特許第6266351号(P6266351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266351
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】センサ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20180115BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G01L9/00 303K
   G01N27/12 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-1488(P2014-1488)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129688(P2015-129688A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平 知晃
(72)【発明者】
【氏名】緒方 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 敏史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 真吾
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0139067(US,A1)
【文献】 特開2010−87221(JP,A)
【文献】 特開2010−25843(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0314095(US,A1)
【文献】 特開平11−97469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
G01N27/12
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップをリードフレームに実装し、樹脂封止したセンサ装置において、
前記リードフレームは、チップ実装面に、センサ装置外部と連通する貫通孔を備えた貫通孔形成部と前記センサチップ表面に形成された電極と接続するセンサチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えており、前記貫通孔形成部、前記センサチップ電極接続端子および前記外部接続端子間にプリモールド樹脂が充填され、少なくとも前記貫通孔形成部と前記センサチップ電極接続端子との間に充填された前記プリモールド樹脂の表面の高さが前記貫通孔形成部の表面の高さより低く形成されていることにより、前記貫通孔形成部表面と前記プリモールド樹脂表面との間に段部が形成されていることと、
前記センサチップ電極接続端子と前記センサチップ表面に形成された電極が接続されていることと、
前記チップ実装面表面の前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記センサチップ上が封止樹脂により被覆され、前記センサチップ表面と前記リードフレームの実装面との間の前記段部に前記封止樹脂の一部が入り込んでいるとともに、前記センサチップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間が残り、該空間は前記貫通孔によりセンサ装置外部と連通するように封止されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
センサチップをリードフレームに実装し、樹脂封止するセンサ装置の製造方法において、
チップ実装面に、センサ装置外部と連通する貫通孔を備えた貫通孔形成部および実装する前記センサチップの電極と接続されるセンサチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えたリードフレームを用意する工程と、
少なくとも外部実装面の前記リードフレーム表面はテープ材を貼り前記貫通孔を塞ぎ、チップ実装面の前記リードフレーム表面はフィルム材を介した状態で、前記リードフレームをプリモールド用金型で挟持することにより、少なくとも前記チップ実装面の前記貫通孔形成部と前記センサチップ電極接続端子との間隙に前記フィルム材を突出させた状態で、前記リードフレームの前記貫通孔形成部、前記センサチップ電極接続端子および前記外部接続端子の間に、前記フィルム材の突出した形状に沿ってプリモールド樹脂を充填し、プリモールドリードフレームを形成する工程と、
前記センサチップ表面が、前記貫通孔に対向するように前記センサチップ電極接続端子と前記センサチップ表面に形成された電極を接続する工程と、
前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記センサチップ上を被覆し、前記センサチップ表面と前記リードフレームの実装面との間に封止樹脂を注入するとともに、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記センサチップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間を残すように樹脂封止を行う工程と、
