特許第6267445号(P6267445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267445
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20180115BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01J37/20 D
   H01J37/20 Z
   H01J37/28 B
【請求項の数】2
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-122042(P2013-122042)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-239012(P2014-239012A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 省二
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−037047(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0126727(US,A1)
【文献】 特開2002−289506(JP,A)
【文献】 特開2002−050567(JP,A)
【文献】 特開平10−172438(JP,A)
【文献】 特開2007−113965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子又は電磁波の何れかをビームとして発生させるビーム発生手段と、
ワーキングチャンバ内において可動ステージ上に保持された検査対象に、前記ビームを導き照射する1次光学系と、
前記検査対象から発生した二次荷電粒子を検出する2次光学系と、
検出された前記二次荷電粒子に基づいて画像を形成する画像処理系と、
前記可動ステージを駆動させるリニアモータと、
前記可動ステージを駆動させるときに前記リニアモータから発生する磁場を相殺するための磁場を発生させるヘルムホルツコイルと、
前記可動ステージを駆動させるための前記リニアモータ駆動電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された前記リニアモータの駆動電流に応じて、前記ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する磁場制御手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記可動ステージの位置を検出する位置検出手段を備え、
前記磁場制御手段は、前記電流検出手段により検出された駆動電流と前記位置検出手段により検出された位置に応じて、前記ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する、請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置に関し、詳しくは、検査対象の表面の性状に応じて変化する二次荷電粒子を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて検査対象の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査する検査装置、並びに検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体検査装置は、100nmデザインルールに対応した装置と技術であった。しかし、検査対象の試料は、ウエハ、露光用マスク、EUVマスク、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)マスク及び基板と多様化しており、現在は試料が5〜30nmのデザインルールに対応した装置及び技術が求められている。すなわち、パターンにおけるL/S(ライン/スペース)又はhp(ハーフピッチ)のノードが5〜30nmの世代に対する対応が求められている。このような試料を検査装置で検査する場合、高分解能を得ることが必要になる。
【0003】
ここで「試料」とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
【0004】
ここで、従来技術の検査装置の課題をまとめると以下のとおりとなる。
【0005】
第一に、分解能とスループットの不足の問題である。写像光学系の従来技術において、ピクセルサイズは50nm、収差200nm程度であった。さらに高分解能とスループットを向上させるには、収差低減、照射電流のエネルギ幅の低減、小ピクセルサイズ、電流量の増加が必要であった。
【0006】
第二に、SEM式の検査の場合、微細構造の検査になるほど、スループットの問題は大きくなる。より小さなピクセルサイズを用いないと像の解像が不足するからである。これらはSEMが主にエッジコントラストによる像形成と欠陥検査を行うことに起因する。たとえば、5nmPxサイズ、200MPPSであれば、およそ6hr/cm2となる。これは、写像投影式の20〜50倍の時間がかかり、検査において非現実的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/001596号
【特許文献2】特開2007−48686号公報
【特許文献3】特開平11−132975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、従来の検査装置では、電子ビームが磁場の影響を受けるのを避けるために、検査対象(試料)を載せるステージをXY方向に動かすための駆動源として、非磁性材料で製造した駆動モータが使用されていた。しかし、非磁性材料の駆動モータは高価(例えば、リニアモータに比べて高価)であり、装置の低コスト化が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、装置の低コスト化を図ることのできる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の検査装置は、荷電粒子又は電磁波の何れかをビームとして発生させるビーム発生手段と、ワーキングチャンバ内において可動ステージ上に保持された検査対象に、ビームを導き照射する1次光学系と、検査対象から発生した二次荷電粒子を検出する2次光学系と、検出された二次荷電粒子に基づいて画像を形成する画像処理系と、を備え、可動ステージを駆動させるリニアモータと、可動ステージを駆動させるときにリニアモータから発生する磁場を相殺するための磁場を発生させるヘルムホルツコイルと、を備えている。
【0011】
これにより、可動ステージを駆動させる駆動源としてリニアモータが用いられるため、装置の低コスト化を図ることができる。この場合、可動ステージを駆動させるときにリニアモータから発生する磁場は、ヘルムホルツコイルから発生する磁場により相殺される。従って、荷電粒子又は電磁波のビームが、リニアモータから発生する磁場の影響を受けるのを抑えることができる。
【0012】
また、本発明の検査装置は、リニアモータを駆動させる駆動電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出された駆動電流に応じて、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する磁場制御手段と、を備えてもよい。
【0013】
これにより、リニアモータを駆動させる駆動電流に応じて、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する。これにより、リニアモータから発生する磁場を相殺するように、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を適切に制御することが可能になる。
【0014】
また、本発明の検査装置は、可動ステージの位置を検出する位置検出手段を備え、磁場制御手段は、電流検出手段により検出された駆動電流と位置検出手段により検出された位置に応じて、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御してもよい。
【0015】
