特許第6266350号(P6266350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266350
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/08 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   H01L23/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-1487(P2014-1487)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-130413(P2015-130413A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平 知晃
(72)【発明者】
【氏名】緒方 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 敏史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 真吾
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−251343(JP,A)
【文献】 特開2012−164877(JP,A)
【文献】 特開2000−332145(JP,A)
【文献】 特開2007−281207(JP,A)
【文献】 特開2004−343378(JP,A)
【文献】 特開2006−229632(JP,A)
【文献】 特開2003−298389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップをリードフレームに実装し、樹脂封止した電子部品において、
前記リードフレームは、チップ実装面に、前記チップ表面に対向する空間形成部と前記チップ表面に形成された電極と接続するチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えており、前記空間形成部、前記チップ電極接続端子および前記外部接続端子間にプリモールド樹脂が充填され、少なくとも前記空間形成部と前記チップ電極接続端子との間に充填された前記プリモールド樹脂の表面の高さが前記空間形成部の表面の高さより低く形成されていることにより、前記空間形成部表面と前記プリモールド樹脂表面との間に段部が形成されていることと、
前記チップ電極接続端子と前記チップ表面に形成された電極が接続されていることと、
前記チップ実装面表面の前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上が封止樹脂により被覆され、前記チップ表面と前記リードフレームの実装面との間の前記段部に前記封止樹脂の一部が入り込んでいるとともに、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間が残るように封止されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
チップをリードフレームに実装し、樹脂封止する電子部品の製造方法において、
チップ実装面に、空間形成部および実装する前記チップの電極と接続されるチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えたリードフレームを用意する工程と、
チップ実装面の前記リードフレーム表面はフィルム材を介した状態で、前記リードフレームをプリモールド用金型で挟持することにより、少なくとも前記チップ実装面の前記空間形成部と前記チップ電極接続端子との間隙に前記フィルム材を突出させた状態で、前記リードフレームの前記空間形成部、前記チップ電極接続端子および前記外部接続端子の間に、前記フィルム材の突出した形状に沿ってプリモールド樹脂を充填し、プリモールドリードフレームを形成する工程と、
前記チップ表面が、前記空間形成部に対向するように前記チップ電極接続端子と前記チップ表面に形成された電極を接続する工程と、
前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を被覆し、前記チップ表面と前記リードフレームの実装面との間に封止樹脂を注入するとともに、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間を残すように樹脂封止を行う工程と、を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の電子部品の製造方法において、樹脂封止する工程は、減圧状態で、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を樹脂シートで被覆し、前記減圧状態を破り常圧状態にすることにより前記樹脂シートを加圧し、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間を残すように樹脂封止することを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法に関し、特にメカニカルな動作が必要な電子部品や、封止樹脂の応力によって特性変動を起こす電子部品をリードフレームに実装する際、その表面上に中空構造を形成した電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波(SAW)フィルタやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子などは素子表面でメカニカルな動作が必要な電子部品である。