特許第6269710号(P6269710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269710
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20180122BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20180122BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20180122BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20180122BHJP
   G02B 6/27 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   G02F1/03 505
   G02F1/035
   G02B6/32
   G02B6/12 363
   G02B6/27
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-70473(P2016-70473)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181859(P2017-181859A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−172630(JP,A)
【文献】 特開2015−169795(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/051096(WO,A1)
【文献】 特開2010−156842(JP,A)
【文献】 特開2012−203282(JP,A)
【文献】 特開2014−163993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0041574(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0237156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02B 6/12−6/14
G02B 6/27
G02B 6/32
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された光導波路で構成されるとともに2つの出力光をそれぞれ出射する第1の光変調素子及び第2の光変調素子と、
2つの前記光変調素子から出射される4つの前記出力光のそれぞれを受ける4つのレンズと、
前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光の一方と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光の一方と、の偏波を回転させる偏波回転素子と、
前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出力する第1の偏波合成素子と、
前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出力する第2の偏波合成素子と、
を備え、
前記4つのレンズからそれぞれ出射される光は、光路シフトプリズムを通過することなく、前記偏波回転素子、及び又は、前記第1及び第2の偏波合成素子に、直接に入射するよう構成されている、
光変調デバイス。
【請求項2】
前記偏波回転素子は、前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光の一方が通過する領域と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光の一方が通過する領域と、を含む一枚の光学素子として構成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2の偏波合成素子から出力される前記ビームの光路を、互いに離れる方向へそれぞれ移動させる第1及び第2の光路シフト素子を備える、
請求項1又は2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記第1の光変調素子と前記第2の光変調素子とは、前記出力光を並んで出射するように配され、且つ並んで出射される前記出力の方向に平行な線分に関して線対称な位置に配されており、さらに、
前記第1の偏波合成素子と前記第2の偏波合成素子とが、前記線分に関して線対称な位置に配されている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記4つのレンズと、前記偏波回転素子、及び又は第1及び第2の偏波合成素子と、の間に、光学媒質による平行平板で構成された光学部品が配されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記第1及び前記第2の光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項8】