これにより、リニアモータを駆動させる駆動電流と可動ステージの位置に応じて、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する。これにより、リニアモータから発生する磁場を相殺するように、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を適切に制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可動ステージを駆動させる駆動源としてリニアモータを用いることができ、装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図2の線A−Aに沿って見た図である。
図2A図1に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る検査装置における基板搬入装置の他の実施例を示す概略断面図である。
図3図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
図4図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。
図5】ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図で、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。
図6】主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
図7】主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
図8】光照射型の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る図であり、検査装置の全体構成を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体検査装置の二重管構造を模式的に示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る電子線検査装置の構成を示した図である。
図12】本発明の一実施形態に係る図であり、本発明が適用された電子線検査装置を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係る図であり、同一のメインチャンバに、写像光学式検査装置の電子コラムと、SEM式検査装置とを設置する場合の構成の一例を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る電子コラム系の構成を示した図である。
図15】本発明の一実施形態に係る検査装置の要部の説明図(平面図)である。
図16】本発明の一実施形態に係る検査装置の要部の説明図(側面図)である。
図17】本発明の一実施形態に係る磁場制御手段の説明図である。
図18】本発明の一実施形態に係る磁場強度(リニアモータから発生する磁場強度)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、検査対象として表面にパターンが形成された基板すなわちウエハを検査する半導体検査装置として説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の検査装置及び検査方法の例であって、これらに限定されるわけではない。
【0019】
図1及び図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
【0020】
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは図1及び図2Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図14に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
【0021】
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
【0022】
別の実施の態様では、図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類およびファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット612により、基板を出し入れする。
【0023】
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
【0024】
<ミニエンバイロメント装置>
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
【0025】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
【0026】
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
【0027】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
【0028】
なお、図示しないが、プリアライナの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
【0029】
<主ハウジング>
図1及び図2Aにおいて、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
【0030】
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
【0031】
<ローダハウジング>
図1図2A及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
【0032】
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
【0033】
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
【0034】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
【0036】
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
【0037】
なお、この実施形態では図2Aで左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0038】
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
【0039】
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
【0040】
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2Aに示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナから前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0041】
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
【0042】
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
【0043】
<ウエハの搬送>
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
【0044】
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
【0045】
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
【0046】
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0047】
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、そのプリアライナによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナ25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
