【実施例】
【0042】
銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として、従来のようなPVPを用いて、銀ナノワイヤを製造した。
(比較例1)
0.479gの硝酸銀とエチレングリコール30mlからなる溶液(溶液X)と、の0.492gポリビニルピロリドン(平均分子量55000、N−ビニル−2−ピロリドンのモル濃度として0.144mol/l)と0.0233gの鉄(III)−アセチルアセトナートと0.105gのNaClとエチレングリコール30mlからなる溶液(溶液Y)を準備した。50mlのエチレングリコールを160℃まで加熱、攪拌し、ここに液温25℃の溶液Xと液温25℃の溶液Yを同時に4分間かけて添加して、銀ナノワイヤを含有する分散液を得た。
【0043】
この分散液にアセトン300mlを添加、攪拌した後、500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去した。その後、ポリビニルピロリドンを溶解するために純水100mlを添加し攪拌した。そこにアセトンを300ml(純水の3倍容量)加えて攪拌した後、静置することにより、固形物を沈殿させた。前記のアセトン添加から静置する工程までを更に2回繰返しおこなった。沈殿させた固形物を取り出し、イソプロピルアルコール100mlを加えて分散させて分散液を得た。この分散液を500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去し、その後イソプロピルアルコール100mlを加えて分散させた。この遠心分離およびイソプロピルアルコールを添加する操作をさらに1回実施することにより、銀ナノワイヤを洗浄した。
【0044】
その後、分散液を分取し、溶媒を観察台上で揮発させて、銀ナノワイヤをSEMで観察した。SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、長さは30μm、幅は100nmであった。同様に、塗布液を分取し試料台の上で溶媒を揮発させて、X線回折装置(フィリップス社製、X’Pert)を用いて、X線としてCu−Kaを使用し、管電圧40V、管電流40A、スキャンスピード0.0435度/sの条件で測定をおこなった結果、金属銀のピークが認められた。これらの結果から、比較例1の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、比較例1で用いた有機溶媒の量は「1610ml」であった。
【0045】
(比較例2)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。結果、アセトン100mlを加えて攪拌した後、24時間静置しても固形物が十分沈殿せず、洗浄を進めることができなかった。
【0046】
(比較例3)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更し、アセトンを加えて攪拌した後に静置することに変えて500rpm、45分間の条件で遠心分離することに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。結果、500rpm、45分間の条件で遠心分離しても固形物が十分沈殿せず、洗浄を進めることができなかった。
【0047】
(比較例4)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更し、アセトンを加えて攪拌した後に静置することに変えて3000rpm、45分間の条件で遠心分離することに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。銀ナノワイヤをSEMで観察したところ、銀ナノワイヤ同士が接合したような形態であり、一部は板状の形態となっていた。
【0048】
以上のように、比較例1では銀ナノワイヤを合成することができたが、比較例2〜4では使用する有機溶媒の量を比較例1よりも少なくしたことにより、銀ナノワイヤを合成することができなかった。すなわち、PVPを分散剤として用いる限り、使用される有機溶媒の量を低減できないことが確認された。
【0049】
次に、表1に示す条件で、本発明の実施の形態に係る銀ナノワイヤを製造した。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例1)
70mlのベンジルアルコールにオレイルアミン(シグマアルドリッチ製)4.8gとテトラブチルアンモニウムクロライド(和光純薬工業製)0.083gを添加し、溶解させて溶液Aを得た。次に、20mlのベンジルアルコールに硝酸銀0.85gを添加し、溶解させて溶液Bを得た。
【0052】
その後、溶液Aの全量を室温から130℃まで攪拌しながら加熱した。そこに、溶液の温度を130℃で維持しながら、液温が25℃の溶液Bを20minかけて20ml添加して、反応液を得た。この反応液を100rpmの攪拌速度で1時間攪拌しながら、130℃の温度を維持した。その後、反応液を25℃まで冷却し、銀ナノワイヤを含有する溶液を得た。この溶液を500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去し、その後、アセトン30mlを加えて攪拌し、銀ナノワイヤを分散させ、分散液を得た。この分散液に対し、500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去した後、トルエン10mlとイソプロピルアルコール10mlを混合した溶媒を添加して攪拌し、再び遠心分離を行った。このようにして、遠心分離および溶媒添加・攪拌の操作を3回繰り返すことにより、銀ナノワイヤを洗浄し、銀ナノワイヤを含む分散液を得た。
【0053】
この分散液を分取し、溶媒を観察台上で揮発させて、銀ナノワイヤを電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を
図1に示す。SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、長さは20μm、幅は55nmであった。同様に、分散液を分取し試料台の上で溶媒を揮発させて、比較例1と同様にしてX線回折装置を用いて測定をおこなった結果、金属銀のピークが認められた。これらの結果から、実施例1の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、実施例1で用いた有機溶媒の量は、「180ml」であった。
【0054】
(実施例2)
溶液Bの添加時間を20分間から2秒間に変更し、加熱温度を130℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。なお、溶液Bの添加直後の液温は、一時的に100℃まで低下した。実施例2の製造方法で得られた銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例2の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、実施例2〜15について、SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、いずれの実施例も、長さは15〜20μm、幅は45〜60nmの範囲内であった。
