【実施例】
【0052】
以下、本発明の脱酸素反応に使用する脱酸素用触媒の製造例、並びに本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で広く応用可能である。
【0053】
<製造例1〜7>
・TiO
2(1):
脱イオン蒸留水200mLに塩化チタン(和光純薬工業株式会社製,16−17wt%水溶液)20g、尿素(和光純薬工業株式会社製)15gを加え、100℃にて12時間激しくかき混ぜながら加熱撹拌した。得られた白色ゲル状物質を吸引濾過し、脱イオン蒸留水(約1L)でろ液が中性になるまで洗浄した。残った沈殿を110℃にて一晩乾燥させ、乳鉢で粉砕した後、電気炉で300℃、3時間焼成することにより黄色味がかった白色のTiO
2(約5.8g)を得た。このようにして得られたチタニアをX線回折(XRD:X‐ray diffraction)したところアナターゼ型であることが確認された。また、BET比表面積は32m
2/gであった。
【0054】
・TiO
2(2):触媒学会参照触媒、名称:JRC−TIO−4、BET比表面積:50m
2/g
・TiO
2(3):触媒学会参照触媒、名称:JRC−TIO−1、BET比表面積:72m
2/g
・TiO
2(4):触媒学会参照触媒、名称:JRC−TIO−2、BET比表面積:18m
2/g
【0055】
・ハイドロキシアパタイト(HAP):和光純薬工業株式会社製、商品名:「ハイドロキシアパタイト」、BET比表面積:48m
2/g
・シリカ:富士シリシア化学株式会社社製、商品名:CARiACT Q−3、BET比表面積:100m
2/g
・γ−アルミナ:触媒学会参照触媒、名称:JRC−ALO−4、BET比表面積:174m
2/g
【0056】
(脱酸素用触媒の製造)
以下の製造例1〜7で得られた脱酸素用触媒中のルテニウム粒子の平均粒子径を測定した。平均粒子径はTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察することにより、一つの粒子群中の粒子の直径の平均値を平均粒子径として算出した。
【0057】
(製造例1:実施例用触媒(1)(Ru/TiO
2)の製造)
ルテニウム塩化物(RuCl
3・nH
2O)(N.E.CHAMCAT株式会社製、Ru含有量41.87wt%)0.12g(0.5mmol)を脱イオン蒸留水100mLに加え、RuCl
3を溶解させた。ここにTiO
2(1) 1gおよび尿素 1gを加え、100℃にて6時間加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過し、脱イオン蒸留水1Lで洗浄後、110℃にて一晩乾燥させた。これを水素雰囲気下、150℃にて1時間還元処理することで、Ru/TiO
2から成る触媒(1)を得た。
この触媒(1)のRu粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は1.6nm(標準偏差σ=0.34nm)であった。Ru粒子径の分布を
図1に示す。
【0058】
(製造例2:実施例用触媒(2)(Ru/TiO
2)の製造)
製造例1において還元処理に使用した水素雰囲気の代わりに水素化ホウ素カリウム(KBH
4)を混合して使用した以外は、製造例1と同様にしてRu/TiO
2から成る触媒(2)を得た。この触媒(2)のRu粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.0nm(標準偏差σ=0.34nm)であった。Ru粒子の粒子径の分布を
図2に示す。
【0059】
(製造例3:実施例用触媒(3)(Ru/TiO
2)の製造)
製造例1において還元処理に使用した水素雰囲気の代わりにエチレングリコールを混合して使用した以外は、製造例1と同様にしてRu/TiO
2から成る触媒(3)を得た。この触媒(3)のRu粒子の平均粒子径は2.7nmであった。
【0060】
(製造例4:実施例用触媒(4)(Ru/TiO
2)の製造)
製造例1においてTiO
2(1)の代わりにTiO
2(2)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/TiO
2から成る触媒(4)を得た。なお、以下の製造例においては、Ru粒子の平均粒子径が1〜20nmとなるように適宜調製して、実施例用触媒を製造した。
