(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の基材と、前記第2の基材とは、樹脂フィルム上に配置された金属酸化物の蒸着層を有し、前記第1の基材の蒸着層と、前記第2の基材の蒸着層とが対向して配置されていることを特徴とする請求項9に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の2液硬化型組成物は、分子内に枝分かれ単位を導入するためのモノマーと、分子末端に第1の官能基を導入するためのモノマーとから得られる第1剤と、第1の官能基と反応可能な第2の官能基を備える第2剤と、を含み、第1剤の枝分かれ係数が1/f以上であり、第1の官能基に対する第2の官能基の当量比が、第1の官能基数が余剰となるような割合(第1の官能基に対する第2の官能基の当量比が1未満)で混合して用いられる。ここでfとは、第1剤の分子内に枝分かれ単位導入するためのモノマーのうち最も官能基数が大きいモノマーが備える官能基数である。簡便のため、以下では第1の官能基に対する第2の官能基の当量比を単に(第2の官能基/第1の官能基)比ともいう。以下、本発明の2液硬化型組成物、これを用いた2液型接着剤、2液型コーティング剤、積層体について説明する。
【0018】
<2液硬化型組成物>
まず、主として2液型接着剤に好適に用いることができる2液硬化型組成物を例に挙げて説明する。2液型コーティング剤に適した2液硬化型組成物については後述する。
(第1剤)
本明細書において第1剤とは、後述する第2剤と比較して反応性が低い方の剤をいう。本発明の第1剤は、分岐構造の末端に第1の官能基を備え、枝分かれ係数αの値が1/f以上であって、後述する第2剤と反応して所望の接着力を発現させうるものであれば特に限定はされない。主骨格としてポリエステル構造、ポリエステルポリウレタン構造、ポリエーテル構造、ポリエーテルポリオール構造を有し、末端にヒドロキシル基を備える樹脂が好ましく用いられる。樹脂の末端に導入されたヒドロキシル基は、特許請求の範囲における第1の官能基の一例である。
【0019】
まず、枝分かれ係数αについて、下記式(1)に示すような分子内に官能基Xを2つ備える化合物と、下記式(2)に示すような分子内に官能基Xと反応可能な官能基Yを2つ備える化合物と、下記式(3)に示すような分子内に官能基Xを3つ備える化合物の、3成分系縮重合で得られた高分子を例に挙げて説明する。このような高分子は、下記式(4)に示すような枝分かれ構造を備えることが期待される。
【0022】
上記式(4)で示した構造では、枝分かれ単位(上記式(3)に由来する構造、例えば(a))が3個含まれている。このような枝分かれ単位にはさまれた部分(例えば(b))や枝分かれ単位と未反応の末端基の間の部分(例えば(c))を鎖としたとき、枝分かれ係数αは、両端が枝分かれ単位と結合している鎖の数が鎖の総数に占める比率と定義される。換言すれば、枝分かれ係数αは1つの枝分かれ単位から出た鎖が次の枝分かれ点と結合している確率である。
【0023】
両端が枝分かれ単位と結合した鎖は下記式(5)のように表される。
【0024】
【化3】
(上記式(5)中、nは0以上の整数を表す。)
【0025】
ここで、反応系に存在する全官能基Xのうち枝分かれ単位に属するXの割合をρとすると、枝分かれ単位に属さない(X−Xに属する)Xの割合は(1−ρ)となる。また、官能基Xが官能基Yと反応する確率をp
X、YがXと反応する確率をp
Yとすると、官能基YがX−Xに属する官能基Xと反応する確立はp
Y(1−ρ)、枝分かれ単位に属するXと反応する確立はp
Yρとなる。従って上記式(5)のような鎖が生成する確率は、n=1の場合はp
Xp
Y(1−ρ)p
Xp
Yρとなり、これを一般化するとp
X〔p
Xp
Y(1−ρ)〕
np
Xp
Yρとなる。nは0から任意の数を取りえることから、これらの和である枝分かれ係数αは下記式(6)で表される。
【0027】
反応前に存在していたXとYの比をγとすると、p
X=γp
Yであるので、式(6)に代入して下記式(7)または(8)が得られる。
【0028】
【数2】
反応系のρおよびγは既知であるので、p
Xまたはp
Yを測定することでαを求めることができる。
【0029】
p
Xやp
Yは系中に存在する官能基XやYの残量を測定することにより求めることができる。例えば官能基Xがカルボキシル基である場合、系中に残存するカルボキシル基の量は、JIS−K0070に記載の酸価測定方法によって測定することができる。反応前に存在したカルボキシル基の量は既知であるので、カルボキシル基が官能基Yと反応した確率p
COOHは下記式(9)となる。
【0031】
なお、上記では分子内に官能基Xを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xと反応可能な官能基Yを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xを3つ備える化合物の、3成分系縮重合を例に挙げて説明したが、
分子内に官能基Xを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xと反応可能な官能基Yを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xを4つ備える化合物の3成分系での重合;
分子内に官能基Xを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xと反応可能な官能基Yを2つ備える化合物と、分子内に官能基Xを3つ備える化合物と、分子内に官能基Yを3つ備える化合物の4成分系での重合;
その他の組み合わせによる重合;
についても同様の手法で枝分かれ係数を求めることができる。
【0032】
本発明の第1剤は、枝分かれ係数αが1/f以上であるものが用いられる。fは第1剤を合成する際に用いられる最も官能基数が多い化合物が備える官能基数である。
例えば3官能の多価カルボン酸と2官能の多価アルコールとからポリエステルポリオールを得て第1剤とする場合fは3であるので、枝分かれ係数αは0.33以上となるよう調整して第1剤とする。また、4官能の多価カルボン酸と3官能の多価アルコールとを含む複数の化合物からポリエステルポリオール得る際に、複数の化合物中で最も多くの官能基を備える化合物が4価の多価カルボン酸である場合にはfは4である。よって枝分かれ係数が0.25以上となるよう調整して第1剤とする。
第1剤として枝分かれ係数αが1/f以上のものを用いることにより、後述する第2剤と反応させる際に(第2の官能基/第1の官能基)比を1未満としても、接着力に優れた接着剤とすることができる。
【0033】
さらに、第1剤は枝分かれ係数αが下記式(10)で表される枝分かれ係数の臨界値αc以上のものを用いることがより好ましい。
【0035】
例えば3官能の多価カルボン酸と2官能の多価アルコールとからポリエステルポリオールを得る場合、枝分かれ係数の臨界値αcは0.5である。また、4官能の多価カルボン酸と3官能の多価アルコールとを含む複数の化合物からポリエステルポリオール得る際に、複数の化合物中で最も多くの官能基を備える化合物が4価の多価カルボン酸である場合には枝分かれ係数の臨界値αcは約0.33である。
【0036】
枝分かれ係数の臨界値αcは理論上高分子のゲル化が起こるとされる値であるが、実際にはゲル化点での枝分かれ係数αは臨界値αcよりも大きい。第1剤として枝分かれ係数αが臨界値αcに近いものを用いることにより、後述する第2剤と反応させる際に(第2の官能基/第1の官能基)比を1未満としても、さらに接着力に優れた接着剤とすることができる。
【0037】
枝分かれ係数αの上限は特に制限されず、第1剤がゲル化しない程度であれば問題なく用いることができるが、一例として0.6以下であることが好ましい。例外はあるものの、第1剤の枝分かれ係数αが0.6を越えるとゲル化したり、長期的な保存安定性が低下したりする場合がある。
【0038】
本発明の第1剤は、分子内に枝分かれ単位を導入するためのモノマー(A)、分子末端に後述する第2剤が備える官能基(第2の官能基)との反応性を備える官能基(第1の官能基)を導入するためのモノマー(B)を必須成分とし、必要に応じて枝分かれ単位間および枝分かれ単位と分子末端との間の鎖を伸長するためのモノマー(C)を含むモノマー混合物を重合させて得られる。モノマー(A)が備える官能基数や、モノマー混合物中におけるモノマー(A)、(B)、(C)の割合は、第1剤の枝分かれ係数αが所望の値となるよう適宜調整される。
【0039】
