(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板に前記樹脂層を形成するための樹脂を塗布し、前記周期的な凹凸パターンを形成するためのパターンが形成されたスタンパを前記樹脂に押し付けた状態で前記樹脂を硬化させることで、前記樹脂層に前記周期的な凹凸パターンが形成される、
請求項1に記載の回折格子スケール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回折格子スケールの0次透過光は迷光の原因となり、光電式エンコーダの計測誤差の一因となる。回折効率を高めて0次透過光を小さくするためには、回折格子の凹凸パターンの凸部と凹部との高低差を調整し、0次透過光が相殺するようにすることが考えられる。ここで、格子ピッチを細密化しつつ凸部と凹部との高低差をかせぐとなると、凸部のアスペクト比が高くなる。しかし、インプリント法には、凹凸パターンの凸部のアスペクト比を高くすることが難しいという問題がある。アスペクト比の高い凹凸パターンは、凸部の高さに対して幅が小さくなるため、製造時に凸部が倒れてしまうことがある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためなされたものであり、凹凸パターンをインプリント法により作製することに適した回折格子スケールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる回折格子スケールは、
基板と、
前記基板の上に積層された樹脂層と、を備えた回折格子スケールであって、
前記樹脂層には測長方向に沿って周期的な凹凸パターンが形成されており、
前記基板の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2としたときに、
n2>n1を満たす。
さらに、上述の回折格子スケールにおいて、
前記基板の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2としたときに、
n2−n1≧0.04
を満たしてもよい。
【0009】
上述の回折格子スケールにおいて、
前記基板の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2としたときに、
n2−n1≧0.1
を満たしてもよい。
さらに、上述の回折格子スケールにおいて、
前記基板の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2としたときに、
n2−n1≧0.15
を満たしてもよい。
【0010】
また、上述の回折格子スケールにおいて、
前記樹脂層には周期的に穴があけられることにより穴と凸部とが繰り返す前記凹凸パターンが形成されており、
前記樹脂層は、前記測長方向に直交する方向の両側に側壁を有し、前記側壁は前記凹凸パターンの凸部同士をつないでいてもよい。
【0011】
さらに、本発明にかかる回折格子スケールにおいては、
前記凹凸パターンの凸部先端の、凹部底面からの高さが700nm以下であってもよいし、
前記凹凸パターンのアスペクト比が3.5以下であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凹凸パターンをインプリント法により作製することに適した回折格子スケールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1にかかる回折格子スケールの斜視図である。
【
図2】実施の形態1にかかる回折格子スケールの平面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる回折格子スケールの測長方向の断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる回折格子スケールの測長方向に直交する幅方向の断面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる回折格子スケールの格子高さと0次透過光強度との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図6】実施の形態1にかかる回折格子スケールにおける、ベース部の厚さと0次透過光強度との関係を示す図である。
【
図7】実施の形態1にかかる回折格子スケールの製造工程を示す第1の図である。
【
図8】実施の形態1にかかる回折格子スケールの製造工程を示す第2の図である。
【
図9】実施の形態1にかかる回折格子スケールの製造工程を示す第3の図である。
【
図10】実施の形態1にかかる回折格子スケールの製造工程を示す第4の図である。
【
図11】実施の形態1にかかる回折格子スケールの製造工程を示す第5の図である。
【