【0061】
(製造例5:実施例用触媒(5)(Ru/TiO
2)の製造)
製造例1においてTiO
2(1)の代わりにTiO
2(3)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/TiO
2から成る触媒(5)を得た。
【0062】
(製造例6:実施例用触媒(6)(Ru/TiO
2)の製造)
製造例1においてTiO
2(1)の代わりにTiO
2(4)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/TiO
2から成る触媒(6)を得た。
【0063】
(製造例7:実施例用触媒(7)(Ru/HAP)の製造)
塩化ルテニウム(RuCl
3・nH
2O)(N.E.CHAMCAT株式会社製、Ru含有量41.87wt%)0.12g(0.5mmol)を脱イオン蒸留水100mLに加え、RuCl
3を溶解させた。ここにHAP 1gおよび尿素 1gを加え、100℃にて6時間加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過し、脱イオン蒸留水1Lで洗浄後、110℃にて一晩乾燥させた。これを水素雰囲気下、150℃にて1時間還元処理することでRu/HAPから成る触媒(7)を得た。なお、製造例7において製造した、
この触媒(7)中のRu粒子径を測定したところ、平均粒子径は3.0nm(標準偏差0.70nm)であった。Ru粒子の粒子径の分布を
図3に示す。
【0064】
<比較製造例1〜14>
(比較製造例1:比較例用触媒(C1)(Ru/SiO
2)の製造)
製造例1でTiO
2(1)の代わりに前記シリカ(BET比表面積:100m
2/g)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/SiO
2から成る触媒(C1)を得た。この触媒(C1)のRu粒子の平均粒子径は2.1nmであった。
【0065】
(比較製造例2:比較例用触媒(C2)(Ru/Al
2O
3)の製造)
製造例1でTiO
2(1)の代わりに前記γ−アルミナ(BET比表面積:174m
2/g)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/Al
2O
3から成る触媒(C2)を得た。触媒(C2)中のRu粒子の平均粒子径は4.2nmであった。
【0066】
(比較製造例3:比較例用触媒(C3)(Ru/CeO
2)の製造)
製造例1でTiO
2(1)の代わりに酸化セリア(触媒学会参照触媒、名称:JRC−CEO−3,BET比表面積:81.4m
2/g)を用いた以外は、製造例1と同様にして、Ru/CeO
2から成る触媒(C3)を得た。なお、比較製造例3においては、触媒成分粒子の平均粒子径が1〜20nmとなるように適宜調製して、比較例用触媒(C3)を製造した。
【0067】
(比較製造例4:比較例用触媒(C4)(Rh/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を塩化ロジウム水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下、110℃にて1時間還元することにより、Rh/TiO
2から成る比較例用触媒(C4)を得た。この触媒(C4)中のRh粒子の平均粒子径は約5.2nmであった。
【0068】
(比較製造例5:比較例用触媒(C5)(Pt/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を塩化白金酸カリウム水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下110℃にて1時間還元することにより、Pt/TiO
2から成る比較例用触媒(C5)を得た。この触媒(C5)中のPt粒子の平均粒子径は2.4nmであった。
【0069】
(比較製造例6:比較例用触媒(C6)(Pd/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を塩化パラジウム酸ナトリウム水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下110℃にて1時間還元することにより、Pd/TiO
