(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法であって、ゼロ・ボルトの制御電圧が前記半導体デバイスの制御接点へ印加されたときに伝導される電流を前記半導体デバイスの定格電流の1/10000以下とすることにより、前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示す、方法。
請求項1に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、
前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板を、前記所定のドーパントが豊富な前記環境から取り出すステップと、
前記第1の所定の温度よりも高い第2の所定の温度で、第2の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップと
をさらに備える、方法。
請求項1に記載の方法であって、前記半導体デバイスはnチャンネル半導体デバイスであり、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはV族元素である、方法。
請求項5に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、リンが豊富な環境で、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含む、方法。
請求項8に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはリンであり、前記第2のV族元素はリン以外のV族元素である、方法。
請求項9に記載の方法であって、前記第2のV族元素は窒素であり、第2のV族元素を前記絶縁層ヘ加える前記ステップは、前記SiC基板の表面に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対して、窒素の豊富な環境でアニールを行うステップを含む、方法。
請求項13に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはリンであり、前記第2のV族元素はリン以外のV族元素である、方法。
請求項14に記載の方法であって、前記第2のV族元素は窒素であり、前記新たな絶縁層へ第2のV族元素を加える前記ステップは、前記SiC基板の表面に形成された前記新たな絶縁層を含む前記SiC基板に対して、窒素の豊富な環境でアニールを行うステップを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0022] 以下で説明する実施形態は、ここで開示されたものを当業者が実施できるようにするために必要な情報であり、開示されたものを実施する際の最適の実施形態を例示する。当業者であれば、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、ここで開示するものの概念を理解し、それらの概念の、ここでは特定的に説明しない応用についても認識するであろう。それらの概念および応用は、ここでの開示および特許請求の範囲の範囲内にあることを理解すべきである。
【0012】
[0023] ここでは、様々なエレメントを説明する際に、第1、第2などのような用語を用いるが、それらのエレメントをこれらの用語により限定すべきではないことは、理解されるであろう。これらの用語は、単に、或るエレメントを別のエレメントと区別するために用いられている。例えば、ここでの開示の範囲を超えることなく、第1のエレメントを第2のエレメントと名付けることができ、同様に、第2のエレメントを第1のエレメントと名付けることができる。ここで用いる「および/または」という用語は、1以上の関連して列挙された項目の何れかのものおよび全ての組み合わせを含ませるものである。
【0013】
[0024] 層、領域、基板などのエレメントに関して、「上」、「別のエレメントの『上』へ延び」などと記載されている場合、「直上」、「別のエレメントの『直上』へ延び」などを意味する場合もあれば、直接ではなくエレメント間に介在するエレメントが存在する場合もある。それに対して、エレメントに関して、「直上」、「別のエレメントの『直上』へ延び」などと記載されている場合、介在するエレメントは存在しない。また、エレメントに関して、別のエレメントへ「接続される」や「結合される」と記載されている場合、直接に接続または結合される場合もあれば、エレメント間に介在するエレメントが存在する場合もある。それに対して、エレメントに関して、別のエレメントへ「直接に接続される」や「直接に結合される」と記載されている場合、介在するエレメントは存在しない。
【0014】
[0025] ここでは、「下」、「上」、「上側」、「下側」、「水平」、「垂直」などのような相対語は、図に示す1つのエレメントや層や領域と、別のエレメントや層や領域との関係を説明するために用いる。これらの用語や上記で説明したことは、図に示しているデバイスの方向に加えて、デバイスの別の方向を包含することを意図していることが、理解されるであろう。
