサイドを形成するので、ニッケル被覆銀粉は、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値を低下させることができる。
【0023】
ニッケル被覆銀粉におけるニッケル含有率は、0.01質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上7質量%以下である。また、ニッケル被覆銀粉における個々の銀粒子の形状は、球形、楕円体形、フレーク状、又は不定形状でよい。ちなみに、非被覆銀粉における個々の銀粒子の形状も、球形、楕円体形、フレーク状、又は不定形状でよい。ニッケル被覆銀粉の平均粒径D50は、1μm以上50μm以下が好ましく、さらには20μm以下が好適であり、特に本発明者らの実験によれば5μm以下がより好ましい。なお,平均粒径D50(μm)とは,マイクロトラックによる粒度分布測定結果を、横軸に粒径D(μm)をとり、粒径Dμm以下の粒子が存在する容積%(Q%)を縦軸とした累積粒度曲線で表したときに、Q=50%に対応する粒径D(μm)の値を言う。なお、ニッケル被覆膜は、銀粒子の表面を均一に、かつ、完全に覆うことが好ましいが、銀粒子の表面の一部が露出していてもよい。なお、下記の湿式法で被覆することにより、ニッケル被覆膜は、銀粒子の表面を均一に、薄く覆うことができる。湿式法により例えば平均厚さが1〜10nm、より好ましくは1〜6nmの非常に薄い被覆とすることができるため、ニッケル粉などを混ぜる場合に比べてニッケルが拡散しても銀電極内に空隙が生じ難く、銀電極の体積抵抗値の上昇の恐れが少ないと考えられる。
【0024】
オージェ電子分光分析装置(FE−AES)によるニッケル被覆銀粉の定性分析結果を図3に示す。また、図4に、そのニッケルの元素マッピング分析結果を示す。図3図4からNi(ニッケル)により銀粉が被覆されていることが分かる。なお、元素マッピング分析により定性分析で観察されたC(炭素)は、銀粉の表面に存在し、P(リン)は銀粉にある一部が揮散したように全体に観察されている。なお、Al(アルミニウム)とO(酸素)はバックグラウンドであることが判明している。炭素は分散剤、リンは還元剤に起因すると考えられ、銀粉表面には、還元により析出した金属ニッケルが存在している。金属ニッケルは不純物としてリンを含んでいても良い。銀粒子との界面付近においては、ニッケルは銀と合金化している場合もある。
【0025】
(ニッケル被覆銀粉の製造方法)
ニッケル被覆銀粉は、化学還元法や電解法等の湿式法で製造できる。湿式法では、先ずニッケル塩とクエン酸塩とを含む溶液(水溶液が好ましい)に銀粉を加え撹拌して分散液を作成する。次いで、このニッケルイオンを含有する分散液に還元剤である次亜リン酸塩等の還元剤を加えて加熱する。この還元剤の添加及び加熱により、ニッケルイオンを還元して銀粒子の表面にニッケルを析出させ、ニッケル被覆銀粉のスラリーを得る。次いで、ニッケル被覆銀粉のスラリーを濾別して、ニッケル被覆銀粉を採集する。次いで、採集したニッケル被覆銀粉を水洗した後に真空乾燥する。これら一連の製造工程を経てニッケル被覆銀粉が得られる。
【0026】
ニッケルイオン含有分散液に添加する還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、又は水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。また、ニッケルイオンの還元反応を促進するため、還元剤を入れた分散液の温度を室温(20℃)から95℃までの範囲に維持することが望ましい。より好ましくは、70〜90℃である。本発明者らの行った実験によれば、ニッケルが析出し始めた時の液温が70℃であったことから、70℃未満では還元反応が進行し難いと考えられ、一方で90℃を超えると水の蒸発が多くなる。
【0027】
また、銀粉がニッケルイオン含有分散液中に均一に分散し、ニッケルイオンの還元反応が停滞しないように、スラリーを常時撹拌し続けることが好ましい。この撹拌を継続することにより、銀粉をニッケルが均一に被覆するようになる共に、銀粉が沈殿して凝集してしまうことを防止できる。
【0028】