前記4つの出射レンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の光ファイバから入射した光を光変調素子により変調して他の光ファイバから出射する光変調デバイスに関し、特に、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型の光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLNを用いた光変調素子では、LN基板上に例えばマッハツェンダ型光導波路が形成され、当該光導波路の近傍に形成された電極に高周波信号を印加することにより、当該高周波信号に応じた変調信号光(以下、変調光)が出力される。また、このような光変調素子を光伝送装置内で使用する場合には、光変調素子を収容した筺体と、光源からの光を光変調素子に入射する入射光ファイバと、光変調素子から出力される光を筺体外部へ導く出射光ファイバと、で構成される光変調デバイスが用いられる。
【0004】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏波光をそれぞれ位相偏移変調又は直交振幅変調して1本の光ファイバで伝送するDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QAM(Dual Polarization - Quadrature Amplitude Modulation)等、偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となりつつある。
【0005】
このようなDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調デバイスでは、一の光源から出力された直線偏波光を光変調素子に入射し、当該光変調素子において当該入射された直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれを独立な2つの高周波信号を用いて変調し、それらの変調された2つの直線偏波変調光を偏波合成して一つの光ファイバに結合させて出力する。
【0006】
一方、光伝送システムの伝送容量を更に増加させるためには、例えば互いに異なる波長を持つ複数の光に対しそれぞれDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行った後、変調された異なる波長を持つ複数の光を波長合成器により一つの光ビームにまとめて一本の光ファイバにより伝送する、波長多重システムが考えられる。このような、複数の光をそれぞれ変調して一本の光ファイバにより伝送する光伝送装置では、当該装置の小型化等の観点から、一つの筺体内に複数の光変調素子(又は複数の光変調素子を一つのLN基板上に形成した集積型光変調素子)を備えて、複数の入力光をそれぞれ変調して複数の変調光を出力する集積型の光変調デバイスが望ましい。
【0007】
この場合、複数の光変調素子からそれぞれ2つずつ出射される光(直線偏波光)を偏波合成するための偏波合成器や、当該偏波合成器を出射したビームを光ファイバに結合させるレンズ等の光学部品を設けるスペースを確保する必要性から、一の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、の間の距離を拡げる必要がある。
【0008】
このような集積型の光変調デバイスとして、従来、2つの光変調素子を備え、一の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、の間の距離を、2つの光路シフトプリズム(光路を平行移動させるためのプリズム)により拡げた後、それぞれの2つの直線偏波光を偏波合成プリズム等により偏波合成して、それぞれ1本の光ファイバにより筺体外へ出力させる集積型の光変調デバイスが知られている(特許文献1)。
【0009】
この光変調デバイスでは、2つの光変調素子から2つの光路シフトプリズムまでの距離を互いに異ならせることで、上記2つの光路シフトプリズムが互いに接触すること等による光学部品の損傷が防止される。
【0010】
しかしながら、光変調デバイスを構成する場合、光変調素子と出射光ファイバとの間の光結合効率の向上の観点、及び当該光結合効率の温度変動や経年変化の安定化の観点、並びにデバイスサイズの小型化やデバイスコストの低減の観点からは、光路内に挿入する光学部品の数を極力減らすことが望ましい。
【0011】
すなわち、上記従来の集積型光変調デバイスは、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015−172630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型光変調デバイスにおいて、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から更なる改善を図ることのできる構成の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、2つの出力光をそれぞれ出射する第1の光変調素子及び第2の光変調素子と、2つの前記光変調素子から出射される4つの前記出力光のそれぞれを受ける4つのレンズと、前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光の一方と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光の一方と、の偏波を回転させる偏波回転素子と、前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出力する第1の偏波合成素子と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出力する第2の偏波合成素子と、を備える光変調デバイスであり、前記4つのレンズからそれぞれ出射される光は、光路シフトプリズムを通過することなく、前記偏波回転素子、及び又は、前記第1及び第2の偏波合成素子に、直接に入射するよう構成されている。