分子内に枝分かれ単位導入するためのモノマー(A)としては、3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン等が挙げられる。モノマー(B)は分子末端の少なくとも一方にヒドロキシル基を備え、多端にはモノマー(A)またはモノマー(C)と反応可能な官能基を備えるものであればよく、ジオール、アミノアルコール、ヒドロキシ酸などが挙げられる。モノマー(C)としてはジオール、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、ジイソシアネート等が挙げられ、これらは適宜組み合わせて用いられる。なお、モノマー(B)、モノマー(C)の組み合わせによってはモノマー(A)はモノマー(B)としても機能する。モノマー(A)、モノマー(C)の組み合わせによっては、モノマー(B)はモノマー(C)としても機能する。
【0040】
例えば第1剤としてポリエステルポリオールを得る場合、モノマー(A)として3官能以上の多価カルボン酸を用い、モノマー(B)としてジオールやヒドロキシ酸を用い、モノマー(C)としてジオールやジカルボン酸、ヒドロキシ酸を用いることや、モノマー(A)として3官能以上の多価アルコールを用い、モノマー(B)としてジオールやヒドロキシ酸を用い、モノマー(C)としてジカルボン酸やジオール、ヒドロキシ酸を用いること等が考えられる。このとき、3官能以上の多価アルコールが第1剤の末端に導入された場合には、モノマー(A)はモノマー(B)としての役割を兼ねる。ジオールやヒドロキシ酸はモノマー(B)とモノマー(C)の役割を兼ねる。
【0041】
あるいは第1剤としてポリウレタンポリオールを得る場合、モノマー(A)として3官能の多価イソシアネートを用い、モノマー(B)としてジオールを用い、モノマー(C)としてジイソシアネートとジオールを併用することや、モノマー(A)として3価以上の多価アルコールを用い、モノマー(B)としてジオールを用い、モノマー(C)としてジイソシアネートとジオールを併用することなどが考えられる。
【0042】
このようなモノマー(A)、(B)、(C)としては公知のものを特に制限なく用いることができる。
分子内に枝分かれ単位を導入するためのモノマー(A)として用いることができる3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、トリグリセリン、トリペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール;
シクロヘキサントリオール等の脂環族多価アルコール;
キシロース、アラビノース、リブロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、エリトリット、トレイット、アラビット、リビット、キシリット、ソルビット、マンニット、シュクロース等の糖類;等が挙げられる。
【0043】
3官能以上の多価カルボン酸としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、メソ−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物等の脂環族多価カルボン酸;
ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタリンテトラカルボン酸及びこれらの無水物等の芳香族多価カルボン酸;等が挙げられる。
【0044】
3官能以上の多価イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の過剰量と、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、トリエタノールアミン等の低分子活水素化合物およびそのアルキレンオキサイド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物とを反応させて得られるアダクト体等が挙げられる。
【0045】
さらに、モノマー(A)は3以上の官能基を持つ化合物であればそれらの官能基は上記で例示した化合物のように同種でなくてもよい。例えば、同一分子内にヒドロキシル基とカルボキシル基を合わせて3以上備えるような化合物を用いることができる。
モノマー(A)は上記で例示したようなものを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
分子末端に後述する第2剤が備える官能基(第2の官能基)との反応性を備える官能基(第1の官能基)を導入するためのモノマー(B)として用いることができるジオールとしては、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;
1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−(ジ)ヒドロキシナフタレン等の芳香族ジオール;等が挙げられる。
【0047】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等のモノアルカノールアミンが挙げられる。
ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、リシノール酸等の脂肪族ヒドロキシ酸;
o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フロレト酸、クマル酸等の芳香族ヒドロキシ酸;等が挙げられる。
モノマー(B)は上記で例示したようなものを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記で例示したモノマー(B)は、枝分かれ単位間および枝分かれ単位と分子末端との間の鎖を伸長するためのモノマー(C)としても用いることができる。さらに、モノマー(C)としては、以下に例示するジカルボン酸、ジイソシアネート等の同一分子内に同種の官能基を2つ備える2官能の化合物を用いることができる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;
無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸;
1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸およびこれらの無水物等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。
【0049】
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
また、モノマー(C)は上記で例示したようなものを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
さらに、第1剤が芳香族骨格、中でもオルト配位のフタル酸骨格と炭素数が4以下であるアルキル直鎖化合物を主成分として含有する場合には、接着層にガスバリア性を付与することもできる。
このとき好ましく用いられるモノマー(A)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ピロメリット酸、トリメリット酸及びこれらの酸無水物が例示される。
モノマー(B)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼンのほか、モノエタノールアミン、グリコール酸、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコールが例示される。
モノマー(C)としては、モノマー(B)として例示した化合物に加えてオルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸が例示される。
【0051】
このようなモノマー(A)、(B)、(C)から得られる第1剤を用いて接着層にガスバリア性を持たせる場合、架橋点密度が高くなること、長鎖アルキル骨格やエーテル骨格等の柔軟性をもつ骨格が無いか、あるいはその割合が極めて少なくなることなどから接着層の弾性率が高くなる傾向にある。こうした場合に第1剤と第2剤とを従来の2液型接着剤と同様の(第2の官能基/第1の官能基)比、例えば1.5〜2.5となるよう混合して用いた場合、架橋密度が高すぎるためにアンカー(投錨)効果が弱くなり、接着剤としての機能が損なわれる場合がある。しかし、第1剤の枝分かれ係数αを1/f以上とし、(第2の官能基/第1の官能基)比が1未満となるようにして第2剤と混合することにより、接着層を確実に硬化させつつ第2剤に起因する架橋点密度を低くできる。このようにして形成された接着層は柔軟性が損なわれず高い接着強度とガスバリア性を備えたものとなる。
【0052】
第1剤の酸価は、0.1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であることがより好ましい。このような樹脂は、エステル化していない未反応の酸成分が少ないため、溶液保管中における経時加水分解が抑制されるため貯蔵安定性に優れたものとなる。
