特許第6266534号(P6266534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62665341,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法
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  • 特許6266534-1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266534
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20180115BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20180115BHJP
   C07C 7/08 20060101ALI20180115BHJP
   C07C 7/10 20060101ALI20180115BHJP
   C08F 236/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C07C7/04
   C07C11/167
   C07C7/08
   C07C7/10
   C08F236/06
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-550695(P2014-550695)
(86)(22)【出願日】2013年1月2日
(65)【公表番号】特表2015-504063(P2015-504063A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2013050002
(87)【国際公開番号】WO2013102625
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】12150073.0
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ハイダ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】フーゴ,ランドルフ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−069521(JP,A)
【文献】 特開昭54−157511(JP,A)
【文献】 特表2004−517952(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110562(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/134955(WO,A1)
【文献】 米国特許第03798132(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/00
C07C 11/00
C08F 236/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ブタジエン処理プラント(A)からの再循環流(1)を精製する方法であって、
前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)は、1,3−ブタジエンの重合用、または1,3−ブタジエンと1種以上のコモノマーとの共重合用のプラントであり、及び
前記再循環流(1)が、
− 前記再循環流(1)の総質量に対して70〜99質量%の1,3−ブタジエン、
− 前記再循環流(1)の総質量に対して0.1〜10質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点が低い低沸点物、および
− 前記再循環流(1)の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点が高い高沸点物を含み、
前記再循環流における1,3−ブタジエン、低沸点物、および高沸点物の合計が、100質量%であり、
出発材料が、純粋な1,3−ブタジエン供給流(2)の総質量に対して98質量%超の1,3−ブタジエン含有量を有する当該純粋な1,3−ブタジエン供給流(2)であり、この純粋な1,3−ブタジエン供給流(2)は、3.5〜6.0barの絶対圧の範囲で操作されるストリップ塔(K1)において1,3−ブタジエンに比べて沸点が高い高沸点物を除去するための予備精製が予め施され、次いで、前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)に供給され、そして
前記方法は、
前記再循環流(1)を、2つの副流、即ち、
前記純粋な1,3−ブタジエン供給流(2)の予備精製のための前記ストリップ塔(K1)で精製されて、前記予備精製された純粋な1,3−ブタジエン供給流(2)も含む第1の精製済み再循環流(4)が生成する第1の副流(3)、および
選択溶媒(6)を用いる抽出蒸留によって抽出蒸留プラントで精製される、第2の副流(5)に分割する工程を含み、
前記抽出蒸留プラントが、
精留塔の形状で、下部領域において前記再循環流の前記第2の副流(5)および上部領域において前記選択溶媒(6)が液体状態で供給され、且つブタンおよびブテンを含む頂部流(7)が排出されるメインスクラバ(K2)(前記選択溶媒(6)は、前記再循環流の前記第2の副流(5)と向流で当該メインスクラバ(K2)を通って流れ、1,3−ブタジエンを含有するようになるものである)、そして