2から成る比較例用触媒(C6)を得た。この触媒(C6)中のPd粒子の平均粒子径は5.2nmであった。
【0070】
(比較製造例7:比較例用触媒(C7)(Cu/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を銅トリフラート水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下180℃にて1時間還元することで、Cu/TiO
2から成る比較例用触媒(C7)を得た。なお、以下の比較製造例においては、触媒成分粒子(Cu,Ni,Ag,Rh等)の平均粒子径が1〜20nmとなるように適宜調製して、比較例用触媒を製造した。
【0071】
(比較製造例8:比較例用触媒(C8)(Ni/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を塩化ニッケル水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下180℃にて1時間還元することで、Ni/TiO
2から成る比較例用触媒(C8)を得た。
【0072】
(比較製造例9:比較例用触媒(C9)(Ag/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を硝酸銀水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下110℃にて1時間還元することで、Ag/TiO
2から成る比較例用触媒(C9)を得た。
【0073】
(比較製造例10:比較例用触媒(C10)(Au/TiO
2)の製造)
TiO
2(1)(1.0g)を塩化金酸水溶液(5mM,100mL)に加え、尿素1.0gと共に6時間100℃にて加熱撹拌した。得られた沈殿をろ過した後、1Lのイオン交換蒸留水により洗浄したのち、110℃にて一晩乾燥後、これらを水素雰囲気下110℃にて1時間還元することで、Au/TiO
2から成る比較例用触媒(C10)を得た。
【0074】
(比較製造例11:比較例用触媒(C11)(Rh/HAP)の製造)
比較製造例4におけるTiO
2(1)をHAP(1.0g)にした以外は比較製造例4と同様にして、Rh/HAPから成る比較例用触媒(C11)を得た。
【0075】
(比較製造例12:比較例用触媒(C12)(Pt/HAP)の製造)
比較製造例5におけるTiO
2(1)をHAPにした以外は比較製造例5と同様にしてPt/HAPから成る比較例用触媒(C12)を得た。
【0076】
(比較製造例13:比較例用触媒(C13)(Pd/HAP)の製造)
比較製造例6におけるTiO
2(1)を製造例6で使用したHAPに代えた以外は比較製造例6と同様にして、Pd/HAPから成る比較例用触媒(C13)を得た。
【0077】
(比較製造例14:比較例用触媒(C14)(Au/HAP)の製造)
比較製造例10におけるTiO
2(1)を製造例10で使用したHAPに代えた以外は製造例7と同様にして、Au/HAPから成る比較例用触媒(C14)を得た。
【0078】
<脱酸素反応によるスルフィドの製造>
調製した触媒を使用し、基質の脱酸素反応を行った。実施例1〜26及び実施例28〜40(溶媒が有機溶媒)では、基質の転化率と生成物の収率はガスクロマトグラフを用いて測定し、算出した。ガスクロマトグラフはGC−2014(SHIMADZU製)、カラム充填剤はKOCL(3m)を使用した。また、実施例27(溶媒が水)では、基質であるスルホキシドからスルフィドの転化率と反応生成物であるスルフィドの収率は、
1H−NMR(日本電子社製、装置名「JNM−GSX270」、重溶媒:重水(D
2O))を用いて測定し、算出した。
【0079】
(実施例1〜26:脱酸素剤(還元剤)が分子状水素の反応)
製造例1〜7及び比較製造例1〜10で製造した脱酸素用触媒を用いて、脱酸素剤として分子状水素を使用して、基質であるスルホキシドの脱酸素反応を行った。脱酸素反応は、フローガスリアクターを使用して行った。フローガスリアクターによる反応に使用したカラムは、内径5mm、長さ20mmのステンレス製管である。触媒は、希釈剤としてのSiO
2(CARiACT−Q3;1.0g(BET比表面積:550m
2/g,細孔容積:0.3m
3/g))と共にメタノール(MeOH)中で混合し、減圧条件下、加熱処理して該SiO
