特許第6267532号(P6267532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267532レジスト保護膜材料及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267532
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】レジスト保護膜材料及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20180115BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G03F7/11 501
   H01L21/30 575
【請求項の数】11
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-26586(P2014-26586)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152773(P2015-152773A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠 山 潤
(72)【発明者】
【氏名】金 賢 友
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−056220(JP,A)
【文献】 特開2013−228663(JP,A)
【文献】 特開2013−140319(JP,A)
【文献】 特開2009−122325(JP,A)
【文献】 特開2007−316581(JP,A)
【文献】 特開2007−241109(JP,A)
【文献】 特開2006−058404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して露光を行った後に現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法で用いるレジスト保護膜材料であって、
下記一般式(1)に記載の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pを有する高分子化合物と、炭素数6乃至10のエーテル化合物と、炭素数7乃至12の炭化水素化合物とを含むことを特徴とするレジスト保護膜材料。
【化1】

(一般式(1)中、mは1又は2、pは0<p≦1.0である。)
【請求項2】
前記レジスト保護膜材料は、
前記繰り返し単位pに加えて下記一般式(2)に記載の繰り返し単位q1乃至q4から選ばれる1種以上の繰り返し単位を共重合してなる高分子化合物をベースとすることを特徴とする請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基、Xは単結合、−C(=O)−O−(Cが主鎖と結合)、−O−、であり、X、Xそれぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり、Xはメチレン基、酸素原子、硫黄原子であり、Rは炭素数6乃至20のアリ−ル基、アルケニル基であり、R、R、R、Rは同一又は異種の水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2乃至6のアルケニル基、炭素数6乃至10のアリール基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子であり、該アルキル基、アルケニル基、アリール基がヒドロキシ基、炭素数1乃至10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子を有するか、又は非置換であり、vは1又は2であり、0≦q1<1.0、0≦q2<1.0、0≦q3<1.0、0≦q4<1.0、0q1+q2+q3+q4<1.0である。)
【請求項3】
前記レジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項4】
前記炭素数6乃至10のエーテル化合物は、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項5】
前記炭素数7乃至12の炭化水素化合物の1気圧(1013hPa)における沸点は、85℃以上250℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項6】
前記炭素数7乃至12の炭化水素化合物は、n−ヘプタン、イソヘプタン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1,6−ヘプタジエン、5−メチル−1−ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3−ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−メチル−1−シクロヘキセン、3−メチル−1−シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4−メチル−1−シクロヘキセン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、n−オクタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチル−2−メチルペンタン、3−エチル−3−メチルペンタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2−ジメチル−3−ヘキセン、2,4−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−2−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、1,7−オクタジエン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、n−ノナン、2,3−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、3,3−ジメチルヘプタン、3,4−ジメチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタン、4−エチルヘプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、2,2,4,4−テトラメチルペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,2−ジメチル−3−ヘプテン、2,3−ジメチル−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−3−ヘプテン、3,5−ジメチル−3−ヘプテン、2,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、1−エチル−2−メチルシクロヘキサン、1−エチル−3−メチルシクロヘキサン、1−エチル−4−メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチルシクロヘキサン、1,1,4−トリメチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8−ノナジエン、1−ノニン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、1−ノネン、2−ノネン、3−ノネン、4−ノネン、n−デカン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