【0015】
[0026] ここで用いられる用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としたものであり、ここでの開示を限定することを意図していない。ここで用いられる単数を表す形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「この(the)」は、単数であることを文脈が明らかに示さないかぎり、複数を含むことを意図している。更に、「備え」、「備える」、「含み」、および/または「含む」という用語は、ここで用いた場合には、説明した構成、数、ステップ、動作、エレメント、および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1以上の他の構成、数、ステップ、動作、エレメント、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在および追加を除外するものではない。
【0016】
[0027] 定義しない限り、全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、この開示の分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。更に、ここで用いる用語は、この明細書の内容および関連する分野における意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであることが理解でき、また、理想化した意味や過剰に形式的な意味に解釈することを明確に規定していないかぎり、そのように解釈されないことが理解できるであろう。
【0017】
[0028] 高性能金属酸化物半導体(MOS)デバイスと、その製造方法とを開示する。好適には、MOSデバイスは炭化ケイ素(SiC)MOSデバイスである。しかし、この開示は、それには限定されない。以下で詳細に説明するように、1つの実施形態では、MOSデバイスは表面拡散チャンネルを有し、その表面拡散チャンネルは、MOSデバイスの常時オフという挙動を保持しながらも、チャンネルの移動度を大きく改善するように制御された深さおよびドーピング濃度を有する。ここで用いられるMOSデバイスは、そのMOSデバイスの制御接点(例えば、ゲート接点)へゼロ・ボルト(0V)が印加されたときに、そのMOSデバイスの定格電流の1/10000以下の電流を伝導する場合、常時オフである。別の実施形態では、MOSデバイスがpチャンネル・デバイスであるかnチャンネル・デバイスであるかに応じて、III族元素またはV族元素の組み合わせ(即ち、pチャンネルMOSデバイスに対してのIII族元素の組み合わせ、またはnチャンネルMOSデバイスに対してのV族元素の組み合わせ)が、制御接点絶縁体(例えば、ゲート酸化物)へ組み込まれる。制御接点絶縁体へ組み込まれるIII−V族元素の組み合わせは、MOSデバイスのオン状態の電流を増加させ、それにより、MOSデバイスのオン抵抗を低減する。制御接点酸化物へのIII−V族元素の組み込み(incorporation)の一部分として、MOSデバイスに表面拡散チャンネルが形成され、その表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度は、MOSデバイスの常時オフの挙動を保持しつつもチャンネルの移動度を増加させるように、制御される。
【0018】
[0029]
図2は、この開示における1つの実施形態に従ったSiC金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)26を示す。以下の説明はSiC MOSFET26に焦点を合わせているが、ここでの開示はそれに限定されないことを留意されたい。SiC MOSFET26の性能を改善するためのここで説明する概念は、他のタイプのMOSデバイス(例えば、バーティカルMOSFET、ラテラルMOSFET、パワーMOSFET、論理回路および/またはアナログ回路のためのMOSFETなどのような低パワーMOSFET、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、MOS制御サイリスタその他)にも、同様に適用できる。更に、ここでの説明は、MOSデバイスの基板として、SiC、特に4H−SiCの使用に焦点を合わせているが、ここでの開示はそれに限定されない。
【0019】
[0030] 例示されているように、SiC MOSFET26は、p型SiC基板28と、SiC MOSFET26のソース領域を形成する第1n+ウェル30と、SiC MOSFET26のドレイン領域を形成する第2n+ウェル32と、ゲート酸化膜34とを含み、図示のように配されている。この実施形態では、SiC MOSFET26はnチャンネル・デバイスである(即ち、p型基板とn型チャンネルとを有する)。SiC基板28は、好適には、4H−SiCを用いて形成される。また、SiC基板28は、任意の適切なドーピング・レベル、例えば、1×10
