(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象となる撮像光学系を備えた撮像装置によって色収差測定用のチャートである収差測定チャートを撮像した画像から、色収差を測定する色収差測定システムであって、
光を鏡面反射させる反射板と、
前記撮像装置の撮像用の開口を有し、当該開口以外の領域に前記収差測定チャートを配置したチャート領域と光を鏡面反射させる反射領域とを同一面に設け、前記反射板の反射面に対して、当該チャート領域のチャート面を対向して配置したチャート板と、
前記チャート板の開口に設置した前記撮像装置が撮像した、前記反射板および前記チャート板の反射領域で反射された前記収差測定チャートの撮像画像から、前記色収差を測定する色収差測定装置と、を備え、
前記チャート板は、前記開口の中心から、水平方向および垂直方向の少なくとも一の方向において、所定間隔離間した位置に前記チャート領域を設け、前記開口から前記チャート領域までの間に前記反射領域を設けたことを特徴とする色収差測定システム。
前記反射板の反射面と前記チャート板のチャート面との距離をL、前記撮像装置の画角に対応して撮像される前記反射板の撮像領域の前記方向に対応する長さをaとしたとき、
前記チャート板において、前記所定間隔として、(N−1)×a(ただし、Nは2以上の整数)だけ前記開口の中心から離間して前記収差測定チャートを配置することを特徴とする請求項1に記載の色収差測定システム。
測定対象となる撮像光学系を備えた撮像装置によって色収差測定用のチャートである収差測定チャートを撮像した画像から、色収差を測定する色収差測定システムであって、
前記撮像装置の撮像用の開口を有し、当該開口以外の領域で光を鏡面反射させる反射板と、
前記収差測定チャートを配置したチャート領域と光を鏡面反射させる反射領域とを同一面に設け、前記反射板の反射面に対して、当該チャート領域のチャート面を対向して配置したチャート板と、
前記反射板の開口に設置した前記撮像装置が撮像した、前記反射板および前記チャート板の反射領域で反射された前記収差測定チャートの撮像画像から、前記色収差を測定する色収差測定装置と、を備え、
前記チャート板は、前記開口の中心から当該チャート板へ下ろした垂線の交点位置から、水平方向および垂直方向の少なくとも一の方向において、所定間隔離間した位置に前記チャート領域を設け、前記交点位置から前記チャート領域までの間に前記反射領域を設けたことを特徴とする色収差測定システム。
前記反射板の反射面と前記チャート板のチャート面との距離をL、前記撮像装置の画角に対応して撮像される前記反射板の撮像領域の前記方向に対応する長さをaとしたとき、
前記チャート板において、前記所定間隔として、(2N−1)×a/2(ただし、Nは1以上の整数)だけ前記開口の中心から離間して前記収差測定チャートを配置することを特徴とする請求項3に記載の色収差測定システム。
測定対象となる撮像光学系を備えた撮像装置によって色収差測定用のチャートである収差測定チャートを撮像した画像から、色収差を測定する色収差測定システムであって、
光を鏡面反射させる反射板と、
前記撮像装置の撮像用の開口を有し、当該開口以外の領域に前記収差測定チャートを配置し、前記反射板の反射面に対して、前記収差測定チャートのチャート面を対向して配置したチャート板と、
前記チャート板の開口に設置した前記撮像装置が撮像した、前記反射板で反射された前記収差測定チャートの撮像画像から、前記色収差を測定する色収差測定装置と、
を備えることを特徴とする色収差測定システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本発明の実施形態に係る色収差測定システムにおいて、反射板とチャート板とを対向した構成で、チャート板に反射領域を設けず、チャート板に設けた開口に撮像装置を設置する構成を第1実施形態として説明する。
また、チャート板に反射領域を設け、チャート板に設けた開口に撮像装置を設置する構成を第2実施形態、チャート板に反射領域を設け、反射板に設けた開口に撮像装置を設置する構成を第3実施形態として説明する。
【0016】
≪第1実施形態≫
〔色収差測定システムの構成〕
まず、
図1,
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る色収差測定システムS
