特許第6270092号(P6270092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6270092
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】活性エステル樹脂組成物とその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20180122BHJP
   C08G 63/133 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180122BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C08G63/133
   H01L23/30 R
   H05K1/03
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-558760(P2017-558760)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2017022997
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-134227(P2016-134227)
(32)【優先日】2016年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-140420(P2016-140420)
(32)【優先日】2016年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】河崎 顕人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜也
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242560(JP,A)
【文献】 特開2004−155990(JP,A)
【文献】 特開2009−235165(JP,A)
【文献】 特開2015−174986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/42
C08G 63/133
H01L 23/29
H01L 23/31
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)を必須の反応原料とする活性エステル樹脂(B)とを含有し、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有量が50〜99%の範囲であることを特徴とする活性エステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エステル化合物(A)が、下記構造式(1)
【化1】
[式中Arはベンゼン環、ナフタレン環、又はアントラセン環の何れかである。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、mは0又は1〜4の整数であり、nは2〜3の整数である。]
で表される分子構造を有するものである請求項1記載の活性エステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エステル化合物(A)の含有量が65〜99%の範囲である請求項1又は2記載の活性エステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が、下記構造式(2)
【化2】
[式中pは1又は2であり、qは1〜4の整数である。Arは芳香環を表し、芳香環上に各種の置換基を一つ乃至複数有していてもよい。Xは下記構造式(X−1)
【化5】
(式中hは0又は1である。)
で表される構造部位である。]
で表される分子構造を有する化合物である請求項1〜3の何れかに記載の活性エステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が、フェノール性水酸基含有化合物とホルムアルデヒドとを反応原料とするノボラック型フェノール樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の活性エステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が、下記構造式(2)
【化2】
[式中pは1又は2であり、qは1〜4の整数である。Arは芳香環を表し、芳香環上に各種の置換基を一つ乃至複数有していてもよい。Xは下記構造式(X−2)〜(X−5)
【化5】
(式中Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1〜4の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1〜4の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
で表される分子構造を有する化合物である請求項1〜3の何れかに記載の活性エステル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一つに記載の活性エステル樹脂組成物と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用い半導体封止材料。
【請求項10】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用いプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料及びプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子部材の薄型化や小型化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。半導体封止材料に求められる性能としては、リフロー性向上の為に熱時低弾性率が求められる。また、近年の半導体の薄型化による部材の「反り」による信頼性低下が顕著化しており、これを抑えるために低硬化収縮率の樹脂材料が求められている。
【0003】
硬化物における熱時低弾性率の樹脂材料として、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂とα−ナフトールとをフタル酸クロライドでエステル化して得られる活性エステル樹脂が挙げられる(下記特許文献1参照)。特許文献1記載の活性エステル樹脂は、フェノールノボラック樹脂のような従来型の硬化剤を用いた場合と比較すると、架橋密度が低くなる為、熱時低弾性率の特性を発現するが、近年要求されるレベルを満足するものでは無く、高溶融粘度である為、半導体封止材料に適用できるものではなかった。また、硬化収縮率特性においても高いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−169021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化時の収縮率、及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料及びプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物を一部含有する活性エステル樹脂組成物は、硬化物における高温条件下での弾性率が低い上、硬化時の収縮率が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)を必須の反応原料とする活性エステル樹脂(B)とを含有し、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有量が40%以上であることを特徴とする活性エステル樹脂組成物に関する。
【0008】
本発明は更に、前記活性エステル樹脂組成物と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いてなる半導体封止材料に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いてなるプリント配線基板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料及びプリント配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1で得られた活性エステル樹脂組成物(1)のGPCチャート図である。
図2図2は、実施例2で得られた活性エステル樹脂組成物(2)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル樹脂組成物は、ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)を必須の反応原料とする活性エステル樹脂(B)とを含有し、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有量が40%以上であることを特徴とする。
