特許第6269065号(P6269065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269065
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス光源装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20180122BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180122BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20180122BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/04
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-557502(P2013-557502)
(86)(22)【出願日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2013052450
(87)【国際公開番号】WO2013118671
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-27480(P2012-27480)
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘康
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−107836(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024439(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/013681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/04
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出光面側から、透明電極層、発光層、反射電極層、及び反射層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記反射電極層は、貫通孔を有し、
前記反射層の反射率が、前記反射電極層の、前記発光層側の面の反射率より大きく、
前記有機エレクトロルミネッセンス光源装置は、前記反射層又は追加の層として、光を拡散させる拡散要素を有し、
前記有機エレクトロルミネッセンス光源装置は、前記拡散要素として、白色の散乱反射層である前記反射層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項2】
請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記拡散要素として、前記透明電極層の出光面側に設けられた、光拡散層または凹凸構造層を有する、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記反射層と前記反射電極層との間に、気体層をさらに有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記透明電極層の、前記発光層と反対側の面に接して設けられ、且つ装置の出光面を規定する出光面構造層をさらに有し、
前記反射電極層が周期性を有する条列状または格子状の形状を有し、
前記周期性のピッチが前記出光面構造層の厚み以下である有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」と略す場合がある。)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL光源装置は、複数層の電極と、その間に設けられた有機発光層とを有し、電極に通電することにより電気的に発光を得る装置である。有機EL光源装置は、液晶セルに代わる表示素子としての利用の他に、その高発光効率、低電圧駆動、軽量、低コスト等の特徴を生かした、平面型照明、液晶表示装置用バックライト等の面光源としての利用も検討されている。
【0003】
有機EL光源装置を面光源として利用する場合、有用な態様の光を有機EL光源装置から高効率で取り出すことが課題となる。例えば、有機EL光源装置の発光層自体は発光効率が高いものの、それが装置を構成する積層構造を透過して出光するまでの間に、層中における干渉等により光量が低減してしまうので、そのような光の損失を可能な限り低減することが求められる。
【0004】
光取り出し効率を高めるための方法として、例えば特許文献1には、素子の正面方向(0°)の輝度を抑制し、角度50〜70°の輝度を増加させることで、全体的な輝度を高めることが開示されている。
【0005】
また、反射電極を設ける代わりに、透明電極と反射層との組み合わせを用いる技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−296423号公報(対応米国公報 米国特許出願公開第2004/195962号明細書)
【特許文献2】国際公開第2009/131019号(対応米国公報 米国特許出願公開第2011/050082号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光源装置においては、光取り出し効率をさらに向上させることが求められている。
【0008】
また、特許文献2においては、発光層において発生した光のうち、光出射面と反対側に出射した光を反射するための構成として、従来慣用される反射電極の代わりに透明電極と反射層との組み合わせを用いている。反射層は、反射電極よりも反射率が高く且つ安価なものを容易に製造することができるため、特許文献2に開示される構成は、光取り出し効率を高める上では有利である。しかしながら、一般的に、透明電極は反射電極に比べて抵抗が高いため、面内の電圧の均一性が損なわれやすい。そのため、光源装置の面積が大きく且つ均一に出光する光源装置を得難い。
【0009】
したがって本発明の課題は、光取り出し効率が高く、且つ、容易に面積を大きくしうる有機EL光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明者は検討を行った結果、従来技術で慣用される反射電極の代わりに、特許文献2に記載されるように反射電極の代わりに反射層と透明電極との組み合わせを用いるのではなく、反射電極と反射層とを組み合わせて用いることを想到した。即ち、本願発明者は、発光層から、光出射面とは反対の方向に出射した光のうち、一部のみを反射電極で反射させ、残りを、反射率の高い反射層で反射させる態様を採用することを想到した。
