(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記被研磨面の膜厚プロファイルが、前記被研磨面の全面において、均一又は所望の形状となるように、前記周辺部の押圧を制御することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記制御部は、前記被研磨面の膜厚プロファイルが、前記押圧部によって裏面を直接押圧される前記被研磨面の領域内において、均一又は所望の形状となるように、前記周辺部の押圧を制御することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記制御ステップは、前記被研磨面の膜厚プロファイルが、前記被研磨面の全面において、均一又は所望の形状となるように、前記周辺部の押圧を制御することを特徴とする請求項15または16に記載の研磨方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、研磨対象物を精度よく研磨できる研磨装置及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の研磨装置は、研磨対象物の被研磨面と研磨部材とを相対的に摺動させて前記被研磨面を研磨する研磨装置であって、前記研磨対象物の前記被研磨面の裏面を押圧することで、前記被研磨面を前記研磨部材に押圧する押圧部と、前記研磨対象物の研磨中に、前記研磨対象物の前記被研磨面の残膜プロファイルを推定する膜厚測定部と、前記研磨対象物の研磨中に、前記膜厚測定部の測定結果に応じて、前記押圧部による前記被研磨面の裏面に対する押圧を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記研磨対象物の研磨中の前記押圧部による押圧の制御とともに、前記被研磨面の前記研磨部材に対する押圧に影響を与える前記押圧部の周辺部を研磨中に制御する構成を有している。
【0011】
この構成により、押圧部によって直接押圧される部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧が、押圧部による押圧の制御だけでなく、周辺部による当該部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧の制御によっても制御されるので、精度の高い研磨を行うことができる。また、そのような制御を研磨対象物の研磨中に、その研磨状況に応じて行うので、研磨の過程で押圧部による押圧力を変化させた場合にも、それに対応して周辺部を制御することができる。
【0012】
上記の研磨装置において、前記周辺部は、前記押圧部の近傍で前記研磨部材を押圧するリテーナ部材であってよく、前記制御部は、前記押圧部による前記被研磨面の裏面の押圧の制御とともに、前記リテーナ部材による前記研磨部材の押圧を制御してよい。
【0013】
この構成により、リテーナ部材の研磨部材に対する押圧を制御することで、押圧部によって直接押圧される部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧が制御されるので、精度の高い研磨を行うことができる。
【0014】
上記の研磨装置において、前記押圧部は、前記研磨対象物の前記被研磨面の裏面のエッジ領域を押圧してよく、前記リテーナ部材は、前記研磨対象物を囲う部材であってよい。
【0015】
この構成により、リテーナ部材の研磨部材に対する押圧を制御することで、押圧部によって裏面を直接押圧される被研磨面のエッジ領域の研磨部材に対する押圧が制御されるので、エッジ部分において精度の高い研磨を行うことができる。
【0016】
上記の研磨装置は、前記研磨対象物の前記被研磨面の裏面を部分的に押圧する複数の前記押圧部を備えていてよく、前記周辺部は、隣接する他の前記押圧部であってよい。
【0017】
この構成により、ある押圧部によって裏面を直接押圧される部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧が、隣接する他の押圧部による被研磨面の裏面の押圧を制御することで制御されるので、精度の高い研磨を行うことができる。
【0018】
上記の研磨装置において、前記周辺部は、前記押圧部の弾性体の変形による前記被研磨面の圧力を制御する機構であってよい。
【0019】
この構成により、研磨状況に基づいて、押圧部の弾性体の変形による被研磨面の圧力を制御できる。
【0020】
上記の研磨装置において、前記周辺部は、前記押圧部の弾性体の変形を制御する機構であってよい。
【0021】
この構成により、研磨状況に基づいて、押圧部の弾性体の変形を制御できる。
【0022】
上記の研磨装置において、前記制御部は、前記被研磨面の膜厚プロファイルが、前記押圧部によって裏面を直接押圧される前記被研磨面の全面において均一、あるいは所望の形状となるように、前記周辺部の押圧を制御してよい。
【0023】
この構成により、押圧部によって裏面を直接押圧される被研磨面の研磨部材に対する押圧の周辺部からの影響が、押圧部によって裏面を直接押圧される被研磨面において一様でない場合にも、押圧部によって裏面を直接押圧される被研磨面を均一に研磨できる。
【0024】
上記の研磨装置において、前記周辺部の制御について制御限界値が設定されていてよく、前記制御部は、前記制御限界値の範囲内で制御を行ってよい。
【0025】
この構成により、制御部が所定のアルゴリズムに従って制御をした際に、制御限界を超えて周辺部が制御されることを防止でき、研磨対象物や研磨装置の破損等の事故を防止できる。