前記メインスクラバ(K2)から前記底部流(8)が供給され、第2の精製済み再循環流(9)が塔頂で取り出され、そして精製済み選択溶媒を含む底部流(10)が取り出されるガス抜き塔(K3)を備え、並びに
最大流速度が、前記第1の副流(3)によって構成され、且つ前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)に供給される全流の合計が、1,3−ブタジエンの割合が前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)に供給される全流の合計からの全C炭化水素の総質量に対して90質量%以上であるとの仕様を満たすように、前記再循環流(1)が分割される条件で、
前記第1の精製済み再循環流(4)および前記第2の精製済み再循環流(9)が、前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)へ再循環され、及び
前記低沸点物が、少なくとも頂部流(7)から取り出され、及び
前記高沸点物が、少なくとも前記ストリップ塔(K1)の底部流から取り出され、
第1の精製済み再循環流(4)は、はストリップ塔(K1)の頂部から取り出され、ストリップ塔(K1)は、前記高沸点物が1000ppm以下の残留含有量になるまで前記第1の精製済み再循環流(4)から除去されるように構成され、
メインスクラバ(K2)の頂部圧は、3.5〜6.0barの絶対圧の範囲にあり、メインスクラバのカラムの頂部の温度は、20〜40℃の範囲にあり、
ガス抜き塔(K3)は、メインスクラバに比べて低い圧力で操作され、及び
前記ガス抜き塔(K3)は、第2の精製済み再循環流(9)が前記第2の精製済み再循環流(9)の総質量に対して96質量%以上の1,3−ブタジエン含有量を有するように、構成されており、及び
選択溶媒(6)は、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、フルフロール、及びN−メチル−ピロリドンから成る群れから選ばれる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記再循環流(1)を、前記第1の副流(3)が前記第2の副流(5)より大きくなるように分割する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される前記コモノマーが、スチレンおよび/またはアクリロニトリルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記再循環流(1)が、1,3−ブタジエンに比べて沸点が低い低沸点物として、メタンを含み、特に1,3−ブタジエンに比べて沸点が低い低沸点物の総質量に対して≧90質量%の割合でメタンを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1,3−ブタジエンの重合または共重合が、溶液重合、特に溶媒としてのトルエンまたはヘキサンが存在する状態での溶液重合である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出蒸留プラントが、前記メインスクラバ(K2)の上流に接続されかつ前記再循環流(1)の前記第2の副流(5)から高沸点物を除去するためのストリップ塔(K4)を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
さらなる副流(11)が、前記再循環流(1)から除去され、予備精製なしで前記1,3−ブタジエン処理プラント(A)へ再循環される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる副流(11)が、前記再循環流(1)全体の半分より大きい、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエン処理プラントでは、価値のある1,3−ブタジエン生成物を依然として高含有量有する副流が頻繁に得られる。これまで、これらの流れは、外部でワークアップされるか、または処分されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の一目的は、プラントの再循環流としてそれ自体を使用することができるように、1,3−ブタジエン処理プラントへの供給流の仕様要求を満たす重合可能な1,3−ブタジエンが得られる程度まで、処理技術の点から単純でかつエネルギー的に有利な方法で、価値のある1,3−ブタジエン生成物を依然として高含有量有する1,3−ブタジエン処理プラントからの副流の精製を可能にする方法を提供することである。その方法はまた、環境的観点においてさらに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
解決策は、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法であって、再循環流が、
− 再循環流の総質量に対して70〜99質量%の1,3−ブタジエン、
