(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268020
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】クロック生成方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 21/02 20060101AFI20180115BHJP
H03K 23/64 20060101ALI20180115BHJP
G06F 1/08 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H03K21/02 500
H03K23/64 H
G06F1/08
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-64338(P2014-64338)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-188127(P2015-188127A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】羽深 貴光
【審査官】
白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−232952(JP,A)
【文献】
特開平11−098007(JP,A)
【文献】
特開2003−101599(JP,A)
【文献】
特開2002−043929(JP,A)
【文献】
特開平11−055108(JP,A)
【文献】
特開平05−284010(JP,A)
【文献】
特開2010−087820(JP,A)
【文献】
特開2013−034174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 21/02
G06F 1/08
H03K 23/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力クロックの周波数を目標周波数および所定の整数k(k≧2)で除算し商を求めて第1の分周値を演算し、
前記第1の分周値に基づいて第2の分周値を演算し、
前記目標周波数の1周期分の時間をk個の区間に分割したうちの1個の区間においては前記第2の分周値に基づいて前記入力クロックを分周するとともに、残りのk−1個の区間においては前記第1の分周値に基づいて前記入力クロックを分周し、
前記入力クロックが各々分周された前記k個の区間に対応する時間を1周期とする周波数のクロックを生成する
クロック生成方法。
【請求項2】
前記第2の分周値の演算は、前記目標周波数の1周期分の時間から、前記入力クロックの周波数の1周期分の時間と前記第1の分周値と前記k−1との積により求めた時間を減じて残余時間を求め、前記残余時間を入力クロックの周波数の1周期分の時間で除算し商を求めて演算する
請求項1に記載のクロック生成方法。
【請求項3】
前記入力クロックの分周は、前記k−1個の区間の各々においては前記入力クロックを前記第1の分周値まで計数して分周し、前記1個の区間においては前記入力クロックを前記第2の分周値まで計数して分周する
請求項1または請求項2に記載のクロック生成方法。
【請求項4】
前記目標周波数は、送信器から出力されるデータ信号のデータレートに相当する周波数である
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクロック生成方法。
【請求項5】
前記所定の整数kが前記データレートのオーバーサンプリングレートである
請求項4に記載のクロック生成方法。
【請求項6】
前記送信器がデジタル信号からなる前記データ信号を低域濾波して位相同期発振器の周波数を制御する信号を生成する濾波器を含み、前記1個の区間は前記濾波器で生成された信号における微分値が最小となるタイミングに対応付けられている
請求項4または請求項5に記載のクロック生成方法。
【請求項7】
入力クロックの周波数を目標周波数および所定の整数k(k≧2)で除算し商を求めて第1の分周値を演算するとともに、前記第1の分周値に基づいて第2の分周値を演算する演算部と、
前記目標周波数の1周期分の時間をk個の区間に分割したうちの1個の区間においては前記第2の分周値に基づいて前記入力クロックを分周するとともに、残りのk−1個の区間においては前記第1の分周値に基づいて前記入力クロックを分周する分周部と、
前記入力クロックが各々分周された前記k個の区間に対応する時間を1周期とする周波数のクロックを出力する出力部と、
