(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンウエハ板などの電子材料の表面洗浄においてオゾン水を使用し、紫外線を照射することによってオゾンを分解させながら洗浄を行う方法が知られている(特許文献1〜4参照)。このような方法では、オゾンが分解するときに発生するヒドロキシルラジカル(OHラジカルともいう。)の有する強い酸化力により、たとえば電子材料表面に形成されたレジスト膜を剥離することができる。
【0003】
また、紫外線照射を行わずにOHラジカルを発生させて電子材料の表面洗浄を行う方法としてマイクロバブルを用いた方法が知られている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。該方法では水中でオゾンや空気のマイクロバブルを発生させ、これが消滅するときに多量のOHラジカルが生成することを利用して、高い洗浄効果を得ている。これらの方法によれば、オゾンマイクロバブルや5%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと表記することもある。)と空気マイクロバブルとの組み合わせによって、非常に除去が困難であることが知られている「高濃度のイオンインプラント処理によって一部が非晶質炭素に変質したレジスト(当該レジストの非晶質炭素部は、クレストと呼ばれることもある。以下、当該レジストを表面クレスト化レジストともいう。)」を除去することも可能である。
【0004】
更に、超純水中のTOC分解除去やウエハ等の固体表面に付着した有機化合物を分解・除去するために、ユースポイントから離れた場所で発生させたOHラジカルの濃度を数分程度維持してユースポイントに供給して洗浄を行う方法も知られている(特許文献5参照)。特許文献5には、オゾンと、過酸化水素と、水溶性有機物、無機酸、前記無機酸の塩、及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種以上の添加物質と、を純水に溶解させてヒドロキシルラジカル含有水を生成する生成工程と、生成したヒドロキシルラジカル含有水をユースポイントに移送する移送工程と、移送後のヒドロキシルラジカル含有水をユースポイントで供給する供給工程とを含むことを特徴とするヒドロキシルラジカル含有水供給方法が開示されている。
【0005】
しかし、オゾン水を使用する場合には、人体のオゾンへの暴露を抑制する措置が必要となる。また、通常のオゾン発生装置では安定した濃度のオゾン水を供給することが難しく、さらに、OHラジカルの寿命は極めて短いため、ユースポイントにおける溶存オゾン濃度の制御が困難である。更にマイクロバブルを発生させるためにはマイクロバブル発生装置が必要で、洗浄装置が大型化するばかりでなく、これら装置の制御やメンテナンスが煩雑となる。
【0006】
オゾンやマイクロバブルを使用せずにOHラジカルを発生させる方法としては、過酸化水素、硝酸又は亜硝酸に紫外線を照射する方法が知られている。過酸化水素は290nm以下の波長の紫外線を吸収しOHラジカルを発生する。また、硝酸イオンは240nm以下の波長を有する紫外線照射によって直接OHラジカルを生成する(非特許文献3及び4参照)。上記硝酸イオンからのOHラジカルの生成は、硝酸イオンから亜硝酸イオンへの還元を経由すると考えられており、結合エネルギーの観点からは、硝酸イオンから直接OHラジカルを生成するより亜硝酸イオンからOHラジカルを生成する方が有利である。そして、亜硝酸イオンに対する紫外線照射によるOHラジカル生成では、より長波長の紫外線によってもOHラジカルを発生させることができる。
【0007】
オゾンを含有しない、過酸化水素の水溶液に紫外線を照射して電子材料の表面洗浄を行った例としては、過酸化水素水と、揮発性を有するアンモニア溶液等のアルカリ性溶液と純水とを混合して洗浄液とし、この洗浄液に紫外線を照射して照射洗浄液とし、紫外線照射を終えた直後に前記照射洗浄液で基板を洗浄する方法が知られている(特許文献6参照)。
【0008】
一方、過酸化水素の有する酸化力を利用した洗浄方法も知られており、たとえばキレート剤を添加した過酸化水素水と、アンモニアやTMAHなどの塩基性薬液と、水と、を混合した洗浄液を用いて、高密度プラズマを用いたBOSCHプロセスで高アスペクト比のトレンチの洗浄を行う方法が知られている(特許文献7参照)。該方法では、過酸化水素の酸化力で基板表面を酸化し、形成された酸化物層を塩基性薬液で溶かすというリフトオフ機構で洗浄を行っている。洗浄液はオゾンを含まず、また紫外線照射も行っていないことから、OHラジカルの寄与は殆どないと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献5に記載された方法によれば、比較的低濃度の薬液で有機物汚染、粒子汚染および金属汚染を除去することができると主張されている。
しかしながら、OHラジカルの寿命は極めて短いため、たとえ洗浄液に紫外線を照射した直後に基板の洗浄を行ったとしてもOHラジカル濃度は急激に低下してしまう。したがって、高濃度のイオンインプラント処理によって表面が高度にクレスト化したレジスト(表面クレスト化レジスト)のような非常に除去が難しい汚染物質に対する洗浄力については疑問が残る。OHラジカルの寿命を延ばすために特許文献5に記載された方法を採用したとしても、程度の差はあるものの経時的なOHラジカル濃度低下は避けられず、またオゾンや金属汚染源となる無機酸の塩などを使用する必要も生じてしまう。
【0012】
そこで本発明は、オゾンやマイクロバブルを使用しない洗浄液を用い、表面クレスト化レジストの除去も可能な高いOHラジカル濃度で洗浄を行うことのできる洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、オゾンや金属イオンを含まない洗浄液であって、紫外線照射によりOHラジカルを発生する洗浄液を被洗浄体の洗浄面の表面に保持した状態で、紫外線を高強度で照射しながら所定時間洗浄を行うことを着想すると共に、照射する紫外線のエネルギーが高いほど(紫外線の波長が短いほど)OHラジカルの生成効率が高くなるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