また、水酸基価は40mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが好ましく、50mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であることがより好ましい。このような樹脂は、第2剤と混合後の粘度安定性に優れたものとなる。
【0053】
第1剤の数平均分子量は、600以上3000以下であることが好ましく、600以上2000以下であることがより好ましく、700以上1500以下であることがさらに好ましい。これにより、溶剤への溶解性、フィルムへの塗工適性、ラミネート適性に優れたものとなる。
【0054】
第1剤は、その種類に応じて選択された公知の添加剤を併用することができる。一例として、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、エポキシ樹脂等の接着促進剤が挙げられる。また、塗工ラミネートの時の塗工面を平滑にするために、各種レベリング剤を添加しても良い。
【0055】
(第2剤)
本明細書において第2剤とは、第1剤と比較して反応性が高い方の剤とする。本発明で使用する第2剤は、第1剤と反応しうるものであれば特に限定はなく公知の化合物を使用でき、多官能のイソシアネート化合物が好ましく用いられる。イソシアネート基は、特許請求の範囲における第2の官能基の一例である。
【0056】
このようなイソシアネート化合物としては特に制限なく公知のものを用いることができ、芳香族、脂肪族のイソシアネート化合物が挙げられ、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。
【0057】
ジイソシアネート化合物としては特に制限なく公知のものを用いることができ、芳香族、脂肪族のイソシアネート化合物が挙げられ、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の汎用ジイソシアネート化合物が例示される。これらのジイソシアネート化合物の過剰量を、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等の2価の活性水素化合物や、ポリエステルジオール、ポリオールジオール等との反応させた化合物が挙げられる。
【0058】
平均官能基数が2.5以上のイソシアネート化合物としては、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
平均官能基数が3.0以上のイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらイソシアネート化合物の3量体、これらイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミン等の低分子活水素化合物およびそのアルキレンオキサイド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物とを反応させて得られるアダクト体、ジイソシアネートの多量体であるイソシアヌレート、アロファネート体、アミンとの反応により得られるビューレット体等が挙げられる。
【0059】
また、イソシアネート化合物としてブロックイソシアネートを用いてもよい。イソシアネートブロック化剤としては、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノン等のオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタム等のラクタム類等が挙げられ、その他にもジメチルピラゾール、芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の方法により付加反応させて得られる。
【0060】
本発明で使用する第2剤は、上述したような化合物を単独または複数種混合したものであり、i)第2の官能基の平均官能基数が2.5以上、より好ましくは3.0以上であるものか、あるいは、ii)2官能化合物を第2の官能基含有率換算で85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上含むものである。
i)第2の官能基の平均官能基数が2.5以上の第2剤としては、平均官能基数が2.5以上のイソシアネート化合物や、3官能以上のイソシアネート化合物の単体または混合物が好ましく用いられる。
ii)2官能化合物を第2の官能基含有率換算で85%以上含む第2剤としては、ジイソシアネート化合物の単体または混合物が好ましく用いられ、さらに接着層の架橋点密度が高くなりすぎない範囲で平均官能基数が2.5以上のイソシアネート化合物や3官能以上のイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0061】
2官能の第2剤として、分子量が100以上300以下の比較的低分子量のイソシアネート化合物を用いると、素早く第1剤と反応してウレタン伸長することで高分子量化し、接着剤のラミネート操作時の必要特性の一つである初期ズリ強度を高くできる。これにより、貼り合せ時のトンネリングのトラブルを低減させることができる。このようなイソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられ、中でもヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートが好ましく用いられる。
第2剤として、分子量が300以上の直鎖型のイソシアネート化合物を用いると、接着層の柔軟性を向上させることができる。これにより、シール強度、ラミネート強度を高くすることができる。このようなイソシアネート化合物としては過剰量のジイソシアネートと、ポリオールジオール、ポリエステルジオール、ポリウレタンポリエステルジオール、ポリアミドポリエステルジオールなどのジオールとの反応物が挙げられる。
【0062】
本発明の2液型接着剤にガスバリア性を持たせる場合には、第2剤としてトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族環を有するイソシアネート化合物を用いることが好ましく、中でもメタキシレン骨格を含むイソシアネート化合物を用いることが好ましい。メタキシレン骨格を含むイソシアネート化合物を用いることで、ウレタン基の水素結合に加え、芳香環同士のπ−πスタッキングによってガスバリア性を向上させることができる。
【0063】
メタキシレン骨格を含むイソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体等が挙げられる。3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネート化合物のドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいことから、アダクト体を用いることがより好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用でき、中でもトリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキサイド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0064】
<2液型接着剤>
(2液型接着剤)
本発明の2液型接着剤は、上述したような第1剤と、第2剤とを含み、(第2の官能基/第1の官能基)比が以下の範囲となるようこれらを混合して用いられる。
【0065】
第2剤の第2の官能基の平均官能基数が2.5以上である場合には(第2の官能基/第1の官能基)比が0.15以上0.6以下となるよう混合して用いられることが好ましい。(第2の官能基/第1の官能基)比が0.15未満であると、十分な接着強度が得られない場合がある。また、当量比が0.60を上回った場合は、架橋密度が高くなりすぎて接着強度が低下する場合がある。
第2剤の使用量を抑制しつつ、好適な接着力を維持できることから、(第2の官能基/第1の官能基)比が0.15以上0.50未満で混合して用いられることがより好ましい。また、(第2の官能基/第1の官能基)比が0.15以上0.6以下(より好ましくは0.15以上0.50未満)という極めて低い範囲で第1剤と第2剤を混合して用いる場合には、第2剤の第2の官能基の平均官能基数は3.0以上とすることがより好ましい。
【0066】
第2剤が2官能の化合物を多く含む場合(2官能化合物を第2の官能基含有率換算で85%以上含む場合)には、(第2の官能基/第1の官能基)比が0.60以上0.95以下となるようこれらを混合して用いられることが好ましい。(第2の官能基/第1の官能基)比が0.60未満であると、十分な接着強度が得られない場合がある。また、当量比が0.95を上回った場合は、架橋密度が高くなりすぎて接着強度が低下する場合がある。
