(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溝を有する前記円盤は外周に刃部を有する回転刃であり、該回転刃を回転することで腹膜を除去すると共に、内臓を除去した魚体の背骨及び/又はメフンを切り取ることを特徴とする請求項1の方法。
溝を有する前記円盤は外周に刃部を有する回転刃であり、該回転刃を回転することで腹膜を除去すると共に、内臓を除去した魚体の背骨及び/又はメフンを切り取ることを特徴とする請求項4の装置。
【背景技術】
【0002】
魚肉を利用したすり身製造は全世界で行われるグローバルな産業となっている。漁獲時期が限られる多獲性の魚種の場合は、ほとんどが冷凍すり身として利用されている。しかし、近年は漁獲規制や資源の有効利用の観点から、資源をより有効に用いることが求められる。
【0003】
すり身製造の基本は以下の通りである。原料魚から頭、内臓を取り外した上で、蝶開きフィレ、もしくは、三枚卸フィレを作製する。次にフィレを採肉機にかけミンチ状となった魚肉を回収する。この魚肉のタンパク質からゲル形成の阻害となる水溶性タンパク質を水晒しで除き、皮、スジ、骨をリファイナーで除去後、脱水しゲル形成性の主要タンパク質の筋原繊維タンパク質を濃縮する。この脱水肉に冷凍変性防止剤の糖、糖アルコール及び重合リン酸塩を添加混合して冷凍するというものである。
【0004】
冷凍すり身は、製造工程中、水晒し工程、脱水工程において、本来栄養や旨みの元となるべき、水溶性タンパク質が多く除去されてしまう。資源の有効利用、廃棄物量の低減という観点からは、水晒ししないで落とし身のまま利用できればより好ましいのはいうまでもないが、すり身にすることにより冷凍保存性も高く、汎用性が高いので、冷凍落とし身の利用は限られている。
【0005】
特開平02−211851号公報には、脱鱗、頭部切除、開腹、内臓除去等の前処理を施したドレス状魚体から、三角骨、肋骨、腹須黒膜、背骨、尾を切除して三枚卸し状の皮付きフィレとなし、さらに皮下黒膜とともに皮剥ぎを行ない、皮なしフィレにしたうえで、採肉機にかけるすり身の製造方法が記載されている。
【0006】
特開2006−61040号公報には、魚のメフンは背骨の下側に付着した血液を含む組織であり、魚肉の利用目的によっては除去する必要があること、及びメフンを除去する装置が知られている。
【0007】
実公平01−40468号公報には、ロータリブラシを用いて、魚の黒膜を除去する装置が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るすり身又は落とし身の製造方法は、頭部を除去した魚体から内臓、背骨、メフン、腹膜を除去し蝶開きフィレにした魚体から、魚肉を採肉することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一実施の形態に係る魚体から腹膜を除去する装置は、少なくとも一方の側面に溝を有しかつ回転する円盤と、腹膜が付着した魚体の面を該円盤の該側面に押し付ける手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の原料の魚肉としては、すり身原料となる魚肉であれば何でも使用することができる。具体的には、スケトウダラ、パシフィックホワイティング、ホッケ、イワシ、アジ、ミナミダラ、ノーザンブルーホワイティング、タチウオ、エソ、グチ、イトヨリ、キンメダイなどが例示される。特に、腹膜が黒く、すり身に混入したときに、異物のように見えてしまう魚種に適している。
【0017】
本発明の魚肉すり身又は落とし身は練製品の原料として用いることができる。現在練製品の原料として広く使用されている冷凍すり身と全く同様に使用することができる。冷凍すり身で失われている水溶性タンパク質が残っているので、うま味成分が多く、グルタミン酸ナトリウムなどのうま味成分を補う必要性が低くなる。練製品としては、プレーンかまぼこ、揚げかまぼこ、ゆでかまぼこ、竹輪、カニかまぼこ、さつま揚げ、魚肉ハム、ソーセージ、はんぺん等が例示される。