【0026】
上記の研磨装置において、前記押圧部は、円形状の圧力室及びその周りを囲む複数の円環状の圧力室から形成されてよい。
【0027】
この構成により、半径方向の膜厚プロファイルを所望の形状とすることができる。
【0028】
本発明の研磨方法は、研磨対象物の被研磨面と研磨部材とを相対的に摺動させて前記被研磨面を研磨する研磨方法であって、前記研磨対象物の前記被研磨面の裏面を押圧部で押圧することで、前記被研磨面を前記研磨部材に押圧する押圧ステップと、前記研磨対象物の研磨中に、前記研磨対象物の前記被研磨面の残膜プロファイルを推定する膜厚測定ステップと、前記研磨対象物の研磨中に、前記膜厚測定ステップにおける測定結果に応じて、前記押圧部による前記被研磨面の裏面に対する押圧を制御する制御ステップとを含み、前記制御ステップは、前記押圧部による前記被研磨面の裏面の押圧の制御とともに、前記被研磨面の前記研磨部材に対する押圧に影響を与える前記押圧部の周辺部を研磨中に制御する構成を有している。
【0029】
この構成によっても、押圧部によって直接押圧される部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧が、押圧部による押圧の制御だけでなく、周辺部による当該部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧の制御によっても制御されるので、精度の高い研磨を行うことができる。また、そのような制御を研磨対象物の研磨中に、その研磨状況に応じて行うので、研磨の過程で押圧部による押圧力が変化させた場合にも、それに対応して周辺部を制御することができる。
【0030】
上記の研磨方法において、前記周辺部の押圧は、前記押圧部によって裏面を直接押圧される前記被研磨面の研磨速度に対する、前記押圧部、および前記周辺部との関係式を用いて研磨中に計算されてよい。
【0031】
この構成により、膜厚測定ステップにおける測定結果に応じた押圧部及び周辺部の制御を行うことができる。
【0032】
上記の研磨方法において、前記被研磨面の裏面に対する押圧と前記周辺部の押圧とが、閉ループ制御において同時に決定されてよい。
【0033】
この構成により、より精度の高い制御を実現できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、押圧部によって直接押圧される部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧が、押圧部による押圧の制御だけでなく、周辺部による当該部分の被研磨面の研磨部材に対する押圧の制御によっても制御されるので、精度の高い研磨を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態の研磨装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る研磨装置の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル100と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板を保持して研磨テーブル100上の研磨面に押圧する基板保持装置としてのトップリング1とを備えている。研磨テーブル100は、テーブル軸100aを介してその下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されている。研磨テーブル100は、モータが回転することにより、テーブル軸100a周りに回転する。研磨テーブル100の上面には、研磨部材としての研磨パッド101が貼付されている。この研磨パッド101の表面101aは、半導体ウエハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル60が設置されている。この研磨液供給ノズル60から、研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液(研磨スラリ)Qが供給される。
【0038】
なお、市場で入手できる研磨パッドとしては種々のものがあり、例えば、ニッタ・ハース社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細なへこみまたは孔を有している。
【0039】
トップリング1は、半導体ウエハWを研磨面101aに対して押圧するトップリング本体2と、半導体ウエハWの外周縁を保持して半導体ウエハWがトップリング1から飛び出さないようにするリテーナ部材としてのリテーナリング3とから基本的に構成されている。トップリング1は、トップリングシャフト111に接続されている。このトップリングシャフト111は、上下動機構124によりトップリングヘッド110に対して上下動する。トップリング1の上下方向の位置決めは、トップリングシャフト111の上下動により、トップリングヘッド110に対してトップリング1の全体を昇降させて行われる。トップリングシャフト111の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0040】
トップリングシャフト111及びトップリング1を上下動させる上下動機構124は、軸受126を介してトップリングシャフト111を回転可能に支持するブリッジ128と、ブリッジ128に取り付けられたボールねじ132と、支柱130により支持された支持台129と、支持台129上に設けられたACサーボモータ138とを備えている。サーボモータ138を支持する支持台129は、支柱130を介してトップリングヘッド110に固定されている。
