【実施例1】
【0024】
まず、本発明の実施例について圧力センサを例にとり、詳細に説明する。
図1は本発明の圧力センサの説明図で、貫通孔を通る面の断面図である。
図1において1はセンサ本体、2はセンサチップ、3はキャビティ、4はダイアフラム、5はセンサチップ電極、6はバンプ電極、7はリードフレーム、8は空間、9は貫通孔形成部、10は貫通孔、11はバンプ電極6を介してセンサチップ2の表面に形成された電極と接続し、貫通孔形成部9を取り囲むように複数個形成されているセンサチップ電極接続端子、12はリードフレーム7の裏面側に露出し、センサ本体1の周囲に沿って複数個形成されている外部接続端子、13はプリモールド樹脂、14は貫通孔形成部9およびセンサチップ電極接続端子11表面の高さとプリモールド樹脂13表面の高さとの間に生じる段部、15は封止樹脂である。
【0025】
センサチップ2には、従来例で説明したセンサチップ同様、真空状態の空間部からなるキャビティ3が形成されており、ダイアフラム4が、センサチップ2とリードフレーム7との間の空間8の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム4上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。
【0026】
ここで本発明では、リードフレーム7のセンサチップ2に対向する部分、即ち通常のリードフレームにおいてダイアイランドに相当する部分に貫通孔10を備えた貫通孔形成部9が形成されている。この貫通孔10は直径が0.2mm(開口面積0.031mm
2)程度の円形とすることで、センサチップ2の高速応答性を確保している。
【0027】
また、リードフレーム7のチップ実装面には、貫通孔形成部9のほか、センサチップ2の表面に形成されたセンサチップ電極5とバンプ電極6を介して接続するセンサチップ電極接続端子11が形成されており、チップ実装面の裏面の外部実装面には、外部接続端子12が形成されている。また、貫通孔形成部9、センサチップ電極接続端子11および外部接続端子12の間にはプリモールド樹脂13が充填されている。ここで、チップ実装面のプリモールド樹脂13の表面の高さは、貫通孔形成部9やセンサチップ電極接続端子11の表面の高さより低くなっており、段部14が形成されている。また
図1には図示されていないが、貫通孔形成部9を取り囲むように形成された複数のセンサチップ電極接続端子11の内、隣接する2つの端子間に充填されたプリモールド樹脂の高さも低く形成されており、センサチップ電極接続端子11を取り囲むように段部14が形成されている。本発明は、この段部14により拡げられた空間に封止樹脂が留まり、封止樹脂15がセンサチップ2の下側の奥深くまで入り込むことを防止し、センサチップ2表面と貫通孔形成部9との間に空間8が残り、この空間8は貫通孔10を通してセンサ装置外部と連通するように構成している。なお、
図1では、封止樹脂15の一部が貫通孔形成部9上に一部乗り上げた状態に図示しているが、必ずしもこのような形状とすることが必須ではない。
【0028】
次に本発明の圧力センサの製造方法について説明する。まず、リードフレームについて説明する。
図2は本発明に使用するリードフレームの一例の一部を拡大した図で、
図2(a)はチップ実装面の、
図2(b)は外部実装面の一部拡大図である。
図2(a)に示すように、チップ実装面には、貫通孔10を備えた貫通孔形成部9と、これを取り囲むようにセンサチップ表面に形成された電極と接続するセンサチップ電極接続端子11が形成されている。
図2(a)では、10個のセンサチップ電極接続端子11が形成されている。一般的なリードフレーム同様、各端子間には連結部16が形成されており、貫通孔形成部9と連結部16との間には吊りピンが形成されている。また
図2(b)に示すように、チップ実装面の裏面の外部実装面には、貫通孔10を備えた貫通孔形成部9と、これを取り囲むように外部接続端子12が形成されている。
図2(b)では、10個の外部接続端子が形成されている。
【0029】