前記リードフレームの外部実装面側から、前記テープ材により前記貫通孔を塞いだ状態で個片化する工程と、を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のセンサ装置の製造方法において、樹脂封止する工程は、減圧状態で、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を樹脂シートで被覆し、前記減圧状態を破り常圧状態にすることにより前記樹脂シートを加圧し、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間を残すように樹脂封止することを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3いずれか記載のセンサ装置の製造方法において、前記個片化する工程は、前記封止樹脂にダイシング用テープ材を貼り付ける工程を含み、前記個片化工程の後、前記リードフレームの外部実装面から前記テープ材を剥離し、前記貫通孔を通してセンサ装置内部の空間と外部とが連通した状態で、前記ダイシング用テープ材上に個片化したセンサ装置を整列配置する工程を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のセンサ装置の製造方法において、前記ダイシング用テープ材上に整列配置したセンサ装置に、前記センサチップがセンシングする物理量を印加して前記センサ装置の特性テストを行う工程を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサ、圧力センサ等のセンサ装置およびその製造方法に関し、特に湿度、圧力等をパッケージ内に導入する開口部を備えたセンサ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種センサの小型化、軽量化に伴い、携帯用機器への搭載が進んでおり、スマートフォンやヘルスケア機器に温湿度計や気圧計が搭載されてきている。例えば、気圧を測定する圧力センサは、圧力センサチップを中空パッケージに実装し、パッケージの内部と外部を連通させるため、パッケージの一部に開口部を設ける構造となっている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで小型化、軽量化された半導体装置のパッケージを形成する場合、複数のチップを基板上に実装させた後、樹脂により一括封止し、樹脂と実装基板をダイシングソーを用いて切断するMAP(Mold Array Package)方式と呼ばれる方法を採用するのが生産性向上のためには好ましい。一般的に、ダイシングソーを用いて切断を行う場合、切断時に発生する熱を冷却するためにパッケージに冷却水をかけながら切断を行う必要がある。
【0004】
上記特許文献1では、切断方法について言及されていないが、ダイシングソーを用いて切断する方法では、パッケージの開口部からパッケージ内部に水や切削屑が入り込んでしまい好ましくない。
【0005】
このような問題を解消する方法として図10に示す圧力センサパッケージが提案されている。図10において、図10(a)は圧力センサパッケージの断面図、図10(b)は圧力センサパッケージの蓋部を取り外したパッケージ内部の平面図、図10(c)は図10(b)のA−A´面の断面図を示している。図10に示すように、パッケージ本体30内にセンサチップ31が実装され、ワイヤによりセンサチップ31の電極とパッケージの電極とが接続されている。センサチップ31には、図10(a)に示すように真空状態の空間部からなるキャビティ32が形成されており、ダイアフラム33が、パッケージ本体30と蓋部34との間の空間35の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム33上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。また、パッケージ本体30には、図10(b)(c)に示すように、パッケージ外部と連通する圧力導入孔36が形成されている。
【0006】
ここで個片化の際、圧力導入孔36から水、切削屑等の異物が流入するのを防止するため、パッケージ本体30の底面側から、径を小さくした形状となっている。この種のパッケージは特許文献2に開示されており、図10に示す構造の他、圧力導入孔36をパッケージ本体側面に形成するとともに、パッケージ内側から外側に向かった下がる傾斜面を形成する例や、圧力貫通孔に通気樹脂を充填する例も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−64509号公報
【特許文献1】特開2012−207931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来提案されているセンサ用パッケージにおいて、圧力導入孔36から水が侵入しないようにするためには、その直径を0.1mm程度と非常に小さくする必要がある。しかし圧力導入孔36の径が小さくなると、センサ特性への影響が無視できなくなってしまう。
【0009】
また、空気を通し、水を通さない通気樹脂を圧力導入孔に充填することも提案されているが、通気樹脂の存在によって、応答スピード等特性への影響が懸念される。
【0010】