第2剤の使用量を抑制しつつ、好適な接着力を維持できることから、(第2の官能基/第1の官能基)比が0.65以上0.8以下で混合して用いられることがより好ましい。(第2の官能基/第1の官能基)比が0.60以上0.95以下となるようこれらを混合して用いる場合には、第2剤は2官能化合物を第2の官能基含有率換算で90%以上含むことがより好ましく、95%以上含むことがさらに好ましい。
【0067】
例えば100gのポリオールを第1剤とし、Zgのポリイソシアネートを第2剤として用いた場合、(第2の官能基/第1の官能基)比、即ち(NCO/OH)比は、下記式(11)のようにして求めることができる。なお、下記式(11)においてOHVとはポリオールの水酸基価である。
【0069】
さらに、第1剤と第2剤との硬化塗膜のガラス転移温度が−30℃以上80℃以下となるように組み合わせて用いられることが好ましく、0℃以上70℃以下となるように組み合わせて用いられることがより好ましく、25℃以上70℃以下となるように組み合わせ用いられることがさらに好ましい。ガラス転移温度が80℃を上回ると、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が低下する場合がある。また、ガラス転移温度が−30℃未満であると、室温付近での硬化塗膜の分子運動が激しく、凝集力が不足する場合がある。いずれの場合も接着力の低下につながる恐れがある。
【0070】
(形態)
本発明の接着剤は、溶剤型、無溶剤型、水性のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合は、溶剤は第1剤および/または第2剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。さらに、塗工時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては、一例として、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。第1剤、第2剤の種類に応じて好適な溶剤を選択すればよいが、酢酸エチルやメチルエチルケトンが好適に用いられる。無溶剤型の場合は、第1剤、第2剤とも低沸点の溶媒を用いない。この時、塗工粘度適性化のために反応に供しない高沸点溶媒を含有していてもよい。水性の場合は第1剤としてエマルジョン化した化合物を水を主体とした溶媒に分散させた剤、第2剤としてはブロックイソシアネートを水を主体とした溶媒に分散させた剤を例示することができる。
【0071】
(添加剤)
本発明の接着剤組成物は、接着力を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。
【0072】
接着層の耐酸性を向上させるために公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0073】
塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等の粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、主剤と硬化剤の総量100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の範囲とすることが好ましい。
【0074】
本発明の2液型接着剤にガスバリア性が必要な場合には、板状の無機化合物と、結晶性ポリエステルの少なくとも一方を含むことが好ましい。
板状無機化合物としては、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘度鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライト等)、スメクタイト族粘度鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘度鉱物(バーミキュライト等)、雲母またはマイカ族粘度鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘度鉱物であっても合成粘度鉱物であってもよい。板状無機化合物は単独でまたは二種以上組み合わせて用いられる。
【0075】
板状無機化合物の添加量はガスバリア能が向上するのであれば特に制限はないが、第1剤、第2剤、板状無機化合物の総質量を100質量部とした場合に5質量部以上50質量部以下とすることが好ましい。
【0076】
結晶性ポリエステルは特に制限はなく、公知の結晶性ポリエステルを使用することができる。本明細書において結晶性とは、示差熱分析法(DSC)による融点に相当する吸熱ピークにおける吸熱量が、20℃/minの昇温条件下で20J/g以上、より好ましくは30J/g以上であることをいう。結晶性ポリエステルはこのような結晶性の条件を満たすものである。
結晶性ポリエステルは、第1剤として用いられる非晶性のポリエステルとの合計質量の2質量%以上50質量%以下の範囲で添加されることが好ましく、5質量%以上40質量%以下の範囲で添加されることがより好ましい。これにより、ガスバリア性の向上とドライラミネート接着剤としての塗工適性とを両立させることができる。
【0077】
<2液型コーティング剤>
(2液型コーティング剤)
上述した2液硬化型組成物は、2液型コーティング剤に適用することもできる。コーティング剤として適用する場合は、第1剤の数平均分子量を1000以上50000以下とすることが好ましく、1200以上40000以下とすることがより好ましく、1500以上30000以下とすることがさらに好ましい。第1剤と第2剤とを混合する際の(第2の官能基/第1の官能基)比は上述した2液型接着剤と同様である。
【0078】
(形態)
本発明のコーティング剤は、溶剤型、無溶剤型、水性のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合は、溶剤は第1剤および/または第2剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。さらに、塗工時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては、上述した接着剤に用いられる溶剤と同様のものを用いることができる。無溶剤型の場合は、第1剤、第2剤とも低沸点の溶媒を用いない。この時、塗工粘度適性化のために反応に供しない高沸点溶媒を含有していてもよい。水性の場合は第1剤としてエマルジョン化した化合物を水を主体とした溶媒に分散させた剤、第2剤としてはブロックイソシアネートを水を主体とした溶媒に分散させた剤を例示することができる。
【0079】
(添加剤)
本発明のコーティング剤には、必要に応じて硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤は、例えばナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、塩化第一錫、テトラ−n−ブチル錫、トリ−n−ブチル錫アセテート、n−ブチル錫トリクロライド、トリメチル錫ハイドロオキサイド、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクテン酸錫等のウレタン化触媒が挙げられる。
また、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤等を適宜添加してもよい。
【0080】
<積層体>
本発明の2液型接着剤は、フィルム基材、紙、金属等に対し、各種用途の接着剤として使用することができる。本発明の2液型コーティング剤は、フィルム基材、紙、金属等に対し、各種用途のコーティング剤として使用することができる。
以下、一例として本発明の2液型接着剤をフィルムラミネート用接着剤として使用する場合について説明する。
【0081】
フィルムラミネート用の基材として用いることのできるフィルムは特に制限はなく、用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば、食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)、ポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施されたものであってもよい。延伸処理方法としては、押出製膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一版的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的には、ロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0082】