、tert−ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセン、5−デセン、1,9−デカジエン、デカヒドロナフタレン、1−デシン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、5−デシン、1,5,9−デカトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、α−フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4−デカジイン、1,5−デカジイン、1,9−デカジイン、2,8−デカジイン、4,6−デカジイン、n−ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1−ウンデセン、1,10−ウンデカジエン、1−ウンデシン、3−ウンデシン、5−ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4−エン、n−ドデカン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、4−メチルウンデカン、5−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、1,5,9−シクロドデカトリエン、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2−エチル−p−キシレン、2−プロピルトルエン、3−プロピルトルエン、4−プロピルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルトルエン、1,2,4,5−テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4−フェニル−1−ブテン、tert−アミルベンゼン、アミルベンゼン、2−tert−ブチルトルエン、3−tert−ブチルトルエン、4−tert−ブチルトルエン、5−イソプロピル−m−キシレン、3−メチルエチルベンゼン、tert−ブチル−3−エチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、5−tert−ブチル−m−キシレン、tert−ブチル−p−キシレン、1,2−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、3,9−ドデカジイン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンから選ばれる1種以上の炭化水素系溶媒であることを特徴とする請求項5に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項7】
全溶媒中、前記炭素数7乃至12の炭化水素化合物系溶媒を30質量%以上含有することを特徴とする請求項1乃至4に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項8】
ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して露光を行った後に現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法であって、
レジスト保護膜材料として請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレジスト保護膜材料を用いることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して真空中で露光を行うパターン形成方法であって、
レジスト保護膜材料として請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレジスト保護膜材料を用いることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記露光には、波長が3nm以上15nm以下の範囲の光、又は電子線を用いることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記露光後に行う現像工程において、アルカリ現像液によりフォトレジスト層の現像とレジスト保護膜材料の保護膜の剥離を同時に行うことを特徴とする請求項8乃至10に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられるレジスト保護膜材料及びこれを使用したパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。微細化が急速に進歩した背景には、投影レンズの高NA化、レジスト材料の性能向上、短波長化が挙げられる。
【0003】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト材料は、一般的に0.3μmプロセスに使われ始め、0.13μmルールの量産まで適用された。KrFからArFエキシマレーザー(193nm)への波長の短波長化は、デザインルールを0.13μm以下に微細化することが可能であるが、従来用いられてきたノボラック樹脂やポリビニルフェノール系の樹脂が193nm付近に非常に強い吸収を持つため、レジスト用のベース樹脂として用いることができない。透明性と、必要なドライエッチング耐性の確保のため、アクリル系の樹脂やシクロオレフィン系の脂環族系の樹脂が検討され、ArFリソグラフィーを用いたデバイスの量産が行われた。
【0004】
次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、及びレジストのエッチング耐性低下等の種々の問題により、Fリソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱され、これを用いた45nmノードのデバイスが量産されている。32nmノードデバイスの量産には、サイドウォールスペーサー技術を用いたダブルパターニングが用いられているが、プロセスの複雑さと長さが問題になっている。
【0005】
22nm以降のデバイスでは、プロセスコストの高いダブルパターニングではなく、露光波長を1桁以上短波長化して解像性を向上させた波長13.5nmの極端紫外光(EUV)リソグラフィーの到来が期待されており、開発が進んでいる。
EUVリソグラフィーにおいては、レーザーのパワーが低いことと反射ミラーの光の減衰による光量低下によって、ウエハー面に到達する光の強度が低い。このため、低い光量でスループットを稼ぐために高感度レジストの開発が急務である。
しかしながら、レジストの感度を上げると解像度とエッジラフネス(LER:Line Edge Roughness、LWR:Line Width Roughness)が劣化するという問題があり、感度とのトレードオフの関係が指摘されている。
【0006】
EUVレジストは感度が高いために、環境の影響を受けやすいという問題がある。
通常、化学増幅型レジストには空気中のアミンコンタミネーションの影響を受けにくくするためにアミンクエンチャーが添加されているが、ArFレジストなどに比べてEUVレジストのアミンクエンチャーの添加量は数分の一である。このため、EUVレジストはレジスト表面からのアミンの影響を受けてT−top形状になりやすい。
環境の影響を遮断するためにはレジストの上層に保護膜を形成することが有効である。アミンクエンチャーが添加されていないt−BOC(tertiary‐butoxy carbonyl)で保護されたポリヒドロキシスチレンベースのKrFエキシマレーザー用の初期型の化学増幅型レジストには、保護膜の適用が有効であった。ArF液浸リソグラフィーの初期段階に於いても、水への酸発生剤の流出を防いでこれによるT−top形状防止のために保護膜が適用された。