− 再循環流の総質量に対して0.1〜10質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物、および
− 再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を含み、
再循環流における1,3−ブタジエン、低沸点物、および高沸点物の合計が、100質量%であり、
出発材料が、純粋な1,3−ブタジエン供給流の総質量に対して98質量%以上の1,3−ブタジエンという1,3−ブタジエン含有量を有する純粋な1,3−ブタジエン供給流であり、ストリップ塔において1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を除去するための予備精製を事前に施され、次いで、1,3−ブタジエン処理プラントに供給され、
前記方法は、
再循環流を、2つの副流(substream)、詳細には、
− 純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製のためのストリップ塔で精製されて、予備精製済みの純粋な1,3−ブタジエン供給流も含む第1の精製済み再循環流を生じる、第1の副流、および
− 選択溶媒を用いて抽出蒸留によって抽出蒸留プラントで精製される、第2の副流
に分割する工程を含み、
前記抽出蒸留プラントが、
− 精留塔の形をしており、下部領域において再循環流の第2の副流および上部領域において選択溶媒が液体形態で供給されるメインスクラバであり、選択溶媒が、再循環流の第2の副流と向流でメインスクラバを通って流れ、1,3−ブタジエンを含有するようになり、ブタンおよびブテンを含む頂部流が排出されるメインスクラバ、ならびに
− メインスクラバから底部流が供給され、第2の精製済み再循環流塔頂留出物と精製済み選択溶媒を含む底部流とが取り出されるガス抜き塔(outgasser column)を備え、
第1の精製済み再循環流および第2の精製済み再循環流が、1,3−ブタジエン処理プラントへ再循環され、
但し、第1の副流が最大流速度の要因となると同時に、1,3−ブタジエンの割合が1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流の合計からの全C炭化水素の総質量に対して90質量%以上となるという1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流の全体の仕様を満たすように、再循環流が分割される、方法にある。
【0005】
再循環流の最大副流がストリップ塔において単純な方法で精製されて、高沸点物が除去され、選択溶媒を使用する抽出蒸留によるさらに多くの複合精製が残留副流にのみ必要であり、それにより最小規模が維持されるという、処理技術の点から都合のよい方法で、1,3−ブタジエンを70〜99質量%の範囲で依然として比較的高い割合で含む、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流をワークアップすることが可能であることが分かった。2つの副流への分割は、1,3−ブタジエン処理プラントへの供給流の仕様を満たすように行う。
【0006】
1,3−ブタジエン処理プラントから副流として得られる再循環流は、再循環流の総質量に対して70〜99質量%の1,3−ブタジエン、再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物、再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を一般に含み、再循環流における1,3−ブタジエン、低沸点物、および高沸点物の合計は、100質量%である。
【0007】
再循環流の1,3−ブタジエン含有量は、好ましくは、再循環流の総質量に対して80〜95質量%の範囲にある。
【0008】
本事例での1,3−ブタジエンに比べて低沸点物は、特にC〜C炭化水素である。
【0009】
1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物として、再循環流は、メタンを含み、好ましくは1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物の総質量に対して90質量%以上の割合で特にメタンを含む。
【0010】
本事例では、純粋な1,3−ブタジエン供給流は、純粋な1,3−ブタジエン供給流の総質量に対して98質量%以上の1,3−ブタジエン含有量を有する流れを意味することを理解されたい。
【0011】
さらに好ましくは、純粋な1,3−ブタジエンは、各事例の総質量に対して少なくとも99.0質量%の1,3−ブタジエン、あるいは少なくとも99.4質量%の1,3−ブタジエン、あるいは少なくとも99.75質量%の1,3−ブタジエンを有する市販の純粋なブタジエンを意味することを理解されたい。
【0012】
1,3−ブタジエン処理プラントに供給する前に、これに、ストリップ塔において1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を除去するための予備精製を施す。
【0013】
ストリップ塔は、好ましくは高い圧力、特に3.5〜6.0barの絶対圧の範囲で操作される。ストリップ塔は、好ましくは分離内部構造(separating internal)、特にトレーを装備している。
【0014】
