(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266370
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】有価金属の回収処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20180115BHJP
C22B 11/02 20060101ALI20180115BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20180115BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20180115BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20180115BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
C22B7/00 EZAB
C22B11/02
C22B15/00
F27D7/06 C
F27D9/00
B09B3/00 302Z
B09B3/00 303Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-22116(P2014-22116)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147985(P2015-147985A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】生田 有一
(72)【発明者】
【氏名】森 正
(72)【発明者】
【氏名】中堀 賢機
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−222288(JP,A)
【文献】
特開2010−249478(JP,A)
【文献】
特開2009−235464(JP,A)
【文献】
特開2004−090004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
F27D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属を含む貴金属スクラップを熱分解させてガス化する第一の処理炉と、前記第一の処理炉の排出口に連設され、前記第一の処理炉で前記貴金属スクラップをガス化した後の残渣であるガス化減容物をさらに燃焼処理する第二の処理炉と、前記第一の処理炉で発生した可燃性の熱分解ガス及び前記第二の処理炉で発生した燃焼排ガスを完全燃焼させる第三の処理炉を備えて構成される有価金属の回収処理装置において、
前記第二の処理炉内の温度を測定する温度測定手段と、
前記第二の処理炉に設けられ、前記第一の処理炉の排出口に向けて冷却水を散布することにより第二の処理炉内を冷却する散水手段と、
前記温度測定手段により測定された温度が所定の温度以上になった場合に前記散水手段を動作させて炉内温度を所定の範囲に保持する制御手段と、
を備えていることを特徴とする有価金属の回収処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有価金属の回収処理装置において、
前記温度測定手段は、前記第一の処理炉の前記排出口の近傍の前記第二の処理炉に配置されていることを特徴とする有価金属の回収処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有価金属の回収処理装置において、
前記第一の処理炉はキルンであり、前記散水手段は前記キルンの中心に向かって冷却水を散布するようにしたことを特徴とする有価金属の回収処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の有価金属の回収処理装置において、
前記第二の処理炉によって燃焼処理された処理灰を水槽内で冷却しつつ連続的に搬送回収する水封式コンベアを備えていることを特徴とする有価金属の回収処理装置。
【請求項5】
有価金属を含む貴金属スクラップを第一の処理炉で加熱することにより熱分解させてガス化し、ガス化した後の残渣であるガス化減容物を前記第一の処理炉の排出口に連設された第二の処理炉で燃焼処理し、燃焼処理した後の処理灰を有価金属含有滓として回収すると共に、ガス化した可燃性の熱分解ガスを第三の処理炉で完全燃焼させる有価金属の回収処理方法において、
温度測定手段によって前記第二の処理炉内の温度を測定し、前記温度測定手段により測定された炉内の温度が所定の温度以上になった場合には散水手段によって第二の処理炉内に冷却水を散布して所定の範囲に保持することを特徴とする有価金属の回収処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の有価金属の回収処理方法において、