第一の本発明は、(a)過酸化水素、第四級アンモニウム水酸化物、及び水を含んでなり、オゾン及び金属イオンを含まない洗浄剤を被洗浄体の被洗浄面の表面に付着および保持させる工程と、(b)前記被洗浄面の表面に付着および保持された前記洗浄液に紫外線光源から200nm以上250nm以下の波長を有する紫外線を照射する工程と、を含んでなり、工程(b)において、紫外線の照射時間:t(単位:秒)及び/又は前記紫外線光源の発光出力:P(単位:mW)を制御して、前記照射時間内に前記被洗浄面の表面に保持される前記洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が予め定めた所定の積算照射量I
0以上となるようにすることを特徴とする、被洗浄体の洗浄方法である。
【0015】
第一の本発明の方法においては、前記紫外線光源として200nm以上250nm以下の波長領域にピークを有する紫外線を出射する紫外線発光ダイオード(以下において「UV−LED」ということがある。)を有する紫外線光源を用い、該紫外線光源の発光出力Pの制御を、前記紫外線発光ダイオードに流す順方向電流を制御することにより行うことが好ましい。
【0016】
また、前記紫外線の照射時における前記被洗浄体の温度又は前記洗浄液の温度を50℃以上80℃以下とすることが好ましい。
【0017】
さらに、第一の本発明の方法においては、被洗浄体の種類と、紫外線照射時における被洗浄体の温度又は洗浄液の温度と、洗浄剤の種類との組み合わせからなる洗浄基礎条件ごとに、紫外線光源の発光強度Pを予め定めた発光強度P
0とし、照射時間tを変えて繰り返し工程(a)及び(b)を行い、十分な洗浄効果が得られる最短の照射時間t
minを決定し、前記発光強度P
0と最短の照射時間t
minとの積として算出される積算照射量を、同一の前記洗浄基礎条件で洗浄を行う際の前記所定の積算照射量I
0とすることが好ましい。
【0018】
なお、非特許文献1及び2に示されているように、表面クレスト化レジストに対する洗浄力が、OHラジカル濃度に依存し、またTMAHのような第四級アンモニウム水酸化物の共存により促進されるので、表面クレスト化レジストのような除去困難な物質が付着した被洗浄体に対しても、上記最短の照射時間t
minを決定することができる。このとき、十分な洗浄効果が得られたか否かは、被洗浄体表面の電子顕微鏡観察や洗浄液の分析などにより容易に判断することができる。
【0019】
更にまた、有効光路長を、前記紫外線光源から照射される紫外線が前記洗浄剤からなる層を透過した時の透過紫外線の放射照度が0.01mW/cm
2となる厚さとして定義したときに、前記工程(a)において、前記被洗浄面の全面を前記洗浄剤が覆い、且つ被洗浄面を覆う洗浄剤の層の厚さが、有効光路長以下となるように、前記被洗浄面の表面に前記洗浄剤を付着および保持させ、且つ、前記工程(b)において前記光源と、前記洗浄剤と、を接触させずに紫外線照射を行うことが好ましい。
【0020】
第二の本発明は、前記第一の本発明の方法で使用する洗浄剤であって、過酸化水素、第四級アンモニウム水酸化物、及び水を含んでなり、オゾン及び金属イオンを含まないことを特徴とする洗浄剤である。
【0021】
第二の本発明の洗浄剤においては、水溶性有機溶媒を更に含んでなるか、又はキレート剤を更に含んでなることが好ましい。
【0022】
第三の本発明は、low-k材からなる構造およびイオン注入領域を有する半導体ウエハの製造方法であって、単位面積あたりの原子数として1×10
14原子/cm
2以上1×10
17原子/cm
2以下のイオン注入に暴露されたフォトレジスト層を、第一の本発明の洗浄方法により除去する工程を含んでなることを特徴とする、半導体ウエハの製造方法である。
【0023】
本明細書において「low-k材」とは、3.5未満の比誘電率を有する絶縁体材料を意味する。
【発明の効果】
【0024】
第一の本発明の洗浄方法によれば、洗浄の間中、紫外線を照射しているので、OHラジカルの寿命が短くても絶えず新たなOHラジカルが生成するため、高度な洗浄効果を得ることができる。さらに、オゾン発生装置やマイクロバブル発生装置を必要としないため、紫外線光源としてUV−LEDを用いることにより装置のコンパクト化が可能で、操作やメンテナンスも容易となる。
【0025】
また、たとえば、被洗浄体と紫外線光源との間の距離d(単位:cm)及び/又は紫外線光源の発光出力P(単位:mW)を制御する形態の第一の本発明の洗浄方法によれば、たとえば数分といった短い時間で効果的な洗浄を行うことができ、枚葉式洗浄装置への適用性も高い。
【0026】
従来、表面クレスト化レジストはアッシング処理を行った後に溶液系の洗浄剤を用いて除去することが一般的であった。しかし、アッシング処理は、半導体ウエハ製造時において層間絶縁膜として使用されるlow-k材を損傷させることがあるため、高度に微細化されたパターンを有する半導体ウエハの製造には適さない。第一の本発明の洗浄方法によれば、このようなlow-k材の損傷を引き起こすアッシングプロセスを経ることなく湿式の洗浄処理のみよって表面クレスト化レジストを除去することが可能となる。したがって、第一の本発明の洗浄方法は、高度に微細化されたパターンを有する半導体ウエハの製造プロセスの洗浄工程として特に好ましく採用できる。
【0027】
第二の本発明の洗浄液は、第一の本発明の洗浄方法における洗浄液として好ましく用いることができる。
【0028】
第三の本発明の半導体ウエハの製造方法によれば、高ドーズのイオン注入に暴露されたフォトレジスト層(表面クレスト化レジスト)の除去を、第一の本発明の洗浄方法によって行うので、low-k材の損傷を引き起こすアッシングプロセスが不要となる。したがって第三の本発明の半導体ウエハの製造方法は、高度に微細化されたパターンを有する半導体ウエハの製造に好ましく採用できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
第一の本発明の洗浄方法は、(a)過酸化水素、第四級アンモニウム水酸化物、及び水を含んでなり、オゾン及び金属イオンを含まない洗浄剤を被洗浄体の被洗浄面の表面に付着および保持させる工程と、(b)前記被洗浄面の表面に付着および保持された前記洗浄液に波長200nm以上250nm以下の波長を有する紫外線を照射する工程と、を含んでなり、工程(b)において、紫外線の照射時間:t(単位:秒)及び/又は前記紫外線光源の発光出力:P(単位:mW)を制御して、前記照射時間内に被洗浄面の表面に保持される前記洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が予め定めた所定の積算照射量I