ここで、EUVリソグラフィープロセスに於いてもレジスト膜の上層に保護膜を形成することが提案されている(非特許文献1)。保護膜を形成することによって環境耐性を向上させることが出来、レジスト膜からのアウトガスを低減させることができる。
【0007】
DPP(Discharge Produced Plasma)、LPP(Laser Produced Plasma)のEUVレーザーからは、パターンを形成する波長13.5nmの光以外に弱いながらも波長140nm〜300nmのブロードな光(アウトオブバンド:OOB)が発振される。このブロードな光(以下、OOB光と略記)は、強度は弱いが、波長帯が幅広いためにエネルギー量としては無視できない。OOB光をカットするためのZrフィルターがEUVマイクロステッパーに装着されているが、光量が低下する。スループットを向上させるために光量低下が許されないEUVスキャナーでは、フィルターが装着されない可能性がある。OOB光はパターンを形成するEUV光のコントラストを低下させるため、EUV光には感度が高く、OOB光に対して低感度なレジスト材料の開発が求められている。
一方、OOB光を吸収するための保護膜をレジストの上層に設けることが提案されている。非特許文献1では、OOB光を遮断する保護膜をレジスト上層に設けることの優位性が示されている。
【0008】
レジスト保護膜としては、ArF液浸リソグラフィー用途において多くの材料が提案された。この中で、波長193nmにおける吸収が非常に高くて実用に耐えないと推察されるが、下記特許文献1には1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基含有スチレンの繰り返し単位を有する保護膜材料が示されている。
【0009】
液浸リソグラフィー用の保護膜において、保護膜用の溶剤がレジスト膜表面を溶解させ、保護膜とレジスト膜とがミキシングを起こして現像後のレジストパターンが膜減りを起こすことが指摘されている(特許文献2)。特にアルコール系溶媒を用いた場合に膜減りが顕著である。膜減りを防止するためにアルコール系溶媒に加えてエーテル系溶媒あるいは炭素数7〜11の炭化水素系溶剤が効果的であることが示されている(特許文献3)。 エーテル系溶媒に溶解するポリマーとしては、特許文献2に記載されるように1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基(HFA)含有のポリマーを挙げることが出来る。
【0010】
非特許文献1には、ウエハーを全面露光した場合、隣のショットから漏れだしたOOB光が多数回露光されるために、ポジ型レジストの場合ショットの周辺部のラインの線幅が細くなる現象が報告されている。波長200nm〜300nmにおける吸収を有する保護膜をレジスト膜上に適用することによってショット内の寸法ばらつきを小さくできることが報告されている。特許文献4には、ヒドロキシスチレンやクレゾールノボラック樹脂を4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、イソプロピルアルコール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール等のアルコール系溶媒、あるいは上記アルコール系溶媒にキシレンなどの炭化水素系溶媒との混合溶媒に溶解させた保護膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−352384号公報
【特許文献2】特許第4771083号公報
【特許文献3】国際公開第2007/049637号
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0021355号明細書
【特許文献5】特開2008−111103号公報
【特許文献6】特開2010−237661公報
【特許文献7】特開平9−246173号公報
【特許文献8】特開2006−169302号公報
【特許文献9】特開2003−149817号公報
【特許文献10】特開2006−178317号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol.7969,p796916−1(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を効率よく遮断させるだけでなくレジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、レジストを高感度化させる効果やレジスト膜からのアウトガスの発生を抑える効果も併せ持つレジスト保護膜材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるレジスト保護膜材料は、ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して露光を行った後に現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法で用いるレジスト保護膜材料であって、下記一般式(1)に記載の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pを有する高分子化合物と、炭素数6乃至10のエーテル化合物と、炭素数7乃至12の炭化水素化合物とを含むことを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、mは1又は2、pは0<p≦1.0である。)
【0015】
前記レジスト保護膜材料は、前記繰り返し単位pに加えて下記一般式(2)に記載の繰り返し単位q1乃至q4から選ばれる1種以上の繰り返し単位を共重合してなる高分子化合物をベースとする。
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基、Xは単結合、−C(=O)−O−(Cが主鎖と結合)、−O−、であり、X、Xそれぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり、Xはメチレン基、酸素原子、硫黄原子であり、Rは炭素数6乃至20のアリ−ル基、アルケニル基であり、R、R、R、Rは同一又は異種の水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2乃至6のアルケニル基、炭素数6乃至10のアリール基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子であり、該アルキル基、アルケニル基、アリール基はヒドロキシ基、炭素数1乃至10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子を有するか、又は非置換であり、vは1又は2であり、0≦q1<1.0、0≦q2<1.0、0≦q3<1.0、0≦q4<1.0、0q1+q2+q3+q4<1.0である。)
【0016】
前記レジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶である。
前記炭素数6乃至10のエーテル化合物は、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶媒を含有する。
前記レジスト保護膜材料は、炭素数7乃至12の炭化水素化合物の1気圧(1013hPa)における沸点は、85℃以上、250℃以下の範囲内である。
【0017】