本発明によれば、純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製のための既設のこのストリップ塔はまた、純粋な1,3−ブタジエン供給流に加えて、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流から最大規模の副流が供給される。この流れはまた、純粋な1,3−ブタジエン供給流と同様にストリップ塔の上部領域に供給される。このため、カラムをより高いスループットに調整しさえすればよい。
【0015】
残りの再循環流の第2の部分は、選択溶媒を添加してその精製を行う簡易抽出蒸留プラントに供給される。抽出蒸留プラントは、回収部を省いて、精留塔の形をしたメインスクラバに再循環流の第2の副流を供給すれば通常十分であるという点で簡易化されている。
【0016】
再循環流の第2の副流は、下部領域ではメインスクラバに、その上部領域では選択溶媒に供給される。メインスクラバから、ブタンおよびブテンを含む頂部流が排出され、1,3−ブタジエンを含有する選択溶媒を含む底部流が取り出される。
【0017】
メインスクラバは、いくつかの理論段を備えた蒸留塔として構成されており、その理論段は、使用溶媒および1,3−ブタジエンの必要純度に応じて大きく変えることができる。一般に5〜50、より好ましくは12〜30の理論段でよい。
【0018】
メインスクラバの最高圧は、好ましくは3.5〜6.0barの絶対圧の範囲にある。メインスクラバのカラムの頂部の温度は、好ましくは20〜40℃の範囲にある。
【0019】
ガス抜き塔は、メインスクラバに比べて低い圧力で操作される。
【0020】
抽出蒸留で使用する選択溶媒は、好ましくは、1,3−ブタジエンの除去で知られている慣習的な溶媒である。
【0021】
本発明の方法に適切な選択溶媒は、例えば、ブチロラクトン、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなど、ケトン、例えばアセトン、フルフロールなど、N−アルキル−置換低級脂肪酸アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−ホルミル−モルホリンなど、N−アルキル−置換環式酸アミド(ラクタム)、例えばN−アルキル−ピロリドン、特にN−メチルピロリドンなどである。一般に、N−アルキル−置換低級脂肪酸アミドまたはN−アルキル−置換環式酸アミドが使用される。特に有利な溶媒は、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、フルフロール、および特にN−メチル−ピロリドンである。
【0022】
しかし、これらの溶媒の互いの混合物、例えば、N−メチルピロリドンとアセトニトリルとの混合物、これらの溶媒と、水および/またはtert−ブチルエーテル、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、プロピルtert−ブチルエーテル、n−もしくはイソブチルtert−ブチルエーテルなどの共溶媒との混合を使用することも可能である。
【0023】
N−メチルピロリドンは、好ましくは水溶液の状態、特に8〜10質量%の水、より好ましくは8.3質量%の水と共にある状態が特に適切である。
【0024】
本発明によれば、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流は、ストリップ塔において純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製と共に単に蒸留によって精製される副流が最大規模であり、第2の残留副流が1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流(供給流)の合計の仕様要求を単に満たすような規模に選択されるように、ワークアップ用の2構成プラントに分割される。
【0025】
第2の副流のワークアップは、抽出蒸留を伴うので、第1の副流のワークアップよりも技術的かつエネルギー的に大変である。しかし、この抽出蒸留プラントはまた、本発明によれば従来技術に比べて簡易化されている。本発明によれば、精留塔の形をしたメインスクラバは、再循環流の副流が選択溶媒と逆方向に供給され、それにより選択溶媒が1,3−ブタジエンを含有するようになる。これは、供給流としてメインスクラバに供給される再循環流の第2の副流がその下部領域のメインスクラバに供給されることを意味する。したがって、メインスクラバは回収部を有さない。
【0026】
必要に応じて、特定の一実施形態では、抽出蒸留プラントは、ストリップ塔を有してもよく、そのストリップ塔は、メインスクラバの上流に接続され、再循環流の第2の副流をメインスクラバに供給する前に再循環流の第2の副流から高沸点物を除去するためのものである。
【0027】
抽出蒸留プラントのガス抜き塔は、好ましくは、その頂部から取り出される第2の精製済み再循環流が、第2の精製済み再循環流の総質量に対して>96質量%、好ましくは>99.5質量%の1,3−ブタジエン含有量を有するように構成されている。
【0028】
ストリップ塔は、好ましくは、高沸点物が1000ppm以下の残留含有量になるまで第1の精製済み再循環流から除去されて、第1の精製済み再循環流がその頂部から取り出されるように構成されている。
【0029】