15/cm
3から1×10
18/cm
3の範囲およびこの範囲を含む範囲のドーピング・レベルを有することができる。金属ソース接点36は第1n+ウェル30の上に形成され、SiC MOSFET26のソース接点を提供する。同様に、金属ドレイン接点38は第2n+ウェル32の上に形成され、SiC MOSFET26のドレイン接点を提供する。ソース接点36およびドレイン接点38はオーミックコンタクトである。ゲート接点40はゲート酸化膜34の上に形成される。ゲート接点40は、ポリシリコン(例えば、リン(P)でドープされたポリシリコン)や金属(例えば、アルミニウム(Al))で形成することができる。
【0020】
[0031] 以下で詳細に説明するように、SiC MOSFET26はまた、表面拡散チャンネル42を含む。表面拡散チャンネル42は、SiC基板28における1つの領域であり、この領域は、望ましいドーパントをSiC基板28の表面へ拡散することによりn型へとカウンタ・ドープされている(即ち、SiC基板28におけるp型からn型へと逆にするドーピングがなされた領域)。SiC基板28内部への表面拡散チャンネル42の深さと、表面拡散チャンネル42のドーピング濃度とを制御して、SiC MOSFET26の常時オフの挙動を持ちつつも、SiC MOSFET26のチャンネルにおけるキャリアの移動度を、表面拡散チャンネル42の無い同様のSiC MOSFETよりも実質的に増加させる。より特定的には、表面拡散チャンネル42は、薄く(例えば、1000オングストロームより薄く、より好適には、500オングストロームより薄く)、且つ高いドーピング濃度(例えば、5×10
17/cm
3より高い)を有するように、形成される。表面拡散チャンネル42は薄く且つ高いドーピング濃度を有するので、表面拡散チャンネル42は、SiC MOSFET26のキャリアの移動度を、従来のSiC MOSFET(例えば、
図1のSiC MOSFET10)のキャリアの移動度と比較して、実質的に増加させ、なおも、常時オフの挙動を維持する(即ち、かなり大きい正のターンオン電圧または閾値電圧を有する)。1つの実施形態では、常時オフの挙動を保持しつつも、SiC MOSFET26のキャリアの移動度は増加されて、約50cm
2/Vsよりも大きくなる。
【0021】
[0032] 好適な実施形態では、表面拡散チャンネル42は、5×10
11/cm
2ないし5×10
13/cm
2の範囲およびこの範囲を含む範囲のドース(即ち、深さxのドーピング濃度)を有する。更に好適には、表面拡散チャンネル42は、5×10
11/cm
2ないし5×10
13/cm
2の範囲およびこの範囲を含む範囲のドース(即ち、深さxのドーピング濃度)を有し、表面拡散チャンネル42の深さは、500オングストローム以下である。典型的には、同じ深さに関しては、SiC MOSFET26の閾値電圧は、ドーピング濃度が増加するにつれて減少して、SiC MOSFET26の常時オフの挙動を維持できなくなっていく。しかし、表面拡散チャンネル42の深さが500オングストローム以下である場合に、ドーピング濃度の変化がSiC MOSFET26の閾値電圧に与える影響の度合いが非常に少ないことを、本出願の発明者は発見した。従って、表面拡散チャンネル42の深さが500オングストローム以下である場合、常時オフの挙動が維持されるようにSiC MOSFET26の閾値電圧に対する大きい影響を与えずに、表面拡散チャンネル42のドーピング濃度、従って、SiC MOSFET26のキャリアの移動度を増加させることができる。
【0022】
[0033] 1つの例示的な実施形態では、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、SiC基板28の表面から、2000オングストロームないし3000オングストロームの範囲およびこの範囲を含む範囲の深さまで延び、1×10
19/cm
3ないし1×10
21/cm
3の範囲およびこの範囲を含む範囲のドーピング濃度を有し、表面拡散チャンネル42は、SiC基板28の表面から1000オングストローム未満の深さまで延び、1×10
18/cm
3より大きいドーピング濃度を有し、表面拡散チャンネル42のドースは、5×10
11/cm
2ないし5×10
13/cm
2の範囲およびこの範囲を含む範囲である。別の例示的な実施形態では、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、SiC基板28の表面から、2000オングストロームないし3000オングストロームの範囲およびこの範囲を含む範囲の深さまで延び、1×10
19/cm
3ないし1×10
21/cm
3の範囲およびこの範囲を含む範囲のドーピング濃度を有し、表面拡散チャンネル42は、SiC基板28の表面から500オングストローム未満の深さまで延び、1×10
18/cm
3より大きいドーピング濃度を有し、表面拡散チャンネル42のドースは、5×10
