特許第6266970号(P6266970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266970
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】とんこつ風味液体調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20180115BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-257069(P2013-257069)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-112075(P2015-112075A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山中 直人
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 〆まで美味しい とんこつしょうゆ鍋|☆Pure Life☆〜おいしく、楽しく、健康に。〜,2017年 5月22日,<https://ameblo.jp/koichi-shoot/entry-11706675391.html>、公開日:2013年11月20日
【文献】 Ca&鉄分☆ 味噌バター→とんこつ鍋,クックパッド,2017年 5月22日,<https://cookpad.com/recipe/1272465>、公開日:2010年10月31日、更新日:2010年11月1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)(B)及び(C)を含有し、25℃、喫食時の濃度における粘度が200mPa・sである野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料。
(A)豚油 液体調味料中0.3〜1.5質量%
(B)バター (A)豚油1質量部に対して0.2質量部
(C)増粘多糖類、でん粉及び加工でん粉から選ばれる1種以上の多糖類 (A)豚油1質量部に対して0.008〜1.0質量部
【請求項2】
25℃、喫食時の濃度における粘度が6〜107mPa・sであり、(A)豚油の含有量が、液体調味料中0.74〜1.48質量%であり、(B)バターの含有量が、(A)豚油1質量部に対して0.68〜1.35質量部であり、(C)多糖類の含有量が、(A)豚油1質量部に対して0.034〜0.680質量部である請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
(C)多糖類が増粘多糖類から選ばれる1種以上の多糖類である請求項1又は2記載の液体調味料。
【請求項4】
さらに、次の成分(D)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液体調味料。
(D)粉乳 (A)豚油1質量部に対して0.005〜5質量部
【請求項5】
(D)粉乳の含有量が、(A)豚油1質量部に対して0.0068〜4.1質量部である請求項4記載の液体調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とんこつ特有の動物性の臭みが抑制され、かつ濃厚感の高い野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
とんこつの濃厚感やコクを有する液体調味料は、最近麺類に限らず他の料理にも使用されており、鍋物にも使用されており、鍋つゆとしてとんこつ風味の鍋つゆも市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、とんこつの風味を向上させるため液体調味料に豚油を多量に配合すると濃厚感は得られるが、とんこつ特有の動物性の臭みも強くなるという問題がある。また、とんこつ風味鍋等の液体調味料においては、野菜を多量に入れた場合、加熱により生じる野菜の香味や水分により、喫食時のとんこつ特有の濃厚感やコクが弱くなってしまうという問題がある。
従って、本発明の課題は、動物性の臭みが低減され、かつとんこつ特有の濃厚感、コクを維持した野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は、とんこつ風味液体調味料の動物臭の低減と十分な濃厚感、コクとを両立すべく種々検討した結果、豚油に加えて、一定量のバターを配合して、喫食時の粘度を一定の範囲に調整することにより、動物臭が低減されるとともに、野菜類を煮込んだ場合でも十分な濃厚感、コクを維持する野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
【0006】
〔1〕次の成分(A)及び(B)を含有し、25℃、喫食時の濃度における粘度が3.5〜500mPa・sである野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料。
(A)豚油
(B)バター (A)豚油1質量部に対して0.03〜5質量部