このリードフレームは、板厚が0.2mm程度で、所望のパターニングを行った後、両面からエッチングすることで、
図2に示すパターンが形成される。また樹脂によるプリモールドの際の樹脂の流動性を高めるため、貫通孔形成部9に繋がる吊りピンおよび連結部16は、一方の面(例えばチップ実装面)側から板厚の半分程度までハーフエッチングされている。
【0030】
次にリードフレームのプリモールド工程について説明する。まず、リードフレーム7の外部実装面側に、プリモールドテープ17(テープ材に相当)の接着面を貼り付ける。このプリモールドテープ17は、厚さ30μm程度で耐熱性に優れた材料からなり、具体的には、ポリイミドテープ、ポリエチレンテレフタレートテープを使用することで200℃以上の耐熱性が得られる。
図3に示すように、プリモールドテープ17は、貫通孔10を塞ぎ、プリモールドの際の樹脂漏れを防止し、リードフレームが金型19に吸着することを可能としている。プリモールドテープ17の接着剤は、UV光を照射することで接着力が低下するものを使用すると、後述するプリモールドテープ17を剥離する際、好適である。
【0031】
またリードフレーム7のチップ実装面側は、プリモールドフィルム18(フィルム材に相当)を介して金型19に挟持される。このプリモールドフィルム18は、厚さ50μm程度で通常のプリモールド工程に使用される樹脂フィルムであり、具体的にはフッ素系フィルムであるフレックス50HK(旭硝子社製)を使用することができる。
図3に示すように、プリモールドフィルム18は、金型19に挟持されることで、リードフレームに形成された貫通孔形成部9とセンサチップ電極接続端子11の間隙の空間に入り込む(突出する)ことになる。このようにプリモールドフィルム18が変形することで、後述する段部が形成される。この段部は貫通孔形成部9およびセンサチップ電極接続端子11の表面より、20μm程度入り込む。
【0032】
このようにリードフレームをプリモールドテープ17およびプリモールドフィルム18を介して金型で挟持した状態で、プリモールド樹脂13を注入、硬化させる。その結果、
図3に示すように、プリモールドテープ17とプリモールドフィルム18との間の間隙にプリモールド樹脂13が充填される。プリモールド樹脂13は、リードフレーム7の板厚以下の狭い通路(連結部16のハーフエッチング部分)や端子間を通り、リードフレーム基板全体に充填させるため、例えばスパイラルフロー200cm程度の流動性の高い樹脂を使用するのが好ましい。本発明によれば、プリモールドフィルム18の形状に沿ってプリモールド樹脂が充填されるため、段部14が形成されることになる。
【0033】
金型19およびプリモールドフィルム18を取り外し、露出したリードフレーム7のセンサチップ電極接続端子11にセンサチップ2の表面に形成されたセンサチップ電極5を金で形成したバンプ電極6を介してフリップチップ接続する(
図4)。このような接続構造とすることで、センサチップ2に形成されているキャビティ3が貫通孔10に対向する構造となる。
【0034】
次に、樹脂封止を行う。まず、センサチップ2を実装したリードフレーム7を減圧容器20内の加熱プレート21上に載置し、減圧容器20内を1×10
4Pa程度まで減圧する。樹脂シート22およびダイシングテープ23は、減圧された状態で、ローラー24を使い周囲を隙間無く貼り付ける(
図5)。ここで使用する樹脂シート22は、流動性の少ない樹脂を選択する。一例としてナガセケムテックス社製のA2029を使用した。またダイシングテープ23は、後述する個片化後にセンサ装置を配列保持するためのテープであり、塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)基材等からなる一般的なダイシングテープを使用することができる。この貼り付けの際、加熱プレート21で80℃程度に加熱される。
【0035】
その後、減圧容器20を大気圧に戻すと、樹脂シート22で囲まれる内部の圧力と外部の圧力差により樹脂シート22が隙間に入り込み樹脂封止されることになる。
図6は、樹脂封止された状態を示す図である。