また、大気中からニッケルイオン含有分散液への酸素の混入を防止するため、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガス)でパージした雰囲気下でニッケルイオンの還元反応を進行させることが好ましい。
【0029】
また、ニッケル被覆銀粉の粒子同士の凝集を防止するため、有機高分子からなる分散剤(凝集防止剤又は界面活性剤と呼ばれることもある)をニッケルイオン含有分散液に添加することが好ましい。この分散剤の添加により、真空乾燥後のニッケル被覆銀粉の解粒作業が容易になると共に、この解粒作業によって銀粉を被覆したニッケル被膜が剥離することを回避できる。また、分散剤が有機高分子であれば、太陽電池の製造工程で導電ペーストが焼成される際に、分散剤は気化消失するため、分散剤の添加によって本発明に係る太陽電池の銀電極の性能が低下することはない。有機高分子分散剤としては、例えばステアリン酸などの脂肪酸が使用できる。
【0030】
(導電ペースト)
導電ペーストは、ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉との混合粉及び溶剤を含有し、さらに必要に応じて、ガラスフリット、樹脂バインダー、及び分散剤を含有する。
【0031】
以下に、導電ペーストの構成材料である(1)ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉の混合粉、(2)ガラスフリット、(3)樹脂バインダー、(4)溶剤、(5)分散剤、及び(6)その他の添加剤について説明する。
【0032】
(1)ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉との混合粉
導電ペーストにおけるニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉との混合粉の含有率は、65質量%以上95質量%以下が好ましい。混合粉の含有率が65質量%以上であれば、焼成後の銀電極の銀含有率が十分となり、受光面側の銀電極の固有抵抗値が上昇することを防止できる。一方で、混合粉の含有率が95質量%以下であれば、ペーストの印刷性が担保されると共に、銀電極と半導体層との間の物理的な接着強度が担保される。
【0033】
混合粉におけるニッケル含有率は、0.01質量%〜0.07質量%が好ましく、0.01質量%〜0.06質量%がより好ましく、0.01質量%〜0.04質量%が好適であり、さらに本発明者らの実験によれば0.02質量%〜0.027質量%が最適である。混合粉におけるニッケル含有率が0.01質量%〜0.06質量%であれば、ニッケルのシリサイド形成による銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値の低減効果が、ニッケルの高い体積抵抗値によって太陽電池素子の直列抵抗値が増大する負の効果を上回る。
【0034】
ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉との混合は、焼成前のどのタイミングで行なわれても良い。下記の実施例では粉の状態で混合し、その後にペースト化しているが、これに限定されず、ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉のそれぞれをペースト化した後に混合してもよい。
【0035】
(2)ガラスフリット
導電ペーストに含まれるガラスフリットは、導電ペーストが750℃から950℃で焼成された時に、太陽電池の半導体層上に形成された反射防止層を適度に侵食すると共に、導電ペーストの焼成物である銀電極を半導体層に接着するものである。そのため、ガラスフリットは、300℃以上、550℃以下の軟化点を有するものが好ましい。ガラスフリットの軟化点が300℃以上であれば、反射防止層への過度の侵食が発生せず、一方で軟化点が550℃以下であれば、反射防止層への侵食は必要十分に起こる。
【0036】
ガラスフリットの形状は特に限定されず、球状でも、不定球状でもよい。導電ペーストにおけるガラスフリットの含有率は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。この含有率が0.1質量%以上であれば、銀電極が半導体層に十分な強度で接着できる。一方で、この含有率が10質量%以下であれば、導電ペーストにおけるガラスの浮きや後工程での半田付け不良等の問題が生じない。
