特許第6269623号(P6269623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6269623非水性二次電池負極用活物質、及び非水性二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269623
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】非水性二次電池負極用活物質、及び非水性二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20180122BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20180122BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180122BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 B
   H01M4/36 E
   H01M4/1393
   H01M4/1395
   H01M10/0566
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-176670(P2015-176670)
(22)【出願日】2015年9月8日
(62)【分割の表示】特願2014-553149(P2014-553149)の分割
【原出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-222733(P2015-222733A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-276822(P2012-276822)
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-276823(P2012-276823)
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】三木 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
(72)【発明者】
【氏名】野中 眞一
(72)【発明者】
【氏名】大熊 雅美
(72)【発明者】
【氏名】亀井 清雄
(72)【発明者】
【氏名】西山 俊徳
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−310759(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013855(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/105671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を焼成することを特徴とし、
該重合体セグメント(a2)が、ビニル重合体セグメント、ポリウレタン重合体セグメント、ポリエステル重合体セグメント又はポリエーテル重合体セグメントである、
非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
【請求項2】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、下記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で表される構造単位を有するポリシロキサンセグメントである請求項1に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
[化1]
[化2]
(前記一般式(S−2)及び(S−3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を示す。)
【請求項3】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が、前記複合樹脂(A)に対して10〜95質量%である、請求項1又は請求項2に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
【請求項4】
前記重合体セグメント(a2)が、ビニル重合体セグメントである請求項1〜3何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
【請求項5】
前記複合樹脂(A)が、ポリシロキサンセグメント(a1)と重合体セグメント(a2)とが下記の構造式(S−5)で示される構造で結合する複合樹脂である請求項1〜4何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
[化3]
(式中、炭素原子は重合体セグメント(a2)を構成する炭素原子であり、2個の珪素原子はポリシロキサンセグメント(a1)を構成する珪素原子である)
【請求項6】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、重合性二重結合を有することを特徴とする請求項1に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
【請求項7】
前記重合体セグメント(a2)が、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、水酸基、ブロックされた水酸基、シクロカーボネート基、エポキシ基、カルボニル基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、下記式(S−4)
[化4]
で表される基から選ばれる官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一項に記載の方法で得られた非水性二次電池負極用活物質と有機結着材と溶剤とを混練して、負極材スラリーを調製する工程(1)、
前記工程(1)で得られた負極材スラリーを集電体に塗布して負極層を形成するか、又は、
前記工程(1)で得られた負極材スラリーを成形し、これを集電体と一体化する工程(2)、を有することを特徴とする非水性二次電池負極の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法で得られた非水性二次電池負極と正極とをセパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより得ることを特徴とする非水性二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の樹脂を焼成して得られる非水性二次電池負極用活物質、及び非水性二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の世界の動きとして、東日本大震災および社会的環境問題等を背景に、エネルギー活用の大きな変革期にある。すでにスマートグリッド推進、電気の全量買取り制度の開始など具体的な動きが生じており、その中の最も重要なキーデバイスとして二次電池が挙げられる。
【0003】
二次電池の中でも、小型でも容量を確保できるリチウムイオン電池が最も注目されているが、自動車の航続距離が短いことやスマートフォンの使用時間が短い等の課題があり、更なる高エネルギー密度化の研究が進められている。
【0004】
その為の重要な開発部材として負極用活物質が挙げられる。現在は天然黒鉛、人工黒鉛、グラファイトなど炭素系材料が負極活物質として用いられているが、電池として高エネルギー密度化を図る場合には炭素系では限界があることから、理論容量の高いSi系やSn系などの金属合金系活物質が次世代電池用負極材料として期待されている。しかしながら、これらの物質は充放電による膨張が大きく、電極に用いた場合には、その膨張による電極の剥離、崩壊、導電パスの断絶などが生じ、実用化できる寿命を得ることができない等の問題がある。