を含む半導体装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記目標周波数の1周期分の時間から、前記入力クロックの周波数の1周期分の時間と前記第1の分周値と前記k−1との積により求めた時間を減じて残余時間を求め、前記残余時間を入力クロックの周波数の1周期分の時間で除算した商を前記第2の分周値として演算する
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記分周部は、前記k−1個の区間の各々においては前記入力クロックを前記第1の分周値まで計数して前記入力クロックを分周し、前記1個の区間においては前記入力クロックを前記第2の分周値まで計数して前記入力クロックを分周する
請求項7または請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記入力クロックの前記第1の分周値までの計数が完了したタイミング、および前記入力クロックの前記第2の分周値までの計数が完了したタイミングで各々パルスを発生させることにより前記目標周波数のk倍のクロックを生成するクロック生成部と、
前記クロック生成部で生成されたk個の周期のクロックに識別符号を付して順番に計数する計数部と、
前記識別符号のうち前記1個の区間を指定する識別符号を記憶する記憶部と、
をさらに含み、
前記分周部は、前記計数部における計数が前記記憶部に記憶された前記1個の区間を指定する識別符号を示した場合に、前記第2の分周値に基づいて前記入力クロックを分周する
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記出力部から出力されたクロックに基づいてデータ信号を出力する送信器をさらに含み、
前記目標周波数は、前記データ信号のデータレートに相当する周波数である
請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記所定の整数kが前記データレートのオーバーサンプリングレートである
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記送信器がデジタル信号からなる前記データ信号を低域濾波して位相同期発振器の周波数を制御する信号を生成する濾波器を含み、前記1個の区間は前記濾波器で生成された信号における微分値が最小となるタイミングに対応付けられている
請求項11または請求項12に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック生成方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信等の通信システムにおいては、システムを構成する各部位に対し、各部位のデータ信号の処理速度(データレート)に応じた周波数のクロック信号(データレートクロック)を供給することにより全体が動作する。したがって、通信システムでは、さまざまな周波数のデータレートクロックが要求される場合がある。その際、データレートクロックの供給源の簡素化、通信システム全体の同期等を勘案し、発振周波数を精度よく安定化させたクロック源からのマスタークロックを分周して、さまざまな周波数のデータクロックを生成する場合もある。
【0003】
従来技術に係るクロックの分周方法の一例として、整数の分周比(整数分周値)で分周する方法(整数分周)がある。
図4および
図5は、この整数分周によるクロック生成回路200を示し、
図6は、クロック生成回路200のタイムチャートを示している。なお、
本従来技術に係るクロック生成回路200は、データレートに対しさらにオーバーサンプリングレートkでオーバーサンプリングする場合を例示している。
【0004】
図4に示すように、本従来技術に係るクロック生成回路200(整数分周の分周回路)は、クロック分周回路50、データレートクロック生成回路51、および整数分周値(N)格納レジスタ52を備えている。整数分周値(N)格納レジスタ52には、整数分周値Nが格納されている。
【0005】
クロック分周回路50は、マスタークロックS50を入力し、マスタークロックS50を分周して分周クロックS51を出力する。データレートクロック生成回路51は、分周クロックS51を入力し、分周クロックS51をさらにオーバーサンプリングレートkで分周して、データレートクロックS53を出力する。
【0006】
図5に示すように、クロック分周回路50は、クロック分周カウンタ53、比較器54、およびゲート回路55を備えている。
【0007】
クロック分周カウンタ53は、マスタークロックS50を動作クロックとしてカウントアップを行う。カウントアップされた値と、整数分周値(N)格納レジスタ52から読み出した整数分周値Nを示す信号S52とが比較器54で比較され、カウントが整数分周値Nに達するとリセットされる。
図6(a)は、このクロック分周カウンタ53の出力であるクロック分周カウンタ値S54の動作波形を示している。
