【課題を解決するための手段】
【0004】
解決策は、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流を精製する方法であって、再循環流が、
− 再循環流の総質量に対して70〜99質量%の1,3−ブタジエン、
− 再循環流の総質量に対して0.1〜10質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物、および
− 再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を含み、
再循環流における1,3−ブタジエン、低沸点物、および高沸点物の合計が、100質量%であり、
出発材料が、純粋な1,3−ブタジエン供給流の総質量に対して98質量%以上の1,3−ブタジエンという1,3−ブタジエン含有量を有する純粋な1,3−ブタジエン供給流であり、ストリップ塔において1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を除去するための予備精製を事前に施され、次いで、1,3−ブタジエン処理プラントに供給され、
前記方法は、
再循環流を、2つの副流(substream)、詳細には、
− 純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製のためのストリップ塔で精製されて、予備精製済みの純粋な1,3−ブタジエン供給流も含む第1の精製済み再循環流を生じる、第1の副流、および
− 選択溶媒を用いて抽出蒸留によって抽出蒸留プラントで精製される、第2の副流
に分割する工程を含み、
前記抽出蒸留プラントが、
− 精留塔の形をしており、下部領域において再循環流の第2の副流および上部領域において選択溶媒が液体形態で供給されるメインスクラバであり、選択溶媒が、再循環流の第2の副流と向流でメインスクラバを通って流れ、1,3−ブタジエンを含有するようになり、ブタンおよびブテンを含む頂部流が排出されるメインスクラバ、ならびに
− メインスクラバから底部流が供給され、第2の精製済み再循環流塔頂留出物と精製済み選択溶媒を含む底部流とが取り出されるガス抜き塔(outgasser column)を備え、
第1の精製済み再循環流および第2の精製済み再循環流が、1,3−ブタジエン処理プラントへ再循環され、
但し、第1の副流が最大流速度の要因となると同時に、1,3−ブタジエンの割合が1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流の合計からの全C
4炭化水素の総質量に対して90質量%以上となるという1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流の全体の仕様を満たすように、再循環流が分割される、方法にある。
【0005】
再循環流の最大副流がストリップ塔において単純な方法で精製されて、高沸点物が除去され、選択溶媒を使用する抽出蒸留によるさらに多くの複合精製が残留副流にのみ必要であり、それにより最小規模が維持されるという、処理技術の点から都合のよい方法で、1,3−ブタジエンを70〜99質量%の範囲で依然として比較的高い割合で含む、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流をワークアップすることが可能であることが分かった。2つの副流への分割は、1,3−ブタジエン処理プラントへの供給流の仕様を満たすように行う。
【0006】
1,3−ブタジエン処理プラントから副流として得られる再循環流は、再循環流の総質量に対して70〜99質量%の1,3−ブタジエン、再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物、再循環流の総質量に対して0.1〜20質量%の、1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を一般に含み、再循環流における1,3−ブタジエン、低沸点物、および高沸点物の合計は、100質量%である。
【0007】
再循環流の1,3−ブタジエン含有量は、好ましくは、再循環流の総質量に対して80〜95質量%の範囲にある。
【0008】
本事例での1,3−ブタジエンに比べて低沸点物は、特にC
1〜C
3炭化水素である。
【0009】
1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物として、再循環流は、メタンを含み、好ましくは1,3−ブタジエンに比べて沸点の低い沸点物の総質量に対して90質量%以上の割合で特にメタンを含む。
【0010】