【0005】
そこでSi金属をSiOやSiOおよび炭素によって複合化することによって導電性能の向上と活物質自身の安定化を図る方法が検討され、高性能を発揮することのできる活物質の探索が行われている。
【0006】
例えば、Si、Sn、Al、Coなどの金属合金粒子が、炭素と複合されてリチウムイオン電池電極材料として用いられるが、その複合体の作製法としてはいくつかの方法が挙げられる。炭素材料と金属合金微粒子との機械的混合による複合体の作製法(例えば、特許文献1参照)、還元によって液相から炭素相への金属ナノ粒子析出法(メッキ法、無電解法)(例えば、非特許文献1参照)、ナノシート状金属とグラフェンとの積層構築法(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
しかし、機械混合法及び金属粒子の還元析出法(メッキ法)には、金属粒子が炭素母材表面上に物理的付着するため、界面密着強度が比較的小さくて母材表面から剥離されやすい欠点がある。遊離した粒子は、充放電時に粒子同士の融合・成長が電池性能の劣化に繋がる。また、焼成後の後処理として、負極作製時の塗工特性や塗膜物性を考慮した処理が必要となる。ナノシートの積層構築法は操作が複雑であり、また効率が低いため工業上の大量生産に不向きである等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2008/081883号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yongcai Qiu et al.,Chem.Commun.,2010,46,8359−8361
【非特許文献2】Liwen Ji et al.,Energy Environ.Sci.,2011,4,3611−3616
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、背景技術を鑑み、高い容量を有し、サイクル特性に優れる非水性二次電池負極用活物質を提供することにあり、更には、該活物質を用いた負極、及び該負極を有する非水性二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を焼成して得られる活物質が、非水性二次電池負極用活物質として優れた性能を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を焼成して得られる非水性二次電池負極用活物質を提供する。
また、本発明は、前記非水性二次電池負極用活物質を用いた非水性二次電池負極を提供する。
さらに、本発明は、前記非水性二次電池負極を有する非水性二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非水性二次電池負極用活物質は、非水性二次電池用負極用材料として優れた性能を有するので、非水性二次電池用負極、及び非水性二次電池の提供が可能となる。また、本発明の非水性二次電池負極用活物質は、簡便な方法で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明における望ましい態様の一例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
項1.シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を焼成して得られる非水性二次電池負極用活物質、
項2.前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、下記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で表される構造単位を有するポリシロキサンセグメントである項1に記載の非水性二次電池負極用活物質、
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
(前記一般式(S−2)及び(S−3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を示す。)
項3.前記ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が、前記複合樹脂(A)に対して10〜95質量%である、項1または2に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項4.前記重合体セグメント(a2)が、ビニル重合体セグメントである項1〜3の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項5.前記複合樹脂(A)が、ポリシロキサンセグメント(a1)と重合体セグメント(a2)とが下記の構造式(S−5)で示される構造で結合する複合樹脂である項1〜4の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質、
【0016】
【化3】
(式中、炭素原子は重合体セグメント(a2)を構成する炭素原子であり、2個の珪素原子はポリシロキサンセグメント(a1)を構成する珪素原子である)
項6.シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)、シリコン粒子、及び有機溶剤から得られる分散液を焼成して得られる非水性二次電池負極用活物質、
項7.前記焼成が、前記分散液を噴霧乾燥した後に、乾燥物を焼成することを特徴とする項6に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項8.前記焼成が、前記分散液を噴霧同時焼成であることを特徴とする項6に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項9.前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、下記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で表される構造単位を有するポリシロキサンセグメントである項6〜8に記載の非水性二次電池負極用活物質、
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
(前記一般式(S−2)及び(S−3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を示す。)
項10.前記ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が、前記複合樹脂(A)に対して10〜95質量%である、項6〜9に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項11.前記重合体セグメント(a2)が、ビニル重合体セグメントである項6〜10に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項12.前記複合樹脂(A)が、ポリシロキサンセグメント(a1)と重合体セグメント(a2)とが下記の構造式(S−5)で示される構造で結合する複合樹脂である項6〜11に記載の非水性二次電池負極用活物質、
【0019】
【化3】
(式中、炭素原子は重合体セグメント(a2)を構成する炭素原子であり、2個の珪素原子はポリシロキサンセグメント(a1)を構成する珪素原子である)
項13.非多孔質であることを特徴とする、項1〜12の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質、
項14.項1〜13の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質を用いた非水性二次電池負極、