0以上となるようにすることを特徴とする。
【0031】
ここで、被洗浄体とは、その表面に洗浄により除去したい物質が付着した物品を意味し、たとえば、半導体シリコンウエハ、デバイスパターンが形成されているウエハ、フォトマスク、液晶用ガラス基板等の電子材料を挙げることができる。OHラジカルは、有機物を分解、除去等する効果が高いため、本発明は特にフォトレジスト膜の剥離に有効である。フォトレジスト膜の例としては、半導体製造工程におけるパターン形成用レジスト、パターン転写に用いられるフォトマスクの製造用レジスト、配線基板製造工程におけるパターン形成用レジストやソルダレジスト、印刷版用レジストなどが挙げられる。本発明の方法を採用することのメリットが大きいという理由から、被洗浄体としては、ダマシン法などで用いられる層間絶縁膜構造などのlow-k材からなる構造を有し、且つ単位面積あたりの原子数として1×10
14原子/cm
2以上1×10
17原子/cm
2以下、特に1×10
15原子/cm
2以上1×10
17原子/cm
2以下のイオン注入に暴露されたフォトレジスト層(このようなレジスト層は通常、表面クレスト化レジストからなる。)を表面に有する半導体ウエハ、その中でも特に最小配線ピッチが20nm以上40nm以下の半導体ウエハを使用することが好適である。
【0032】
本発明で使用する洗浄剤は、過酸化水素、第四級アンモニウム水酸化物、及び水を含んでなり、オゾン及び金属イオンを含まない。ここで、「オゾン及び金属イオンを含まない」とは、被洗浄体と接触する前及び/又は紫外線照射を行う前の状態において、これらの成分を洗浄剤成分として積極的に添加しないことを意味し、不純物としての不可避的な混入は許容する。不純物として不可避的に混入するこれら成分の濃度は低ければ低いほど良いが、洗浄剤の総質量基準で通常1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下、最も好ましくは0.01ppm以下であり、0ppmであってもよい。
【0033】
また、前記洗浄剤における過酸化水素の濃度は、洗浄剤の総質量基準で10ppm以上4%以下、特に100ppm以上2%以下であることが好ましく、200ppm以上1%以下であることが最も好ましい。
【0034】
第四級アンモニウム水酸化物としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ベンジルテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド(THEMAH)およびこれらの混合物を使用することができる。これらの中でもTMAH又はTBAHを使用することが好ましい。第四級アンモニウム水酸化物の濃度は、洗浄剤の総質量基準で1〜20%であることが好ましく、3〜15%であることが特に好ましい。
【0035】
前記洗浄剤に用いられる水としては超純水が好ましい。水の含有割合は、洗浄剤の総質量基準で8.999%以上98.999%以下であることが好ましく、16.99%以上96.99%以下であることが特に好ましく、46.98%以上96.98%以下であることが最も好ましい。
【0036】
なお、前記洗浄剤は、エタノールアミンなどの1級アルカノールアミン、エチレンジアミンなどのポリアルキレンポリアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなどのポリオキシアルキレンポリアミン等のアミン化合物を、洗浄剤の総質量基準で10%以下含んでいてもよく、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコールなどのアルキレングリコール類等の水溶性有機溶媒を洗浄剤の総質量基準で90%以下、好ましくは80%以下、最も好ましくは50%以下含んでいてもよい。
【0037】
本発明の洗浄方法における前記(a)工程で洗浄剤を被洗浄体の被洗浄面の表面に付着および保持させる方法は特に限定されず、たとえば被洗浄体がウエハ等の板状体である場合には、その被洗浄面が上を向いた露出水平面となるように被洗浄体を支持台などに固定し、被洗浄面の表面に洗浄液が付着するように供給する方法が好適に採用できる。このとき、確実な洗浄を行うために、被洗浄面の全面を洗浄剤により確実に被覆すると共に、被洗浄体の被洗浄面の表面を被覆する洗浄剤層の厚さを可及的に薄くすることが好ましい。一般に、短波長の紫外線は溶液の層を透過する場合、急激に吸収されて透過しにくいため、洗浄剤の種類や紫外線光源の出力によっては、洗浄剤層の厚さを厚くすると被洗浄面まで紫外線が到達せず、OHラジカルによる洗浄効果が十分に得られないおそれがある。紫外線が被洗浄面に到達するような洗浄剤層の厚さ(たとえば、後述する有効光路長。)を予め把握し、被洗浄面上に存在する洗浄剤層の厚さを当該厚さ以下とすることにより、被洗浄面において確実にOHラジカルによる洗浄効果を得ることができる。
【0038】
本発明の洗浄方法においては、前記被洗浄面の全面を前記洗浄剤が覆い、且つ被洗浄面を覆う洗浄剤層の厚さが、有効光路長以下、好ましくは有効光路長の1/10以下、特に好ましくは有効光路長の1/50以下の厚さとなるようにすることが好ましい。なお、有効光路長とは、前記紫外線光源から照射される紫外線が前記洗浄剤からなる層(洗浄剤層)を透過した時の透過紫外線の放射照度が0.01mW/cm
2となる洗浄剤層の厚さとして定義される。
【0039】
なお、前記有効光路長を規定する放射照度の値:0.01mW/cm
2(10μW/cm
2)は、実用的な処理時間(紫外線照射時間)において、被洗浄面の極近傍において有効濃度のOHラジカルを発生できるという観点から決定された値である。
【0040】
有効光路長(以下、L
aと略記することもある。)の決定は、例えば次の工程(1)〜(5)(S101〜S105)により行うことができる:
(1)所定の光路長を有する紫外線透過性光学測定用セル(以下において単に「セル」ということがある。)の内部に、洗浄剤を充填する工程S101;