〔2〕さらに、(C)増粘多糖類、でん粉及び加工でん粉から選ばれる1種以上の多糖類を含有する〔1〕記載の液体調味料。
〔3〕(C)多糖類の含有量が、(A)豚油1質量部に対して0.005〜1.2質量部である〔2〕記載の液体調味料。
〔4〕さらに、(D)粉乳を含有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の液体調味料。
〔5〕(A)豚油の含有量が、液体調味料中0.1〜3質量%である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の液体調味料。
〔6〕(D)粉乳の含有量が、(A)豚油1質量部に対して0.001〜6質量部である〔4〕〜〔5〕のいずれかに記載の液体調味料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料は、とんこつ特有の動物性の臭みがなく、香味のバランスが良く、かつ野菜類を煮込んだ後でも豚油特有の濃厚感、コクを維持しており、嗜好性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の液体調味料は、(A)豚油、及び(B)バター(A)豚油1質量部に対して0.03〜5質量部を含有し、25℃、喫食時の濃度における粘度が、3.5〜500mPa・sである。
【0009】
本発明に用いられる(A)豚油は、豚由来の油脂であり、液体調味料にとんこつ風味を付与する成分である。豚油は、豚の脂肪分を採取したものであればよく、豚脂として市販されている。これらの豚油としては、豚の脂肪分を含む抽出物を用いてもよく、その場合には配合量は油脂分とする。
豚油の含有量は、とんこつ風味のコク・濃厚感を付与する点から、本発明の液体調味料中に、0.1〜3質量%であるのが好ましく、0.15〜2.5質量%がより好ましく、0.2〜2質量%がさらに好ましく、0.3〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0010】
本発明に用いられる(B)バターは、本発明の液体調味料におけるとんこつ特有の動物臭みを低減し、かつ濃厚感、コクを付与する目的で配合される。(A)バターとしては、生乳由来のバターが好ましく、生牛乳由来のバターが好ましい。バターの添加により、とんこつ由来の動物臭が低減されることは意外であった。
(B)バターの含有量は、とんこつ特有の動物臭の低減効果及び濃厚感、コクの付与効果のバランスの点から、(A)豚油1質量部に対して0.03〜5質量部であることが必要であり、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜4質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部であり、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0011】
本発明の液体調味料には、濃厚感及びコクの付与効果の点から(C)増粘多糖類、でん粉及び加工でん粉から選ばれる1種以上の多糖類を含有させるのが好ましい。成分(C)のうち、増粘多糖類としては、例えばキサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、アラビアガム、でんぷん、加工でんぷん、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン、グルテン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等が挙げられる。また、加工でん粉としては、アセチル化アジピン酸架橋でん粉、アセチル化リン酸化架橋でん粉、アセチル化酸化でん粉、オクテニルコハク酸でん粉ナトリウム、酢酸でん粉、酸化でん粉、ヒドロキシプロピルでん粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉、でん粉グリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等が挙げられる。野菜類とともに煮込んだ場合でも濃厚感、コクを維持する点からキサンタンガム、グアーガムがより好ましく、キサンタンガムがさらに好ましい。
(C)多糖類の含有量は、濃厚感、コクの付与効果の点から、25℃、喫食時の濃度における粘度を3.5〜500mPa・sにする量が好ましく、具体的には(A)豚脂1質量部に対して0.005〜1.2質量部が好ましく、0.007〜1.2質量部がより好ましく、0.008〜1.0質量部がさらに好ましい。
【0012】
また、本発明の液体調味料には、とんこつ特有の動物臭を低減させ、濃厚感、コクを付与する点から、さらに(D)粉乳を含有させるのが好ましい。(D)粉乳としては、牛乳の全粉乳又は脱脂粉乳が用いられる。特に、前記(B)バターと(D)粉乳との併用により、とんこつ特有の動物臭の低減効果及び濃厚感、コクの付与効果が増強される。
粉乳の含有量は、動物臭の低減効果、濃厚感、コクの付与効果の点から、(A)豚油1質量部に対して、0.005〜6質量部が好ましく、0.005〜5質量部がより好ましく、0.01〜5質量部がさらに好ましく、0.01〜4質量部がさらに好ましい。