さらにまた、個片化の際、圧力導入孔36に水、切削屑等の異物が混入するのを防止するため、パッケージ本体30の底面側をダイシングテープ等に接着させると、特性テストを行う際には、一旦ダイシングテープを除去し、パッケージ端子37を露出させる必要があるため、別のテープに貼り付け直すか、センサ装置を1個ずつピックアップする必要があり、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を解消し、湿度センサ、圧力センサ等外気を導入する開口部を備えたセンサ装置であって、感度が高く、低コストで製造することができるセンサ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、センサチップをリードフレームに実装し、樹脂封止したセンサ装置において、前記リードフレームは、チップ実装面に、センサ装置外部と連通する貫通孔を備えた貫通孔形成部と前記センサチップ表面に形成された電極と接続するセンサチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えており、前記貫通孔形成部、前記センサチップ電極接続端子および前記外部接続端子間にプリモールド樹脂が充填され、少なくとも前記貫通孔形成部と前記センサチップ電極接続端子との間に充填された前記プリモールド樹脂の表面の高さが前記貫通孔形成部の表面の高さより低く形成されていることにより、前記貫通孔形成部表面と前記プリモールド樹脂表面との間に段部が形成されていることと、前記センサチップ電極接続端子と前記センサチップ表面に形成された電極が接続されていることと、前記チップ実装面表面の前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記センサチップ上が封止樹脂により被覆され、前記センサチップ表面と前記リードフレームの実装面との間の前記段部に前記封止樹脂の一部が入り込んでいるとともに、前記センサチップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間が残り、該空間は前記貫通孔によりセンサ装置外部と連通するように封止されていること特徴とする。
【0013】
本願請求項2に係る発明は、センサチップをリードフレームに実装し、樹脂封止するセンサ装置の製造方法において、チップ実装面に、センサ装置外部と連通する貫通孔を備えた貫通孔形成部および実装する前記センサチップの電極と接続されるセンサチップ電極接続端子とを備え、前記チップ実装面の裏面側の外部実装面に外部接続端子を備えたリードフレームを用意する工程と、少なくとも外部実装面の前記リードフレーム表面はテープ材を貼り前記貫通孔を塞ぎ、チップ実装面の前記リードフレーム表面はフィルム材を介した状態で、前記リードフレームをプリモールド用金型で挟持することにより、少なくとも前記チップ実装面の前記貫通孔形成部と前記センサチップ電極接続端子との間隙に前記フィルム材を突出させた状態で、前記リードフレームの前記貫通孔形成部、前記センサチップ電極接続端子および前記外部接続端子の間に、前記フィルム材の突出した形状に沿ってプリモールド樹脂を充填し、プリモールドリードフレームを形成する工程と、前記センサチップ表面が、前記貫通孔に対向するように前記センサチップ電極接続端子と前記センサチップ表面に形成された電極を接続する工程と、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記センサチップ上を被覆し、前記センサチップ表面と前記リードフレームの実装面との間に封止樹脂を注入するとともに、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記センサチップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間を残すように樹脂封止を行う工程と、前記リードフレームの外部実装面側から、前記テープ材により前記貫通孔を塞いだ状態で個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本願請求項3に係る発明は、請求項2記載のセンサ装置の製造方法において、樹脂封止する工程は、減圧状態で、前記リードフレームのチップ実装面に露出する前記リードフレーム、前記プリモールド樹脂および前記チップ上を樹脂シートで被覆し、前記減圧状態を破り常圧状態にすることにより前記樹脂シートを加圧し、前記フィルム材の突出形状に沿って形成されたプリモールド樹脂の段部に前記封止樹脂が溜まり、前記チップ表面と前記貫通孔形成部との間に空間を残すように樹脂封止することを特徴とする。

【0015】
本願請求項4に係る発明は、請求項2または3いずれか記載のセンサ装置の製造方法において、前記個片化する工程は、前記封止樹脂にダイシング用テープ材を貼り付ける工程を含み、前記個片化工程の後、前記リードフレームの外部実装面から前記テープ材を剥離し、前記貫通孔を通してセンサ装置内部の空間と外部とが連通した状態で、前記ダイシング用テープ材上に個片化したセンサ装置を整列配置する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本願請求項5に係る発明は、請求項4記載のセンサ装置の製造方法において、前記ダイシング用テープ材上に整列したセンサ装置に、前記センサチップがセンシングする物理量を印加して前記センサ装置の特性テストを行う工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のセンサ装置は、センサチップ電極接続端子とセンサチップ表面に形成された電極との接続部分が封止樹脂によって被覆されているため、耐湿性、耐振動性などの信頼性が向上できる。またこのような構造を採ることで、センサチップ表面に形成された電極をアルミニウムで構成することができ、高価な金を使用する必要がなくなり、製造コストを抑えることができるという利点がある。
【0018】