11/cm
2ないし5×10
13/cm
2の範囲およびこの範囲を含む範囲である。別の例示的な実施形態では、表面拡散チャンネル42は、約400オングストロームの深さを有し、1×10
18/cm
3より大きいドーピング濃度を有し、表面拡散チャンネル42のドースは、5×10
11/cm
2ないし5×10
13/cm
2の範囲およびこの範囲を含む範囲である。特に、SiCでは、このような薄くてドープ量の高いカウンタ・ドープまたは埋込のチャンネルを、従来の技術(例えば、イオン注入やエピタキシャル成長)を用いて得ることは非常に困難である。なお、表面拡散チャンネル42に関しては、理論的な最小の深さがないことに留意されたい。しかし、実際的な観点から、および1つの実施形態において、表面拡散チャンネル42の最小の深さは約300オングストロームである。なお、上記の例示的な実施形態では、表面拡散チャンネル42のドーピング濃度が、1×10
18/cm
3より大きいことに留意されたい。しかし、更に別の実施形態では、表面拡散チャンネル42のドーピング濃度は、5×10
17/cm
3より大きい。
【0023】
[0034]
図3Aないし
図3Gは、ここでの開示の第1の実施形態に従った、
図2のSiC MOSFET26を製造するプロセスを示す。プロセスは、
図3Aに示すSiC基板28から開始する。この実施形態では、SiC基板28はp型4H−SiC基板であり、1×10
15/cm
3ないし1×10
18/cm
3の範囲およびこの範囲を含む範囲のドーピング濃度を有する。第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、イオン注入により、
図3Bに示すようにSiC基板28内に形成される。この第1n+ウェル30および第2n+ウェル32はSiC MOSFET26のソース領域およびドレイン領域を形成する。この実施形態では、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、2000オングストロームないし3000オングストロームの範囲およびこの範囲を含む範囲の深さ(d
W)を有する。しかし、この開示はこれに限定されない。特定の実施に応じて他の深さとすることができることを、この開示を読んだ当業者であれば理解できる。更に、この実施形態では、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、1×10
19/cm
3ないし1×10
21/cm
3の範囲およびこの範囲を含む範囲のドーピング濃度を有する。
【0024】
[0035] 次に、
図3Cに示すように、酸化物層44がSiC基板28の表面に形成される。なお、ここで説明する実施形態では酸化物層44を使用しているが、他のタイプの絶縁材料または絶縁体も使用できることに留意されたい。例えば、酸化物層44を使用せず、Kの高い誘電材料を使用することができる。厚さ(t
OX)は、好適には、予め定めた厚さであり、以下に説明するように、SiC MOSFET26の表面拡散チャンネル42の深さを制御するように選択されたものである。1つの実施形態では、酸化物層44は、熱酸化プロセスにより形成される二酸化ケイ素(SiO
2)層である。別の実施形態では、酸化物層44は、デポジション(deposition)・プロセスによりデポジットされるものであり、デポジション・プロセスとしては、低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層堆積(ALD)などがある。更に、酸化物層44の厚さ(t
OX)は様々であり得るが、1つの例示的な実施形態では、酸化物層44酸化物層44の厚さ(t
OX)は300オングストロームないし1000オングストロームである。別の例示的な実施形態では、酸化物層44の厚さ(t
OX)は約500オングストロームである。
【0025】
[0036] 次に、
図3Dに示すように、酸化物層44を通してPがSiC基板28の表面へ拡散され、SiC MOSFET26の表面拡散チャンネル42が形成される。なお、この実施形態ではPがSiC基板28の表面へ拡散されるが、この開示はそれに限定されないことに留意されたい。代替的に、幾つかの他のV族元素(例えば、窒素(N)やヒ素(As))を、酸化物層44を通してSiC基板28へ拡散して、表面拡散チャンネル42を形成することもできる。好適な実施形態では、
図3Dの構造(即ち、SiC基板28と、SiC基板28上に形成された酸化物層44)を、Pの豊富な環境でアニールすることにより、PをSiC基板28の表面に拡散する。1つの実施形態では、Pの豊富な環境は、P
2O
5の環境である。別の実施形態では、Pの豊富な環境は、POCl
3の環境である。アニール・プロセスのパラメータ、例えば、温度や時間は、酸化物層44の厚さ(t