【0018】
また、本発明の方法で腹膜を除去したフィレは、フライや天ぷらなど揚げ物、ムニエルなど焼き魚の素材として用いることもできる。
【0019】
魚を蝶開きフィレを製造する方法や装置は種々のタイプが用いられている。
【0020】
通常、骨付きの魚体からすり身や落とし身を製造する場合、原料魚から頭、内臓を取り外した上で、ドレス(骨と皮つき)を作製する。このとき、内臓を除去しても背骨の下側に付着して存在する腎臓(メフンと呼ばれる)が残存してしまう。メフンが混入するとゲル形成能に悪影響を及ぼすが、メフンを除去するのは手数がかかるため、すり身の場合、多くは付着したままで採肉し、水晒しで除去されている。冷凍落とし身の場合には、予めメフンを除去することが好ましい。
【0021】
本発明の方法で製造したすり身又は落とし身は、メフン及び腹膜を除去することにより、ゲル形成能も高く、色調もより白く仕上げることができる。
【0022】
本発明の魚体から腹膜を除去する装置の一態様について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1〜
図6は魚体から腹膜を除去する装置200を説明する図であり、
図7は蝶開きフィレの平面図であり、
図8は魚体処理装置100の左側面図である。
【0024】
まず、
図8を用いて、魚体から腹膜を除去する装置200を装着することができる魚体処理装置100について説明する。
【0025】
魚体処理装置100は、
図8に矢印で示した移動方向Dに沿って魚体Aを移動させつつ複数の加工工程を行うことによって、魚体Aを例えば
図7に示すような蝶開きフィレA2に加工することができる。魚体処理装置100は、公知の、例えば、特開2008−259465号公報に開示されている装置を用いることができる。本実施の形態で説明する魚体処理装置100は、機台1上に魚体Aを挟持して搬送する左右一対の搬送ベルト2を配設していると共に、
図8の右側から、魚体Aに対し開腹処理を行う第1処理部30と、開腹処理された背骨付きフィレの魚体A1に対し内蔵除去処理を行う第2の処理部40と、内臓が除去された背骨付きフィレの魚体A1に対し背骨除去処理を行う第3処理部50と、背骨が除去された蝶開きフィレの魚体A2に対し仕上げ処理を行う第4の処理部60と、を順次配設している。
【0026】
なお、
図8の魚体処理装置100においては、各部の説明のため、図の手前側の搬送ベルト2を省略して示している。また、
図8の魚体処理装置100の下方には、各処理部30〜60における魚体A〜A2の処理状態を説明するため、一点鎖線で示した各処理部の中心線S1〜S4の魚体Aの状態を縦断面図で示している。なお、
図8の下方のS2〜S4においては、搬送ベルト2を省略して示した。
【0027】
左右一対の搬送ベルト2は、機台1上における魚体搬送始端部側(
図8の右側)と搬送終端部側(
図8の左側)とにそれぞれ回転自在に支持された図示しない従動プーリと駆動プーリ間に互いに平行に対向した状態で無端状に掛け渡されていると共に、これらの搬送ベルト2における魚体挟持面の背面側の複数箇所を図示しない押圧ローラによって押圧して魚体A〜A2を搬送ベルト2によって挟持させながら上記各処理部30〜60に送り込むように構成している。
【0028】
左右一対の搬送ベルト2間の下方には、この搬送ベルト2に沿ってロアーシュート7と、第1ロアーガイド8と、魚体受けガイド9と、第2ロアーガイド10と、排出シュート18と、を順次、機台1上に配設している。ロアーシュート7、第1ロアーガイド8、魚体受けガイド9、及び第2ロアーガイド10は、各処理部30〜60における処理と干渉しないように配置され、かつ、魚体Aを下側から支えている。
【0029】
第1処理部30は、機台1上に配置した図示しないモータと、該モータによって回転する円盤状の開腹ナイフ3と、を有する。第1処理部30に到達した魚体Aは、その両側を搬送ベルト2間に挟まれて搬送されつつ開腹ナイフ3の外周に形成された刃部によって魚体Aの腹部を左右に切断、開腹される。
【0030】