【0041】
ボールねじ132は、サーボモータ138に連結されたねじ軸132aと、このねじ軸132aが螺合するナット132bとを備えている。トップリングシャフト111は、ブリッジ128と一体となって上下動する。従って、サーボモータ138を駆動すると、ボールねじ132を介してブリッジ128が上下動し、これによりトップリングシャフト111及びトップリング1が上下動する。
【0042】
また、トップリングシャフト111はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用回転モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用回転モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、トップリング用回転モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びトップリングシャフト111が一体に回転し、トップリング1が回転する。
【0043】
トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。研磨装置は、トップリング用回転モータ114、サーボモータ138、研磨テーブル回転モータをはじめとする装置内の各機器を制御する制御部500を備えている。
【0044】
次に、本発明の研磨装置におけるトップリング(研磨ヘッド)1について説明する。
図2は、研磨対象物である半導体ウエハを保持して研磨テーブル100上の研磨面に押圧する基板保持装置としてのトップリング1の模式的断面図である。
図2においては、トップリング1を構成する主要構成要素だけを図示している。
【0045】
図2に示すように、トップリング1は、半導体ウエハWを研磨面101aに対して押圧するトップリング本体(キャリアとも称する)2と、研磨面101aを直接押圧するリテーナ部材としてのリテーナリング3とから基本的に構成されている。トップリング本体(キャリア)2は概略円盤状の部材からなり、リテーナリング3はトップリング本体2の外周部に取り付けられている。トップリング本体2は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。トップリング本体2の下面には、半導体ウエハの裏面に当接する弾性膜(メンブレン)4が取り付けられている。弾性膜(メンブレン)4は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。弾性膜(メンブレン)4は、半導体ウエハ等の基板を保持する基板保持面を構成している。
【0046】
弾性膜(メンブレン)4は同心状の複数の隔壁4aを有し、これら隔壁4aによって、メンブレン4の上面とトップリング本体2の下面との間に円形状のセンター室5、環状のリプル室6、環状のアウター室7、環状のエッジ室8が形成されている。すなわち、トップリング本体2の中心部にセンター室5が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、リプル室6、アウター室7、エッジ室8が形成されている。トップリング本体2内には、センター室5に連通する流路11、リプル室6に連通する流路12、アウター室7に連通する流路13、エッジ室8に連通する流路14がそれぞれ形成されている。
【0047】
センター室5に連通する流路11、アウター室7に連通する流路13、エッジ室8に連通する流路14は、ロータリージョイント25を介して流路21、23、24にそれぞれ接続されている。流路21、23、24は、それぞれバルブV1−1、V3−1、V4−1及び圧力レギュレータR1、R3、R4を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路21、23、24は、それぞれバルブV1−2、V3−2、V4−2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV1−3、V3−3、V4−3を介して大気に連通可能になっている。
【0048】
一方、リプル室6に連通する流路12は、ロータリージョイント25を介して流路22に接続されている。そして、流路22は、気水分離槽35、バルブV2−1及び圧力レギュレータR2を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路22は、気水分離槽35及びバルブV2−2を介して真空源131に接続されるとともに、バルブV2−3を介して大気に連通可能になっている。
【0049】
また、リテーナリング3の直上にも弾性膜(メンブレン)32によってリテーナリング圧力室9が形成されている。弾性膜(メンブレン)32は、トップリング1のフランジ部に固定されたシリンダ33内に収容されている。リテーナリング圧力室9は、トップリング本体(キャリア)2内に形成された流路15及びロータリージョイント25を介して流路26に接続されている。流路26は、バルブV5−1及び圧力レギュレータR5を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路26は、バルブV5−2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV5−3を介して大気に連通可能になっている。
【0050】
圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ圧力調整部30からセンター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、リテーナリング圧力室9に供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5及び各バルブV1−1〜V1−3、V2−1〜V2−3、V3−1〜V3−3、V4−1〜V4−3、V5−1〜V5−3は、制御部500(
図1参照)に接続されていて、それらの作動が制御されるようになっている。また、流路21、22、23、24、26にはそれぞれ圧力センサP1、P2、P3、P4、P5及び流量センサF1、F2、F3、F4、F5が設置されている。
【0051】
センター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、リテーナリング圧力室9に供給する流体の圧力は、圧力調整部30及び圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5によってそれぞれ独立に調整される。このような構造により、半導体ウエハWを研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウエハの領域毎に調整でき、かつリテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力を調整できる。
【0052】
図3は、研磨テーブル100の主要構成要素を示す模式的断面図である。研磨テーブル100の内部には、その上面で開口する孔102が形成されている。また、研磨パッド101には、この孔102に対応する位置に通孔51が形成されている。孔102と通孔51とは連通している。通孔51は研磨面101aで開口している。孔102は液体供給路53及びロータリージョイント52を介して液体供給源55に連結されている。研磨中は、液体供給源55からは、透明な液体として水(好ましくは純水)が孔102に供給されるようになっている。水は、半導体ウエハWの下面と通孔51とによって形成される空間を満たし、液体排出路54を通じて排出される。研磨液は水と共に排出され、これにより光路が確保される。液体供給路53には、研磨テーブル100の回転に同期して作動するバルブ(図示せず)が設けられている。このバルブは、通孔51の上に半導体ウエハWが位置しないときは水の流れを止め、または水の流量を少なくするように動作する。
【0053】
研磨装置は、基板の膜厚を測定する膜厚測定部40を備えている。膜厚測定部40は、光を発する光源44と、光源44から発せられた光を半導体ウエハWの表面に照射する投光部41と、半導体ウエハWから戻ってくる反射光を受光する受光部42と、半導体ウエハWからの反射光を波長に従って分解し、所定の波長範囲に亘って反射光の強度を測定する分光器43と、分光器43によって取得された測定データからスペクトルを生成し、このスペクトルに基づいて半導体ウエハWの膜厚を決定する処理部46とを備えた光学式の膜厚センサである。スペクトルは、所定の波長範囲に亘って分布する光の強度を示し、光の強度と波長との関係を示す。
【0054】
投光部41及び受光部42は、光ファイバーから構成されている。投光部41及び受光部42は、光学ヘッド(光学式膜厚測定ヘッド)45を構成している。投光部41は光源44に接続されている。受光部42は分光器43に接続されている。光源44としては、発光ダイオード(LED)、ハロゲンランプ、キセノンフラッシュランプなど、複数の波長を持つ光を発する光源を用いることができる。投光部41、受光部42、光源44、及び分光器43は、研磨テーブル100の内部に配置されており、研磨テーブル100とともに回転する。投光部41及び受光部42は、研磨テーブル100に形成された孔102内に配置されており、それぞれの先端は半導体ウエハWの被研磨面の近傍に位置している。
【0055】
投光部41及び受光部42は、半導体ウエハWの表面に対して垂直に配置されており、投光部41は半導体ウエハWの表面に垂直に光を照射する。投光部41及び受光部42は、トップリング1に保持された半導体ウエハWの中心に対向して配置される。したがって、研磨テーブル100が回転するたびに、投光部41及び受光部42の先端は半導体ウエハWを横切って移動し、半導体ウエハWの中心を含む領域に光が照射される。これは、投光部41及び受光部42が半導体ウエハWの中心を通ることで、半導体ウエハWの中心部の膜厚も含め、半導体ウエハWの全面の膜厚を測定するためである。処理部46は、測定された膜厚データを基に膜厚プロファイル(半径方向の膜厚分布)を生成することができる。処理部46は、制御部500(
図1参照)に接続されており、生成した膜厚プロファイルを制御部500に出力する。
【0056】
半導体ウエハWの研磨中は、投光部41から光が半導体ウエハWに照射される。投光部41からの光は、半導体ウエハWの表面で反射し、受光部42によって受光される。半導体ウエハWに光が照射される間は、孔102及び通孔51には水が供給され、これにより、投光部41及び受光部42の各先端と、半導体ウエハWの表面との間の空間は水で満たされる。分光器43は、受光部42から送られてくる反射光を波長に従って分解し、波長ごとの反射光の強度を測定する。処理部46は、分光器43及によって測定された反射光の強度から、反射光の強度と波長との関係を示すスペクトルを生成する。さらに、処理部46は、得られたスペクトルから、公知技術を用いて半導体ウエハWの現在の膜厚プロファイル(残膜プロファイル)を推定する。
【0057】