(2)光源とセルとの間の距離を、実際の洗浄時(工程(b))における光源から洗浄剤層の表面までの距離と同一にして、実際の洗浄時(工程(b))における紫外線照射と同一の発光条件で発光させた紫外線を、光源からセル内に向けて照射する工程S102;
(3)セルを通過した透過紫外線の放射照度(単位:mW/cm
2)を測定する工程S103;
(4)上記工程(1)乃至(3)(S101〜S103)を、異なる光路長を有する複数のセルについて行うことにより、透過紫外線の放射照度と光路長との関係を求める工程S104;および、
(5)上記工程(4)(S104)において求めた、透過紫外線の放射照度と光路長との関係に基づいて、有効光路長L
aを決定する工程S105。
【0041】
なお、上記工程(2)(S102)において、紫外線(UV)を平行光として出射する光源を用いる場合には、空気のUV透過率は極めて高いので上記有効光路長L
aは光源から洗浄剤層液面までの距離の影響を受けないため、光源とセルとの距離を実際の洗浄時(工程(b))における光源から洗浄剤層の表面までの距離と一致させる必要は特にない。しかし、UVを放射状に出射する光源を用いる場合には、単位面積当たりの照射量は光源から洗浄剤層液面までの距離の2乗に反比例するので、光源とセルとの間の距離を実際の洗浄時(工程(b))における光源から洗浄剤層の表面までの距離と一致させる必要がある。
【0042】
上記工程(4)〜(5)(S104〜S105)において、透過紫外線の放射照度と光路長との関係は、Lambert−Beerの法則に従う。すなわち、透過紫外線の放射照度I
1は、光路長Lに対して、次の式(1)の関係にある。
log(I
1/I
0)=−αL …(1)
式(1)中、I
0は媒質に入射する前の波長λの紫外線の放射照度であり、αは洗浄剤と波長λに対応して定まる比例定数(吸光係数)である。一般に、UV−LEDの発光スペクトルのピーク幅は極めて狭いので、光源としてUV−LEDを用いた場合、透過紫外線の放射照度の光路長依存性を議論するにあたっては、UV−LEDの発光ピーク波長λ
peakにおける吸光係数α(λ
peak)のみを考えれば十分である。式(1)は次の式(2)のように変形できる。
logI
1=−αL+logI
0 …(2)
したがって主ピーク波長λ
peakにおける透過紫外線の放射照度I
1の対数と、セルの光路長Lとの組を複数得ることにより、主ピーク波長λ
peakにおける透過紫外線の放射照度I
1と光路長Lとを関係付ける回帰直線を求めることができる(上記工程(4)(S104))。回帰直線の算出には例えば最小二乗法等の公知の方法を用いることができる。そして紫外線光源の有効光路長L
aは、該回帰直線においてI
1=0.01mW/cm
2(10μW/cm
2)を与える光路長Lとして求めることができる(上記工程(5)(S105))。
【0043】
被洗浄体の被洗浄面の表面を被覆する洗浄剤層の厚さを制御する方法としては、たとえばウエハ等の板状体である被洗浄体を、被洗浄面が上を向いた露出水平面となるように支持台などに固定して洗浄を行う場合には、次のような方法が好適に採用できる。すなわち、被洗浄体の外周の外側に堰を設けた洗浄装置を用い、この堰の内側に洗浄液を供給して洗浄剤の層厚(深さ)を制御する方法(
図1〜6参照)や、支持台に固定された被洗浄体を水密に覆うことのできる紫外線透過性の板状の天窓を有するカバーと、カバーで被洗浄体を覆った時の被洗浄体の被洗浄面と上記天窓内面との距離を(水密状態を保ちながら)調節する機構と、を有する洗浄装置を用い、カバーの内部に洗浄剤を封入又は流通させる方法(
図9参照)などが好適に採用できる。
【0044】
このとき、洗浄時において被洗浄体は静止させていてもよく、回転運動や揺動をさせる等、動かしてもよい。但し、前者の方法(被洗浄体の外周の外側に堰を設けた洗浄装置を用い、この堰の内側に洗浄液を供給して洗浄剤の層厚(深さを)制御する方法(
図1〜6参照))を採用した場合には、被洗浄体を動かすと洗浄液の液面が変動するので堰以外の制御手段が必要となる。たとえば、被洗浄体を回転させた場合には、遠心力により回転軸中心部の厚さが薄くなり液が堰からオーバーフローするので、中心部に一定量の洗浄剤を絶えず供給しオーバーフロー分を補う、堰の高さを高くする、あるいはオーバーフロー抑制用のカバーを設けると共に堰に洗浄液抜き出し口を設けるなどして、回転速度に応じて、上記洗浄液の供給速度と抜き出し速度とをバランスさせて液面が定常状態を保つようにすることが好ましい(
図3〜5参照)。
【0045】
本発明の洗浄方法の(b)工程では、前記被洗浄面の表面に付着・保持された前記洗浄液に200nm以上250nm以下の波長を有する紫外線を照射する。波長250nm以下という短波長の紫外線を照射することによりOHラジカルの発生効率(量子効率)を高くすることができる(非特許文献5参照)。また、200nm未満の波長の紫外線を用いないため、雰囲気中酸素などの物質に吸収されて強度低下を起こす可能性が低く、高い強度を保ったまま紫外線を洗浄剤に照射することができるばかりでなく、オゾンの発生を抑制できる。オゾン発生防止の観点から、照射する紫外線は200nm未満の波長を有する紫外線を含まないことが好ましい。
【0046】
紫外線照射を行う際の光源としては、装置をコンパクトにすることができ、メンテナンスが容易であるばかりでなく、順方向電流を制御することにより出力制御を容易に行うことができるという理由から、200nm以上250nm以下の波長領域にピークを有する紫外線を出射する紫外線発光ダイオード(UV−LED)を有する紫外線光源を用いることが好ましく、オゾンを発生させる可能性のある200nm未満の波長の紫外線を実質的に出射しないという理由から220nm以上250nm以下の波長領域にピークを有する紫外線を出射するUV−LEDを有する紫外線光源を用いることが特に好ましい。
【0047】
また、洗浄効率を高めるために、前記紫外線照射時における前記被洗浄体の温度又は前記洗浄液の温度を50℃以上80℃以下とすることが好ましい。更に、紫外線照射と合わせて洗浄剤に超音波照射を行ってもよい。
【0048】