本発明の他の態様によると、前記偏波回転素子は、前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光の一方が通過する領域と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光の一方が通過する領域と、を含む一枚の光学素子として構成されている。
本発明の他の態様によると、前記第1及び第2の偏波合成素子から出力される前記ビームの光路を、互いに離れる方向へそれぞれ移動させる第1及び第2の光路シフト素子を備える。
本発明の他の態様によると、前記第1の光変調素子と前記第2の光変調素子とは、前記出力光を並んで出射するように配され、且つ並んで出射される前記出力の方向に平行な線分に関して線対称な位置に配されており、さらに、前記第1の偏波合成素子と前記第2の偏波合成素子とが、前記線分に関して線対称な位置に配されている。
本発明の他の態様によると、前記4つのレンズと、前記偏波回転素子、及び又は第1及び第2の偏波合成素子と、の間に、光学媒質による平行平板で構成された光学部品が配されている。
本発明の他の態様によると、前記第1及び前記第2の光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である。
本発明の他の態様によると、前記第1及び前記第2の光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている。
本発明の他の態様によると、前記4つの出射レンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。
図2図1に示す光変調デバイスにおける、マイクロレンズアレイ周辺の部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。本光変調デバイス100は、光変調器102と、光変調器102に光源(不図示)からの光を入射する光ファイバである入射光ファイバ104a、104bと、マイクロレンズアレイ106と、半波長板108と、偏波合成プリズム110a、110bと、光路シフトプリズム112a、112bと、結合レンズ114a、114bと、出射光ファイバ116a、116bと、筺体118と、を有する。
【0017】
入射光ファイバ104a、104bは、それぞれ、2つの光源(不図示)からの、例えば互いに異なる波長を有する直線偏波光を、光変調器102に入射する。
【0018】
光変調器102は、一枚のLN基板上に形成された、光導波路で構成される2つの光変調素子120a、120bを有する。これらの光変調素子120a、120bは、例えばDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調素子である。
【0019】
光変調素子120a、120bは、図1に示すように、出力光が並んで出射されるように配されている。すなわち、図1において、光変調素子120a、120bは、光変調素子120a、120bのすべての出力光が、光変調器102の図示左側の端面170から図示左方向に、図示上下方向に並んで出射されるように、配されている。また。本実施形態では、光変調素子120a、120bは、上記並んで出射される出力光の方向に平行な線分180に関して線対称な位置に配されている。
【0020】
なお、本実施形態では、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bから出射される全ての出力光が図1の図示上下方向に直線状に並んで出射されるように配されているが、これに限らず、「並んで」出射される限りにおいて、光変調素子120a、120bの出射光が互いに任意の位置関係を持つように配されるものとすることができる。例えば、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bのそれぞれの光の出射端面(図1の図示左側端面)が図1の図示左右方向に所定距離だけ互いにずれて配されていても良い。また、例えば、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bからのそれぞれの光の出射点が、当該光変調素子120a、120bの基板厚さ方向(図1の紙面に垂直な方向)においてそれぞれ互いに異なる位置にあるように構成されていても良い。
【0021】
光変調素子120aは、第1の光変調素子であり、入射光ファイバ104aから入射される直線偏波光は2つの光に分岐され、それぞれ異なる電気信号により変調されたのち、それぞれ出射導波路130a、132aから出力する。また、光変調素子120bは、第2の光変調素子であり、入射光ファイバ104bから入射される直線偏波光は2つの光に分岐され、それぞれ異なる信号により変調されたのち、それぞれ出射導波路130b、132bから出力する。
【0022】
光変調器102の光出射側の基板端面170(出射導波路130a、132a、130b、132bが形成されている側(すなわち、図示左側)の基板端面)には、4つの出射レンズであるマイクロレンズ140a、142a、140b、142bが一体に形成されたマイクロレンズアレイ106が配されている。
【0023】
光変調素子120aの出射導波路130a、132aから出力される光はマイクロレンズ140a、142aに入射し、光変調素子120bの出射導波路130b、132bから出力される光はマイクロレンズ140b、142bに入射する。マイクロレンズ140a、142a、140b、142bに入射した光は、それぞれ、例えばコリメートされて平行光(コリメート光)となり出力される。
【0024】