図12】実施の形態1にかかる回折格子スケールにおける、カバーガラスの接着方法の変形例を示す図である。
【
図13】実施の形態2にかかる回折格子スケールの斜視図である。
【
図14】実施の形態2にかかる回折格子スケールの測長方向の断面図である。
【
図15】実施の形態3にかかる回折格子スケールの斜視図である。
【
図16】実施の形態3にかかる回折格子スケールの平面図である。
【
図17】実施の形態3にかかる回折格子スケールの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜
図4を用いて、本発明の実施の形態1にかかる回折格子スケールの構造を説明する。
図1は、回折格子スケール100の斜視図である。
図2は、回折格子スケール100の平面図である。
図1及び
図2では、わかりやすいようにカバーガラスを外した状態の図としている。
図3は、回折格子スケール100の測長方向の断面図である。
図4は、回折格子スケール100の測長方向に直交する幅方向の断面図である。
【0015】
回折格子スケール100は、主に、エンコーダ用スケールとして用いられる。回折格子スケール100にコヒーレント光を照射して、回折光により生じた干渉縞の強度を、受光素子を用いて検出することにより、検出ヘッドのスケールに対する移動量を検出できる。
【0016】
回折格子スケール100は、透明基板110と、樹脂層120と、カバーガラス(カバー部材)130と、接着剤140とを備える。
透明基板110は、使用の際に照射する光に対して光透過性を有する長手状の基板である。透明基板110の材質は、例えば、光学用ガラスや透明なプラスチックを用いる。より望ましくは、熱膨張係数の小さい、合成石英やセラミックス系のガラスを用いる。
樹脂層120は、透明基板110の上に積層されている。樹脂層120は、透光性の樹脂からなる。透光性の樹脂としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系紫外線硬化型樹脂等の光硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の熱可塑性樹脂や、エポキシ系等の熱硬化樹脂などを用いることができる。
【0017】
樹脂層120は、凹凸パターン121と、側壁122と、カバーガラス支持部(カバー部材支持部)123と、ベース部124と、を一体的に有する。樹脂層120は、インプリント法により型押成形される。樹脂層120は、底面となるベース部124の上に2つのカバーガラス支持部123と凹凸パターン121とが連続一体的に立設されてなる。具体的にはベース部の幅方向の両端からそれぞれカバーガラス支持部123が立設され、さらに、2つのカバーガラス支持部123の間に挟まれるようにして凹凸パターン121が形成されている。
【0018】
樹脂層120において、凹凸パターン121はベース部124の上に形成されており、凹凸パターン121とベース部124とは同一の材質により形成されている。
ベース部124は、透明基板110上に固着されている。ベース部124と透明基板110とを固着することにより、樹脂層120と透明基板110とが接触する面積を広くとることができるので、樹脂層120と透明基板110との密着性が向上する。
【0019】
ベース部124の厚さは、樹脂層120と透明基板110との熱膨張係数差による回折格子スケール100の変形が起こらず、かつ、樹脂層120と透明基板110との密着性が損なわれない厚さとするのが好ましい。凹凸パターン121の格子高さが0.4〜1.0μm程度の場合には、ベース部124の厚さは1μm以上が望ましく、例えば、3〜9μmとするのが望ましい。
【0020】
カバーガラス支持部123、123は、カバーガラス130を位置決めして固定するための支持部である。カバーガラス支持部123、123は、樹脂層120に一体的に形成されており、回折格子スケール100の測長方向に沿って長さを持つ壁状の構造となっている。
カバーガラス130は、回折格子として機能する凹凸パターン121を、傷や汚れから保護するために設けられる。カバーガラス130には、凹凸パターン121に照射される光をできる限り遮らないために、光透過性の高い材質を用い、必要に応じ片面または両面に反射防止処理を行うこともある。
【0021】
接着剤140は、透明基板110とカバーガラス130とを接着する。接着剤140としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を用いる。回折格子スケール100上において、カバーガラス支持部123の外側の透明基板110に接着剤140を塗布する。これにより、接着剤140がカバーガラス支持部123によりせき止められて、凹凸パターン121に接着剤140が流れこむのを防げる。
【0022】