【0048】
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
【0049】
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0050】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2Aで上方に移動し、また、Xテーブル53は図2Aで最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0051】
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
【0052】
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、
(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アームによりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアームによりウエハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。
このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
【0053】
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同じ処理することもできる。
【0054】
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図7に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図7に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
【0055】
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
【0056】
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
【0057】
<電子光学装置>
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、一次光源光学系(以下単に「1次光学系」という。)72と、二次電子光学系(以下単に「2次光学系」という。)74とを備える光学系と、検出系76とが設けられている。図8は、「光照射型」の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。図8の電子光学装置(光照射型の電子光学装置)では、1次光学系72は、光線を検査対象であるウエハWの表面に照射する光学系で、光線を放出する光源10000と、光線の角度を変更するミラー10001とを備えている。この光照射型の電子光学装置では、光源から出射される光線10000Aの光軸は、検査対象のウエハWから放出される光電子の光軸(ウエハWの表面に垂直)に対して斜めになっている。
【0058】
検出系76は、レンズ系741の結像面に配置された検出器761及び画像処理部763を備えている。
【0059】
<光源(光線光源)>
図8の電子光学装置においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いている。DUVレーザ光源10000からは、DUVレーザ光が出射される。なお、UV、DUV、EUVの光及びレーザ、そしてX線及びX線レーザ等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が放出される光源であれば他の光源を用いても良い。
【0060】
<1次光学系>
光源10000より出射される光線によって一次光線を形成し、ウエハW面上に矩形、又は円形(楕円であってもよい)ビームを照射する部分で1次光学系と呼ぶ。光源10000より出射される光線は、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次光線として照射される。
【0061】
<2次光学系>
ウエハW上に照射された光線により発生する光電子による二次元の画像を、ミラー10001に形成された穴を通り抜け、静電レンズ(トランスファーレンズ)10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ、後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。この結像投影光学系を2次光学系74と呼ぶ。
【0062】
このとき、ウエハにはマイナスのバイアス電圧が印加されている。静電レンズ724(レンズ724−1及び724−2)とウエハ間の電位差で試料面上から発生した光電子を加速させ、色収差を低減させる効果を持つ。この対物レンズ光学系724における引き出し電界は、3kV/mm〜10kV/mmであり、高い電界になっている。引き出し電界を増加させると、収差の低減効果があり、分解能が向上するという関係にある。一方で、引き出し電界を増加させると、電圧勾配が大きくなり放電が発生しやすくなる。したがって、引き出し電界は、適切な値を選んで用いることが重要である。レンズ724(CL)によって規定倍率に拡大された電子はレンズ(TL1)10006により収束され、ニューメリカルアパーチャ10008(NA)上にクロスオーバ(CO)を形成する。また、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009の組み合わせにより、倍率のズームを行うことが可能である。その後レンズ(PL)741で拡大投影し、検出器761におけるMCP(Micro Channel Plate)上に結像させる。本光学系ではTL1−TL
2間にNAを配置し、これを最適化することで軸外収差低減が可能な光学系を構成している。
【0063】
<検出器>
2次光学系で結像されるウエハからの光電子画像は、まずマイクロチャンネルプレート(MCP)で増幅されたのち、蛍光スクリーンにあたり光の像に変換される。MCPの原理としては直径6〜25μm、長さ0.24〜1.0mmという非常に細い導電性のガラスキャピラリを数百万本束ね、薄い板状に整形したもので、所定の電圧印加を行うことで、一本一本のキャピラリが、独立した電子増幅器として働き、全体として電子増幅器を形成する。
【0064】
この検出器により光に変換された画像は、真空透過窓を介して大気中に置かれたFOP(Fiber Optical Plate)系でTDI(Time Delay integration)−CCD(Charge Coupled Device)上に1対1で投影される。また、他の方法としては蛍光材のコートされたFOPがTDIセンサ面に接続されて真空中にて電子/光変換された信号がTDIセンサに
導入される場合がある。このほうが、大気中に置かれた場合よりも、透過率やMTF(Modulation Transfer Function)の効率がよい。例えば透過率およびMTFにおいて×5〜×10の高い値が得られる。このとき、検出器としては、上述したように、MCP+TDIを用いることがあるが、その代わりに、EB(Electron Bombardment)−TDIまたは、EB−CCDを用いてもよい。EB−TDIを用いると、試料表面から発生し、2次元像を形成している光電子が、直接EB−TDIセンサ面に入射するので、分解能の劣化がなく像信号の形成ができる。例えば、MCP+TDIであると、MCPで電子増幅した後、蛍光材やシンチレータ等により電子/光変換が行われ、その光像の情報がTDIセンサに届けられることになる。それに対して、EB−TDI、EB−CCDでは、電子/光変換、光増情報の伝達部品/損失がないので、像の劣化がなく、センサに信号が届くのである。例えば、MCP+TDIを用いたときは、EB−TDIやEB−CCDを用いたときと比べて、MTFやコントラストが1/2〜1/3になる。
【0065】
なお、この実施形態において、対物レンズ系724は、10ないし50kVの高電圧が印加され、ウエハWは設置されているものとする。
【0066】
<写像投影方式の主な機能の関係とその全体像の説明>