このような態様を採用することにより、透明電極よりも抵抗を容易に低減しうる反射電極を用い、且つ、多くの割合の光を反射層で反射することとなる。その結果、大面積における均一な出光が可能となり、且つ光取出し効率の向上も可能となる。本願発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
したがって、本発明によれば、下記〔1〕〜〔6〕が提供される。
【0011】
〔1〕 出光面側から、透明電極層、発光層、反射電極層、及び反射層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記反射電極層は、貫通孔を有し、
前記反射層の反射率が、前記反射電極層の、前記発光層側の面の反射率より大きいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔2〕 〔1〕記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記反射層又は追加の層として、光を拡散させる拡散要素を有する、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔3〕 〔2〕記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記拡散要素として、前記透明電極層の出光面側に設けられた、光拡散層または凹凸構造層を有する、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔4〕 〔2〕又は〔3〕記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記拡散要素として、白色の散乱反射層である前記反射層を有する、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、前記反射層と前記反射電極層との間に、気体層をさらに有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記透明電極層の、前記発光層と反対側の面に接して設けられ、且つ装置の出光面を規定する出光面構造層をさらに有し、
前記反射電極層が周期性を有する条列状または格子状の形状を有し、
前記周期性のピッチが前記出光面構造層の厚み以下である有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光源装置は、光取り出し効率が高く、大面積で且つ均一に出光する装置としうるので、液晶表示装置のバックライト、照明装置などの光源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る光源装置100の、反射電極層112及び反射層131のみを概略的に示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る光源装置100の、凹凸構造層141のみを概略的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。
図6図6は、本発明の有機EL光源装置における反射電極層及び反射層の別の例を概略的に示す斜視図である。
図7図7は、本願実施例において対比のために検討した、従来技術の有機EL光源装置の一例を概略的に示す立面断面図である。
図8図8は、本願実施例において対比のために検討した、従来技術の有機EL光源装置の別の一例を概略的に示す立面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。本発明は以下に説明する実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0015】
〔概要〕
本発明の有機EL光源装置は、出光面側から、透明電極層、発光層、反射電極層、及び反射層をこの順に有する。透明電極層、発光層、及び反射電極層、並びに必要に応じて設けられる透明電極と反射電極との間の任意の層は発光素子を構成し、透明電極層及び反射電極層に通電することにより発光層が発光する。
本願において「反射層」と「反射電極層」とは、別の構成要素であり、従って、反射層は、反射電極層以外の層である。
本願において、光源装置の出光面を単に「装置出光面」と呼ぶことがある。装置出光面は、光源装置から装置外部に光が出光する際の、装置内部と装置外部との界面である。
装置出光面は、前記発光層の表面と平行な面であり、面光源装置の主面と平行である。但し、微小な凹凸構造を有する面により装置出光面が規定される場合、実際の出光面の面積は凹凸構造に比べて十分大きいので、凹凸構造を無視して巨視的に見ると、装置出光面は平坦な面として認識しうる。本願においては、別に断らない限り、かかる微視的な凹凸構造を無視して見た装置出光面と平行(又は垂直)であることを、単に「装置出光面と平行(又は垂直)」であるという。また、本願では、別に断らない限り、面光源装置は、かかる装置出光面が水平方向と平行で且つ上向きになるよう載置した状態で説明する。したがって、以下の説明において、例えば面光源装置を構成するある層の「上側」の面は、かかる層の、装置出光面に近い側の面であり、「下側」の面は、かかる層の、装置出光面から遠い側の面である。
本願において、各構成要素が「平行」又は「垂直」であるとは、本発明の効果を損ねない範囲の誤差を含んでいてもよく、例えば、平行又は垂直な角度から±5°の誤差を含んでいてもよい。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。
図1において、光源装置100は、基板101と、基板101の下側に設けられた透明電極層111と、透明電極層111の下側に設けられた発光層121と、発光層121の下側に設けられた反射電極層112と、発光層121及び反射電極層112の下側に設けられた反射層131とを有している。透明電極111、発光層121及び反射電極層112は、発光素子120を構成する。
【0017】
光源装置100はまた、基板101の上側に、凹凸構造層141をさらに有し、凹凸構造層の上側の面141Uが、光源装置100の装置出光面を規定している。以下において、装置出光面から、透明電極層の上側の面までの構造を、出光面構造層と呼ぶことがある。第1実施形態の例では、基板101及び凹凸構造層141を合わせた構造が、出光面構造層190を構成する。本願において、出光面構造層は、装置出光面から透明電極層の上側の面までの構造であるので、出光面構造層は、その下側の面が透明電極層に接し、一方その上側の面が装置出光面を規定する。