本発明の洗浄方法では、前記紫外線照射を、紫外線照射時間:t(単位:秒)及び/又は前記紫外線光源の発光出力:P(単位:mW)を制御して、前記照射時間内に被洗浄面の表面に保持される前記洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が予め定めた所定の積算照射量I
0以上となるようにする必要がある。こうすることにより高い歩留まりで確実な洗浄を行うことが可能となる。
【0049】
本発明の洗浄方法においては、被洗浄体の種類と、紫外線照射時における被洗浄体の温度又は洗浄液の温度と、洗浄剤の種類との組み合わせからなる洗浄基礎条件ごとに、紫外線光源の発光強度Pを予め定めた発光強度P
0とし、照射時間tを変えて繰り返し洗浄(工程(a)及び(b))を行い、十分な洗浄効果が得られる最短の照射時間t
minを決定し、前記発光強度P
0と最短の照射時間t
minとの積として算出される積算照射量を、同一の洗浄基礎条件で洗浄を行う際の前記所定の積算照射量I
0とすることが好ましい。
【0050】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号を省略することがある。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。
【0051】
図1及び
図2は、本発明の洗浄方法を好適に行うことのできる洗浄装置100を模式的に説明する縦断面図である。
図1及び
図2において、紙面上下方向が鉛直方向を表す。洗浄装置100は、円盤状のウエハである被洗浄体1を洗浄する装置であり、被洗浄体1が載置される支持台(円盤状ターンテーブル)10と、支持台10を回転可能に支持する支柱11と、支持台10の外周部に接して昇降可能に設けられたリング状の堰用側壁12と、洗浄剤供給ノズル20と、支持台10に対向可能に設けられた紫外線光源30と、リンス液供給ノズル40と、を有する。
【0052】
支持台10は、支柱11を介してモータに接続されており、支柱11を中心として回転可能とされている。堰用側壁12と支持台10との接触は水密とされており、支持台10と堰用側壁12とによって画定される凹部13に洗浄液を溜めることができるようになっている。堰用側壁12は昇降手段(不図示)により図中の矢印Aの方向に昇降することが可能とされている。堰用側壁12を図中の矢印Aの方向に昇降させることにより、支持台10から見た堰用側壁12の高さ(すなわち凹部13の深さ)を調節することが可能である。
【0053】
紫外線光源30は、被洗浄体1の被洗浄面1aと略同一の形状を有する円形の基板31と、基板31に配列搭載された複数の紫外線発光ダイオード32、32、…(以下において単に「UV−LED32」ということがある。)と、UV−LED32を封止する紫外線透過性の蓋33と、基板31と熱的に結合されたヒートシンク34と、を有している。UV−LED32は、必要に応じてパッケージ化されていてもよい。紫外線透過性の蓋33は、例えばサファイアや石英等の紫外線透過性材料からなり、蓋33と基板31とによって画定される空間内にUV−LED32を封止している。ヒートシンク34は放熱用フィンを有し、放熱用フィンは、紫外線発光ダイオード冷却用流体流路内に露出し、該流路内を流通する紫外線発光ダイオード冷却用流体によって、UV−LEDで発生した熱を放熱できるようになっている。
【0054】
洗浄剤供給ノズル20は、不図示の駆動手段によって
図1中の矢印Bの方向に移動可能に設けられており、ノズル先端に設けられた吐出口20aから被洗浄体1に洗浄剤を供給する。洗浄剤を供給する必要がない時、洗浄剤供給ノズル20は、吐出口20aが堰用側壁12の外側に来る位置に後退している。
【0055】
リンス液供給ノズル40は、不図示の駆動手段によって
図2中の矢印Cの方向に移動可能に設けられており、ノズル先端に設けられた吐出口40aから被洗浄体1にリンス液を供給する。リンス液を供給する必要がない時、リンス液供給ノズル40は、吐出口40aが堰用側壁12の外側に来る位置に後退している。
【0056】
図1及び
図2を参照しつつ、洗浄装置100の動作について説明する。
工程(a)の開始前には、被洗浄体1はまだ支持台10に載置されておらず、堰用側壁12の上端部は支持台10の載置面と同じかそれよりも低い位置にある。洗浄剤供給ノズル20aは、吐出口20aが堰用側壁12の外側に来る位置に後退している。また紫外線光源30は支持台10と対向しない位置に配置されている。
【0057】
工程(a)は、洗浄剤を被洗浄体1の被洗浄面1aの表面に付着および保持させる工程である。まず、被洗浄体1が支持台10に載置され、堰用側壁12が所定の高さまで上昇される。洗浄剤供給ノズル20が
図1に示す位置まで前進し、支持台10と堰用側壁12とによって画定される凹部13へ、洗浄剤供給ノズル20から洗浄剤が供給される。凹部13に貯留された洗浄剤の液面が堰用側壁12の上端部まで達すると、洗浄剤の供給が停止され、洗浄剤供給ノズル20は再び吐出口20aが堰用側壁12の外側に来る位置まで後退する。
【0058】
工程(b)は、被洗浄面1aの表面に付着および保持された洗浄液に、紫外線光源30から200nm以上250nm以下の波長を有する紫外線を照射する工程である。紫外線光源30が支持台10と対向する位置(すなわち被洗浄体1の被洗浄面1aに対向する位置。
図1参照。)に移動され、被洗浄面1aの表面に付着および保持された(すなわち凹部13に貯留された)洗浄液に紫外線光源30から紫外線が照射される。上記の通り、工程(b)において、紫外線の照射時間t及び/又は紫外線光源30の発光出力Pは、照射時間内に被洗浄面1aの表面に保持される洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が所定の積算照射量I
0以上となるように制御される。紫外線照射が行われている間、支持台10(円盤状ターンテーブル)は回転させず、静止した状態で保持される。
【0059】
工程(b)が完了すると、リンス工程が行われる。紫外線光源30が支持台10と対向しない位置に移動され、堰用側壁12が下降されて堰用側壁12の上端部が支持台10の載置面と同じかそれよりも低い高さとされる。支持台10(円盤状ターンテーブル)の回転(
図2中の矢印D)が開始され、洗浄剤が廃棄される。リンス液供給ノズル40が