前記炭素数7乃至12の炭化水素化合物は、n−ヘプタン、イソヘプタン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1,6−ヘプタジエン、5−メチル−1−ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3−ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−メチル−1−シクロヘキセン、3−メチル−1−シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4−メチル−1−シクロヘキセン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、n−オクタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチル−2−メチルペンタン、3−エチル−3−メチルペンタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2−ジメチル−3−ヘキセン、2,4−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−2−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、1,7−オクタジエン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、n−ノナン、2,3−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、3,3−ジメチルヘプタン、3,4−ジメチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタン、4−エチルヘプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、2,2,4,4−テトラメチルペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,2−ジメチル−3−ヘプテン、2,3−ジメチル−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−3−ヘプテン、3,5−ジメチル−3−ヘプテン、2,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、1−エチル−2−メチルシクロヘキサン、1−エチル−3−メチルシクロヘキサン、1−エチル−4−メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチルシクロヘキサン、1,1,4−トリメチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8−ノナジエン、1−ノニン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、1−ノネン、2−ノネン、3−ノネン、4−ノネン、n−デカン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、tert−ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセン、5−デセン、1,9−デカジエン、デカヒドロナフタレン、1−デシン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、5−デシン、1,5,9−デカトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、α−フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4−デカジイン、1,5−デカジイン、1,9−デカジイン、2,8−デカジイン、4,6−デカジイン、n−ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1−ウンデセン、1,10−ウンデカジエン、1−ウンデシン、3−ウンデシン、5−ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4−エン、n−ドデカン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、4−メチルウンデカン、5−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、1,5,9−シクロドデカトリエン、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2−エチル−p−キシレン、2−プロピルトルエン、3−プロピルトルエン、4−プロピルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルトルエン、1,2,4,5−テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4−フェニル−1−ブテン、tert−アミルベンゼン、アミルベンゼン、2−tert−ブチルトルエン、3−tert−ブチルトルエン、4−tert−ブチルトルエン、5−イソプロピル−m−キシレン、3−メチルエチルベンゼン、tert−ブチル−3−エチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、5−tert−ブチル−m−キシレン、tert−ブチル−p−キシレン、1,2−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、3,9−ドデカジイン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンから選ばれる1種以上の炭化水素系溶媒である。
【0018】
前記レジスト保護膜材料は、全溶媒中、前記炭素数7乃至12の炭化水素化合物系溶媒を30質量%以上含有する。
【0019】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるパターン形成方法は、ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して露光を行った後に現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法であって、レジスト保護膜材料として上記レジスト保護膜材料を用いることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様によるパターン形成方法は、ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜を形成して真空中で露光を行うパターン形成方法であって、レジスト保護膜材料として上記レジスト保護膜材料を用いることを特徴とする。
【0021】
前記露光には、波長が3nm以上15nm以下の範囲の光、又は電子線を用いる。
前記パターン形成方法は、前記露光後に行う現像工程において、アルカリ現像液によりフォトレジスト層の現像とレジスト保護膜材料の保護膜の剥離を同時に行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレジスト保護膜材料を適用することによって、大気中のアミンコンタミネーションによるレジストパターンの頭張りを防ぐことが出来、真空中の露光におけるレジスト膜からのアウトガスの発生を抑えることもできる。