【0037】
(3)樹脂バインダー
導電ペーストに含まれる樹脂バインダーは、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、又はポリイソブチル系樹脂等が好ましい。
【0038】
導電ペーストにおける樹脂バインダーの含有率は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。この含有率が0.1質量%以上あれば、銀電極が半導体層に十分な強度で接着できる。一方で、この含有率が10質量%以下であれば、導電ペーストの粘度上昇が回避されるため、導電ペーストの印刷性が担保される。
【0039】
(4)溶剤
導電ペーストに含まれる溶剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、ターピネオール、メチルエチルケトン、又はベンジルアルコール等が好ましい。導電ペーストにおける溶剤の含有率は、1質量%以上40質量%以下が好ましい。この含有率が1質量%以上40質量%以下であれば、導電ペーストの印刷性が担保される。
【0040】
(5)分散剤
導電ペーストに含まれる分散剤は、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、又はラウリン酸等が好ましい。なお、分散剤は、一般的なものであれば、有機酸に限定されるものではない。導電ペーストにおける分散剤の含有率は、0.05質量%以上10質量%以下が好ましい。この含有率が0.05質量%以上であれば、導電ペースト中の混合粉やガラスフリットの分散性が担保される。一方で、この含有率が10質量%以下であれば、太陽電池における受光面側銀電極の固有抵抗値の上昇を回避できる。
【0041】
(6)その他の添加剤
導電ペーストには、本発明の効果を妨げない範囲で、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、及び粘度調整剤等の各種添加剤を適宜添加してもよい。ただし、これらの添加剤は、導電ペーストの全質量におけるナトリウム含有率が100ppm未満となるように選択されることが好ましい。
【0042】
(太陽電池)
太陽電池には、光電変換素子である半導体層を挟んで対向する両側に、隣接する光電変換素子を直列に連結する、導電ペーストを焼成した銀電極が設けられる。半導体層を挟んで対向するどちらの側の銀電極でも、導電ペーストを焼成して成形できる。また、Si系のバックコンタクト用の電極にも、本発明に係る導電ペーストを使用できる。
【0043】
銀電極を成形するための導電ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、又はジェット印刷法等が好ましい。特に、最も簡便で一般的な方式であるスクリーン印刷法が好適である。
【0044】
ニッケル被覆銀粉は、銀電極と半導体層との界面においてニッケルのシリサイドを形成することにより、同界面における接触抵抗値を低減させるという効果を奏する。しかし、銀電極におけるニッケル含有率が高くなるにしたがって、銀電極の体積抵抗値が増大するという負の効果が大きくなる。したがって、銀電極の一つの理想的な構成は、半導体層との界面付近ではニッケル被覆銀粉の含有率が高く、一方で半導体層から離れた位置では非被覆銀粉の含有率が高い構成である。この理想的な構成を実現するために、先ずニッケル被覆銀粉のみを含む導電ペーストを半導体層にスクリーン印刷等によって塗布し、次いで非被覆銀粉だけの導電ペーストをそのスクリーン印刷面上に再度塗布することが考えられる。その他、ニッケル被覆銀粉と非被覆銀粉のそれぞれのペーストを、混合率を変えながら塗布することも考えられる。
【0045】
太陽電池素子の直列抵抗値が低減すれば、太陽電池の曲線因子(FF)が高くなり、その変換効率が改善する。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
<ニッケル被覆銀粉の製造>