項15.項14に記載の非水性二次電池負極を有する非水性二次電池。
【0020】
項16.シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)、シリコン粒子、及び有機溶剤から得られる分散液を噴霧乾燥した後に、乾燥物を焼成することを特徴とする非水性二次電池負極用活物質の製造方法、
項17.シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びにポリシロキサンセグメント(a1)と、該ポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)、シリコン粒子、及び有機溶剤から得られる分散液を噴霧同時焼成することを特徴とする非水性二次電池負極用活物質の製造方法、
項18.前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、前記一般式(S−2)および/または前記一般式(S−3)で表される構造単位を有するポリシロキサンセグメントである項16または17に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法、
項19.前記ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が、前記複合樹脂(A)に対して10〜95質量%である項16〜18の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法、
項20.前記重合体セグメント(a2)がビニル重合体セグメントである項16〜19の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法、
項21.前記複合樹脂(A)が、ポリシロキサンセグメント(a1)と重合体セグメント(a2)とが前記構造式(S−5)で示される構造で結合する複合樹脂である項16〜20の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質の製造方法。
項22.非多孔質であることを特徴とする、項16〜21の何れか一項に記載の方法で得られる非水性二次電池負極用活物質。
項23.項16〜22の何れか一項に記載の非水性二次電池負極用活物質を用いた非水性二次電池負極、
項24.項23に記載の非水性二次電池負極を有する非水性二次電池。
【0021】
以下、詳細に本発明を説明する。
(複合樹脂A)
本発明で使用する複合樹脂(A)としては、例えば、前記ポリシロキサンセグメント(a1)が前記重合体セグメント(a2)の側鎖に化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂、前記重合体セグメント(a2)の末端に前記ポリシロキサンセグメント(a1)が化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0022】
前記複合樹脂(A)が有するポリシロキサンセグメント(a1)は、該ポリシロキサンセグメント(a1)中に重合性二重結合など加熱により反応が可能な官能基を有していてもよい。焼成前に複合樹脂(A)を加熱処理することにより、架橋反応が進行し、固体状とすることにより、焼成処理を容易に行うことができる。
【0023】
前記重合性二重結合としては、例えば、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性二重結合は、ポリシロキサンセグメント(a1)中に2つ以上存在することが好ましく3〜200個存在することがより好ましく、3〜50個存在することが更に好ましい。また、複合樹脂(A)として重合性二重結合が2個以上存在する複合樹脂を使用することによって、架橋反応が容易に進行させることができる。
【0024】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)は、シラノール基および/または加水分解性シリル基を有している。前記熱硬化反応と並行して、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行することで、得られる塗膜のポリシロキサン構造の架橋反応が進行し、固体状の複合樹脂(A)を得ることができる。
【0025】
本発明で言うシラノール基とは珪素原子に直接結合した水酸基を有する珪素含有基である。本発明で言う加水分解性シリル基とは珪素原子に直接結合した加水分解性基を有する珪素含有基であり、具体的には、例えば、下記の一般式で表される基が挙げられる。
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基である。またbは0〜2の整数である。)
【0028】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0029】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0030】
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0031】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0032】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基等が挙げられる。
【0033】
前記アシロキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ピバロイルオキシ、ペンタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等が挙げられる。
【0034】
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0035】
前記アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、2−ペテニルオキシ基、3−メチル−3−ブテニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)が有する加水分解性シリル基中の加水分解性基としては、例えば、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、これらの基が加水分解されることにより加水分解性シリル基はシラノール基となる。そして、このシラノール基の水酸基が脱水縮合に用いられ、ポリシロキサンセグメント(a1)部分の架橋反応が進行する。
【0037】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)は、下記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で示される構造単位を有するポリシロキサンセグメントが好ましい。下記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で示される構造単位を有するポリシロキサンセグメントは三次元網目状のポリシロキサン構造を有する。従って、複合樹脂としてこのようなポリシロキサンセグメントを有する複合樹脂を用い、焼成することによりSiOC化合物を得ることが可能となる。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
(前記一般式(S−2)及び(S−3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を示す。)
【0041】
前記炭素原子数が1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチ基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0042】