【0015】
前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有量は、下記条件で測定されるGPCチャート図の面積比から算出される値である。中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物となることから、前記活性エステル化合物(A)の含有量が40〜99%の範囲であることが好ましく、50〜99%の範囲であることがより好ましく、65〜99%の範囲であることが特に好ましい。
【0016】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0017】
前記活性エステル化合物(A)は、ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物であれば、その具体構造は特に限定されない。即ち、前記ナフトール化合物(a1)は、ナフタレン環上に一つの水酸基を有する化合物であればその他の置換基の有無や置換基の数、置換基の種類、置換位置等は問われない。他方、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)は、芳香環上に複数のカルボキシル基或いは酸ハライド基を有する化合物であれば、カルボキシル基或いは酸ハライド基の数や置換位置は任意であり、前記芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の何れでもよい。また、本発明では前記活性エステル化合物(A)として一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0018】
前記活性エステル化合物(A)の具体構造としては、例えば、下記構造式(1)
【0019】
【化1】
[式中Arはベンゼン環、ナフタレン環、又はアントラセン環の何れかである。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、mは0又は1〜4の整数であり、nは2〜3の整数である。]
で表されるものが挙げられる。
【0020】
前記構造式(1)中のArはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の何れかである。中でも、活性エステル化合物(A)の粘度がより低下する点では、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。また、硬化性の高い活性エステル化合物(A)となることから、前記構造式(1)中のnは2であることが特に好ましい。前記Arがベンゼン環でありnが2である場合、ベンゼン環上の2つのエステル結合の位置は、1,3−位又は1,4−位であることが好ましい。即ち、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)として、イソフタル酸又はテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0021】
前記構造式(1)中のRはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、mは0又は1〜4の整数である。前記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物となることから、mが0であることが好ましい。また、前記構造式(1)中のナフタレン環上のエステル結合の位置は1位、2位のどちらでも良い。即ち、前記ナフトール化合物(a1)としては、1−ナフトール又は2−ナフトールを用いることが好ましい。
【0022】
前記ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40〜65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は所望に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0023】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0〜30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0024】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0025】
前記ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A)を高収率で得られることから、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記ナフトール化合物(a1)が0.95〜1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0026】
前記活性エステル樹脂(B)は、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)を必須の反応原料とする。
【0027】
前記フェノール性水酸基を一つ有する化合物(b1)は、芳香環上に水酸基を一つ有する芳香族化合物であれば何れの化合物でもよく、その他の具体構造は特に限定されない。また、フェノール性水酸基を一つ有する化合物(b1)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。前記フェノール性水酸基を一つ有する化合物(b1)は、具体的には、フェノール、ナフトール、アントラセノール、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物が挙げられる。芳香核上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物となることから、ナフトール化合物が好ましく、1−ナフトール又は2−ナフトールが特に好ましい。
【0028】
前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)は、分子構造中に水酸基を2つ以上有し、当該水酸基が芳香環上に置換している化合物であれば何れの化合物でもよく、その他の具体構造は特に限定されない。また、前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)は、具体的には、ポリヒドロキシベンゼン、ポリヒドロキシナフタレン、ポリヒドロキシアントラセン、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物の他、例えば、各種のフェノール性水酸基含有化合物とホルムアルデヒドとを反応原料とする各種のノボラック型フェノール樹脂や、下記構造式(2)
【0029】
【化2】
[式中pは1又は2であり、qは1〜4の整数である。Arは芳香環を表し、芳香環上に各種の置換基を一つ乃至複数有していてもよい。XはArで表される芳香環同士を結節する構造部位である。]
で表される分子構造を有する化合物等が挙げられる。
【0030】
前記各種のノボラック型樹脂について、原料となるフェノール性水酸基含有化合物は、フェノール、ナフトール、アントラセノール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセンの他、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物が挙げられる。芳香環上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物となることから、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、及びこれらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物が好ましく、ナフトールが好ましい。ナフトールは1−ナフトール、2−ナフトールのどちらでも良い。
【0031】
前記ノボラック型樹脂は、一般的なフェノール樹脂と同様の方法にて製造することができる。具体的には、酸触媒条件下、80〜180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により製造することができる。
【0032】
前記酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これら酸触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
前記フェノール性水酸基含有化合物とホルムアルデヒドとの反応割合は、活性エステル樹脂組成物における所望の性能等に応じて適宜調整されるが、例えば、前記フェノール性水酸基含有化合物1モルに対してホルムアルデヒドが0.01〜0.9モルの範囲で用いることが好ましく、0.1〜0.5モルの範囲で用いることがより好ましい。ホルムアルデヒドはホルマリン溶液として用いても、パラホルムアルデヒドとして用いてもよい。