研磨装置は、上記の光学式の膜厚センサからなる膜厚測定部40に代えて、他の方式の膜厚測定部を備えていてよい。他の方式の膜厚測定部としては、例えば、研磨テーブル100の内部に配置され、半導体ウエハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を取得する渦電流式膜厚センサがある。渦電流式膜厚センサは、研磨テーブル100と一体に回転し、トップリング1に保持された半導体ウエハWの膜厚信号を取得する。渦電流式膜厚センサは
図1に示す制御部500に接続されており、渦電流式膜厚センサによって取得された膜厚信号は制御部500に送られるようになっている。制御部500は、膜厚を直接または間接に表す膜厚指標値を膜厚信号から生成する。
【0058】
渦電流式膜厚センサは、コイルに高周波の交流電流を流して導電膜に渦電流を誘起させ、この渦電流の磁界に起因するインピーダンスの変化から導電膜の厚さを検出するように構成される。渦電流センサとしては、特開2014−017418号公報に記載されている公知の渦電流センサを用いることができる。
【0059】
なお、上記の例では、研磨面101aに通孔51を設けるとともに、液体供給路53、液体排出路54、液体供給源55を設け、孔102を水で満たしたが、これに代えて、研磨パッド101に透明窓を形成してもよい。この場合、投光部41は、この透明窓を通じて研磨パッド101上の基板Wの表面に光を照射し、受光部42は、透明窓を通じて半導体ウエハWからの反射光を受光する。
【0060】
以上のように構成された研磨装置による研磨動作を説明する。トップリング1は基板受渡し装置(プッシャ)から半導体ウエハWを受け取り、その下面に半導体ウエハWを真空吸着により保持する。このとき、トップリング1は、被研磨面(通常はデバイスが構成される面、「表面」とも称する)を下向きにして、被研磨面が研磨パッド101の表面に対向するようにトップリング1を保持する。下面に半導体ウエハWを保持したトップリング1は、トップリングヘッドシャフト117の回転によるトップリングヘッド110の旋回により半導体ウエハWの受取位置から研磨テーブル100の上方に移動される。
【0061】
そして、半導体ウエハWを真空吸着により保持したトップリング1を予め設定したトップリングの研磨時設定位置まで下降させる。この研磨時設定位置では、リテーナリング3は研磨パッド101の表面(研磨面)101aに接地しているが、研磨前は、トップリング1で半導体ウエハWを吸着保持しているので、半導体ウエハWの下面(被研磨面)と研磨パッド101の表面(研磨面)101aとの間には、わずかな間隙(例えば、約1mm)がある。このとき、研磨テーブル100及びトップリング1は、ともに回転駆動されており、研磨テーブル100の上方に設けられた研磨液供給ノズル102から研磨パッド101上に研磨液が供給されている。
【0062】
この状態で、半導体ウエハWの裏面側にある弾性膜(メンブレン)4を膨らませ、半導体ウエハWの被研磨面の裏面を押圧することで、半導体ウエハWの被研磨面を研磨パッド101の表面(研磨面)101aに押圧し、半導体ウエハWの被研磨面と研磨パッド101の研磨面とを相対的に摺動させて、半導体ウエハWの被研磨面を所定の状態(例えば、所定の膜厚)になるまで研磨パッド101の研磨面101aで研磨する。研磨パッド101上でのウエハ処理工程の終了後、半導体ウエハWをトップリング1に吸着し、トップリング1を上昇させ、基板搬送機構を構成する基板受渡し装置へ移動させて、ウエハWの離脱(リリース)を行う。
【0063】
次に、膜厚測定部40により測定された膜厚プロファイルに基づく研磨動作の制御について説明する。
図4は、研磨動作の制御のための研磨装置の構成を示す図である。研磨装置は、研磨制御装置501と閉ループ制御装置502を備えている。研磨制御装置501と閉ループ制御装置502は、上述の制御部500(
図1参照)に相当する。
【0064】
図5は、本実施の形態の研磨装置の研磨制御のフロー図である。研磨装置が研磨を開始すると、膜厚測定部40は、残膜プロファイルを推定して、推定値を閉ループ制御装置502に出力する(ステップS61)。閉ループ制御装置502は、残膜プロファイルが目標とする膜厚プロファイルになったか否かを判断する(ステップS62)。膜厚測定部40で推定された残膜プロファイルが目標膜厚プロファイルになっている場合は(ステップS62にてYES)、研磨処理を終了する。ここで、目標膜厚プロファイルは、完全なフラットな形状(全面において均一の膜厚)であっても、凹凸や勾配を有する形状であってもよい。
【0065】
推定された残膜プロファイルが目標膜厚プロファイルになっていない場合は(ステップS62にてNO)、閉ループ制御装置502は、推定された残膜プロファイルに基づいて、センター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、リテーナリング圧力室9(以下、総称して「圧力室」と称する)に供給する流体の圧力のパラメータ(圧力パラメータ)を算出して、研磨制御装置501に出力する(ステップS63)。研磨制御装置501は、圧力パラメータに従って、各圧力室に供給する流体の圧力を調整する(ステップS64)。研磨装置は、推定された残膜プロファイルが目標膜厚プロファイルになるまで(ステップS62でNOになるまで)、上記のステップS61〜64を一定の周期で繰り返す。なお、圧力室は、本発明の押圧部に相当する。
【0066】