2に含浸させた。この希釈処理した触媒をカラムに充填し、カラム内の温度を適宜調整して反応に使用した。脱酸素剤(還元剤)である分子状水素は、反応系に2mL/minで供給し、反応系中で常に1atmになるように調整した。
【0080】
(実施例1〜7及び比較例1〜10)
製造例1〜7及び比較製造例1〜10で製造した脱酸素用触媒(1)〜(7)及び(C1)〜(C10)を用いて、下記反応条件1の条件下、基質として、ジフェニルスルホキシド(0.5mmol)を採択して、脱酸素反応を行い、スルフィドを製造した。表1に各実施例及び比較例において使用した脱酸素用触媒の種類を示した。併せて、表1に基質であるスルホキシド化合物からスルフィドへの転化率及び反応生成物であるスルフィドの収率を示した。
【0081】
[反応条件1]
・反応装置:フローガスリアクター
・触媒:表1に記載
・触媒量:金属換算で0.025mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:水素(1気圧)、2mL/min
・溶媒:1,4−ジオキサン 5ml
・反応温度:100℃
・反応時間:1時間
【0082】
【化1】
【0083】
【表1】
【0084】
表1の結果から、脱酸素剤として分子状水素を使用した場合、本発明の脱酸素用触媒は、チタニア(TiO
2)、ハイドロキシアパタイト(HAP)を無機酸化物担体として使用した場合、99%を超える高い転化率及び99%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。特に、担体として、チタニア(TiO
2)を使用した場合にこのような優れた効果を発揮していることがわかる。
また、本発明の脱酸素用触媒は、チタニア(TiO
2)、ハイドロキシアパタイト(HAP)担体のBET比表面積の範囲においてジフェニルスルフィドの脱酸素反応に有用であることがわかる。
一方、触媒成分としてルテニウム以外の金属を用いた脱酸素用触媒は、基質の転化率及び生成物の収率が10%程度と非常に低いことがわかる。
【0085】
<Ru/TiO
2触媒(1)の耐久性評価>
(試験例1〜5)
製造例1で製造した脱酸素用触媒Ru/TiO
2触媒(1)の耐久性を評価した。脱酸素用触媒の耐久性は、スルホキシド化合物からスルフィドを製造するために使用した後の脱酸素用触媒を評価することにより行った。具体的には、Ru/TiO
2触媒(1)を用いて、反応時間を表2に示した時間とした以外は反応条件1と同様の条件のもと、基質:ジフェニルスルホキシド(0.5mmol)の脱酸素反応を行って、ジフェニルスルフィドを生成した。使用後の脱酸素用触媒を用いて、脱酸素反応を行うことにより、本発明の脱酸素用触媒の耐久性を評価した。
【0086】
【表2】
1
*:試験例1で使用済みの触媒(1)
【0087】
表2中、試験例1では実施例1と同様に高い転化率、高い収率を示した。その後、試験例1で使用した脱酸素用触媒を再利用して、改めて脱酸素反応を試みたところ、スルホキシド化合物からスルフィドへの転化率及び収率共に半分以下に低下した(試験例2)。
【0088】
しかしながら、フローリアクターによる反応時間を延長した。試験例1で使用した脱酸素用触媒を用いて、反応時間を4時間とすることで、試験例1と同様に高い転化率及び収率が得られることが分かった(試験例3)。
【0089】
また、試験例3で使用した脱酸素用触媒について、さらに反応時間を延長して5時間としたところ、試験例1と同様に高い転化率及び高い収率が得られることが分かった(試験例4)。
【0090】
更に、試験例4で使用した脱酸素用触媒について、更に反応時間を延長して8時間としたところ、この場合も試験例1と同様に高い転化率及び高い収率が得られることが分かった(試験例5)。
【0091】
他の一般的な触媒同様に、本発明の脱酸素用触媒は、反応に使用することでその活性がやや低下する。しかしながら、反応時間を延長することで、反応に使用した触媒について洗浄や脱硫などの賦活処理をせずとも、長時間にわたり高いスルホキシド化合物からスルフィドへの転化率及びスルフィド収率を示し、繰り返し長時間に耐え得る優れた耐久性を有することがわかる。
【0092】
<ラージスケール>
(実施例8)
製造例1で製造したRu/TiO