図2の位置まで前進し、支持台10の回転は続けたままでリンス液供給ノズル40から被洗浄面1aにリンス液が供給されることにより、リンス工程が行われる。リンス工程におけるリンス液としては、例えば純水やイソプロピルアルコール等を用いることができる。リンス液の供給を停止し、支持台10の回転を停止することにより、リンス工程が終了される。
【0060】
図3は、本発明の洗浄方法を好適に行うことのできる他の洗浄装置100´を模式的に説明する縦断面図である。
図3において、紙面上下方向が鉛直方向を表す。
図4は、
図3のE−E矢視図である。
図5は、
図3のF−F矢視図である。洗浄装置100´は枚葉式の洗浄装置であり、円盤状ウエハである被洗浄体1を複数載置可能な円盤状の支持台(円盤状ターンテーブル)10’と、支持台10’を回転可能に支持する支柱11’とを有する。支持台10’は、中央部に貫通孔10’aを有している。洗浄装置100’はさらに、支持台10’の外周部に立設されたリング状の外側堰用側壁12’と、支持台10’の内周部(貫通孔10’aの外周部)に立設されたリング状の内側堰用側壁14と、支持台10’の側方および下方を囲むように配設された廃液用トレイ16とを有する。支持台10’の貫通孔10’aの下方には、支柱11’により、貫通孔10’aと連接して支持台オーバーフロー洗浄液排出用凹部15が形成されている。支持台オーバーフロー洗浄液排出用凹部15の底部には排出口17b、17b、…(以下において単に「排出口17b」ということがある。)が設けられており、洗浄液を廃液用トレイ16に向けて排出可能とされている。外側堰用側壁12’の上端部には、オーバーフロー抑制カバー12’aが、支持台10’の内側上方に向けて突出するように設けられており、外側堰用側壁12’の下端部には、排出口17a、17a、…(以下において単に「排出口17a」ということがある。)が設けられている。また廃液用トレイ16の底部には排出口17c、17c、…(以下において単に「排出口17c」ということがある。)が設けられている。
【0061】
洗浄装置100’はさらに、洗浄剤供給ノズル20’、20’、…(以下において単に「洗浄剤供給ノズル20’」ということがある。)と、紫外線光源30’、30’、…(以下において単に「紫外線光源30’」ということがある。)とを有する。洗浄剤供給ノズル20’及び紫外線光源30’は、支持台10’の上方に、円周方向に交互に配置されている(
図5参照)。なお洗浄剤供給ノズル20’は、その吐出口20’aから吐出される洗浄液が内側堰用側壁14の外周側(外側堰用側壁12’側)近傍に落下するように配置されている。
【0062】
図3中の矢印Gは、洗浄剤供給ノズル20’から供給された洗浄剤の流れを示している。洗浄剤供給ノズル20’から、支持台10’と外側堰用側壁12’と内側堰用側壁14とによって画定される凹部13’に供給された洗浄液は、被洗浄体1の被洗浄面1aの表面を流れた後、外側堰用側壁12’の下端に設けられた排出口17aから流出し、廃液用トレイ16に受け容れられる。また、凹部13’から内側堰用側壁14を超えて溢れた洗浄液は、支持台10’の貫通孔10’を通って支持台オーバーフロー洗浄液排出用凹部15に受け容れられた後、排出口17bから流出して廃液用トレイ16に受け容れられる。廃液用トレイ16に受け容れられた洗浄液は、廃液用トレイ16の底部に設けられた排出口17cから排出される。
【0063】
紫外線光源(紫外線発光モジュール)30’は、紫外線を出射する棒状光源と、該光源から出射された紫外線を集光する集光装置とを有し、該棒状光源は、円筒状または多角柱状の基体111と、複数の深紫外発光ダイオード112、112、…とを有する棒状光源110であって、該複数の深紫外発光ダイオード112、112、…が、各深紫外発光ダイオード112の光軸115が基体111の中心軸114を通るように基体111の側面に配置されていることにより、該中心軸114に対して放射状に紫外線を出射する形態の紫外線光源である。このような紫外線光源は、特許文献8に記載されており、その内容はここに参照をもって組み入れられる。
【0064】
図6には、棒状光源(棒状紫外線発光モジュール)110の(X−X´面で切断したときの)横断面図および縦断面図を示している。
図6に示されるように、棒状光源110は円筒状基体111の表面上に複数の紫外線発光ダイオード112、112、…(以下において「UV−LED112」と略記することがある。)が整列配置されており、該円筒状基体の内部には冷却媒体用流路113が形成されている。また、UV−LED112が搭載された円筒状基体111は、石英などの紫外線透過性材料から形成されるカバー116で覆われている。該カバー116は封止剤やパッキン、O−リング等のシール部材117を用いて気密又は水密に円筒状基体111に装着され、その内部にはUV−LED112の耐久性を高めるために不活性ガスまたは乾燥空気が封入されている。
【0065】
UV−LED112、112、…は、素子がサブマウントに搭載された状態またはパッケージに収容された状態で配置され、一定方向に向かって紫外線を出射する。なお、図示しないが、サブマウント又はパッケージには、モジュールの外部からUV−LED112に電力を供給するための配線やUV−LED112を正常に作動させるための回路等が形成されており、該配線や回路への電力の供給は円筒状基体111の表面又は内部に形成された配線を介して行われる。
【0066】
円筒状基体111は、UV−LED112を固定および保持するための支持体として機能するほか、ヒートシンクとしての機能も有し、内部の冷却媒体用流路113に冷却水や冷却用エアーなどの冷却媒体118を流通することによりUV−LED112が発する熱による温度上昇を防止して、素子の安定作動を助け、素子寿命を延ばすことが可能となる。携帯用の本発明の紫外線殺菌装置に用いる場合には、小型ファンを付設し冷却媒体118として冷却用空気を冷却媒体流路113に送風することが好ましい。
【0067】
UV−LED112で発生した熱を効率よく除去するため、円筒状基体111は、主として銅、アルミニウムなどの熱導電性の高い金属やセラミックスなどで構成されていることが好ましく、また、冷却媒体118の熱交換面積を増大させるために冷却媒体用流路113の内壁面には溝加工を施すことが好ましい。さらに、円筒状基体111を金属材料で構成する場合には、筺体の内部もしくは外部に配置されたバッテリー又は外部電源からUV−LED112に電力を供給するための銅線または回路との絶縁を図るための絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0068】