前記炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0044】
前記炭素原子数が7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0045】
前記一般式(S−2)および/または下記一般式(S−3)で示される構造単位を有するポリシロキサンセグメントとしては、例えば以下の構造を有するもの等が挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
前記複合樹脂(A)が有するポリシロキサンセグメント(a1)以外の重合体セグメント(a2)としては、例えば、アクリル重合体、フルオロオレフィン重合体、ビニルエステル重合体、芳香族系ビニル重合体、ポリオレフィン重合体等のビニル重合体セグメントや、ポリウレタン重合体セグメント、ポリエステル重合体セグメント、ポリエーテル重合体セグメント等の重合体セグメント等が挙げられる。中でも、ビニル重合体セグメントが好ましい。
【0050】
前記重合体セグメント(a2)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて各種官能基を有していても良い。かかる官能基としては、例えばカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、水酸基、ブロックされた水酸基、シクロカーボネート基、エポキシ基、カルボニル基、1級アミド基、2級アミド、カーバメート基、下記の構造式(S−4)で表される官能基等を使用することができる。
【0051】
【化11】
【0052】
また、前記重合体セグメント(a2)は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性二重結合を有していても良い。
【0053】
本発明で用いる複合樹脂(A)としては、ポリシロキサンセグメント(a1)と重合体セグメント(a2)とが下記構造式(S−5)で表される構造で結合した複合樹脂や下記構造式(S−6)で表される構造で結合した複合樹脂等が挙げられる。
【0054】
【化12】
【0055】
構造式(S−5)中、炭素原子は重合体セグメント(a2)を構成する炭素原子であり、2個の珪素原子はポリシロキサンセグメント(a1)を構成する珪素原子である)
【0056】
【化13】
【0057】
構造式(S−6)中、炭素原子は重合体セグメント(a2)を構成する炭素原子であり、珪素原子はポリシロキサンセグメント(a1)を構成する珪素原子である)
【0058】
本発明で用いる複合樹脂(A)のより好ましい態様の一例としては、前記ポリシロキサンセグメント(a1)が、前記一般式(S−2)および/または前記一般式(S−3)で表される構造単位を有するポリシロキサンセグメントであり、前記重合体セグメント(a2)が、ビニル重合体セグメントであり、該ポリシロキサンセグメント(a1)と該重合体セグメント(a2)とが前記構造式(S−5)で示される構造で結合する複合樹脂であり、該ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が、複合樹脂(A)に対して10〜95質量%であるものなどが挙げられる。
【0059】
本発明で用いる複合樹脂(A)は、種々の方法で製造できるが、なかでも下記(1)〜(3)に示す方法で製造することが好ましい。
(1)前記重合体セグメント(a2)の原料として、シラノール基および/または加水分解性シリル基を含有する重合体セグメント(a2−1)を予め調製しておき、この重合体セグメント(a2−1)と、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物を含有するシラン化合物とを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
【0060】
(2)前記重合体セグメント(a2)の原料として、シラノール基および/または加水分解性シリル基を含有する重合体セグメント(a2−1)を予め調製する。また、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物を含有するシラン化合物を加水分解縮合反応してポリシロキサン(a1−1)も予め調製しておく。そして、重合体セグメント(a2−1)とポリシロキサン(a1−1)とを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
【0061】
(3)前記重合体セグメント(a2−1)と、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物を含有するシラン化合物と、ポリシロキサン(a1−1)とを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
【0062】
本発明は、複合樹脂(A)を焼成する態様に加え、複合樹脂(A)とシリコン粒子と有機溶剤から得られる分散液を焼成し、複合粒子を得る態様も含まれる。
【0063】
(シリコン粒子)
本発明の複合粒子は金属ケイ素またはケイ素含有化合物からなるシリコン粒子の少なくとも1種を含む。シリコン粒子はケイ素を含有するが、不可避的に混入する他の原子を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。シリコン粒子の純度としては特に制限されないが、電池容量の観点から、80質量%以上であることが好ましい。
シリコン粒子の体積平均粒子径(50%D)は特に制限されないが、粒子径が小さいほど微細化が抑制され、サイクル性が向上することから、0.01μm〜1μmであることが好ましく、0.01μm〜0.6μmであることがより好ましく、0.01μm〜0.4μmがさらに好ましい。
シリコン粒子は上述の粒子径に粉砕して用いることができる。
粉砕機としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどが挙げられ、中でもビーズミルは、粉砕性に優れ、目的粒径までの到達時間が早く好ましい。湿式粉砕に用いる有機溶剤は、酸化防止の観点から、その構造中に酸素元素を含まない有機溶剤であることが好ましい。具体的には例えば、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶剤を用いることが可能である。
複合粒子中のシリコン粒子の含有率は特に制限ない。またシリコン粒子の含有率を調整することによって電池容量を制御することができる。
本発明においては複合粒子中のシリコン粒子の含有比率が1〜80質量%であることが好ましく、1〜70質量%であることがより好ましく、1〜60質量%であることがさらに好ましい。
シリコン粒子の含有比率が1質量%以上であることで、複合粒子の容量が400mAh/g以上となり、負極材として黒鉛に対する容量の優位性が大きくなる。一方、60質量%以下であることで、シリコン粒子がSiOCに十分に被覆され、サイクル特性が改善する。
【0064】
(黒鉛性粒子)
前記複合粒子は、黒鉛性粒子を含んでも良い。黒鉛性粒子(黒鉛性物質)は、人造黒鉛および天然黒鉛に大別されるが、電池容量と高純度の観点から人造黒鉛であることが好ましい。
形状については特に制限はなく、鱗片状、球状などが挙げられる。
【0065】
(金属ケイ素またはケイ素含有化合物)
本発明で使用される金属ケイ素またはケイ素含有化合物は特に限定されるものではなく、金属ケイ素としては、単結晶、多結晶、アモルファス等が挙げられる。また、ケイ素含有化合物としては、無機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物が挙げられる。この無機ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、二酸化ケイ素等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物;その他、酸窒化物、酸炭化物、ケイ素合金、金属シリサイド、シリケートが例示される。