硫酸ニッケル16g及びクエン酸アンモニウム17gを水125mLに溶解し、液温を30℃に保ち攪拌しながら、非被覆銀粉31.5g、続いて還元剤として次亜リン酸ナトリウム水溶液を添加した。この次亜リン酸ナトリウム水溶液は、次亜リン酸ナトリウム14gを水50mLに溶解したものである。攪拌を継続しながら液温を90℃に加温し、還元反応により非被覆銀粉の表面にニッケルを析出させ、ニッケル被覆銀粉含有スラリーを得た。このスラリーを濾別して採集物を水洗し、次いで75℃で真空乾燥することにより、実施例1に係るニッケル被覆銀粉Aを得た。ニッケル被覆銀粉Aの5000倍のSEM写真を「図1」に示す。
【0048】
<ニッケル被覆銀粉の評価>
ニッケル被覆銀粉Aのニッケル含有率、粒度分布、及び比表面積(BET値)の測定結果を「表1」に示す。非被覆銀粉はニッケルを含まないため、ニッケル被覆銀粉Aのニッケル含有率2.0質量%は、そのままニッケル被覆量とみなせる。なお、ニッケル含有率は、重量法(質量法)と発光分光分析(ICP)とを用いた組成分析により算出した。具体的には、ニッケル被覆銀粉を硝酸で溶解した後、塩酸を加えて塩化銀を沈殿させて濾別し、塩化銀の質量を測定して銀の含有量を算出した。また、ニッケルが溶解しているろ液にアンモニア水を加えて水酸化ニッケルを沈殿させて濾別し、水酸化ニッケルを焼成して酸化ニッケルとしてから質量を測定してニッケルの含有量を算出した。さらに、ニッケル被覆銀粉を硝酸で溶解した溶液についてICPを用いることにより、不純物の量を測定した。
【0049】
ニッケル被覆銀粉Aの粒度分布は、ニッケル被覆銀粉A0.3gをイソプロピルアルコール50mLに入れ、50W超音波洗浄器で5分間分散処理後、マイクロトラック9320−X100(ハネウエル−日機装社製)を用いて測定した。表1には、D10(累積10質量%粒径)、D50(累積50質量%粒径)、D90(累積90質量%粒径)、及びDmax(最大粒径)の値を示す。
【0050】
ニッケル被覆銀粉Aの比表面積は、BET値で0.76m/gであった。ニッケル被覆銀粉Aにおけるニッケル含有率は2.0質量%であるから、ニッケル被覆銀粉の比表面積から計算されるニッケル被覆膜の平均厚さは3nmとなる。
【0051】
<導電ペーストの製造>
ニッケル被覆銀粉A0.86質量部と、平均粒径3μmの非被覆銀粉85.14質量部と、軟化点が530℃のBa系ガラスフリット1質量部と、エチルセルロース1質量部(樹脂バインダー)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート11質量部(有機溶剤)と、ステアリン酸0.5質量部(分散剤)と、ステアリン酸マグネシウム1質量部と、二酸化テルル2質量部とを、それぞれ秤量して配合した。この配合物を三本ロールミルで混合することによりペースト状にした。さらに、後述するスクリーン印刷時のペースト粘度が約400Pa・sとなるように、このペーストに有機溶剤を適宜添加し、実施例1に係る導電ペーストを得た。
【0052】
<導電ペーストの印刷>
外形が156mm×156mmの大きさで、表面にn型拡散層が形成され、さらにn型拡散層の上にSiNxの反射防止層が形成されたp型単結晶シリコンウエハを準備した。裏面電極形成用のアルミニウムペーストを、シリコンウエハの裏面全面にスクリーン印刷により塗布し、200℃で20分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。そして、シリコンウエハの表面側に、実施例1に係る導電ペーストをスクリーン印刷により塗布し、200℃で20分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
【0053】
<太陽電池素子の製造>
導電ペーストがスクリーン印刷されたシリコンウエハを、高速焼成炉に挿入して最大温度780℃で1分間焼成し、実施例1に係る太陽電池素子を得た。
【0054】
<太陽電池素子の特性評価>
太陽電池素子をソーラーシミュレータに装填し、太陽電池素子の特性を測定した。その測定結果を「表1」に記載する。表1における直列抵抗値、曲線因子(FF)、及び変換効率(η)の値は、後述するニッケル被覆銀粉を含まないペーストを用いた比較例1に係る太陽電池素子の各特性値を基準値として正規化した値である。表1から明らかなように、実施例1に係る太陽電池は、比較例1に係る太陽電池素子に比べて、直列抵抗値が低下し、曲線因子及び変換効率(公称変換効率)は向上した。