【0018】
光源装置100は、反射層131のさらに下側及び側面部に、必要に応じて封止部材(不図示)を有することができ、これと基板101とにより、発光素子120を、装置外部からの素子を劣化させる要素(水分、酸素等)から保護することができる。
【0019】
本発明の有機EL光源装置では、反射電極層は、貫通孔を有する。貫通孔を有する反射電極層と反射層とを組み合わせて有することにより、光源装置全体における、発光層から下向きに出射する光を上向きに反射させる面のうち、一部の領域を反射電極層の面が占め、他の一部の領域を反射層の面が占める。
第1実施形態の装置100を参照して説明すると、反射電極層112は、貫通孔113を有している。貫通孔113は、その上面側から下面側へ貫通している。貫通孔113内においては、発光層121と反射層131とが接している。従って、反射層131の、発光層121側の面131Uのうち、貫通孔113内の領域の面131Eは発光層121に対面し、その他の領域の面131Cは、反射電極層112により覆われている。反射層131は、入射した光を高い反射率で鏡面反射する材料で構成されている。
【0020】
図2は、第1実施形態に係る光源装置100の、反射電極層112及び反射層131のみを概略的に示す斜視図である。図1図8において、直交座標軸(X軸、Y軸及びZ軸)はそれぞれ対応している。例えば図2に示す直交座標軸のうちX軸及びZ軸は、図1に示す座標軸X軸及びZ軸に対応している。図2に示す通り、反射電極層112の貫通孔113は、正方形の構造を有し、正方形の辺のそれぞれは、X軸方向及びY軸方向に平行に延長している。多数の貫通孔113は、X軸方向及びY軸方向に、等間隔で整列して配列されている。これにより、反射電極層112は、X軸方向及びY軸方向に延長する線状の構造からなる格子状の構造を有している。このような構造を有することにより、装置反射面のうち、一部を反射電極層112の上面112Uが占め、他の一部を反射層131の面131Eが占めることとなる。
【0021】
第1実施形態において、基板101、透明電極層111及び発光層121は、反射電極層112とは異なり、装置出光面の全領域に渡って広がる平坦な層である。但し、発光層121は、貫通孔を有する反射電極層112に接しているため、その下側の表面において、反射電極層112の形状に追従した微細な凹凸構造を有しうる。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る光源装置100の、凹凸構造層141のみを概略的に示す斜視図である。図3に示す通り、凹凸構造層141の上面141Uは、多数の凹部142を有している。凹部142は、四角錐状の形状を有し、凹凸構造層141の上面141U上に、X軸方向及びY軸方向に整列して、間隔をおいて配列されている。
【0023】
図2及び図3は概略的な図であるため、僅かな数の貫通孔113及び凹部142のみを図示しているが、実際の装置では、貫通孔及び凹部の大きさは装置出光面の面積に比べてはるかに小さいものとしうるので、図2及び図3に図示されるものよりはるかに多数の貫通孔及び凹部を有しうる。
【0024】
本発明の有機EL光源装置では、反射層の反射率が、反射電極層の、発光層側の面の反射率より大きい。ここで、反射層の反射率とは、反射層の、発光層側の面の反射率である。反射層と反射電極層が接している場合は、反射層と反射電極層との界面には光は通常到達しないので、反射層の、発光層側の面のうち、貫通孔を介して発光層に対面する領域のみを、反射層の反射率の検討の対象としうる。
これを、第1実施形態の装置100の例を参照して説明すると、反射層131の面131Uのうち貫通孔113内の領域の面131Eの反射率は、反射電極層112の上面112Uの反射率より大きい。発光層121から下向きに出射する光(発光層121内で下向きに発生した光、並びに発光層121内で上向きに発生して発光層121の上側に出射し、発光層121より上側のいずれかの界面において反射され、発光層121内を透過して発光層の下側に出射した光を含む。)は、その一部が、反射電極112の面112Uにおいて反射され、他の一部は、反射層131の上面131Uのうちの一部の面131Eにおいて、より高い反射率で反射される。面131E及び112Uにおいて反射した光は上向きに進み、少なくともその一部は、発光層121、透明電極111、基板101及び凹凸構造層141を通過し、装置出光面(この例では凹凸構造層の上側の面141U)から出光する。
【0025】
本発明の有機EL光源装置では、発光層の、装置出光面と反対側の電極として、透明電極ではなく反射電極を用いることにより、面内の電圧の均一性を容易に高めることができる。そのため、出光面積が大きく且つ均一に出光する光源装置を容易に得ることができる。さらに、反射電極層が貫通孔を有し、且つ所定の反射率を有する反射層と組み合わされることにより、光取出し効率を高めることができる。
この特徴について具体的に説明すると、一般的に、反射電極層には、光取り出し効率の向上のために、高い反射率及び電極に適した仕事関数の両方の特性、さらにはデバイス作製プロセスへの適正が求められるが、これらを同時に満足させることは難しい。そのため一般的にはアルミニウムが用いられる。このアルミニウムの反射電極層の反射率は85%程度であり、1回の反射の度に15%の光が失われる。そこで、本願では、装置反射面の全領域に反射電極層を設けるのではなく、一部の領域のみに反射電極層を設け、他の領域には反射層を設ける。反射層は、反射電極とは異なり、高い仕事関数は必要ではなく、高い反射率のみが求められる。従って、安価で且つ85%といった反射電極層の反射率より高い反射率を示す材料を容易に選択し得る。そのため、本発明においては、反射電極層の材料として仕事関数の高い材料を採用し、且つ装置全体としての反射率を高めることが可能となり、しかもそのような態様を安価な材料から構成することができる。
【0026】
装置上方から、装置出光面に垂直な方向に装置出光面内の領域を観察した場合における、当該領域内の、反射電極層の反射面が占める領域と、反射層の反射面が占める領域の比は、それぞれの層の反射率、所望の光取出し効率、所望の出光量などの要因に応じて適宜調整し得る。通常、反射電極層の反射面が占める領域及び反射層の反射面が占める領域の合計に対する、反射電極層の反射面が占める領域の割合が1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、一方50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。反射電極層の反射面が占める領域の割合を前記下限以上とすることにより、高い装置出光量を得ることができ、一方、反射電極層の反射面が占める領域の割合を前記上限以下とすることにより、高い光取出し効率を得ることができる。