別の好ましい一変形方法では、さらなる副流が、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流から除去され、予備精製なしで1,3−ブタジエン処理プラントへ再循環される。
【0030】
この副流は、好ましくは、再循環流全体の半分より大きい。
【0031】
1,3−ブタジエン処理プラントは、特に、1,3−ブタジエンの重合用、または1,3−ブタジエンと1種もしくは複数のコモノマーとの共重合用のプラントである。
【0032】
コモノマーは、特にスチレンおよび/またはアクリロニトリルである。
【0033】
1,3−ブタジエンの重合または共重合は、特に溶液重合であり得る。
【0034】
溶液重合は、特に、溶媒としてトルエンまたはヘキサンが存在する状態で行うことができる。
【0035】
炭化水素の沸点は互いにわずかしか異ならないので、C炭化水素を含む混合物からの1,3−ブタジエンの蒸留除去は、処理技術の点から困難である。選択溶媒を添加することでのみ、分離が通常可能になり、複雑性が許容可能なレベルになる。
【0036】
したがって、本発明の方法様式が、1,3−ブタジエン処理プラントで得られる流れの精製および再循環を実現し、ストリップ塔において、処理技術の点から単純で、それほどエネルギーを必要としない従来の蒸留に最大規模の副流を供給することによって、1,3−ブタジエン処理プラントに供給される流れの合計が≧90質量%の1,3−ブタジエン含有量を有するという必要条件を満たすことができることはいっそう驚くべきことである。
【0037】
以下の計算は、従来の手順と比較して、本発明による方法様式のエネルギー節約に関する多大な可能性を説明するものである。
【0038】
このため、様々な変形方法でワークアップした1,3−ブタジエン1kg当たりのkJにおいて消費量を計算した。
【0039】
従来技術による比エネルギー消費量:
かなりの熱統合を既に含む従来技術(従来の抽出蒸留)によれば、比エネルギー消費量は、1,3−ブタジエン1kg当たり3898kJである。追加の要因として1,3−ブタジエンの蒸発熱が約370kJ/kgであり、したがって、合計は4268kJ/kgである。
【0040】
本発明の方法による比エネルギー消費量:
ストリップ塔K1(リボイラーなし)における第1の副流(本発明による)のワークアップでは、1,3−ブタジエン1kg当たり約370kJの蒸発熱しか必要ない。
【0041】
精留塔としてメインスクラバを備えた簡易抽出蒸留プラントにおける第2の副流(本発明による)のワークアップでは、予蒸発の386kJ/kgに加えて、メインスクラバおよびガス抜き塔での抽出蒸留に2039kJ/kgが必要であり、したがって、合計は2425kJ/kgである。熱のいくらか(約70%)は、熱統合によって回収することができる。これにより、抽出蒸留では619kJ/kgが残される。さらに予蒸発の386kJ/kgがある。全体として、この変形方法では、約1000kJ/kg、すなわち、従来の抽出蒸留に比べて4分の1未満が必要である。
【0042】
本発明によれば、第1の副流に再循環流を最大割合配分することによって、本発明による方法でのエネルギー消費量は、それに対応する従来の抽出蒸留における消費量の4分の1よりもはるかに低くなる。
【0043】
以下に本発明を図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明による方法の性能に関して好ましいプラントの概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
事前にストリップ塔(K1)における予備精製に送られて、高沸点物がストリップ塔(K1)から底部を介して排出された1,3−ブタジエン供給流(2)が、1,3−ブタジエン処理プラント(A)に供給される。
【0046】
1,3−ブタジエン処理プラント(A)から再循環流(1)が取り出され、再循環流(1)は第1の副流(3)に分割される。第1の副流(3)はストリップ塔(K1)に同様に供給される。ストリップ塔(K1)から高沸点物が排出され、頂部流が取り出される。頂部流は、第1の精製済み再循環流(4)として1,3−ブタジエン処理プラント(A)に供給される。
【0047】
再循環流(1)から第2の副流(5)が取り出され、第2の副流(5)は抽出蒸留プラントに供給される。図1に示す好ましい一実施形態では、再循環流(1)の第2の副流(5)は、高沸点物を除去するために事前にストリップ塔(K4)に、次いで、精留塔の形をしたメインスクラバ(K2)に、その下部領域において供給される。メインスクラバ(K2)に、その上部領域において選択溶媒(流れ6)が供給される。
【0048】
メインスクラバ(K2)の頂部を介して、ブタンおよびブテンを含む流れ(7)が取り出され、排出される。
【0049】
メインスクラバ(K2)からの底部流は、ガス抜き塔(K3)に供給される。ガス抜き塔(K3)から、精製済み選択溶媒を含む底部流(10)が取り出され、メインスクラバ(K2)へ再循環される。ガス抜き塔(K3)の頂部流からの第2の精製済み再循環流(9)が、1,3−ブタジエン処理プラントへ再循環される。
【0050】
図1に示す好ましい変形方法では、再循環流(1)の第3副流が、流れ11として想定されており、これはさらなる精製なしで1,3−ブタジエン処理プラント(A)へ直接再循環される。
図1