以下では、上記のステップS63における残膜プロファイルに基づく各圧力室の圧力パラメータの算出について、半導体ウエハWのエッジ領域に関わる部分を例に説明する。まず、閉ループ制御装置502は、エッジ領域研磨レートMRR_Edgeに対する既知の関係を取得する。エッジ領域研磨レートMRR_Edgeと各圧力室の圧力パラメータとの関係は、一般的に、関数Fを用いて下式(1)によって表される。
MRR_Edge=F(AP_Edge,RRP,etc...) …(1)
ここで、AP_Edgeはエッジ領域の圧力室であるエッジ室8の圧力(エッジ室圧力)である。また、RRPは、リテーナリング圧力室9の圧力(リテーナリング圧力)である。エッジ領域の研磨レートに影響するその他のパラメータ(式(1)の「etc」)としては、例えば、エッジ室8より半導体ウエハWの中心側に隣接する圧力室であるアウター室7の圧力等である。
【0067】
この関数Fは、一般的には、各パラメータの一次式、又はそのような一次式の各パラメータの交互作用を含めた統計的重回帰式であるが、各パラメータのn次式等の特殊な関数であってもよい。なお、いずれの場合も各パラメータに付随する定数は既知である必要がある。
【0068】
次に、閉ループ制御装置502は、制御したい領域であるエッジ領域に対する研磨中の各時点での目標研磨レートMRR_Tgtを、閉ループ制御装置502における計算値から取得する。そして、閉ループ制御装置502は、得られた目標研磨レートMRR_Tgtを式(1)に代入して式変形をすることで、下式(2)のように各時点のリテーナリング圧力RRPを求める。
RRP=G(MRR_Tgt,AP_Edge,etc...) …(2)
【0069】
閉ループ制御装置502は、上式(2)で算出されたリテーナリング圧力RRPが限界値を下回っていないかを判断し、算出されたリテーナリング圧力RRPが限界値を下回っている場合は、限界値を優先して採用する。この限界値は、リテーナリング圧力RRPがそれを下回るともはやリテーナリング3が半導体ウエハWを保持できなくなるおそれがある値として設定され、限界値を優先することで、半導体ウエハWがリテーナリグからスリップアウトすることを防止できる。限界値としては、絶対値を採用することもできるし、各圧力室の圧力の平均に応じた値(例えば、平均に1以下の所定の係数をかけた値)とすることもできる。
【0070】
上記のように、本実施の形態の研磨装置では、半導体ウエハWの研磨中のエッジ室8の圧力AP_Edgeを調整することによるエッジ領域の押圧の制御だけでなく、エッジ室8の周辺部として半導体ウエハWの被研磨面の研磨面101aに対する研磨圧力(押圧力)に影響を与えるリテーナリング3の圧力RRPを制御する。即ち、通常は半導体ウエハWのエッジ領域の研磨レートは、研磨パッドのリバウンド等の影響を受け、これに対応する為にリテーナリング圧力等の付随する制御パラメータを持っているが、従来は、このような付随する制御パラメータについては、研磨中のリアルタイム制御を行っていなかった。これに対して、本実施の形態の研磨装置は、
図6に示すように、半導体ウエハWのエッジ領域の研磨制御のために、研磨中に、当該領域に対応する圧力室であるエッジ室8の圧力AP_Edgeを変化させるだけでなく、エッジ室8と各圧力室の圧力パラメータとエッジ領域研磨レートの関係から、その周辺部のリテーナリング3の圧力RRPも変化させる。これによって、所望の膜厚プロファイルを高精度に達成することができる。
【0071】
なお、研磨中に半導体ウエハの膜厚を測定して、複数の圧力室の圧力をそれぞれ制御することで、膜厚プロファイルをリアルタイム制御し、所望の膜厚プロファイルを達成する研磨装置がすでに提案されているが、これと比較すると、本実施の形態は、上記のように、単に弾性膜4の圧力をリアルタイムに制御するだけでなく、その周辺部であるリテーナリング3もリアルタイムに制御するので、より精密な膜厚プロファイルの制御を行うことができる。
【0072】
以下、上記の圧力パラメータの算出の具体例を説明する。
図7は、トップリング1の主要構成要素を示す模式的断面図である。
図7に示すように、半導体ウエハWにおいて、アウター室7に対応する領域(半径130〜140mm)を領域A7とする。エッジ室8に対応する領域A8(半径140〜148mm)は、エッジ室8の圧力AP_8だけが研磨圧力に影響する領域A8−1(半径140〜145mm)と、エッジ室8の圧力AP_8及びリテーナリング3の圧力RRPが影響する領域A8−2(半径145〜148mm)とに分けられる。
【0073】
各時点の領域A8−1の研磨レートをMRR_8(t)、領域A8−2の研磨レートをMRR_Edge(t)と表記すると、まず、領域A8−1の研磨レートMRR_8(t)は、エッジ室8の圧力AP_8(t)に比例する。領域A8−2の研磨レートMRR_Edge(t)は、AP_8(t)とRRP(t)を変数とする関数によって求められるが、ここでは、実験的に、下式(3)のようにAP_8(t)とRRP(t)の一次式で求まることが分かっているとする。
MRR_Edge(t)=a×AP_8(t)+b×RRP(t)+c …(3)
ここで、a、b、cは、それぞれ実験的に求められた定数である。
【0074】
また、閉ループ制御装置502によって、各時点での領域A8−1の制御圧力AP_8(t)が求められる。時刻tでの目標研磨レートMRR_8(t)は、この制御圧力AP_8(t)を用いて、下式(4)のように算出される。
MRR_8(t)=G_8×AP_8(t) …(4)
ここで、G_8はエリア8の圧力の研磨レートに対するゲインである。
【0075】
半導体ウエハWの領域A8を平坦化するためには、領域A8−1の研磨レートと領域A8−2の研磨レートとを等しくすればよい。即ち、下式(5)を満足すればよい。