【0027】
本発明の有機EL光源装置は、光を拡散させる拡散要素を有することが好ましい。具体的には、反射層が拡散要素としての機能を兼ねたものであってもよく、又は、光源装置が、反射層以外の追加の層として、拡散要素を有していてもよい。後者の場合、拡散要素は、例えば透明電極層の出光面側に設けられた、光拡散層または凹凸構造層とすることができる。凹凸構造層は、おもて面及び裏面の一方又は両方に、凹凸構造を有する層であり、例えば、第1実施形態における凹凸構造層141のように、その装置出光面側の面上に、多数の凹部、凸部又はこれらの両方を有する層としうる。
【0028】
本発明の有機EL光源装置は、かかる拡散要素を有することにより、光取出し効率をさらに高めることができる。このことを図1における第1実施形態の装置100を参照して説明すると、発光層121から上向きに出射する光(発光層121内で上向きに発生した光、並びに反射電極112及び反射層131により反射され上向きに進む光を含む。垂直方向に進む光のみならず、様々な斜め方向の角度で進む光をも含む。)のうち、少なくともその一部は、基板101及び凹凸構造層141を透過して装置出光面141Uから出射するが、他の一部は、出射せず装置出光面141Uで反射され装置内に戻される。特に、凹凸構造層141と装置外との界面において、界面と光の進行方向とがなす角が臨界角未満の光は、全反射され装置内に戻される。かかる反射において、凹凸構造層141が凹凸構造を有することにより、反射方向が拡散され、様々な方向に光が反射する。反射光は、反射層131及び反射電極112により反射されて再び凹凸構造層141と装置外との界面に達する。この際、前記の拡散された反射により光の進行方向が拡散されているために、臨界角以上の角度で界面に入射し装置外に出射する光の割合が高まる。ここで、本発明の有機EL光源装置では、高い反射効率を有する反射層と反射電極とを組み合わせて有することにより、拡散要素(この例では凹凸構造層)により装置外に出射する光の割合が高まる効果がさらに増強され、相乗的な効果をもたらし、光取出し効率を大きく向上させることができる。
【0029】
(各構成要素)
本発明の有機EL光源装置の各構成要素の材料及び性質等について以下においてより具体的に説明する。
【0030】
(発光素子)
本発明の有機EL光源装置において、発光素子を構成する発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択することができるが、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせにより、後述する所定のピーク波長を含む光を発光するものとすることができる。
透明電極層及び反射電極層を構成する材料は、特に限定されず有機EL発光素子の電極として用いられる既知の材料を適宜選択することができ、どちらか一方を陽極とし、他方を陰極とすることができる。また、電極間には、発光層に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の任意の層をさらに有することもでき、これらも発光素子の構成要素となりうる。
【0031】
透明電極層の材料としては、金属薄膜、ITO、IZO、SnOなどを挙げることができる。反射電極層の材料としては、アルミニウム、MgAg等を挙げることができる。
【0032】
発光素子の具体的な層構成としては、陽極/正孔輸送層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/等電位面形成層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成,陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成などが挙げられる。本発明の有機EL光源装置における発光素子は、一層以上の発光層を陽極と陰極との間に有するものとすることができるが、発光層として、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。各層の材料は特に限定されるものではない。例えば発光層を構成する材料には、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系などの材料を挙げることができる。また正孔注入層や正孔輸送層にはフタロシアニン系、アリールアミン系、およびポリチオフェン系などの材料を挙げることができる。電子注入層や電子輸送層には、アルミ錯体およびフッ化リチウムなどが挙げられる。また、等電位面形成層、あるいは電荷発生層としては、ITO、IZO、SnOなどの透明電極、あるいはAg、Alなどの金属薄膜が挙げられる。
【0033】
透明電極層、発光層、反射電極層、及びそれ以外の発光素子を構成する任意の層は、基板上にこれらを順次積層することにより設けることができる。これら各層の厚さは、10〜1000nmとすることができる。
【0034】
貫通孔を有する反射電極層を成形する方法は、特に限定されず、既知の薄膜の成形方法を採用することができる、例えばフォトリソグラフィ、マスクスパッタ等の方法を用いることができる。
【0035】
反射電極層の発光層側の面の反射率は、具体的には、下限が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。一方上限は100%未満とすることができる。反射電極層の反射率は、高いほうが好ましいが、本発明においては、反射電極層よりさらに反射率が高い反射層を組み合わせることで、効率的な反射を達成しうる。
【0036】
(反射層)
反射層を構成する材料は、特に限定されず、所定の高い反射率を得られる材料を適宜選択することができる。第1実施形態の反射層131のような鏡面反射をする反射層の例としては、例えば、誘電多層膜、金、銀を挙げることができる。
【0037】
また、反射層は、鏡面反射する層である以外に、光を拡散して反射する拡散反射層であってもよい(第2実施形態を参照)。拡散反射層としては、入射した光がランバート散乱して反射する白色の層を好ましく用いることができる。かかる白色の層を構成する材料としては、具体的には例えば、ポリエステルフィルムを延伸することにより、フィルム内部に微小な気泡を発生させて、その反射散乱により白色を呈するフィルム(例として、東レ株式会社製、商品名「ルミラー」など)が挙げられる。
【0038】
