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特許6267064Stenotrophomonas属細菌の新規農業用途
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  • 特許6267064-Stenotrophomonas属細菌の新規農業用途 図000023
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267064
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】Stenotrophomonas属細菌の新規農業用途
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20180115BHJP
   A01G 22/00 20180101ALI20180115BHJP
   A01N 63/00 20060101ALI20180115BHJP
   A01P 5/00 20060101ALI20180115BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180115BHJP
   A01P 9/00 20060101ALI20180115BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20180115BHJP
   C05F 11/08 20060101ALI20180115BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20180115BHJP
   C12R 1/64 20060101ALN20180115BHJP
【FI】
   A01G7/00 605Z
   A01G1/00 301Z
   A01N63/00 F
   A01P5/00
   A01P7/04
   A01P9/00
   A01P21/00
   C05F11/08
   C12N1/20 E
   C12N1/20 A
   C12R1:64
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-121545(P2014-121545)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2015-27995(P2015-27995A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2017年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-134102(P2013-134102)
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-492
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】池内 玲
(72)【発明者】
【氏名】金井 理
(72)【発明者】
【氏名】平山 潤太
(72)【発明者】
【氏名】野田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】伊沢 剛
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 聡
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−194315(JP,A)
【文献】 特開2003−125651(JP,A)
【文献】 特開平02−276569(JP,A)
【文献】 特開2002−010781(JP,A)
【文献】 特開2007−300903(JP,A)
【文献】 特表2013−521803(JP,A)
【文献】 INTERNATIONAL JOURNAL OF SYSTEMATIC BACTERIOLOGY,1993年,Vol. 43, No. 3,pp. 606-609
【文献】 NATURE REVIEWS MICROBIOLOGY,2009年,Vol. 7,pp. 514-525
【文献】 EUROPEAN JOURNAL OF PLANT PATHOLOGY,2007年,Vol. 118,pp. 211-225
【文献】 Microbiology,1997年,Vol. 143,pp. 3921-3931
【文献】 Plant and Soil,2002年,Vol. 241,pp. 271-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 63/00
C12N 1/20
C12N 15/00
A01G 7/00
A01G 1/00
A01M 99/00
C05F 11/08
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)を、植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物に病虫害抵抗性を付与する方法。
【請求項2】
Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)を、植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の収量を増加させる方法。
【請求項3】
Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)を、植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の生育を促進する方法。
【請求項4】
農業上有用な植物が、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
農業上有用な植物が、アブラナ科植物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)を有効成分として含有する、農業上有用な植物用の微生物製剤。