Aの構成について説明する。
【0017】
色収差測定システムS
Aは、撮像光学系の色収差(倍率色収差等)を測定するものである。ここで、色収差測定システムS
Aは、反射板10と、チャート板20と、撮像装置30と、色収差測定装置40と、を備える。ただし、撮像装置30は、色収差の測定対象である。
また、反射板10とチャート板20とは平行で、かつ、反射板10の反射面と、チャート板20のチャート面とが対向するように設置される。
また、撮像装置30は、チャート板20の中央に設けた開口Hを介して、反射板10の反射面を撮像する位置に配置される。
【0018】
反射板10は、反射面において、光を反射させるものである。この反射板10は、光を鏡面反射(正反射)させる一般的な鏡等であって、光の入射角と反射角とが、反射面に対して同じ角度となるように光を反射させる。
【0019】
チャート板20は、色収差を測定するための収差測定チャートPを形成した板部材である。このチャート板20には、色収差を測定するためのチャートとして、例えば、
図20に示した白黒の市松模様等の格子パターンの収差測定チャートPが描かれている。
このチャート板20は、収差測定チャートPを平面描画可能な素材であれば特に限定するものではないが、例えば、合板、金属板、アクリル板等である。また、チャート板20は、チャート面に直接、収差測定チャートPを描画したものでもよいし、シートに描画された収差測定チャートPをチャート面に貼付したものであってもよい。
【0020】
このチャート板20は、中央部に、撮像装置30が反射板10を撮像するための開口Hを設けている。これによって、撮像装置30は、反射板10によって反射された収差測定チャートPを撮像することができる。
ここで、反射板10の反射面とチャート板20のチャート面との距離Lは、実際に色収差を測定したい距離の1/2とする。
【0021】
また、チャート板20の大きさは、撮像装置30が撮像した撮像画像全体に収差測定チャートPが撮像される大きさが好ましい。その場合、チャート板20の大きさは、撮像装置30の画角αで撮像される反射板10の撮像領域Aの水平方向および垂直方向のそれぞれの2倍の大きさとすればよい。
【0022】
ここで、
図3を参照して、撮像装置30が撮像する反射板10の撮像領域Aの大きさについて説明する。撮像装置30のレンズの焦点距離をf(mm)、撮像素子Sの垂直方向の大きさ(長さ)をd(mm)、撮像光学系(レンズ)Oの中心(主点〔後側主点〕Pp)から反射板10の反射面までの距離をL(mm)としたとき、撮像領域Aの高さa(mm)は、以下の式(1)で表される。
【0024】
なお、撮像領域Aの幅についても、撮像素子Sの垂直方向の長さを、水平方向の長さとすることで同様に求めることができる。
図1に戻って、色収差測定システムS
Aの構成について説明を続ける。
【0025】
撮像装置30は、被写体を撮像するものである。この撮像装置30は、一般的なカメラであって、動画像カメラであっても、静止画カメラであっても構わない。
この撮像装置30は、収差測定の対象となるレンズ等の撮像光学系(レンズ)Oを備え、CCD等の各色(例えば、RGB)に対応した撮像素子Sに像を結像し、撮像した各色の画像信号を色収差測定装置40に出力する。
ここで、撮像装置30は、撮像距離の基準となる予め定めた基準位置を、チャート板20のチャート面に合わせて、反射板10を撮像する。この基準位置は、撮像光学系Oのレンズ中心(主点〔後側主点〕)である。
なお、撮像装置30は、図示を省略した三脚、雲台等で固定されているものとする。
【0026】
色収差測定装置40は、撮像装置30で撮像された各色の収差測定チャートPの画像信号から、色収差を測定するものである。
この色収差測定装置40は、収差測定チャートPの各色の画像信号の位置ずれを測定することで、色収差を測定する。
【0027】
このように、色収差測定システムS
Aを構成することで、撮像装置30は、チャート板20のチャート面に形成されている収差測定チャートPを、反射板10の反射面で反射した画像として撮像することができる。
【0028】
〔色収差測定システムの作用〕
図1,
図2で説明した色収差測定システムS
Aによれば、反射板10の反射面とチャート板20のチャート面との距離をLだけ離間して収差測定チャートPを撮像した場合、収差測定チャートPを用いた色収差の測定距離は、距離Lの2倍となる。