前記温度測定手段による温度の測定は、前記第一の処理炉の前記排出口の近傍の前記第二の処理炉内の温度を測定するものであり、当該温度が980℃以上となった場合に前記散水手段によって前記第一の処理炉の前記排出口に向けて冷却水を散布することにより少なくとも炉内温度が1000℃を超えないようにすることを特徴とする有価金属の回収処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の有価金属の回収処理方法において、
前記第二の処理炉において燃焼処理された処理灰は水封式コンベアの水槽内で冷却しつつ連続的に搬送回収することを特徴とする有価金属の回収処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価金属の回収処理装置及び方法に関し、さらに詳しくは、銅、金、白金などの有価金属を含む電子部品、例えば、パソコン、携帯電話機などの電子基板類、または、OA機器等を破砕、磁選した廃OAスクラップなどから回収される貴金属スクラップから有価金属を回収処理する有価金属の回収処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、OA機器、あるいは携帯電話等を製造する電子部品製造業者や電子基板等の電子部品を利用した製品及び産業から発生するスクラップ類は年々増加を続けている。これらスクラップ類には、電気導体として使われる銅や、接点・メッキ皮膜等に使用された金、銀、白金、パラジウム等の貴金属が含まれており、これら有価金属の回収は資源のリサイクルによる省資源化を図るという観点からも極めて重要である。そのため、これらのスクラップ類(以下、「貴金属スクラップ」という。)は様々な方法によってリサイクルが行われている。
【0003】
貴金属スクラップをリサイクルする方法としては、例えば、特許文献1(特開2003−64425号公報)に示されているように、銅製錬における熔錬炉に銅精鉱と共に装入して処理する方法や、貴金属スクラップを薬剤に浸漬して有機物材料を溶解して含有されている貴金属を得る方法、貴金属スクラップを燃焼炉で燃焼して灰化させ、灰化したものを自溶炉又は転炉で処理することで貴金属を得る方法などがある。
【0004】
特許文献1ではこれまでの貴金属スクラップを燃焼炉で燃焼させて処理する方法は燃焼炉であるロータリーキルンへ投入されて排出されるまでが連続して行われるので貴金属スクラップの焼きむらが起こるおそれがあり、処理設備に大きなスペースを要する等の問題があることから貴金属スクラップを回転・混合機構を有する前処理炉内において400℃で燃焼して灰化させ、砂状粉化させることで焼却物を均一にするという提案がなされている。
【0005】
一方、ロータリーキルンとストーカ炉を組み合わせた燃焼処理炉としては、例えば、特許文献2(特開平10−267239号公報)や特許文献3(特開平9−159131号公報)などがある。
【0006】
また、特許文献4(特開2009−222288号公報)では、貴金属スクラップを熱分解させてガス化し、ガス化した後の残渣であるガス化減容物をさらに第二の処理炉で燃焼処理することで貴金属類が含まれる焼却灰を銅製錬所の中間原料に使用することによって貴金属類のリサイクルを行う貴金属スクラップの処理方法及びその装置が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−64425号公報
【特許文献2】特開平10−267239号公報
【特許文献3】特開平9−159131号公報
【特許文献4】特開2009−222288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の処理方法及び処理装置では、第一の燃焼炉であるロータリーキルンの炉内温度が1000℃を超えると貴金属スクラップに含まれるSiO
2,CaO,Al
2O
3,Cu,Feなどが溶融してクリンカが発生するおそれがある。そして、クリンカが成長すると大きな塊となってロータリーキルンの出口付近やストーカ炉の火格子に固着し、ガス化減容物のストーカ炉への移動やストーカ炉の火格子の動きを阻害すると共に、クリンカの除去作業を余儀なくされ操業効率が低下するなどの不都合が生じるおそれがある。また、処理灰の回収をコンベアによって連続的に行おうとした場合にクリンカが大きな塊となって落下するとコンベアが詰まったり損傷して操業が中断されるおそれもある。
【0009】
また、従来の処理方法及び処理装置では、処理灰の回収は回収ボックスによって行っていたが、回収ボックスによる回収はバッチ式であるため、より操業の効率化を図るためには処理灰を連続的に回収できることが好ましい。
【0010】
そこで、本発明は、クリンカの発生を抑制して適正な操業を維持すると共に、処理灰の回収を連続的に行うことが可能な有価金属の回収装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、
有価金属を含む貴金属スクラップを熱分解させてガス化する第一の処理炉と、前記第一の処理炉の排出口に連設され、前記第一の処理炉で前記