OX)に従って制御されて、表面拡散チャンネル42が望ましい深さ(即ち、厚さ)と望ましいドーピング濃度とを有するようにされる。なお、パラメータは上記のものに限定されない。表面拡散チャンネル42の望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度とは、表面拡散チャンネル42が、SiC MOSFET26の常時オフの挙動を維持しつつも、キャリアの移動度を大きく増加させるものである。なお、代替の実施形態では、酸化物層44が、PをSiC基板28の表面へ拡散させる前にエッチングされることもあり、SiC基板28のエッチングされた表面を通してPの拡散が行われることもあり得ることに留意されたい。
【0026】
[0037] 表面拡散チャンネル42が形成された後、酸化物層44はPを豊富に含む。この実施形態では、
図3Eに示すように、酸化物層44が除去される。酸化物層44は、例えば、エッチングなどのような任意の適切な技術により除去することができる。なお、用いる技術はエッチングには限定されない。この時点で、ドーパントを更に活性化する必要がある場合、またはそうすることが望ましい場合、高温での追加のアニールを行う。また、高温、例えば、摂氏約1300度や約1400度までの温度などでの追加のアニールは、PをSiC基板28内へ更に拡散させるために用いることができる。この場合、この拡散後アニール・ステップ(post-diffusion annealing step)の温度および時間は、表面拡散チャンネル42の深さおよびドーピング濃度を制御するために使用する追加のパラメータとなり得る。
【0027】
[0038] 次に、
図3Fに示すように、新たな酸化物層46がSiC基板28の表面に形成される。新たな酸化物層46は、デポジション、熱酸化、またはこれらの組み合わせ(例えば、薄い熱成長させた酸化物と、デポジットされた酸化物との組み合わせ)を用いて形成することができる。新たな酸化物層46は、例えば、SiO
2である。しかし、代替的に、他の絶縁体、例えば、高いKの誘電材料などを用いることもできる。この実施形態では、次に、従来のプロセスを用いて、
図3Gに示すように、新たな酸化物層46をエッチングしてゲート酸化膜34を形成し、次にソース接点36とドレイン接点38とゲート接点40とを形成することにより、SiC MOSFET26の製造は完了する。ここでも、ソース接点36およびドレイン接点38は、好ましくは金属で形成され、ゲート接点40は、好ましくは金属またはポリシリコンで形成される。
【0028】
[0039]
図4は、この開示の1つの実施形態に従った、表面拡散チャンネル42を形成するためのP
2O
5アニール・プロセスを示す。示されているように、P
2O
5アニール・プロセスが行われるが、このプロセスは、
図3Dの半導体ウエハ(即ち、酸化物層44が形成されたSiC基板28)を、ボート(boat)またはボートと同様の機構へ配して、酸化物層44をP
2O
5ディスク47に隣接させる。ボートは、示されるように、複数の半導体ウエハとP
2O
5ディスクとに適応するように構成される。P
2O
5ディスクは、典型的には、P
2O
5と、Si、セリウム(Ce)、ランタン(La)、Al、タンタル(Ta)などの酸化物との複合物である。これらの材料は、加熱されると、P
2O
5と、周囲へ拡散する他の気体状副産物とに分解される。次に、ボートは、炉(例えば、炉配管(furnace tube))へ配置され、不活性ガス(例えばN
2)の存在下で所定の温度で所定の時間だけ加熱される。好適には、所定の温度および所定の時間は、酸化物層44の厚さ(t
OX)に従って選択され、P
2O
5アニール・プロセスの結果として生成される表面拡散チャンネル42が望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度を有するようにされる。言い換えると、所定の温度および所定の時間が選択され、Pが、酸化物層44を通してSiC基板28の表面に対して、望ましい深さまで望ましいドーピング濃度で、拡散される。所定の温度は、例えば、摂氏950度ないし摂氏1100度の範囲およびこの範囲を含む範囲である。1つの例示的な実施形態では、酸化物層44の厚さ(t
OX)は約500オングストロームであり、P
2O
5アニール・プロセスは摂氏950度の温度で4時間行われ、それにより、表面拡散チャンネル42は、
図5に示すように、約400オングストロームの深さと、1×10
18/cm
3より大きいドーピング濃度を有するものとなる。
【0029】
[0040]
図6Aないし
図6Hは、この開示の第2の実施形態に従った、
図2のSiC MOSFET26を製造するプロセスを示す。一般に、このプロセスは、新たな酸化物層46を形成するところまでは、上記のプロセスと同じである。この実施形態では、V族元素、特定的にはNが、新たな酸化物層46へ加えられる(incorporated)。なお、Nは例示であることに留意されたい。代替的に、他のタイプのV族元素(例えば、As、Sb、および/またはBi)を、新たな酸化物層46へ加えることもできる。更に、2以上のV族元素の組み合わせを新たな酸化物層46へ加えることもできる。新たな酸化物層46へNまたは他のV族元素(1以上)を加えることにより、SiC基板28とゲート酸化膜34との界面近くでのダングリング・ボンドおよび表面トラップの数が低減され、それによりSiC MOSFET26のオン抵抗が減少するので、SiC MOSFET26の電流が更に増加する。