【0034】
反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0035】
反応終了後は所望に応じて、過剰量の未反応原料を留去するなどしても良い。また、反応混合物を中和処理した後、水洗や再沈殿等により精製しても良い。
【0036】
前記ノボラック型樹脂の水酸基当量は、120〜250g/当量の範囲であることが好ましい。
【0037】
前記構造式(2)で表される分子構造を有する化合物について、Arで表される芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、これらの芳香環上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物が挙げられる。芳香環上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物となることから、Arはナフタレン環であることが好ましい。また、前記構造式(2)中のpは1であることが好ましく、Arがナフタレン環である場合、ナフタレン環上の水酸基の置換位置は1位、2位のどちらでも良い。
【0038】
前記構造式(2)において、Arがナフタレン環であり、pが1である場合、前記構造式(2)で表される分子構造を有する化合物は、より具体的には、下記構造式(2−1)
【0039】
【化3】
[式中Xはナフタレン環同士を結節する構造部位である。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又は下記構造式(3)
【0040】
【化4】
(式中Xは芳香核又はシクロ環を含有する構造部位である。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又は構造式(3)で表される構造部位とXを介して連結する結合点の何れかであり、ナフタレン環を形成するどの炭素原子に結合していても良い。rは0又は1〜4の整数であり、qは1〜4の整数である。)
で表される構造部位とXを介して連結する結合点の何れかであり、ナフタレン環を形成するどの炭素原子に結合していても良い。rは0又は1〜4の整数であり、qは1〜4の整数である。]
で表される分子構造を有する化合物となる。
【0041】
前記構造式(2)中のXは、Arで表される芳香環同士を結節する構造部位であり、その具体構造は特に限定されず、メチレン基以外の脂肪族炭化水素基や、芳香環又はシクロ環を有する構造部位など、様々なものが挙げられる。具体的には、エチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、プロピルメチレン基、t−ブチルメチレン基等のアルキレン基や、下記構造式(X−1)〜(X−5)
【0042】
【化5】
(式中hは0又は1である。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1〜4の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1〜4の整数である。)
の何れかで表される構造部位等が挙げられる。
【0043】
前記構造式(X−1)〜(X−5)中のRはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。
【0044】
前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、前記構造式(2)中のArに相当する芳香族ヒドロキシ化合物と、下記構造式(x−1)〜(x−5)
【0045】
【化6】
[式中hは0又は1である。Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1〜4の整数である。Zはビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基、アルキルオキシメチル基の何れかである。Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1〜4の整数である。]
の何れかで表される化合物(x)とを、酸触媒条件下、80〜180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により製造することができる。
【0046】
前記構造式(x−1)〜(x−5)中のRはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、これらは、前記構造式(X−1)〜(X−5)中のRと同義である。
【0047】
前記構造式(x−1)〜(x−5)中のZは、前記芳香族ヒドロキシ化合物の芳香環と結合を形成し得る官能基であれば特に限定されないが、具体例として、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基、アルキルオキシメチル基が挙げられる。
【0048】
前記酸触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、硫酸、塩酸、シュウ酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。酸触媒の添加量は、前記ナフトール化合物(b)に対し、0.01〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0049】
前記芳香族ヒドロキシ化合物と前記化合物(x)との反応割合は、前記構造式(2)中のnの値の設計値にもよるが、例えば、前記化合物(x)1モルに対して前記芳香族ヒドロキシ化合物を2〜10モルの範囲で用いることが好ましい。
【0050】
反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0051】
反応終了後は所望に応じて、過剰量の芳香族ヒドロキシ化合物を留去するなどしても良い。また、反応混合物を中和処理した後、水洗や再沈殿等を行い、反応生成物から前記構造式(2)で表される成分を精製しても良い。
【0052】
前記構造式(2)で表される化合物の水酸基当量は、140〜300g/当量の範囲であることが好ましい。
【0053】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)は、前記フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)及び前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が有するフェノール性水酸基と反応してエステル結合を形成し得る芳香族化合物であれば、具体構造は特に限定されず、何れの化合物であっても良い。具体例としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、反応活性が高く硬化性に優れる活性エステル樹脂(B)となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0054】
前記フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)の反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40〜65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は所望に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0055】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0〜30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0056】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0057】
前記フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)の反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜変更することができる。中でも、溶剤溶解性が高く、様々な用途に利用しやすい活性エステル樹脂(B)となることから、前記フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)が有する水酸基のモル数(b1OH)と前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が有する水酸基のモル数(b2OH)との割合[(b1OH)/(b2OH)]が10/90〜80/20となる割合であることが好ましく、30/70〜70/30となる割合であることがより好ましい。また、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)が有する水酸基のモル数と前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が有する水酸基のモル数との合計が0.95〜1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0058】