貴金属スクラップをガス化した後の残渣であるガス化減容物をさらに燃焼処理する第二の処理炉と、前記第一の処理炉で発生した可燃性の熱分解ガス及び前記第二の処理炉で発生した燃焼排ガスを完全燃焼させる第三の処理炉を備えて構成される有価金属の回収処理装置において、前記第二の処理炉内の温度を測定する温度測定手段と、前記第二の処理炉に設けられ、前記第一の処理炉の排出口に向けて冷却水を散布することにより第二の処理炉内を冷却する散水手段と、
前記温度
測定手段により測定された温度が所定の温度以上になった場合に前記散水手段を動作させて炉内温度を所定の範囲に保持する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の有価金属の回収処理装置において、温度測定手段は、第一の処理炉の排出口の近傍の第二の処理炉に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の有価金属の回収処理装置において、第一の処理炉はキルンであり、散水手段はキルンの中心に向かって冷却水を散布するようにしたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の有価金属の回収処理装置において、第二の処理炉によって燃焼処理された処理灰を水槽内で冷却しつつ連続的に搬送回収する水封式コンベアを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、
有価金属を含む貴金属スクラップを第一の処理炉で加熱することにより熱分解させてガス化し、ガス化した後の残渣であるガス化減容物を前記第一の処理炉の排出口に連設された第二の処理炉で燃焼処理し、燃焼処理した後の処理灰を有価金属含有滓として回収すると共に、ガス化した可燃性の熱分解ガスを第三の処理炉で完全燃焼させる有価金属の回収処理方法において、温度測定手段によって前記第二の処理炉内の温度を測定し、前記温度測定手段により測定された炉内の温度が所定の温度以上になった場合には散水手段によって第二の処理炉内に冷却水を散布して所定の範囲に保持することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の有価金属の回収処理方法において、温度測定手段による温度の測定は、第一の処理炉の排出口の近傍の第二の処理炉内の温度を測定するものであり、当該温度が980℃以上となった場合に散水手段によって第一の処理炉の排出口に向けて冷却水を散布することにより少なくとも炉内温度が1000℃を超えないようにすることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために請求項7に記載の本発明は、請求項5又は6に記載の有価金属の回収処理方法において、第二の処理炉において燃焼処理された処理灰は水封式コンベアの水槽内で冷却しつつ連続的に搬送回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る有価金属の回収処理装置及び方法によれば、金属スクラップをガス化した後の残渣であるガス化減容物を燃焼処理する第二の処理炉内の温度を温度測定手段によって測定し、その温度が所定の温度以上になった場合に散水手段を動作させて第一の処理炉の排出口に向けて冷却水を散布することにより第二の処理炉内を冷却して炉内温度を所定の範囲に保持することとしたので、クリンカの発生を抑制することができる。これにより、クリンカの除去作業が不要となって操業効率の低下を防止すると共に、ガス化減容物のストーカ炉への移動やストーカ炉の火格子の動きを阻害することがないという効果がある。
【0019】
また、本発明に係る有価金属の回収処理装置及び方法によれば、成長したクリンカが大きな塊として落下するおそれがないのでコンベアに損傷を与えることもなく処理灰を連続的に回収することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る有価金属の回収処理装置の一実施形態の構成図である。
【
図2】ロータリーキルン、ストーカ炉及び二次燃焼炉の縦断面図である。
【
図4】本発明に係る有価金属の回収処理方法一実施形態のフローチャートである。
【
図5】ロータリーキルン内の温度制御を示すフローチャートである。
【
図6】二次燃焼炉の温度制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る有価金属の回収処理装置及び方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明に係る有価金属の回収処理装置の一実施形態の構成図である。図示された有価金属の回収処理装置1(以下「処理装置1」という。)は、概略として、第一の処理炉であるロータリーキルン10と、第二の処理炉であるストーカ炉21aと、第三の処理炉である二次燃焼炉21bを備えて構成されている。
【0022】
