(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ部材の水の流入側又は流出側の少なくとも一方に、前記フィルタ部材を洗浄する洗浄機構を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浮体構造物。
【背景技術】
【0002】
洋上で石油・ガスを生産し、この生産した原油を設備内のタンクに貯蔵して、直接輸送タンカーへの積み出しを行う浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading system)や、洋上で石油・ガスの生産を行わずに、貯蔵施設を持たない浮体式の生産設備や陸上の生産設備で生産された石油・ガスを受け入れて、洋上における貯蔵と輸送タンカーへの積み出しを行う浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備(FSO:Floating Storage and Offloading system)等の洋上係留浮体構造物がある。
【0003】
これらの洋上係留浮体構造物では、プラント部等の生産設備で使用される海水は、ごみや生物を除去する必要があり、
図5に示すように、浮体構造物の表面の海水取入口の開口部10から、配管11、閉止弁12、配管13、配管14、ポンプ15、配管16を経由して送られてくる水をフィルタ装置17によってろ過を行っている。この海水の取り入れでは、開口部10から、外部の海水を取り入れて、ポンプ15により、流路を閉止する閉止弁12を備えた配管11、13,14,16を経由して、各貯水タンク(図示しない)に送られる。
【0004】
そして、この貯水タンクに貯蔵される海水は、貯蔵前、貯蔵中、又は、生産設備で使用される直前にフィルタ装置17によるろ過が行われる。この海水のろ過処理においては、用途によって異なるが、例えば、50μm以上の大型プランクトンを除去している。このフィルタ装置17は、例えば、断面が直径1m程度の筒状体に形成され、この筒状体の中にフィルタ本体が組み込まれている。
【0005】
このフィルタ装置17では、内部を流れる海水の流れ方向が決まっており、しかも、通常は一方向のみ流れるためフィルタ本体の入口の近傍に目詰まりが集中する傾向が強く、フィルタの面積の全部を十分に生かし切れないという問題がある。
【0006】
また、フィルタ本体の形状や数は様々であるが、通常、フィルタの面積はろ過する海水の流量に比べて小さいので、ろ過時間を短くするためにフィルタ前後の圧力差を大きくしてフィルタを通過する流速を大きくしている。そのため、ポンプからの押し込み圧を受けてろ過が行われる。つまり、通過する海水の流量に対して、メッシュの小さなフィルタを小面積で設置した場合には、フィルタの前後における圧力損失は大きく、フィルタが目詰まりすると、圧力損失は更に大きくなる。
【0007】
そして、フィルタにかかる圧力が大きくなると、ろ過の際に、メッシュの孔の大きさに比べて大型の浮遊物がフィルタの表面に張り付いたり、フィルタの穴に押し込まれたりし易くなるので、フィルタが目詰まりし易くなり、また、フィルタの前後の圧力差が大きくなるフィルタの目が破れ易くなり、このフィルタの目詰まりや破損により、ろ過性能が低下して、本来のろ過性能を発揮できなくなるという問題がある。
【0008】
このフィルタの目詰まりに対処するために、定期的にフィルタ表面の浮遊物を排除する逆洗工程が取り入れられており、この逆洗工程によってフィルタ表面から排除された浮遊物をドレインラインから外部に排出している。この逆洗の方法としては、海水や空気をフィルタ表面に高圧で吹き付けて付着した浮遊物を除去する方法や、フィルタ表面で付着した浮遊物を削り取って吸引して除去する方法等がある。
【0009】
これに関連して、船舶の船体内又は船体上に所定の大きさ以上の微生物を分離する膜処理ユニットを配置して、この膜処理ユニットに取水ポンプを連設し、この取水ポンプで船舶外の海水又は淡水をバラストタンクに取水する過程で膜処理ユニットによるろ過を行うバラスト水の取水・処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この膜処理ユニットは、従来、空洞となっている取水口に、複数の膜モジュールを備えた膜処理ユニットを配置しており、この膜処理ユニットを船体外に突出させることでろ過膜の表面積を増大させて取水効率を上げることも提案されている。
【0011】
しかしながら、このバラスト水の取水・処理装置の構成も、膜処理ユニットというフィルタ装置を船舶の船体内又は船体上に配置する構成であり、フィルタ装置としての上記の問題点を有している。
【0012】