【0008】
ゲート回路55では、比較器54の出力S55とマスタークロックS50との論理積が演算され、
図6(b)に示す分周クロックS51が生成される。
【0009】
データレートクロック生成回路51では、分周クロックS51が、オーバーサンプリングレートkに基づいてカウントされる。
図6(c)は、この際のオーバーサンプルカウンタ値を示している。本従来技術の例では、オーバーサンプリングレートkをk=10としているので、オーバーサンプルカウンタ値は0から9の値となる。そして、
図6(d)に示すように、分周クロックS51をオーバーサンプルカウンタ値に基づいて分周したクロックをデータレートクロックS53として、すなわち本クロック生成回路200の目的とする分周クロックとして出力する。
【0010】
一方、特許文献1には、従来技術に係るクロック分周方法の他の例が開示されている。
特許文献1に開示されたクロック分周方法は、入力クロックパルスを所定のタイミングでマスキングし、当該マスキングした入力クロックパルスを実質的に遅らせることにより、
分周されるクロックパルスの数を変化させ、分周されたクロックの平均周波数を理想的なクロック周波数に近づけるというクロック分周方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−087820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記クロック生成回路200による整数分周の従来技術では、与えられたデータレートを整数分周値で除算した結果が割り切れない場合には、分周されたクロックの周波数がデータレートからずれてしまう。以下、このずれについて、数値例をあげて説明する。
【0013】
マスタークロック(ここでは、データレートクロックを生成する場合の元になる分周前のクロックを意味する)の周波数をf
0、データレートをD、オーバーサンプリングレートをkとした場合、整数分周値Nは以下に示す式(1)により算出される。
【数1】
ここで、式(1)におけるroundは、除算して商を求め、小数点以下を四捨五入する関数であり、以下同様である。
【0014】
また、分周後のデータレートクロックの周波数f
Dは、式(1)で算出されたNを用いて、以下に示す式(2)により算出される。
【数2】
【0015】
ここで、f
0=26MHz、D=2.4kbps、k=10とすると、式(1)より、整数分周値Nは、N=1083となる。したがって、式(2)より、f
Dはf
D=2.4007386kHzとなる。このf
Dの値は、データレート2.4kbpsから308ppmずれた周波数となっている。
【0016】
一方、このようなデータレートクロックの周波数f
Dのデータレートからのずれ(データレート偏差)が標準規格等で規定されている場合がある(たとえば、100ppm)。
したがって、データレート偏差が大きい場合には該標準規格を満足することができなくなる。
【0017】
データレート偏差を回避するために、マスタークロックの周波数を調整する方法もあるが、汎用的な周波数ではなくなるため、マスタークロック源のコスト(たとえば、水晶振動子のコスト)が高くなり、通信システムのコストアップの要因となってしまう。
【0018】
また、データレート偏差を回避する他の方法として、PLL(Phase Locked Loop)を用いる方法もある。PLLを用いることにより、データレートの整数倍の周波数のマスタークロックを生成する方法である。このような方法によれば、オーバーサンプリングレートを考慮した整数分周の方法を用いても、データレート偏差の小さいデータレートクロックを生成することができる。しかしながら、PLLを用いることにより、消費電力が増大してしまうという問題がある。
【0019】
一方、特許文献1に開示されたクロック分周方法では、分周された出力クロックを一定時間について観測した平均的な周波数はデータレートに近づくものの、個々のクロック波形のパルスの時間幅についてみると、長い時間幅のパルスと短い時間幅のパルスが混在するので、原理的に、出力クロックの波形における時間的な揺らぎ(ジッタ)が発生する。
【0020】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、目標周波数との偏差や時間的な揺らぎが小さく、さらに低消費電力で安価なクロック生成方法および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るクロック生成方法は、入力クロックの周波数を目標周波数および所定の整数k(k≧2)で除算し商を求めて第1の分周値を演算し、前記第1の分周値に基づいて第2の分周値を演算し、前記目標周波数の1周期分の時間をk個の区間に分割したうちの1個の区間においては前記第2の分周値に基づいて前記入力クロックを分周するとともに、残りのk−1個の区間においては前記第1の分周値に基づいて前記入力クロックを分周し、前記入力クロックが各々分周された前記k個の区間に対応する時間を1周期とする周波数のクロックを生成するものである。