図9に本実施の形態の全体構成図を示す。但し、一部構成を省略図示している。
【0067】
図9において、検査装置は鏡筒71、光源筒7000およびチャンバ32を有している。光源筒7000内部には、光源10000が設けられており、光源10000から照射される光線(一次光線)の光軸上に1次光学系72が配置される。また、チャンバ32の内部には、ステージ装置50が設置され、ステージ装置50上にはウエハWが載置される。
【0068】
一方、鏡筒71の内部には、ウエハWから放出される二次ビームの光軸上に、カソードレンズ724(724−1及び724−2)、トランスファーレンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008、レンズ741および検出器761が配置される。なお、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。
【0069】
一方、検出器761の出力は、コントロールユニット780に入力され、コントロールユニット780の出力は、CPU781に入力される。CPU781の制御信号は、光源制御ユニット71a、鏡筒制御ユニット71bおよびステージ駆動機構56に入力される。光源制御ユニット71aは、光源10000の電源制御を行い、鏡筒制御ユニット71bは、カソードレンズ724、レンズ10006及び10009、レンズ741のレンズ電圧制御と、アライナ(図示せず)の電圧制御(偏向量制御)を行う。
【0070】
また、ステージ駆動機構56は、ステージの位置情報をCPU781に伝達する。さらに、光源筒7000、鏡筒71、チャンバ32は、真空排系(図示せず)と繋がっており、真空排気系のターボポンプにより排気されて、内部は真空状態を維持している。また、ターボポンプの下流側には、通常ドライポンプまたはロータリーポンプによる粗引き真空排気装置系が設置されている。
【0071】
一次光線が試料に照射されると、ウエハWの光線照射面からは、二次ビームとして光電子が発生する。
【0072】
二次ビームは、カソードレンズ724、TLレンズ群10006と10009、レンズ(PL)741を通って検出器に導かれ結像する。
【0073】
ところで、カソードレンズ724は、3枚の電極で構成されている。一番下の電極は、試料W側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に、指向性が小さい二次電子)を引き込み、効率よくレンズ内に導くように設計されている。そのため、カソードレンズは両テレセントリックとなっていると効果的である。カソードレンズによって結像した二次ビームは、ミラー10001の穴を通過する。
【0074】
二次ビームを、カソードレンズ724が1段のみで結像させると、レンズ作用が強くなり収差が発生しやすい。そこで、2段のダブレッドレンズ系にして、1回の結像をおこなわせる。この場合、その中間結像位置は、レンズ(TL1)10006とカソードレンズ724の間である。また、このとき上述したように、両テレセントリックにすると収差低減に大変効果的である。二次ビームは、カソードレンズ724およびレンズ(TL1)レンズ10006により、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008上に収束されクロスオーバを形成する。レンズ724とレンズ(TL1)10006との間で一回結像し、その後、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009によって中間倍率が決まり、レンズ(PL)741で拡大されて検出器761に結像される。つまり、この例では合計3回結像する。
【0075】
また、レンズ10006、10009、レンズ741はすべて、ユニポテンシャルレンズまたはアインツェルレンズとよばれる回転軸対称型のレンズである。各レンズは、3枚電極の構成で、通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧で、レンズ作用を行わせて制御する。また、このレンズ構造に限らず、レンズ724の1段目または2段目、または両方にフォーカス調整用電極を所持する構造、またはダイナミックにおこなうフォーカス調整用電極を備え、4極である場合や5極である場合がある。また、PLレンズ741についても、フィールドレンズ機能を付加して、軸外収差低減を行い、かつ、倍率拡大を行うために、4極または5極とすることも有効である。
【0076】
二次ビームは、2次光学系により拡大投影され、検出器761の検出面に結像する。検出器761は、電子を増幅するMCPと、電子を光に変換する蛍光板と、真空系と外部との中継および光学像を伝達させるためのレンズやその他の光学素子と、撮像素子(CCD等)とから構成される。二次ビームは、MCP検出面で結像し、増幅され、蛍光板によって電子は光信号に変換され、撮像素子によって光電信号に変換される。
【0077】
コントロールユニット780は、検出器761からウエハWの画像信号を読み出し、CPU781に伝達する。CPU781は、画像信号からテンプレートマッチング等によってパターンの欠陥検査を実施する。また、ステージ装置50は、ステージ駆動機構56により、XY方向に移動可能となっている。CPU781は、ステージ装置50の位置を読み取り、ステージ駆動機構56に駆動制御信号を出力し、ステージ装置50を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。
【0078】
また、拡大倍率の変更は、レンズ10006及び10009のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野全面に均一な像が得られる。なお、本実施形態では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するために、2次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、単位ピクセルあたり放出される電子量を一定になるように1次光学系のレンズ条件を設定する。
【0079】
<プレチャージユニット>
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板すなわちウエハに電子線を照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、光線の照射により生じる光電子の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射する光やレーザの波長やエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると光電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施形態では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に光やレーザを照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予め検出対象であるウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
【0080】
(実施形態1)
<二重管構造鏡筒を有する半導体検査装置>
上述したように、本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態に示した1次光学系2100を備える電子光学装置70は、各構成要素に印加する電圧の設定が、一般的な電子銃とは異なる。すなわち、基準電位V2を高電圧(一例として、+40000V。)としている。そこで、本願発明に係る電子光学装置70を備える半導体検査装置1は、第1に二重管構造としている。
【0081】