【請求項7】
農業上有用な植物が、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物である、請求項6に記載の微生物製剤。
【請求項8】
Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンドファイトであるStenotrophomonas属細菌を植物に人為的に感染させて該植物に病害虫抵抗性を付与する方法、該植物の生長を促進させる方法、該植物の収量を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの化学農薬を中心とした病害虫防除技術は、効率的な食糧確保に貢献してきた。ところが近年、栽培の効率性だけでなく、安心・安全といった領域を含めた無農薬、減農薬による環境保全型農業が望まれ、それに適合した病害虫防除技術(例えば微生物農薬)や生産性の向上技術が必要とされている。
【0003】
農業分野では、依然として、作物の生育促進には化学肥料が使用され、また、病虫害に対しては化学合成農薬が使用されている。また、一部では微生物や微生物が生産する物質を用いた微生物農薬も知られている。しかし、農薬の原体を化学合成により製造する際には、多量のエネルギーが投入されるという問題、環境への負荷が大きいという問題などがある。また、一方、現在使用されている環境負荷が小さい微生物農薬は高価であり、安定した防除効果が得られないため、品質や収量が減少してしまう問題がある。
【0004】
このような状況において、植物に共生する微生物であるエンドファイトのなかに、病害虫の防除や収量の増加などの、植物に有益な特性を付与する微生物が報告されている(特許文献1〜9)。しかし、知られるエンドファイトの種類が少ないため、この分野での実用化のためには、実用化の可能性の高い微生物の探索と応用が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-042695号公報
【特許文献2】特開2011-051902号公報
【特許文献3】特開2009-232721号公報
【特許文献4】特開2009-067717号公報
【特許文献5】特開2009-051771号公報
【特許文献6】特開2009-050206号公報
【特許文献7】特開2003-300805号公報
【特許文献8】特開2003-274779号公報
【特許文献9】特開2002-223747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微生物学的な手段によって農業上有用な植物に対し有益な性質を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の特徴を包含する。
(1) ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物に病虫害抵抗性を付与する方法。
(2) ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の収量を増加させる方法。
(3) ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物の生育を促進する能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の生育を促進する方法。
(4) 農業上有用な植物が、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 農業上有用な植物が、アブラナ科植物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記細菌がStenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)、或いは、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加させる能力、及び/又は該植物の生育を促進する能力を有する、その変異株である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加させる能力、又は該植物の生育を促進する能力を有する細菌を有効成分として含有する、農業上有用な植物用の微生物製剤。
(8) 農業上有用な植物が、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物である、(7)に記載の微生物製剤。
(9) 前記細菌がStenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)、又はその変異株である、(7)又は(8)に記載の微生物製剤。
(10) Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)、或いは、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加させる能力、及び/又は、該植物の生育を促進する能力を有する、その変異株。
【0008】