樹脂層120には、回折格子スケール100の測長方向に沿って周期的に穴125があけられることにより、穴125と凸部126とが繰り返す周期的な凹凸パターン121が形成されている。凹凸パターン121において、測長方向に直交する方向の両側に側壁122、122があり、側壁122、122は凸部126同士をつないでいる。凹凸パターン121の周囲をつなげることにより、機械的な強度を向上できる。その結果、回折格子の格子部の欠損や倒れ等を防止できる。特に、凸部126が倒れるのを防止できる。なお、
図3では、凹凸パターン121の穴125や凸部126は矩形となっているが、矩形に限定されるものではなく、台形や正弦波形状等、回折格子として機能するものであればよい。
【0023】
樹脂層120の凹凸パターン121は、照射されたコヒーレント光に対して回折格子として機能する。凹凸パターン121を透過した光は、回折格子スケール100から一定距離離れた平面上に、回折光による干渉縞を生成する。凹凸パターン121の凸部126先端の、凹部底面からの高さ(格子高さ)h(
図3)と、凸部126の幅(格子幅)L(
図2)、及び凹凸の周期Pは、照射光の波長に対して0次透過光が小さくなるように設計されている。また、凹凸パターン121のアスペクト比Rは、R=h/Lと定義される。
【0024】
本実施形態では、樹脂層120の屈折率が、透明基板110の屈折率よりも大きくなるように材料を選択することとする。その理由を説明する。
図5は、屈折率の異なる3種類の樹脂層120について、格子高さと0次透過光強度との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
図5において、横軸は格子高さであり、縦軸は入射光に対する0次透過光強度の割合である。シミュレーションは、波長655nmの光を入射させた場合について行った。回折効率の計算は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis:厳密結合波解析)法により行った。
【0025】
凹凸パターン121の格子高さをh、格子幅をL、凹凸の周期をP、透明基板110の屈折率をn1、樹脂層120の屈折率をn2とする。シミュレーションでは、L=200nm、P=400nm、n1=1.46の場合において、4種類の屈折率n2について、格子高さhを変化させて0次透過光強度を計算した。格子高さhは、0nmから1000nm(1μm)まで、50nm刻みで変化させた。n2は、1.47、1.5、1.6、1.8の4種類についてシミュレーションを行った。
【0026】
入射光に対する0次透過光強度を最小にする場合の、透明基板110と樹脂層120との屈折率差Δnと、格子高さhの関係について考える。
n2=1.47の場合に、0次透過光を最小にできる格子高さhは、約850nm(0.85μm)であり、アスペクト比はR=4.25である。このとき、樹脂層120と透明基板110との屈折率差Δn=n2−n1=0.01である。
n2=1.5の場合に、0次透過光を最小にできる格子高さhは、約800nm(0.80μm)であり、アスペクト比はR=4.0である。このとき、Δn=0.04であり、Δn=0.01のときと比較して、格子高さhを50nm低くすることができる。
【0027】
n2=1.6の場合に、0次透過光を最小にできる格子高さhは、約700nm(0.70μm)であり、アスペクト比はR=3.5である。このとき、Δn=0.14であり、Δn=0.01のときと比較して、格子高さhを150nm低くすることができる。
n2=1.8の場合に、0次透過光を最小にできる格子高さhは、約600nm(0.60μm)であり、アスペクト比はR=3.0である。このとき、Δn=0.34であり、Δn=0.01のときと比較して、格子高さhを250nm低くすることができる。
【0028】
0次透過光を最小とした状態で格子高さhを小さくするには、Δn≧0.04を満たすことが望ましい。さらに格子高さhを小さくするには、Δn≧0.1を満たすことが望ましく、Δn≧0.15を満たすことがより望ましい。
【0029】
図6は、回折格子スケール100における、ベース部124の厚さと0次透過光強度との関係を示す図である。樹脂層120の屈折率が1.5の場合及び1.6の場合に、ベース部124の厚さを変化させたときの0次透過光強度の変化をシミュレーションしている。
図6(a)は、樹脂層120の屈折率n2が1.5で、格子高さが800nmの場合、
図6(b)は、屈折率n2が1.6で、格子高さが700nmの場合の0次透過光のシミュレーション結果を示す。格子高さは、0次透過光が最小になるように設定している。
図6に示すように、0次透過光が最小となるように格子高さが最適化された条件下では、ベース部124の厚さを変化させても0次透過光はほとんど変化しない。
【0030】
図7〜