円筒状基体111の側面には、その周方向に沿って、複数のUV−LED112、112、…が、各深紫外LED112の光軸115が該基体111の中心軸114を通るように配置されている。その結果、UV−LED112から出射される紫外線は、該中心軸114に対して放射状に出射されることになる。なお、UV−LED112の光軸115とは、UV−LED112から出射される光芒の中心軸を意味し、該光芒の進行方向とほぼ同義である。また、ここで、「光軸115が該基体111の中心軸114を通るように配置する」とは、なるべくこのような状態を実現するように配置するという意味であり、その状態から僅かに傾いていても問題はない。
【0069】
図6には、基体111の周方向に4個のUV−LEDを配置した例を示しているが、当該形態に限定されるものではなく、深紫外LED112の配置数は円筒状基体111の外径に応じて適宜変更できる。周方向に配置する深紫外LED112の数は、通常3〜20個、好ましくは4〜12個の範囲であるが、周方向に配置する深紫外LED112の数が多いほど紫外線光源30’から出射される紫外線の強度(光量子束密度)は高くなるので、より高強度の紫外線が必要な場合には、円筒状基体111の径を大きくし、周方向に配置する紫外線発光素子の数を、上記範囲を超えて多くすることができる。
【0070】
UV−LED112、112、…は、
図6の縦断面図に示すように円筒状基体111の長手方向に列を形成するように配置することが好ましい。このとき、深紫外LED112、112、…は、紫外線照射領域における強度が均一になるように、円筒状基体111側面に密に規則正しく配列するように配置することが好ましい。
【0071】
図7及び
図8には、棒状光源110を有する紫外線光源30’の横断面図及び側面図を示した。紫外線光源30’は、内面が長楕円反射ミラーからなる出射側反射ミラー120となっている出射側筐体125と、内面が長楕円反射ミラーからなる集光側反射ミラー123となっていると共に紫外線出射用開口部130が形成されている集光側筐体126と、紫外線出射用開口部130に配置されたコリメート光学系140からなる本体150を有し、該本体150の内部に棒状光源110が配置されている。本体150において出射側筐体125と集光側筐体筐体126とは互いに着脱可能に又はヒンジ等を用いて開閉可能とされていることが好ましい。また、本体150の
図7及び
図8における上下両端開口部には、紫外線が外部に漏れ出ることを防止するためのカバー(不図示)が設けられている。
【0072】
図7及び
図8に示す態様では、出射側反射ミラー120と集光側反射ミラー123とは実質的に同形状の長楕円反射ミラーであるので、本体150において、出射側筐体125と集光側筐体126とが結合されて形成される内部空間の形状は、出射側反射ミラーの焦点軸121及び出射側反射ミラーの集光軸122の2軸をそれぞれ焦点軸とする楕円形の断面(ただし、開口部130に相当する部分が欠損している。)を有する柱状体となる。出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123の表面は、紫外線に対する反射率が大きい材質、たとえばRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族金属、Al、Ag、Ti、これらの金属の少なくとも一種を含む合金、又は酸化マグネシウムで構成されることが好ましく、反射率が特に高いという理由から、Al、白金族金属又は白金族金属を含む合金、又は酸化マグネシウムで形成されていることが特に好ましい。
【0073】
集光側反射ミラー123及び集光側筐体126には、スリット状に紫外線出射用開口部130が設けられ、該開口部130には、集光された紫外線を平行若しくは略平行な光束に変換するコリメート光学系140が配置されている。コリメート光学系140は合成又は天然石英、サファイア、紫外線透過性樹脂等の紫外線透過性の高い材質で構成されることが好ましい。該コリメート光学系140は紫外線出射用開口部130に脱着可能に取り付けられていることが好ましい。
【0074】
紫外線光源30’において、棒状光源110は、その中心軸114が出射側反射ミラーの焦点軸121と一致するように配置される。このような位置に棒状光源110が配置されるので、該棒状光源110から放射状に出射される紫外線は出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123で反射されて集光側反射ミラーの焦点軸124(すなわち出射側反射ミラーの集光軸122)上に収斂するように集光され、集光された紫外線は紫外線出射窓13からミラー14に向けて出射される。
【0075】
このように、紫外線光源30’では、原理的には、棒状光源110から放射状に出射される紫外線の全てを集光側反射ミラー123の焦点軸124上に集光でき、紫外線出射用開口部130方向に向かわない方向(たとえば反対方向や横方法)に出射された紫外線をも有効に利用することができる。すなわち、棒状光源110において、光軸115が紫外線出射用開口部130方向に向かうようにUV−LED112、112、…の全てを同一平面上に配置する必要はなく、横方向や反対方向に向けて配置することも可能となる。したがって、棒状光源110では、単位空間当たりに配置する紫外線発光素子の数を大幅に増やすことができ、紫外線光源30’では、より強い強度の紫外線を出射することができる。また、紫外線光源30’では大口径のフィールドレンズを使用する必要もない。更に紫外線光源30’では、照射領域は狭いスポット状ではなく長辺が長い長方形領域に均一な強度の紫外線を照射することができるので、被殺菌体の表面を紫外線により均一に殺菌することが可能である。さらにまた、紫外線をコリメートされた平行な光束として出射することができるので、紫外線光源30’から洗浄液面までの光路長が長い場合であっても、紫外線の強度が低下しにくい。
【0076】
洗浄装置100’においては、工程(a)を行いながら工程(b)が行われる。すなわち、支持台10’に被洗浄体1、1、…が載置された後、支持台10’の回転(