本明細書において「ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属細菌」は、農業上有用な植物体内に共生して植物に病虫害抵抗性を付与する能力、植物の収量を増加させる能力、又は植物の生育を促進する能力を有する、エンドファイト細菌を指す。一般に、「エンドファイト」なる用語は、植物に共生する微生物をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、微生物学的な手段、すなわちエンドファイトとして使用可能なStenotrophomonas属細菌(例えばNITE P-492株)によって、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物について、該植物に病害虫抵抗性を付与すること、該植物の生長を促進すること、及び/又は、該植物の収量を増加することが可能となる。例えばアブラナ科作物に対して、病虫害抵抗性を付与させるだけでなく、植物の生育を促進し、葉などの植物体構成成分の収量を増加させることが可能になる。後述の実施例で例証するように、その程度は、ケールにおいて虫害、例えばコナガは73.5%に減少し、例えばカタツムリによって枯死する被害に対する生存株率は144.5%であった。病害についても、例えば根こぶ病に対する発病率はキャベツで23%、コマツナで17%減少した。また、生育促進効果により収量が166.7%に増加した。コマツナにおいて収量は112.9%に増加した。その他の植物についても、数%から十数%の収量増加が認められた。本発明の細菌を農業分野で使用することによって、減農薬、無農薬栽培においても収量は減少せず、増収も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、根こぶ病の病害程度の評価方法を示す図である。図に示した病害程度を基準に、0から4までの5段階で根こぶ病の被害程度を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1. 細菌
本発明に用いることができる細菌は、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属する細菌であって、農業上有用な植物、例えば、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物の体内に共生して、該植物に病害虫抵抗性を付与する能力、該植物の生長を促進する能力、及び/又は、該植物の収量を増加する能力を有する細菌であれば特に限定されない。
【0012】
本明細書では、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属細菌は、上記のいずれか1つ、2つ又は3つの能力を植物体に付与することができるエンドファイト細菌であり、自然界から単離された細菌だけでなく、そのような細菌に突然変異処理を施して産生された変異体も包含する。
【0013】
上記細菌の具体例として、新規のStenotrophomonas細菌である、Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492;以下では、単に「NITE P-492株」と称することもある。)、或いは、上記のいずれか1つ又は複数の能力を有する、その変異株が挙げられる。
【0014】
上記のStenotrophomonas sp. MYK101は、圃場で栽培されたケールから単離された菌株の中から、生育、収量又は病虫害抵抗性についての選抜試験により選抜され、単離された株である。Stenotrophomonas sp. MYK101は、2008年3月5日に、国内寄託機関である、独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に本出願人により寄託され、受託番号 NITE P-492が付与されている。
【0015】
このNITE P-492株は、種々の細菌の属及び種について、16SrDNA遺伝子の部分配列(本件の場合、Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)株の16SrDNA遺伝子の対応する部分塩基配列(配列番号1)との比較)を用いて、相同性検索を行った結果、相同性の高い上位3種についてStenotrophomonas humiと99%(725bp/728bp)、Stenotrophomonas terraeと98%(717bp/728bp)、及びStenotrophomonas maltophiliaと98%(716bp/728bp)の高い配列同一性が確認されたことから、Stenotrophomonas属に属する新規の細菌であることが判明した。
【0016】
また、このNITE P-492株は、次の表1及び表2に示す基質資化性を有している。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
本発明で使用できる細菌としては、新規Stenotrophomonas属細菌である NITE P-492株と同等の上記能力を有する細菌、例えば、Stenotrophomonas属に属し、上記のいずれか1つ又は複数の能力を有し、及び、NITE P-492株と同一の上記の基質資化性を有する細菌や、Stenotrophomonas属に属し、上記のいずれか1つ又は複数の能力を有し、及び、配列番号1に示す塩基配列を少なくとも一部分に含む16SrDNAを有する細菌が挙げられるが、これらには限定されない。さらにまた、NITE P-492株が人為的に突然変異誘発処理されて産生されたその変異株であって、農業上有用な植物、例えばアブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物、の体内に共生して該植物に病害虫抵抗性を付与する能力、該植物の生長を促進する能力、及び/又は、該植物の収量を増加させる能力を有する変異株もまた、本発明で使用することができる。
【0020】
本発明で使用できるStenotrophomonas属細菌を自然界から分離するときには、農業上有用な植物の根、茎、葉などの植物体構成部から、該植物に共生する細菌類を培養により分離し、上記の能力のいずれかについて、並びに/或いは、上記の配列番号1に示す塩基配列との配列同一性、及び/又は、上記の基質資化性について、選抜試験を行い得る。
【0021】
また、突然変異誘発処理を行う場合には、NITE P-492株に対し任意の適当な変異原を用いて突然変異が行われ得る。
【0022】
ここで、「変異原」なる用語は、広義の意味を有し、例えば変異原作用を有する薬剤のみならずUV照射等の高エネルギー線照射のごとき変異原作用を有する処理も含むものとする。適当な変異原の例として、エチルメタンスルホネート、UV照射、ガンマ線照射、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体、及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
