特許第6266258号(P6266258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6266258-半導体装置の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266258
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8242 20060101AFI20180115BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 27/115 20170101ALI20180115BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01L27/108 651
   H01L29/78 371
   H01L27/115
   H01L21/322 N
   H01L21/265 P
   H01L27/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-161968(P2013-161968)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-32720(P2015-32720A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】礒邉 康孝
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−343420(JP,A)
【文献】 特開2007−134641(JP,A)
【文献】 特開2003−017497(JP,A)
【文献】 特開2009−212363(JP,A)
【文献】 特開平01−225350(JP,A)
【文献】 特開2000−138225(JP,A)
【文献】 特開2007−067366(JP,A)
【文献】 特開平06−252153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8242
H01L 21/265
H01L 21/322
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/108
H01L 27/115
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層電極と上層電極との間に、誘電体膜を備えた半導体装置の製造方法において、前記下層電極又は前記上層電極の少なくともいずれか一方を形成する工程は、
不純物元素を含むポリシリコンからなる前記下層電極又は前記上層電極を構成する膜を形成した後、該膜上にシリコン窒化膜を堆積させる工程と、前記膜内に含まれる不純物元素のうち拡散係数の大きい不純物元素を前記膜から前記シリコン窒化膜中に拡散させる加熱処理を行う工程と、前記シリコン窒化膜を該シリコン窒化膜中に拡散した前記不純物元素と共に除去する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記下層電極又は前記上層電極の少なくともいずれか一方を形成する工程は、
前記下層電極又は上層電極を構成するノンドープのポリシリコン膜を形成し、該ポリシリコン膜中に不純物をイオン注入し、導電性の前記下層電極又は前記上層電極を形成する工程と、
前記不純物を注入したポリシリコン膜上にシリコン窒化膜を堆積させる工程と、
前記ポリシリコン膜内に含まれる不純物元素のうち、該ポリシリコンを導電性とするために注入された不純物より拡散係数の大きい不純物元素を前記ポリシリコン膜から前記シリコン窒化膜中に拡散させる加熱処理を行う工程と、
前記シリコン窒化膜を該シリコン窒化膜中に拡散した前記不純物元素と共に除去する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DRAM、EPROM、EEPROMなどの半導体装置に組み込まれるキャパシタのように、誘電体膜を挟んで電極が積層形成されている半導体装置の製造方法に関し、特に積層された電極間のショート不良の発生を大幅に低減できる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、半導体装置についてもより一層の高集積化、小型化が要求されている。そのため、誘電体膜を挟んで電極が積層形成されている半導体装置であるキャパシタも、より小さい面積で所望の高い静電容量を形成する必要がある。キャパシタの静電容量Cは、一対の電極で挟まれた誘電体膜の誘電率をε、面積をS、厚さをdとすると、C=ε・S/dで与えられるため、面積Sを小さくすると共に、厚さdを小さくするか、誘電率εを大きくすることになる。
【0003】
誘電率εを大きくする方法としては、誘電体膜として誘電率の大きな材料を用いるのが望ましい。一般的にはシリコン窒化膜(比誘電率6.9)やシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜が用いられる(たとえば、特許文献1)。
【0004】
本願出願人が先に提案したキャパシタの製造方法を図3に示す。まず、半導体基板11の表面にLOCOS酸化膜やシリコン酸化膜などの絶縁膜12を形成する。絶縁膜12上に、例えばLPCVD法によりポリシリコン膜を350nm程度の厚さに堆積して下層電極13を形成する(図3a)。ここで下層電極13は、ノンドープのポリシリコン膜を形成した後、イオン注入法により、砒素(As)を注入し、約1000℃の加熱処理をすることにより注入したイオンを活性化し、導電性のポリシリコン膜とする。
【0005】
その後、ポリシリコンを酸化する酸化液中に浸積し、下層電極13表面のポリシリコンを酸化してシリコン酸化膜14を形成する(図3b)。このシリコン酸化膜14表面を清浄化した後、LPCVD法により40nm程度のシリコン窒化膜15を形成し、さらにシリコン窒化膜15表面を熱酸化処理することで、シリコン窒化膜15上に2nm程度のシリコン酸化膜16を形成する(図3c)。このシリコン酸化膜14、シリコン窒化膜15及びシリコン酸化膜16からなる多層膜構造とすることで、キャパシタショート不良の少ないキャパシタの誘電体膜が形成されている。