【0022】
一方、本発明に係る半導体装置は、入力クロックの周波数を目標周波数および所定の整数k(k≧2)で除算し商を求めて第1の分周値を演算するとともに、前記第1の分周値に基づいて第2の分周値を演算する演算部と、前記目標周波数の1周期分の時間をk個の区間に分割したうちの1個の区間においては前記第2の分周値に基づいて前記入力クロックを分周するとともに、残りのk−1個の区間においては前記第1の分周値に基づいて前記入力クロックを分周する分周部と、前記入力クロックが各々分周された前記k個の区間に対応する時間を1周期とする周波数のクロックを出力する出力部と、を含むものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、目標周波数との偏差や時間的な揺らぎが小さく、さらに低消費電力で安価なクロック生成方法および半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態に係る半導体装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態に係るクロック分周回路の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態に係る半導体装置の各部の信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図4】従来技術に係るクロック生成回路の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】従来技術に係るクロック分周回路の機能構成示す機能ブロック図である。
【
図6】従来技術に係るクロック生成回路の各部の信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、まず、本実施の形態の基本的な考え方について説明する。
【0026】
本実施の形態では、本発明のクロック生成方法および半導体装置を、無線通信システムにおけるFSK(Frequency Shift Keying)を用いた送信回路に適用した形態を例示して説明する。また、データレートがオーバーサンプリングされている形態を例示して説明する。
【0027】
本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置では、整数分周値N1およびN2の2つの整数分周値を用いてマスタークロックを分周したデータレートクロックを生成する。整数分周値N1は従来技術の方法により算出された整数分周値であり、整数分周値N2は整数分周値N1に基づく演算により算出された整数分周値である。
【0028】
以下に、整数分周値N1およびN2の算出式を示す。
【数3】
【数4】
ここで、f
0はマスタークロックの周波数、Dはデータレート、kはオーバーサンプリングレートを示している。
【0029】
本実施の形態では、データレートの1周期に相当する時間をオーバーサンプリングレートkでk区間に分割し、そのうちの1区間については整数分周値N2によりマスタークロックを分周し、残りのk−1区間については、整数分周値N1によりマスタークロックを分周する。つまり、本実施の形態では、整数分周値N2を、データレートの調整に用いている。このことにより、整数分周であっても、任意のデータレートに対応したクロックを生成することが可能となっている。
【0030】
さらに、本実施の形態では、整数分周値N2を適用する区間は、オーバーサンプリングレートのカウント値であるオーバーサンプルカウンタ値(0からk−1の値のいずれか)を用いて指定する。オーバーサンプルカウンタ値のいずれの値を用いるかは特に限定されないが、本実施の形態では、後述するように、オーバーサンプルカウンタ値0を用いている。以下では、この指定されたオーバーサンプルカウンタ値(本実施の形態では0)を、
「N2カウンタ値」という場合がある。さらに、本実施の形態では、このN2カウンタ値は、送信回路を構成する送信フィルタ通過後のPLL周波数設定値の波形において、一次微分した値が最小となる区間に対応させているが、詳細は後述する。
【0031】
以下、
図1ないし
図3を参照して、さらに詳細に、本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る半導体装置100の機能ブロック図であり、
図2は、
図1に示すブロックのうちのクロック分周回路の詳細を示すブロック図であり、