一方、この洋上係留浮体構造物等の生産設備で使用される海水量は、船舶で使用される海水量に比べて著しく多量であるため、大容量の処理能力を可能とするために、フィルタ装置自体を大規模にして大型化したり、装置数を増加したりすることにより、フィルタ装置による、ポンプ駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、保守点検におけるコスト増加等のデメリットが大きいという問題がある。
【0013】
つまり、多量の海水をろ過する場合には、フィルタ装置の圧力損失が大きくなると、海水を供給するポンプの揚程を上げる必要が生じると共に、ポンプで消費される電力が大きくなり、ポンプ自体のみならずポンプに電力を供給する発電設備にも影響を与えるという問題がある。
【0014】
また、フィルタ装置が設置される場所としては、プラント部で使用する電力などの供給源であるメインの機関や発電機を配置する区画が考えられるが、この区画は、メインの機関や発電機のための設備が所狭しと、並べられているために、設置容積が比較的大きいフィルタ装置を設置するのが難しく、フィルタ装置の配置場所の確保が困難となるという問題がある。
【0015】
また、フィルタ装置の大型化と装置数の増加により、洋上係留浮体構造物に搭載する重量が増加すると、特に、フィルタ装置が、水面より上のプラント部に設置される場合には、上部構造が大きくなったり重量が嵩んだりすることから、上甲板構造を強化したり、復原性を高めるために船幅を広げたりするといった対応が必要となるという問題がある。
【0016】
また、一般的に、フィルタ装置は、ろ過面積をできるだけ広く取るためと、効果的な逆洗機能を備えるために、複雑な構造をしており、回転装置などの可動部分が含まれていることも多い。そのため、故障する事が多く、保守点検(メンテナンス)や修理が必要であり、この保守点検等の工数も無視できないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過するろ過機構を必要とする浮体構造物において、広いフィルタ面積を容易に確保できて、ポンプ駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、及び、保守点検におけるコスト増加等のデメリットを解消できる浮体構造物、及び、浮体構造物における水のろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような目的を達成するための本発明の浮体構造物は、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過するろ過機構を備えた浮体構造物において、前記ろ過機構を、居住区、機関室、貯蔵タンク、貨物タンク、及び、燃料タンクとは異なる空所区画において、該空所区画を2つの小区画に分割するフィルタ部材を設け、分割された前記小区画の一方の小区画に、当該浮体構造物の外部に連通する開口部、又は、該開口部と連通する配管を、設けると共に、分割された前記小区画の他方の小区画に、当該浮体構造物の内部に設けた姿勢制御用タンク又は貯水タンク又は水使用設備に連通する配管を設けて構成される。
【0020】
この構造によれば、一般的に、洋上係留浮体構造物や船舶やバージなどの浮体構造物では、浮力を確保するために、内部に空所区画を設けていることが多いので、フィルタ部材を配設する場所としての空所区画の確保が容易であるので、広い面積のフィルタ部材を配設することが容易にできる。なお、このフィルタ部材を設けた空所区画は1箇所に限らず、フィルタ部材で必要とされるフィルタ面積を確保できるように、複数箇所設けてもよい。また、同じ空所区画に、目の大きさの異なるフィルタ部材を複数配置してもよい。
【0021】
その結果、フィルタの面積をろ過する海水の流量に比べて大きくすることができ、フィルタ前後の圧力差を小さくしてフィルタを通過する流速を小さくできる。従って、フィルタの目詰まりと破損を抑制でき、目詰りによるフィルタ部材による圧力損失の増加を回避して、ろ過性能を良好に維持できる。
【0022】
また、多量の海水をろ過しても、フィルタ部材の圧力損失が小さいので、ポンプの押し込み圧、及び、ポンプの駆動力を小さくすることできるので、ポンプの揚程を小さくでき、消費電力を小さくできる。
【0023】
また、フィルタ装置に比べてフィルタ部材を入れるケースや配管が不要になるので、浮体構造物に搭載する重量を抑制でき、しかも、水面より下に空所区画がある場合が多いので、上部構造が大きくなったり重量が嵩んだりするのを回避でき、上甲板構造を強化したり、復原性を高めるために船幅を広げたりするといった対応が不要となる。
【0024】