本発明のレジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶なためにレジスト膜の現像と同時に剥離が可能である。更に、レジスト膜を溶解することが無く、ミキシング層を形成することも無いので、現像後のレジスト形状に変化を与えることがない。更には、EUVレーザーから発生する波長140nm〜300nmのアウトオブバンド(OOB)光を吸収し、これにフォトレジストが感光することを防ぐ効果も併せ持つ。
また、本発明のレジスト保護膜材料によれば、レジスト層を溶解させることがない炭化水素系溶媒とレジスト膜の溶解が小さいエーテル系溶媒とを混合した溶媒に1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するポリスチレンを溶解させたレジスト保護膜材料をレジストの上層に用いることによって、ポリヒドロキシスチレン系のフォトレジスト層に於いても、ほとんどダメージを与えずに保護膜層とフォトレジスト層との間にミキシング層を形成することがなく、現像後のレジストパターンの膜減りを抑えることが出来、これによってエッジラフネスを向上させることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を吸収し、レジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させるために、後述する保護膜を形成することが有効であることを知見した。この保護膜は、アルカリ現像液に可溶であるために、レジスト膜の現像と同時に剥離が可能であり、溶媒剥離型の保護膜に比べてプロセスがシンプルであるためにプロセスコストの上昇を最小限に抑えることが可能である
【0024】
なお、波長13.5nmにおいて、水素原子、炭素原子、珪素原子、硫黄原子の吸収が小さく、酸素原子、フッ素原子の吸収は大きいことが報告されている。フッ素ポリマーは波長13.5nmに大きな吸収を持つ。レジスト保護膜に吸収があると、レジスト膜の感度が低感度化にシフトする。レーザーパワーが低いEUVリソグラフィーにおいてレジストの低感度化は問題である。よって、レジスト保護膜としては高透明である必要がある。また、アルカリ現像液に溶解しないフッ素ポリマーは現像前に別途レジスト保護膜専用の剥離カップが必要となり、プロセスが煩雑化する。レジスト膜の現像と同時に剥離可能な保護膜が望ましく、保護膜材料の設計としてアルカリ溶解性基を有する材料が必要となるが、後述する保護膜は、かかる要求に応えられるものである。
【0025】
なお、アルカリ溶解性基としてはカルボキシル基、フェノール基、スルホ基、ヘキサフルオロアルコール基等が挙げられるが、透明性の観点ではヘキサフルオロアルコール基はフッ素原子が6個も存在しているために強い吸収がある。
しかしながら、ヘキサフルオロアルコール基を含有するポリマーは、レジスト膜へのダメージが少ないエーテル系の溶剤に溶解するというメリットがある。ヘキサフルオロアルコール基を含有するポリマーは、レジスト膜へのダメージがほとんどない炭化水素系の単独溶媒には溶解しないが、エーテル系の溶剤と炭化水素系の混合溶媒には溶解するために、溶媒によるレジスト膜へのダメージを最小限に抑えることが可能である。
【0026】
ポリメタクリル系をベースとするArFレジストに適用された液浸リソグラフィー用の保護膜材料としては、アルコール系溶媒を適用しても溶媒によるレジスト膜へのダメージが小さくて済んだ。溶媒ダメージを更に小さくするために特許文献3に示すようにアルコール系溶媒とエーテル系溶媒あるいはアルコール系溶媒と炭化水素系溶媒との混合溶媒が適用された。しかしながら、ヒドロキシスチレン系のEUVレジストにアルコール系溶媒を適用すると、著しい膜減りによってパターンが形成できない。これは、ヒドロキシスチレン系ポリマーがアルコール系溶媒に容易に溶解してしまうことによる。アルコール系溶媒にエーテル系溶媒や炭化水素系溶媒を混合しても膜減りを抑えることが出来ない。
【0027】
ヒドロキシスチレン系ポリマーにダメージを与えない溶媒として、水を挙げることが出来る。ヒドロキシスチレン用の水溶媒の保護膜としてはKrFリソグラフィー用の反射防止膜が用いられている。しかしながら、水溶性の保護膜材料は、水の高い表面エネルギーのためにディスペンスしたときの広がりが悪く、レジスト膜上に塗布することが困難である。表面エネルギーを低下させるために界面活性剤を添加する検討が行われたが十分ではなかった。パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を添加することは表面張力の低下に効果的であったが、PFOS問題によって長鎖のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を使用することが出来なくなり、水溶媒材料の表面張力を下げることは出来なくなった。これによって、溶剤系の保護膜の必要性が高まっている。
【0028】
エーテル系溶媒はメタクリル系レジストへのダメージは殆ど与えることがないが、ヒドロキシスチレン系レジストへは若干の膜減りを生じさせ、これによってLWRが劣化する。炭化水素系溶媒はヒドロキシスチレン系レジストへのダメージがほとんど無いが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基(HFA)含有のポリマーを溶解させることが出来ない。このことにより、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基(HFA)含有のポリマーを溶解させるエーテル系溶媒と、ヒドロキシスチレン系レジストへのダメージが無い炭化水素系溶媒を組み合わせることによって、本発明に記載されるレジストへのダメージが全くないアルカリ可溶型の保護膜の組成を考案するに至った。
【0029】
従って、本発明は、下記のレジスト保護膜材料及びパターン形成方法を提供するものである。
【0030】
本発明のレジスト保護膜材料は、保護膜用ベース材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pを有する高分子化合物を用いるもので、下記一般式(1)に示すものが好ましい。
【0031】
【化3】
(一般式(1)中、mは1又は2、pは0<p≦1.0である。)
【0032】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pを有する重合体は、エーテル系溶剤への溶解性が高い。繰り返し単位pを得るためのモノマーとしては、下記に挙げることが出来る。
【0033】
【化4】
【0034】
上記1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pは炭化水素系の繰り返し単位と共重合することも出来る。これによって、フッ素の割合が減少するためにEUV光における透明性が高まり、レジスト膜からのアウトガス量が減少し、OOB光を遮断する効果が高まる。また、フェノール性のヒドロキシ基を有する繰り返し単位を共重合することによって、EUV露光時に2次電子が発生し、これがレジスト膜内に拡散してレジストの感度が向上するメリットもある。繰り返し単位pと共重合する繰り返し単位は下記一般式(2)中のq1〜q4に示すことが出来る。
【0035】
【化5】
(一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基、Xは単結合、−C(=O)−O−(Cが主鎖と結合)、−O−、であり、X、Xそれぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり、Xはメチレン基、酸素原子、硫黄原子である。Rは炭素数6〜20のアリ−ル基、アルケニル基であり、R、R、R、Rは同一又は異種の水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子であり、該アルキル基、アルケニル基、アリール基がヒドロキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子を有していてもよく、vは1又は2である。0≦q1<1.0、0≦q2<1.0、0≦q3<1.0、0≦q4<1.0、0q1+q2+q3+q4<1.0である。)