また、収差測定チャートPは、反射板10で反射するが、ミラー反射には屈折率の波長依存性がないため、色収差に影響がない。
すなわち、
図4に示すように、撮像装置30は、距離が2Lの位置の壁面等に貼付された収差測定チャートPvを撮像するのと同じ(色収差も同じ)チャート画像を撮像することができる。
【0029】
この色収差測定システムS
Aにおいて、撮像装置30が画角全体に収差測定チャートPが入るように撮像した画像を、
図5(a)に例示する。ここで、
図5(a)で示した画像の中心には、撮像装置30が撮像される。
なお、収差測定チャートPは、必ずしも撮像装置30の画角全体に撮像される必要はない。例えば、撮像装置30の画角に対して、収差測定チャートPが小さく撮像される場合、
図5(b)に示すように、撮像画像の一部として、収差測定チャートPが撮像されることになる。この場合でも、撮像装置30の向きを適宜変えることで、
図5(c)に示すように、
図5(b)で収差測定チャートPが撮像されていない位置でパターンを撮像して、色収差を測定すればよい。
【0030】
以上説明したように、色収差測定システムS
Aは、色収差測定のための測定距離を確保しつつ、撮像装置30が実際に撮像する被写体(反射板10)との距離を測定距離の1/2に抑えて、色収差を測定することができる。
【0031】
≪第2実施形態≫
〔色収差測定システムの構成〕
次に、
図6,
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る色収差測定システムS
Bの構成について説明する。
【0032】
色収差測定システムS
Bは、撮像光学系の色収差(倍率色収差等)を測定するものである。第1実施形態の色収差測定システムS
A(
図1、
図2参照)は、色収差測定のための測定距離の1/2の撮像距離で色収差を測定するのに対し、色収差測定システムS
Bは、1/(2N)の撮像距離で色収差を測定する。ただし、Nは2以上の整数である。
ここで、色収差測定システムS
Bは、反射板10と、チャート板20Bと、撮像装置30と、色収差測定装置40と、を備える。
チャート板20B以外の構成は、
図1で説明した色収差測定システムS
Aと同じ構成であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
チャート板20Bは、色収差を測定するための収差測定チャートPを形成した板部材である。ただし、チャート板20Bは、全面に収差測定チャートPを形成するのではなく、周辺部に、収差測定チャートPを形成したチャート領域Cを設け、中央部に、光を反射させる反射領域Rを設けている。
【0034】
チャート領域Cは、
図1で説明したチャート板20と同様の収差測定チャートPを形成した領域である。
このチャート領域Cは、チャート板20Bの開口Hの中心から、水平方向および垂直方向に所定間隔離間した位置に形成されている。
【0035】
ここで、
図6を参照して、垂直方向におけるチャート領域Cの位置について説明する。反射板10までの撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕とする場合、撮像装置30が撮像する反射板10の撮像領域Aの前記式(1)で示した高さa(a
h)を基準に、開口Hの中心、すなわち、撮像光学系(レンズ)Oの光軸を通るチャート板20Bの水平線から垂直方向に(N−1)×aだけ離れた高さaの領域をチャート領域Cとする。
【0036】
図6で示した色収差測定システムS
Bは、撮像距離を色収差の測定距離の1/6〔N=3〕とする場合の例を示している。ここでは、チャート板20Bは、開口Hの中心から、垂直方向に2×aだけ離れた領域に高さaのチャート領域Cを設けている。
なお、水平方向においても同様で、撮像装置30が撮像する反射板10の撮像領域Aの幅a(a
w)を基準に、開口Hの中心を通るチャート板20Bの垂直線から水平方向に(N−1)×aだけ離れた幅aの領域をチャート領域Cとする。
【0037】
反射領域Rは、反射板10と同様、反射面において光を反射させるものである。この反射領域Rは、チャート板20Bにおいて、チャート領域Cを除く領域として形成される。