本事例では、純粋な1,3−ブタジエン供給流は、純粋な1,3−ブタジエン供給流の総質量に対して98質量%以上の1,3−ブタジエン含有量を有する流れを意味することを理解されたい。
【0011】
さらに好ましくは、純粋な1,3−ブタジエンは、各事例の総質量に対して少なくとも99.0質量%の1,3−ブタジエン、あるいは少なくとも99.4質量%の1,3−ブタジエン、あるいは少なくとも99.75質量%の1,3−ブタジエンを有する市販の純粋なブタジエンを意味することを理解されたい。
【0012】
1,3−ブタジエン処理プラントに供給する前に、これに、ストリップ塔において1,3−ブタジエンに比べて沸点の高い高沸点物を除去するための予備精製を施す。
【0013】
ストリップ塔は、好ましくは高い圧力、特に3.5〜6.0barの絶対圧の範囲で操作される。ストリップ塔は、好ましくは分離内部構造(separating internal)、特にトレーを装備している。
【0014】
本発明によれば、純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製のための既設のこのストリップ塔はまた、純粋な1,3−ブタジエン供給流に加えて、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流から最大規模の副流が供給される。この流れはまた、純粋な1,3−ブタジエン供給流と同様にストリップ塔の上部領域に供給される。このため、カラムをより高いスループットに調整しさえすればよい。
【0015】
残りの再循環流の第2の部分は、選択溶媒を添加してその精製を行う簡易抽出蒸留プラントに供給される。抽出蒸留プラントは、回収部を省いて、精留塔の形をしたメインスクラバに再循環流の第2の副流を供給すれば通常十分であるという点で簡易化されている。
【0016】
再循環流の第2の副流は、下部領域ではメインスクラバに、その上部領域では選択溶媒に供給される。メインスクラバから、ブタンおよびブテンを含む頂部流が排出され、1,3−ブタジエンを含有する選択溶媒を含む底部流が取り出される。
【0017】
メインスクラバは、いくつかの理論段を備えた蒸留塔として構成されており、その理論段は、使用溶媒および1,3−ブタジエンの必要純度に応じて大きく変えることができる。一般に5〜50、より好ましくは12〜30の理論段でよい。
【0018】
メインスクラバの最高圧は、好ましくは3.5〜6.0barの絶対圧の範囲にある。メインスクラバのカラムの頂部の温度は、好ましくは20〜40℃の範囲にある。
【0019】
ガス抜き塔は、メインスクラバに比べて低い圧力で操作される。
【0020】
抽出蒸留で使用する選択溶媒は、好ましくは、1,3−ブタジエンの除去で知られている慣習的な溶媒である。
【0021】
本発明の方法に適切な選択溶媒は、例えば、ブチロラクトン、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなど、ケトン、例えばアセトン、フルフロールなど、N−アルキル−置換低級脂肪酸アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−ホルミル−モルホリンなど、N−アルキル−置換環式酸アミド(ラクタム)、例えばN−アルキル−ピロリドン、特にN−メチルピロリドンなどである。一般に、N−アルキル−置換低級脂肪酸アミドまたはN−アルキル−置換環式酸アミドが使用される。特に有利な溶媒は、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、フルフロール、および特にN−メチル−ピロリドンである。
【0022】
しかし、これらの溶媒の互いの混合物、例えば、N−メチルピロリドンとアセトニトリルとの混合物、これらの溶媒と、水および/またはtert−ブチルエーテル、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、プロピルtert−ブチルエーテル、n−もしくはイソブチルtert−ブチルエーテルなどの共溶媒との混合を使用することも可能である。
【0023】
N−メチルピロリドンは、好ましくは水溶液の状態、特に8〜10質量%の水、より好ましくは8.3質量%の水と共にある状態が特に適切である。
【0024】
本発明によれば、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流は、ストリップ塔において純粋な1,3−ブタジエン供給流の予備精製と共に単に蒸留によって精製される副流が最大規模であり、第2の残留副流が1,3−ブタジエン処理プラントに供給される全流(供給流)の合計の仕様要求を単に満たすような規模に選択されるように、ワークアップ用の2構成プラントに分割される。
