(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266338
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷装置における走査時の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20180115BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
B41J11/02
B41J2/01 305
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-267324(P2013-267324)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-123590(P2015-123590A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄士
(72)【発明者】
【氏名】和田 宜倫
(72)【発明者】
【氏名】柿本 昌二
(72)【発明者】
【氏名】野村 星也
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−329600(JP,A)
【文献】
特開2010−52843(JP,A)
【文献】
特開2006−35727(JP,A)
【文献】
特開2013−230927(JP,A)
【文献】
特開2002−355945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01、2/165−2/20、2/21−2/215、11/00−11/70、29/393
B65H23/00−23/16、23/24−23/34、29/70
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定速度で印刷媒体を搬送する印刷媒体搬送部と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷が行われた前記印刷媒体の検査領域を読み取りセンサで走査する走査部とを備えた印刷装置において、
前記走査部は、前記印刷媒体を走査するために、前記印刷媒体の吸着を行う吸着部を備え、
前記吸着部が前記印刷媒体に対する吸着を行いつつ、前記印刷媒体搬送部による印刷時の搬送速度よりも遅い速度で前記印刷媒体を前記吸着部に対して移動させることにより、前記印刷媒体の走査時の位置決めを行わせる制御部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記印刷媒体の移動を前記印刷媒体搬送部による搬送方向に行わせることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
前記吸着部は、負圧吸着を行うものであって、前記印刷媒体の搬送方向と直交する方向における中心に配置された第1ファンと、前記第1ファンを挟んで搬送方向と直交する方向に第2ファンと第3ファンとを備え、
前記制御部は、前記第1ファンを作動させた状態で前記印刷媒体の移動を行わせ、その後、前記印刷媒体の移動を停止した後、前記第2ファン及び前記第3ファンを作動させることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置において、
前記印刷媒体は、印刷面が連なった連続紙であることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記印刷媒体の移動により、走査時までに前記印刷媒体の検査領域が前記走査部に位置するように移動を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置において、
前記吸着部は、前記印刷媒体の移動が可能な吸着力であることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置において、
前記走査部は、前記読み取りセンサとしてCIS(Contact Image Sensor)を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の印刷装置において、
前記印刷部は、インク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット式であることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
一定速度で印刷媒体を搬送する印刷媒体搬送部と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷が行われた前記印刷媒体の検査領域を読み取りセンサで走査する走査部とを備えた印刷装置における走査時の位置決め方法において、