図3は、
図1および
図2に示す半導体装置100の各部における信号の時間的な変化を示すタイムチャートである。
【0032】
図1に示すように、半導体装置100は、クロック分周回路1、データレートクロック生成回路2、送信データ生成回路3、送信フィルタ4、位相同期型発振器であるPLL5、整数分周値(N1)格納レジスタ6、および整数分周値(N2)格納レジスタ7を含んで構成されている。
【0033】
図1に示すクロック分周回路1は、マスタークロックS0を入力し、整数分周値N1、
整数分周値N2、およびオーバーサンプルカウンタ値S22に基づいて、データレートのk倍の周波数の分周クロックS1を生成する。
【0034】
データレートクロック生成回路2は、分周クロックS1を入力してデータレートクロックS2を生成する。また、オーバーサンプリングレートkをカウントし、当該カウント結果をオーバーサンプルカウンタ値S22としてクロック分周回路1に出力する。
【0035】
送信データ生成回路3は、データレートクロックS2に基づいて、送信データS3を生成する。より具体的には、送信するデジタルデータ信号をデータレートクロックS2のタイミング(たとえば、立ち上がり)で読み込み、タイミングを揃え、送信データS3として出力する。
【0036】
送信フィルタ4は、送信データS3および分周クロックS1を入力し、送信データS3について分周クロックS1を動作クロックとするフィルタ処理を行って、後段のPLL5の周波数を設定するPLL周波数設定値S4を出力する。
【0037】
PLL5は、入力されるPLL周波数設定値S4に基づき、FSKにおいて使用するRF(Radio Frequency)信号の周波数を切り替え、送信出力信号S5として生成する。
【0038】
つぎに、
図2を参照し、クロック分周回路1についてより詳細に説明する。
図2に示すように、クロック分周回路1は、クロック分周カウンタ11、比較器12、ゲート回路13、セレクタ14、比較器15、およびN2カウンタ値格納レジスタ16を含んで構成されている。
【0039】
クロック分周カウンタ11は、マスタークロックS0を動作クロックとしてカウントアップを行い、比較器12から与えられた信号S12で該カウントアップをリセットする。
クロック分周カウンタ11は、当該カウントアップの結果を、クロック分周カウンタ値S11として出力する。
【0040】
セレクタ14は、整数分周値N1(S6)と整数分周値N2(S7)とを比較器15からの信号S15に応じて切り替え、切り替えた結果である整数分周値N1または整数分周値N2を、整数分周値信号S14として比較器12に出力する。より具体的には、たとえば、比較器15からの信号S15がL(Low)レベルの場合には整数分周値N1(S6)を選択し、比較器15からの信号S15がH(High)レベルの場合には整数分周値N2(S7)を選択するように構成されている。
【0041】
N2カウンタ値格納レジスタ16には、整数分周値N2を適用するオーバーサンプリングレートkのカウンタ値であるN2カウンタ値が格納されている。
【0042】
比較器15は、入力されたオーバーサンプルカウンタ値S22とN2カウンタ値格納レジスタ16からのN2カウンタ値(S16)とを比較し、比較した結果を信号S15としてセレクタ14に出力する。より具体的には、たとえば、両者が一致した場合にはHレベルを出力し、両者が一致しない場合にはLレベルを出力するように構成されている。
【0043】
比較器12は、クロック分周カウンタ11からのクロック分周カウンタ値S11とセレクタ14からの整数分周値信号S14とを比較し、両者が一致した場合にはHレベルを、
両者が一致しない場合にはLレベルを出力する。つまり、比較器12は、マスタークロックS0のカウント値がN1またはN2に達するごとに、Hレベルを信号S12として出力する。また、信号S12は、クロック分周カウンタ11のカウントアップを、整数分周値N1または整数分周値N2に基づいてリセットさせるリセット信号となっている。
【0044】
ゲート回路13は、信号S12に基づいて、マスタークロックS0のゲーティングを行ってゲーテッドクロックとし、分周クロックS1を生成する。つまり、ゲート回路13は、クロック分周カウンタ11におけるマスタークロックS0のカウントが、整数分周値N1またはN2に達するごとに、マスタークロックS0を通過させるように動作する。
【0045】
つぎに、
図3を参照して、
図1および
図2に示す半導体装置の各部信号の時間変化について説明する。
【0046】
図3(a)は、クロック分周カウンタ11の出力であるクロック分周カウンタ値S11の信号波形を示している。先述したように、クロック分周カウンタ11は、マスタークロックS0をカウントアップし、信号S12に従ってカウントアップが整数分周値N1またはN2に達した時点でリセットする。その結果、クロック分周カウンタ値S11の波形は、