なお、チャート板20Bは、チャート領域Cと反射領域Rとをそれぞれ異なる部材を連結して構成してもよいし、合板、金属板、アクリル板等の板の片面(チャート面、反射面)のチャート領域Cに、シートに描画された収差測定チャートPを貼付し、反射領域Rに反射シートを貼付して構成してもよい。
【0038】
このように、色収差測定システムS
Bを構成することで、撮像装置30は、チャート板20Bのチャート領域Cに形成されている収差測定チャートPを、反射板10の反射面と、チャート板20Bの反射領域Rとで順次反射した画像として撮像することができる。
【0039】
〔色収差測定システムの作用〕
図6,
図7で説明した色収差測定システムS
Bは、撮像装置30の撮像光学系(レンズ)Oの中心から、水平および垂直方向に、撮像装置30の画角に対応する反射板10の撮像領域Aの大きさ(高さ、幅)aを基準に、(N−1)×a〔Nは2以上の整数〕だけ離れた位置にチャート領域Cを設けている。これによって、収差測定チャートPの外側の光は、
図6の太点線矢印で示したように、また、収差測定チャートPの内側の光は、
図6の細点線矢印で示したように、反射板10の反射面とチャート板20Bの反射面とで反射して、撮像装置30に到達する。
【0040】
すなわち、色収差測定システムS
Bは、
図8に示すように、反射板10とチャート板20Bとの距離をLとしたとき、撮像装置30が撮像する画像は、距離が2NL(
図8では、N=3)の位置の壁面等に貼付された収差測定チャートPvの一部(チャート領域Cの位置に対応する部分)が撮像された画像となる。なお、
図8は、垂直方向の対象性から、撮像装置30に対して上半分の状態を図示している。
【0041】
このように、色収差測定システムS
Bは、色収差を測定するために、直線距離として2NL必要な距離を、その1/(2N)の距離Lを確保することで測定することができる。
また、収差測定チャートPは、反射板10と、チャート板20Bの反射領域Rとで複数回反射するが、ミラー反射には屈折率の波長依存性がないため、第1実施形態と同様、色収差に影響がない。
なお、N=1の場合が、第1実施形態で説明した
図1の色収差測定システムS
Aに相当することになる。
【0042】
この色収差測定システムS
Bにおいて、撮像装置30が撮像した画像を、
図9に例示する。ここで、
図9で示した画像の中心には、撮像装置30が撮像される。また、
図9の撮像画像中、収差測定チャートPが写る領域は、
図6,
図7で示した反射領域Rを除いた部分となる。
【0043】
ここで、撮像装置30の画角に対応する反射板10の撮像領域Aの大きさの縦横比をa
v:a
hとし、撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕としたとき、
図9に示した撮像画像において、図示した比率で、収差測定チャートPが撮像されることになる。
すなわち、色収差測定システムS
Bでは、撮像装置30が撮像した画像は、水平方向の左右端からそれぞれ水平画素数の1/(2N)の領域に収差測定チャートPのパターンが撮像され、垂直方向の上下端からそれぞれ垂直画素数の1/(2N)の領域に収差測定チャートPのパターンが撮像される。
なお、収差測定チャートPのパターンが写っていない領域において、色収差を測定するには、撮像装置30が、適宜向きを変えて測定を行えばよい。
【0044】
以上説明したように、色収差測定システムS
Bは、色収差測定のための測定距離を確保しつつ、撮像装置30が実際に撮像する被写体(反射板10)との距離を測定距離の1/(2N)に抑えて、色収差を測定することができる。
【0045】
〔変形例〕
以上、本発明の第2実施形態に係る色収差測定システムS
Bについて説明したが、本発明は、この構成に限定されない。
【0046】
(変形例1)
例えば、第2実施形態のチャート板20Bでは、チャート領域Cと反射領域Rとを設けたが、この反射領域Rは、すべての領域で光を反射させる必要はなく、実際に収差測定チャートPの光が到達する領域のみで反射させることとしてもよい。
【0047】
例えば、
図8では、反射領域Rにおいて、実際に収差測定チャートPの光が到達する領域R
1,R
2のみを反射材(鏡)とすればよい。
なお、撮像装置30が撮像する反射板10の撮像領域A(