前記吸着部が前記印刷媒体に対する吸着を行う吸着工程と、
前記吸着工程の実施中に、印刷時における前記印刷媒体搬送部による搬送速度よりも遅い速度で前記印刷媒体を移動させる吸着中印刷媒体搬送工程と、
前記吸着中印刷媒体搬送工程によって移動された前記印刷媒体の走査時の位置決めを行う走査位置決定工程と、
を実施することを特徴とする印刷装置における走査時の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に画像を印刷するとともに、その画像を検査する印刷装置及び印刷装置における走査時の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の印刷装置として、ロール紙に画像を印刷した後、その画像を読み取って、シェーディング補正や吐出検査等の印刷調整用の検査を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。その検査は、ロール紙の搬送を停止した状態であって、ロール紙が引っ張られてテンションがかかった状態で行われる。この装置では、読み取りセンサとしてCCD(Charge Coupled Device)を用いたものが用いられ、検査領域の端から読み取りセンサを走査させて検査領域の全面を読み取っている。
【0003】
また、第2の印刷装置としては、インクジェットプリンタの記録ヘッドにより画像をロール紙に印刷するものがある(例えば、特許文献2参照)。この印刷装置は、記録ヘッドと、この記録ヘッドと対向して配置された媒体支持テーブルとを備えている。この媒体支持テーブルは、ロール紙を支持する媒体支持面を揺するプラテンを備えている。プラテンには、媒体支持面から裏面に貫通する吸引口が複数個形成されている。ロール紙は、これらの複数個の吸引口を介してプラテンに対して真空(または負圧)吸着される。
【0004】
上述した第1の印刷装置では、読み取りセンサとロール紙の距離が不安定になる恐れがある。そこで、第2の印刷装置のように、複数個の吸引口を有するプラテンに対してロール紙の検査領域を位置させ、ロール紙をたるませた状態で真空吸着させて、ロール紙の検査領域をプラテンに固定させた状態で読み取りを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−035727号公報
【特許文献2】特開2012−196821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、ロール紙をたるませた状態でロール紙を真空吸着させるので、ロール紙の検査領域には搬送方向に沿ったシワ(cocklingと呼ばれる)が発生することがある。このようなシワが生じると、その周辺部分が先にプラテンに吸着されて位置が固定されてしまうので、シワがつぶれきれずに局所的な紙浮きが生じることになる。すると、検査領域の画像を走査しても、検査領域に印刷された検査パターンを精度良く読み取ることができず、検査精度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印刷媒体における局所的な紙浮きをなくすことにより、検査精度を向上することができる印刷装置及び印刷装置における走査時の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、
一定速度で印刷媒体を搬送する印刷媒体搬送部と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷が行われた前記印刷媒体の検査領域を読み取りセンサで走査する走査部とを備えた印刷装置において、前記走査部は、前記印刷媒体を走査するために、前記印刷媒体の吸着を行う吸着部を備え、前記吸着部が前記印刷媒体に対する吸着を行いつつ、前記
印刷媒体搬送部による印刷時の搬送速度よりも遅い速度で前記印刷媒体を前記吸着部に対して移動させることにより、前記印刷媒体の走査時の位置決めを行わせる制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御部は、印刷媒体を吸着部に対して吸着させて走査時の位置決めを行う。その際に、制御部は、印刷時の搬送速度よりも低速で印刷媒体を移動させる。印刷媒体は、吸着部への吸着時にシワが生じることがあるが、印刷媒体を移動させることにより、印刷媒体には静止摩擦力よりも小さい動摩擦力が働くことになる。したがって、印刷媒体のうち、吸着部に接しているシワがつぶれるようにして吸着部に吸着され、走査時の位置決めがされる。その結果、印刷媒体における局所的な紙浮きをなくすことができ、検査精度を向上することができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御部は、前記印刷媒体の移動を前記印刷媒体搬送部による搬送方向に行わせることが好ましい(請求項2)。
【0011】