図10を用いて説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る半導体検査装置の二重管構造を模式的に示す図である。図10においては、第1の管及び第2の管を強調して示しているが、実際の第1の管及び第2の管の断面はこれと異なる。図10に示すように、本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置70は、第1の管10071と第1の管10071の外部に設けられた第2の管10072の2つの管から構成される。言い換えれば、2重管構造としている。そして二重管構造の内部に、光源、1次光学系、2次光学系及び検出器が収容される。そして、第1の管10071に高電圧(一例として、+40000V。)を印加して、第2の管10072はGNDとする。第1の管10071にて高電圧の空間基準電位V0を確保し、第2管でGNDにして囲う。それにより、装置設置のGND接続の実現及び感電を防ぐ。管10071は絶縁部品により管10072に固定されている。この管10072はGNDであり、主ハウジング30に取り付けられる。第1の管10071の内部に1次光学系2000又、2次光学系及び検出系76等が配設される。
【0082】
第1の管10071及び第2の管10072との、内部の隔壁は、ねじ等の部材に至るまで、磁場に影響を与えないように、非磁性材料で構成され、電子線に磁場が作用しないようにしている。なお図10において図示はしていないが、第2の管10072の側面には空間が設けられ、内部に、光源及び光電子発生部等1次光学系2000の一部が配設された突出部が接続される。同様に第1の管10071にも第2の管10072に設けられた空間と同様の空間が設けられ、光電子発生部で発生した光電子がこれらの空間を通して試料に照射される。なお、光源は、必ずしも第2の管10072の内部に設ける必要はなく、大気側に配置して、真空側の第2の管10072内に収容された光電子発生部に導入してもよい。しかし、1次光学系、2次光学系は、二重管構造の内部に必ず収容される。検出器は、第1の管10071内に設置される場合と第1と第2の管とは関係ない独立した電位にて設置される場合がある。これは、検出器の検出面の電位を任意に設定して、検出器に入射する電子のエネルギを適切な値に制御することを特徴としている。管1と管2に対して絶縁部品により電位分離された状態において、検出器の検出センサ表面電位を任意の電圧を印加して動作可能とする。このとき、センサ表面電位VDとすると、センサ表面に入射するエネルギはVD−RTDで決まる。検出器にEB−CCDまたはEB−TDIを用いた場合、センサのダメージを低減して長期間使用するために、入射エネルギを1〜7keVで用いると有効である。
【0083】
「電子検査装置」
図11は、本発明を適用した電子線検査装置の構成を示した図である。上述においては、異物検査方法の原理的な部分について主に説明した。ここでは、上述の異物検査方法を実行するのに適用される異物検査装置について説明する。従って、上述のすべての異物検査方法は、下記の異物検査装置に適用することができる。
【0084】
電子線検査装置の検査対象は試料20である。試料20は、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料20の表面上の異物10の存在を検出する。異物10は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物10の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この例では、写像投影式検査装置に本発明が適用される。
【0085】
写像投影方式の電子線検査装置は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20と、試料を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡110と、レビュー用のSEM120とを備える。検出器70は、本発明では2次光学系60に含まれてよい。また、画像処理装置90は本発明の画像処理部に含まれてよい。
【0086】
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
【0087】
1次光学系40は、電子ビームを試料20へ照射する。前述したように、1次光学系40は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
【0088】
この点に関し、異物10と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物10の上方の位置(検出器70により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。本発明は、このLE1とLE2との差異が望ましくは5〜20〔eV〕であることを見い出した。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
【0089】
また、写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料20に対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
【0090】
このように、異物10に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物10からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物10をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
【0091】
図25に戻る。ステージ30は、試料20を載置する手段であり、x−yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられていてもよい。
【0092】
ステージ30上には試料20があり、試料20の上に異物10がある。1次系光学系40は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕で試料表面21に電子ビームを照射する。異物10がチャージアップされ、1次光学系40の入射電子が異物10に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系60により検出器70に導かれる。このとき、二次放出電子は、試料表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物10で形成される。したがって、異物10の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
【0093】
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
【0094】
例えば、異物10のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
【0095】
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く手段である。2次光学系60は、レンズ61、63と、NAアパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、レンズ61、NAアパーチャ62、レンズ63を通過して電子が集められる。電子はアライナ64で整えられて、検出器70に検出される。
【0096】
NAアパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物10からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物10からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
【0097】
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ62が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。
【0098】
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
【0099】
図25に戻る。検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する手段である。検出器70は、その表面に複数のピクセルを有する。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge Coupled
Device)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは
、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
【0100】
ここでは、検出器70にEB−TDIを適用した例について説明する。EB−TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物10の検出が不安定であった。これに対して、EB−TDIを用いると、小さい異物10の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。
【0101】
図12は、本発明が適用された電子線検査装置を示す。ここでは、全体的なシステム構成の例について説明する。
【0102】
図12において、異物検査装置は、試料キャリア190と、ミニエンバイロメント180と、ロードロック162と、トランスファーチャンバ161と、メインチャンバ160と、電子線コラム系100と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント180には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ161には、真空中の搬送ロボットが設けられる。常に真空状態のトランスファーチャンバ161にロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
【0103】
メインチャンバ160には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するステージ30が設けられ、ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料20そのものが設置される。または、試料20は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
【0104】
メインチャンバ160は、真空制御系150により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ160、トランスファーチャンバ161及びロードロック162は、除振台170上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
【0105】
また、メインチャンバ160には電子コラム100が設置されている。この電子コラム100は、1次光学系40及び2次光学系60のコラムと、試料20からの2次放出電子またはミラー電子等を検出する検出器70を備えている。検出器70からの信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置90で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ160には、光学顕微鏡110や、SEM式検査装置120が備えられていてもよい。
【0106】
図13は、同一のメインチャンバ160に、写像光学式検査装置の電子コラム100と、SEM式検査装置120とを設置する場合の構成の一例を示している。図13に示すように、写像光学式検査装置と、SEM式検査装置120が同一のチャンバ160に設置されていると、大変有利である。同一のステージ30に試料20が搭載されており、試料20に対して、写像方式とSEM方式の両方での観察又は検査が可能となる。この構成の使用方法と利点は、以下の通りである。
【0107】
まず、試料20が同一のステージ30に搭載されているので、試料20が写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まる。したがって、異物の検出箇所等を特定するときに、2つの検査装置が同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。
【0108】
上記構成が適用されなかったとする。例えば、写像式光学検査装置とSEM式検査装置120が別々の装置として分離して構成される。そして、分離された別々の装置間で、試料20が移動される。この場合、別々のステージ30に試料20の設置を行う必要があるので、2つの装置が試料20のアライメントを別個に行う必要がある。また、試料20のアライメントが別々に行われる場合、同一位置の特定誤差は、5〜10〔μm〕となってしまう。特に、パターンのない試料20の場合には、位置基準が特定できないので、その誤差は更に大きくなる。
【0109】
一方、本実施の形態では、図13に示すように、2種類の検査において、同一のチャンバ160のステージ30に試料20が設置される。写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間でステージ30が移動した場合でも、高精度で同一位置を特定可能である。よって、パターンのない試料20の場合でも、高精度で位置の特定が可能となる。例えば、1〔μm〕以下の精度での位置の特定が可能である。
【0110】
このような高精度の特定は、以下の場合に大変有利である。まず、パターンの無い試料20の異物検査が写像方式で行われる。それから、検出した異物10の特定及び詳細観察(レビュー)が、SEM式検査装置120で行われる。正確な位置の特定ができるので、異物10の存在の有無(無ければ疑似検出)が判断できるだけでなく、異物10のサイズや形状の詳細観察を高速に行うことが可能となる。
【0111】
前述したように、異物検出用の電子コラム100と、レビュー用のSEM式検査装置120が別々に設けられると、異物10の特定に多くの時間を費やしてしまう。また、パターンのない試料の場合は、その困難度合いが高まる。このような問題が本実施の形態により解決される。
【0112】
以上に説明したように、本実施の形態では、写像光学方式による異物10のアパーチャ結像条件を用いて、超微小な異物10が高感度で検査される。さらに、写像光学方式の電子コラム100とSEM式検査装置120が同一チャンバ160に搭載される。これにより、特に、30〔nm〕以下の超微小な異物10の検査と、異物10の判定及び分類を、大変効率良く、高速に行うことができる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
【0113】
次に、写像投影型検査装置とSEMの両方を用いる検査の別の例について説明する。
【0114】
上述では、写像投影型検査装置が異物を検出し、SEMがレビュー検査を行う。しかし、本発明はこれに限定されない。2つの検査装置が別の検査方法に適用されてよい。それぞれの検査装置の特徴を組み合わせることにより、効果的な検査が可能となる。別の検査方法は、例えば、以下の通りである。
【0115】
この検査方法では、写像投影型検査装置とSEMが、異なる領域の検査を行う。更に、写像投影型検査装置に「セルtoセル(cell to cell)」検査が適用され、SEMに「ダイtoダイ(die to die)」検査が適用され、全体として効率よく高精度の検査を実現される。
【0116】
より詳細には、写像投影型検査装置が、ダイの中で繰返しパターンが多い領域に対して、「セルtoセル」の検査を行う。そして、SEMが、繰返しパターンが少ない領域に対して、「ダイtoダイ」の検査を行う。それら両方の検査結果が合成されて、1つの検査結果が得られる。「ダイtoダイ」は、順次得られる2つのダイの画像を比較する検査である。「セルtoセル」は、順次得られる2つのセルの画像を比較する検査であり、セルは、ダイの中の一部である。
【0117】
上記の検査方法は、繰返しパターン部分では、写像投影方式を用いて高速な検査を実行し、一方、繰返しパターンが少ない領域では、高精度で疑似が少ないSEMで検査を実行する。SEMは高速な検査に向かない。しかし、繰返しパターンが少ない領域は比較的狭いので、SEMの検査時間が長くなりすぎずにすむ。したがって、全体の検査時間を少なく抑えられる。こうして、この検査方法は、2つの検査方式のメリットを最大に活かし、高精度な検査を短い検査時間で行うことができる。
【0118】
次に、図27に戻り、試料20の搬送機構について説明する。
【0119】