MRR_Edge(t)=MRR_8(t) …(5)
式(5)に式(3)及び式(4)を代入すると、下式(6)を得る。
a×AP_8(t)+b×RRP(t)+c=G_8×AP_8(t) …(6)
式(6)を変形すると、下式(7)のように、各時点のリテーナリング圧力RRP(t)が得られる。
RRP(t)=1/b×(G_8−a)×AP_8(t)−c/b …(7)
【0076】
なお、この式(7)は、上記で一般的に示した式(2)に相当するものであり、半導体ウエハWのエッジ領域A8を平坦化するために、領域A8に対応するエッジ室8の圧力AP_8(t)のみならず、それに合わせてリテーナリング圧力RRP(t)もリアルタイム制御を行うことを意味している。
【0077】
以上では、研磨中の各時点において、エッジ室および周辺部リテーナリングの圧力とエッジ領域の研磨レートとの関係式から、リテーナリングの圧力RRP(t)を決定する方法を示した。しかし、周辺部の圧力の決定方法はこれに限らない。以下に、周辺部の圧力の決定方法の別の例を説明する。
【0078】
いま、式(3)の各圧力室の圧力と研磨レートとの関係式を一般化して表現すると下式(8)によって表現できる。
【数1】
ここで、MRR_i(t)は、
図8に示すように中心を1として昇順になるよう番号付けされた基板面同心円状の領域iにおける研磨レートを表わす。また、AP_jは圧力jを表わし、中心から順に、センター室がj=1、リプル室がj=2というように番号付けされ、エッジ室の次には1つ以上の周辺部の圧力が割り当てられるものとする。a
ijは各圧力に対する各領域の研磨レートの関係を示す比例定数であり、b
iは領域iに関する研磨レートのオフセット量である。基板中心側では研磨レートが概ね対向する圧力室の圧力に応じて決まるため、領域iを圧力室に対応して定義すればよく、周辺部においては、膜厚プロファイルの急な変化を表わせるよう細かく分割するのが好ましい。
【0079】
このとき、MRR(t)を長さIの縦ベクトル、AP(t)を長さJの縦ベクトル、AをI×Jの行列、Bを長さIの縦ベクトルとすると、MRR(t)は下式(9)のように表現できる。
MRR(t)=A・AP(t)+B …(9)
行列Aは、基板中心側、すなわち左上の部分においては対角行列に近い比較的疎な形をしており、基板端側、すなわち右下の部分では周辺部圧力の影響を表わすため比較的密になる。行列Aの各要素は、前述のように各圧力を変化させた実験および重回帰分析によって決定できる。あるいは、基板中心側の各領域に関しては、研磨レートが対向する圧力室の圧力によって殆ど決まるので、サンプルウェハを研磨したときの当該領域の研磨レートと対向する圧力室の圧力とから、対応する要素の値を決めることにしてもよい。ここで、研磨レートのオフセットを無視できる場合には、ベクトルBの対応する要素を0にする。
【0080】
以上のようにして、式(9)の各圧力に対する研磨レートの関係式が求められると、これに基づいて、残膜厚の分布に関し基板周辺部を含む閉ループ制御を構成することができる。以下には、式(9)の関係に加え、さらに、ウエハ表面各領域の研磨レート(単位時間当たりの膜厚の減少量)の各圧力に対する応答がむだ時間と一次遅れを持つとの仮定を置いて、モデル予測制御を適用する例について説明する。膜厚y(k)は、f
1を適当な関数として用いて、下式(10)によって表される。
y(k)=y(0)−A・f
1(k,Δt,t
D,α,u
0,Δu(1),Δu(2),…,Δu(k−1))−kΔt・B …(10)
ただし、 y(k)は膜厚であって、長さIの列ベクトルであり、Aは圧力に対する研磨レートの比例定数であって、サイズI×Jの行列であり、kは離散時間であって、k=0,1,2,…であり、Δtは時間刻み(制御周期)であり、t
Dは応答のむだ時間であり、αは応答の時定数であり、u
0は初期圧力であって、長さJの列ベクトルであり、Δu(k)は時刻kにおける圧力の変化量であって、長さJの列ベクトルである。
【0081】
時刻kにおける膜厚のp段先の予測値は、f
2及びf
3を適当な関数として用いて下式(11)〜(13)のように表される。
y
P(k,p)=y
O(k,p)+y
F(k,p) …(11)
y
O(k,p)=y(k)−A・f
2(k,Δt,t
D,α,u
0,Δu(1),Δu(2),…,Δu(k−1),p)−pΔt・B …(12)
y
F(k,p)=−A・f
3(k,Δt,t
D,α,Δu(k),Δu(k+1),…,Δu(k+p−1),p) …(13)
ただし、y
P(k,p)は、時刻kにおける膜厚のp段先の予測値であって、長さIの列ベクトルであり、y
O(k,p)は、過去の操作量(圧力)によって定まる確定項であって、長さIの列ベクトルであり、y
F(k,p)は、現時点以降の操作量(圧力)によって定まる未確定項であって、長さIの列ベクトルである。
【0082】
そこで、
Y
P(k,P)=[y
P(k,1)
T,y
P(k,2)
T,…,y
P(k,P)
T]
T …(14)
Y
O(k,P)=[ y
O(k,1)
T,y
O(k,2)
T,…,y
O(k,P)
T]
T …(15)
ΔU
Q=[Δu(k)
T,Δu(k+1)
T,…,Δu(k+Q−1)
T]
T …(16)
とおき、Ψを(I×P)×(J×Q)の適当な行列として用いると、膜厚のP段先までの予測値Y
P(k,P)は下式(17)のように表わされる。
Y
P(k,P)=Y
O(k,P)−ΨΔU
Q …(17)
ここで、十分な時間が経過した後の操作量(圧力)の変化を抑えるために、1≦Q≦Pの条件下で、下式(18)を仮定している。