印刷媒体搬送部により搬送方向へ印刷媒体を移動させるので、印刷媒体の移動のために新たな構成を付加する必要がない。したがって、装置コストを抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、前記吸着部は、負圧吸着を行うものであって、前記印刷媒体の搬送方向と直交する方向における中心に配置された第1ファンと、前記第1ファンを挟んで搬送方向と直交する方向に第2ファンと第3ファンとを備え、前記制御部は、前記第1ファンを作動させた状態で前記印刷媒体の移動を行わせ、その後、
前記印刷媒体の移動を停止した後、前記第2ファン及び前記第3ファンを作動させることが好ましい(請求項3)。
【0013】
第1ファンから第3ファンによる負圧吸着により印刷媒体を吸着部に吸着させる場合に、制御部は、搬送方向と直交する方向の中心にある第1ファンを作動させた状態、つまり吸着力が弱い状態にて印刷媒体の移動を行わせる。したがって、摩擦がシワの周辺がより滑りやすくなり、容易にシワを吸着部に吸着させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記印刷媒体は、印刷面が連なった連続紙であることが好ましい(請求項4)。
【0015】
印刷媒体の連続紙は、搬送方向に長手方向を有するので、印刷媒体搬送部による搬送によって容易に搬送方向に移動させることができる。
【0016】
また、本発明において、前記制御部は、前記印刷媒体の移動により、走査時までに前記印刷媒体の検査領域が前記走査部に位置するように移動を制御することが好ましい(請求項5)。
【0017】
制御部は、印刷媒体を移動させ、走査時までに印刷媒体の検査領域を走査部に位置させる。したがって、走査部による検査を行うことができる。
【0018】
また、本発明において、前記吸着部は、前記印刷媒体の移動が可能な吸着力であることが好ましい(請求項6)。
【0019】
印刷媒体の移動が可能な吸着力であれば、印刷媒体を移動させてシワをつぶすようにして局所的な紙浮きをなくすことができる。
【0020】
また、本発明において、前記走査部は、前記読み取りセンサとしてCIS(Contact Image Sensor)を備えていることが好ましい(請求項7)。
【0021】
CISは、小型化が可能、低コスト、低消費電力である一方で、CCDよりも被写界深度が浅いのが一般的である。したがって、局所的な紙浮きをなくすことによる検査精度の向上に対する寄与度を大きくできる。
【0022】
また、本発明において、前記印刷部は、インク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット式であることが好ましい(請求項8)。
【0023】
インクジェット式の印刷部によって検査領域に印刷された検査パターンを精度良く走査することができる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、
一定速度で印刷媒体を搬送する印刷媒体搬送部と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷が行われた前記印刷媒体の検査領域を読み取りセンサで走査する走査部とを備えた印刷装置における走査時の位置決め方法において、前記吸着部が前記印刷媒体に対する吸着を行う吸着工程と、前記吸着工程の実施中に、印刷時における前記印刷媒体搬送部による搬送速度よりも遅い速度で前記印刷媒体を移動させる吸着中印刷媒体搬送工程と、前記吸着中印刷媒体
搬送工程によって移動された前記印刷媒体の走査時の位置決めを行う走査位置決定工程と、を実施することを特徴とするものである。
【0025】
[作用・効果]請求項9に記載の発明によれば、吸着工程において、吸着部が印刷媒体を吸着し、その吸着中に吸着中印刷媒体
搬送工程において、印刷時の搬送速度よりも低速で印刷媒体を搬送方向に移動させる。印刷媒体は、吸着部への吸着時にシワが生じることがあるが、印刷媒体を移動させることにより、印刷媒体には静止摩擦力よりも小さい動摩擦力が働くことになる。したがって、印刷媒体のうち、吸着部に接しているシワがつぶれるようにして吸着部に吸着され、走査時の位置決めがされる。その結果、印刷媒体における局所的な紙浮きをなくすことができ、検査精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る印刷装置によれば、制御部は、印刷媒体を吸着部に対して吸着させて走査時の位置決めを行う。その際に、制御部は、印刷時の搬送速度よりも低速で印刷媒体を移動させる。印刷媒体は、吸着部への吸着時にシワが生じることがあるが、印刷媒体を移動させることにより、印刷媒体には静止摩擦力よりも小さい動摩擦力が働くことになる。したがって、印刷媒体のうち、吸着部に接しているシワがつぶれるようにして吸着部に吸着され、走査時の位置決めがされる。その結果、印刷媒体における局所的な紙浮きをなくすことができ、検査精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す全体図である。