図6に示すように、樹脂シート22が隙間に流入して封止樹脂15が形成される。ここで封止樹脂15の一部は、プリモールド樹脂13上まで流入してくる。しかし本発明では、プリモールド樹脂13表面に形成された段部14が樹脂溜まりとして機能し、さらに貫通孔10は、プリモールドテープ17によって塞がれているため、封止樹脂15の隙間への流入は所定の位置で止まり、空間8が残ることになる。なお、空間8の容積は、
図5で説明した減圧容器内の圧力や、使用する樹脂シート22の種類、さらに加熱プレート21による加熱条件、接合後のバンプ6の高さ等を変えることで、再現性良く制御することができる。
【0036】
個片化は、通常の方法により行う。即ち、封止樹脂15表面に接着したダイシングテープ23面の反対側から、ダイシングソー25を用いて個片化する。この個片化は、水をかけながらダイシングソー25を回転させて切断する。このときダイシングソー25はリードフレーム7、封止樹脂15を切断し、ダイシングテープ23に達する。プリモールドテープ17はリードフレーム7に密着しており、貫通孔10はプリモールドテープ17によって被覆された状態が保たれることになる。その結果、貫通孔10内に水や切断屑26が入り込むことはない。また、リードフレーム7にはプリモールドテープ17が接着しているため、ダイシングソー25が、リードフレーム7の連結部を切断して電極を形成する際に、電極部にバリ等が発生することが防止できる。
【0037】
次にプリモールドテープ17にUV光を照射して接着強度を低下させた後、低下した接着強度より強い接着力を有する別のテープ材27をプリモールドテープ17上に貼り付け、別のテープ材27とともにプリモールドテープ17を剥離、除去する。プリモールドテープ17の除去により、貫通孔10は、外部と連通し、圧力センサとして機能することになる。この状態から個片化された圧力センサをそれぞれピックアップして所望の実装を行うことができる。このように本発明によれば、MAP方式により開口部を備えた圧力センサを形成することが可能となった。
【実施例2】
【0038】
次に、圧力センサの製造工程中で性能テストを行う場合について説明する。実施例1で説明したように、ダイシングテープ23上に個片化された圧力センサが整列した状態となったところで、性能テストを行う。通常の半導体集積回路における電気特性のテストと異なり、圧力センサに所望の圧力が印加された状態で性能テストを行う。例えば、
図9に示すコンタクトプローブ28、冷熱プレート29を含むテスト装置を圧力を可変できるボックス内に収納し、所望の圧力印加時の圧力センサの出力を測定し、圧力センサの良否判定を行う。本発明の圧力センサは、プリモールドテープ17上に整列した状態となっているため、コンタクトプローブ26をセンサチップ電極接続子11に接触させ、通常の方法で特性テストを行うことが可能となる。
【0039】
パッケージ本体にクラックや剥離等が発生している場合、この性能テスト工程で不良品として選別することができる。
【0040】
図9に示すような冷熱プレート29上に圧力センサを載置してウエハテストを行う場合、ダイシングテープ23としてPVCやPO基材を選択すると、70℃〜−20℃程度の温度範囲で可変することが可能となる。ダイシングテープ23は、図示しない吸着手段によって冷熱プレート29上に固定しても良い。また減圧状態でテストすることで、吸着手段による固定が不十分となる場合には、機械的な固定手段により固定しても良い。冷熱プレート29は、ペルチェ素子や恒温液体を流す配管を埋め込んだステンレス材等の金属で構成することで、特性テストを行う圧力センサを所望の温度に、迅速かつ安定に到達させることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施例について圧力センサを例にとり説明したが、本発明のセンサ装置は圧力センサに限定されるものではなく、パッケージ内部に搭載するセンサチップの種類を種々変更することで、湿度センサ等、センサ内に外部の物理量を導入して検知するためにパッケージに開口部を備える必要のあるセンサに適用することができる。