また、有機ケイ素化合物としては、シラン、シラザン、シロキサン等の低分子量の有機ケイ素化合物、並びに、ポリシラン、ポリシラザン、ポリシロキサン等の有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーが例示される。取り扱い性の点では、有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーを有機ケイ素化合物として使用することが好ましい。有機ケイ素化合物は単独でも2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0066】
(複合粒子の製造方法)
前記複合粒子の製造方法は、前記複合樹脂、シリコン粒子、および有機溶媒を分散処理して分散物を得る工程と、前記分散物を噴霧乾燥して造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成処理して、複合粒子を得る工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0067】
(分散工程)
前記複合樹脂、シリコン粒子、および有機溶媒を、分散処理して分散液を得る工程において、前記複合樹脂は、有機溶剤に溶解していることが好ましい。有機溶剤は特に限定されないが、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど樹脂が溶解または分散する溶剤が好ましい。
分散処理は超音波ホモジナイザー、攪拌式のホモジナイザー、混練機など均一な分散液を得ることが可能であれば、その手法は限定されない。
前記分散液は噴霧乾燥によって造粒物とする。噴霧乾燥によって造粒することにより、瞬時に溶剤を除去することができるためシリコン微粒子と炭素性物質前駆体の均一性をより確保でき、さらに、造粒によって粒径制御と粒子内空隙制御をより効果的に行なうことができる。
【0068】
噴霧乾燥は市販されているスプレードライヤーで行うことが可能であり、有機溶剤を使用するため、窒素雰囲気型のスプレードライヤーを使用することが好ましい。スプレー方式としては、ディスク式とノズル式があるが、目的とする造粒物の体積平均粒子径等に応じて適宜選択することができる。
【0069】
スプレードライヤーで調製した造粒物の粒子径は、後述する焼成処理後もほぼ維持されるため、造粒物を焼成処理して得られる複合粒子の粒子径制御と、粒径分布の均一性の観点から、スプレー方式としてノズル式を用いることが好ましい。
これにより、好ましい体積平均粒子径と、均一な粒径分布とを有する複合粒子の前駆体である造粒物を効率よく得ることができる。
【0070】
(噴霧乾燥)
噴霧乾燥の条件については特に制限されず、噴霧乾燥装置、スプレー方式等に応じて、噴霧圧、噴霧量、乾燥温度等を適宜選択することができる。
例えば、噴霧乾燥装置としてスプレードライヤー(大川原化工機社製、CNL−3)を用い、ノズル式で噴霧する場合、噴霧圧としては、0.01MPa〜1MPaとすることができ、噴霧入口温度は30〜300℃とすることができる。
また、前記分散液を噴霧する際は、均一性をより保持する観点から、分散液を分散処理しながら噴霧乾燥する方法も取ることができる。噴霧乾燥中の分散処理として、撹拌機、超音波処理等、分散液調製に用いた手法を用いることができる。
【0071】
(焼成)
本発明の活物質は、前記複合樹脂を焼成することにより(態様1)、または前記複合樹脂とシリコン粒子と有機溶剤から得られる分散液を焼成することにより(態様2)得ることができる。
【0072】
また、本発明の活物質は、前記分散液を噴霧乾燥した後に、乾燥物を焼成することにより得ることができる(態様2−1)。
態様2−1の場合、球状微粒子を得ることができ、また、焼成温度と時間をより精密に制御することができる。
【0073】
さらに、本発明の活物質は、前記分散液を噴霧と同時に焼成(噴霧同時焼成)することにより得ることができる(態様2−2)。
態様2−2の場合、本発明の効果を維持しつつ、態様2−1に比して焼成プロセスを大幅に簡略化することができ、単位時間当たりの生産性が飛躍的に向上する。
(噴霧同時焼成)
噴霧直後の液滴を高温の加熱管に通して乾燥と焼成を同時に行うこともできる。噴霧乾燥装置と同様のノズルで溶液を噴霧し、微小液滴とした後、加熱されたセラミック管を一定時間で通過させ、炭化させ、サイクロン等で捕集する。例えば、噴霧熱分解装置(大河原化工機社製、RH−2)を用い、ノズル式で噴霧する場合、噴霧圧は0.01MPa〜1MPa、噴霧入口温度は30〜300℃、加熱時間は1秒〜10秒、加熱温度は30℃〜1500℃とすることができる。
【0074】
焼成は公知慣用の方法で行うことができ、特に制限はないが、例えば、不活性のガス雰囲気下で、1分当たり略5℃で昇温を行い、以下の温度で焼成を行うことができる。
焼成温度に制限はないが、好ましくは、500〜1500℃、より好ましくは、600〜1500℃、特に好ましくは600〜1300℃の温度を挙げることができる。
【0075】
噴霧同時焼成の場合、焼成温度は、好ましくは600〜1400℃、より好ましくは800〜1000℃で行うことができる。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが例示される。なお、この不活性ガス中に、水素ガス等の還元性ガスを含んでもよい。
【0076】
最終到達温度1500℃以上になると、炭化ケイ素の成長を助長するため好ましくない。一方、最終到達温度が上記範囲の下限より低いと、有機成分の炭化が不十分となる。なお、この焼成工程は二段階以上で行なっても良い。すなわち、第一段階において、最終到達温度より低温で一定時間焼成を行い、再度昇温し焼成することができる。
前記加熱処理は、固定床又は流動床方式の炭化炉で行うことができ、所定温度へ昇温できる機能を有する炉であれば、炭化炉の加熱方式及び種類は特に限定されない。炭化炉としては、例えば、リードハンマー炉、トンネル炉、単独炉等が挙げられる。
【0077】
得られた活物質は、多孔質であっても非多孔質であってもよいが、非多孔質であることが好ましい。本発明で、非多孔質とは、実質的に無視できる程度の細孔しか含まないことをいう。本発明において、BET比表面積とは、日本工業規格JIS Z8830−1990の付属書2に規定する「1点法による気体吸着量の測定方法」に従って測定した粉末の比表面積値である。BET比表面積の測定は、比表面積測定装置で行うことができる。比表面積測定装置は、例えば、Tristar3000(島津製作所製)などが挙げられる。BET比表面積は、例えば、好ましくは5m/g以下であり、より好ましくは4m/g以下であり、さらに好ましくは3.5m/g以下であり、よりさらに好ましくは3m/g以下であることをいう。
【0078】
次に、本発明の非水性二次電池負極用活物質を用いて、リチウムイオン二次電池の作製を行った。
<リチウムイオン二次電池用負極材>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、本発明の活物質の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
本発明の活物質を含むことで、高容量で、サイクル性の高いリチウムイオン二次電池用負極を構成することができる。
前記その他の成分としては、例えば、バインダー樹脂、導電助剤等を挙げることができる。
【0079】
<リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法は、前記活物質の製造方法によって活物質を得る工程を含むものである。これにより前記活物質を含むリチウムイオン二次電池用負極材を効率よく製造することができる。