ウエハ、マスクなどの試料20は、ロードポートより、ミニエンバイロメント180中に搬送され、その中でアライメント作業がおこなわれる。試料20は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック162に搬送される。ロードロック162は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ161に配置された真空中の搬送ロボットにより、ロードロック162からメインチャンバ160に、試料20が搬送される。そして、ステージ30上の静電チャック機構上に試料20が設置される。
【0120】
ウエハ、マスクなどの試料20は、ロードポートより、ミニエンバイロメント180中に搬送され、その中でアライメント作業がおこなわれる。試料20は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック162に搬送される。ロードロック162は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ161に配置された真空中の搬送ロボットにより、ロードロック162からメインチャンバ160に、試料20が搬送される。そして、ステージ30上の静電チャック機構上に試料20が設置される。
【0121】
図14は、メインチャンバ160内と、メインチャンバ160の上部に設置された電子コラム系100を示している。図11と同様の構成要素については、図11と同様の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
試料20は、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ30に設置される。ステージ30と光学顕微鏡110により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料20の異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料20上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系60aにおいてフォーカス制御が行われる。試料20の2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度の良い安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
【0123】
ここで、2次光学系60aが、NAアパーチャ62、検出器70に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ62の位置にEB−CCDが設置できるように構成れている。このような構成は大変有利であり、効率的である。図14では、NAアパーチャ62とEB−CCD65が、開口67、68を有する一体の保持部材66に設置されている。そして、NAアパーチャ62の電流吸収とEB−CCD65の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系60aが備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ62、EB−CCD65は、真空中で動作するX、Yステージ66に設置されている。したがって、NAアパーチャ62及びEB−CCD65についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ66には開口67、68が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ62又はEB−CCD65を通過可能である。
【0124】
このような構成の2次光学系60aの動作を説明する。まず、EB−CCD65が、2次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ61、63及びアライナ64の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
【0125】
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ62の孔中心を配置するように、NAアパーチャ62の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ62の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャの高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
【0126】
また、異物10の検査では、異物10からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ62の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、試料表面から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ62の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料表面での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ62に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ62の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ62の中心位置を配置することが、大変有利であり、重要である。
【0127】
このような適切な位置へのNAアパーチャ62の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ62が、電子コラム100の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ62を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ62の中心が設置される。
【0128】
信号強度の計測には、EB−CCD65が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器70に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
【0129】
あるいは、NAアパーチャ62の位置と検出器70の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、アパーチャと検出器の間にあるレンズ63の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ62の位置のビームの像を、検出器70の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ62の位置におけるビームプロファイルを、検出器70を用いて観察することができる。
【0130】
また、NAアパーチャ62のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10〜100〔%〕大きいサイズである。
【0131】
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物10のコントラストを高めることができる。
【0132】
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物10の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物10のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
【0133】
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能である。
【0134】
上述のように、ミラー電子は、NAサイズと形状に非常に敏感である。よって、NAサイズと形状と適切に選択することは、高いS/Nを得るために大変重要である。以下、そのような適切なNAサイズと形状の選択を行うための構成の例を説明する。ここでは、NAアパーチャ62のアパーチャ(孔)の形状についても説明する。
【0135】