また、一部の半導体装置では封止に使用される樹脂の応力によって特性変動が生じる場合もある。このような電子部品をパッケージングする際には、その動作部となる電子部品表面を空洞化させた中空パッケージが用いられている。例えばSAWフィルタ等では金属キャップにより封止する構造のものや、素子表面に中空構造をとりながら樹脂を用いて封止する構造のものが種々提案されている。このうち、樹脂を用いて封止する構造の中空パッケージは、薄型化に適し、製造コストが低く抑えられるという利点がある。
【0003】
ところで、樹脂を用いて封止する場合には、中空構造とする電子部品表面に封止樹脂が付着してしまうと、特性不具合が発生する。そこで、中空構造の内部に樹脂が入り込まないようにする方法が提案されている。その一つの方法は、樹脂止めとなるダムを形成する方法(例えば特許文献1)であり、別の方法は、樹脂フィルムを用いる方法(例えば特許文献2)である。このうち、後者は量産性に適した方法である。
【0004】
以下、後者の方法について具体的に説明する。まず、所定の配線パターン(図示せず)が形成された実装基板101上に、チップ102がバンプ電極103を介してフリップチップ実装されている。ここで、メカニカルな動作が行われるチップ102の表面は、実装基板101側に向けて配置されている(図10a)。
【0005】
次にチップ102を樹脂フィルム層104で覆うため、樹脂フィルム貼り付け用下型105と樹脂フィルム貼り付け用上型106との間に、チップ102を実装した実装基板101と樹脂フィルム層104を配置する(図10b)。樹脂フィルム貼り付け用下型105および樹脂貼り付け用上型106には、それぞれ貫通孔107が形成されている。
【0006】
樹脂フィルム貼り付け用下型105と樹脂フィルム貼り付け用上型106とを接合させ、伸縮性のある樹脂フィルム層104とチップ102との間に残る空気を樹脂フィルム貼り付け用下型105に形成された貫通孔107を通して排出することで、樹脂フィルム層104がチップ102表面に沿って密着する。樹脂フィルム貼り付け用上型106の貫通孔107からキャビティ108内に圧力を加えることで、密着性を更に増すこともできる(図10c)。
【0007】
その後、チップ102に密着した樹脂フィルム層104に紫外線を照射させたり、熱を加えることで硬化させる(図10d)。
【0008】
その後樹脂封止を行うため、樹脂封止用下型109と樹脂封止用上型110との間に形成されるキャビティ111内に、チップ102を実装し、その表面を樹脂フィルム層104で被覆した実装基板101を載置して、封止樹脂を注入する。このとき樹脂フィルム層104によってチップ102表面に封止樹脂が流入することはない。その後、注入した封止樹脂を硬化させることで、樹脂フィルム層104上に封止樹脂112が形成される(図11a)。
【0009】
樹脂封止用下型109および樹脂封止用上型110を取り外し(図11b)、封止樹脂112、樹脂フィルム層104および実装基板101を切断して個片化することで、中空構造を備えた電子部品を形成することができる(図11c)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−134592号公報
【特許文献2】特開2005−302835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電子部品の信頼性を保つためには、樹脂フィルム層104と実装基板101とが十分に密着することが重要である。しかし、上記の方法では、例えば樹脂フィルム層104とバンプ電極103との間等に隙間が残ったり、樹脂フィルム層104の貼り付けが均一にならずに、シワが残り、樹脂フィルム層104と実装基板101との間に隙間が残ってしまう場合がある。このような状態でダイシングソーを用いて個片化すると、樹脂フィルム層104と実装基板101の間のわずかな隙間から水分等が侵入してしますおそれがある。
【0012】
このような問題を解消し、実装基板と封止樹脂との密着性を保持するためには、封止樹脂の一部が実装基板とチップとの間に流れ込むのが好ましい。一方で、封止樹脂が必要以上に流れ込むと、電子部品の特性劣化を招いてしまう。そこで本発明は、封止樹脂の流れ込みを制御することができる電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、チップをリードフレームに実装し、樹脂封止した電子部品において、前記リードフレームは、チップ実装面に、前記チップ表面に対向する空間形成部と前記チップ表面に形成された電極と接続するチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えており、前記空間形成部、前記チップ電極接続端子および前記外部接続端子間にプリモールド樹脂が充填され、少なくとも前記空間形成部と前記チップ電極接続端子との間に充填された前記プリモールド樹脂の表面の高さが前記空間形成部の表面の高さより低く形成されていることにより、前記空間形成部表面と前記プリモールド樹脂表面との間に段部が形成されていることと、前記チップ電極接続端子と前記チップ表面に形成された電極が接続されていることと、前記チップ実装面表面の前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上が封止樹脂により被覆され、前記チップ表面と前記リードフレームの実装面との間の前記段部に前記封止樹脂の一部が入り込んでいるとともに、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間が残るように封止されていることを特徴とする。