2触媒(1)を用いて、以下の反応条件2のもと、基質:ジフェニルスルホキシド(20mmol)の脱酸素反応を行った。結果を表3に示す。
【0093】
[反応条件2]
・反応装置:フローガスリアクター
・触媒:Ru/TiO
2触媒(1)
・触媒量:金属換算で1mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:水素(1気圧)、2mL/min
・溶媒:ビス(メトキシエチル)エーテル 50ml
・反応温度:160℃
・反応時間:20時間
【0094】
【表3】
【0095】
表3の結果から、本発明の脱酸素用触媒は、多様な溶媒を用いた場合であっても、ジフェニルスルホキシドの脱酸素反応を行うことができる。また、本発明の脱酸素用触媒は、反応スケールが大きくなった場合でも、99%を超える高い転化率及び90%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。
【0096】
<Ru/TiO
2触媒(1)を用いた基質の多様性評価>
(実施例9〜26)
製造例1で製造したRu/TiO
2触媒(1)を用いて、以下の反応条件3のもと、ジフェニルスルホキシド化合物以外の基質(0.5mmol)についても脱酸素反応を行った。表4〜5に、基質、生成物、基質の転化率及び生成物の収率を示す。
【0097】
[反応条件3]
・反応装置:フローガスリアクター
・触媒:Ru/TiO
2触媒(1)
・触媒量:金属換算で 0.025mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:水素(1気圧)、2mL/min
・溶媒:1,4−ジオキサン 5ml
・反応温度:表4〜5に記載
・反応時間:表4〜5に記載
【0098】
【化2】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
表4〜5の結果から、本発明の脱酸素用触媒は、スルフィニル基を有する多様なスルホキシド化合物に対しても優れた効果を発揮することがわかる。
【0102】
<水溶性の基質に対し溶媒として水を使用した反応例>
(実施例27)
製造例1で製造したRu/TiO
2触媒(1)を用いて、反応条件4のもと、溶媒として水を使用し、水溶性の基質:メチオニンスルホキシド(0.5mmol)の脱酸素反応を行った。結果を表6に示す。
【0103】
[反応条件4]
・反応装置:フローガスリアクター
・触媒:Ru/TiO
2触媒(1)
・触媒量:金属換算で 0.025mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:水素(1気圧)、2mL/min
・溶媒:水 5ml
・反応温度:100℃
・反応時間:12時間
【0104】
【化3】
【0105】
【表6】
【0106】
表6の結果から、本発明の脱酸素用触媒は水溶性の基質に対して溶媒として水を使用した場合であっても、99%を超える高い転化率及び95%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮することがわかる。
【0107】
<脱酸素剤がアルコールの反応>
製造例7及び比較製造例11〜14で製造した脱酸素用触媒を用い、脱酸素剤としてアルコールを使用して、基質の脱酸素反応を行った。該反応は、アルゴンガスを満たしたシュレンク管を使用し、アルゴン雰囲気下で行った。
【0108】
(実施例28〜34・比較例11〜14)
製造例7で製造した触媒(7)、及び比較製造例11〜14で製造した(C11)〜(C14)(担体:HAP)を用いて、下記反応条件5のもと、基質:ジフェニルスルホキシド(0.5mmol)の脱酸素反応を行った。表7に、脱酸素用触媒、溶媒、脱酸素剤の種類、基質の転化率、生成物の収率を示す。
【0109】
[反応条件5]
・反応装置:シュレンク管
・触媒量:金属換算で 0.025mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:表7に記載のアルコール 10mmol
・溶媒:表7に記載の有機溶媒 5ml
・反応温度:110℃
・反応時間:1時間
【0110】
【化4】
【0111】
【表7】
【0112】