図9を用いて、回折格子スケール100の製造方法を説明する。回折格子スケール100は、透明基板110上に樹脂層120を形成して、インプリント法により樹脂層120に凹凸パターン121を形成することにより作製される。
図7〜
図9は、回折格子スケール100を
図3と同じ断面から見た図である。
【0031】
まず、凹凸パターン121及びカバーガラス支持部123の形状のスタンパ601を作製しておく。スタンパ601は、例えば、凹凸パターン121及びカバーガラス支持部123の形状を、フォトリソグラフィで石英基板上に形成することや、この加工された石英基板をマスタとして樹脂等で複製することにより作製される。
【0032】
図7に示すように、スケールの形状に切り出された透明基板110の上に、液状の樹脂を流し込んで樹脂層120を形成する。次に、
図8に示すように、液状の樹脂層120にスタンパ601を押し付ける。スタンパ601を樹脂層120に押し付けたまま、透明基板110側から紫外線を照射することにより、樹脂層120が硬化して凹凸パターン121及びカバーガラス支持部123が樹脂層120に形成される。そして、
図9に示すように、樹脂層120が硬化した後に樹脂層120をスタンパ601から離型することにより、樹脂層120に凹凸パターン121及びカバーガラス支持部123が形成される。これは、樹脂層120として紫外線硬化型樹脂を用いた場合の例である。
【0033】
次に、透明基板110とカバーガラス130とを接着する。
図10及び
図11は、回折格子スケール100を
図4と同じ断面から見た図である。まず、
図10に示すように、カバーガラス支持部123の外側に、カバーガラス支持部123より上に届くように接着剤140を塗布する。そして、
図11に示すように、カバーガラス支持部123の先端面にカバーガラス130を当接して、接着剤140とカバーガラス130を接触させる。この状態で透明基板110側から紫外線を照射することにより接着剤140が固化し、透明基板110とカバーガラス130とが接着される。
【0034】
本実施形態により、次の効果を奏する。
【0035】
(1)本実施形態では、透明基板110と樹脂層120との屈折率差Δnが大きくなるようにする。これにより、0次透過光が最小となる格子高さを低くすることができる。格子高さが低い方が、格子が倒れにくくなるため、回折格子の機械的な強度は向上し、インプリント法による加工も容易となる。
【0036】
(2)凹凸パターン121とカバーガラス支持部123とが樹脂層120に一体形成されている。このため、インプリント法を用いて、凹凸パターン121とカバーガラス支持部123とを樹脂層120に同時に形成できる。工程を減らすことができるので、回折格子スケールの製造コストを削減できる。
【0037】
(3)カバーガラス支持部123の高さによって、カバーガラス130の位置を規定できる。凹凸パターン121とカバーガラス130との間隔を設計通りに規制できるので、エンコーダ出力をより安定化できる。
【0038】
(4)カバーガラス130を透明基板110に接着するときに、カバーガラス支持部123の外側に接着剤140を塗布する。カバーガラス支持部123が接着剤140をせき止めることにより、接着剤140が凹凸パターン121に流れ込むのを防げる。このため、接着剤140の凹凸パターン121への付着を防止することができる。
【0039】
(変形例)
実施形態1にかかる回折格子スケール100には、種々の変形例が考えられる。
図12に示すように、カバーガラス支持部123の先端面に接着剤140を薄く塗布して、カバーガラス支持部123とカバーガラス130とを接着してもよい。
【0040】
さらに、カバーガラス支持部123の表面に、高さ規定に影響を与えない範囲で微細凹凸構造が設けられていてもよい。微細凹凸構造はインプリント用マスタ表面へのレーザ照射やブラスト処理など種々の方法で作成できる。カバーガラス支持部123の表面を荒らすことで、アンカー効果により接着性が向上する。逆に、カバーガラス130の表面を荒らしても、アンカー効果による接着性の向上が期待できる。また、カバーガラス支持部123の表面に、蒸着等により、例えば接合強度をより強くするための金属薄膜が形成されていてもよい。
【0041】
他方、カバーガラス支持部123の先端面に両面テープなどのテープ状接着材料を付着することにより、カバーガラス支持部123とカバーガラス130とを固定してもよい。また、カバーガラス支持部123とカバーガラス130とをレーザ溶着することにより固定してもよい。レーザ溶着によれば、接着剤140や両面テープなどのテープ状接着材料を用いる場合に比べて、幅の狭い接着領域でも比較的容易にカバーガラス支持部123とカバーガラス130とを固定できる。
【0042】