そして、光変調素子120aから出力される一方の出力光である出射導波路132aから出力された光と、光変調素子120bから出力される一方の出力光である出射導波路132bから出力された光と、は、それぞれマイクロレンズ142a及び142bを通過した後、共に半波長板108に入射する。
【0025】
半波長板108は、偏波回転素子であり、当該半波長板108に入射した上記2つの直線偏波光である出力光は、当該半波長板108を通過する際に、それぞれの偏波が90度回転される。なお、本説明において半波長板108は2つの出力光に対して共用となるよう1枚としたが、2つの出力光に対してそれぞれ個別に1枚ずつ配置してもよい。但し、半波長板108は2つの出力光に対して共用となるよう1枚とした方が、部品点数の削減、組立工数の削減及び信頼性を向上することができる。
【0026】
これにより、光変調素子120aから出力される一方の出力光である出射導波路132aから出力された光と、他方の出力光である出射導波路130aから出力された光は、偏波方向が互いに直交する直線偏波光となって、偏波合成プリズム110aに入射することとなる。同様に、光変調素子120bから出力される一方の出力光である出射導波路132bから出力された光と、他方の出力光である出射導波路130bから出力された光は、偏波方向が互いに直交する直線偏波光となって、偏波合成プリズム110bに入射することとなる。
【0027】
ここで、入射光ファイバ104a、104bからそれぞれ入射する光の波長が互いに異なることにより、光変調素子120aの出射導波路132aから出力された光の波長と、光変調素子120bの出射導波路132bから出力された光の波長と、が互いに異なる場合(であって、且つそうすることが必要な場合)には、半波長板108のうち、光変調素子120aの出射導波路132aから出力された光が通る領域の光学的厚さと、光変調素子120bの出射導波路132bから出力された光が通る領域の光学的厚さと、をそれらの波長に応じた相異なる厚さとしてもよい。
【0028】
半波長板108は、例えば、当該半波長板108を構成する光変調素子120aの出射導波路132aから出力された光が通る領域と、光変調素子120bの出射導波路132bから出力された光が通る領域とが、線分180に関して線対称となるように配置される。各領域を有する半波長板108は1枚の半波長板で構成してもよい。また各領域を有する半波長板をそれぞれ作製し、それらを個別に配置する構成としてもよいし、それらを1つに組み合わせた構成としてもよい。
【0029】
偏波合成プリズム110aは、第1の偏波合成素子であり、前記光変調素子120aから出射して偏光方向が互いに直交することとなった2つの直線偏波光を一つのビームに合成して出力する。また、偏波合成プリズム110bは、第2の偏波合成素子であり、前記光変調素子120bから出射して偏光方向が互いに直交することとなった2つの直線偏波光を一つの光ビームに合成して出力する。
【0030】
また、偏波合成プリズム110は、例えば、偏波合成プリズム110a、110bが線分180に関して線対称となるように配置される。
【0031】
光路シフトプリズム112a及び112bは、それぞれ第1及び第2の光路シフト素子であり、偏波合成プリズム110a及び110bからそれぞれ出力された光ビームの光路を、互いに離れる方向(図1に示す実施形態においては、図示上下方向に離れる方向)へシフトさせる。
【0032】
光路シフトプリズム112aから出力された光は、結合レンズ114aを介して出射光ファイバ116aに入射して、筺体118の外部へ導かれる。同様に、光路シフトプリズム112bから出力された光は、結合レンズ114bを介して出射光ファイバ116bに入射して、筺体118の外部へ導かれる。
【0033】
これにより、入射光ファイバ104aから入射した光は、光変調素子120aで変調された後、半波長板108と偏波合成プリズム110aにより偏波合成されて、出射光ファイバ116aから出射されこととなる。また、同様に、入射光ファイバ104bから入射した光は、光変調素子120bで変調された後、半波長板108と偏波合成プリズム110bにより偏波合成されて、出射光ファイバ116bから出射されこととなる。
【0034】
上記光路シフトプリズム112a及び112b、結合レンズ114a及び114b、並びに出射光ファイバ116a及び116bは、それぞれ、例えば上記線分180に関して互いに線対称となるように配されている。
【0035】
特に、本実施形態に係る光変調デバイス100では、光変調素子120a、120bからそれぞれ2つずつ出力される直線偏波光は、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bを通過した直後に(すなわち、光路シフトプリズムなどの、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bと半波長板108及び又は偏波合成プリズム110a、110bとの間の光学距離(又は光路長)を大きく延長するような他の光学部品を通過することなく)、まず半波長板108及び又は偏波合成プリズム110a、110bを通過して、それぞれ一つの光ビームに合成される。このため、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bの焦点距離が短く、当該マイクロレンズ140a、142a、140b、142bからそれぞれガウスビームとして出射される4つの光ビームの発散角が大きい場合でも、それら4つの光ビームが伝搬して互いに重なり始める前に、確実に偏波合成を行って2つのビーム(すなわち、それぞれ偏波合成されたビーム)を生成するものとすることができる。