【0036】
ここで繰り返し単位q1を得るためのモノマーは具体的には下記に例示することが出来る。
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
q2の繰り返し単位を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。
【化10】
【0042】
q3の繰り返し単位を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。
【化11】
【0043】
q4の繰り返し単位を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
本発明は、繰り返し単位pで示されるアルカリ可溶性の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレン単位を必須とするが、EUV光の露光中にフォトレジストから発生するアウトガスを遮断させる効果を高めるためにスチレン、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、芳香族基を有するメタクリレート、ビニルエーテルの繰り返し単位q1、スチルベン類、スチリルナフタレン類、ジナフチルエチレン類の繰り返し単位q2、アセナフチレン類の繰り返し単位q3、及びインデン類、ベンゾフラン類、ベンゾチオフェン類の繰り返し単位のq4を共重合することを特徴とする。
q1、q2、q3、及びq4の繰り返し単位の中ではアセナフチレン類のq3を共重合することが最もアウトガスの発生を抑えることが出来、OOB光の遮断効果が高く、好ましく用いることが出来る。
【0046】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位pと、q1〜q4の繰り返し単位との共重合比は、0.1≦p≦1.0、0≦q1<1.0、0≦q2<1.0、0≦q3<1.0、0≦q4<1.0、好ましくは0.2≦p≦1.0、0≦q1≦0.7、0≦q2≦0.7、0≦q3≦0.7、0≦q4≦0.7である。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位を含有するポリマーの分子量は重量平均分子量Mwが、1,000<Mw<50,000の範囲が好ましい。Mwが50,000以上の場合は溶媒とアルカリ現像液への溶解性が低下し、Mwが1,000以下の場合はレジストとのミキシングによって現像後のレジストパターンが膜減りしたりすることがある。
【0047】
本発明のレジスト保護膜用の高分子化合物の重合においては、AIBN等のラジカルによって重合が開始されるラジカル共重合、アルキルリチウム等の触媒を用いたイオン重合(アニオン重合)等が一般的である。これらの重合はその常法に従って行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例として2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、また水溶性開始剤としては過硫酸カリウムのような過硫酸塩、さらには過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤が例示される。重合開始剤の使用量は、種類、重合反応条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して、0.001質量%〜5質量%(0.001質量%以上、5質量%以下)、特に0.01質量%〜2質量%が採用される。
【0048】
また、重合反応においては重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、ジイソアミルエーテル等のエーテル系溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。またドデシルメルカプタンのような公知の分子量調整剤を併用してもよい。
重合反応の反応温度は重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更され、通常は20℃〜200℃(20℃以上、200℃以下)が好ましく、特に50℃〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
このようにして得られる本発明にかかる重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0049】
レジスト保護膜組成物用として用いられる溶媒としては、フォトレジスト膜を溶解させない溶媒で、かつ1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位を有するアルカリ可溶型ポリマーを溶解する必要がある。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンの繰り返し単位を有するアルカリ可溶型ポリマーを溶解させる溶媒としては、炭素数6〜10のエーテル化合物であり、具体的にはジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶媒を挙げることが出来る。
【0050】
フォトレジスト膜を溶解させない炭化水素系溶媒としては、1気圧(1013hPa)における沸点が85℃〜250℃(85℃以上、250℃以下)の範囲内である炭素数7〜12の炭化水素化合物であり、具体的には、n−ヘプタン、イソヘプタン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1,6−ヘプタジエン、5−メチル−1−ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3−ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−メチル−1−シクロヘキセン、3−メチル−1−シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4−メチル−1−シクロヘキセン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、n−オクタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチル−2−メチルペンタン、3−エチル−3−メチルペンタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2−ジメチル−3−ヘキセン、2,4−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−2−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、1,7−オクタジエン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、n−ノナン、2,3−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、3,3−ジメチルヘプタン、3,4−ジメチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタン、4−エチルヘプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、2,2,4,4−テトラメチルペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,2−ジメチル−3−ヘプテン、2,3−ジメチル−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−1−ヘプテン、2,6−ジメチル−3−ヘプテン、3,5−ジメチル−3−ヘプテン、2,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、1−エチル−2−メチルシクロヘキサン、1−エチル−3−メチルシクロヘキサン、1−エチル−4−メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチルシクロヘキサン、1,1,4−トリメチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8−ノナジエン、1−ノニン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、1−ノネン、2−ノネン、3−ノネン、4−ノネン、n−デカン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、tert−ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセン、5−デセン、1,9−デカジエン、デカヒドロナフタレン、1−デシン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、5−デシン、1,5,9−デカトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、α−フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6−ジヒドロシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4−デカジイン、1,5−デカジイン、1,9−デカジイン、2,8−デカジイン、4,6−デカジイン、n−ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1−ウンデセン、1,10−ウンデカジエン、1−ウンデシン、3−ウンデシン、5−ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4−エン、n−ドデカン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、4−メチルウンデカン、5−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、1,5,9−シクロドデカトリエン、トルエン、キシレン、クメン、メジチレン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2−エチル−p−キシレン、2−プロピルトルエン、3−プロピルトルエン、4−プロピルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルトルエン、1,2,4,5−テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4−フェニル−1−ブテン、tert−アミルベンゼン、アミルベンゼン、2−tert−ブチルトルエン、3−tert−ブチルトルエン、4−tert−ブチルトルエン、5−イソプロピル−m−キシレン、ネオペンチルベンゼン、3−メチルエチルベンゼン、tert−ブチル−3−エチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、5−tert−ブチル−m−キシレン、tert−ブチル−p−キシレン、1,2−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、3,9−ドデカジイン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンから選ばれる1種以上の炭化水素系溶媒を挙げることが出来る。炭化水素系溶媒の比率は全溶媒中の30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
【0051】
本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜材料には酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特許文献5の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
保護膜材料に酸発生剤を添加することによって現像後のレジストパターン間のブリッジ欠陥を低減させる効果がある。
【0052】
本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜材料にはアミンクエンチャーを含んでもよく、具体的には特許文献5の段落[0146]〜[0164]に記載されている。アミンクエンチャーを添加することによって現像後のレジストパターンの矩形性を向上させることが出来る。酸発生剤とアミンクエンチャーを併用することによってレジストパターンのLWRを低減させることが出来る。
【0053】
本発明のレジスト保護膜材料には特許文献5の段落[0165]〜[0166]記載の界面活性剤を添加することが出来る。
【0054】
上記界面活性剤の配合量は、保護膜用ベース材料100質量部に対して0.0001質量部〜10質量部(0.0001質量部以上、10質量部以下)、特には0.001質量部〜5質量部が好適である。
【0055】
本発明のパターン形成方法に用いるフォトレジストとしては化学増幅型ポジ型あるいはネガ型レジストであり、ポジ型レジストとしては例えば特許文献6中、段落[0041]、[化22]の一般式(7)で示されるカルボキシル基が酸不安定基で置換された繰り返し単位e、及び/又はヒドロキシ基が酸不安定基で置換された繰り返し単位fを有している必要がある。更には、段落[0038]、[化21]記載の酸発生剤が主鎖に結合した繰り返し単位を有することによってエッジラフネス(LWR)を低減させることが出来る。
【0056】
レジスト材料に用いられる高分子化合物は、それぞれ重量平均分子量が1,000〜500,000(1,000以上、500,000以下)、好ましくは2,000〜30,000であるのが望ましい。重量平均分子量が1,000以上であれば、レジスト材料が耐熱性に優れるものとなり、500,000以下であれば、アルカリ溶解性が低下することもなく、パターン形成後に裾引き現象が生じることもない。
【0057】
更に、レジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0<(Mw/Mn)<2.0、特に1.0<(Mw/Mn)<1.5と狭分散であることが好ましい。
【0058】
次に、本発明の一実施形態によるレジスト保護膜材料を用いたパターン形成方法について説明する。
本実施形態のパターン形成方法は、少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、該フォトレジスト膜の上に、上記本発明のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成する工程と、露光する工程と、現像液を用いて現像する工程を含む。
【0059】
まず、基板上にフォトレジスト膜を形成する。