【0023】
或いは、細菌に変異を導入する他の手段には、遺伝子組換え法を利用する方法がある。特に、虫害対策の場合、細菌ゲノムへの、忌避物質の産生を可能とする遺伝子若しくはcDNAの導入、Btトキシンなどの殺虫蛋白質をコードする遺伝子若しくはcDNAの導入などが挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる細菌は、振とう培養等の通常の培養法により、Stenotrophomonas属細菌について通常使用されるような条件下で培養されうる。培養に用いる培地としては炭素源としてグルコース、シュークロース、デンプン、デキストリンなどの糖類を、窒素源として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩等の無機窒素源、または、酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ポリペプトン、サトウキビ絞り粕(バカス)、ビールカス、大豆粉、米糠、魚粉等の有機窒素源を、無機塩としてリン酸一カリ、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄等の、リン、カリウム、マンガン、マグネシウム、鉄等を含む塩類を、それぞれ含有する合成または天然の培地が挙げられる。培養温度は、通常、20〜37℃、好ましくは27〜32℃で、12〜48時間、好気的条件下で行うことができる。
【0025】
本発明の方法には、細菌の培養液をそのまま使用することができるが、細菌の培養液を膜分離、遠心分離、濾過分離等の方法により分離した、細菌の高濃度物を用いることもできる。
【0026】
本発明の方法ではまた、細菌の培養液を乾燥させたものを使用することができる。また、細菌の培養液を活性炭、珪藻土、タルク、ゼオライト、ピートモス、パーライト、ベントナイト、モンモリナイト、バーミュキュライト等の多孔吸着体に吸着させ乾燥させたものを使用することができる。多孔吸着体は、1種類でもよいし、複数の担体を組合せて用いてもよい。乾燥方法は通常の方法でよく、例えば凍結乾燥、減圧乾燥でよい。これらの乾燥物は乾燥後さらにボールミル等の粉砕手段で粉砕されてもよい。
【0027】
細菌は、上記の培養液、高濃度物又は乾燥物としてそれ自体単独で本発明の用途に用いることができるが、更なる他の任意成分と組み合わせて通常の微生物製剤と同様の形態(例えば粉剤、水和剤、粒剤、乳剤、液剤、懸濁液、フロアブル剤、塗布剤等の形態)に製剤化して用いることもできる。組み合わせて使用することができる任意成分としては例えば固体担体、補助剤のような植物への適用が許容される材料が挙げられる。
【0028】
2.農業上有用な植物
本発明の方法で使用可能な対象植物は、以下のものに限定されないが、例えばアブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される農業上有用な植物が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される「農業上有用な植物」は、例えば野菜類、穀類植物などの作物、果樹などの農業において生産対象となる植物を指す。
【0030】
アブラナ科植物としては、例えばアブラナ、カブ、チンゲンサイ、ノザワナ、カラシナ、タカナ、コブタカナ、水菜、コールラビー、ルッコラ、クレソン、タアサイ、カリフラワー、キャベツ、ケール、ハクサイ、コマツナ、ダイコン、ハツカダイコン、ブロッコリー、メキャベツ、ワサビ、セイヨウワサビ、シロイヌナズナが挙げられる。
【0031】
イネ科植物としては、例えばイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ライコムギ、ハトムギ、ソルガム、エンバク、トウモロコシ、サトウキビ、アワ、ヒエなどの穀類が挙げられる。イネ科植物としてはさらに、例えばシバ、バッファローグラス、バミューダグラス、ウィーピンググラス、センチピードグラス、カーペットグラス、ダリスグラス、キクユグラス、セントオーガスチングラスなどの飼料または牧草が挙げられる。
【0032】
マメ科植物としては、例えばダイズ、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、エンドウマメ、ハナマメ、ソラマメ、ササゲ、ヒヨコマメ、リョクトウ、レンズマメ、ライマメ、バンバラマメが挙げられる。
【0033】
キク科植物としては、例えばレタス、サニーレタス、シュンギク、キクなどが挙げられる。
【0034】
ユリ科植物としては、例えばタマネギ、ネギ、ラッキョウ、ニンニク、ニラ、アサツキ、ユリ、アスパラガス、エシャロット、ワケギなどが挙げられる。
【0035】
ナス科植物としては、例えばナス、トマト、ピーマン、シシトウ、トウガラシ、ジャガイモ、クコ、パブリカ、ハラペーニョ、ハバネロなどが挙げられる。
【0036】
セリ科植物としては、ニンジン、ミツバ、パセリ、セロリ、セリ、アシタバ、スープセロリ、チャーベル、フェンネルなどが挙げられる。
【0037】
3.病害虫
本発明の細菌が、上記の農業上有用な植物の体内に共生することによって病害虫抵抗性を付与する、対象の植物病及び害虫として、以下のものに限定されないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0038】
植物病の例は、以下のとおりである。
【0039】
アブラナ科の植物病は、例えば軟腐病、黒はん細菌病、苗立枯れ病、べと病、い黄病、モザイク病、根こぶ病、白はん病、しり腐れ病などが挙げられる。
【0040】
イネ科植物の植物病は、例えばいもち病、白葉枯病、苗立枯病、紋枯病、ばか苗病などが挙げられる。
【0041】
マメ科植物の植物病は、例えば灰色かび病、さび病、うどんこ病、などが挙げられる。
【0042】
キク科植物の植物病は、例えばモザイク病、軟腐病、腐敗病、うどんこ病、べと病などが挙げられる。