従って、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水を、フィルタを通過させてろ過するフィルタ装置を浮体構造物に搭載する代わりに、空所区画の内部にフィルタ部材を設け、空所区画内でろ過するので、広いフィルタ面積を容易に確保でき、ポンプ駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、保守点検におけるコスト増加等のデメリットを解消できる。
【0025】
上記の浮体構造物において、前記空所区画は、少なくとも一部の壁面が当該浮体構造物の一部を形成する壁面である区画であるように構成すると、あらためて、フィルタ部材を設置するための区画を形成する必要がなくなる。この浮体構造物の一部を形成する壁面としては、例えば、浮体構造物の縦通隔壁、横隔壁、浮体構造物の外部の水と接する外板等がある。
【0026】
上記の浮体構造物において、前記フィルタ部材を設けた空所区画は、当該浮体構造物の稼働中に、水を排水できるように構成すると、次のような効果を奏することができる。
【0027】
つまり、浮体構造物の稼働中に、フィルタ部材の洗浄や保守点検や修理ができるので、フィルタ部材の洗浄や保守点検や修理で浮体構造物の稼働を停止する必要がなくなる。なお、一般的には、船舶の場合には3年又は5年等で定期的にドック入りするのでその際にフィルタ部材も点検可能である。しかしながら、洋上係留浮体構造物の場合は、このドック入りが行われない可能性があるので、この浮体構造物の稼働中に、フィルタ部材の洗浄や保守点検や修理ができることは大きなメリットとなる。
【0028】
また、一般的なフィルタ装置で必要な逆洗機能を備えるための複雑な構造が不要になるので、逆洗機能の機器類の故障が少なくなり、保守点検(メンテナンス)や修理が少なくなり、保守点検等の工数を著しく減少できる。
【0029】
上記の浮体構造物において、前記フィルタ部材の水の流入側又は流出側の少なくとも一方に、前記フィルタ部材を洗浄する洗浄機構を設けて構成すると、この構成のフィルタ部材では広い面積を容易に確保でき、フィルタ部材の前後の圧力差も小さく、フィルタ部材を通過する流速も小さいので、浮遊物が目詰まりしても、フィルタ部材の孔の奥まで行かないので、フィルタ部材の表面部分に付着した浮遊物は剥がれやすく、水洗浄やエア洗浄で容易に洗い落すことができるので、容易にフィルタ性能を再生できる。
【0030】
当該浮体構造物が、生産設備を持っている洋上係留浮体構造物である場合には、使用される海水量は、船舶で使用される海水量に比べて著しく多量であるため、大容量の処理能力を可能とするために、フィルタ装置自体を大規模にして大型化したり、装置数を増加したりする必要があるので、この広い面積のフィルタ部材を配置できるろ過機構は大きなメリットとなる。
【0031】
また、当該浮体構造物が船舶である場合には、バラスト水をこの空所区画のフィルタ部材で処理することにより、フィルタ装置を有していないバラスト水処理装置を搭載することができる。この場合に、バラスト水を処理する水処理装置をフィルタ装置がない装置にすることができるため、全体を簡素化及び小型化することができ、故障及びメンテナンスの手間の減少を図ることができる。
【0032】
また、当該浮体構造物がろ過処理をした水を外部に供給する場合には、バラスト水処理を必要とする船舶であっても、その船舶にバラスト水処理装置を備えることなく、その船舶のバラストタンクに、この浮体構造物のある海域の海水を水処理してから供給したり、その船舶のバラストタンクに積み込まれていたバラスト水を水処理してから、この浮体構造物のある海域に排出したりすることができる。
【0033】
そして、上記のような目的を達成するための本発明の浮体構造物における水のろ過方法は、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過する浮体構造物における水のろ過方法において、居住区、機関室、貯蔵タンク、貨物タンク、及び、燃料タンクとは異なる空所区画に設けられ、かつ、該空所区画を2つの小区画に分割するフィルタ部材で、分割された前記小区画の一方の小区画に流入する水をろ過して、分割された前記小区画の他方の小区画に流出させて、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過することを特徴とする方法である。