反射層の反射率は、反射電極層より高い反射率であり、具体的には、下限が90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。一方上限は100%以下とすることができる。
【0039】
(出光面構造層:基板)
基板を構成する材料としては、ガラス基板、石英ガラス、およびプラスチック基板などの、有機EL発光素子の基板として通常用いうる基板を採用することができる。基板の厚さは、0.01〜5mmとすることができる。
【0040】
(出光面構造層:凹凸構造層)
凹凸構造層は、通常、光学部材に用いるのに適した程度の光線透過率を有する樹脂組成物により形成することができる。樹脂組成物を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを挙げることができる。なかでも熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、凹凸構造層の効率的な形成が可能となり、それぞれ好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィンポリマー系等の樹脂を挙げることができる。また、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系等の樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂としては、複数個の重合性官能基を有するものを好ましく用いることができる。なお、前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
なかでも、凹凸構造層の材料としては、凹凸構造を形成しやすく且つ凹凸構造の耐擦傷性を得やすいという観点から、硬化時の硬度が高い材料が好ましい。具体的には、7μmの膜厚の樹脂層を基材上に凹凸構造が無い状態で形成した際に、鉛筆硬度でHB以上になるような材料が好ましく、H以上になる材料がさらに好ましく、2H以上になる材料がより好ましい。
【0043】
凹凸構造層及び基材等の出光面構造の層構成要素となる層の材料として、光拡散性のある材料を用いてもよい。これにより、拡散による光取り出し効率をさらに高め、且つ観察角度による色味の変化を更に低減することもできる。
【0044】
光拡散性のある材料としては、例えば、粒子を含んだ材料、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせて光を拡散させるアロイ樹脂、等を挙げることができる。なかでも、光拡散性を容易に調節できるという観点から、粒子を含んだ材料が好ましく、特に粒子を含んだ樹脂組成物が特に好ましい。
【0045】
粒子は、透明であってもよく、不透明であってもよい。粒子の材料としては、例えば、金属及び金属化合物、並びに樹脂等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物の具体例を挙げると、銀、アルミのような反射率が高い金属;酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタン等の金属化合物;などを挙げることができる。一方、樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。なお、粒子の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
粒子の形状は、例えば、球状、円柱状、針状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状とすることができる。
粒子の粒径は、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。ここで粒径とは、体積基準の粒子量を、粒子径を横軸にして積算した積算分布における50%粒子径のことである。粒径が大きいほど、所望の効果を得るために必要な粒子の含有割合は多くなり、粒径が小さいほど、含有量は少なくてすむ。したがって、粒径が小さいほど、観察角度による色味の変化の低減、及び光取り出し効率の向上等の所望の効果を、少ない粒子で得ることができる。なお、粒径は、粒子の形状が球状以外である場合には、その同等体積の球の直径を粒径とする。
【0047】
粒子が透明な粒子であり、且つ粒子が透明樹脂中に含まれる場合において、粒子の屈折率と透明樹脂の屈折率との差が、0.05〜0.5であることが好ましく、0.07〜0.5であることがより好ましい。ここで、粒子及び透明樹脂の屈折率は、どちらがより大きくてもよい。粒子と透明樹脂の屈折率が近すぎると拡散効果が得られず色味ムラは抑制され難くなる可能性があり、逆に差が大きすぎると拡散が大きくなり色味ムラは抑制されるが光取出効果が低減する可能性がある。
【0048】
粒子の含有割合は、粒子を含む層の全量中における体積割合で、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、また、80%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。粒子の含有割合をかかる下限以上とすることにより、観察角度による色味の変化の低減等の所望の効果を得ることができる。また、かかる上限以下とすることにより、粒子の凝集を防止し、粒子を安定して分散させることができる。
【0049】
さらに、樹脂組成物は、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。当該任意の成分としては、例えば、フェノール系、アミン系等の劣化防止剤;界面活性剤系、シロキサン系等の帯電防止剤;トリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系等の耐光剤;などの添加剤を挙げることができる。
【0050】
凹凸構造層の厚さは、特に限定されないが、1μm〜70μmであることが好ましい。また、出光面構造層全体の厚さは、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上とすることができ、一方好ましくは950μm以下、より好ましくは800μm以下とすることができる。
【0051】
凹凸構造層及び基材の複層体の製造は、例えば、所望の形状を有する金型等の型を用意し、この型を、凹凸構造層を形成する材料の層に転写することにより行なうことができる。より具体的な方法としては、例えば、
(方法1)基材を構成する樹脂組成物Aの層及び凹凸構造層を構成する樹脂組成物Bの層(凹凸構造はまだ形成されていない)を有する未加工複層体を用意し、かかる未加工複層体の樹脂組成物B側の面上に、凹凸構造を形成する方法;及び