上記実施形態においては、カバーガラス支持部123を壁状の構造とするにあたっては、部分的に低くしたり、部分的に孔をあけてもよい。凹凸パターン121とカバーガラス130との間には、パーティクル等の異物が入りにくくする必要がある。その一方で、凹凸パターン121とカバーガラス130との隙間が密閉状態になると、隙間内部の空気中の水分による結露が温度変化等により発生するおそれがある。カバーガラス支持部123の構造を変えることにより、必要に応じて凹凸パターン121とカバーガラス130との隙間を、換気構造としたり密閉構造としたりできる。
【0043】
回折格子スケール100(
図2及び
図4を参照)においては、側壁122とカバーガラス支持部123との間にスケール幅方向の隙間があるが、側壁122とカバーガラス支持部123とが隣接していてもよいし、側壁122とカバーガラス支持部123とが一体に形成されていてもよい。また、側壁122がカバーガラス支持部123を兼ねていてもよい。
【0044】
[実施の形態2]
本発明にかかる回折格子スケールは、透過型スケールに限定されるものではなく、反射型スケールであってもよい。
図13及び
図14を用いて、本発明の実施の形態2にかかる回折格子スケール1300の構造を説明する。
図13は、回折格子スケール1300の構成を示す斜視図である。
図14は、回折格子スケール1300の測長方向の断面図である。
図13では、わかりやすいようにカバーガラスを外した状態の図としている。
【0045】
回折格子スケール1300の構造は、回折格子スケール100とほぼ同じであるが、樹脂層120に形成された凹凸パターン121上に金属薄膜1301が蒸着等により成膜されている。金属薄膜1301としては、例えば、金、銀、アルミニウム、クロム、金属シリサイド等を用いることができる。金属薄膜1301は、単層でもよいし、薄膜を複数積層したものでもよい。金属薄膜1301は、通常、樹脂層120上全面に成膜するが、凹凸パターン121上だけに成膜して、側壁122上には成膜しない形態を妨げるものではない。また、反射型スケールの場合は、透明基板110に代えてセラミック基板などの光を透過しない基板材料を用いることもできる。
【0046】
[実施の形態3]
本発明にかかる回折格子スケールは、リニアスケールに限定されるものではなく、
図15及び
図16に示すように、ロータリーエンコーダ用スケールであってもよい。
図15は、回折格子スケール1500の構成を示す斜視図である。
図16は、回折格子スケール1500の構成を示す平面図である。
図15及び
図16では、わかりやすいようにカバーガラスを外した状態の図としている。
【0047】
回折格子スケール1500は、回折格子スケール100を円周に沿って曲げた形状をしている。すなわち、ドーナツ状の透明基板110上に樹脂層120が形成され、樹脂層120には凹凸パターン121とカバーガラス支持部123とが一体的に形成されている。
回折格子スケール1500は、透過型スケールである場合について説明したが、反射型スケールであってもよい。
【0048】
また、本発明にかかる回折格子スケールは、平面上に形成されるものに限定されるものではなく、
図17に示すように、曲面上に形成されるものであってもよい。
図17は、回折格子スケール1700の構成を示す斜視図である。回折格子スケール1700は、回折格子スケール100が円柱の側面の曲面に沿って曲げられた形状をしている。回折格子スケール1700では、カバーガラス130として、曲面と曲率が同じ形状のガラス又は曲げられる薄いガラスが用いられる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、カバーガラス支持部123は壁状構造に限定されるものではなく、柱状構造であってもよい。少なくとも3本の柱があればカバーガラス130を支持することができる。
【0050】
また、カバーガラス支持部123は、カバーガラス130が透明基板110と平行に支持されるような態様に限定されるものではない。例えば、カバーガラス支持部123の一の側が他方の側より高くなっており、カバーガラス130が回折格子スケール100の幅方向に一定の角度を持って傾けた状態で固定されていてもよい。この構成により、反射光の干渉による信号ノイズを低減できる。
【0051】
さらにまた、樹脂層120の材料は、有機樹脂に限定されるものではなく、インプリント法に好適な材料であれば、ガラス等の無機材料や、樹脂に無機材料を混合したハイブリッド材料であってもよい。
【0052】
さらに、カバーガラス支持部123の上に支持されるのは、カバーガラス130に限定されるものではない。カバーガラス130の代わりに、透明なプラスチックフィルムを用いてもよい。カバーガラス支持部123の上に支持されるカバーガラス又はプラスチックフィルムの表面には、例えば、モスアイ構造のような微細構造が形成されていてもよい。微細構造を表面に形成することにより、反射防止効果等の機能を持たせることができる。