第2処理部40は、機台1上に配置した図示しないモータと、該モータによって回転する第1ブラシ4と、を有する。第1ブラシ4は、円柱状の回転体の外周にナイロンなどの樹脂製ブラシが多数植毛され、開腹されて移動方向Dの左右に腹腔を広げた魚体A1の腹腔に対応するように山形(
図8の下方に示す)に形成されている。第1ブラシ4を移動方向Dに沿って回転させると、開腹された魚体A1の腹腔内の内蔵を掻き出すことができる。
【0031】
第3処理部50は、機台1上に配置した2つのモータ51と、2つのモータ51によって回転する回転刃からなる2枚のフィレナイフ5と、上下動機構11と、上下回動機構13と、を有する。
【0032】
上下動機構11は、魚体受けガイド9と、回動用シリンダ11dと、を有する。魚体受けガイド9は、外側面を上端に向かって互いに近接する方向に傾斜した傾斜面を有し、この外側傾斜面上に開腹した魚体A1を跨がらせた状態でフィレナイフ5に送り込むように構成している。魚体受けガイド9は、回動用シリンダ11dによって、その基端部を支点として上下方向に回動自在に機台1に支持され、回動用シリンダ11dを駆動することによって魚体受けガイド9の移動方向D前方の先端部を上下動することができる。
【0033】
上下回動機構13は、魚体押さえガイド12と、回動用シリンダ13dと、を有する。魚体押さえガイド12は、フィレナイフ5の上方に配置され、その下面で魚体A1の背部を上方から押さえる棒状部材である。魚体押さえガイド12は、回動用シリンダ13dを駆動することによって、魚体押さえガイド12の移動方向D前方の先端部を上下動することができる。
【0034】
魚体受けガイド9と魚体押さえガイド12は、魚体A1が左右一対のフィレナイフ5によって背骨なし蝶開きフィレに切断加工される際に、この魚体A1の通過位置を検出するセンサ14によって作動させられる。
【0035】
フィレナイフ5は、薄い円盤形状であり、円盤の外周に刃部を有する回転刃である。フィレナイフ5を回転することによって、第2処理部40で内臓を除去した魚体A1の背骨及び/又はメフンを切り取ることができる。魚体受けガイド9は、外側傾斜面上に開腹した魚体A1を跨がらせ、フィレナイフ5の傾斜角度に腹腔の開き角度を合わせた状態で、フィレナイフ5に送り込むように構成している。また、フィレナイフ5は、移動方向Dの左右に一対設けられ、その上端縁側の刃先を互いに近接した状態で対向させている。そして、魚体A1の背骨を回転するフィレナイフ5により背骨を挟むようにして魚体A1から背骨と背骨付近に残っているメフンを切除することができる。
【0036】
第4処理部60は、機台1上に配置した図示しないモータと、該モータによって回転する第2ブラシ6と、を有する。第2ブラシ6は、ナイロンなどの樹脂製のブラシが円盤の外周に植毛されており、開腹され、内臓や背骨を取り除いた魚体A2の腹腔内で第2ブラシを回転させることによって、腹腔内に残っている内臓、特に尾ひれ側のメフンを取り除くことができる。第4処理部60において仕上げ処理された魚体A2は、蝶開きフィレとして排出シュート18から機台1の外側へ排出される。
【0037】
このようにして処理された魚体A2は、
図7に示すような背骨の無い蝶開きフィレに形成されている。
【0038】
次に、魚体から腹膜を除去する装置200について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0039】
図1は、魚体から腹膜を除去する装置200を左斜め上から見た斜視図である。
図2は、魚体から腹膜を除去する装置200を正面寄りの左斜め上から見た斜視図である。
図3は、魚体から腹膜を除去する装置200の正面図である。
図4は、魚体から腹膜を除去する装置200の左側面図である。
図5は、魚体から腹膜を除去する装置200の平面図である。
図6は、第3処理部を説明する魚体A1及び魚体から腹膜を除去する装置200の部分拡大縦断面図である。
【0040】
魚体から腹膜を除去する装置200は、
図8の魚体処理装置100の第3処理部50に設置することができる。本実施の形態における魚体から腹膜を除去する装置200は、