【0006】
その後、下層電極13と同様の方法で、高濃度に不純物を含んだポリシリコン膜を350nm程度の厚さ堆積し、上層電極17を形成することにより、キャパシタを完成させることができる(図3d)。
【0007】
ところで、以上のように形成されたキャパシタにおいて、下層電極13を形成する際、ノンドープのポリシリコン膜中に不純物イオンを注入する工程を含んでいる。一般的にイオン注入工程で使用されるイオン注入装置は、不純物イオンが通過する経路の側壁、半導体基板1を固定するウエハステージは、ステンレス、アルミナ、その他のセラミックス等で形成されており、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等を含んでいる。
【0008】
そのため、ポリシリコン膜を導電性とするために砒素を注入する場合、砒素イオンの他に、ポリシリコン膜中に鉄やアルミニウム等が同時に注入されてしまう。ところで、鉄やアルミニウム等がポリシリコン膜中に存在すると、トラップ源となり電荷が蓄積し、電流経路を形成してしまいキャパシタショートが発生してしまう。このような問題は、本願出願人が先に開示した多層構造の絶縁膜構造としても防ぐことができず、キャパシタの小型化の妨げとなったり、製品の信頼性低下を招いてしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−212363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のキャパシタの製造工程において、下層電極あるいは上層電極を形成する際にイオン注入法を用いると、イオン注入装置内から混入する不純物によって絶縁膜破壊が発生し、小型化の妨げとなったり、信頼性低下の原因となっていた。本発明はこれらの問題点を解消し、信頼性が高く、小型化のキャパシタを形成することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願請求項1記載の発明は、下層電極と上層電極との間に、誘電体膜を備えた半導体装置の製造方法において、前記下層電極又は前記上層電極の少なくともいずれか一方を形成する工程は、不純物元素を含むポリシリコンからなる前記下層電極又は前記上層電極を構成する膜を形成した後、該膜上にシリコン窒化膜を堆積させる工程と、前記膜内に含まれる不純物元素のうち拡散係数の大きい不純物元素を前記膜から前記シリコン窒化膜中に拡散させる加熱処理を行う工程と、前記シリコン窒化膜を該シリコン窒化膜中に拡散した前記不純物元素と共に除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記下層電極又は前記上層電極の少なくともいずれか一方を形成する工程は、前記下層電極又は上層電極を構成するノンドープのポリシリコン膜を形成し、該ポリシリコン膜中に不純物をイオン注入し、導電性の前記下層電極又は前記上層電極を形成する工程と、前記不純物を注入したポリシリコン膜上にシリコン窒化膜を堆積させる工程と、前記ポリシリコン膜内に含まれる不純物元素のうち、該ポリシリコンを導電性とするために注入された不純物より拡散係数の大きい不純物元素を前記ポリシリコン膜から前記シリコン窒化膜中に拡散させる加熱処理を行う工程と、前記シリコン窒化膜を該シリコン窒化膜中に拡散した前記不純物元素と共に除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、積層形成された電極内に含まれる不純物元素、特にイオン注入装置から混入した不純物元素を除去することができるので、薄い誘電体膜であっても絶縁膜破壊が発生することがなくなり、信頼性の高い、小型のキャパシタを形成することが可能となる。また、本発明の製造方法は、通常の半導体装置の製造工程に使用される一般的な製造工程のみで構成することができるため、歩留まりよくキャパシタを形成することができるという利点がある。
【0015】
特にこの種の半導体装置の製造工程において電極中に混入する可能性の高い不純物元素の中で、鉄とアルミニウムは、シリコン窒化膜に効果的にゲッタリングされ、除去効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるキャパシタの製造方法を説明する図である。
図2】本発明の半導体装置の製造方法により形成した別のキャパシタの説明図である。
図3】従来のキャパシタの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、不要の不純物元素を含む下層電極又は上層電極上にシリコン窒化膜を形成し、加熱処理を行うことで、電極中含まれる拡散係数が大きく、かつシリコン窒化膜にゲッタリングされる不純物元素をシリコン窒化膜中に拡散させ、その後、シリコン窒化膜を除去することで、不要の不純物元素を取り除くことを特徴とする。特に、アルミニウム、鉄は、拡散係数が大きく、シリコン窒化膜にゲッタリングされやすく、効果的に除去することができる。以下、本発明について、キャパシタの製造方法を例に取り、詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、半導体基板1の表面に設けられたLOCOS酸化膜やCVD法などにより形成されたシリコン酸化膜等の絶縁膜2を形成する。この絶縁膜2上に、例えばLPCVD法により、モノシランを原料ガスとして、600℃で350nm程度のポリシリコン膜を堆積させ、下層電極3を形成する(図1a)。この下層電極3は、ノンドープのポリシリコンを形成した後、イオン注入法により、例えば砒素(As)を注入して、高濃度に不純物イオンを含む導電性のポリシリコン膜により形成される。
【0019】
ここで、イオン注入法により不純物イオンをノンドープのポリシリコン膜に注入する際、不純物イオンが通過する経路の側壁、半導体基板1を固定するウエハステージは、ステンレス、アルミナ、その他のセラミックス等で形成されており、注入イオンである砒素の他に、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等が下層電極3中に混入してしまう。