(方法2)基材の上に、液体状態の樹脂組成物Bを塗布し、塗布された樹脂組成物Bの層に型を当て、その状態で樹脂組成物Bを硬化させ、凹凸構造層を形成する方法
などを挙げることができる。
【0052】
方法1において、未加工複層体は、例えば樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを共押出する押出成形により得るようにしてもよい。未加工複層体の樹脂組成物B側の面上に、所望の表面形状を有する型を押し当てることにより、凹凸構造を形成することができる。
【0053】
方法2において、凹凸構造層を構成する樹脂組成物Bとしては、紫外線等のエネルギー線により硬化しうる組成物を用いることが好ましい。かかる樹脂組成物Bを、基材上に塗布し、型を当てた状態で、塗布面の裏側(基材の、樹脂組成物Bを塗布した面とは反対側)に位置する光源から、紫外線等のエネルギー線を照射し、樹脂組成物Bを硬化させ、その後型を剥離することにより、樹脂組成物Bの塗膜を凹凸構造層とし、複層体を得ることができる。
【0054】
(出光面構造層と反射電極層の構造の関係)
本発明の好ましい態様においては、反射電極層が周期性を有する構造(例えば周期性を有する格子状の形状、または周期性を有する条列状の構造)を有し、周期性のピッチが、出光面構造層の厚み以下である。当該構成を有することにより、装置出光面における輝度のムラが低減され、均一に出光する光源装置とすることができる。つまり、本発明の有機EL光源装置は、反射電極層に貫通孔を有することにより、全面に反射電極層が設けられた装置に比べて輝度ムラが発生し得るが、周期性のピッチを当該所定の範囲内の小さいものとし、さらに好ましくは上に述べた拡散要素を備えることにより、装置内における拡散が、貫通孔の存在による輝度ムラを十分に補償する程度に達成され、その結果装置出光面から出光する光の輝度ムラが低減される。
これを第1実施形態の反射電極層112(図1及び図2)を参照して説明すると、反射電極層112は、X軸方向及びY軸方向に延長する線状の反射電極層により構成される格子状の構造を形状を有しているので、これを例えばX軸方向の一端から他端へ走査的に観察すると、Y軸方向に延長する線状の反射電極層と貫通孔113とが周期的に観察される。従って、一の貫通孔の辺と、それに隣接する貫通孔の対応する辺との距離A1が、周期性のピッチとなる。このピッチA1が出光面構造層190の厚み以下であることにより、光源装置100を、均一に出光する装置とすることができる。
【0055】
周期性のピッチは、反射電極層の反射面に平行ないずれかの方向において観察されうる。反射電極層の線状の構造が格子状または条列状に配列されている場合、かかる線状の構造の延長方向に直交する方向において、周期性のピッチを観察しうる。線状の構造が格子状に配列されている場合は、複数の周期性のピッチが観察されうるが、その場合、どれか一つのピッチが前記好ましい態様の要件を満たすことが好ましく、全てのピッチが前記好ましい態様の要件を満たすことがより好ましい。
【0056】
周期性のピッチの具体的な数値範囲は、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上とすることができ、一方好ましくは950μm以下、より好ましくは800μm以下とすることができる。
【0057】
(第2実施形態)
上に述べた第1実施形態は、反射層として鏡面反射する反射面を有し、また拡散要素として凹凸構造層を有していたが、本発明はこれに限られず、例えば以下に示す第2実施形態のように、反射層及び拡散要素を兼ねるものとして散乱的な反射をする層を有していてもよい。
【0058】
図4は、本発明の第2実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。
図4において、光源装置200は、凹凸構造層141を有さず、基板101の上側の面101Uが装置出光面を規定する点、及び反射層131に代えて散乱反射層231を有する点において第1実施形態と異なり、その他の点は共通している。
散乱反射層231の面231Uの反射率は、反射層131の面131Uと同様に、反射電極層112の上面112Uより高い。但し、散乱反射層231の上側の面231Uは、目視で観察した際に白色を呈する面であり、光を散乱する態様で反射する点で、反射層131の面131Uと異なっている。
【0059】
第2実施形態の装置200では、反射電極層112の貫通孔113内において、発光層121と散乱反射層231とが接している。従って、散乱反射層231の、発光層121側の面231Uのうち、貫通孔113内の領域の面231Eは発光層121に対面し、その他の領域の面231Cは、反射電極層112により覆われている。
発光層121内で発生した光のうち下向きに進む光は、その一部が、反射電極112の面112Uにおいて反射され、他の一部は、反射層231の上面231Uのうちの一部の面231Eにおいて、より高い反射率で反射される。面231E及び112Uにおいて反射した光は上向きに進み、少なくともその一部は、発光層121、透明電極111、及び基板101を通過し、装置出光面(この例では基板101の上側の面101U)から出光する。
【0060】
第2実施形態の光源装置200において、散乱反射層231は、反射層であり、且つ拡散要素としての機能を兼ねたものとして機能する。拡散要素としてこのような散乱反射層を有することにより、光取出し効率をさらに高めることができる。具体的に説明すると、発光層121から上向きに出射する光(発光層121内で上向きに発生した光、並びに反射電極112及び反射層231により反射され上向きに進む光を含む。)のうち、少なくともその一部は、基板101を透過して装置出光面101Uから出射するが、他の一部は、出射せず装置出光面101Uで反射され装置内に戻される。特に、基板101と装置外との界面において、界面と光の進行方向とがなす角が臨界角未満の光は、全反射され装置内に戻される。かかる反射により装置内に戻された光のうち、散乱反射層231に達した光は、散乱反射層231が光を散乱する態様で反射する性質により、様々な方向に反射して再び上側に進む。この光が再び基板101と装置外との界面に達すると、前記の拡散された反射により光の進行方向が拡散されているために、臨界角以上の角度で界面に入射し装置外に出射する光の割合が高まる。ここで、本発明の有機EL光源装置では、高い反射効率を有する反射層と反射電極とを組み合わせて有することにより、散乱反射層により装置外に出射する光の割合が高まる効果がさらに増強され、相乗的な効果をもたらす。このように、第1の実施形態が拡散要素として有する凹凸構造層と同様の効果を、散乱反射層によっても得ることができる。
【0061】
(第3実施形態)