図8を用いて説明した魚体処理装置100の第3処理部50におけるフィレナイフ5を改良し、さらに第1〜第3のアーム54a〜54cを追加設置したものである。
【0041】
図1〜
図6に示すように、魚体から腹膜を除去する装置200は、少なくとも一方の側面5aに溝52を有しかつ回転する円盤として例えばフィレナイフ5と、腹膜が付着した魚体の面を円盤の側面5aに押し付ける手段として例えば第1〜第3のアーム54a〜54cと、を有する。
【0042】
フィレナイフ5は、円盤状の部材であることができ、逆Vの字状に2枚のフィレナイフ5,5が対面して配置されている。フィレナイフ5は、その外周に刃部5cを有する回転刃であることができる。フィレナイフ5を用いることによって、回転することで腹膜を除去すると共に、内臓を除去した魚体A1の背骨a1及び/又はメフンa2(
図6参照)を切り取ることもできるため作業効率に優れ、既存の部材でもあるので設置コストも削減することができる。
【0043】
フィレナイフ5には複数、例えば6つの溝52を形成することができる。溝52は、フィレナイフ5の回転する方向(各図に矢印で示す)に細長く延び、かつ、フィレナイフ5の回転中心側から徐々に外周に向けて延びている。
図6に示すように、溝52は、フィレナイフ5の魚体A1の腹腔内の面に接触する側面5aから他方の側面5bへ貫通する貫通孔として形成されている。
【0044】
第1〜第3のアーム54a〜54cは、魚体A1を挟んでフィレナイフ5に対向して配置し、魚体A1の背中側から腹側の高さ方向に3本並んで軸部56に対して回転可能に固定されている。第1〜第3のアーム54a〜54cは、軸部56から魚体A1の移動方向Dに沿って湾曲して形成され、軸部56を挟んで魚体A1と反対側の端部が付勢部材としての例えばスプリング58にそれぞれ接続されている。第1〜第3のアーム54a〜54cは、スプリング58によって常時フィレナイフ5側に付勢され、魚体A1が移動してくると、魚体A1に押されてフィレナイフ5から離れる方向に軸部56を中心に回転するが、スプリング58によって魚体A1をフィレナイフ5の側面5aに適度な圧力で押し付ける付勢力を作用させることができる。
【0045】
フィレナイフ5に対して移動方向Dの手前側には魚体受けガイド9がある。魚体受けガイド9は、上下動機構11によって回転する軸体11bに固定された台部9aと、この台部9aの上に固定された2枚の両側傾斜ガイド板9bと、を有する。両側傾斜ガイド板9bは、その外側面を上端に向かって互いに近接する方向に傾斜した傾斜面に形成してあり、これらの外側傾斜面上に開腹した魚体Aを跨がらせた状態、すなわち魚体A1の腹腔を逆Vの字状に開いた状態でフィレナイフ5に送り込むように構成している。さらに、両側傾斜ガイド板9bのなす角度は、左右一対のフィレナイフ5の挟角に略等しい角度に形成されている。
【0046】
したがって、第2処理部40で内臓を除去した魚体A1は、搬送ベルト2によって腹腔を逆Vの字状に開いた状態で両側傾斜ガイド板9bからフィレナイフ5へ移動し、さらにフィレナイフ5上をフィレナイフ5が回転する方向に沿って移動する。そして魚体A1がフィレナイフ5上を移動する間に、第1〜第3のアーム54a〜54cによって魚体A1の腹膜が付着した腹腔内面を回転するフィレナイフ5の側面5aに押し付け、フィレナイフ5の側面5aに形成された溝52が腹膜を魚体A1から取り除く。魚体A1から取り除かれた腹膜は、フィレナイフ5の回転による遠心力で移動方向Dの前方に飛ばされ、装置外へ排出される。この際、魚体A1の腹腔内面にはフィレナイフ5の平坦な側面5aが接触するので、魚体A1から余分な肉を切除することなく、腹腔内面に付着した腹膜を効率よく取り除くことができる。
【0047】
次に、本発明の落とし身の製造方法の一態様を詳細に説明する。
【0048】
落とし身の製造方法は、頭部を除去した魚体から内臓、背骨、メフン、腹膜を除去し蝶開きフィレにした魚体から、魚肉を採肉する。
【0049】