あるいは、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルム、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。このようなフィルムを用いることで、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対するバリア性を備えた積層体とすることができる。
【0083】
フィルム表面には、膜切れやはじき等の欠陥のない接着層が形成されるように、必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0084】
塗工方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。一例として、粘度の調整ができる溶剤型の場合はグラビアロール塗工方式で塗布することが多い。無用剤型で、室温での粘度が高くグラビアロール塗工が適さない場合は、加温しながらロールコーターで塗工することもできる。ロールコーターを使用する場合には、本発明の接着剤の粘度が500mPa・s〜2500mPa・s程度となるように室温〜120℃程度まで加熱した状態で塗工することが好ましい。
【0085】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、
最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム;
PET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム;
OPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、PET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルム等が挙げられる。
【0086】
このような積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの一方に本発明の接着剤を塗工後、もう一方の熱可塑性樹脂フィルムを重ねてラミレーションにより貼り合わせることで得られる。ラミネーション方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知の方法を用いることができる。
【0087】
ドライラミネーションは、基材フィルムの一方に本発明の接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねて貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。
ノンソルベントラミネーションの場合には、基材フィルムに、予め室温〜120℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤を、室温〜120℃程度に加熱したロールコーター等のロールにより塗布した後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合せることによりラミネートフィルムを得る。ラミネート圧力は10〜300kg/cm
2程度が好ましい。
【0088】
押出しラミネーションの場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明の接着剤有機溶剤溶液をグラビアロール等のロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行った後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては、低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0089】
このようにして作成した積層フィルムは、エージング処理を行うことが好ましい。一例として、ポリイソシアネート化合物を硬化剤として用いた場合のエージング条件は、室温〜80℃で、12〜240時間である。この間に接着強度が増強する。
【0090】
本発明の2液型接着剤を用いて作成した積層体は、従来型の2液型接着剤を用いて作成した積層体と同等の接着強度を示す。
また、本発明の2液型接着剤は、(第2の官能基/第1の官能基)比が1未満で混合されて用いられるため、本発明の2液型接着剤を用いて作成した積層体は従来型の2液型接着剤を用いた場合と比較して硬化後の接着層に反応性の高い、換言すれば毒性の高い未反応の第2剤が残留する可能性が少ない。このため、このような積層体をボイルレトルト処理が必要な食品の包装に用いた場合にも残留した第2剤に由来する有毒化合物の溶出を抑制することができる。
【0091】
ガスバリア性フィルムは気体を透過しにくいため、このようなフィルムを用いて積層体を作成すると、第2剤が周囲(例えば大気中)の水と反応して生じるガスがフィルム間に留まって気泡となりやすいが、本発明の2液型接着剤では(第2の官能基/第1の官能基)比が1未満と低いため、気泡の発生が抑制され、積層体の外観を良好なものとすることができる。気泡の発生が抑制されることはガスバリア性のフィルムを用いて積層体を作成する際にも有用である。
【0092】
アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を樹脂フィルム上に積層したフィルムの、蒸着層同士を対向させて本発明の2液型接着剤を用いて貼り合わせた積層体は、ガスバリア性に優れたものとすることができる。金属酸化物の蒸着層を樹脂フィルム上に積層したフィルムは、蒸着層にピンポールが存在するため単体では十分なガスバリア性を確保することができない。このため複数層積層して使用するが、このとき(第2の官能基/第1の官能基)比が1.0以上の、従来用いられているような2液型接着剤を用いて蒸着層同士を対向させて貼り合わせると、余剰の第2剤に起因する気泡によりピンホール同士が繋がってしまい、満足なガスバリア性を確保することができない。一方、本発明の2液型接着剤ではこのような気泡の発生が殆ど無いため、外観に加え、ガスバリア性に優れた積層体とすることができる。
【0093】
また、ガスバリア性フィルムを、第1剤、第2剤としてガスバリア性を発揮する材料を用いた本発明の2液型接着剤で貼り合せて作成した積層体は、水蒸気バリア性に加え、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機溶媒に起因する香り等に対するさらに優れたバリア性をも備えたものとすることができる。
【0094】
上記のような積層体が遮断することができるアルコールとしては、少なくとも一箇所にアルキル鎖に対してヒドロキシル基が結合している構造を持つ、一般的なアルコール類に分類される材料類であれば特に制限はない。また、一価のアルコールでも多価のアルコールでもよい。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ネオペンチルグリコール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール等を例示できる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチルプロパン等が例示できる。更には、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のアミノアルコール類の他、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテル基含有のアルコール化合物等も挙げられる。
上記のような積層体は、室温領域で気体から液体の状態にあるアルコールに対し、特に好適に用いることができる。
【0095】
上記のような積層体が遮断することができる不活性ガスとしては、窒素、炭酸ガスの他、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の希ガスが例示できる。このような不活性ガスは化学変化を起こし難く、食品等に対して不活性であるだけでなく、食品周囲への酸素や水蒸気の接触を防ぐことができるため、食品の風味の維持、内容物の保持、酸化防止等の目的で用いられる。
【0096】
上記のような積層体が遮断することができる揮発性有機化合物(香り)としては、ココア、醤油、ソース、味噌、コーヒー、レモネン、サリチル酸メチル、メントール、チーズ、香料類、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤、石鹸等の香り成分を含むサニタリー分野、ペットフード、防虫剤、芳香剤、毛染め類、香水、農薬類等に関するものが挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の理解を容易にするため、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中の部および%は特に断りのない限り質量基準によるものである。