図6参照)の大きさ(高さ)をa、撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕としたとき、撮像装置30に近い方から数えてi番目(i=1,2,3,…)の領域R
iの垂直方向の大きさ(高さ)r
iを、以下の式(2)で求められる値とする。
【0049】
なお、領域R
iの水平方向の大きさ(幅)についても、撮像領域A(
図6参照)の大きさ(幅)をaとすることで、同様に求めることができる。また、図では省略しているが、撮像装置30の下方向についても同様である。
【0050】
(変形例2)
また、第2実施形態のチャート板20Bでは、中心部に反射領域R、その外縁にチャート領域Cを設けた。その場合、
図9に示したように、画像中央部に収差測定チャートPが写らない領域が発生する。
【0051】
そこで、
図10の色収差測定システムS
Cに示すように、チャート板20Cとして、撮像装置30から直近の反射領域R
1より内側(撮像装置30側)に、収差測定チャートPと同様の収差測定チャートP
2を設けてもよい。
その場合、撮像装置30が撮像する反射板10の撮像領域A(
図6参照)の大きさ(高さ)をa、撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕としたとき、開口Hの中心、撮像装置30の撮像光学系Oの光軸から、収差測定チャートP
2の上端までの距離pを、以下の式(3)で求められる値とする。
【0053】
なお、撮像装置30の撮像光学系Oの中心から水平方向、および、下方向についても、同様である。
これによって、撮像装置30が撮像する撮像画像は、
図11に示すように、収差測定チャートPの内側に、収差測定チャートP
2が撮像されることになる。
【0054】
なお、この収差測定チャートP
2が撮像された領域は、
図10に示すように、反射板10で1回反射された画像領域であるため、反射板10の反射面とチャート板20Cのチャート面との距離Lに対して、2倍の色収差測定距離を確保することができる。
このように、色収差測定システムS
Cでは、2種類の測定距離で色収差測定を行うことができる。
【0055】
(変形例3)
また、第2実施形態のチャート板20Bでは、
図6で示したように、チャート領域C全体に収差測定チャートPを備えることとしている。
しかし、収差測定チャートPは、チャート領域C内であれば、どの領域であっても所望の測定距離を確保することができる。
そこで、
図12の色収差測定システムS
Dに示すように、チャート板20Dとして、チャート領域Cに対して、その高さaよりも短い高さb(b<a)の領域に収差測定チャートPを形成してもよい。なお、撮像装置30を基準に下方向、垂直方向においても同様である。
【0056】
ここで、撮像装置30の画角に対応する反射板10の撮像領域Aの大きさの縦横比をa
v:a
hとし、チャート領域Cに対する収差測定チャートPの比率を水平方向でa
h:b
h、垂直方向でa
v:b
vとし、撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕としたとき、
図13に示した撮像画像において、図示した比率で、収差測定チャートPが撮像されることになる。
【0057】
(変形例4)
また、第2実施形態のチャート板20Bでは、
図6,
図7で示したように、チャート領域Cにおいて、開口Hの中心から、水平方向および垂直方向の両方に収差測定チャートPを備えることとしている。
しかし、収差測定チャートPは、例えば、開口の中心から、水平方向のみ、または、垂直方向のみに収差測定チャートPを備えることとしてもよい。
【0058】
≪第3実施形態≫
〔色収差測定システムの構成〕
次に、
図14,
図15を参照して、本発明の第3実施形態に係る色収差測定システムS
Eの構成について説明する。
【0059】
色収差測定システムS
Eは、撮像光学系の色収差(倍率色収差等)を測定するものである。第2実施形態の色収差測定システムS
B(
図6、
図7参照)は、色収差測定のための測定距離の1/(2N)〔Nは2以上の整数〕の撮像距離で色収差を測定するのに対し、色収差測定システムS
Eは、1/(2N+1)〔Nは1以上の整数〕の撮像距離で色収差を測定する。
【0060】
ここで、色収差測定システムS
Eは、反射板10Eと、チャート板20Eと、撮像装置30と、色収差測定装置40と、を備える。