落とし身の製造方法に上記魚体から腹膜を除去する装置200を用いることができる。
【0050】
まず、漁獲した魚をよく洗浄する。続いて、頭部を除去し、
図8に記載の装置にかける。第1工程では、第1処理部30において、回転刃である開腹ナイフ3により魚体Aの腹側に切り込みをいれる。第2工程では、第2処理部40において、回転する第1ブラシ4により魚体A1の腹腔から内臓を除去する。第3工程では、第3処理部50において、斜めに対面する一対の回転刃であるフィレナイフ5により、背骨a1とメフンa2を除去すると共に、一対のフィレナイフ5に形成された複数の溝52により腹膜を除去する。第4工程では、第4処理部60において、腹膜が除去された魚体A2の腹腔内に残ったメフンなどを回転する第2ブラシ6によって除去し、背骨なし蝶開きフィレに加工された魚体A2が排出シュート18から装置外へ取り出される。
【0051】
第3工程の腹膜の除去についてさらに詳細に説明すると、少なくとも一方の側面5aに溝52を有するフィレナイフ5を回転させ、腹膜が付着した魚体A1の面を側面5aに押し当てることにより行うことができる。
【0052】
また、溝52を有する2枚のフィレナイフ5を逆Vの字状に対面させ、内臓を除去した魚体A1の腹腔を逆Vの字状に開いた状態でフィレナイフ5の側面5aに押し付けながら、フィレナイフ5が回転する方向に沿って魚体A1を移動させることにより腹膜を除去することができる。
【0053】
溝52を有するフィレナイフ5は外周に刃部5cを有する回転刃であることができ、該回転刃を回転することで腹膜を除去すると共に、内臓を除去した魚体A1の背骨a1及び/又はメフンa2を切り取ることができる。
【0054】
本実施の形態に係る落とし身の製造方法及び魚体から腹膜を除去する装置により製造された魚肉落とし身は、腹膜やメフン由来の黒い斑点等が少ない落とし身であり、練り製品の原料として汎用性が高く、冷凍すり身に替えて、練製品原料として利用することができる。さらに、水晒しを行ってすり身として用いることもできるのは言うまでもない。
【0055】
また、背骨等を切り取る回転刃であるフィレナイフ5に腹膜を除去する機能を持たせることによって、メフンを背骨と一緒に切除し、かつ、切除する回転刃で腹膜を除去することができ、短い作業ラインで効率よく落とし身生産することができる。そのため、本発明の方法で製造した落とし身はゲル形成能も高く、色調もより白く仕上げることができ、また黒い斑点等が少ない事から外観上の品質にも優れる。
【0056】
本実施の形態においては、フィレナイフ5に溝52を形成した例を説明したが、これに限らず、第3処理部50以外の位置に魚体から腹膜を除去する装置200を設置する場合には、例えば回転刃ではない円盤を採用することもできる。その場合、円盤の少なくとも一方の側面に溝52が形成することができる。溝52は、貫通孔に限らず、底面のある凹溝であってもよく、あるいは側面5aに形成した段部を有する凹みであることもできる。溝52がそのような段部の場合には、段部は側面5aから内方へ向かう壁部を有し、側面5aと該壁部との内角が例えば90度以下であることができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、魚体の面を円盤の側面5aに押し付ける手段として第1〜第3のアーム54a〜54cを用いた例を説明したが、これに限らず、円盤の側面5aに対して魚体の面を確実に押し付けることができればよく、例えば1枚または複数枚の板状体であることができ、付勢力を与える手段としては圧縮エアなどによって均等な圧力を加えることができる公知の袋体などを用いることができる。また油圧シリンダ、カムやリンクを介した各種モーター、ゴム弾性を利用したもの、またはそれらを組み合わせた仕組みでもよい。
【0058】