この方法によれば、上記の浮体構造物における効果と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の浮体構造物、及び、浮体構造物における水のろ過方法によれば、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水を、フィルタを通過させてろ過する必要のある浮体構造物において、フィルタ装置を搭載する代わりに、空所区画の内部にフィルタ部材を設け、空所区画内でろ過するので、広いフィルタ面積を容易に確保でき、ポンプ駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、保守点検におけるコスト増加等のデメリットを解消できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る実施の形態の浮体構造物、及び、浮体構造物における水のろ過方法について、図面を参照しながら説明する。この本願発明の対象となる浮体構造物は、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)や浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備(FSO)等の外部の水を処理して使用する洋上係留浮体構造物、外洋を航海して、バラスト水を処理する必要のある船舶、外部の水を処理して処理水を洋上係留浮体構造物や船舶に供給するバージ等である。
【0037】
最初に、本発明の第1の実施の形態の浮体構造物について説明する。この浮体構造物は、
図1に示すように、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過するろ過機構を備えた洋上係留浮体構造物1であり、このろ過機構の一部として、水面より下の空所区画7にフィルタ部材20を配設して構成される。
【0038】
この洋上係留浮体構造物1は、側面を形成する外板2、底面を形成する底板3、上面を形成する上甲板4と、上部構造物5を有して構成されている。この洋上係留浮体構造物1は、特に
図1では図示していないが、居住区、機関室、貯蔵タンク、貨物タンク、及び、燃料タンクを有して構成されている。
【0039】
本発明では、これらの区画とは異なる空所区画7において、この空所区画7を2つの小区画7a、7bに分割するフィルタ部材20を設け、分割された区画7a、7bの一方の小区画7aに、洋上係留浮体構造物1の外部に連通する開口部10と連通する配管11を設ける。この配管11には、空所区画7の水を排出できるように、空所区画7と外部(水中)を遮断するための閉止弁12を設ける。なお、通常はシーチェストと呼ばれる海水取水機構を設けているので、この海水取水機構と空所区画7を閉止弁12を設けた配管11で連通するのが好ましい。
【0040】
また、それと共に、分割された小区画7a、7bの他方の小区画7bに取水配管13を設け、上部構造物5の上に設けた水使用設備6に連通する配管14とポンプ15と配管16を設けて構成する。なお、ポンプ15から水使用設備6に直接接続する代わりに、姿勢制御用タンク、又は、貯水タンクに接続して、そこから必要に応じて、ろ過された後の水を水使用設備6に供給するように構成してもよい。
【0041】
なお、このフィルタ部材20を設けた空所区画7は1箇所に限らず、フィルタ部材20で必要とされるフィルタ面積を確保できるように、複数箇所設けてもよい。また、同じ空所区画7に、複数の目の大きさの異なるフィルタ部材20を積層若しくは離間して配置してもよい。
【0042】
この構成では、空所区画7は水面(喫水線)W.L.より下に設けられているので、外部の水は静水圧により開口部10から空所区画7の一方の小区画7aに流入し、フィルタ部材20を下側から上側に通過して、空所区画7の他方の小区画7bに流入し、小区画7bに挿入された取水配管13と、空所区画7の上に配置された配管14を経由して、空所区画7の上に配置され、かつ、水面(喫水線)W.L.より下に設置されたポンプ15に到達する。そのため、ポンプ15の揚程を小さくできる。このフィルタ部材20でろ過された水は、ポンプ15から配管16を経由して水使用設備6に供給される。
【0043】
この空所区画7としては、少なくとも一部の壁面を縦通隔壁9、若しくは、横隔壁(図示しない)、若しくは、外部の水と接する外板2で構成されている区画を選択すると、改めて、フィルタ部材20を設置するための区画を形成する必要がなくなるので、好ましい。なお、一般的に、洋上係留浮体構造物1では、船舶のように座礁する危険性が少ないので、
図1に示すような二重底を備えていないものもある。なお、洋上係留浮体構造物1においては、没水区画以外でもポンプなどの専用注水設備により海水を注水できる区画を有していることが多いので、これらの区画をフィルタ部材20を配置する空所区画7として使用することで、ろ過が可能なろ過区画を容易に構成できる。
【0044】