また、本発明の製造方法によるセンサ装置は、個片化の工程では、パッケージ内部の空間とパッケージ外部を連通する貫通孔は、テープ材(プリモールドテープ17)により被覆されているため、ダイシングソーを用いて切断しても、パッケージ内部に水や切削屑が入り込むことを防止するので、生産性の優れたMAP方式により形成することが可能となった。
【0019】
さらにまた個片化後は、貫通孔を被覆するテープ材を剥離することで、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態となり、しかもダイシング用テープ材(ダイシングテープ23)上に個片化したセンサ装置が外部接続端子を表面に露出して整列した状態となるため、その後の特性テストや実装のピックアップが容易になるという利点がある。
【0020】
特に、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態でダイシング用テープ材上に整列配置されているため、センサチップがセンシングする物理量を印加しながら特性テストを行うことができ、非常に作業性が良いという利点がある。また、MAP方式により一体成形することにより発生する内在応力は、個片化によって開放されているため、センサ装置としての正確な特性テストを行うことができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のセンサ装置の説明図である。
図2】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図3】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図4】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図5】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図6】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図7】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図8】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図9】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図10】従来のこの種のセンサ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のセンサ装置は、貫通孔を設けた貫通孔形成部を備えたプリモールドリードフレームに、センサチップ表面が貫通孔に対向するように実装し、樹脂封止する構造となっている。また封止樹脂の一部は、プリモールド樹脂の段部によって形成された空間まで流入し、段部に溜まることでそれ以上の流入が止まり、センサチップ表面と貫通孔形成部との間に空間が残る構造となっている。
【0023】
本発明のセンサ装置の製造方法は、貫通孔をテープ材で被覆した状態で切断し、個片化するため、生産性の優れたMAP方式を採用することを可能としている。また、プリモールド樹脂を形成する際、樹脂溜まりとして機能する段部を形成することで、封止樹脂がセンサチップ表面と貫通孔形成部との間に深く入り込むことを防ぐ構造を形成することができる。また段部は、センサチップ表面の電極とセンサチップ電極接続端子との接続部より内側に位置するため、その接続部は封止樹脂により被覆される構造を形成することができる。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、本発明の実施例について圧力センサを例にとり、詳細に説明する。図1は本発明の圧力センサの説明図で、貫通孔を通る面の断面図である。図1において1はセンサ本体、2はセンサチップ、3はキャビティ、4はダイアフラム、5はセンサチップ電極、6はバンプ電極、7はリードフレーム、8は空間、9は貫通孔形成部、10は貫通孔、11はバンプ電極6を介してセンサチップ2の表面に形成された電極と接続し、貫通孔形成部9を取り囲むように複数個形成されているセンサチップ電極接続端子、12はリードフレーム7の裏面側に露出し、センサ本体1の周囲に沿って複数個形成されている外部接続端子、13はプリモールド樹脂、14は貫通孔形成部9およびセンサチップ電極接続端子11表面の高さとプリモールド樹脂13表面の高さとの間に生じる段部、15は封止樹脂である。
【0025】
センサチップ2には、従来例で説明したセンサチップ同様、真空状態の空間部からなるキャビティ3が形成されており、ダイアフラム4が、センサチップ2とリードフレーム7との間の空間8の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム4上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。
【0026】
ここで本発明では、リードフレーム7のセンサチップ2に対向する部分、即ち通常のリードフレームにおいてダイアイランドに相当する部分に貫通孔10を備えた貫通孔形成部9が形成されている。この貫通孔10は直径が0.2mm(開口面積0.031mm2)程度の円形とすることで、センサチップ2の高速応答性を確保している。
【0027】