【0036】
一般に、光変調素子から出射した光は、レンズによりコリメートされ(平行光になり)出力される。平行光は一定のビーム径を有したガウスビーム(ガウシァンビーム)であり、理想的には一定のビーム径を保持したまま遠くまで伝搬することができる。しかし通常、平行光はビームの径が最も細くなる部分(ビームウェスト)を有している。つまりレンズから出力された平行光のビーム径は徐々に小さくなり、前記ビームウェストで最小となり、その後は徐々に大きくなる(発散する)という性質を有している。これは光変調素子から出力される光が一定の面積を有した点光源であること及び前記直線偏波光が回折することなどに起因するものである。
【0037】
したがって、光変調素子120a、120bからそれぞれ2つずつ出力されてマイクロレンズ140a、142a、140b、142bによりそれぞれコリメートされたガウスビームは、それぞれ上記のように発散し、所望の距離を伝搬した位置で、その一部が互いに重なりあい始めることとなる。
【0038】
図2(a)及び図2(b)は、それぞれ図1に示す光変調デバイス100のマイクロレンズアレイ106周辺の部分詳細図を示している。特に、図2(a)は、図1に示す光変調デバイス100の光変調素子120a、120bから出射した4つの光が、それぞれ4つのマイクロレンズ140a、142a、140b、142bでコリメートされて直進した場合に、互いに重なり合うこととなる様子を模式的に示している。尚、図2(a)においてはコリメート光が発散することを図示する便宜上、コリメート光の発散角度は実際より大きく表している。
【0039】
光変調素子120a、120bの出射導波路130a、132a、132b、130bから出射して4つのマイクロレンズ140a、142a、142b、140bによりコリメートされたそれぞれのコリメート光200a、202a、202b、200bは、ガウシアン形状を維持したままマイクロレンズ140a、142a、142b、140bからそれぞれ出射する。
【0040】
コリメート光200a、202a、202b、200bは、マイクロレンズ140a、142a、142b、140bから出射して、或る距離を伝搬した位置210において、それぞれビーム直径が最小値となるビームウェストを持つ。このビームウェスト位置210を越えると、コリメート光200a、202a、202b、200bは、それぞれ発散角θによりビーム径を広げながら図示左方へ伝搬し、位置212において隣接する互いのビームの一部が重なり始める。図2(a)においては、このビーム重なり開始位置212より図示左側に、マイクロレンズ140a、142aから出射したコリメート光200a、202aの一部が互いに重なる領域を、符号220を付したハッチング領域で示している。また、マイクロレンズ142a、142bから出射したコリメート光202a、202bの一部が互いに重なる領域を、符号222を付したハッチング領域で、また、マイクロレンズ142b、140bから出射したコリメート光202b、200bの一部が互いに重なる領域を、符号224を付したハッチング領域で、示している。
【0041】
通常、偏波合成プリズムは、一の光学面に偏波合成膜を備え、互いに独立に(重なり合うことなく)伝搬する直交する2つの直線偏波光を、それぞれ当該偏波合成膜の一方の面及び他方の面から入射させ、一方の直線偏波光が偏波合成膜を透過し、他方の直線偏波光が偏波合成膜を反射することにより、当該透過及び反射した光が一つのビーム(偏波合成されたビーム)となるように構成される。
【0042】
互いに直交する偏光方向を持つ2つの直線偏波光の一部が重なり合っていた場合、当該重なり部分は、偏波合成プリズムを構成する偏波合成膜のいずれか一方の面から入射することとなる。つまり、偏波合成膜のそれぞれの面には偏波合成に不要な偏波方向を有する直線偏波光が入射することとなる。偏波合成に不要な偏波方向を有する直線偏波光は所望の方向に偏波合成されない(偏波合成されたビームの光軸から外れる)ため損失となる。
【0043】
本実施形態に係る光変調デバイス100では、図2(b)に示すように、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bからそれぞれ出射した光が、当該光の光路長を大きく延長するような光路シフトプリズムなどの他の光学部品を通過することなく、まず半波長板108及び又は偏波合成プリズム110a、110bに直接入射するように構成される。ここで、「光路シフトプリズム」とは、光路を、当該光路に対し直交する方向へ移動させるプリズム(すなわち、周囲よりも屈折率の高いガラス等の透明媒質で構成された多面体)をいう。
【0044】
これにより、マイクロレンズ140a、142a、142b、140bからそれぞれコリメート光として出射される光が当該コリメート光の発散角により互いに重なり始めることとなる位置212と、当該4つのマイクロレンズ140a、142a、142b、140bが配された位置と、の間に、半波長板108及び偏波合成プリズム110a、110bを配することができる。
【0045】