ロータリーキルン10は、円筒状の横置き回転炉11を備え、一方側の端面に貴金属スクラップ2aを投入するための投入口12が設けられると共に、それとは反対側の端面には排出口13が設けられている。回転炉11は排出口13側に向かって僅かに傾斜するようにして配置されており、図示しないモータによって回転可能とされている。投入口12の近傍にはバーナ14が配置されており、重油などの燃料を燃焼させることによって炉内に向かって火炎を吹き出し、それによって炉内を加熱することができるようになっている。尚、金属スクラップ2aの熱分解によるガス化は連続して進行するのでバーナ14を常に用いる必要はないが炉内温度が低下した場合にはバーナ14を焚いて炉内を高温に保持する。投入口12の近傍には炉内へ冷却水を散布するための冷却水散布ノズル15が配置され、回転炉11の炉壁前には炉内温度を測定するための温度計15aが取り付けられている。そして、冷却水散布ノズル15、温度計15aさらにバーナ14は、
図3に示すように、後述する制御装置20によりその動作が制御されるようになっている。一般の産業廃棄物等を焼却処理するような場合には一般的に炉内温度は800℃以上の高温に保たれるが、本発明の場合には貴金属スクラップ2aを燃焼させるのではなく、後述するように、炉内へのフリーエアの侵入を阻止しつつ炉内の温度を550〜650℃で保持することによって貴金属スクラップ2aを熱分解し、ガス化させるものである。そして、投入口12から炉内に投入された貴金属スクラップ2aは、高温の雰囲気の中で撹拌されながら排出口13方向へ徐々に移動し、熱分解されて可燃性の熱分解ガスとガス化減容物2bとなる。
【0023】
ここで、ロータリーキルン10に投入する貴金属スクラップ2aは図示しない粉砕機によって所定のサイズに粉砕されて貯留されており、粉砕された貴金属スクラップ2aはトラックでホッパ3内に投入され、パンコンベヤ4により定量切出されており、バケットコンベヤ5及び投入シュート7を介して回転炉11内に投入されるようになっている。また、回転炉11への投入方式は、クレーンバケット等を用いた定量切出しでもよい。
【0024】
回転炉11の排出口13側の端面はストーカ炉21aと連結されており、排出口13から排出されるガス化減容物2bはストーカ炉21aの火格子(ストーカ:以下「火格子」という。)22,22上に落下すると共に、熱分解ガスは第三の処理炉である二次燃焼炉21b内に導入されるようになっている。本発明におけるロータリーキルン10の回転炉11は一般的なものに比べてその長さが短く、具体的には、回転炉11の長さはその内径との比較で表すと内径の1.5〜2.5倍のショートタイプの回転炉11となっている。また、回転炉11の回転速度は図示しない減速機によって少なくとも0.1〜0.5rpmの範囲で回転させることが可能に構成されており、そのような回転数で処理することよって貴金属スクラップ2aのショートパスを防止し、回転炉11内に約40程度保持して加熱分解することが可能とされている。
【0025】
また、回転炉11とストーカ炉21aとの連結部分はフリーエアが侵入しないようにしっかりとシール部材16が嵌挿されている。シール部材16は、リング状のパッキン部材であり、これを図示しないシールリングで押圧することでシール部材16を付勢し、回転炉11の回転によってシール部材16が摩耗した場合でもその隙間を逐次埋めることにより常にシールが完全に行われるようになっている。これによって回転炉11内の貴金属スクラップ2aに対する空気比を0.45以下に保持してその熱分解を促す。
【0026】
ストーカ炉21aは、火格子22,22上に供給されたガス化減容物2bを火格子22,22の下部側から空気を吹き込みながら燃焼処理する燃焼炉であり、炉壁や火炎からの輻射熱や燃焼ガスによる接触伝熱によってガス化減容物2bの焼却処理を行う。火格子22,22の一部は油圧シリンダ25によって可動し、ガス化減容物2bは火格子22,22によって順次下流側に移送されつつ燃焼が行われるようになっている。尚、火格子22,22は水平に配置されているが傾斜していてもよい。これにより、回転炉11から排出されたガス化減容物2bは、ストーカ炉21aの火格子22,22上に落下し、順次下流側へ移動しながら燃焼される。その間、火格子22,22の下側から空気を送り込んでガス化減容物2bに含まれる貴金属以外の物質の完全燃焼を促す。燃焼後の焼却灰2cは有価金属含有滓として下部側に配置された水封コンベア30によって冷却しながら回収される。また、火格子22,22の下部側には火格子22,22からこぼれ落ちたガス化減容物2bも水封式コンベア30によって回収されるようになっている。
【0027】