本発明の製造方法で得られた落とし身は、カマボコ、ちくわ、さつま揚げ、カニカマ、魚肉ソーセージ等の、魚肉を主成分とする魚肉練り製品の原料として用いることができる。魚肉練り製品は魚肉に副原料、例えば澱粉、グルテン、食塩、糖類、糖アルコール、調味料、香辛料、着色料等を添加して製造される。練り製品はすり身又は落とし身などに副原料を添加し、擂潰、調味、成形、加熱、冷却等の工程を経て製造される。坐り工程は、通常成型後、15〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度下に10分〜20時間、置く工程をいい、この工程により魚肉の弾力が高まる。魚肉練り製品の製造において、本発明の落とし身は従来のすり身の代替品として用いることができる。従来のすり身よりも水晒ししていない分、旨み成分などを多く含む特徴を有する。
【0059】
本発明の方法で製造した落とし身を原料としてすり身を製造すれば、より一層、混入物の少ないすり身を得ることができる。
【0060】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
スケトウダラの蝶開きフィレ製造時における魚体から腹膜を除去する装置の効果について評価を行った。東洋水産機械株式会社製の蝶開きフィレ製造装置(
図8に示した魚体処理装置100)に腹膜除去の機能として、フィレナイフ(背骨カットナイフ)への溝加工と背骨カット時のハラスを押さえるためのアームの取り付けを行った。
【0062】
試験区1は溝加工のないフィレナイフを用いてアームを取り付けていない場合、試験区2は溝加工のあるフィレナイフを用いてアームを取り付けていない場合、試験区3は溝加工のないフィレナイフを用いてアームを取り付けた場合、試験区4は溝加工のあるフィレナイフを用いてアームを取り付けた場合で、それぞれスケトウダラ50尾(平均重量480g)を処理し、蝶開きフィレを作製した。
【0063】
作製した蝶開きフィレの重量を測定し、原料からの処理歩留まりを算出した上で、腹膜の除去面積を観察し腹膜除去率を数値化した。
【0065】
表1に示したように、腹膜除去機能を取り付けていない場合、溝加工を行ったフィレナイフだけを用いた場合の腹膜除去率は30%程度であったが、アームの取り付けにより除去率は50%強まで上昇し、溝加工のあるフィレナイフとアームを組み合わせることで除去率が80%強とさらに上昇することが確認された。また、原料からの処理歩留まりはすべての試験区で57%と同じであった。このことより腹膜除去機能を付加してもハラス部分の肉を削り取ることは無く、腹膜のみを除去し、歩留まりには影響を与えないことが確認された。
【0066】
[実施例2]
図1〜
図5に示した魚体から腹膜を除去する装置200を使用して製造した落とし身の品質を評価した。
【0067】
試験区1は魚体から腹膜を除去する装置200を使用せずに蝶開きフィレ製造機(東洋水産機械株式会社製)で落とし身を製造した場合、試験区2は魚体から腹膜を除去する装置200を設置した蝶開きフィレ製造機(東洋水産機械株式会社製)で落とし身を製造した場合で、それぞれの品質の比較を行った。品質は落とし身に含まれる夾雑物数を測定し評価した。また、比較のため市販されている北海道産スケトウダラ冷凍すりみ陸上2級(株式会社笹谷商店製)の夾雑物数も測定した。蝶開きフィレ製造機(東洋水産機械株式会社製)は、
図8に示した魚体処理装置100であった。
【0068】
落とし身の製造方法は以下の通りである。はじめにスケトウダラを原料に蝶開きフィレ製造機(東洋水産機械株式会社製)で蝶開きフィレを作製し、採肉機(株式会社アブコ社製)によりミンチ肉を回収した。次にリファイナー(富国工業株式会社製)で皮、スジ、骨を除去後、スクリュープレス(富国工業株式会社製)で脱水し、脱水肉に糖およびリン酸塩を添加し、凍結し、冷凍落とし身作製した。
【0069】
夾雑物の測定は、冷凍落とし身又はすり身10gをビニールシート上で引き伸ばし、落とし身に含まる3mm以上の大きさの夾雑物数を目視により数えた。各試験区ともn=5で測定し平均値を算出した。
【0071】
表2に示したように、腹膜除去装置を取り付けることで夾雑物の数は低下しており、市販されている冷凍すりみと同水準となった。これは蝶開きフィレに付着していた腹膜が魚体から腹膜を除去する装置により大幅に除去されたためであると考えられる。