【0055】
ここで、曲線因子(FF:Fill Factor)は、下記式(1)で表記される。
【0056】
【数1】
【0057】
また、照射光による入力エネルギーを100mW/cm(又は1000W/m)で規格化した測定による変換効率(公称変換効率:η)は、下記式(2)で表記される。
【0058】
【数2】
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例2)
<ニッケル被覆銀粉の製造>
硫酸ニッケル32g、クエン酸アンモニウム34g、水酸化ナトリウム0.5gを水750mLに溶解し、液温を30℃に保ち攪拌しながら、非被覆銀粉80g、続いて次亜リン酸ナトリウム水溶液を添加した。この次亜リン酸ナトリウム水溶液は、次亜リン酸ナトリウム30gを水50mLに溶解したものである。攪拌を継続しながら液温を80〜95℃に加温して、ここにステアリン酸を加えた。ステアリン酸の存在下で、還元反応によりニッケルを銀粒子表面に析出させ、ニッケル被覆銀粉含有スラリーを得た。このスラリーを濾別して採集物を水洗した後に75℃で真空乾燥を行い、実施例2に係るニッケル被覆銀粉Bを得た。ニッケル被覆銀粉Bの5000倍のSEM写真を「図2」に示す。
【0061】
<ニッケル被覆銀粉の評価>
ニッケル被覆銀粉Bのニッケル含有率、粒度分布、及び比表面積(BET値)を実施例1と同じ方法で測定した。その測定結果を「表1」に示す。非被覆銀粉はニッケルを含まないため、ニッケル被覆銀粉Bのニッケル含有率2.7質量%は、そのままニッケル被覆量とみなせる。ニッケル被覆銀粉の比表面積は0.75m/gであるから、計算されるニッケル被覆膜の平均厚さは4nmとなる。
【0062】
<導電ペーストの製造>
ニッケル被覆銀粉Aの代わりにニッケル被覆銀粉Bを用いた以外は、実施例1と同じ製造方法で実施例2に係る導電ペーストを得た。
【0063】
<導電ペーストの印刷>
実施例2に係る導電ペーストを、実施例1と同じペーストの印刷方法でシリコンウエハの表面側にスクリーン印刷により塗布し、乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
【0064】
<太陽電池素子の製造>
実施例2に係る導電ペーストがスクリーン印刷されたシリコンウエハを、実施例1と同じ方法で焼成し、実施例2に係る太陽電池素子を得た。
【0065】
<太陽電池素子の特性評価>
実施例2に係る太陽電池素子をソーラーシミュレータに装填し、実施例1と同じ方法で太陽電池素子の特性を測定した。その測定結果を「表1」に記載する。
【0066】
表1に示す結果から明らかなように、実施例2に係る太陽電池素子は、比較例1に係る太陽電池素子に比べて、直列抵抗値が低下し、曲線因子及び変換効率(公称変換効率)は向上した。
【0067】
(比較例1)
<導電ペーストの製造>
ニッケル被覆銀粉を用いず、平均粒径3μmの非被覆銀粉を86重量部用いた以外は、実施例1と同じ製造方法で導電ペーストを得た。
【0068】
<導電ペーストの印刷>
比較例1に係る導電ペーストを、実施例1と同じ方法でシリコンウエハの表面側にスクリーン印刷により塗布し、乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
【0069】
<太陽電池素子の製造>
比較例1に係る導電ペーストがスクリーン印刷されたシリコンウエハを、実施例1と同じ方法で焼成し、比較例1に係る太陽電池素子を得た。
【0070】
<太陽電池素子の特性評価>
比較例1に係る太陽電池素子をソーラーシミュレータに装填し、実施例1と同じ方法で太陽電池素子の特性を測定した。その測定結果を「表1」に記載する。
【0071】
表1から明らかなように、比較例1に係る太陽電池は、実施例1及び2に係る太陽電池素子に比べて、直列抵抗値が高く、曲線因子及び変換効率(公称変換効率)は低いものであった。
【0072】
(実施例3)
<ニッケル被覆銀粉の製造>