【
図4】検査時における動作を示すフローチャートである。
【
図5】調整用チャートを印刷後、検査領域を停止位置に移動させる動作を説明するための模式図である。
【
図6】連続紙を吸着させた状態を説明するための模式図である。
【
図7】連続紙の吸着時に生じる現象を説明するための模式図である。
【
図8】連続紙を移動させる動作を説明するための模式図である。
【
図9】連続紙を移動させた際に生じる現象を説明するための模式図である。
【
図10】連続紙を移動させる動作の変形例を説明するための模式図である。
【
図11】連続紙を移動させる他の構成例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す全体図である。
【0029】
本発明に係る印刷装置1は、給紙部3と、印刷ユニット5と、排紙部7とを備えている。給紙部3は、ロール状で印刷面が連なった連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、連続紙WPを印刷ユニット5に対して供給する。印刷ユニット5は、連続紙WPに対して種々の画像の印刷を行う。排紙部7は、印刷が行われた連続紙WPを水平軸周りにロール状に巻き取る。
【0030】
印刷ユニット5は、例えば、インク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット式である。印刷ユニット5は、給紙部3からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ9を備えている。駆動ローラ9によって給紙部3から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ11に沿って、下流側の排紙部7に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ11と排紙部7との間には、駆動ローラ13が配置されている。この駆動ローラ13は、搬送ローラ11上を搬送されている連続紙WPを排紙部7に向かって送り出す。駆動ローラ9,13は、正逆の両方向に回転可能に構成されており、正回転により給紙部3から排紙部7の搬送方向へ連続紙WPを送り出し、逆回転により排紙部7から給紙部3の搬送方向とは逆方向へ連続紙WPを巻き戻す。
【0031】
印刷ユニット5は、駆動ローラ9と駆動ローラ13との間に、印刷部15と、乾燥部17と、走査部19とを上流側からその順に備えている。乾燥部17は、印刷部15によって印刷された部分の乾燥を行う。走査部19は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査したり、印刷の調整を行うために使用する調整用チャートを読み取ったりする。
【0032】
印刷部15は、インク滴を吐出する印刷ヘッド21を備えている。印刷部15は、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個配置されているのが一般的である。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)について個別に4個の印刷部15を備えている。しかし、以下の説明においては、発明の理解を容易にするために、1個の印刷部15だけを備えているものとして説明する。また、印刷部15は、連続紙WPの幅方向(
図1の紙面の奥手前方向)における印刷領域を移動することなく印刷できるだけの印刷ヘッド21を複数個備えている。つまり、本実施例における印刷ユニット5は、印刷部15が連続紙WPの搬送方向と直交する方向に主走査のために移動することがなく、位置が固定のままで連続紙WPを副搬送方向に送りながら連続紙WPに対して印刷を行う。
【0033】
走査部19は、案内ローラ23と、下部ローラ25と、吸着部27と、上部ローラ29と、スキャナ31とを備えている。
【0034】
案内ローラ23は、乾燥部17から水平に送られてきた連続紙WPを、下方に向けて案内する。下部ローラ25は、下方に送られてきた連続紙WPを斜め上方に向かって傾斜姿勢で送る。上部ローラ29は、斜め下方から送られてきた連続紙WPを水平方向に案内する。
【0035】
ここで
図2,
図3を参照して、走査部19について詳細に説明する。なお、
図2は、走査部の概略構成を示す正面図であり、
図3は、走査部の概略構成を示す側面図である。
【0036】
下部ローラ25と上部ローラ29との間の搬送路に相当する位置には、吸着部27が配置されている。吸着部27は、連続紙WPが搬送される搬送路に沿って表面SPが配置されている。吸着部27は、その表面SPのほぼ全面にわたって複数個の吸引口33が形成されている。各吸引口33は、第1ファン35と、第2ファン37と、第3ファン39とによって吸引されて負圧とされる。
【0037】