反射板10Eとチャート板20Eとは平行で、かつ、反射板10Eの反射面と、チャート板20Eのチャート面とが対向するように設置される点は、第1、第2実施形態と同じである。
ただし、ここでは、撮像装置30は、反射板10Eの中央に設けた開口Hを介して、チャート板20Eの反射領域を撮像する位置に配置される。
【0061】
反射板10Eは、第1、第2実施形態の反射板10と同様、反射面において、光を反射させるものである。この反射板10は、光を鏡面反射(正反射)させる一般的な鏡等であって、光の入射角と反射角とが、反射面に対して同じ角度となるように光を反射させる。
この反射板10Eは、中央部に、撮像装置30がチャート板20Eを撮像するための開口Hを設けている。これによって、撮像装置30は、チャート板20Eの反射領域Rによって反射された収差測定チャートPを撮像することができる。
【0062】
チャート板20Eは、色収差を測定するための収差測定チャートPを形成した板部材である。ただし、チャート板20Eは、全面に収差測定チャートPを形成するのではなく、周辺部に、収差測定チャートPを形成したチャート領域Cを設け、中央部に、光を反射させる反射領域Rを設けている。なお、
図15では、チャート板20Eのチャート領域Cと反射領域Rとを、チャート板20Eを透過した状態で示している。
【0063】
チャート領域Cは、
図1で説明したチャート板20と同様の収差測定チャートPを形成した領域である。
このチャート領域Cは、開口Hの中心からチャート板20E(チャート面)に下ろした垂線の交点位置、すなわち、チャート板20Eと撮像光学系(レンズ)Oの光軸との交点位置から、水平方向および垂直方向に所定間隔離間した位置に形成されている。
【0064】
ここで、
図14を参照して、垂直方向におけるチャート領域Cの位置について説明する。チャート板20Eまでの撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N+1)〔Nは1以上の整数〕とする場合、撮像装置30が撮像するチャート板20Eの撮像領域Aの前記式(1)で示した高さa(a
h)を基準に、開口Hの中心、すなわち、撮像光学系(レンズ)Oの光軸を通るチャート板20Eの水平線から垂直方向に(2N−1)×a/2だけ離れた高さaの領域をチャート領域Cとする。
【0065】
図14で示した色収差測定システムS
Eは、撮像距離を色収差の測定距離の1/5〔N=2〕とする場合の例を示している。ここでは、チャート板20Eは、開口Hの中心を通るチャート板20Eの水平線から垂直方向に3×a/2だけ離れた領域に高さaのチャート領域Cを設けている。
なお、水平方向においても同様で、撮像装置30が撮像するチャート板20Eの撮像領域Aの幅a(a
w)を基準に、開口Hの中心を通るチャート板20Eの垂直線から水平方向に(2N−1)×a/2だけ離れた幅aの領域をチャート領域Cとする。
【0066】
反射領域Rは、反射板10Eと同様、反射面において光を反射させるものである。この反射領域Rは、チャート板20Eにおいて、チャート領域Cを除く領域として形成される。
なお、チャート板20Eは、チャート領域Cと反射領域Rとをそれぞれ異なる部材を連結して構成してもよいし、合板、金属板、アクリル板等の板の片面(チャート面、反射面)のチャート領域Cに、シートに描画された収差測定チャートPを貼付し、反射領域Rに反射シートを貼付して構成してもよい。
【0067】
このように、色収差測定システムS
Eを構成することで、撮像装置30は、チャート板20Eのチャート領域Cに形成されている収差測定チャートPを、反射板10Eの反射面と、チャート板20Eの反射領域Rとで順次反射した画像として撮像することができる。
【0068】
〔色収差測定システムの作用〕
図14,
図15で説明した色収差測定システムS
Eは、撮像装置30の撮像光学系(レンズ)Oの中心から、水平および垂直方向に、撮像装置30の画角に対応するチャート板20Eの撮像領域Aの大きさ(高さ、幅)aを基準に、(2N−1)×a/2〔Nは1以上の整数〕だけ離れた位置にチャート領域Cを設けている。これによって、収差測定チャートPの外側の光は、
図14の太点線矢印で示したように、また、収差測定チャートPの内側の光は、
図14の細点線矢印で示したように、反射板10の反射面とチャート板20Eの反射領域とで反射して、撮像装置30に到達する。