【0014】
本願請求項2に係る発明は、チップをリードフレームに実装し、樹脂封止する電子部品の製造方法において、チップ実装面に、空間形成部および実装する前記チップの電極と接続されるチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えたリードフレームを用意する工程と、チップ実装面の前記リードフレーム表面はフィルム材を介した状態で、前記リードフレームをプリモールド用金型で挟持することにより、少なくとも前記チップ実装面の前記空間形成部と前記チップ電極接続端子との間隙に前記フィルム材を突出させた状態で、前記リードフレームの前記空間形成部、前記チップ電極接続端子および前記外部接続端子の間に、前記フィルム材の突出した形状に沿ってプリモールド樹脂を充填し、プリモールドリードフレームを形成する工程と、前記チップ表面が、前記空間形成部に対向するように前記チップ電極接続端子と前記チップ表面に形成された電極を接続する工程と、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を被覆し、前記チップ表面と前記リードフレームの実装面との間に封止樹脂を注入するとともに、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間を残すように樹脂封止を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本願請求項3に係る発明は、請求項2記載の電子部品の製造方法において、樹脂封止する工程は、減圧状態で、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を樹脂シートで被覆し、前記減圧状態を破り常圧状態にすることにより前記樹脂シートを加圧し、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記空間形成部との間に空間を残すように樹脂封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子部品は、チップ電極接続端子とチップ表面に形成された電極との接続部分が封止樹脂によって被覆されているため、耐湿性、耐振動性などの信頼性が向上できる。またこのような構造を採ることで、チップ表面に形成された電極をアルミニウムで構成することができ、高価な金を使用する必要がなくなり、製造コストを抑えることができるという利点がある。
【0017】
本発明の製造方法による電子部品は、封止樹脂が段部まで流れ込み、気密性を保つとともに、段部が樹脂溜まりとして機能し、それ以上内部に侵入することをないため、信頼性を保ち、しかも特性劣化の発生を防止することが可能となる。
【0018】
特に本発明によれば、樹脂封止工程において、リードフレームのチップ実装面を樹脂シートで被覆し、樹脂シートをリードフレームに密着させる際の減圧条件を調整することによって、減圧状態を破り常圧状態にしたときに残る空間の容積を制御することができる。その結果、段部に流れ込む樹脂の量を簡便に制御できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の電子部品の説明図である。
図2】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図3】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図4】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図5】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図6】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図7】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図8】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図9】本発明の電子部品の製造方法の説明図である。
図10】従来のこの種の電子部品の説明図である。
図11】従来のこの種の電子部品の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電子装置は、空間形成部を備えたプリモールドリードフレームに、電子部品表面が空間形成部に対向するように実装し、樹脂封止する構造となっている。また封止樹脂の一部は、プリモールド樹脂の段部によって形成された空間まで流入し、段部に溜まることでそれ以上の流入が止まり、電子部品表面と空間形成部との間に空間が残る構造となっている。
【0021】