また、リードフレーム7のチップ実装面には、貫通孔形成部9のほか、センサチップ2の表面に形成されたセンサチップ電極5とバンプ電極6を介して接続するセンサチップ電極接続端子11が形成されており、チップ実装面の裏面の外部実装面には、外部接続端子12が形成されている。また、貫通孔形成部9、センサチップ電極接続端子11および外部接続端子12の間にはプリモールド樹脂13が充填されている。ここで、チップ実装面のプリモールド樹脂13の表面の高さは、貫通孔形成部9やセンサチップ電極接続端子11の表面の高さより低くなっており、段部14が形成されている。また図1には図示されていないが、貫通孔形成部9を取り囲むように形成された複数のセンサチップ電極接続端子11の内、隣接する2つの端子間に充填されたプリモールド樹脂の高さも低く形成されており、センサチップ電極接続端子11を取り囲むように段部14が形成されている。本発明は、この段部14により拡げられた空間に封止樹脂が留まり、封止樹脂15がセンサチップ2の下側の奥深くまで入り込むことを防止し、センサチップ2表面と貫通孔形成部9との間に空間8が残り、この空間8は貫通孔10を通してセンサ装置外部と連通するように構成している。なお、図1では、封止樹脂15の一部が貫通孔形成部9上に一部乗り上げた状態に図示しているが、必ずしもこのような形状とすることが必須ではない。
【0028】
次に本発明の圧力センサの製造方法について説明する。まず、リードフレームについて説明する。図2は本発明に使用するリードフレームの一例の一部を拡大した図で、図2(a)はチップ実装面の、図2(b)は外部実装面の一部拡大図である。図2(a)に示すように、チップ実装面には、貫通孔10を備えた貫通孔形成部9と、これを取り囲むようにセンサチップ表面に形成された電極と接続するセンサチップ電極接続端子11が形成されている。図2(a)では、10個のセンサチップ電極接続端子11が形成されている。一般的なリードフレーム同様、各端子間には連結部16が形成されており、貫通孔形成部9と連結部16との間には吊りピンが形成されている。また図2(b)に示すように、チップ実装面の裏面の外部実装面には、貫通孔10を備えた貫通孔形成部9と、これを取り囲むように外部接続端子12が形成されている。図2(b)では、10個の外部接続端子が形成されている。
【0029】
このリードフレームは、板厚が0.2mm程度で、所望のパターニングを行った後、両面からエッチングすることで、図2に示すパターンが形成される。また樹脂によるプリモールドの際の樹脂の流動性を高めるため、貫通孔形成部9に繋がる吊りピンおよび連結部16は、一方の面(例えばチップ実装面)側から板厚の半分程度までハーフエッチングされている。
【0030】
次にリードフレームのプリモールド工程について説明する。まず、リードフレーム7の外部実装面側に、プリモールドテープ17(テープ材に相当)の接着面を貼り付ける。このプリモールドテープ17は、厚さ30μm程度で耐熱性に優れた材料からなり、具体的には、ポリイミドテープ、ポリエチレンテレフタレートテープを使用することで200℃以上の耐熱性が得られる。図3に示すように、プリモールドテープ17は、貫通孔10を塞ぎ、プリモールドの際の樹脂漏れを防止し、リードフレームが金型19に吸着することを可能としている。プリモールドテープ17の接着剤は、UV光を照射することで接着力が低下するものを使用すると、後述するプリモールドテープ17を剥離する際、好適である。
【0031】
またリードフレーム7のチップ実装面側は、プリモールドフィルム18(フィルム材に相当)を介して金型19に挟持される。このプリモールドフィルム18は、厚さ50μm程度で通常のプリモールド工程に使用される樹脂フィルムであり、具体的にはフッ素系フィルムであるフレックス50HK(旭硝子社製)を使用することができる。図3に示すように、プリモールドフィルム18は、金型19に挟持されることで、リードフレームに形成された貫通孔形成部9とセンサチップ電極接続端子11の間隙の空間に入り込む(突出する)ことになる。このようにプリモールドフィルム18が変形することで、後述する段部が形成される。この段部は貫通孔形成部9およびセンサチップ電極接続端子11の表面より、20μm程度入り込む。
【0032】
このようにリードフレームをプリモールドテープ17およびプリモールドフィルム18を介して金型で挟持した状態で、プリモールド樹脂13を注入、硬化させる。その結果、図3に示すように、プリモールドテープ17とプリモールドフィルム18との間の間隙にプリモールド樹脂13が充填される。プリモールド樹脂13は、リードフレーム7の板厚以下の狭い通路(連結部16のハーフエッチング部分)や端子間を通り、リードフレーム基板全体に充填させるため、例えばスパイラルフロー200cm程度の流動性の高い樹脂を使用するのが好ましい。本発明によれば、プリモールドフィルム18の形状に沿ってプリモールド樹脂が充填されるため、段部14が形成されることになる。
【0033】
金型19およびプリモールドフィルム18を取り外し、露出したリードフレーム7のセンサチップ電極接続端子11にセンサチップ2の表面に形成されたセンサチップ電極5を金で形成したバンプ電極6を介してフリップチップ接続する(図4)。このような接続構造とすることで、センサチップ2に形成されているキャビティ3が貫通孔10に対向する構造となる。
【0034】
次に、樹脂封止を行う。まず、センサチップ2を実装したリードフレーム7を減圧容器20内の加熱プレート21上に載置し、減圧容器20内を1×104Pa程度まで減圧する。樹脂シート22およびダイシングテープ23は、減圧された状態で、ローラー24を使い周囲を隙間無く貼り付ける(図5)。ここで使用する樹脂シート22は、流動性の少ない樹脂を選択する。一例としてナガセケムテックス社製のA2029を使用した。またダイシングテープ23は、後述する個片化後にセンサ装置を配列保持するためのテープであり、塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)基材等からなる一般的なダイシングテープを使用することができる。この貼り付けの際、加熱プレート21で80℃程度に加熱される。