【0069】
すなわち、反射板10Eとチャート板20Eとの距離をLとしたとき、撮像装置30が撮像する画像は、距離が(2N+1)Lの位置の壁面等に貼付された収差測定チャートの一部が撮像された画像となる。
このように、色収差測定システムS
Eは、色収差を測定するために、直線距離として(2N+1)L必要な距離を、その1/(2N+1)の距離Lを確保することで測定することができる。
【0070】
また、収差測定チャートPは、反射板10Eと、チャート板20Eの反射領域Rとで複数回反射するが、ミラー反射には屈折率の波長依存性がないため、第1,第2実施形態と同様、色収差に影響がない。
この色収差測定システムS
Eにおいて、撮像装置30が撮像した画像は、
図9と同様、中心に撮像装置30が撮像される。また、その画像中、収差測定チャートPが写る領域は、
図14,
図15で示した反射領域Rを除いた部分となる。
【0071】
ここで、撮像装置30の画角に対応するチャート板20Eの撮像領域Aの大きさの縦横比をa
v:a
hとし、撮像距離を色収差の測定距離の1/(2N+1)〔Nは1以上の整数〕としたとき、撮像装置30が撮像した画像は、水平方向の左右端からそれぞれ水平画素数の1/(2N+1)の領域に収差測定チャートPのパターンが撮像され、垂直方向の上下端からそれぞれ垂直画素数の1/(2N+1)の領域に収差測定チャートPのパターンが撮像される。
なお、収差測定チャートPのパターンが写っていない領域において、色収差を測定するには、撮像装置30が、適宜向きを変えて測定を行えばよい。
【0072】
以上説明したように、色収差測定システムS
Eは、色収差測定のための測定距離を確保しつつ、撮像装置30が実際に撮像する被写体(チャート板20E)との距離を測定距離の1/(2N+1)に抑えて、色収差を測定することができる。
【0073】
〔変形例〕
以上、本発明の第3実施形態に係る色収差測定システムS
Eについて説明したが、本発明は、この構成に限定されない。
例えば、チャート板20Eの反射領域Rは、すべての領域で光を反射させる必要はなく、第2実施形態の変形例1と同様、実際に収差測定チャートPの光が到達する領域のみで反射させることとしてもよい。
【0074】
また、色収差測定システムS
Eは、撮像画像の中央部に収差測定チャートPが写らない領域が発生するため、第2実施形態の変形例2として説明した
図10と同様に、反射板10Eにおいて、撮像装置30から直近の反射領域より内側(撮像装置30側)に、収差測定チャートPと同様の収差測定チャートを設けてもよい。
【0075】
また、色収差測定システムS
Eは、チャート板20Eのチャート領域C全体に収差測定チャートPを形成する必要はなく、第2実施形態の変形例3として説明した
図12と同様に、チャート領域Cの一部に収差測定チャートPを形成しても構わない。
【0076】
また、色収差測定システムS
Eは、チャート板20Eのチャート領域Cにおいて、開口の中心から、水平方向および垂直方向の両方に収差測定チャートPを備えることとしている。
しかし、収差測定チャートPは、例えば、開口の中心から、水平方向のみ、または、垂直方向のみに収差測定チャートPを備えることとしてもよい。
【0077】
以上、第1〜第3実施形態で説明した色収差測定システムによれば、実際の色収差を測定する直線距離よりも短い距離で色収差を測定するできるため、従来に比べて狭い測定場所で色収差を測定することが可能になる。
以下、参考までに、図面を参照して、色収差測定システムで用いる撮像装置30および色収差測定装置40の例について簡単に説明しておく。
【0078】
〔撮像装置〕
まず、
図16を参照して、撮像装置30の構成例(3板式カメラ)について説明する。
図16に示すように、撮像装置30(30A)は、撮像光学系31と、カメラ本体32(32A)とで構成される。
撮像光学系31は、収差測定の対象となるものであって、レンズO等で構成される。この撮像光学系31を介して入射された光がカメラ本体32に取り込まれる。
【0079】
カメラ本体32(32A)は、内部に分光器(ダイクロイックプリズム)321を備え、撮像光学系31を介して入射された光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色光に分光し、それぞれの色光に対応する撮像素子(CCD)で受光することで、各色の画像を撮像する。