このため、本実施形態の光変調デバイス100では、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bから出力されるコリメート光の発散角が大きい場合でも、ビーム間の重なり合いを生じさせることなく、損失の少ない偏波合成を行って、入射光ファイバ104a、104bから出射光ファイバ116a、116bまでの光損失を低減することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bと、半波長板108及び又は偏波合成プリズム110a、110bとの間の空間には、光路シフトプリズム等の他の光学部品を配置しない構成したが、これに限らず、当該空間における光路長を大きく延長しない限りにおいて、例えば光路シフトプリズム以外の他の光学部品、例えばガラス等の光学媒質の平行平板(すなわち、オモテ面及びウラ面が互いに平行である板)で構成される光学部品を当該空間内に挿入してもよい。このような平行平板で構成される光学部品は、例えば当該平行平板の面上に誘電体多層膜(無反射コートや、フィルタ膜(例えば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ)など)を設けた、光路長調整素子や波長フィルタ素子であり得る。
【0047】
また、本実施形態の光変調デバイス100では、マイクロレンズ142a、142bから互いに隣接してそれぞれ出射した出力光は、光路シフトプリズム等により互いの間隔が広げられる前に、半波長板108に入射されるので、一つの光学素子としての半波長板108を用いて2つの光の波長を回転させることができる。このため、出力光毎に半波長板を設ける構成に比べて光学素子の数を減らすことができ、光学系の安定性を向上(例えば温度変動等を低減)すると共に、組立工数を低減することができる。
【0048】
また、光路シフトプリズム112a、112bにより、偏波合成プリズム110a、110bから出射した光の光路を、互いに離れる方向へシフトさせるので、マイクロレンズ140a、142a、140b、142bの焦点距離が小さく、コリメート光発散角が大きくなって、結合レンズ114a、114bに至る光のビーム径が大きくなる場合でも、当該ビーム径に応じた開口面積(又は受光面積)の大きい結合レンズ114a、114bを配置するスペースを確保することができ、設計自由度を大きくすることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の光変調デバイス100では、光変調素子120aと光変調素子120bとが、光変調素子120a、120bの出射光の方向に平行な線分180に関して線対称な位置に配されており、且つ、偏波合成プリズム110a及び110bも、当該線分180に関して線対称な位置に配されている。
【0050】
このため、例えば偏波合成プリズム110a、110bを、線対称な形状を有する一つの光学素子として構成することもできる。この場合には、筺体118内で用いる光学素子の数を更に減らして、光学系の安定性を高めると共に、組立工数を更に低減することができる。
【0051】
また、本実施形態の光変調デバイス100では、光路シフトプリズム112a、112b、並びに、結合レンズ114a,114b、及び出射光ファイバ116a、116bも、線分180に関して互いに対称な位置に配されている。
【0052】
これにより、入射光ファイバ104aから出射光ファイバ116aまでの光学系と、入射光ファイバ104bから出射光ファイバ116bまでの光学系と、が線分180に関して互いに対称となっている。
【0053】
一般に、図1に示す筺体118のような矩形筺体は、環境温度変動時に発生する歪が幾何学的に略対称性を有することから、上記のように、入射光ファイバ104aから出射光ファイバ116aまでの光学系と、入射光ファイバ104bから出射光ファイバ116bまでの光学系と、を線分180に関して互いに対称に配置することで、環境温度変動時におけるそれぞれの光学系での光学素子の位置ずれ量や環境温度変動時に発生する各光学部品の歪に伴う屈折率変化や光変調デバイスの動作点シフトなどの特性変化を互いに同程度のものとすることができる。
【0054】
その結果、例えば波長多重伝送システムの2つの波長チャネルを構成する2つの光を光変調デバイス100を用いて変調する場合には、入射光ファイバ104aから出射光ファイバ116aに至るまでの光損失(通過損失又は挿入損失。以下同じ。)と、入射光ファイバ104bから出射光ファイバ116bに至るまでの光損失の、環境温度変動に伴う変動を同程度のものとして、環境温度変動に伴う上記波長チャネル間の損失差の発生又は増大化を防止し(従って、上記波長多重システムにおける波長チャネル間での送信光のレベル差の発生又は増大化を防止し)、チャネル相互間における伝送品質の格差が発生又は増大してしまうのを防止することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、光変調器として、2つの光変調素子120a、120bが一枚の基板上に形成された1つの光変調器102を用いるものとしたが、これに限らず、個別の基板上に形成された1つの光変調素子で構成される光変調器を2つ用いるものとしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、偏波合成プリズム110a、110bを用いて偏波合成を行うものとしたが、これに限らず、同一方向に偏光した2つの直線偏波光を偏波合成できる限りにおいて、例えば偏波合成プリズムに代えて複屈折性結晶を用いる等、任意の構成を用いて偏波合成を行うものとすることができる。
【符号の説明】
【0057】
100・・・光変調デバイス、102・・・光変調器、104a、104b・・・入射光ファイバ、106・・・マイクロレンズアレイ、108・・・半波長板、110a、110b・・・偏波合成プリズム、112a、112b・・・光路シフトプリズム、114a、114b・・・結合レンズ、116a、116b・・・出射光ファイバ、118・・・筺体、120a、120b・・・光変調素子、130a、132a、130b、132b・・・出射導波路、140a、142a、140b、142b・・・マイクロレンズ、170・・・基板端面。
図1
図2