また、このフィルタ部材20を設けた空所区画7は、洋上係留浮体構造物1の稼働中には、空所区画7の内部に溜まった水を排水できるように構成することが好ましく、これにより、洋上係留浮体構造物1の稼働中に、フィルタ部材20の洗浄や保守点検や修理ができるようになる。そのため、フィルタ部材20の洗浄や保守点検や修理で洋上係留浮体構造物1の稼働を停止する必要がなくなる。
【0045】
なお、一般的には、船舶の場合には3年又は5年等で定期的にドック入りするのでその際にフィルタ部材20も点検可能である。しかしながら、洋上係留浮体構造物1の場合は、このドック入りが行われない可能性があるので、この洋上係留浮体構造物1の稼働中に、フィルタ部材20の洗浄や保守点検や修理ができることは大きなメリットとなる。
【0046】
このフィルタ部材20は、用途によって異なるが例えば50μm以上の大型プランクトン等の生物を含む浮遊物を除去するろ過性能を持つものであるが、一枚又は間隔を設けた複数枚の細孔を有するフィルタ板で構成してもよいが、幾つかのフィルタ機能を有する部材を重ね合わせてフィルタ層を形成して構成してもよい。なお、十分広いフィルタ面積を確保できない場合には、フィルタ部材20の形状を平面から小さな波形に変えたりすることによりフィルタ部材の投影面積当たりのろ過実面積を増加することができる。
【0047】
このように、フィルタ部材20を空所区画7の内部に広い面積で設置することで、フィルタ部材20に加わる圧力を小さくすることができ、フィルタ部材20を通過する水の流速を遅くでき、フィルタ部材20による圧力損失を大幅に低減できる。これにより、ポンプ15の揚程を低く抑えることが可能となる。また、フィルタ部材20にかかる圧力が小さくなるので、フィルタ部材20の目が破れるのを防止できる。
【0048】
言い換えれば、フィルタ部材20のフィルタ面積を、静水圧と重力と開口部10から流入する水の流れの乱流程度でフィルタ部材20の表面に浮遊物が目詰まりすることを防ぐことができる程度まで、圧力を下げるのに十分な面積とすることが好ましい。また、ポンプ15が常に海水を取水できるように、ポンプ15の能力以上の海水ろ過能力を有するに十分な面積のフィルタ部材とすることが好ましい。
【0049】
更に、フィルタ部材20を空所区画7の内部に広い面積で設置することで、フィルタ部材20を通過する水の流れが均一化されるので、特定の場所が目詰まりするのを回避でき、フィルタ部材20の面積の全体を同じように使用することができるようになる。なお、フィルタ部材20への流入方向を下から上にすると、目を塞ぐ浮遊物が重力により剥がれ易い上に、重力や流れにより剥がれたら浮遊物が自重により下降する場合が多いので、再度目詰まりの材料にならないようにすることができる。逆に上から下に流す場合には、一度剥がれた後に再度フィルタ部材20の上面に堆積して目詰まりさせる可能性が生じる。なお、フィルタ部材20の配置方向は、必ずしも水平方向に設ける必要は無く、傾斜させても、垂直方向でも良いが、水平方向にすると、フィルタ部材20を配置する構造材の上を歩行しながらフィルタ部材20を点検したり、洗浄したりすることが容易となる。
【0050】
このフィルタ部材20の水の流入側又は流出側の少なくとも一方に、フィルタ部材20を洗浄する洗浄機構を設けて構成する。この洗浄機構としては、高圧水噴射機構やエア噴射機構などを用いることができ、この空所区画7が排水された状態で、高圧洗浄水や高圧洗浄空気でフィルタ部材20の流入側の表面部分に付着した浮遊物を洗い落すように、高圧洗浄水噴射ノズルと高圧水配管、若しくは、高圧洗浄空気噴射ノズルと高圧空気管等をフィルタ部材20の流入側に設けて構成する。また、この小区画7aの底部には洗浄した水を排出するための排水管(図示しない)と排水弁(図示しない)が設けられる。
【0051】
また、この洗浄においては、固定の噴射ノズル、若しくは、乗組員の手でホースの先に付けた噴射ノズルで洗浄する方法が考えられる。乗組員が洗浄する場合には、目視で常にフィルタ部材20の状態を確認でき、常にフレッシュな状態で水のろ過を開始できるというメリットがある。
【0052】
この構成では、広い面積のフィルタ部材20で、フィルタ部材20の前後の圧力差が小さく、フィルタ部材20を通過する流速も小さくすることができるので、フィルタ部材20が目詰まりしても、浮遊物はフィルタ部材20の孔の奥まで行かずに、フィルタ部材20の流入側の表面部分に付着して、剥がれ易い状態になるので、この高圧水洗浄や高圧空気洗浄で容易に洗い落すことができ、フィルタ性能を再生できる。
【0053】