【0025】
第2の副流のワークアップは、抽出蒸留を伴うので、第1の副流のワークアップよりも技術的かつエネルギー的に大変である。しかし、この抽出蒸留プラントはまた、本発明によれば従来技術に比べて簡易化されている。本発明によれば、精留塔の形をしたメインスクラバは、再循環流の副流が選択溶媒と逆方向に供給され、それにより選択溶媒が1,3−ブタジエンを含有するようになる。これは、供給流としてメインスクラバに供給される再循環流の第2の副流がその下部領域のメインスクラバに供給されることを意味する。したがって、メインスクラバは回収部を有さない。
【0026】
必要に応じて、特定の一実施形態では、抽出蒸留プラントは、ストリップ塔を有してもよく、そのストリップ塔は、メインスクラバの上流に接続され、再循環流の第2の副流をメインスクラバに供給する前に再循環流の第2の副流から高沸点物を除去するためのものである。
【0027】
抽出蒸留プラントのガス抜き塔は、好ましくは、その頂部から取り出される第2の精製済み再循環流が、第2の精製済み再循環流の総質量に対して>96質量%、好ましくは>99.5質量%の1,3−ブタジエン含有量を有するように構成されている。
【0028】
ストリップ塔は、好ましくは、高沸点物が1000ppm以下の残留含有量になるまで第1の精製済み再循環流から除去されて、第1の精製済み再循環流がその頂部から取り出されるように構成されている。
【0029】
別の好ましい一変形方法では、さらなる副流が、1,3−ブタジエン処理プラントからの再循環流から除去され、予備精製なしで1,3−ブタジエン処理プラントへ再循環される。
【0030】
この副流は、好ましくは、再循環流全体の半分より大きい。
【0031】
1,3−ブタジエン処理プラントは、特に、1,3−ブタジエンの重合用、または1,3−ブタジエンと1種もしくは複数のコモノマーとの共重合用のプラントである。
【0032】
コモノマーは、特にスチレンおよび/またはアクリロニトリルである。
【0033】
1,3−ブタジエンの重合または共重合は、特に溶液重合であり得る。
【0034】
溶液重合は、特に、溶媒としてトルエンまたはヘキサンが存在する状態で行うことができる。
【0035】
C
4炭化水素の沸点は互いにわずかしか異ならないので、C
4炭化水素を含む混合物からの1,3−ブタジエンの蒸留除去は、処理技術の点から困難である。選択溶媒を添加することでのみ、分離が通常可能になり、複雑性が許容可能なレベルになる。
【0036】
したがって、本発明の方法様式が、1,3−ブタジエン処理プラントで得られる流れの精製および再循環を実現し、ストリップ塔において、処理技術の点から単純で、それほどエネルギーを必要としない従来の蒸留に最大規模の副流を供給することによって、1,3−ブタジエン処理プラントに供給される流れの合計が≧90質量%の1,3−ブタジエン含有量を有するという必要条件を満たすことができることはいっそう驚くべきことである。
【0037】
以下の計算は、従来の手順と比較して、本発明による方法様式のエネルギー節約に関する多大な可能性を説明するものである。
【0038】
このため、様々な変形方法でワークアップした1,3−ブタジエン1kg当たりのkJにおいて消費量を計算した。
【0039】
従来技術による比エネルギー消費量:
かなりの熱統合を既に含む従来技術(従来の抽出蒸留)によれば、比エネルギー消費量は、1,3−ブタジエン1kg当たり3898kJである。追加の要因として1,3−ブタジエンの蒸発熱が約370kJ/kgであり、したがって、合計は4268kJ/kgである。
【0040】
本発明の方法による比エネルギー消費量:
ストリップ塔K1(リボイラーなし)における第1の副流(本発明による)のワークアップでは、1,3−ブタジエン1kg当たり約370kJの蒸発熱しか必要ない。
【0041】
精留塔としてメインスクラバを備えた簡易抽出蒸留プラントにおける第2の副流(本発明による)のワークアップでは、予蒸発の386kJ/kgに加えて、メインスクラバおよびガス抜き塔での抽出蒸留に2039kJ/kgが必要であり、したがって、合計は2425kJ/kgである。熱のいくらか(約70%)は、熱統合によって回収することができる。これにより、抽出蒸留では619kJ/kgが残される。さらに予蒸発の386kJ/kgがある。全体として、この変形方法では、約1000kJ/kg、すなわち、従来の抽出蒸留に比べて4分の1未満が必要である。
【0042】
本発明によれば、第1の副流に再循環流を最大割合配分することによって、本発明による方法でのエネルギー消費量は、それに対応する従来の抽出蒸留における消費量の4分の1よりもはるかに低くなる。
【0043】
以下に本発明を図面により説明する。