水封式コンベア30は、燃焼処理された焼却灰2c及び火格子22,22からこぼれ落ちたガス化減容物2bを冷却して搬送排出するコンベアであり、ハウジング31内の両端に配置されたスプロケット33a,33bに架け渡されたチェーン34と、チェーン34に取り付けられた複数のスクレーパ32,32を備えて構成されている。ハウジング31内には冷却水が貯えられた水密の水封部31aが設けられており、燃焼処理された焼却灰2c及び火格子22,22からこぼれ落ちたガス化減容物2bを確実に冷却する。水封部31aの上方側には吸水ノズル37が配置され、ハウジング31の下方側には排水ノズル38が配置されており、冷却水の循環が効果的に行われるようになっている。また、ハウジング31は排出側が冷却水の水面よりも高く位置するように傾斜が設けられており、水封式コンベア30によって冷却された焼却灰2c等はさらに移送コンベア39によって所定の場所まで搬送されるようになっている。焼却灰2c等の冷却は搬送速度等を適宜調整する等によって少なくとも焼却灰2c等の温度が約100℃以下となるようにして行われる。これにより、焼却灰2cは連続的に回収されると共に再度燃え出すことが防止される。そして、回収された焼却灰2cは、例えば、銅製錬所の中間原料として使用することによって貴金属スクラップに含まれる貴金属のリサイクルが図られる。
【0028】
一方、貴金属スクラップ2aを熱分解することによって発生した可燃性の熱分解ガスは、ストーカ炉21aの上部に位置する二次燃焼炉21b内に導入され、二次燃焼炉21bに備えられたバーナ24によって完全燃焼処理される。また、ストーカ炉21aでガス化減容物2bを焼却処理した際に発生する燃焼排ガスも二次燃焼炉21bに送られて熱分解ガスと共に完全燃焼される。ここで、焼却炉におけるダイオキシン類の発生は安定した完全燃焼を行うことによってダイオキシン類及びその前駆体を高温で分解することで抑制できることが知られている。そのため、熱分解ガスの燃焼は900℃以上の温度で行う。
【0029】
回転炉11の出口付近のストーカ炉21a内には温度計17が配置されていると共に、回転炉11の排出口13方向に向けて冷却水を散水する散水装置18が設けられている。そして、上述した冷却水散布ノズル15及び温度計15aと同様に、温度計17及び散水装置18は、
図3に示すように、制御装置20によりその動作が制御されるようになっている。例えば、ストーカ炉21a内に設置している温度計17の温度が980℃を超えたことを検出すると制御装置20は散水装置18を動作させて回転炉11の排出口方向に向かって冷却水を散布し、ストーカ炉21a内の温度が少なくとも1000℃を超えないように制御する。これにより、回転炉11内や後述するストーカ炉21aの火格子22,22にクリンカが固着することを防止することができる。尚、制御装置20は記憶媒体に記憶保存したプログラムを中央処理装置によって処理する公知のコンピュータによって構成することができる。そして、熱分解ガスを燃焼させた後の排ガスは、煙道31によって二次燃焼炉21bと連通された冷却塔40に送られるようになっている。
【0030】
冷却塔40には冷却水を散布するためのノズル41が複数設けられており、ノズル41から冷却水を噴出して煙道31を通って運ばれてきた排ガスに向かって散布することで排ガスの温度が80℃以下になるように一気に冷却する。ダイオキシンの発生要因の一つであるデノボ合成は300℃付近で最も発生しやすいといわれており、その温度帯に長く留まらせることなく一気に通過させることでダイオキシン類の発生を抑制する。80℃以下に冷却された排ガスは洗浄塔45においてアルカリ洗浄液で洗浄され、さらにダクト32を通ってミストコットレル50に運ばれるようになっている。そして、排ガスは、ミストコットレル50によって煤塵やミストが除去された後、排気ダクト33を通って完全に無害化された状態で排気される。尚、好ましい実施形態としてロータリーキルンとストーカ炉を組み合わせた処理装置1について説明したがこれに限定されるものではなく、例えば、第一の処理炉を上記のキルン式ガス化溶融炉とする他、流動床式ガス化溶融炉やシャフト炉ガス化溶融炉などとすることも可能であり、二次燃焼炉を上記のストーカ炉とする他、流動床炉などとすることも可能である。
【0031】
次に、本発明に係る有価金属の回収処理方法について上述した処理装置1の動作と共に説明する。
図4は本発明に係る有価金属の回収処理方法の一実施形態のフローチャートである。
【0032】
初めに、貴金属スクラップ2aは、予め図示しない粉砕機によって所定の大きさに粉砕されて貯留されており、この粉砕された貴金属スクラップ2aをパンコンベヤ4により定量切出し、バケットコンベヤ5及び投入シュート7を介して第一の処理炉であるロータリーキルン10の回転炉11内に投入する(ステップS1)。
【0033】
回転炉11内は、バーナ14によって炉内の温度が予め550〜650℃とされており、投入口12から投入された貴金属スクラップ2aをそのような高温の雰囲気の中でフリーエアの侵入を阻止しつつ、約40分保持することで熱分解されて可燃性の熱分解ガスとガス化減容物2bとなる(ステップS2)。回転炉11内ではバーナ14を消火しても貴金属スクラップ2aの熱分解が連続して進行するので炉内は550〜650℃の温度が維持される。炉内の温度は回転炉11に設けられた温度計15aにより常に監視されるが、炉内温度は以下のように制御される。すなわち、