【0055】
(実施例3)
溶液Bの添加時間を2秒間から4分間に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例3の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0056】
(実施例4)
溶液Bの添加時間を2秒間から8分間に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例4の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0057】
(実施例5)
溶液Bの添加時間を20分間から8分間に変更し、加熱温度を130℃から110℃に変更し、遠心分離の回転数を100rpmから500rpmに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの添加量を0.081gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例5の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0058】
(実施例6)
硝酸銀の添加量を0.085gに変更し、添加するアミンをオレイルアミン4.8gからドデシルアミン(和光純薬工業製)3.7gに変更し、溶液Bの添加時間を20分間から8分間に変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの添加量を0.081gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例6の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0059】
(実施例7)
添加するアミンをドデシルアミン3.7gからヘキサデシルアミン(和光純薬工業製)4.8gに変更した以外は、実施例6と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例7の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された
【0060】
(実施例8)
添加するアミンの種類をヘキサデシルアミンからオクタデシルアミン(和光純薬工業製)に変更し、攪拌回転数を100rpmから130rpmに変更し、130℃の温度を維持する時間を1時間から30分間に変更した以外は、実施例7と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例8の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0061】
(実施例9)
溶液Bの添加時間を20分間から15分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例9の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0062】
(実施例10)
硝酸銀の量を0.85gから1.7gに変更し、有機アミンをオレイルアミン4.8gからドデシルアミン7.4gに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの量を0.083gから0.17gに変更し、加熱温度を130℃から150℃に変更し、加熱温度の維持時間を1時間から30分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例10の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0063】
(実施例11)
硝酸銀の量を1.7gから3.4gに変更し、ドデシルアミンの量を7.4gから14.8gに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの量を0.17gから0.32gに変更した以外は、実施例10と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例11の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0064】
(実施例12)
ドデシルアミンの量を7.4gから6.8gに変更し、使用するハロゲン化合物をテトラブチルアンモニウムクロライド0.17gから塩化ナトリウム(NaCl)0.034gに変更した以外は、実施例10と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例12の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0065】
(実施例13)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gから塩化カリウム(KCl)0.044gに変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例13の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0066】
(実施例14)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gから塩化アンモニウム(NH
4Cl)0.032gに変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例14の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0067】
(実施例15)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gからHClを0.022g含む濃塩酸水溶液に変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例15の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【0068】
以上のように、実施例1〜15では、銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として、1分子中に10以上のCを含有するオレイルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンのいずれかを用いて銀ナノワイヤを合成することができた。また、実施例では、合成過程において使用された有機溶媒の量(180ml)が、比較例1で使用された有機溶媒の量(1610ml)に比べて、非常に少ないことがわかる。すなわち、本発明によれば、銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として1分子中に10以上のCを含有する有機アミンを用いることにより、使用される有機溶媒量を低減できることが確認された。