図3中の矢印H)が開始される。そして洗浄液供給ノズル20’から凹部13’の内側堰用側壁14近傍への洗浄液の供給が開始される。凹部13’の内側堰用側壁14近傍に供給された洗浄液は、支持台10’の回転運動に由来する遠心力により支持台10’の外周部に向けて流れる。このとき洗浄液は被洗浄体1の被洗浄面1aの表面を流れることになる。外側堰用側壁12に達した洗浄液は、排出口17aから流出して廃液用トレイ16に受け容れられる。このとき、洗浄液供給ノズル20’からの洗浄液の供給速度および排出口17aの形状は、洗浄液供給ノズル20’からの洗浄液の供給速度と排出口17aからの洗浄液の排出速度とがバランスして、凹部13における洗浄液面が定常状態を保つように調整されている。
【0077】
洗浄液の供給とともに、被洗浄面1aの表面に付着および保持された洗浄液に紫外線光源30’から波長200〜250nmの紫外線が照射される(工程(b))。上記したように、紫外線の照射時間:t(単位:秒)及び/又は紫外線光源の発光出力:P(単位:mW)は、照射時間内に被洗浄面1aの表面に保持される洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が予め定めた所定の積算照射量I
0以上となるように制御される。
【0078】
洗浄剤供給ノズル20’からの洗浄剤の供給、および、紫外線光源30’からの紫外線の照射が停止されることにより、工程(a)及び(b)が終了される。
【0079】
本発明の洗浄方法を実施するための洗浄装置に関する上記説明では、被洗浄体の外周の外側に堰(12、12’)を設け、この堰の内側に洗浄液を供給して洗浄剤の層厚(深さ)を制御する形態の洗浄装置100、100’を例示したが、本発明の洗浄方法を実施するための洗浄装置はこれらの形態に限定されるものではない。例えば、支持台に固定された被洗浄体を水密に覆うことのできる紫外線透過性の板状の天窓を有するカバーと、カバーで被洗浄体を覆った時の被洗浄体の被洗浄面と上記天窓内面との距離を(水密状態を保ちながら)調節する機構と、を有し、カバーの内部に洗浄剤を封入又は流通させることにより、被洗浄面の表面に形成される洗浄剤層の厚さを制御する形態の洗浄装置を用いることも可能である。
図9は、そのような他の洗浄装置100''を模式的に説明する縦断面図である。
図9の紙面上下方向が鉛直方向を表す。
図9において、
図1〜8に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜8における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
洗浄装置100''は、被洗浄体1が載置される支持台(円盤状ターンテーブル)10と、支持台10を回転可能かつ昇降(
図9中の矢印I)可能に支持する支柱11’と、支持台10の外周部と水密に摺動可能なリング状の外側堰用側壁12''と、外側堰用隔壁12''の上端部に水密に固定された紫外線透過性の板状の天窓18と、外側堰用側壁12''を貫通して設けられた洗浄剤供給管50及び洗浄剤排出管51と、天窓18を介して支持台10と対向するように設けられた紫外線光源30と、を有する。外側堰用側壁12''と天窓18とによりカバーが形成されている。すなわち、支持台10の外周部が外側堰用側壁12''の内周面と接触しているとき、支持台10と、外側堰用側壁12''と、天窓18とによって空間19が画定される。洗浄剤供給管40及び洗浄剤排出管41は、該空間19内部に洗浄剤を封入または流通させることができるように配置されている。
【0081】
支持台10に被洗浄体1を載置する前には、支持台10を下降させ、支持台10の外周部と外側堰用側壁12''の内周面とが接触していない状態とする。支持台10に被洗浄体1を載置した後、支持台10を上昇させて支持台10の外周部と外側堰用側壁12''の内周面とが接触した状態とし、且つ、空間19の厚みを、被洗浄体1の被洗浄面1aから天窓18までの距離が所望の値となるように調整する。洗浄剤供給管50から空間19に洗浄剤を供給し、空間19を洗浄剤で満たす(工程(a))とともに、空間19内の洗浄剤(すなわち被洗浄面1aの表面に付着および保持された洗浄剤)に紫外線光源30から波長200〜250nmの紫外線を照射する(工程(b))。この際、洗浄剤排出管51を閉じて、洗浄剤を空間19内に封入した状態としてもよく、洗浄剤排出管51を閉じることなく洗浄剤供給管50から継続的に洗浄剤を供給することにより、洗浄剤が空間19内を流通するようにしてもよい。上記同様に、紫外線の照射時間:t(単位:秒)及び/又は紫外線光源の発光出力:P(単位:mW)は、照射時間内に被洗浄面1aの表面に保持される洗浄液に対して照射される紫外線の積算照射量I(単位:mJ/cm
2)が予め定めた所定の積算照射量I
0以上となるように制御される。
【0082】
洗浄剤供給管40からの洗浄剤の供給および紫外線光源30からの紫外線の照射が停止されることにより、工程(a)及び(b)が終了される。工程(a)及び(b)の終了後は、支持台10を下降させて支持台10と外側堰用側壁12''とが完全に分離した状態とし、支持台10を回転させて洗浄剤を廃棄する。その後は
図2に示すように、支持台10を回転させながら、リンス液供給ノズル40から被洗浄面1aにリンス液を供給し、リンス工程を行うことができる。
【0083】
第三の本発明の半導体ウエハの製造方法は、low-k材からなる構造およびイオン注入領域を有する半導体ウエハの製造方法であって、単位面積あたりの原子数として1×10
14原子/cm
2以上1×10
17原子/cm
2以下のイオン注入に暴露されたフォトレジスト層を、上記第一の本発明の洗浄方法により除去する工程を含む。本発明の半導体ウエハの製造方法は、low-k材からなる構造を有する半導体ウエハの表面にフォトレジスト層を形成する工程、及び、該フォトレジスト層を形成した半導体ウエハを、単位面積あたりの原子数として1×10
14原子/cm
2以上1×10
17原子/cm
2以下のイオン注入に暴露する工程、をさらに含み得る。フォトレジスト層の形成にあたっては、公知のフォトレジスト形成方法を特に制限なく用いることができる。また、イオン注入にあたっては、公知のイオン注入方法を特に制限なく用いることができる。