硫酸ニッケル・6水和物27g、クエン酸ニアンモニウム27gを水400mLに溶解し、ここに次亜リン酸ナトリウム水溶液を添加した。この次亜リン酸ナトリウム水溶液は、次亜リン酸ナトリウム29.5gを水50mLに溶解したものである。室温で攪拌しながら、非被覆銀粉(平均粒径3μm、球形)20gを水50mLと共に添加した。攪拌を継続しながら液温を94℃に加温し、還元反応によりニッケルを非被覆銀粉の表面に析出させ、ニッケル被覆銀粉含有スラリーを得た。このスラリーに分散剤としてBTA−Na0.07gを希釈して加えた。次いで、このスラリーを濾別して採集物を水洗した後に70℃で8時間の真空乾燥を行った。次いで、真空乾燥したニッケル被覆銀粉の凝集体を解砕して、実施例3に係るニッケル被覆銀粉Cを得た。
【0073】
<ニッケル被覆銀粉の評価>
ニッケル被覆銀粉Cのニッケル含有率、粒度分布、及び比表面積(BET値)を実施例1と同じ方法で測定した。その測定結果を「表1」に示す。非被覆銀粉はニッケルを含まないため、ニッケル被覆銀粉Cのニッケル含有率6.0質量%は、そのままニッケル被覆量とみなせる。
【0074】
また、ニッケル被覆銀粉Cの比表面積(BET値)は1.1m/gであった。ニッケル被覆銀粉Cにおけるニッケル含有率は6.0質量%であるから、ニッケル被覆銀粉Cの比表面積から計算されるニッケル被覆膜の平均厚さは6nmとなる。なお、銀の含有率は91.8質量%であった。銀とニッケル以外の不純物の総量は2.2質量%となり、それらは分散剤や、除去しきれなかった還元剤などの成分であると考えられる。
【0075】
<導電ペーストの製造>
ニッケル被覆銀粉Aの代わりにニッケル被覆銀粉Cを用いた以外は、実施例1と同じ製造方法で実施例3に係る導電ペーストを得た。
【0076】
<導電ペーストの印刷>
実施例3に係る導電ペーストを、実施例1と同じ方法でシリコンウエハの表面側にスクリーン印刷により塗布し、乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
【0077】
<太陽電池素子の製造>
実施例3に係る導電ペーストがスクリーン印刷されたシリコンウエハを、実施例1と同じ方法で焼成し、実施例3に係る太陽電池素子を得た。
【0078】
<太陽電池素子の特性評価>
実施例3に係る太陽電池素子をソーラーシミュレータに装填し、実施例1と同じ方法で太陽電池素子の特性を測定した。その測定結果を「表1」に記載する。
【0079】
(実施例4)
実施例3の導電ペーストの製造において、ニッケル被覆銀粉Cの配合量を半分の0.43質量部とし、非被覆銀粉の配合量を85.57質量部とした以外は、実施例3と同じ方法で太陽電池素子を製造し、その特性を評価した。実施例4に係る太陽電池素子の構成及び特性評価結果を「表1」に記載する。
【0080】
(参考例1)
実施例2の導電ペーストの製造において、ニッケル被覆銀粉Bの配合量を3倍の2.58質量部とし、非被覆銀粉の配合量を83.42質量部とした以外は、実施例2と同じ方法で太陽電池素子を製造し、その特性を評価した。参考例1に係る太陽電池素子の構成及び特性評価結果を「表1」に記載する。
【0081】
(太陽電池素子の特性の比較検討)
実施例1〜4、比較例1、及び参考例1で製造した太陽電池素子の特性を比較すれば、導電ペーストにおけるニッケル被覆銀粉の含有量が多すぎると、太陽電池素子の直列抵抗値が上昇し、その曲線因子及び変換効率は悪化することが分かる。導電ペーストの組成にも因ると考えられるが、混合粉におけるニッケル含有率には適量領域が存在すると強く推認される。具体的には、混合粉におけるニッケル含量率が0.01質量%以上0.07質量%以下であれば、太陽電池素子の変換効率は確実に改善し、特に混合粉におけるニッケル含量率が0.020質量%以上0.027質量%以下の範囲において、太陽電池素子の変換効率が最高域に達する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係るニッケル被覆銀粉を用いれば、銀電極と半導体層との界面における接触抵抗値を低減できるので、本発明は半導体素子を利用する装置、例えばダイオード、半導体メモリ、又は集積回路等の用途にも適用できる。
図1
図2
図3
図4