成膜方法としては、例えば、スピンコート法などが挙げられる。この時、フォトレジスト膜材料のスピンコーティングにおけるディスペンス量を削減するために、フォトレジスト溶媒あるいはフォトレジスト溶媒と混用する溶液で基板を塗らした状態でフォトレジスト膜材料をディスペンスしスピンコートするのが好ましい(例えば、特許文献7参照)。これにより、フォトレジスト膜材料の溶液の基板への広がりが改善され、フォトレジスト膜材料のディスペンス量を削減できる。
【0060】
レジスト膜の膜厚は5nm〜500nm(5nm以上、500nm以下)、特に10nm〜300nmとすることが好ましい。レジスト材料としては、ポジ型あるいはネガ型を挙げることが出来、ポジ型としてはポリヒドロキシスチレンのヒドロキシ基の一部を酸不安定基で置換した特許文献8に示される材料を挙げることが出来る。ポリメタクリレートベースのレジスト材料としては、特許文献9記載の環状の酸不安定基を有するメタクリル酸エステルを共重合した材料を挙げることが出来る。特許文献10記載の重合性の酸発生剤を共重合した材料を挙げることも出来る。
【0061】
次に、フォトレジスト膜の上に、本発明のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成する。
成膜方法としては、例えば、スピンコート法などが挙げられる。レジスト保護膜材料のスピンコートにおいても、上述のフォトレジスト膜と同様のプロセスが考えられ、レジスト保護膜材料の塗布前にフォトレジスト膜の表面を溶媒で濡らしてからレジスト保護膜材料を塗布してもよい。形成するレジスト保護膜の膜厚は2nm〜200nm(2nm以上、200nm以下)、特には5nm〜50nmとすることが好ましい。フォトレジスト膜の表面を溶媒で濡らすには回転塗布法、ベーパープライム法が挙げられるが、回転塗布法がより好ましく用いられる。この時用いる溶媒としては、上述のフォトレジスト膜を溶解させない炭化水素系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒とするのがより好ましい。
【0062】
本実施形態のレジスト保護膜のアルカリ溶解速度は、3nm/s以上の溶解速度であることが好ましく、より好ましくは5nm/s以上の溶解速度である。
【0063】
レジスト膜上に保護膜を形成した後に露光を行う。露光には、波長が3nm〜15nm(3nm以上、15nm以下)の範囲の光、又は電子線を用いることができる。
露光時の環境としては、EUV、EB共に真空中である。
露光後、必要に応じてベーク(PEB:Post Exposure Bake)を行い、現像を行う。
現像工程では、例えば、アルカリ現像液で3秒〜300秒間現像を行う。アルカリ現像液としては2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられている。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりにテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いることも出来る。
この場合、現像工程において、アルカリ現像液を用いて現像し、上記フォトレジスト膜にレジストパターンを形成すると同時に、フォトレジスト膜上のレジスト保護膜の剥離を行うのが好ましい。このようにすれば、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができる。
【0064】
なお、上記工程に加え、シュリンク工程、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等のその他の各種工程が行われてもよい。
〔実施例、比較例〕
【0065】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。
【0066】
下記一般式に示すレジストポリマー(1、2)、酸発生剤(PAG)、アミンクエンチャー、溶剤、及び界面活性剤を表1に示す割合で溶解したレジストを用意し、Si基板上に各レジスト溶液をディスペンスしスピンコートの後110℃で60秒間ホットプレートにてベークして膜厚100nmのレジスト膜を作成した。
レジスト膜上に表2に示す溶剤をディスペンスし、30秒間静止後スピンドライして100℃で60秒間ホットプレートによりベークして溶剤を乾燥させた。溶剤のディスペンス前後の膜厚を測定し、溶剤のディスペンスによる膜厚減少量を求めた。結果を表2に示す。
【0067】
【化14】
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
ポリヒドロキシスチレン系ベースのレジスト材料1の溶剤溶解性は高く、4−メチル−2−ペンタノールのディスペンスでは完全に膜が溶解してしまい、溶解性が低いジイソペンチルエーテルのディスペンスに於いてもかなりの膜減りが発生した。本実施例の炭化水素系溶剤との混合溶剤のディスペンスでは膜減りを抑えることが出来ていることが確認された。
【0071】
保護膜用の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を有するスチレンとアセナフチレン類の繰り返し単位を有する高分子化合物としては、以下に示す材料を用いた。
【0072】
下記一般式に示す添加化合物及び溶媒を混合し、下記表3、4に示す組成のレジスト保護膜溶液TC−1〜24、比較TC−1〜4を作製した。比較TC−4は、保護膜用ポリマー1がデカンに溶解しなかった。
【0073】
【化15】
【0074】
【化16】
【0075】
【化17】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
シリコン基板上にレジスト保護膜溶液TC−1〜31、比較TC−1〜3をスピンコートし、100℃で60秒間ベークして、20nm膜厚のレジスト保護膜(TC−1〜31、比較TC−1〜3)を形成した。
次に、上記方法でレジスト保護膜を形成したシリコン基板を用いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、現像後のレジスト保護膜の膜厚を測定した。その結果を表5に示す。現像後、レジスト保護膜は全て溶解していることが確認された。
【0079】
【表5】
【0080】
<EUV露光評価>
フォトレジストとしては、信越化学工業(株)製EUVレジスト、SEVR−140を用いた。200℃ベーク後、100℃で90秒ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径300mmのSiウエハー上にレジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚50nmのレジスト膜を作成した。保護膜を形成する場合は、レジスト上に保護膜用液を塗布し、100℃で60秒間ベークして20nm膜厚の保護膜を形成した。これをASML社製EUVスキャナーNXE3100(NA0.25、σ0.8、通常照明)で露光し、95℃で60秒間ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間現像した。34nmラインアンドスペースが寸法通りになっている露光量を求め、エッジラフネス(LWR)を測定した。結果を表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
上記の通り、本発明の保護膜を適用することによって、レジスト膜の膜減りを抑えることが出来、これによってエッジラフネスを向上することが出来る。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。