ここで、NAアパーチャ62は、孔(開口)を有する部材(部品)である。一般に、部材がアパーチャと呼ばれることもあり、孔(開口)がアパーチャと呼ばれることもある。以下のアパーチャ関連の説明において、部材(部品)とその孔を区別するため、部材をNAアパーチャと呼ぶ。そして、部材の孔を、アパーチャという。アパーチャ形状は、一般に、孔の形状を意味する。
【0136】
<検査装置>
以下、本発明の実施の形態の検査装置について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、半導体検査装置等に適用される場合を例示する。
【0137】
上述のとおり、本実施の形態の検査装置は、荷電粒子又は電磁波の何れかをビームとして発生させるビーム発生手段と、ワーキングチャンバ内において可動ステージ上に保持された検査対象にビームを照射する1次光学系と、検査対象から発生した二次荷電粒子を検出する2次光学系と、検出された二次荷電粒子に基づいて画像を形成する画像処理系を備えている。
【0138】
ここで、まず、二次荷電粒子やミラー電子などの用語について説明しておく。「二次荷電粒子」には、2次放出電子、ミラー電子、光電子の一部または混在したものが含まれる。電磁波を照射したときは、試料表面からは光電子が発生する。試料表面に電子線などの荷電粒子を照射したときは、試料表面から「二次放出電子」が発生する、または、「ミラー電子」が形成される。試料表面に電子線が衝突して発生するのが「二次放出電子」である。つまり、「二次放出電子」とは、2次電子、反射電子、後方散乱電子の一部または混在したものを示す。また、照射した電子線が試料表面に衝突しないで表面近傍にて反射したものを「ミラー電子」という。
【0139】
つぎに、図15および図16を参照して、本実施の形態の検査装置の構成を詳しく説明する。図15および図16に示すように、検査装置1501は、可動ステージ1502をX方向に移動させるリニアモータ1503と、可動ステージ2をY方向に移動させるリニアモータ1504を備えている。また、検査装置1501は、可動ステージ2を駆動させるときにリニアモータ3、4から発生する磁場を相殺(キャンセル)するために、X方向の磁場を発生させるヘルムホルツコイル1505と、Y方向の磁場を発生させるヘルムホルツコイル1506と、Z方向の磁場を発生させるヘルムホルツコイル1507を備えている。
【0140】
また、検査装置1501は、X方向のリニアモータ1503を駆動させる駆動電流を検出する電流検出部1508と、Y方向のリニアモータ1504を駆動させる駆動電流を検出する電流検出部1509を備えている。
【0141】
さらに、検査装置1501は、可動ステージのX方向のステージ位置を検出するための構成として、レーザ発振器1510と、ミラー1511と、X方向のステージミラー1512と、干渉計1513を備えている。また、この検査装置1501は、可動ステージのY方向のステージ位置を検出するための構成として、レーザ発振器1510と、ミラー1514と、Y方向のステージミラー1515と、干渉計1516を備えている。
【0142】
そして、この検査装置1501は、磁場制御部1517を備えている。磁場制御部1517は、電流検出部1508、1509により検出された駆動電流と干渉計1513、1516により検出されたステージ位置に応じて、ヘルムホルツコイル1505、1506、1507から発生させる磁場の強度を制御する。
【0143】
ここで、図17を参照して、磁場制御部1517の構成を詳しく説明する。磁場制御部1517には、ルックアップテーブル1518が備えられている。ルックアップテーブル1518には、電流検出部1508、1509により検出された駆動電流IX、IYと、干渉計1513、1516により検出されたステージ位置PX、PYが入力される。ルックアップテーブル1518には、駆動電流IX、IYとステージ位置PX、PYに応じた補償値CX、CY、CZが記憶されている。
【0144】
補償値CX、CY、CZは、可動ステージ1502上のビーム中心位置の近傍に3軸(3次元)の磁場センサを設置し、可動ステージ1502を移動させて、リニアモータから発生する磁場強度(相殺すべき磁場強度)を測定することにより予め求められる(図18参照)。
【0145】
例えば、補償値CX、CY、CZは、下記の式により表される。ここで、±A〜±Fは、ステージ位置PX、PYに応じて可変な係数(混合比)である。
CX=±A・IX±B・IY
CY=±C・IX±D・IY
CZ=±E・IX±F・IY
【0146】
次に、ルックアップテーブルの作り方(ルックアップテーブルの値の決定の仕方)について説明する。
【0147】
観測中心における磁場の強さは、磁場の発生源であるリニアモータのコイル電流の大きさ、リニアモータの磁力(リニアモータの磁石が有する磁力)、および、リニアモータの磁石からの位置により決められる。
【0148】
リニアモータの磁力は、時間や温度などによりマクロ的に変化するものの、その場合にはその都度校正を行えば良いため、ほぼ一定と考えられる。一方、コイル電流は、速度や負荷状況に応じて変化する。また、コイルから発生する磁場は、コイル電流と比例関係にある。
【0149】
そして、観測点に作用する磁場は、リニアモータの磁石から発生するものと、コイルから発生するものとの総和となる。
【0150】
例えば、観測中心の近傍に、XYZ方向に感度を有する磁場センサを配置する。そして、まず、ステージ座標をXY方向に多点で区切り、その位置にステージを移動させ、停止させる。そして、コイル電流を遮断した状態で、XYZ方向の磁界を測定する。この測定a)により、リニアモータの磁場による各点の磁場強度a’が求められる。
【0151】
次に、XY方向に一定の速度でステージを移動させる、あるいは、上記多点位置で加減速を行う。そして、XYリニアモータに駆動電流を流し、各点(各座標)での磁場を測定する。この測定b)において、上記の測定a)と同一の座標での磁場の測定結果には、測定a)で求められた結果にコイル電流による影響が重畳されることになる。したがって、測定b)で求められた値から測定a)で求められた値を引いた結果が、各点におけるコイル電流の影響となる。これにより、コイル電流の影響による各点の磁場強度b’が求められる。同時に、このときのコイル電流I’を記録しておく。磁場強度b’は、コイル電流I’に比例する(b’=b”×I’)。
【0152】
以上のようにして、ステージ各点の磁場X、Y、Zが求められ、各点での補正値が求められる。例えば、座標X0,Y0における補正値は、a’X0,Y0±I・b”X0,Y0である。ここで、a’X0,Y0は、座標X0,Y0におけるa’の値であり、Iは、コイル電流値(現在値)、b”X0,Y0は、座標X0,Y0におけるb”の値である。ルックアップテーブルには、これらのa’X0,Y0やb”X0,Y0の値が記憶されている。
【0153】
そして、実際の測定を行う場合には、ステージ座標毎に、ルックアップテーブルの値を読み出し、リニアモータに流れる電流値をIに代入し、その磁場を相殺するようにヘルムホルツコイルに電流を流す。
【0154】
なお、予め磁場を測定した点(測定点)以外の座標においては、その点に近接する観測点のデータをもとに補完してもよい。また、磁場の測定は、例えば、検査装置の出荷時やメンテナンス時などに行うことができる。
【0155】
このような本発明の実施の形態の検査装置によれば、可動ステージを駆動させる駆動源としてリニアモータが用いられるため、装置の低コスト化を図ることができる。この場合、可動ステージを駆動させるときにリニアモータから発生する磁場は、ヘルムホルツコイルから発生する磁場により相殺される。従って、荷電粒子又は電磁波のビームが、リニアモータから発生する磁場の影響を受けるのを抑えることができる。
【0156】
また、本発明の実施の形態では、リニアモータを駆動させる駆動電流と可動ステージの位置に応じて、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を制御する。これにより、リニアモータから発生する磁場を相殺するように、ヘルムホルツコイルから発生させる磁場の強度を適切に制御することが可能になる。
【0157】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上のように、本発明にかかる検査装置は、装置の低コスト化を図ることができるという効果を有し、半導体検査装置等として有用である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18