図3(a)に示すように、鋸歯状の波形となる。
【0047】
図3(b)は、分周クロックS1の信号波形を示している。先述したように、ゲート回路13によって、クロック分周カウンタ11におけるマスタークロックS0のカウントが整数分周値N1またはN2に達するごとに、マスタークロックS0がゲーティングされるので、整数分周値N1またはN2ごとにマスタークロックの1パルスが出力されている。
同図に示すように、分周クロックS1の周波数は、データレートのk倍(本実施の形態では10倍)の周波数となっている。
【0048】
図3(c)は、オーバーサンプリングレートkを、
図3(b)に示す分周クロックS1に従ってカウントするオーバーサンプルカウンタのカウント値であるオーバーサンプルカウンタ値S22を示している。このオーバーサンプルカウンタは、データレートクロック生成回路2内に設けられている。オーバーサンプルカウンタ値S22は0からk−1までのカウント値をとり、これらのカウント値が循環している。
【0049】
ここで、本実施の形態では、整数分周値N1による分周と整数分周値N2による分周とを、上記オーバーサンプルカウンタ値S22に基づいて切り替える。本実施の形態では、
一例として、オーバーサンプルカウンタ値S22が0の場合に整数分周値N2を選択し、
オーバーサンプルカウンタ値S22が1から9の場合に整数分周値N1を選択するように構成されている。
【0050】
データレートクロック生成回路2は、オーバーサンプルカウンタ値S22が0から始まり4に達した時点で分周クロックS1をLレベルからHレベルに変化させ、オーバーサンプルカウンタ値S22が9に達した時点で分周クロックS1をHレベルからLレベルに変化させる。この1周期のレベルの変化により、
図3(d)に示すようなデータレートに応じたデータレートクロックS2が生成される。
【0051】
図3(e)に示すように、データレートクロックS2の立下りに同期して送信データS3が生成される。
【0052】
送信データS3は、送信フィルタ4によりフィルタ処理されることにより、後段のPLL5に入力されるPLL周波数設定値S4が生成される。
【0053】
図3(f)に示すように、送信データが1(Hレベル)の場合には、PLL周波数設定値S4は上に凸の波形となり、この上に凸の波形が分周クロックS1の10クロック分の時間(
図3(c)に示すオーバーサンプルカウンタ値S22では、カウンタ値6からカウンタ値5の期間)継続することで、1つの送信データ(1ビットの送信データ)が構成されている。また、送信データが0(Lレベル)の場合には、PLL周波数設定値S4は下に凸の波形となり、この下に凸の波形が分周クロックS1の10クロック分の時間継続することで、1つの送信データが構成されている。
【0054】
ここで、本実施の形態においては、オーバーサンプルカウンタ値S22がN2カウンタ値0となるタイミングを、PLL周波数設定値S4の波形における一次微分が最小となるタイミング、すなわち、上に凸なPLL周波数設定値S4の波形の頂上付近のタイミング、または、下に凸なPLL周波数設定値S4の波形の谷底付近のタイミング(
図3(f)においてPで示されるタイミング)としている。
【0055】
本実施の形態において、PLL周波数設定値S4の波形における一次微分が最小となるタイミングを整数分周値N2を適用するタイミングとしているのは、オーバーサンプルカウンタ値の周期のうち1回だけ適用される他と異なる整数分周値のタイミングにおいて、
極力周波数変化量を小さくし、また、不要な周波数成分(スプリアス)を発生させないようにするためである。
【0056】
また、先述したように、本実施の形態では、オーバーサンプルカウンタ値S22が0となるタイミングでは、整数分周値N2が選択され、オーバーサンプルカウンタ値S22が1から9となるタイミングでは、整数分周値N1が選択される。
【0057】
すなわち、本実施の形態においては、
図3(a)に示すように、オーバーサンプルカウンタ値S22が0となるタイミング、すなわちPLL周波数設定値S4の波形における一次微分が最小となるタイミングにおいてクロック分周カウンタ11のカウントが整数分周値N2で満了する。また、オーバーサンプルカウンタ値S22が1から9となるタイミングでは、クロック分周カウンタ11のカウントが整数分周値N1で満了する。
【0058】
言い換えると、本実施の形態では、オーバーサンプリングレートをkとした場合、そのうちの1回についてはクロック分周カウンタ11のカウントを整数分周値N2で制御し、