本発明の有機EL装置は、拡散要素として、上に述べた第1実施形態における凹凸構造層と、第2実施形態における散乱反射層とのいずれか一方ではなく両方を有していてもよい。
また、上に述べた第1実施形態及び第2実施形態においては、反射電極層と反射層とは、直接接して設けられていたが、本発明はこれに限られず、例えば以下に示す第3実施形態のように、反射電極層と反射層とが離隔して設けられていてもよい。
【0062】
図5は、本発明の第3実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を概略的に示す立面断面図である。図5において、光源装置300は、反射層131を有さず、その代わりに他の構成要素を有する点において第1実施形態と異なり、その他の点は共通している。
光源装置300は、発光層121及び反射電極層112の下側に接して設けられた封止層351を有し、さらにその下側に、気体層361を介して、散乱反射層331を有する。気体層361は、封止層351及び散乱反射層331とを、支持体362で支持することにより規定されている。気体層361内には、除湿剤363が設けられ、気体層361内の、水分等の発光素子を劣化させる要素を低減している。透明電極層111、発光層121及び反射電極層112を含む発光素子は、基板101、必要に応じて装置側面に設けられる封止部材(不図示)、封止層351、気体層361及び散乱反射層331、並びに必要に応じて設けられるその他の構成要素により、装置外部からの素子を劣化させる要素から保護することができる。
【0063】
散乱反射層331の面331Uの反射率は、第1実施形態の反射層131の面131Uと同様に、反射電極層112の上面112Uより高い。但し、散乱反射層331の上側の面331Uは、第2実施形態の散乱反射層231の上側の面231Uと同様に、目視で観察した際に白色を呈する面であり、光を散乱する態様で反射する。
【0064】
第3実施形態の装置300では、反射電極層112の貫通孔113内において、発光層121と封止層351とが接している。発光層121内で発生した光のうち下向きに進む光は、その一部が、反射電極112の面112Uにおいて反射され、他の一部は、貫通孔113を通り、封止層351を透過し、封止層351と気体層361との界面に到達する。ここに到達した光の大部分は、この界面で反射されるが、残りの一部は気体層361を透過し、散乱反射層331の上側の面331Uに達し、反射電極層の表面よりは高い反射率で反射される。したがって、このような形態においても、反射電極層と反射層との組み合わせによる効果を得ることができる。さらに、第3実施形態の装置300では、凹凸構造層141と、散乱反射層331の両方による拡散の効果を得ることができ、反射電極層と反射層との組み合わせによる効果と相乗的に、さらに高い光取出し効率が実現できる。
【0065】
第3実施形態においては、反射電極層112と反射層である散乱反射層331とが離隔している。したがって、散乱反射層331において反射した光の一部は、反射電極層112の、発光層と反対側の面112Lに到達する。本発明の光源装置では、反射電極層の、発光層と反対側の面の反射率は特に限定されないが、通常は、発光層側の面の反射率と同等の反射率とすることができる。
【0066】
第3実施形態において、封止層351の材料としては、光を透過させることができ、且つ封止性能を有する物質を適宜選択しうる。具体的には例えば、基板101と同様の材料とすることができる。気体層361内の気体は、通常の空気とすることができる他、アルゴン、窒素などの不活性ガスとし、発光素子の劣化をさらに低減することもできる。
【0067】
(変形例)
本発明の有機EL光源装置は、上記実施形態に限られず、上記実施形態に様々な変形を施すことができる。
【0068】
(変形例:任意の層)
上に述べた第3実施形態では、封止層351より下側の層として、気体層361を介して散乱反射層331を設けたが、本発明の有機EL光源装置においては、さらに他の層を設けてもよい。例えば、気体層361の下側に、ガラス等の基板を設け、そのさらに下側に散乱反射層を設けることもできる。
【0069】
(変形例:反射電極層の構造)
上に述べた実施形態では、反射電極層として、図2に示す格子状の構造を有しているが、本発明の有機EL光源装置は、反射電極層として他の形態を有するものであってもよい。例えば、図6に示す反射電極層612の通り、Y軸方向に延長する線状の構造614がX軸方向に平行に整列し、線状の構造614の間に帯状の形状の貫通孔613を有する、条列状の構造を有することもできる。この場合において、反射電極層612の周期性のピッチは、線状の構造614に直交する方向即ちX軸方向で観察した周期性のピッチとすることができ、具体的にはX軸方向における、一の貫通孔の辺とそれに隣接する貫通孔の対応する辺との距離A2とすることができる。
【0070】
この他に、反射電極層は、例えば丸型等の任意の形状の貫通孔が、平面上に整列した形状であってもよい。
【0071】
(変形例:透明電極の構造)
上に述べた実施形態では、透明電極層111として、装置出光面の全領域に渡って広がる平坦な層を用いているが、本発明の有機EL光源装置において、透明電極層は、例えば反射電極層と同様に貫通孔を有するものであってもよい。
但し、本発明の有機EL光源装置において、透明電極層は、第1〜第3実施形態に示したように、平坦な層であることが好ましい。透明電極層が平坦な層であると、透明電極層の抵抗が高くても面内の電圧を均一にすることができる。例えば、装置出光面の中央付近における電圧が下がり中央付近が暗くなるという傾向を低減することができる。また、透明電極層が貫通孔または凹凸構造を有すると、それに追従して発光層も凹凸構造を有することになり、発光層の凹凸構造部分が劣化の起点となる可能性がある一方、透明電極層が平坦な層であると、そのような劣化の起点を低減することができる。
【0072】
(変形例:出光面構造層、凹凸構造層)
上に述べた第1及び第3実施形態では、凹凸構造層141の凹凸構造として、四角錐状の凹部142がX軸方向及びY軸方向に整列して、間隔をおいて配列されたものを示したが、本発明における凹凸構造はこれに限られず、種々の形状の構造としうる。例えば、四角錐状の構造単位に代えて、四角錐以外の角柱、角錐、角錐の一部であり断面台形の形状、円錐、球又は楕円回転体の一部等の形状をとりうる。また、凹凸構造は、装置出光面の一の辺から、対向する他の辺へ連続する溝状の凹部及び/又は凸部が平行に多数整列した条列状の形状であってもよい。このような凹凸構造の高さは、特に限定されないが、最も高い部分と低い部分との差として、0.3〜100μmとすることが好ましい。