Δu(k+Q)=Δu(k+Q+1)=…=Δu(k+P−1)=0 …(18)
もし、Q=Pであれば、式(18)はΔu(k+Q)=0と解釈される。
【0083】
以上の準備をした後、モデル予測制御の参照軌道が定義される。
図9に示すように、y
S0(k)は各時刻kにおける目標の膜厚を表し、βは所定の1次遅れの時定数を表している。モデル予測制御の参照軌道Y
R(k,P)は、次のように定義される。
Y
R(k,P)=[y
R(k,1)
T,y
R(k,2)
T,…,y
R(k,P)
T]
T …(19)
y
R(k,p)=y
S(k+p)+exp(−pΔt/β)[y(k)−y
S(k)] …(20)
y
S(k+p)=[y
S0(k+p),y
S0(k+p),…,y
S0(k+p)]
T …(21)
ここで、式(21)は、長さIの列ベクトルである。
【0084】
操作量(圧力)の変化を抑えつつ、制御量(膜厚)を参照軌道に沿って目標軌道に漸近させるための評価関数Jは、次のように定義できる。
J=‖Y
R(k,P)−Y
P(k,P)‖
2ΓTΓ+‖ΔU
Q‖
2ΛTΛ
=‖Y
R(k,P)−Y
O(k,P)+ΨΔU
Q‖
2ΓTΓ+‖ΔU
Q‖
2ΛTΛ …(22)
ただし、‖X‖
2A=X
TAX …(23)
【数2】
式(24)のγ
p(p=1,…,P)は、時刻(k+p)における予測値の参照軌道からのずれに対する重みを表わすI×Iの対角行列であり、式(25)のλ
q(q=1,…,Q)は、時刻(k+q−1)における操作量変化に対する重みを表わすJ×Jの対角行列である。
【0085】
操作量(圧力)には、通常、上下限値、1回当りの変化量の上下限、あるいは、隣接する圧力室間の圧力差の上限などの制約条件が設けられている。このとき、式(13)のJの値を最小にする操作量ΔU
Qは、最適化法の一種である二次計画法によって求めることができる。このようにすれば、各制御周期において、各圧力室及び周辺部の圧力の操作量が同時に最適値として決定されるため、より精度の高い制御を実現することが期待される。
【0086】
なお、式(10)およびそれ以降の記載において、y(k)は膜厚の大小を相対的に表わすものであれば必ずしも絶対値でなくてもよい。例えば、サンプルウェハを研磨したときの研磨終了までの残り時間で膜厚を相対的に表すことができる。このような場合、行列AやベクトルBは適宜矛盾のないように変換される。
【0087】
以上説明した具体例では、1つの圧力室(エッジ室8)に対応する領域(領域A8)内での研磨レートの不均衡を是正して平坦度を向上させることができる。即ち、複数の圧力室に分けられた弾性膜を用いて半導体ウエハWを領域ごとに分けて研磨パッドに押圧する場合において、領域内にて残膜プロファイルに無視できないばらつきがあると、該当する領域の圧力室からの圧力だけでは、そのようなばらつきを解消できないことがあり、この傾向は特に半導体ウエハWのエッジ領域において顕著である。
【0088】
その際、各圧力室の圧力だけでなくリテーナリング圧力等の周辺部のパラメータも制御することで当該エリアの残存プロファイルを制御することが行われているが、この考えは研磨中のリアルタイム制御機能に対しては考慮されていなかった。これに対して、上記の実施の形態では、リアルタイム制御を実施するパラメータに、エッジ領域の研磨レートや残膜プロファイルに影響するリテーナリング圧力等の周辺部のパラメータを組み込むことにより、エッジ領域のプロファイル制御に対する上記の課題を解決している。このような実施の形態のプロファイル制御は、特に、膜厚プロファイルの制御が困難なエッジ部について有効である。以上のように、本発明の実施の形態の研磨装置によれば、研磨対象物である半導体ウエハをその最外周部まで精度よく研磨できる。
【0089】
なお、上記の実施の形態では、エッジ領域である領域A8を平坦化するために、エッジ室8の圧力AP_8とともに、その周辺部として外側にあるリテーナリング3のリテーナリング圧力RRPを制御したが、これに加えて、又はこれに代えて、エッジ室8の周辺部としてその内側にあるアウター室7の圧力AP_7を制御してもよい。
【0090】
また、上記の実施の形態では、エッジ領域である領域8を平坦化する例を説明したが、他の領域の膜厚プロファイルを制御する場合にも、上記と同様に本発明を適用することができる。例えば、アウター室7を平坦化するために、アウター室7の圧力AP_7とともに、その周辺部として外側にあるエッジ室8の圧力AP_8を制御してもよい。
【0091】
また、上記の実施の形態では、ある領域を平坦化するために、その領域に対応する圧力室の圧力とともに、その周辺にある圧力室の圧力を制御したが、これに加えて、又はこれに代えて、周辺にある他の部材のパラメータを制御してもよい。制御対象となる領域の周辺部は、例えば、弾性膜4の全体の高さ(メンブレンハイト)を調整することで弾性膜4の変形又は弾性膜4の変形による半導体ウエハ基板Wの被研磨面の圧力を制御する機構であってよい。
【0092】
また、上記の実施の形態では、各圧力室の圧力パラメータを閉ループ制御装置502で算出したが、これを研磨制御装置501で行ってもよい。この場合は、残膜プロファイルから圧力パラメータを計算するための定数等が閉ループ制御装置502から研磨制御装置501に受け渡されてもよい。
【0093】
また、上記の実施の形態では、弾性膜からなる圧力室を半導体ウエハの被研磨面の裏面を押圧する押圧部としたが、本発明の押圧部は、これに限られず、半導体ウエハの裏面への押圧力を制御可能な他の構造(例えば、ばね)であってもよい。