図5に示すように、貴金属スクラップ2aがロータリーキルン10へ投入されると貴金属スクラップ2aの熱分解が連続して進行する(ステップS10)。そして、温度計15aによって測定された炉内温度が550〜650℃から外れた場合(ステップS11)であって炉内温度が650℃以上であった場合(ステップS12)には制御装置20は冷却水散布ノズル15を動作させて回転炉11内に冷却水を散布して炉内を冷却する(ステップS13)。冷却水の散布により炉内温度が550〜650℃となれば冷却水の散布を終了して処理を維持する(ステップS15)。一方、炉内温度が550℃以下であった場合には制御装置20はバーナ14を点火して(ステップS14)炉内温度を上げる。バーナ14の点火により炉内温度が550〜650℃となればバーナ14を止めて処理を維持する(ステップS15)。
【0034】
回転炉11はその長さが内径の1.5〜2.5倍と通常のものより短いショートタイプのキルンであり、また、貴金属スクラップ2aの加熱分解の際には0.1〜0.5rpmの範囲で回転させることで十分に撹拌し、貴金属スクラップ2aを回転炉11内に約40分保持して十分な加熱分解を行う。ガス化減容物2bは、回転炉11の回転及びその僅かの傾斜により排出口13方向へ徐々に移動して第二の処理炉であるストーカ炉21a内の火格子22,22上に排出される。一方、可燃性の熱分解ガスはストーカ炉21aの上部に位置する二次燃焼炉21b内に導入される。
【0035】
次いで、ロータリーキルン10によって熱分解された金属スクラップ2aはガス化減容物2bとなってストーカ炉21aへ送られ、火格子22,22上でさらに燃焼されながら下流側へ移動する。その間、火格子22,22の下から空気を送り込んでガス化減容物2bに含まれる貴金属以外の可燃物質の完全燃焼を促す(ステップS3)。このとき、
図6に示すように、炉内に投入されたガス化減容物2b(ステップS20)を燃焼処理するストーカ炉21a内の温度を測定するために回転炉11の出口付近に配置した温度計17によって測定された炉内温度が980℃を超える場合には(ステップS21)、制御装置20が散水装置18を動作させて回転炉11の出口方向へ向けて冷却水を散布(ステップS22)して、ストーカ炉21a内の温度が少なくとも1000℃を超えないように維持する(ステップS23)。そして、燃焼後の焼却灰2cは有価金属含有滓として下部側に配置された内部に冷却水を貯えた水封式コンベア30上に落下させられ、複数のスクレーパ32,32によって連続搬送されて回収される(ステップS4)。水封式コンベア30により焼却灰2cは100℃以下に冷却されるので焼却灰2cが空気と接触することで再燃することが確実に防止される。そして、回収された焼却灰2cを、例えば、銅製錬所の中間原料として使用することによって貴金属スクラップに含まれる貴金属が回収されリサイクルが行われる。
【0036】
一方、可燃性の熱分解ガスは二次燃焼炉21bのバーナ24によって900℃以上の温度で燃焼処理される(ステップS5)。貴金属スクラップ2aをロータリーキルン10の回転炉11内で燃焼させず二次燃焼炉21b内で可燃性の熱分解ガスとして燃焼させることとしたので回転炉11の過熱による劣化の進行が防止されると共に、ダイオキシン類及びその前駆体の生成の抑制が図られる。そして、熱分解ガスを燃焼させた後の排ガスは煙道31によって二次燃焼炉21bと連通された冷却塔40に送られ、複数のノズル41から冷却水が散布されてその温度が80℃以下になるように一気に冷却される(ステップS6)。これにより、ダイオキシンの発生要因の一つであるデノボ合成が最も発生しやすいといわれている300℃付近の温度帯を一気に通過させることでダイオキシン類の発生の抑制を図っている。
【0037】
そして、80℃以下に冷却された排ガスは、洗浄塔45によってアルカリ洗浄されてミストコットレル50に運ばれ、煤塵やミストが除去された後、完全に無害化された状態で排気される(ステップS7)。
【0038】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は詳述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 有価金属の回収処理装置
2a 貴金属スクラップ
2b ガス化減容物
2c 焼却灰
3 ホッパ
4 パンコンベヤ
5 バケットコンベヤ
10 ロータリーキルン
11 回転炉
12 投入口
13 排出口
14 バーナ
15 冷却水散布ノズル
15a 温度計
16 シール部材
17 温度計
18 散水ノズル
20 制御装置
21a ストーカ炉
21b 二次燃焼炉
22 火格子(ストーカ)
24 バーナ
25 油圧シリンダ
30 水封式コンベア
31 ハウジング
31a 水封部
32 スクレーパ
34 チェーン
37 給水ノズル
38 排水ノズル
39 移送コンベヤ
40 冷却塔
41 ノズル
45 洗浄塔
50 ミストコットレル