活物質の製造方法については既述の通りである。
【0080】
<リチウムイオン二次電池用負極>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、既述の本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなることを特徴とする。これにより高容量を有し、サイクル性に優れるリチウムイオン二次電池を構成することが可能になる。
リチウムイオン二次電池用負極は、例えば、上述の本発明のリチウムイオン二次電池用負極材及び有機結着材を溶剤とともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダ等の分散装置により混練して、負極材スラリーを調製し、これを集電体に塗布して負極層を形成する、または、ペースト状の負極材スラリーをシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化することで得ることができる。
【0081】
上記有機結着剤(以下、「バインダ」ともいう)としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体;エチレン性不飽和カルボン酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)、およびエチレン性不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等)からなる(メタ)アクリル共重合体;ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、カルボキシメチルセルロースなどの高分子化合物が挙げられる。
【0082】
これらの有機結着剤は、それぞれの物性によって、水に分散、あるいは溶解したもの、また、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)などの有機溶剤に溶解したものがある。リチウムイオン二次電池負極の負極層中の有機結着剤の含有比率は、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、3〜15質量%であることがさらに好ましい。
有機結着剤の含有比率が1質量%以上であることで密着性が良好で、充放電時の膨張・収縮によって負極が破壊されることが抑制される。一方、30質量%以下であることで、電極抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0083】
また、上記負極材スラリーには、必要に応じて、導電助材を混合してもよい。導電助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、あるいは導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられる。導電助剤の使用量は、本発明のリチウムイオン二次電池負極材に対して1〜15質量%程度とすればよい。
【0084】
また前記集電体の材質および形状については、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いればよい。また、多孔性材料、たとえばポーラスメタル(発泡メタル)やカーボンペーパーなども使用可能である。
上記負極材スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。塗布後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行うことが好ましい。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
【0085】
前記集電体上に形成された負極層および集電体と一体化した負極層は、用いた有機結着剤に応じて熱処理することが好ましい。例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドを主骨格とした有機結着剤を用いた場合には150〜450℃で熱処理することが好ましい。
この熱処理により溶媒の除去、バインダーの硬化による高強度化が進み、粒子間及び粒子と集電体間の密着性が向上できる。尚、これらの熱処理は、処理中の集電体の酸化を防ぐため、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気、真空雰囲気で行うことが好ましい。
【0086】
また、熱処理する前に、負極はプレス(加圧処理)しておくことが好ましい。本発明のリチウムイオン二次電池用負極材では、電極密度が1.1〜1.7g/cmであることが好ましく、1.2〜1.7g/cmであることがより好ましく、1.3〜1.7g/cmであることがさらに好ましい。電極密度については、高いほど密着性が向上し、サイクル性も向上する傾向がある。
【0087】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、既述の本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いてなることを特徴とする。例えば、上記本発明のリチウムイオン二次電池用負極と正極とをセパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより構成することができる。
前記正極は、前記負極と同様にして、集電体表面上に正極層を形成することで得ることができる。この場合の集電体はアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
【0088】
前記正極層に用いる正極材料としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、または導電性高分子材料を用いればよく、特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、およびこれらの複酸化物(LiCoxNiyMnzO、x+y+z=1)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、リチウムバナジウム化合物、V、V13、VO、MnO、TiO、MoV、TiS、V、VS、MoS、MoS、Cr、Cr、オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。
【0089】
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウムイオン二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
【0090】
前記電解液としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単体もしくは2成分以上の混合物の非水系溶剤に溶解した、いわゆる有機電解液を使用することができる。
【0091】
本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群としたりし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。
【0092】
本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されないが、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池などとして使用される。
上述した本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、リチウムイオン二次電池用と記載したが、リチウムイオンを挿入脱離することを充放電機構とする電気化学装置全般、例えば、ハイブリッドキャパシタなどにも適用することが可能である。