【0043】
ユリ科植物の植物病は、例えば軟腐病、べと病、い縮病、乾腐病、さび病、いちょう病、茎枯れ病、はん点病などが挙げられる。
【0044】
ナス科植物の植物病は、例えばモザイク病、黄化えそ病(TSWV)、青枯れ病、かいよう病、褐色根腐れ病、苗立枯れ病、うどんこ病、半身いちょう病、葉かび病などが挙げられる。
【0045】
セリ科植物の植物病は、例えばモザイク病、軟腐病、黒葉枯れ病、はん点病、うどんこ病、菌核病などが挙げられる。
【0046】
害虫の例は、以下のとおりである。虫害は、摂食、吸汁、ウイルス媒介などである。
【0047】
アブラナ科の害虫は、例えばコナガ、モンシロチョウ、オオモンシロチョウ、ハイマダラノメイガ、カブラヤガ、タマナヤガ、ヨトウムシ類、ハモグリバエ類、カブラハバチ類、キスジノミハムシ、ヤサイゾウムシ、アブラムシ類、アザミウマ類などが挙げられる。
【0048】
イネ科植物の害虫は、例えばドロオイムシ、ニカメイガ、イチモンジセセリ、コブノメイガ、イネヨトウ、アワヨトウ、スジキリヨトウ、フタオビコヤガ、イネクビボソハムシ、その他ハムシ類、イネカラバエ、イネハモグリバエ、イネヒメハモグリバエ、コウモリガ、ミノガ、イネシンガレセンチュウ、その他センチュウ類、イネミズゾウムシ、コメツキムシ類、コガネムシ類、バッタ類、スクミリンゴガイ、シロトビムシ類、ガガンボ類、タマバエ類、による摂食、セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカ、その他ウンカ類、ヨコバイ類、フキムシ類、アブラムシ類、アザミウマ類、カメムシ類などが挙げられる。
【0049】
マメ科の害虫は、例えばホソヘリカメムシ、マメコガネ、ウコンノメイガ、アズキノメイガ、ヒメコガネ、マメノメイガ、マメドクガ、アオアツバ、イチジクキンウワバ、フタスジヒメハムシ、ブチヒゲカメムシ、ツマジロカメムシ、ヨモギエダシャク、ウリハムシモドキ、ナシケンモン、ミツモンキンウワバ、ヒメシロモンドクガ、モンキチョウ、ナカグロカスミカメ、ホシハラビロヘリカメムシ、ベッコウハゴロモなどが挙げられる。
【0050】
キク科植物の害虫は、例えばシロシタヨトウ、イチジクキンウワバ、タマナギンウワバ、ホソバセダカモクメ、ナシケンモン、ヨモギエダシャク、オオトビスジエダシャク、ナガメなどが挙げられる。
【0051】
ユリ科植物の害虫は、例えばネギアザミウマ、ネギハモグリバエ、アザミウマ類、ヨトウムシなどが挙げられる。
【0052】
ナス科植物の害虫は、例えばオオタバコガ、オオニジュウヤホシテントウ、ナスノミハムシ、アズキノメイガ、イチジクキンウワバ、トホシテントウなどが挙げられる。
【0053】
セリ科植物の害虫は、例えばウリハムシモドキ、キアゲハ、ミツモンキンウワバなどが挙げられる。
【0054】
その他、カツムリ、センチュウなどが挙げられる。
【0055】
4.害虫抵抗性の付与、収量増加、及び生育促進のための微生物学的方法
本発明の方法は、Stenotrophomonas属に属し、農業上有用な上記の植物の体内に共生して該植物に病害虫抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加する能力、及び/又は、該植物の生育を促進する能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む。
【0056】
植物に病害虫抵抗性を付与することは、植物が病害虫による影響、例えば摂食、吸汁、病原菌病、ウイルス病などによる植物被害、を抑制又は防止することに導く。理論により拘束されることを望むものではないが、本発明に係る細菌は病原体に直接作用するのではなく、植物自身が有する防御機能の活性化によって、植物に病害虫抵抗性を付与すると考えられる。抵抗性誘導により生じる反応として、限定されるものではないが、過敏感反応、抗菌タンパク質及び抗害虫性タンパク質の生産、パピラの形成、並びに細胞壁の硬化等が挙げられる。一般に、植物の抵抗性が誘導されれば、広範な病害虫に対して抵抗性を示すことが知られている。
【0057】
植物の収量を増加することは、例えば、野菜であれば、例えば葉、根、根茎、種子などの食用部分を、穀類であれば、種子を、果樹であれば、実を、それぞれ増収穫させることを意味する。
【0058】
植物の生育を促進することは、本発明の細菌を接種しない対照と比較して植物の成長を早めることを意味する。
【0059】
植物への施用方法としては、種子コート、幼植物への潅注、塗布、または噴霧処理する方法などが挙げられる。特に、種子または植物体に人為的に傷を付け菌液の噴霧処理、塗布する方法が好ましい。その他の施用条件としては播種時、育苗期など圃場定植前に施用することが望ましい。また、さらに圃場栽培中に植物、場合により植物根部周囲の土壌、に噴霧処理することで効果の高発現が期待できる。
【0060】
1つの例として、本発明の細菌を、植物に人為的に感染させるには、圃場に植えつける前の幼苗(例えば1〜4枚の本葉が出た時期の苗)に菌液を散布することができる。散布後約3〜15日目に、苗を圃場に定植し得る。植物体内に侵入した菌がやがて、植物に共生するようになると考えられる。
【0061】
菌液の濃度は、1×105〜1×109個/mlであるが、これらの濃度範囲に限定されない。菌を懸濁する媒体は、水又は培地であることが好ましい。通常、高濃度菌液を水又は培地で所定濃度に希釈して使用することができる。
【0062】
本発明の方法は、具体的には、次の第1から第3の態様からなる。
【0063】
本発明の方法は、第1の態様により、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物に病虫害抵抗性を付与する方法を提供する。
【0064】
本発明の方法は、第2の態様により、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の収量を増加させる方法を提供する。
【0065】
本発明の方法は、第3の態様により、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物の生育を促進する能力を有する細菌を、該植物に人為的に感染させる工程を含む、農業上有用な植物の生育を促進する方法を提供する。
【0066】
5.微生物製剤
本発明はさらに、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属に属し、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加させる能力、及び/又は、該植物の生育を促進する能力を有する細菌を有効成分として含有する、農業上有用な植物用の微生物製剤を提供する。
【0067】
農業上有用な植物の例は、上で具体的に例示した、アブラナ科植物、キク科植物、マメ科植物、イネ科植物、ナス科植物、ユリ科植物及びセリ科植物から選択される植物である。
【0068】
好ましい細菌は、Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)、又はその変異株である。
【0069】
微生物製剤は、細菌の高濃度物、細菌の培養液を乾燥させたものなどを使用することができる。また、細菌の培養液を活性炭、珪藻土、タルク、ゼオライト、ピートモス、パーライト、ベントナイト、モンモリナイト、バーミュキュライト等の多孔吸着体に吸着させ乾燥させたものを使用することができる。多孔吸着体は、1種類でもよいし、複数の担体を組合せて用いてもよい。乾燥方法は通常の方法でよく、例えば凍結乾燥、減圧乾燥でよい。これらの乾燥物は乾燥後さらにボールミル等の粉砕手段で粉砕されてもよい。
【0070】
細菌は、上記の培養液、高濃度物又は乾燥物としてそれ自体単独で本発明の用途に用いることができるが、更なる他の任意成分と組み合わせて通常の微生物製剤と同様の形態(例えば粉剤、水和剤、粒剤、乳剤、液剤、懸濁液、フロアブル剤、塗布剤等の形態)に製剤化して用いることもできる。組み合わせて使用することができる任意成分としては例えば固体担体、補助剤のような植物への適用が許容される材料が挙げられる。
【0071】
本発明はさらに、Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)、或いは、農業上有用な植物体内に共生して該植物に病虫害抵抗性を付与する能力、該植物の収量を増加させる能力、及び/又は、該植物の生育を促進する能力を有する、その変異株を提供する。
【0072】
本発明の細菌は、振とう培養等の通常の培養法により、Stenotrophomonas属細菌について通常使用されるような、上記の条件下で培養されうる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
【0074】
[実施例1]
<Stenotrophomonas sp. MYK101(受託番号 NITE P-492)株の単離>
圃場で栽培されていたケールを採取し、切断後に、70%エタノールに30秒、2.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に5分浸すことにより表面殺菌を行った。その後植物体を、乳鉢に移し滅菌した生理食塩水1mlと海砂を適量加えながら磨砕し、全量、1.5mlチューブに移した。その上澄み液を100μl、Nutrient Agar培地に塗布し、30℃で数日間培養した。この操作によって培地上でシングルコロニーを単離した。単離された菌株を圃場において生育、病虫害抵抗性選抜試験を行い標題の菌株を選抜し単離した。
【0075】
[実施例2]
<ケール生育促進又は収量増加試験>
細菌エンドファイト接種ケールの圃場栽培試験
1)方法
ケール品種:ポルトガルケール
エンドファイト菌株:NITE P-492株
接種日:平成19年5月25日
接種方法:1×108個/mlの菌懸濁液を500ml/育苗箱潅注処理
本葉4枚目展開時に処理
定植日及び方法:平成19年6月6日、手植え
試験規模:1処理区3畝ずつ(1畝:42株) 各処理区約126株
無処理区と無処理区の間にNITE P-492株処理区を配置した
測定項目:葉のサイズ、及び収量
葉のサイズ:葉の縦および横の大きさを測定してそれら数値を乗じて値を算出した。
収量:10kgを超えるまで葉を収穫し、株あたりの収穫重 (新鮮重)を算出した。
【0076】
2)結果と考察
結果を表3及び表4に示した。葉のサイズについては、各処理区20株を測定した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対数である。
【0077】
ケールの生育については、NITE P-492接種区で葉が大きくなっており、生育が促進された。収量についてはNITE P-492接種区で株あたりの収穫重量が増加していた(表3及び表4)。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例3]
<ケール虫害抵抗性試験(その1)>
ケールの圃場栽培における接種効果の検討(コナガ)
1)方法
ケール品種:ポルトガルケール
エンドファイト菌株:NITE P-492株
接種日:平成19年5月25日
接種方法:1×108個/mlの菌懸濁液を500ml/育苗箱潅注処理
本葉4枚目展開時に処理
定植日及び方法:平成19年6月6日、手植え
試験規模:1処理区3畝ずつ(1畝:42株) 各処理区約126株
無処理区と無処理区の間にNITE P-492株処理区を配置した
測定項目:コナガによる食害程度の評価
食害程度:各処理区20株を測定した
目視により株ごとの葉の食害程度を5段階に評価した(0:食害率0%、1:食害率1〜20%、2:食害率21〜40%、3:食害率41〜60%、4:食害率61〜80%、5:食害率81〜100%)
【0081】
2)結果と考察
各処理区20株を測定した。結果を表5及び表6に示した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対数である。
【0082】
7月26日の時点でコナガが発生していたが、食害程度がNITE P-492株接種区で減少した(表5及び表6)。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