【0098】
<第1剤の合成>
以下の合成例1〜14のようにして第1剤を合成した。なお、合成例1〜11についてはX=OH、Y=COOHとして上記式(8)、(9)を用いて枝分かれ係数の算出を行った。また合成例12〜14についてはX=COOH、Y=OHとして上記式(7)、(9)を用いて枝分かれ係数の算出を行った。
【0099】
(合成例1) (TMP/EG/oPA=1/3/3)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸444.36部、トリメチロールプロパン134.17部、エチレングリコール195.52部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量710、酸価0.38mgKOH/g、水酸基価237mgKOH/gのポリエステルポリオールTMP/EG/oPA=1/3/3を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.40であった。
【0100】
(合成例2) (THEI/EG/oPA=1/3/3)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸444.36部、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート261.23部、エチレングリコール195.52部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量837、酸価1.0mgKOH/g、水酸基価201mgKOH/gのポリエステルポリオールTHEI/EG/oPA=1/3/3を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.40であった。
【0101】
(合成例3) (PE/EG/oPA=1/4/4)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸592.48部、ペンタエリスリトール136.15部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が30mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量837、酸価25.0mgKOH/g、水酸基価248mgKOH/gのポリエステルポリオールPE/EG/oPA=1/4/4を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.38であった。
【0102】
(合成例4) (GLY/EG/oPA=1.3/4/4.5)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸666.54部、精製グリセリン119.72部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量953、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価195mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/EG/oPA=1.3/4/4.5を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.50であった。
【0103】
(合成例5) (GLY/HG/oPA=1.3/4/4.5)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸666.54部、精製グリセリン119.72部、ヘキシルグリコール496.32部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が30mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1177、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価147mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/HG/oPA=1.3/4/4.5を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.49であった。
【0104】
(合成例6) (GLY/EG/AA=1.3/4/4.5)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、アジピン酸531.40部、精製グリセリン119.72部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量737、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価230mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/EG/AA=1.3/4/4.5を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.50であった。
【0105】
(合成例7) (GLY/DEG/oPA=1.3/4/4.5)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸666.54部、精製グリセリン119.72部、ジエチレングリコール432.96部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1130、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価150mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/DEG/oPA=1.3/4/4.5を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.50であった。
【0106】
(合成例8) (GLY/EG/oPA=2.2/4/5.1)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸755.41部、精製グリセリン202.60部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1115、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価196mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/EG/oPA=2.2/4/5.1を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.51であった。
【0107】
(合成例9) (GLY/EG/HH=2.2/4/5.1)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水ヘキサヒドロフタル酸786.21部、精製グリセリン202.60部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1130、酸価2.0mgKOH/g、水酸基価201mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/EG/HH=2.2/4/5.1を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.51であった。
【0108】
(合成例10) (GLY/EG/MA=2.2/4/5.1)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水マレイン酸500.10部、精製グリセリン202.60部、エチレングリコール260.70部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、更にターシャリーブチルカテコールを仕込量合計量に対して500ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を200度に保存した。酸価が25mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量850、酸価20.0mgKOH/g、水酸基価210mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/EG/MA=2.2/4/5.1を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.46であった。