表7の結果から、触媒成分としてルテニウムを、担体としてハイドロキシアパタイト(HAP)を使用したRu/HAP触媒(7)は、多様な溶媒を採用した場合であっても、良好に脱酸素反応を進行させていることがわかる。特に、溶媒としてトルエン、トリフルオロトルエン又はn-ヘプタンを使用した場合であっても、85〜99%を超える高い転化率及び85〜99%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。
これに対して、触媒成分としてルテニウム以外の遷移金属を採用した脱酸素用触媒は、Ru/HAP触媒(7)では最も優れた効果を発揮した溶媒であるトルエンを使用した場合であっても、転化率及び収率共に1%もしくはそれに満たない極めて低い活性しか得られていないことが判明した。
Ru/HAP触媒(7)は、脱酸素剤として多様なアルコールを使用した場合にも、99%を超える高い転化率及び99%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。
【0113】
<Ru/HAP触媒(7)の再利用評価>
(試験例6〜8)
実施例28で使用したRu/HAP触媒(7)について、溶媒であるトルエンで洗浄した後、上記反応条件5(脱酸素剤としてイソプロピルアルコール、溶媒としてトルエンを使用)と同様の条件のもと、再度同じ反応に使用して、脱酸素用触媒としての評価を行った。その評価結果を表8に示す。なお、試験例6〜8は以下の処理を施したものである。
(試験例6):再利用1回目
実施例28で使用したRu/HAP触媒(7)を1回目のトルエン洗浄の後に反応に供した。
(試験例7):再利用2回目
試験例6で使用後のRu/HAP触媒(7
*)を2回目のトルエン洗浄を行い、反応に供した。
(試験例8):再利用3回目
試験例7で使用後のRu/HAP触媒(7
**)を3回目のトルエン洗浄を行い、反応に供した。
【0114】
【表8】
7
*:再利用1回目の触媒(7)
7
**:再利用2回目の触媒(7)
7
***:再利用3回目の触媒(7)
【0115】
表8の結果から、試験例6〜8のいずれの場合においても、スルホキシド化合物からスルフィドへの転化率及びスルフィドの収率共に99mol%超を維持した。この結果から、本発明の脱酸素用触媒は、触媒の再利用においても優れた効果を発揮することがわかる。
【0116】
<低温活性評価>
(実施例35)
製造例7で製造した脱酸素用触媒Ru/HAP(7)を用いて、反応条件6のもと、基質:ジフェニルスルホキシド(0.5mmol)の脱酸素反応を行った。その結果を表9に示す。
【0117】
[反応条件6]
・反応装置:シュレンク管
・触媒量:金属換算で 0.05mmol(基質に対して10mol%)
・脱酸素剤:エタノール 10mmol
・溶媒:トルエン 5ml
・反応温度:40℃
・反応時間:12時間
【0118】
【表9】
【0119】
表9の結果から、本発明の脱酸素用触媒は、脱酸素反応を40℃程度の低温とした場合であっても、99%を超える高い転化率及び99%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。
【0120】
<Ru/HAPを使用した基質の多様性評価>
実施例36〜40
製造例7で製造したRu/HAP触媒(7)を用いて、反応条件7のもと、ジフェニルスルホキシド以外の基質(0.5mmol)についても脱酸素反応を行った。
表10に実施例36〜40で使用した基質、生成物、基質の転化率及び生成物の収率を示す。
【0121】
[反応条件7]
・触媒量:金属換算で0.025mmol(基質に対して5mol%)
・脱酸素剤:プロピルアルコール 0.5mmol
・溶媒:トルエン 5ml
・反応温度:110℃
・反応時間:表10中に記載
【0122】
【化5】
【0123】
【表10】
【0124】
表10の結果から、本発明の脱酸素用触媒は、多様な基質についても優れた効果を発揮することがわかる。すなわち、本発明の脱酸素用触媒は、多様なスルホキシド化合物を基質として用い、種々条件下において、99%を超える高い転化率及び99%を超える高い収率にて、スルホキシド化合物からスルフィドを製造することができるという優れた効果を発揮していることがわかる。さらに、本発明のスルフィドの製造方法は、脱酸素剤として、シラン化合物を使用することなく、分子状水素又はアルコールを存在させることによりスルホキシド化合物からスルフィドを製造することができる。