第1ファン35は、連続紙WPの搬送方向と直交する方向における中心に配置されている。第2ファン37は、第1ファン35を挟んで左側に配置され、第3ファン39は、第1ファン35を挟んで右側に配置されている。
【0038】
吸着部27の表面SPから若干離間した位置には、スキャナ31が配置されている。このスキャナ31は、螺軸41と、電動モータ43と、読み取りセンサ45とで構成されている。
【0039】
螺軸41は、吸着部27の上部にて、連続紙WPの幅方向に長軸が向けられた姿勢で配置されている。ここでいう幅方向とは、
図1における紙面の奥手前方向であり、
図2の左右方向である。電動モータ43は、螺軸41に回転軸が連結され、螺軸41を長軸周りに回転させる。読み取りセンサ45は、CCDやCISなどで構成され、螺軸41に懸垂姿勢で取り付けられている。なお、小型化が可能であることや、消費電力が低いことから、読み取りセンサ45をCISで構成することが好ましい。また、読み取りセンサ45は、読み取り面を連続紙WP側(吸着部27の表面SP側)に向けられた姿勢で螺軸41に取り付けられている。
【0040】
読み取りセンサ45を移動させる構成は、上述した螺軸41(ボールネジ)に限定されるものではない。螺軸41に代えて、例えば、リニアモータ、ラックアンドピニオン、リニアガイドとコグドベルトの組み合わせなど適宜の手法を選択することができる。
【0041】
上述した駆動ローラ9,13の搬送制御と、印刷部15からのインク滴の吐出制御と、乾燥部17による乾燥処理と、走査部19による検査処理等は、制御部51によって統括的に制御される。制御部51は、CPUやメモリなどによって構成されている。制御部51は、後述する調整用チャートのデータや停止位置などの情報を記憶するための記憶部53を接続されている。
【0042】
制御部51は、印刷部15や駆動ローラ9,13を操作して、連続紙WPに対して調整用チャートを印刷させ、その調整用チャートを走査部19に読み取らせて検査処理を行う。そして、制御部51は、その結果に基づいて印刷部15や駆動ローラ9,13を調整することにより、連続紙WPに対して印刷を精度良く行うことができる。
【0043】
なお、上述した駆動ローラ9,13が本発明における「印刷媒体搬送部」に相当し、印刷ヘッド21が本発明における「印刷部」に相当する。
【0044】
次に、
図4から
図9を参照して、調整用チャートを読み取る処理について説明する。なお、
図4は、検査時における動作を示すフローチャートである。また、
図5は、調整用チャートを印刷後、検査領域を停止位置に移動させる動作を説明するための模式図であり、
図6は、連続紙を吸着させた状態を説明するための模式図であり、
図7は、連続紙の吸着時に生じる現象を説明するための模式図であり、
図8は、連続紙を移動させる動作を説明するための模式図であり、
図9は、連続紙を移動させた際に生じる現象を説明するための模式図である。
【0045】
ステップS1
制御部51は、駆動ローラ9,13を操作して、連続紙WPを印刷速度で搬送させる。さらに、制御部51は、記憶部53から調整用チャートのデータを読み出し、印刷部15を操作して連続紙WPの検査領域IA(
図5に実線で示す領域)に調整用チャートACを印刷させる。調整用チャートACは、例えば、印刷ヘッド21の吐出タイミングの適否を検査するためのものである。
【0046】
ステップS2
制御部51は、調整用チャートACを検査処理するために、駆動ローラ9,13を操作して、検査領域IA(
図6の実線で示す領域)の上流側を停止位置SLに移動させて停止させる。この例では、停止位置SLは、読み取りセンサ45による読み取り可能な領域であるスキャン領域SAの搬送方向におっけるほぼ中央に設定されている。
【0047】
ステップS3
制御部51は、第1ファン35と、第2ファン37と、第3ファン39とを同時に操作して、吸着部27に負圧を発生させ、連続紙WPの検査領域IAを吸着部27に吸着させる(
図6)。このとき、連続紙WPは搬送方向にテンションがかけられているので、
図6に示すように、吸着前の時点で搬送方向に沿った線状のシワCKが生じることがある。その状態で、連続紙WPが吸着部27に吸着されると、小さなシワCKは吸着部27に吸着されて消失する一方、
図7に示すように、大きなシワCKは小さくなるものの完全にはつぶされずに残ることがある。
【0048】
ステップS4
制御部51は、駆動ローラ9,13を操作して、連続紙WPを印刷速度よりも低速(例えば、1m/分)のシワ取り速度で搬送方向の下流側へ移動させ、スキャン領域SA内で停止させる(
図8)。この移動の際には、吸着部27に接していたシワCKの周辺に、静止摩擦力より小さな動摩擦力が働く。したがって、シワCKの周辺が搬送方向と直交する方向に向けて滑りやすくなり、シワCKがつぶれるようにして吸着部27に吸着される。これにより、走査時の位置決めがされる。
【0049】
ステップS5