【0109】
(合成例11) (GLY/CHDM/oPA=2.2/4/5.1)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸755.41部、精製グリセリン202.60部、シクロヘキサンジメタノール588.37部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が3mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1430、酸価1.0mgKOH/g、水酸基価196mgKOH/gのポリエステルポリオールGLY/CHDM/oPA=2.2/4/5.1を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.51であった。
【0110】
(合成例12) (TMT/EG/oPA=1/6/3)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸444.36部、無水トリメリット酸192.13部、エチレングリコール391.05部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量850、酸価1.0mgKOH/g、水酸基価198mgKOH/gのポリエステルポリオールTMT/EG/oPA=1/6/3を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.50であった。
【0111】
(合成例13) (PMT/EG/oPA=1/8/4)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸592.48部、無水ピロメリット酸218.12部、エチレングリコール521.40部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が30mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1090、酸価26.0mgKOH/g、水酸基価154mgKOH/gのポリエステルポリオールPMT/EG/oPA=1/8/4を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.42であった。
【0112】
(合成例14) (HTMT/EG/oPA=1/6/3)の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸444.36部、水添無水トリメリット酸198.17部、エチレングリコール391.05部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量853、酸価1.0mgKOH/g、水酸基価197mgKOH/gのポリエステルポリオールHTMT/EG/oPA=1/6/3を得た。
13C−NMRから得られたこの樹脂の組成比ならびに酸価から求められる枝分かれ係数αは0.50であった。
【0113】
(合成例15) (EG/oPA=5.36/4.36)EP900 の製造法
撹拌機、窒素ガス導入管等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸648.50部、エチレングリコール359.31部及びチタニウムテトライソプロポキシドを仕込量合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100度を超えないように徐々に加熱して内温を220度に保存した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900、酸価1.0mgKOH/g、水酸基価124.7mgKOH/gのポリエステルポリオールEG/oPA=5.36/4.36を得た。この樹脂はモノマー組成比の通り分岐構造を含んでいないため、枝分かれ係数αは0である。
【0114】
上記の合成例1〜15で得られたポリオール化合物に加えて、ディックドライLX−703VL(DICグラフィックス(株)製:ポリエステルポリオール、酢酸エチル、不揮発分/約62%)を第1剤として用いて試験を実施した。なお、ディックドライLX−703VLは組成分析の結果分岐構造を含んでいないため、枝分かれ係数αは0である。
【0115】
<第2剤の合成>
(合成例16)2官能の末端イソシアネート樹脂組成物「(EGoPA)nTDI2」製造法
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに合成例15で得た2官能のポリエステルポリオールEP900の900部を入れ、酢酸エチル225部に溶解させてポリエステルポリオールの酢酸エチル溶液を得た。これにトルエンジイソシアネート(TDIと略す)188部と酢酸エチル235部を仕込み、窒素気流下75℃で3時間反応させた。NCO当量が630とほぼ理論当量値となったので、50℃まで冷却し、不揮発分80%・数平均分子量1276の設計官能末端2のイソシアネート組成物を得た。また、本化合物のNCO%は5.0であった。
【0116】
<積層体の作成>
以下のようにして、枝分かれ係数が1/f以上である第1剤と、平均官能基数が2.5以上である第2剤とを、(第2の官能基/第1の官能基)比を0.15以上0.60以下の範囲で混合した接着剤を用いて実施例1〜14の積層体を得た。
(実施例1)
合成例1で合成したポリエステルポリオールを第1剤とし、表1の配合で酢酸エチルと溶解させた後、NCO/OH比が0.15以上0.60以下となるよう第2剤としてHA−300を添加して接着剤とした。この接着剤をバーコーター#8を用いて厚さ12μmのPETフィルムのコロナ処理面に塗布した後、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発乾燥させて複合フィルムとした。この複合フィルムと未延伸ポリエチレンフィルムのコロナ面とを温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートした。この積層体を40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、PET/接着剤/未延伸ポリエチレンの積層体を得た。
【0117】
また、同接着剤をバーコーター#8を用いて厚さ12μmの透明蒸着PETフィルムの透明蒸着面に塗布した後、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発乾燥させて複合フィルムとした。この複合フィルムと透明蒸着PETフィルムの透明蒸着面とを温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートした。この積層体を40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの蒸着面同士が接着層に接した積層体を得た。
なお、NCO/OH比は、上記の(第2の官能基/第1の官能基)比に対応する。
【0118】
(実施例2〜14)
用いる第1剤、第2剤の種類と配合量を表1〜3に示すようにした以外は実施例1と同様にして、PET/接着剤/未延伸ポリエチレンと、透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの2種の積層体を得た。
【0119】
以下のようにして、比較例1〜6の積層体を得た。
(比較例1〜6)
用いる第1剤、第2剤の種類と配合量を表4に示すようにした以外は実施例1と同様にして、PET/接着剤/未延伸ポリエチレンと、透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの2種の積層体を得た。
【0120】
また、以下のようにして枝分かれ係数が1/f以上である第1剤と、2官能化合物を官能基含有率換算で85%以上含む第2剤とを、(第2の官能基/第1の官能基)比を0.6以上0.95以下の範囲で混合した接着剤を用いて実施例15〜28の積層体を得た。
(実施例15〜28)
用いる第1剤、第2剤の種類と配合量を表5〜7に示すようにした以外は実施例1と同様にして、PET/接着剤/未延伸ポリエチレンと、透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの2種の積層体を得た。
【0121】
以下のようにして、比較例1〜6の積層体を得た。
(比較例7〜11)
用いる第1剤、第2剤の種類と配合量を表8に示すようにした以外は実施例1と同様にして、PET/接着剤/未延伸ポリエチレンと、透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの2種の積層体を得た。
【0122】