本発明の電子部品の製造方法は、プリモールド樹脂を形成する際、樹脂溜まりとして機能する段部を形成することで、封止樹脂がチップ表面と空間形成部との間に深く入り込むことを防ぐ構造を形成することができる。また段部は、チップ表面の電極とチップ電極接続端子との接続部より内側に位置するため、その接続部は封止樹脂により被覆される構造を形成することができる。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の電子部品の説明図である。図1において1は電子部品本体、2はチップ、3はチップ電極、4はバンプ電極、5はリードフレーム、6は空間、7は空間形成部、8はバンプ電極4を介してチップ2の表面に形成された電極と接続し、空間形成部7を取り囲むように複数個形成されているチップ電極接続端子、9はリードフレーム5の裏面側に露出し、パッケージ本体1の周囲に沿って複数個形成されている外部接続端子、10はプリモールド樹脂、11は空間形成部7およびチップ電極接続端子11の表面の高さとプリモールド樹脂10の表面の高さとの間に生じる段部、12は封止樹脂である。
【0023】
チップ2の表面には、メカニカル動作をしたり、通常の樹脂封止ではその応力によって特性変動が起きてしまう回路等が形成されている。
【0024】
リードフレーム5は、チップ実装面に、チップ2の表面に形成されたチップ電極3とバンプ電極4を介して接続するチップ電極接続端子8が形成されており、チップ実装面の裏面の外部実装面には、外部接続端子9が形成されている。また、空間形成部7、チップ電極接続端子8および外部接続端子9の間にはプリモールド樹脂10が充填されている。ここで、チップ実装面のプリモールド樹脂10表面の高さは、空間形成部7やチップ電極接続端子8表面の高さより低くなっており、段部11が形成されている。また図1には図示されていないが、空間形成部7を取り囲むように形成された複数のチップ電極接続端子8の内、隣接する2つの端子間に充填されたプリモールド樹脂の高さも低く形成されており、チップ電極接続端子8を取り囲むように段部11が形成されている。本発明は、この段部11により拡げられた空間に封止樹脂が留まり、封止樹脂12がチップ2の下側の奥深くまで入り込むことを防止し、チップ2表面と空間形成部7との間に空間6が残るように構成している。なお、図1では、封止樹脂12の一部が空間形成部7上に一部乗り上げた状態に図示しているが、必ずしもこのような形状とすることが必須ではない。
【0025】
次に本発明の電子部品の製造方法について説明する。まず、リードフレームについて説明する。図2は本発明に使用するリードフレームの一例の一部を拡大した図で、図2(a)はチップ実装面の、図2(b)は外部実装面の一部拡大図である。図2(a)に示すように、チップ実装面には、空間形成部7と、これを取り囲むようにチップ表面に形成された電極と接続するチップ電極接続端子8が形成されている。図2(a)では、10個のチップ電極接続端子8が形成されている。一般的なリードフレーム同様、各端子間には連結部13が形成されており、空間形成部7と連結部13との間には吊りピンが形成されている。また図2(b)に示すように、チップ実装面の裏面の外部実装面には、空間形成部7と、これを取り囲むように外部接続端子9が形成されている。図2(b)では、10個の外部接続端子が形成されている。
【0026】
このリードフレームは、板厚が0.2mm程度で、所望のパターニングを行った後、両面からエッチングすることで、図2に示すパターンが形成される。また樹脂によるプリモールドの際の樹脂の流動性を高めるため、空間形成部7に繋がる吊りピンおよび連結部13は、一方の面(例えばチップ実装面)側から板厚の半分程度までハーフエッチングされている。なお、図示は省略しているが、通常の樹脂封止同様、ゲート部やエアベント部にもハーフエッチングされている。
【0027】
次にリードフレームのプリモールド工程について説明する。まず、リードフレーム5の外部実装面側に、プリモールドテープ14の接着面を貼り付ける。このプリモールドテープ14は、厚さ30μm程度で耐熱性に優れた材料からなり、具体的には、ポリイミドテープ、ポリエチレンテレフタレートテープを使用することで200℃以上の耐熱性が得られる。図3に示すように、プリモールドテープ14は、プリモールドの際の樹脂漏れを防止し、リードフレーム5が金型16に吸着することを可能としている。プリモールドテープ14の接着剤は、UV光を照射することで接着力が低下するものを使用すると、後述するプリモールドテープ14を剥離する際、好適である。
【0028】
またリードフレーム5のチップ実装面側は、プリモールドフィルム15を介して金型16に挟持される。このプリモールドフィルム15は、厚さ50μm程度で通常のプリモールド工程に使用される樹脂フィルムであり、具体的にはフッ素系フィルムであるフレックス50HK(旭硝子社製)を使用することができる。図3に示すように、プリモールドフィルム15は、金型16に挟持されることで、リードフレーム5に形成された空間形成部7とチップ電極接続端子8の間隙の空間に入り込む(突出する)ことになる。このようにプリモールドフィルム15が変形することで、後述する段部が形成される。この段部は空間形成部7およびチップ電極接続端子8の表面より、20μm程度リードフレーム側に入り込む。
【0029】