また、凹凸構造が、凹凸構造層141の凹凸構造のように凹部と平坦部とを有する場合、装置上方から観察した際に凹部が占める領域と平坦部が占める領域との比は、19:1〜4:6とすることが好ましく、9:1〜5:5とすることがより好ましい。
【0073】
また、凹凸構造141の凹凸構造は、装置出光面全面において同じ形状の凹部および同じ高さの平坦部を有するが、本発明における凹凸構造はこれに限られず、装置出光面内に、異なる形状の凹部及び/又は凸部が混在していてもよく、高さが異なる複数の水準の平坦部が混在していてもよい。そのようなランダムな形状にすることにより、装置出光面の虹ムラの防止することができる。加えて、装置内部の光の干渉を低減し、それと反射層等による反射量の増加との組み合わせにより、さらなる光取出し効率の向上等の効果を得ることができる。
【0074】
上に述べた第1及び第3実施形態では、出光面構造層190内において、凹凸構造層141は、基板101とは別の構成要素としたが、本発明において出光面構造層の態様はこれに限られず、例えばこれらが共通の部材で一体に成形された出光面構造層であってもよい。逆に、出光面構造層は、基板及び凹凸構造層に加えて、さらに任意の層を有するものであってもよい。
【0075】
さらに、本発明の有機EL光源装置において、拡散要素は、凹凸構造層、散乱反射層に限られず、これらに代えてまたはこれらに加えて、装置内の光を拡散する任意の構成をとることができる。例えば、拡散剤を有する平板状の拡散要素を、装置出光面と反射層との間のいずれかの位置に設けることができる。
【0076】
(その他の構成要素)
本発明の有機EL光源装置は、上に述べた構成要素のほかに、光源装置を構成するための任意の構成要素を含みうる。例えば、発光素子に通電するための配線、発光素子の封止のための封止部材、層間の接着のための接着層、装置出光面の周縁部の、物理的強度を確保したり筐体として機能したりする部材などの任意の構成要素を含むことができる。
【0077】
(用途)
本発明の有機EL光源装置の用途は、特に限定されないが、高い光取り出し効率等の利点を生かし、例えば、液晶表示装置のバックライト、照明装置などの光源とすることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1>
図1に示す、本発明の第1実施形態の構成を有する有機EL光源装置100の光取出し効率を、以下に示す設定条件に基づきシミュレーションした。
【0080】
図1に示す有機EL光源装置100において、凹凸構造層141の上面の凹凸構造は、正四角錐状の凹部の斜面と装置出光面とがなす角60°、四角錐の底辺長さ32μm、隣接する四角錐状の凹部間の距離8μmで、その結果周期性のピッチ40μmとした。
反射電極層112の反射率は、アルミニウムを想定し、85%とした。反射の態様は、鏡面反射とした。
反射層131の反射率は、98%とし、反射の態様は、鏡面反射とした。
反射電極層112の反射面112Uと、反射層131の反射面131Eとの面積比は、36:64とした。
凹凸構造層141、基板101、透明電極層111、及び発光層121の屈折率は、それぞれ、1.53、1.53、1.9、及び1.8とした。
凹凸構造層141、基板101、透明電極層111、及び発光層121の厚さは、それぞれ、15μm、500μm、0.2μm、及び100nmとした。発光層からの光源の配光特性はランバーシアンとした。
【0081】
また、対比のため、図7に示す有機EL光源装置を想定した。図7に示す光源装置700は、反射層131を有さず、且つ反射電極112に代えて、装置反射面の全領域に設けられた反射電極層712が設けられた他は、光源装置100と同様の構成を有するものとして設定した。
【0082】
以上の設定条件を元に、プログラム(プログラム名:Light Tools、Optical Research Associates社製)により、光取り出し効率をシミュレーションし、光源装置100と光源装置700の光取出し効率を対比した。その結果、光源装置100の光取出し効率は、光源装置700の1.06倍であった。
【0083】
<実施例2>
図4に示す、本発明の第2実施形態の構成を有する有機EL光源装置200の光取出し効率を、以下に示す設定条件に基づきシミュレーションした。
【0084】
図4に示す有機EL光源装置200において、反射電極層112の反射率は、アルミニウムを想定し、85%とした。反射の態様は、鏡面反射とした。
反射層231の反射率は、98%とし、反射の態様は、白色散乱とした。
反射電極層112の反射面112Uと、反射層231の反射面131Eとの面積比は、36:64とした。
基板101、透明電極層111、及び発光層121についての設定は、実施例1と同一とした。
【0085】
また、対比のため、図8に示す有機EL光源装置を想定した。図8に示す光源装置800は、反射層231を有さず、且つ反射電極112に代えて、装置反射面の全領域に設けられた反射電極層712が設けられた他は、光源装置200と同様の構成を有するものとして設定した。
【0086】
以上の設定条件を元に、実施例1と同一のプログラムにより、光取り出し効率をシミュレーションし、光源装置200と光源装置800の光取出し効率を対比した。その結果、光源装置200の光取出し効率は、光源装置800の1.85倍であった。
【0087】
<実施例3>
反射層131の反射率を98%とし、反射の態様を白色散乱とした他は、実施例1と同様の設定条件で、光取り出し効率をシミュレーションし、光源装置100と光源装置700の光取出し効率を対比した。その結果、光源装置100の光取出し効率は、光源装置700の1.11倍であった。
【0088】
<実施例4>
図5に示す、本発明の第3実施形態の構成を有する有機EL光源装置300の光取出し効率を、以下に示す設定条件に基づきシミュレーションした。
【0089】
封止層351、及び気体層361の屈折率は、それぞれ、1.53及び1.0とした。
封止層351、及び気体層361の厚さは、いずれも1μmとした。
反射層331の反射率は、98%とし、反射の態様は、白色散乱とした。
反射電極層112の反射面112Uと、反射層231の貫通孔113との面積比は、36:64とした。
凹凸構造層141、基板101、透明電極層111、及び発光層121についての設定は、実施例1と同一とした。
【0090】
以上の設定条件を元に、実施例1と同一のプログラムにより、光取り出し効率をシミュレーションし、光源装置300と、実施例1でシミュレーションした光源装置700の光取出し効率を対比した。その結果、光源装置100の光取出し効率は、光源装置700の1.29倍であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8