【実施例】
【0093】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り「部」「%」は質量基準である。
【0094】
≪態様1≫
(合成例1)複合樹脂(A)の調製例
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)191gを仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、メチルメタクリレート(MMA)169g、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)11g、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)18gからなる混合物を、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で16時間撹拌し、トリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a2−1−1)を調製した。
【0095】
次いで、前記反応容器の温度を80℃に調整し、メチルトリメトキシシラン(MTMS)131g、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTS)226g、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)116gを、前記反応容器中へ添加した。
その後、「A−3」〔堺化学(株)製、iso−プロピルアシッドホスフェート〕6.3gと脱イオン水97gとの混合物を、5分間で滴下し、同温度で2時間撹拌することにより、加水分解縮合反応させ、反応生成物を得た。反応生成物を、H−NMRで分析したところ、前記ビニル重合体(a2−1−1)が有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。その後、前記反応生成物を、10〜300mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去することで、不揮発分が99.4%であるポリシロキサンセグメント(a1)とビニル重合体セグメント(a2)からなる複合樹脂(A1)を600g得た。
【0096】
(合成例2)
合成例1−1と同様の反応容器に、PTMS 250gを仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、MMA 169g、MPTS 11g、TBPEH 18gからなる混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した。その後、同温度で16時間撹拌し、トリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a2−1−2)を調製した。
【0097】
その後、前記反応容器の温度を80℃に調整し、MTMS 172g、APTS 113g、DMDMS 151gを、前記反応容器中へ添加した。その後、「A−3」 6.9gと脱イオン水 105gとの混合物を、5分間で滴下し、同温度で2時間撹拌することにより加水分解縮合反応させ、反応生成物を得た。反応生成物を、H−NMRを用いて分析したところ、前記ビニル重合体(a2−1−2)が有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。その後、前記反応生成物を、10〜300mmHgの減圧下に、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、BuAc 400gを添加することで、不揮発分が60.0質量%であるポリシロキサンセグメント(a1)とビニル重合体セグメント(a2)からなる複合樹脂(A2)の溶液 1000gを得た。
【0098】
(合成例3)
合成例1−1と同様の反応容器に、PTMS 164gを仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、MMA 226g、MPTS 14g、TBPEH 24gからなる混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した。その後、同温度で16時間撹拌し、トリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a2−1−3)を調製した。
【0099】
次いで、前記反応容器の温度を80℃に調整し、MTMS 113g、APTS 194g、DMDMS 99gを、前記反応容器中へ添加した。
その後、「A−3」 5.4gと脱イオン水 83gとの混合物を、5分間で滴下し、同温度で2時間撹拌することにより、加水分解縮合反応させ、反応生成物を得た。反応生成物を、H−NMRを用いて分析したところ、前記ビニル重合体(a2−1−3)が有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。その後、前記反応生成物を、10〜300mmHgの減圧下に、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、BuAc 400gを添加することで、不揮発分が59.8質量%であるポリシロキサンセグメント(a1)とビニル重合体セグメント(a2)からなる複合樹脂(A3)の溶液 1000gを得た。
【0100】
(合成例4)
合成例1と同様の反応容器に、PTMS 191gを仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、MMA 169g、MPTS 11g、TBPEH 18gからなる混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した。その後、同温度で16時間撹拌することにより、トリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a2−1−4)を調製した。
【0101】
次いで、前記反応容器の温度を80℃に調整し、MTMS 454g、DMDMS 116gを添加した。その後、「A−3」 8.4gと脱イオン水 134gとの混合物を、5分間で滴下し、同温度で2時間撹拌することにより、加水分解縮合反応させ、反応生成物を得た。反応生成物を、H−NMRを用いて分析したところ、前記ビニル重合体(a2−1−4)が有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。
その後、前記反応生成物を、10〜300mmHgの減圧下に、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、BuAc 400gを添加することで、不揮発分が60.1%である重合性二重結合を有さないポリシロキサンセグメント(a1)とビニル重合体セグメント(a2)からなる複合樹脂(A4)の溶液 1000gを得た。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
表1〜表3の脚注は以下の通りである。
「PTMS」:フェニルトリメトキシシラン
「MTMS」:メチルトリメトキシシラン
「DMDMS」:ジメチルジメトキシシラン
「APTS」:3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
「MPTS」:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
「MMA」:メチルメタクリレート
「TBPEH」:tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
「BuAc」:酢酸ブチル
【0106】