このようにリードフレームをプリモールドテープ14およびプリモールドフィルム15を介して金型16で挟持した状態で、プリモールド樹脂10を注入、硬化させる。その結果、図3に示すように、プリモールドテープ14とプリモールドフィルム15との間の間隙にプリモールド樹脂10が充填される。プリモールド樹脂10は、リードフレーム5の板厚以下の狭い通路(連結部13のハーフエッチング部分)や端子間を通り、リードフレーム基板全体に充填させるため、例えばスパイラルフロー200cm程度の流動性の高い樹脂を使用するのが好ましい。本発明によれば、プリモールドフィルム15の形状に沿ってプリモールド樹脂が充填されるため、段部11が形成されることになる。
【0030】
金型16およびプリモールドフィルム15を取り外し、露出したリードフレーム5のチップ電極接続端子8にチップ2の表面に形成されたチップ電極3を金で形成したバンプ電極4を介してフリップチップ接続する(図4)。このような接続構造とすることで、チップ2表面は、空間形成領域7に対向する構造となる。
【0031】
次に、樹脂封止を行う。まず、センサチップ2を実装したリードフレーム5を減圧容器17内の加熱プレート18上に載置し、減圧容器17内を1×104Pa程度まで減圧する。樹脂シート19およびダイシングテープ20は、減圧させた状態で、ローラー21を使い周囲を隙間無く貼り付ける(図5)。ここで使用する樹脂シート19は、流動性の少ない樹脂を選択する。一例としてナガセケムテックス社製のA2029を使用した。またダイシングテープ20は、後述する個片化後に電子部品を配列保持するためのテープであり、塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)基材等からなる一般的なダイシングテープを使用することができる。この貼り付けの際、加熱プレート18で80℃程度に加熱される。
【0032】
その後、減圧容器17を大気圧に戻すと、樹脂シート19で囲まれる内部の圧力と外部の圧力差により樹脂シート19が隙間に入り込み樹脂封止されることになる。図6は、樹脂封止された状態を示す図である。図6に示すように、樹脂シート19が隙間に流入して封止樹脂12が形成される。ここで封止樹脂12の一部は、プリモールド樹脂10上まで流入してくる。しかし本発明では、プリモールド樹脂10表面に形成された段部11が樹脂溜まりとして機能し、さらに、空間6は樹脂シート19によって密閉された空間であるため、封止樹脂12の隙間への流入は所定の位置で止まり、空間6が残ることになる。なお、空間6が容積は、図5で説明した減圧容器内の圧力や、使用する樹脂シート19の種類、さらに加熱プレート18による加熱条件、接合後のバンプ6の高さ等を変えることで、再現性良く制御することができる。
【0033】
個片化は、通常の方法により行う。即ち、封止樹脂12表面に接着したダイシングテープ20面の反対側から、ダイシングソー22を用いて個片化する。この個片化は、水をかけながらダイシングソー22を回転させて切断する。このときダイシングソー22はリードフレーム5、封止樹脂12を切断し、ダイシングテープ20に達する。プリモールドテープ14はリードフレーム5に密着しており、ダイシングソー22が、リードフレーム5の連結部を切断して電極を形成する際に、電極部にバリ等が発生することが防止できる。
【0034】
次にプリモールドテープ14にUV光を照射して接着強度を低下させた後、低下した接着強度より強い接着力を有する別のテープ材23をプリモールドテープ14上に貼り付け、別のテープ材23とともにプリモールドテープ14を剥離、除去する。プリモールドテープ14の除去により、リードフレーム5の外部実装面の外部接続端子9が露出する。この状態から個片化された電子部品をそれぞれピックアップして所望の実装を行うことができる。
【0035】
以下、通常の方法で電子部品の性能テストを行う。図9に示すように、コンタクトプローブ24をチップ電極接続端子9に接触させ、冷熱プレート25によって所望の温度に設定された条件で測定を行う。
【0036】
以上説明したように本発明によれば、樹脂を用いて中空パッケージ構造を簡便に形成することが可能となる。なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更することが可能である。例えば、プリモールド工程において、リードフレームにプリモールドテープを接着させ、個片化後に剥離する場合について説明したが、プリモールドテープをリードフレームに接着させることは必ずしも必要なく、プリモールドの際、樹脂漏れを防止し、リードフレームが金型に吸着することを防止できれば、他のフィルム材等に変えることも可能である。また、プリモールドテープを個片化前に剥離しても良い。
【符号の説明】
【0037】
1、102: 電子部品、2:チップ、3:チップ電極、4、103:バンプ電極、5:リードフレーム、6:空間、7:空間形成部、8:チップ電極接続端子、9:外部接続端子、10:プリモールド樹脂、11:段部、12、112:封止樹脂、13:連結部、14:プリモールドテープ、15:プリモールドフィルム、16:金型、17:減圧容器、18:加熱プレート、19:樹脂シート、20:ダイシングテープ、21:ローラー、22:ダイシングソー、23:別のテープ材、24:コンタクトプローブ、25:冷熱プレート、101:実装基板、104樹脂フィルム層、105:樹脂フィルム貼り付け用下型、106:樹脂フィルム貼り付け用上型、107:貫通孔、108:キャビティ、109:樹脂封止用下型、110:樹脂封止用上型、111:キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11