【0030】
[0041] より特定的には、最初に、
図6Aないし
図6Fに示されるように、
図3Aないし
図3Fと関連して上記で説明したように製造プロセスが行われ、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32と、表面拡散チャンネル42と、新たな酸化物層46とが形成される。次に、この実施形態では、この構造(即ち、
図6Gに示す新たな酸化物層46を含むSiC基板28)に対して、Nの豊富な環境でアニールを行い、Nが新たな酸化物層46へ加えられるようにする。この特定の実施形態では、この構造に対してアニールが行われるが、このアニールは、酸化窒素(NO)環境で、摂氏1100度ないし摂氏1300度の範囲およびこの範囲を含む範囲の温度で、或る時間の長さ、即ち、Nが新たな酸化物層46を通して、また、可能性としてはSiC基板28と新たな酸化物層46との界面を通して、拡散することを可能にする時間の長さだけ、行われる。新たな酸化物層46へ拡散されるNは、新たな酸化物層46とSiC基板28との界面近くのダングリング・ボンドおよび表面トラップをパッシベート(passivate)する。ダングリング・ボンドおよび表面トラップをパッシベートすることにより、結果として形成されるSiC MOSFET26のオン状態のときの電流が大幅に増加する。ガス相アニール(gas phase annealing)に代えてイオン注入を用いて、N(または別の1以上のV族元素)を新たな酸化物層46へ加えることもできる。次に、従来のプロセスを用いて、
図6Hに示すように、新たな酸化物層46をエッチングしてゲート酸化膜34を形成し、次にソース接点36とドレイン接点38とゲート接点40とを形成することにより、SiC MOSFET26の製造は完了する。ここでも、ソース接点36およびドレイン接点38は、好ましくは金属で形成され、ゲート接点40は、好ましくは金属またはポリシリコンで形成される。
【0031】
[0042]
図7Aないし
図7Fは、この開示の第3の実施形態に従った、
図2のSiC MOSFET26を製造するプロセスを示す。この実施形態は、
図6Aないし
図6Hの実施形態と類似であるが、新たな酸化物層46をデポジットせず、Pの拡散後にPを豊富に含む酸化物層44をゲート酸化膜34として用いる。より特定的には、最初に、
図7Aないし
図7Dに示すように、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32と、表面拡散チャンネル42とが、
図3Aないし
図3Dと関連して上記で説明したように形成される。次に、
図7Dの構造に対して、
図7Eに示すように、Nの豊富な環境でアニールを行う。注目すべきことは、この実施形態では、Pの拡散によりPを豊富に含むこととなった酸化物層44が、ゲート酸化膜34として用いられるので取り除かれず、新たな酸化物層に置き換えられないということである。その結果、Pは、ゲート酸化膜34と、SiC基板28におけるSiC基板28とゲート酸化膜34との界面(即ち、表面拡散チャンネル42)との双方に含まれる。
【0032】
[0043] この特定の実施形態では、この構造は、NO環境で、摂氏1100度ないし摂氏1300度の範囲およびこの範囲を含む範囲の温度で、或る時間の長さ、即ち、Nが酸化物層44を通して、また、可能性としてはSiC基板28と酸化物層44との界面を通して拡散することを可能にする時間の長さだけ、アニールされる。酸化物層44へ拡散されるNは、酸化物層44とSiC基板28との界面近くのダングリング・ボンドおよび表面トラップをパッシベートする。ダングリング・ボンドおよび表面トラップをパッシベートすることにより、結果として形成されるSiC MOSFET26のオン状態のときの電流が、大幅に増加する。次に、従来のプロセスを用いて、
図7Fに示すように、酸化物層44をエッチングしてゲート酸化膜34を形成し、次にソース接点36とドレイン接点38とゲート接点40とを形成することにより、SiC MOSFET26の製造は完了する。ここでも、ソース接点36およびドレイン接点38は、好ましくは金属で形成され、ゲート接点40は、好ましくは金属またはポリシリコンで形成される。
【0033】
[0044]
図8Aないし
図8Fは、この開示の第4の実施形態に従った、
図2のSiC MOSFET26を製造するプロセスを示す。この実施形態は、
図6Aないし
図6Hおよび
図7Aないし
図7Fの実施形態と類似であるが、リンをSiC基板28の表面へ拡散して表面拡散チャンネル42を形成する前に、Nが豊富な環境(例えば、NO環境)でのアニールが行われる。Pの拡散の前に、Nが豊富な環境でアニールを行うことにより、SiC基板28の表面で破壊(disruption)が生じ、それにより、SiC基板28へのPの拡散が改善される。