[実施例4]
<ケール虫害抵抗性試験(その2)>
ケールの圃場栽培における接種効果の検討(カタツムリ)
1)方法
ケール品種:ポルトガルケール
エンドファイト菌株:NITE P-492株
播種日:平成21年6月1日
接種日:平成21年6月13日
接種方法:1×108個/mlの菌懸濁液を10ml/株スプレーで接種した
本葉4枚目展開時に処理
定植日及び方法:平成21年6月15日、手植え
試験規模:1処理区1畝ずつ(1畝:17株) 各処理区約17株
無処理区と無処理区の間にNITE P-492株処理区を配置した
測定項目 :
生存株率:ケールはカタツムリの食害により植物体が枯死してしまうことから、枯死せずに残っていた株数を測定した
【0086】
2)結果と考察
結果を表7及び表8に示した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対数である。
【0087】
播種後55日時点でカタツムリによって、茎の内部まで侵入されて食害を受けている株が多く見られたがNITE P-492接種区で生存率が高かった(表7及び表8)。
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
[実施例5]
<コマツナ収量増加試験>
細菌エンドファイト接種コマツナのポット苗栽培試験
1)方法
コマツナ品種:夏楽天
エンドファイト菌株:NITE P-492株
接種方法:播種時に24時間培養した菌懸濁液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μl/セル接種
試験規模:1処理区10株、3反復
【0091】
2)実験方法
培養土、バーミキュライトを50:50で混合した培土をセルトレーに充填し、セルあたり3粒コマツナ種子を播種し、24時間培養したNITE-P492株を100μl/セルずつ接種し覆土した。ガラス温室内栽培し本葉が出始めたら1セルあたり植物を1本に間引きをし、本葉が4枚以上展開するまで栽培した。その後地際部から切断し、双葉を取り除いた後、乾物重を測定した。
【0092】
3)結果と考察
各処理区3回反復試験を行った。結果を表9に示した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対数である。収量についてはNITE-P492接種区で乾物重が14.4%増加していた(表9)。
【0093】
【表9】
【0094】
[実施例6]
<コマツナの圃場栽培における接種効果の検討>
1)方法
供試作物:コマツナ
エンドファイト菌株:NITE P-492株
接種日:平成24年12月28日(1×108個/mlの菌懸濁液を潅注処理)
本葉1枚目完全展開に処理
栽培方式:ハウス栽培
試験規模:90cm×200cm/処理区
測定項目:収量 (新鮮重)を測定した
【0095】
2)結果と考察
結果を表10に示した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対数である。
【0096】
2013年3月4日に収穫し、収量を算出した結果、NITE P-492接種区で重量が12.9%増加していた(表10)。
【0097】
【表10】
【0098】
[実施例7]
<細菌エンドファイト接種ダイコンのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
ダイコン品種:小太郎
播種日及び接種日:平成25年9月20日
収穫日:平成25年10月11日
試験規模:セルトレー10穴×3列
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。21日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
【0099】
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表11に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して6.4%重量の増加が見られた。
【0100】
【表11】
【0101】
[実施例8]
<細菌エンドファイト接種レタスのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
レタス品種:グリーンウエーブ
播種日及び接種日:平成25年7月31日
収穫日:平成25年8月23日
試験規模:セルトレー10穴
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。25日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
【0102】
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算した結果を表12に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して5.2%重量の増加が見られた。
【0103】
【表12】
【0104】
[実施例9]
<細菌エンドファイト接種イネのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
イネ品種:日本晴
播種日及び接種日:平成25年9月20日
収穫日:平成25年11月1日
試験規模:セルトレー10穴×3列
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。42日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
【0105】
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表13に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して14.3%重量の増加が見られた。
【0106】