この各色に対応する撮像素子で撮像された色信号(R信号、G信号、B信号)は、色収差測定装置40に出力される。
これによって、撮像装置30は、撮像光学系31で入射した光を、各色信号に分光して撮像することができる。
【0080】
なお、撮像装置30は、
図16に示した3板式カメラである必要はなく
図17に示す単板式カメラであっても構わない。
図17に示すように、単板式カメラである撮像装置30(30B)は、撮像光学系31と、カメラ本体32(32B)とで構成される。なお、撮像光学系31は、
図16の撮像光学系31と同一であるため、説明を省略する。
【0081】
カメラ本体32(32B)は、カラーフィルタアレイ322と、撮像素子323と、演算回路324とで構成される。
カラーフィルタアレイ322は、撮像素子323の画素上に赤(R)、緑(G)、青(B)の各色光のみを通過させるフィルタである。なお、カラーフィルタアレイ322に配置される各色フィルタは、例えば、ベイヤ配列で配置される。
撮像素子323は、カラーフィルタアレイ322を介して、撮像光学系31から入射された光を受光するものである。この撮像素子323は、入射光を光電変換し、演算回路324に出力する。
【0082】
演算回路324は、撮像素子323で撮像された画像から、各色信号を生成するものである。この演算回路324は、カラーフィルタアレイ322の色配列に応じて、RGBそれぞれの色信号において、欠落している色信号を補間により生成する。
この各色に対応する演算回路324で生成された色信号(R信号、G信号、B信号)は、色収差測定装置40に出力される。
【0083】
〔色収差測定装置〕
次に、
図18を参照して、色収差測定装置40の構成例について説明する。
図18に示すように、色収差測定装置40は、画像記憶手段41と、収差算出手段42と、収差データ記憶手段43とで構成される。
【0084】
画像記憶手段41は、各色(RGB)に対応したR画像記憶手段41Rと、G画像記憶手段41Gと、B画像記憶手段41Bとを備える。
R画像記憶手段41Rは、撮像装置30から出力されるR信号を入力し、フレーム単位で記憶するものである。
G画像記憶手段41Gは、撮像装置30から出力されるG信号を入力し、フレーム単位で記憶するものである。
B画像記憶手段41Bは、撮像装置30から出力されるB信号を入力し、フレーム単位で記憶するものである。
このように、画像記憶手段41には、同じタイミングで撮像された画像が、それぞれの色に対応して分光された画像(R画像、G画像、B画像)として記憶される。
【0085】
収差算出手段42は、画像記憶手段41に記憶される各色の画像の収差(ずれ)を算出するものである。ここでは、G画像に対して、R画像およびB画像のずれを算出することとして、収差算出手段42は、RG収差算出手段42Rと、BG収差算出手段42Bとを備える。
【0086】
RG収差算出手段42Rは、G画像に対するR画像の収差を算出するものである。
このRG収差算出手段42Rは、R画像の画素ごとに、当該画素を含んだ予め定めた大きさのブロック単位で、G画像とブロックマッチングを行うことで、対応するブロックを探索し、画素のずれを算出する。このRG収差算出手段42Rは、算出したG画像に対するR画像の画素ごとのずれを収差データとして、収差データ記憶手段43に記憶する。
【0087】
BG収差算出手段42Bは、G画像に対するB画像の収差を算出するものである。このBG収差算出手段42Bは、RG収差算出手段42RにおけるR画像をB画像に置き換えたものであって、ブロックマッチングによって、G画像に対するB画像の画素ごとのずれを算出する。このBG収差算出手段42Bは、算出したG画像に対するB画像の画素ごとのずれを収差データとして、収差データ記憶手段43に記憶する。
これによって、色収差測定装置40は、G画像を基準にR画像およびB画像の画素ごとの色収差を測定することができる。
【0088】
なお、この色収差測定装置40で測定された収差データは、図示を省略した色収差補正装置で用いられる。すなわち、図示を省略した色収差補正装置は、測定対象となった撮像光学系を用いて撮像された画像に対して、色収差測定装置40で測定された収差データによって、画素ごとに色収差を補正することで、色収差を抑えた画像を生成する。