本発明の活性エステル樹脂組成物は、前述の要領で別々に合成した前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)とを配合する方法にて製造しても良いし、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)とを同時に合成する方法で製造しても良い。具体的には、前記活性エステル樹脂(B)の反応原料であるフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)として、前記活性エステル化合物(A)の反応原料であるナフトール化合物(a1)と同一の化合物を用いる場合には、前記ナフトール化合物(a1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)の反応割合を適宜調整することにより、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)とを同時に合成することができる。
【0059】
前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)とを同時に合成する場合、前記活性エステル化合物(A)と前記活性エステル樹脂(B)との合計に対する前記活性エステル化合物(A)の含有量を40%以上とするには、前記ナフトール化合物(a1)、前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)の反応割合は、以下の通りであることが好ましい。まず、前記ナフトール化合物(a1)が有する水酸基のモル数(a1OH)と前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が有する水酸基のモル数(b2OH)との割合[(a1OH)/(b2OH)]が10/90〜99/1となる割合であることが好ましく、60/40〜98/2となる割合であることがより好ましい。また、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記ナフトール化合物(a1)が有する水酸基のモル数と前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)が有する水酸基のモル数との合計が0.95〜1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0060】
本発明の活性エステル樹脂組成物の官能基当量は、硬化収縮率が低く、かつ、硬化性にも優れる活性エステル樹脂となることから、200〜360g/当量の範囲であることが好ましい。なお、本発明において活性エステル樹脂組成物中の官能基とは、活性エステル樹脂組成物中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、活性エステル樹脂組成物の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0061】
本発明の活性エステル樹脂組成物の溶融粘度は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した150℃における値が0.1〜50dPa・sの範囲であることが好ましく、0.1〜5dPa・sの範囲であることがより好ましい。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述の活性エステル樹脂組成物と硬化剤とを含有する。前記硬化剤は本発明の活性エステル樹脂組成物と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
前記エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
本発明の硬化性組成物において、前記活性エステル樹脂組成物と硬化剤との配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合の配合の一例としては、硬化性組成物中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル樹脂組成物中の官能基の合計が0.7〜1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0065】
本発明の硬化性組成物は、更にその他の樹脂成分を含有しても良い。その他の樹脂成分は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂;シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;スチレン−無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂;ポリリン酸エステルやリン酸エステル−カーボネート共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0066】
これらその他の樹脂成分の配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。配合割合の一例としては、本発明の硬化性組成物中1〜50質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0068】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0069】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0070】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0071】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0072】
以上詳述した通り、本発明の活性エステル樹脂組成物は、硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低いという優れた性能を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や、エポキシ樹脂との硬化性、硬化物における耐熱性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものであり、プリント配線基板や半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性樹脂組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0075】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性樹脂組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【実施例】
【0076】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。なお、本実施例において溶融粘度、GPC、の測定条件はそれぞれ以下の通りである。
【0077】
◆溶融粘度測定法
ASTM D4287に準拠し、150℃における溶融粘度をICI粘度計にて測定した。
【0078】
◆GPCの測定条件
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0079】
実施例1 活性エステル樹脂組成物(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1250gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1−ナフトール279.5g、ジシクロペンタジエンとフェノールとの付加反応物(水酸基当量165g/当量)9.7gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.63gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル樹脂組成物(1)を得た。活性エステル樹脂組成物(1)の溶融粘度は0.6dPa・sであった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂組成物(1)中の活性エステル化合物(A)の含有量は94.2%であった。