実施例、比較例で用いた第2剤は以下の通りである。
(平均官能基数が2.5以上である第2剤)
(HA−300)
BASF(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアロファネート体であり、平均NCO官能基数は3.0、不揮発成分100%、NCO%は17.5%である。
(HB−300)
BASF(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビューレット体であり、平均NCO官能基数は3.0、不揮発成分100%、NCO%は17.5%である。
(L−75)
住化バイエルウレタン社製、トリメチロールプロパンと2,6―トリレンジイソシアネート(TDI)とのアダクト体であり、平均NCO官能基数は3.0、不揮発分75.0%、NCO%は13.4%、溶媒は酢酸エチルである。
(D110N)
三井化学(株)製、メタキシリレンジイソシアネート(XDI)のトリメチロールプロパンアダクト体であり、平均NCO官能基数は3.0、不揮発成分75.0%、NCO%は11.5%、溶媒は酢酸エチルである。
(ルプラネートMB−5S)
BASF(株)製、ポリメリック4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであり、平均NCO官能基数は2.6、不揮発成分100%、NCO%は30%である。
(KR−90)
DICグラフィックス(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、平均NCO官能基数は3.0、不揮発成分90%、NCO%は30%、溶媒は酢酸エチルである。
【0123】
(2官能化合物を第2の官能基含有率換算で85%以上含む第2剤)
(XDI)
三井化学(株)製、メタキシリレンジイソシアネート(XDI)、平均NCO官能基数は2.0、不揮発成分100%、NCO%は44%である。
(HDI)
旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、平均NCO官能基数は2.0、不揮発成分100%、NCO%は50%である。
((EGoPA)nTDI2)
合成例15のポリエステルポリオールを原料として、合成例16で合成した、両末端がTDIのポリイソシアネートである。平均NCO官能基数は2.0、不揮発成分80%、NCO%は5%である。また数平均分子量は1100である。
(D201)
旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)末端ポリイソシアネート、平均NCO官能基数は2.0、不揮発成分100%、NCO%は20%である。また、数平均分子量は500である。
【0124】
実施例、比較例で使用したフィルムは以下の通りである。
(PETフィルム)
東洋紡績(株)製「E−5100」、厚さ12μmである。
(未延伸ポリエチレンフィルム)
三井化学東セロ(株)製「TUX−HC」、厚さ60μmである。
(透明蒸着PET)
バリアロックス1011HG(東レフィルム加工(株)製)、厚さ12μmであり、オーバーコート層は無い。
【0125】
<評価>
エージングが終了した積層体を以下のようにして評価し、結果を表1〜4にまとめた。
(ラミネート強度の測定方法)
PET/接着剤/未延伸ポリエチレンの積層体を塗工方向と平行に15mm幅に切断し、延伸フィルムと未延伸フィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度をラミネート強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。
【0126】
(シール強度の測定方法)
PET/接着剤/未延伸ポリエチレンの積層体を未延伸ポリエチレンフィルム面が内側になるように重ね、ヒートシーラー(テスター産業(株)、TP−201−B)を用い、10mm幅のシールバーで0.1MPa、1秒、180℃の条件でヒートシールした。これを15mm幅に切断し、前記のラミネート強度測定と同条件、同試験装置を用いヒートシール部分を剥離した際の引っ張り強度をヒートシール強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。
ヒートシール強度が35N/15mm以上であれば、高強度であると言える。
【0127】
(積層体外観の判定法)
透明蒸着PET/接着剤/透明蒸着PETの構成については、目視により均一透明な外観であれば○、気泡が積層体中にあり均一透明でないものを×と判定した。また、これらの中間状態であるものを△と判定した。
【0128】
(耐ボイル試験の判定方法)
PET/接着剤/未延伸ポリエチレンの積層体5cm×10cmの大きさに切り出した。これを5cm角の大きさに二つ折りし、未延伸ポリエチレンフィルム面が内側になるように重ね、ヒートシーラー(テスター産業(株)、TP−201−B)を用い2方をヒートシールした袋を作製した。この袋に水を3g注入したのちヒートシーラーで残りの1方をヒートシールして密閉し、水が封入されたパウチを作製した。これを95℃の熱湯に30分間浸漬し、ボイルした後取り出した。取り出したパウチの状態が、ボイル前と変化無い場合は○、デラミネーションなどの異常が生じていた場合は×と判定した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
【表8】
【0137】
<評価結果>
実施例1〜14に示されるように、本発明の2液型接着剤により得られた積層体はラミネート強度及びシール強度に優れ、透明蒸着フィルム同士を接着させた積層体の外観が優れる結果となった。これは、枝分かれ係数αが1/f以上のポリオールを第1剤とし、平均官能基数が2.5以上であるイソシアネート化合物を第2剤とし、NCO/OH比が0.15以上0.6以下でポリイソシアネートと混合して硬化させたことにより、硬化塗膜の架橋密度が過剰に高くならず柔軟性を維持した硬化膜となったためと考えられる。
更に硬化膜中に過剰のポリイソシアネートが残存しないため、エージング工程で残存水分とポリイソシアネートとが反応し炭酸ガスが発生することがなく、バリア層同士から構成される積層体でも気泡の残存が見られず、良好な外観を持つハイバリアフィルムを製造できた。
【0138】
一方、比較例1、2に示されるように、第1剤と第2剤とをNCO/OH比が0.15未満で混合して得られた硬化膜では、ポリイソシアネート量が少なすぎたために十分硬化せず、特にシール強度が25N/15mm未満と不十分な結果となった。
また比較例3、4に示されるように、第1剤と第2剤とをNCO/OH比が0.6を超える割合で混合して得られた硬化膜では、元々架橋密度が高いポリエステルポリオールが更に高密度に架橋されたことにより硬化膜の柔軟性が失われ、ラミネート強度が2.0N/15mm未満と低い結果となった。加えて、透明蒸着フィルム同士の積層体の外観が劣る結果となった。
また比較例5、6に示されるように、枝分かれ係数αが0であるポリエステルポリオールを第1剤とし、NCO/OH比が0.15以上0.6以下で硬化させた場合には硬化が不十分となり、十分なシール強度を得られなかった。
【0139】
また、実施例15〜28に示されるように、本発明の2液型接着剤により得られた積層体はラミネート強度及びシール強度に優れ、透明蒸着フィルム同士を接着させた積層体の外観が優れる結果となった。これは、枝分かれ係数αが1/f以上のポリオールを第1剤とし、平均官能基数が2のポリイソシアネート化合物を第2剤とし、NCO/OH比が0.6以上0.95以下でポリイソシアネートと混合して硬化させたことにより、硬化塗膜の架橋密度が過剰に高くならず柔軟性を維持した硬化膜となったためと考えられる。
更に硬化膜中に過剰のポリイソシアネートが残存しないため、エージング工程で残存水分とポリイソシアネートとが反応し炭酸ガスが発生することがなく、バリア層同士から構成される積層体でも気泡の残存が見られず、良好な外観を持つハイバリアフィルムを製造できた。さらに耐ボイル性も良好な結果を示した。
【0140】
一方、比較例7、8に示されるように、第1剤と第2剤とをNCO/OH比が0.6未満で混合して得られた硬化膜では、ポリイソシアネート量が少なすぎたために十分硬化せず、特にシール強度が25N/15mm未満、ラミネート強度も3.5N以下/15mm以下と不十分な結果となった。また耐ボイル性も無かった。
また比較例9、10に示されるように、第1剤と第2剤とをNCO/OH比が0.95を超える割合で混合して得られた硬化膜では、残存したイソシアネート化合物に起因する気泡が生じ、透明蒸着フィルム同士の積層体の外観が劣る結果となった。
また比較例11に示されるように、枝分かれ係数αが0であるポリエステルポリオールを第1剤とし、NCO/OH比が0.6以上0.95以下で硬化させた場合には硬化が不十分となり、十分なシール強度を得られなかった。さらに耐ボイル性も無かった。