【0035】
その後、減圧容器20を大気圧に戻すと、樹脂シート22で囲まれる内部の圧力と外部の圧力差により樹脂シート22が隙間に入り込み樹脂封止されることになる。図6は、樹脂封止された状態を示す図である。図6に示すように、樹脂シート22が隙間に流入して封止樹脂15が形成される。ここで封止樹脂15の一部は、プリモールド樹脂13上まで流入してくる。しかし本発明では、プリモールド樹脂13表面に形成された段部14が樹脂溜まりとして機能し、さらに貫通孔10は、プリモールドテープ17によって塞がれているため、封止樹脂15の隙間への流入は所定の位置で止まり、空間8が残ることになる。なお、空間8の容積は、図5で説明した減圧容器内の圧力や、使用する樹脂シート22の種類、さらに加熱プレート21による加熱条件、接合後のバンプ6の高さ等を変えることで、再現性良く制御することができる。
【0036】
個片化は、通常の方法により行う。即ち、封止樹脂15表面に接着したダイシングテープ23面の反対側から、ダイシングソー25を用いて個片化する。この個片化は、水をかけながらダイシングソー25を回転させて切断する。このときダイシングソー25はリードフレーム7、封止樹脂15を切断し、ダイシングテープ23に達する。プリモールドテープ17はリードフレーム7に密着しており、貫通孔10はプリモールドテープ17によって被覆された状態が保たれることになる。その結果、貫通孔10内に水や切断屑26が入り込むことはない。また、リードフレーム7にはプリモールドテープ17が接着しているため、ダイシングソー25が、リードフレーム7の連結部を切断して電極を形成する際に、電極部にバリ等が発生することが防止できる。
【0037】
次にプリモールドテープ17にUV光を照射して接着強度を低下させた後、低下した接着強度より強い接着力を有する別のテープ材27をプリモールドテープ17上に貼り付け、別のテープ材27とともにプリモールドテープ17を剥離、除去する。プリモールドテープ17の除去により、貫通孔10は、外部と連通し、圧力センサとして機能することになる。この状態から個片化された圧力センサをそれぞれピックアップして所望の実装を行うことができる。このように本発明によれば、MAP方式により開口部を備えた圧力センサを形成することが可能となった。
【実施例2】
【0038】
次に、圧力センサの製造工程中で性能テストを行う場合について説明する。実施例1で説明したように、ダイシングテープ23上に個片化された圧力センサが整列した状態となったところで、性能テストを行う。通常の半導体集積回路における電気特性のテストと異なり、圧力センサに所望の圧力が印加された状態で性能テストを行う。例えば、図9に示すコンタクトプローブ28、冷熱プレート29を含むテスト装置を圧力を可変できるボックス内に収納し、所望の圧力印加時の圧力センサの出力を測定し、圧力センサの良否判定を行う。本発明の圧力センサは、プリモールドテープ17上に整列した状態となっているため、コンタクトプローブ26をセンサチップ電極接続子11に接触させ、通常の方法で特性テストを行うことが可能となる。
【0039】
パッケージ本体にクラックや剥離等が発生している場合、この性能テスト工程で不良品として選別することができる。
【0040】
図9に示すような冷熱プレート29上に圧力センサを載置してウエハテストを行う場合、ダイシングテープ23としてPVCやPO基材を選択すると、70℃〜−20℃程度の温度範囲で可変することが可能となる。ダイシングテープ23は、図示しない吸着手段によって冷熱プレート29上に固定しても良い。また減圧状態でテストすることで、吸着手段による固定が不十分となる場合には、機械的な固定手段により固定しても良い。冷熱プレート29は、ペルチェ素子や恒温液体を流す配管を埋め込んだステンレス材等の金属で構成することで、特性テストを行う圧力センサを所望の温度に、迅速かつ安定に到達させることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施例について圧力センサを例にとり説明したが、本発明のセンサ装置は圧力センサに限定されるものではなく、パッケージ内部に搭載するセンサチップの種類を種々変更することで、湿度センサ等、センサ内に外部の物理量を導入して検知するためにパッケージに開口部を備える必要のあるセンサに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1: センサ本体、2、31:圧力センサチップ、3、32:キャビティ、4、33:ダイアフラム、5:センサチップ電極、6:バンプ電極、7:リードフレーム、8、35:空間、9:貫通孔形成部、10:貫通孔、11:センサチップ電極接続端子、12:外部接続端子、13:プリモールド樹脂、14:段部、15:封止樹脂、16:連結部、17:プリモールドテープ、18:プリモールドフィルム、19:金型、20:減圧容器、21:加熱プレート、22:樹脂シート、23:ダイシングテープ、24:ローラー、25:ダイシングソー、26:切断屑、27:別のテープ材、28:コンタクトプローブ、29:冷熱プレート、30:パッケージ本体、34:蓋部、36:圧力導入孔
図1
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図10