【0020】
また、イオン注入法に限らず、LPCVD法によりポリシリコン膜を形成する際も、半導体基板1を固定するウエハステージ等からわずかながら鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等が下層電極3中に混入してしまう。
【0021】
そこで本発明では、下層電極3上に、シリコン窒化膜4を形成し、加熱処理を行うことで、下層電極3中に含まれる拡散係数が大きく、シリコン窒化膜4にゲッタリングされる不純物を、下層電極3中からシリコン窒化膜4中に拡散させる(図1b)。具体的には、ジクロロシランとアンモニアとを原料ガスとしてLPCVD法により、600〜700℃で40nm程度のシリコン窒化膜4を形成した後、窒素雰囲気中で、900℃〜1200℃、30分から3時間程度の加熱処理を行う。
【0022】
この加熱処理により、下層電極3中に注入された砒素イオンは活性化され、同時に砒素より拡散係数が大きい鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等をシリコン窒化膜4中に拡散させることができる。その後、シリコン窒化膜4を除去することで、下層電極3中に含まれる鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等を減少させることができる。
【0023】
次に、下層電極3上に誘電体膜5を形成する。この誘電体膜5は、シリコン窒化膜の単層構造としたり、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜/シリコン酸化膜の多層構造とすることができる。なお先に本願出願人が提案しているように、下層電極3表面を酸化液中に浸漬してポリシリコンの表面を酸化してシリコン酸化膜を形成することも可能である。
【0024】
次に誘電体膜5上に上層電極6を形成する。この上層電極6の形成は、先に説明した下層電極3の形成工程と同じ工程となる。即ち、例えばLPCVD法により、モノシランを原料ガスとして、600℃で350nm程度のポリシリコン膜を堆積させ、上層電極6を形成する。この上層電極6は、ノンドープのポリシリコンを形成した後、イオン注入法により、例えば砒素(As)を注入して、高濃度に不純物イオンを含むポリシリコン膜により形成される。
【0025】
先に説明したようにイオン注入法により不純物イオンをノンドープのポリシリコン膜に注入する際、不純物イオンが通過する経路の側壁、半導体基板1を固定するウエハステージは、ステンレス、アルミナ、その他のセラミックス等で形成されており、注入イオンである砒素の他に、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等が上層電極6中に混入してしまう。
【0026】
また、イオン注入法に限らず、LPCVD法によりポリシリコン膜を形成する際も、半導体基板1を固定するウエハステージ等からわずかながら鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等が下層電極3中に混入してしまう。
【0027】
そこで、上層電極6上に、シリコン窒化膜7を形成し、加熱処理を行うことで、上層電極6中に含まれる拡散係数が大きく、シリコン窒化膜7にゲッタリングされる不純物を、上層電極6中からシリコン窒化膜7中に拡散させる(図1d)。
【0028】
この加熱処理により、上層電極6中に注入された砒素イオンは活性化され、同時に砒素より拡散係数が大きい鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等をシリコン窒化膜7に拡散させることができる。その後、シリコン窒化膜7を除去することにより、上層電極中に含まれる鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等を減少させ、キャパシタを完成させることができる(図1e)。
【0029】
このように形成されたキャパシタは、誘電体膜中に、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅等の不純物元素を含まず、あるいは従来より非常に少ない量し存在しないため、これらの不純物元素がトラップ源となり電荷が蓄積することもなく、キャパシタショート不良の発生をなくすことが可能となった。特に鉄、アルミニウムは、トラップ源となり電荷が蓄積し、電流経路を形成してしまいキャパシタショートの発生原因となっていたが、これらを除去することができることは、キャパシタの小型化、製品の信頼性の向上を実現することができ、好ましい。
【実施例2】
【0030】
次に、第2の実施例について説明する。第1の実施例では、下層電極3をポリシリコン膜で形成する場合について説明したが、図2に示すように半導体基板1上に導電性の半導体領域を形成して下層電極層8とすることも可能である。この場合、上層電極6を形成する際に、第1の実施例同様、ノンドープのポリシリコンにイオン注入法により高濃度に不純物イオンを含むポリシリコン膜から、このポリシリコン膜上にシリコン窒化膜を形成して加熱処理することで、上層電極6中に含まれる拡散係数が大きく、シリコン窒化膜にゲッタリングされる不純物をシリコン窒化膜中に拡散させ、その後、シリコン窒化膜を除去することで取り除くことで、キャパシタを完成させることができる。
【0031】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず、誘電体膜を挟んで積層形成された電極金属上にシリコン窒化膜を形成し、加熱処理を行うことで拡散係数の大きい不純物を電極金属からシリコン窒化膜中に拡散させ、シリコン窒化膜を除去することによって不純物を除去する半導体装置の製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1、11: 半導体基板、2、12:絶縁膜、3、13:下層電極、4、15、7:シリコン窒化膜、5:誘電体膜、6、17:上層電極、8:下層電極層、14、16:シリコン酸化膜
図1
図2
図3