(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、フェノール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と硬化剤とを含有する。
【0013】
前記活性エステル化合物(A)は、フェノール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物であれば、その具体構造は特に限定されない。即ち、フェノール化合物(a1)は、ベンゼン環状に水酸基を有する化合物であれば、その他の置換基の有無や数、置換基の種類、置換位置等は問われない。他方、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)は、芳香環上に複数のカルボキシル基或いは酸ハライド基を有する化合物であれば、カルボキシル基或いは酸ハライド基の数や置換位置は任意であり、前記芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の何れでもよい。また、本発明では前記活性エステル化合物(A)として一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0014】
前記フェノール化合物(a1)は、例えば、フェノールや、フェノールの芳香環上にメチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等の置換基を有する化合物が挙げられる。フェノール化合物(a1)は一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0015】
中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い硬化性組成物となることから、フェノール又はフェノールの芳香核上に炭化水素基を有する化合物が好ましく、フェノールの芳香核上に脂肪族炭化水素基又はアリール基を有する化合物がより好ましい。前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は1〜12の範囲であることが好ましく、1〜6の範囲であることがより好ましい。
【0016】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)は、前記フェノール化合物(a1)が有するフェノール性水酸基と反応してエステル結合を形成し得る芳香族化合物であれば、具体構造は特に限定されず、何れの化合物であっても良い。具体例としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、反応活性が高く硬化性に優れる硬化性組成物となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0017】
以上のことから、前記活性エステル化合物(A)の好ましい具体構造としては、例えば、下記構造式(1)等が挙げられる。
【0018】
【化1】
(式中R
1はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、ベンゼン環上のどの炭素原子に結合していても良く、nは0、1又は2である。)
【0019】
前記フェノール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40〜65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は所望に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0020】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0〜30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0021】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0022】
前記フェノール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A)を高収率で得られることから、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール化合物(a1)が0.95〜1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0023】
前記活性エステル化合物(A)の溶融粘度は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した175℃における値が0.001〜5dPa・sの範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明の硬化性組成物は、前記活性エステル化合物(A)と併せて、その他の活性エステル化合物又は樹脂(B)を含有しても良い。前記その他の活性エステル化合物又は樹脂(B)としては、ナフトール化合物(b1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b2)とのエステル化物である活性エステル化合物(B1)や、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b3)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b4)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b5)を必須の反応原料とする活性エステル樹脂(B2)等が挙げられる。
【0025】
前記その他の活性エステル化合物又は樹脂(B)を用いる場合、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い硬化性組成物となることから、前記活性エステル化合物(A)と前記その他の活性エステル化合物又は樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有割合は45質量%以上であることが好ましく、45〜99質量%の範囲であることがより好ましく、50〜99質量%の範囲であることが更に好ましく、65〜99質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0026】
本発明の硬化性組成物は、前述の活性エステル化合物(A)と硬化剤とを含有する。前記硬化剤は前記活性エステル化合物(A)と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0027】
前記エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
本発明の硬化性組成物において、前記活性エステル化合物(A)と硬化剤との配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合の配合の一例としては、硬化性組成物中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル化合物(A)中の官能基の合計が0.7〜1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、更にその他の樹脂成分を含有しても良い。その他の樹脂成分は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂;シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;スチレン−無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂;ポリリン酸エステルやリン酸エステル−カーボネート共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0030】
これらその他の樹脂成分の配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。配合割合の一例としては、本発明の硬化性組成物中1〜50質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0031】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0032】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0033】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物中0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0035】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0036】
以上詳述した通り、本発明の硬化性組成物は、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や、耐熱性、耐吸水性が高く、溶融粘度が低い等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものであり、プリント配線基板や半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0037】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0038】
また、本発明の硬化性組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【0039】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。
【0041】
溶融粘度測定法
本実施例において活性エステル化合物の溶融粘度は、ASTM D4287に準拠し、175℃における溶融粘度をICI粘度計にて測定した。
【0042】
製造例1 活性エステル化合物(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン13000gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、パラターシャリーブチルフェノール300.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.64gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A−1)を得た。活性エステル化合物(A−1)の溶融粘度は0.05dP.sであった。
【0043】
製造例2 活性エステル化合物(A−2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1400gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、オルトフェニルフェノール340.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.70gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A−2)を得た。活性エステル化合物(A−2)の溶融粘度は0.07dP.sであった。
【0044】
製造例3 活性エステル化合物(A−3)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1000gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、オルトクレゾール216.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.50gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A−3)を得た。活性エステル化合物(A−3)の溶融粘度は0.03dP.sであった。
【0045】
製造例4 活性エステル化合物(A−4)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1000gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、メタクレゾールとパラクレゾールとの混合物(m/p=67/33)216.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.50gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A−4)を得た。活性エステル化合物(A−4)の溶融粘度は0.03dP.sであった。
【0046】
製造例5 活性エステル化合物(A−5)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1000gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、フェノール188.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.50gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A−5)を得た。活性エステル化合物(A−5)の溶融粘度は0.02dP.sであった。
【0047】
実施例1〜
4、参考例1及び比較例1
下記表1に示す割合で各成分を配合し、硬化性組成物(1)を得た。得られた硬化性組成物(1)について、下記要領で硬化収縮率を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
硬化収縮率の測定
トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS−15−1.5C」)を用いて、金型温度154℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間600秒の条件下で、硬化性組成物を注入成形して、縦110mm、横12.7mm、厚さ1.6mmの成形物を得た。次いで、得られた成形物を175℃で5時間硬化させた後、室温(25℃)で24時間以上放置し、これを試験片とした。試験片の室温での縦方向寸法、金型の154℃での縦方向内寸法をそれぞれ測定し、下記式にて硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)={(金型の154℃での縦方向内寸法)−(試験片の室温での縦方向寸法)}/(金型の154℃での縦方向内寸法)×100(%)
【0049】
【表1】
【0050】
フェノールノボラック樹脂(*1):DIC株式会社製「TD−2131」、水酸基当量104g/当量
エポキシ樹脂(*2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「N−655−EXP−S」、エポキシ当量202g/当量)
【0051】
実施例
5〜8、参考例2及び比較例2
下記表2に示す割合で各成分を配合し、硬化性組成物(2)を得た。得られた硬化性組成物(2)について、下記要領で硬化物における高温条件下での弾性率を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
硬化物における高温条件下での弾性率の測定
プレス機を用いて硬化性組成物を型枠へ流し込み175℃の温度で10分間成型した。型枠から成型物を取り出し、175℃の温度で5時間硬化させた。硬化後の成形物を5mm×54mm×2.4mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」)を用い、レクタンギュラーテンション法、周波数1Hz、昇温温度3℃/分の条件で、試験片の260℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0053】
【表2】
【0054】
フェノールノボラック樹脂(*1):DIC株式会社製「TD−2131」、水酸基当量104g/当量
エポキシ樹脂(*2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「N−655−EXP−S」、エポキシ当量202g/当量)
硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い硬化性組成物、前記硬化性組成物の硬化物、前記硬化性組成物を用いた半導体封止材料及びプリント配線基板を提供すること。フェノール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と硬化剤とを含有する硬化性組成物、前記硬化性組成物の硬化物、前記硬化性組成物を用いた半導体封止材料及びプリント配線基板。