【実施例1】
【0019】
図1は本発明のヒューズ素子の第1の実施例の説明図で、
図1(a)は突起部が形成された部分の断面図であり、
図1に楕円で囲んだ部分の拡大図を
図1(b)に示し、
図1(c)は、ヒューズ素子の切断時の説明図である。また
図2は可動電極の一部平面図であり、突起部8を通る図面上下方向の断面図が
図1となる。なお
図2では、
図1に示す電圧印加電極11は図示を省略している。
【0020】
図1(a)に示すように、半導体記憶装置等が形成されたシリコン基板1上のヒューズ素子形成予定領域に、絶縁膜2を介して固定電極6が形成されている。固定電極6はポリシリコン膜等の導電性材料からなるヒューズ線であり、後述する方法により切断可能な形状、例えば
図2に示す可動電極の導電膜9と対向するほぼ同一形状の長方形とすることができる。
【0021】
絶縁膜からなるスペーサ膜7の一部が除去されて形成されたエアーギャップ5を介して可動電極が形成されている。
図1(a)に示すように可動電極には、突起部8が形成されている。
図1において楕円で囲む突起部8の拡大図を
図1(b)に示す。
図1(b)に示すように、突起部8の先端部は可動電極の絶縁性膜10が突出した形状であり、先端近傍部に可動電極の導電性膜9が配置する形状となっている。固定電極6と可動電極の導電性膜9には、切断工程で電圧を印加するための電圧印加電極11が、図示しない領域でそれぞれ接続形成されている。
【0022】
この突起部8が固定電極6に接触した状態を
図1(c)に示す。導電性膜からなる固定電極6に直接接触する突起部8は、可動電極の絶縁性膜10から構成され、可動電極の導電性膜9は所定の間隔をもって固定電極6に近接する構造とするのが好ましい。これは、後述する切断方法により、固定電極6と可動電極の導電性膜9が直接接触して固定電極6が切断する構造とすると、切断により飛散した固定電極6の一部が可動電極の導電性膜9と一体となり、固定電極6と可動電極の導電性膜9とが固着してしまい、不要な接続が形成されて不完全な切断となることを防止するためである。
【0023】
図1(c)に示す固定電極6の切断は、模式的に示したものであり、固定電極6の短手方向に複数の突起部8を配列することにより、ヒューズ線となる固定電極6の長手方向の導電経路を切断することができる。
【0024】
なお、
図2に示す12は可動電極の導電性膜9および可動電極の絶縁性膜10の一部を除去して形成した開口部であり、後述する製造工程においてエアギャップ5を形成するためスペーサ層7の一部を除去する際に、この開口部12を介してエッチングが行われる。
【0025】
次に本実施例のヒューズ素子の製造方法について、
図3を用いて詳細に説明する。まず、シリコン基板1を用意し、シリコン基板1表面に酸化膜からなる絶縁膜2を形成する。さらに絶縁膜2上に、例えばCVD法により導電性膜としてポリシリコン膜を積層形成し、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングを行い、固定電極6を形成する(
図3a)。この固定電極6は、低抵抗であることが好ましく、このシリコン基板1上に形成される半導体記憶装置で形成されるゲートポリシリコン膜を使えば、半導体プロセス工程を増やすことなく、固定電極6を形成することができる。
【0026】
固定電極6および絶縁膜2上に、スペーサ層となる絶縁膜13を積層形成する。その後、通常のフォトリソグラフ法により絶縁膜13表面の一部をエッチング除去し、突起部を形成するための凹部14を形成する(
図3b)。一例として絶縁膜13の厚さは、2μm程度とし、凹部14の大きさは、直径2μm、深さ0.5μm程度とする。
【0027】
可動電極を形成するため、凹部14を形成した絶縁膜13上に導電性膜としてポリシリコン膜を形成し、通常のフォトリソグラフ法により所望のパターニングを行う。ここで、凹部14表面を覆うポリシリコン膜は、凹部14の底部から所定の間隔離間するようにエッチング除去して可動電極の導電性膜9を形成する。このように凹部14の底部から所定の間隔離間させることで、突起部が形成された際、突起先端部に導電性膜となるポリシリコン膜が形成されない構造とすることができる。さらに可動電極を形成するため、凹部14内を充填する絶縁性膜を形成し、可動電極の絶縁性膜10を形成する。この可動電極の絶縁性膜10は、突起部8の先端部を構成するとともに可動電極の導電性膜9を支持する膜となる。ここでさらに、先に形成した固定電極6と可動電極の導電膜膜9に、それぞれ接続する電圧印加電極11を形成する(
図3c)。
【0028】
その後、
図2で説明した開口部12を形成するため、可動電極の導電性膜10および可動電極の絶縁性膜9の一部をエッチング除去し、絶縁膜13を露出させる。開口部から絶縁膜13の一部をエッチング除去することでエアギャップ5が形成される。その結果、
図3(d)に示すように、突起部8が固定電極6のエアギャップ5側に突出する構造を形成することができる。
【0029】
次に、本発明のヒューズ素子の切断方法について説明する。固定電極6に接続する電圧印加電極11あるいは可動電極の導電性膜に接続する電圧印加電極11のいずれかあるいは両方の電圧印加電極11に電圧を印加すると、クーロン力により可動電極の導電性膜9および可動電極の絶縁性膜10が固定電極6側に移動する。所定の電圧を印加されると、可動電極に形成された突起部8の先端部に位置する可動電極の絶縁性膜10が固定電極6に接触する。
図1(c)に示すように、可動電極の導電性膜9と固定電極6の間に高電界が発生すると空中放電が起こり、局所的に固定電極6を破壊して、固定電極6を飛散させ、ヒューズ線を構成する固定電極6をオープン状態にすることができる。あるいはこの空中放電により、局所的に可動電極の導電性膜9を破壊し、ヒューズ線を構成する可動電極をオープン状態にすることができる。
【0030】
ここで、ヒューズ線の破壊は、空中放電により起こり、可動電極の導電性膜9と固定電極6は直接接触しない構造となっているため、この破壊により、両電極が再び固着して導通状態となることはない。また、空中放電により周囲に飛散する電極材料は、エアギャップ5内に留まり、周辺の半導体装置の形成領域に飛散することもない。
【0031】
電圧印加電極11に電圧を印加する場合には、一方を接地電位として、他方に所望の電圧を印加しても良い。また、空中放電によりヒューズ線が破壊された後、固定電極6と可動電極の絶縁性膜10は、それぞれの膜に蓄積した電荷が放電されるため、離れてエアギャップ5を構成することになるが、電荷が完全に放出されず膜が接着した状態となったままの場合は、電圧印加電極から電荷を放出することも可能である。
【0032】
エアギャップ5の高さ(絶縁膜13の厚さ)、可動電極の導電性膜9および可動電極の絶縁性膜10の応力、開口部12の和や配置等を適宜調整することで、電圧印加電極11に電圧を印加することにより、突起部8と固定電極6が確実に接触させることができる。