残りのk−1回についてはクロック分周カウンタ11のカウントを整数分周値N1で制御する。この制御を循環して繰り返すことにより、k回に1回クロック分周カウンタ11のカウントの満了値が変化する。そして、オーバーサンプリングレートkに対応する時間は、データレートの1ビット分に対応している。つまり、本実施の形態に係るにクロック生成方法および半導体装置100では、整数分周値N2をデータレートの調整に用いており、このことにより、整数分周であっても、任意のデータレートに対応したクロックを生成することが可能となっている。
【0059】
つぎに、本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置の効果について、数値例を用いて説明する。
【0060】
まず、マスタークロックの周波数f
0を、f
0=26MHz、データレートDを、D=2.4kbps(データレートクロック周波数f
D=2.4kHz)、オーバーサンプリングレートkを、k=10とした場合、整数分周値N1は、式(3)より、N1=1083となり、整数分周値N2は、式(4)より、N2=1086となる。
【0061】
このとき、本実施の形態に係るクロック分周方法を適用後のデータレートである調整後データレートD’は、以下に示す式(5)により算出される。
【数5】
【0062】
式(5)に各数値を代入すると、D’=2.4000738kbpsと算出される。この調整後データレートの値は、データレートD=2.4kbpsから約30ppmずれたデータレートとなっている。つまりデータレート偏差は30ppmである。このデータレート偏差は、同様の条件下で算出した従来技術に係るクロック生成回路200による整数分周のデータレート偏差308ppmと比較して、約1/10に抑制されている。
【0063】
したがって、本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置によれば、従来技術に係るクロック生成方法と比較して、所望のデータレートにより近いデータレートクロックを生成することが可能となる。
【0064】
さらに、本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置では、整数分周値N2を適用する区間を、送信回路を構成する送信フィルタ通過後のPLL周波数設定値の波形において、一次微分した値が最小となる区間に対応させている。このことにより、スプリアスの放射やPLL周波数設定値の波形の対象性を崩すことなくクロックの分周が可能となる。
【0065】
また本実施の形態に係るクロック生成方法および半導体装置によれば、マスタークロック源として、汎用的なクロック発生デバイス(たとえば、水晶振動子)を用いて構成することができるので、通信システムをより安価に構築できる。また、PLLやマスキング回路等も用いないので、より消費電力を低減した通信システムを構築することができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、目標周波数との偏差や時間的な揺らぎが小さく、さらに低消費電力で安価なクロック生成方法および半導体装置を提供することが可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態では、整数分周値N2を適用するオーバーサンプルカウンタ値(本実施の形態では、0から9のうちのいずれか)、つまりN2カウンタ値を0とした形態を例示して説明したが、これに限定されず、任意のオーバーサンプルカウンタ値を適用した形態としてよい。
【0068】
また、本実施の形態においては、PLL周波数設定値S4の波形における一次微分が最小となるタイミングを整数分周値N2を適用するタイミングとしているが、これに限定されず、PLL周波数設定値S4の波形におけるいずれのタイミングを適用してもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、整数分周値N2(=1086)が整数分周値N1(=1083)より大きい形態を例示して説明したが、これに限られず、たとえば整数分周値N2が整数分周値N1より小さい形態について適用してもよい。本実施の形態では、式(4)によって整数分周値N2を算出する際に、四捨五入により小数点以下を切り捨てた場合には整数分周値N2の方が整数分周値N1より大きくなり、四捨五入により小数点以下を切り上げた場合には整数分周値N2の方が整数分周値N1より小さくなる。
【符号の説明】
【0070】
1、50 クロック分周回路
2、51 データレートクロック生成回路
3 送信データ生成回路
4 送信フィルタ
5 PLL
6 整数分周値(N1)格納レジスタ
7 整数分周値(N2)格納レジスタ
11、53 クロック分周カウンタ
12、15、54 比較器
13、55 ゲート回路
14 セレクタ
16 N2カウンタ値格納レジスタ
52 整数分周値(N)格納レジスタ
100 半導体装置
200 クロック生成回路