【0013】
本発明には調味料が用いられ、調味料としては、醤油、味噌、食塩等の調味主成分に加え、みりん、ソース、酒類、食酢、果汁、糖類、魚節エキス、昆布エキス、野菜エキス、有機酸類、アミノ酸類、呈味性核酸類、香料、香辛料、着色料、ビタミン、保存料、増粘剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0014】
本発明の液体調味料には、さらにごま、ごま油、なたね油等の植物油、レシチン、酵素分解レシチン、鶏油等を配合することができる。
【0015】
本発明の液体調味料は、野菜類を煮込んだ場合でも良好な濃厚感、コクを維持する点から、25℃、喫食時の濃度における粘度が3.5〜500mPa・sであることが必要であり、5〜400mPa・sであることが好ましく、5〜300mPa・sであることがより好ましく、5〜200mPa・sであることがさらに好ましい。この粘度は前記成分(C)の添加で調節できる。なお、粘度は、B型粘度計で測定することができる。
【0016】
本発明の液体調味料は、そのまま使用できるストレートタイプでもよく、希釈して使用する濃縮タイプのいずれでもよい。前記喫食時の濃度における粘度は、ストレートタイプの場合は液体調味料自体の粘度であり、濃縮タイプの場合は使用時の濃度に希釈した液体調味料の粘度である。
【0017】
本発明の液体調味料は、例えば、(A)豚油、及び(B)バター及びその他の成分を混合した後、加熱殺菌することにより製造することができる。レトルト殺菌する方法としては、該組成物を、一般的なレトルトパウチに充填し、必要により脱気した後、密封(加熱シール)し、品温100℃以上、好ましくは115−130℃で、その温度においての必要殺菌時間、例えば、5分〜60分レトルト処理すると同時に調味加工処理する方法が挙げられる。例えば、蒸気式のレトルト装置、熱水レトルト装置などで圧力0.8〜1.7kg/cm2(ゲージ圧)、115〜130℃の条件で、5〜60分程度処理を行なうことが好ましい。そして、圧力1.0〜1.5kg/cm2(ケージ圧)、121〜127℃で5〜60分程度処理を行なうことがより好ましい。
【0018】
本発明の液体調味料は、野菜類を煮込んだ場合でも十分な濃厚感、コクを維持するので、野菜を煮込んで食する麺のつゆ、鍋つゆ等として良好である。
本発明の液体調味料を使用して、とんこつ風味鍋を製造するには、例えば、具材及び本発明の液体調味料を鍋に入れ、加熱調理すればよい。鍋物に使用する具材としては、通常の鍋物に使用される白菜、ねぎ、春菊などの野菜、豚肉、鶏肉などの肉類、鮭、たら、えび、かになどの魚介類、豆腐、こんにゃくなどが挙げられる。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0020】
実施例1
表1〜表3に示す材料を用いて、野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料を製造した。すなわち、表1〜表3に示す各原料を、最終濃度が表1〜表3の含有量となるように配合した後、水を加えホモミキサーで均質化し、総量が100質量%となるまで水を加えることにより、原料混合物を調製した。
次いで、得られた原料混合物をスタンディング・レトルトパウチに充填し、脱気した後、ヒートシール(密閉)した。その後、これを加圧加熱殺菌釜に入れ、123℃、20分の条件でレトルト殺菌を行い、表1〜表3の野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料を調製した。
【0021】
得られたつゆを、60℃に加熱し、とんこつのコク・濃厚感、とんこつ特有の動物臭を専門のパネラーに食してもらい評価した。加えて、得られたつゆ200mLに対して70gのキャベツを加えてIHクッキングヒーターで煮込み、野菜が液面以下に沈み、沸騰した直後のつゆを採取し、とんこつのコク・濃厚感を専門のパネラーに食してもらい評価した。
【0022】
(評価基準)
(a)豚骨風味のコク・濃厚感
下記の5段階で評価した。
「5」;非常に強いコク・濃厚感を感じる
「4」;強いコク・濃厚感を感じる
「3」;コク・濃厚感を感じる
「2」;ややコク・濃厚感を感じる
「1」;コク・濃厚感を感じない
(b)動物性(豚特有)の臭み
下記の5段階で評価した。
「5」;臭みを感じない
「4」;やや臭みを感じる
「3」;臭みを感じる
「2」;強い臭みを感じる
「1」;非常に強い臭みを感じる
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
表1〜表3から明らかなように、(A)豚油及び(B)バターを含有し、B/Aが0.003〜5質量部、粘度が3.5〜500mPa・sである野菜煮込み用とんこつ風味液体調味料は、動物性の臭みが低減され、かつとんこつ特有の濃厚感、コクを維持していることがわかる。これに対し、B/Aが0.003質量部未満(試験例2、3)や5質量部を超える場合(試験例8)、さらに粘度が3.5〜500mPa・sの範囲外(試験例9、10、16)の場合には、動物臭があったり、とんこつ特有の濃厚感が得られない。