【表13】
【0107】
[実施例10]
<細菌エンドファイト接種トマトのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
トマト品種:豊金福寿トマト
播種日及び接種日:平成25年7月31日
収穫日:平成25年8月23日
試験規模:セルトレー10穴
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。23日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
【0108】
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表14に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して6.8%重量の増加が見られた。
【0109】
【表14】
【0110】
[実施例11]
<細菌エンドファイト接種ネギのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
ネギ品種:万能小ネギ
播種日及び接種日:平成25年9月20日
収穫日:平成25年11月1日
試験規模:セルトレー10穴×3列
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。42日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
【0111】
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表15に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して7.0%重量の増加が見られた。
【0112】
【表15】
【0113】
[実施例12]
<細菌エンドファイト接種ニンジンのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
ニンジン品種:五寸人参
播種日及び接種日:平成25年9月20日
収穫日:平成25年11月1日
試験規模:セルトレー10穴×3列
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。42日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表16に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して4.7%重量の増加が見られた。
【0114】
【表16】
【0115】
[実施例13]
<細菌エンドファイト接種ダイズのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
ダイズ品種:早生枝豆
播種日及び接種日:平成25年9月20日
収穫日:平成25年10月11日
試験規模:セルトレー10穴×3列
試験方法:培養土をセルトレーに充填し、種子を2粒ずつ播種し、そこに24時間培養した菌液(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μlずつ接種し覆土した。翌日から毎日潅水しガラスハウス内で栽培した。21日間栽培後、地上部を刈り取り、10株をまとめて袋に入れ80℃で2日以上乾燥後、重量を測定した。
2)結果と考察
各処理区10株まとめた乾物重量を測定し1株の重量に換算し、3列の値を平均した結果を表17に示した。括弧内の数値は、無処理区を100としたときの相対値である。その結果、NITE P-492処理区では無処理区と比較して11.2%重量の増加が見られた。
【0116】
【表17】
【0117】
[実施例14]
<アブラナ科植物の根こぶ病に対する耐病性試験1:ネコブセンチュウ汚染土壌における細菌エンドファイト接種キャベツの圃場栽培試験>
1)材料と方法
キャベツ品種:新藍(しんらん)
播種日:平成25年7月27日
接種日:平成25年8月10日
調査日:平成26年12月12日
接種方法:生菌数濃度1×108個/mlの菌懸濁液を10ml/株噴霧処理
試験規模:育苗箱4枚分 500株程度
測定項目:NITE P-492株処理区、無処理区各100株のキャベツを対象に根こぶ病の発生程度を目視により5段階で評価した(図1参照)。
2)結果と考察
各処理区100株の被害発生程度の平均を表18に示した。その結果、NITE P-492株接種区で被害が減少した。括弧内の数値は、無接種区を100としたときの相対値である。
【0118】
【表18】
【0119】
[実施例15]
<アブラナ科植物の根こぶ病に対する耐病性試験2:細菌エンドファイト接種コマツナのポット苗栽培試験>
1)材料と方法
コマツナ品種:夏楽天
播種日:平成26年3月11日
接種方法:播種時に24時間培養したNITE P-492株(生菌数濃度1×108〜109個/ml)を100μl/セル接種
試験規模:1処理区10株、3反復
実験方法:ネコブセンチュウ汚染土壌を、1セル当たりのネコブセンチュウ密度が50個体になるように調製し、セルあたり3粒コマツナ種子を播種し、24時間培養したNITE-P492を100μl/セルずつ接種し覆土した。ガラス温室内で栽培し本葉が出始めたら1セルあたり植物を1本に間引きをし、本葉が5枚以上展開するまで栽培した。その後、罹病した根こぶ病の発生の有無を状況を目視にて観察した。
2)結果と考察
各処理区3回反復試験を行った。NITE-P492接種区では根こぶ病の発病率が17%減少していた(表19)。
【0120】
【表19】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、Stenotrophomonas属細菌をアブラナ科植物等の農業上有用な植物に人為的に感染させることにより、これらの植物の病虫害を抑制し、生長を促進し、或いは葉収量を増加させるため、農業上有用である。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]