【0080】
実施例2 活性エステル樹脂組成物(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1270gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1−ナフトール246.9g、ジシクロペンタジエンとフェノールとの付加反応物(水酸基当量165g/当量)47.1gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.63gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル樹脂組成物(2)を得た。活性エステル樹脂組成物(2)の溶融粘度は2.5dPa・sであった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂組成物(2)中の活性エステル化合物(A)の含有量は73.4%であった。
【0081】
実施例3 活性エステル樹脂組成物(3)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1300gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1−ナフトール192.0g、ジシクロペンタジエンとフェノールとの付加反応物(水酸基当量165g/当量)110.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.65gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル樹脂組成物(3)を得た。活性エステル樹脂組成物(3)の溶融粘度は33.0dPa・sであった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂組成物(3)中の活性エステル化合物(A)の含有量は43.4%であった。
【0082】
実施例4 活性エステル樹脂組成物(4)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに1−ナフトールを576g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液81g、蒸留水670gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら攪拌した。その後、95℃に昇温し2時間攪拌した。反応終了後、水と未反応モノマーを加熱減圧条件下で除去し、水酸基当量151g/当量のナフトールノボラック樹脂を得た。
【0083】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1250gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1−ナフトール279.5g、先で得たナフトールノボラック樹脂8.9gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.63gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル樹脂組成物(4)を得た。活性エステル樹脂組成物(4)の溶融粘度は0.9dPa・sであった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂組成物(4)中の活性エステル化合物(A)の含有量は94.0%であった。
【0084】
実施例5 活性エステル樹脂組成物(5)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、1−ナフトールを576g、ベンゼンジメタノール138g、トルエン1200g、パラトルエンスルホン酸・1水和物2gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら攪拌した。その後、120℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して中和し、水分、トルエン及び未反応モノマーを減圧下条件下で除去して、水酸基当量187g/当量のナフトール樹脂を得た。
【0085】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202.0g、トルエン1250gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1−ナフトール279.5g、先で得たナフトール樹脂11.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.63gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル樹脂組成物(5)を得た。活性エステル樹脂組成物(5)の溶融粘度は0.9dPa・sであった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂組成物(5)中の活性エステル化合物(A)の含有量は94.6%であった。
【0086】
実施例6〜10及び比較例1
下記表1に示す割合で各成分を配合し、硬化性樹脂組成物(1)を得た。得られた硬化性樹脂組成物(1)について、下記要領で硬化収縮率と、硬化物における高温条件下での弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
硬化収縮率の測定
トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS−15−1.5C」)を用いて、金型温度154℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間600秒の条件下で、硬化性樹脂組成物(1)を注入成形して、縦110mm、横12.7mm、厚さ1.6mmの成形物を得た。次いで、得られた成形物を175℃で5時間硬化させた後、室温(25℃)で24時間以上放置し、これを試験片とした。試験片の室温での縦方向寸法、金型の154℃での縦方向内寸法をそれぞれ測定し、下記式にて硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)={(金型の154℃での縦方向内寸法)−(試験片の室温での縦方向寸法)}/(金型の154℃での縦方向内寸法)×100(%)
【0088】
【表1】
【0089】
フェノールノボラック樹脂(*1):DIC株式会社製「TD−2131」、水酸基当量104g/当量
エポキシ樹脂(*2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「N−655−EXP−S」、エポキシ当量202g/当量)
【0090】
実施例11〜15及び比較例2
下記表2に示す割合で各成分を配合し、硬化性樹脂組成物(2)を得た。得られた硬化性樹脂組成物(2)について、下記要領で硬化物における高温条件下での弾性率を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
硬化物における高温条件下での弾性率の測定
プレス機を用いて硬化性樹脂組成物(2)を型枠へ流し込み175℃の温度で10分間成型した。型枠から成型物を取り出し、175℃の温度で5時間硬化させた。硬化後の成形物を5mm×54mm×2.4mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」)を用い、レクタンギュラーテンション法、周波数1Hz、昇温温度3℃/分の条件で、試験片の260℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0092】
【表2】
【0093】
フェノールノボラック樹脂(*1):DIC株式会社製「TD−2131」、水酸基当量104g/当量
エポキシ樹脂(*2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「N−655−EXP−S」、エポキシ当量202g/当量)
【要約】
硬化時の収縮率及び硬化物における高温条件下での弾性率が共に低い活性エステル樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供すること。ナフトール化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A)と、フェノール性水酸基を1つ有する化合物(b1)、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(b2)及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(b3)を必須の反応原料とする活性エステル樹脂(B)とを含有し、前記活性エステル化合物(A)の含有量が40%以上であることを特徴とする活性エステル樹脂組成物。
図1
図2