(実施例1−1)複合樹脂の焼成及びコインセルの作製
複合樹脂(A1)25部を、窒素雰囲気の焼成炉で、1000℃、1時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物のラマン測定(RENISHAW製顕微ラマン分光計)の結果、1593cm−1及び1335cm−1にピークが観測されることから、炭素の含有を確認した。
得られた焼成物1部、市販黒鉛9部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙製)を少量及び水12.5部を加えて自転公転ミキサーで混合した。市販SBRバインダー樹脂を少量加えて再度自転公転ミキサーで混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを銅箔上にアプリケーター(3MIL)で塗工、乾燥し、負極を得た。直径14mmで円形に打ち抜き、プレス(プレス油圧10MPa)し、評価用セル(B1-1)とした。
評価用コインセルは、CR2032型コインセルを用いた。上記負極と金属リチウムを25μmのポリプロピレン製セパレータを介して対向させ、電解液(キシダ化学、1mol/L LiPF6、炭酸ジエチル:炭酸エチレン=1:1(容積比))を注入して作製した。
続いて室温25℃で充放電試験を行った。0.1Cの定電流で0Vまで放電後、0Vの定電圧で電流値が20μAになるまで行った。また充電は、0.1Cの定電流で1.2Vまで行った。
【0107】
(実施例1−2)
複合樹脂(A1)の替わりに、溶剤留去後、複合樹脂(A2)を用いる他は、実施例1−1と同様にして、複合樹脂の焼成及び評価用セル(B1−2)の作製を行った。
【0108】
以下、同様にして、実施例1−3の作製(複合樹脂(A3)を使用して、評価用セル(B1−3)を作製)、実施例1−4の作製(複合樹脂(A4)を使用して、評価用セル(B1−4)を作製)を行った。
【0109】
(比較例1)
複合樹脂(A1)の替わりに、黒鉛を用いる他は、実施例1−1と同様にして、評価用セル(C1)を作製した結果を、表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
(実施例1−5)
実施例1−1と同様に複合樹脂(A1)を、窒素雰囲気の焼成炉で、1000℃、1時間焼成して焼成物を得た。続いて焼成物を、ジルコニア製ビーズを用いて2時間ビーズミル粉砕した。得られた粉砕物は平均粒子径2μm(D50、堀場製作所レーザー散乱式粒度分布計L910)であった。比表面積測定装置(島津製作所製、Tristar3000)を用いてBET比表面積を測定したところ、3m/gであった。得られた粉末8部、アセチレンブラック1部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙製)を少量及び水15部を加えて自転公転ミキサーで混合した。市販SBRバインダー樹脂を少量加えて再度自転公転ミキサーで混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを銅箔上にアプリケーター(3MIL)で塗工、乾燥し、負極を得た。直径14mmで円形に打ち抜き、プレス(プレス油圧10MPa)し、評価用セル(B1−5)とした。
【0112】
(実施例1−6)
複合樹脂(A1)の焼成を、1000℃、3時間で行った以外は実施例1−5と同様にして評価用セル(B1−6)を作製した。
得られた粉砕物の平均粒子径は2μmであり、BET比表面積は3m/gであった。平均粒子径及びBET比表面積の測定方法は実施例1−5と同様である。実施例1−5及び実施例1−6の結果を表5に示す。
前記実施例1−1〜実施例1−4においては、安定した電池特性を得るために黒鉛を9部使用しているが、実施例1−5及び実施例1−6においては、黒鉛を使用しておらず、本発明の活物質をより多く用いることにより安定した電池特性を維持しつつ、特に放電容量において良好な結果を得た。
【0113】
【表5】
【0114】
≪態様2−1≫
(実施例2−1)複合樹脂の焼成及び評価用コインセルの作製
市販シリコン粉末(関東金属、平均粒径2.9μm)25部、複合樹脂(A1)25 部及びメチルエチルケトン50部を混合、分散し、得られた分散物を、窒素雰囲気型のスプレードライヤー(大川原化工機製:CNL−3)を使用して造粒処理を行った。噴霧乾燥条件は、送液流量0.6kg/hr、噴霧ガス圧力 0.1MPa、熱風入口温度60℃とした。得られた造粒物を、窒素雰囲気の焼成炉で、1000℃、1時間焼成して複合粒子を得た。得られた複合粒子の平均粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所LA−910)で測定したところ、32μm(焼成前31μm)であった。
得られた焼成物のラマン測定(RENISHAW製顕微ラマン分光計)の結果、1593cm−1及び1335cm−1にピークが観測されることから、炭素の含有を確認した。
【0115】
得られた焼成物1部、市販黒鉛9部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙製)を少量及び水12.5部を加えて自転公転ミキサーで混合した。市販SBRバインダー樹脂を少量加えて再度自転公転ミキサーで混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを銅箔上にアプリケーター(3MIL)で塗工、乾燥し、負極を得た。直径14mmで円形に打ち抜き、プレス(プレス油圧10MPa)し、評価用セル(B2−1)とした。
【0116】
(実施例2−2)
複合樹脂(A1)の替わりに、複合樹脂(A2)を用いる他は、実施例2−1と同様にして、複合樹脂の焼成及び評価用セル(B2−2)の作製を行った。
【0117】
(実施例2−3)
以下、同様にして、実施例2−3の作製(複合樹脂(A3)を使用して、評価用セル(B2−3)を作製)を行った。
【0118】
(比較例2)
複合樹脂(A1)の替わりに、シリコンを用いる他は、実施例2−1と同様にして、評価用セル(C2)を作製した。結果を表6に示す。
【0119】
【表6】
【0120】
≪態様2−2≫
(実施例2−4)
複合樹脂(A1)50部及びメチルエチルケトン50部を混合、分散し、噴霧焼成装置(大川原化工機製 RH2)を使用して炭化した。噴霧熱分解条件は、炉内温度890℃、ノズルガス(窒素)圧力0.1MPaとした。得られた粉末8部、アセチレンブラック1部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙製)を少量及び水12.5部を加えて自転公転ミキサーで混合した。市販SBRバインダー樹脂を少量加えて再度自転公転ミキサーで混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを銅箔上にアプリケーター(3MIL)で塗工、乾燥し、負極を得た。直径14mmで円形に打ち抜き、プレス(プレス油圧10MPa)し、評価用セル(B2−4)とした。
【0121】
(実施例2−5)
実施例2−4と同様に噴霧熱分解物を得た後、窒素雰囲気下、1000℃で1時間再焼成し、コインセル作製を行い、評価用セル(B2−5)を得た。
実施例2−4及び実施例2−5は、前記実施例2−1〜実施例2−3に比して焼成プロセスを大幅に簡略化することができ、単位時間当たりの、活物質の生産性の飛躍的向上を可能とした。
さらに、評価用セルB2−4及び評価用セルB2−5は前記実施例2−1〜実施例2−3(評価用セルB2−1〜B2−3)と同様に高い容量を有し、良好なサイクル特性を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の複合樹脂を焼成して得られる非水性二次電池負極用活物質は、非水性二次電池負極として利用が可能であり、当該負極は、非水性二次電池に好ましく用いることができる。