制御部51は、読み取りセンサ45を移動させて、検査領域IA内の調整用チャートACを走査させ、調整用チャートACを読み取らせる。読み取られた調整用チャートACは、制御部51によって解析され、印刷時の制御に反映される。
【0050】
本実施例によると、制御部51は、連続紙WPを吸着部27に対して吸着させて走査時の位置決めを行う。その際に、制御部51は、印刷速度よりも低速のシワ取り速度で連続紙WPを搬送方向に移動させる。連続紙WPは、吸着部27への吸着時にシワCKが生じることがあるが、連続紙WPを移動させることにより、連続紙WPには静止摩擦力よりも小さい動摩擦力が働くことになる。したがって、連続紙WPのうち、吸着部27に接している摩擦が小さくなったシワCKの周辺が滑りやすくなり、シワCKがつぶれるようにして吸着部27に吸着され、走査時の位置決めがされる。その結果、連続紙WPにおける局所的な紙浮きをなくすことができ、検査精度を向上することができる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0052】
(1)上述した実施例では、
図8に示したように停止位置SLから連続紙WPを搬送方向に搬送させてシワCKをつぶすようにした。しかしながら、本発明は、連続紙WPを移動させる方向がその搬送方向に限定されるものではない。
【0053】
ここで
図10を参照する。なお、
図10は、連続紙を移動させる動作の変形例を説明するための模式図である。
【0054】
この例では、シワCKをつぶすために搬送方向とは逆方向に連続紙WPを移動させる。そのため、停止位置SLを検査領域IAの下流側に設定してある。この停止位置SLに連続紙WPの検査領域IAを停止させ、その後、駆動ローラ9,13を逆回転させて、排紙部7から給紙部3への印刷時の搬送方向とは逆方向へ連続紙WPを巻き戻す。制御部51は、巻き戻時に検査領域IAがスキャン領域SA内となるように駆動ローラ9,13を操作する。このように、搬送方向と逆方向へ連続紙WPを移動させても上述した実施例と同様の効果を奏する。
【0055】
(2)上述した実施例では、シワCKをつぶすため、駆動ローラ9,13により連続紙WPを搬送方向または搬送方向とは逆方向に移動させた。しかしながら、本発明は、このような連続紙WPの移動に限定されるものではない。
【0056】
ここで
図11を参照する。なお、
図11は、連続紙を移動させる他の構成例を示す正面図である。
【0057】
この例では、搬送方向と直交する方向へ連続紙WPを移動させる上部ローラ移動機構61を備えている。上部ローラ移動機構61は、螺軸63と、電動モータ65とから構成されている。螺軸63は、上部ローラ29の回転中心に螺合されている。電動モータ65は、螺軸63が回転軸に連結されている。電動モータ65は、連続紙WPが搬送方向へ搬送される通常時には、制御部51による制御を外れて単に空転して従動するようになっており、駆動ローラ9,13による連続紙WPの搬送を妨げないようになっている。
【0058】
このように構成された例では、シワCKをつぶす際に、スキャン領域SAに検査領域IAを停止させた後、電動モータ65を作動させて上部ローラ29を搬送方向と直交する方向(
図11の紙面左右方向)へ往復移動させる。このように連続紙WPを移動させる構成としても上述した実施例と同様の効果を奏する。
【0059】
(3)上述した実施例では、第1ファン35と、第2ファン37と、第3ファン39とを同時に操作して、吸着部27に負圧を発生させた。しかしながら、本発明は、これらのファンを同時に操作する必要はない。例えば、最初に、第1ファン35だけを作動させた状態で連続紙WPを移動させ、シワCKがつぶれるようにして吸着部27に吸着された後、第2ファン37と第3ファン39とを作動させて固定させる。このようにすると、吸着力が弱い状態で連続紙WPの移動を行わせるので、摩擦が小さいシワCKの周辺がより滑りやすくなり、容易にシワCKを吸着部27に吸着させることができる。
【0060】
(4)上述した実施例では、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット式を例にとって説明したが、本発明はインクジェット式の印刷装置に限定されるものではなく、走査時の位置決めを伴う印刷装置であれば、どのような印刷方式のものであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 … 印刷装置
3 … 給紙部
5 … 印刷ユニット
7 … 排紙部
WP … 連続紙
9,13 … 駆動ローラ
11 … 搬送ローラ
15 … 印刷部
17 … 乾燥部
19 … 走査部
21 … 印刷ヘッド
27 … 吸着部
31 … スキャナ
33 … 吸引口
35 … 第1ファン
37 … 第2ファン
39 … 第3ファン
45 … 読み取りセンサ
51 … 制御部
IA … 検査領域
AC … 調整用チャート
SA … スキャン領域
SL … 停止位置
CK … シワ