【0034】
[0045] より特定的には、最初に、
図8Aないし
図8Cに示すように、第1n+ウェル30および第2n+ウェル32と、酸化物層44とが、
図3Aないし
図3Cと関連して上記で説明したように形成される。次に、この実施形態では、Nが豊富な環境(例えば、NO環境)において
図8Cの構造に対してアニールが行われ、
図8Dに示すように、Nが酸化物層44へ加えられる。この実施形態ではNが使用されているが、ここでも、代替として、P以外の別のV族元素(例えば、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、および/またはビスマス(Bi))を使用することができる。次に、
図8Eに示すように、
図3Dおよび
図4と関連して上記で説明した様式で、Pが、酸化物層44を通してSiC基板28の表面へ拡散され、表面拡散チャンネル42が形成される。Pの拡散の前に、Nが豊富な環境でアニールを行った結果として、SiC基板28の表面で破壊が生じ、それにより、SiC基板28の表面へPを拡散し易くされる。次に、従来のプロセスを用いて、
図8Fに示すように、酸化物層44をエッチングしてゲート酸化膜34を形成し、次にソース接点36とドレイン接点38とゲート接点40とを形成することにより、SiC MOSFET26の製造は完了する。ここでも、ソース接点36およびドレイン接点38は、好ましくは金属で形成され、ゲート接点40は、好ましくは金属またはポリシリコンで形成される。
【0035】
[0046] 代替の実施形態では、
図8EにおけるPの拡散の後、酸化物層44を除去して、新たな酸化物層46のような新たな酸化物層と置換することがてる。次に、V族元素またはV族元素の組み合わせを、
図6Aないし
図6Fと関連して説明した様式で、新たな酸化物層へ加えることができる。次に、新たな酸化物層をエッチングしてゲート酸化膜34を形成することができる。次に、ソース接点36とドレイン接点38とゲート接点40とを形成し、SiC MOSFET26の製造は完了する。
【0036】
[0047]
図9および
図10は、1つの例示的な実施形態に従ったSiC MOSFET26のキャリアの移動度とドレイン電流との改善を示す。この実施形態では、SiC MOSFET26は、
図7Aないし
図7Fのプロセスに従って製造され、Pを豊富に含む酸化物層44がゲート酸化膜34として用いられる。示されているように、ゲート電圧が、典型的な動作電圧である15Vのとき、標準的なまたは従来のSiC MOSFETと比較して、SiC MOSFET26のドレイン電流は約2倍の大きさであり、キャリアの移動度は約1.5ないし2倍の大きさである。更に、SiC MOSFET26のキャリアの移動度は、約1Vないし6Vの範囲のゲート電圧に関して、50cm
2/Vsより大きい。
【0037】
[0048]
図11および
図12は、別の例示的な実施形態に従ったSiC MOSFET26のキャリアの移動度とドレイン電流との改善を示す。この実施形態では、SiC MOSFET26は、
図3Aないし
図3Gのプロセスに従って製造されている。示されているように、SiC MOSFET26のキャリアの移動度は、ゲート電圧が20Vのとき、標準的なSiC MOSFETよりも約10パーセント高い。また、SiC MOSFET26に関して
図11から明らかなことは、ターンオンが鋭いこと、および1nAでの伝導の開始により定められる閾値電圧が0.5V高いことである。なお、ドレイン電流は、
図6Aないし
図6Hと関連して上記で説明したように、1以上のV族元素を新たな酸化物層46へ加えることにより更に増加され得ることに、留意されたい。
【0038】
[0049] ここでの説明は、表面拡散チャンネル42を含むSiC MOSFET26などのようなMOSデバイスに焦点を合わせているが、この開示はそれに限定されるものではない。ここで説明した概念は、同様の高性能チャンネルを必要とするまたは同様の高性能チャンネルが望ましい他の半導体デバイスにも適用できる。更に、別の実施形態において、SiC MOSFETなどのようなMOSデバイスは、表面拡散チャンネル42無しで製造することができるが、2以上のV族元素の組み合わせ(nチャンネルMOSデバイスに関して)または2以上のIII族元素の組み合わせ(pチャンネルMOSデバイスに関して)がゲート酸化膜34に含まれる。このように構成することにより、オン状態のときにMOSデバイスの電流を実質的に増加させ、従って、MOSデバイスのオン抵抗を実質的に低減させる。例えば、上記で概説したプロセスは、表面拡散チャンネル42を形成せずに、PおよびNを、MOSデバイスのゲート酸化膜34へ加えるために使用することができる(表面拡散チャンネルの深さを約0として、上記で概説したプロセスを行う)。
【0039】
[0050] 当業者は、ここで開示したものに関する好適な実施形態についての改善および変更について理解するであろう。そのような改善および変更の全ては、ここで開示した概念および特許請求の範囲の範囲内にあると考えられる。