なお、この高圧水洗浄や高圧空気洗浄は、空所区画7の水を抜いて行うが、高圧水洗浄の場合には、空所区画7に水がある場合であっても、フィルタ部材20を通過する流速が遅いので、洗浄効率は悪いがある程度の洗浄効果を得ることができる。また、この洗浄で洗い落とした浮遊物は洗浄水などと共にスラッジタンクに移送して、水と分離した浮遊物は貯蔵して、定期的に陸揚げ処理する。
【0054】
また、
図1に示すように、開口部10に配管11を設けて空所区画7に連通させる代わりに、開口部10を空所区画7の小区画7aに直接設けてもよい。なお、開口部10から流入する水が、フィルタ部材20の表面に直接当たるように注水できると、この水流により、フィルタ部材20を通過する流速が遅いので、フィルタ部材20の表面を洗浄でき、洗浄効果を発揮できる。
【0055】
この場合には、開口部10を閉鎖できるように閉止扉(図示しない)を設ける。この開口部10を小区画7aに設けた場合には、フィルタ部材20の面積が十分広くて表面の圧力が小さくなることで、浮遊物は自身に作用する重力や空所区画7の小区画7a内の流れにより、その多くはフィルタ部材20に付着することなく小区画7a内を浮遊したり、高圧水洗浄によりフィルタ部材20から剥がれ落ちて浮遊したりして、この開口部10から船外へ出て行くので、陸揚げ処理する浮遊物の量を減少できる。
【0056】
また、ポンプ等で注水したり排水したりするときに、フィルタ部材20に向かって水の流れができるように注水若しくは排水することが好ましく、これにより、浮遊物のフィルタ部材20への付着を抑えることができる。
【0057】
また、一般的なフィルタ装置で必要な逆洗機能を備えるための複雑な構造が不要になるので、逆洗機能の機器類の故障が少なくなり、保守点検(メンテナンス)や修理が少なくなり、保守点検等の工数を著しく減少できる。つまり、フィルタ部材20を空所区画7の内部に設置するだけの簡単な構造であり、しかも、稼働するものがなく、故障の原因となるような機構が存在しないので、運航者への負担は、フィルタ装置を装備する場合に比べて著しく軽減される。従って、このフィルタ部材20の設置により、フィルタ装置が無くても設置しているのと同等の機能を、運航者に負担をかけることなく達成できる。
【0058】
この構造によれば、一般的に、洋上係留浮体構造物1や船舶やバージなどの浮体構造物では、浮力を確保するために、内部に空所区画7を設けていることが多いので、フィルタ部材20を配設する場所としての空所区画7の確保が容易であるので、広い面積のフィルタ部材20を配設することが容易にできる。
【0059】
その結果、フィルタの面積をろ過する海水の流量に比べて大きくすることができ、フィルタ部材20の前後の圧力差を小さくしてフィルタ部材20を通過する流速を小さくできる。従って、フィルタ部材20の目詰まりと破損を抑制でき、目詰りによるフィルタ部材20による圧力損失の増加を回避して、ろ過性能を良好に維持できる。
【0060】
また、多量の海水をろ過しても、フィルタ部材20の圧力損失が小さいので、ポンプ15の押し込み圧、及び、ポンプ15の駆動力を小さくすることできるので、ポンプ15の揚程を小さくでき、消費電力を小さくできる。
【0061】
また、フィルタ装置に比べてフィルタ部材20を入れるケースや配管が不要になるので、洋上係留浮体構造物1に搭載する重量を抑制でき、しかも、水面より下に空所区画7がある場合が多いので、上部構造物5が大きくなったり重量が嵩んだりするのを回避でき、上甲板4の構造を強化したり、洋上係留浮体構造物1の復原性を高めるために船幅を広げたりするといった対応が不要となる。
【0062】
従って、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水を、フィルタ装置を浮体構造物に搭載する代わりに、空所区画7の内部にフィルタ部材20を設け、空所区画7の内部でろ過するので、広いフィルタ面積を容易に確保でき、ポンプ15の駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、保守点検におけるコスト増加等のデメリットを解消できる。
【0063】
そして、上記のように、浮体構造物が、生産設備を持っている洋上係留浮体構造物1である場合には、使用される海水量は、船舶で使用される海水量に比べて著しく多量であり、大容量の処理能力を必要とするために、フィルタ装置自体を大規模にして大型化したり、フィルタ装置の設置数を増加したりする必要があるが、この実施の形態の洋上係留浮体構造物1では、空所区画7に、広い面積のフィルタ部材20を配置できるので、このろ過機構は非常に大きなメリットとなる。つまり、水処理で大きな面積と容積を必要とするフィルタ装置を設置する場所を改めて確保する必要がないので、水処理装置の配置における困難さを排除できる。特に、フィルタ装置を有しない水処理装置の中にはフィルタ装置がないことが配置上の大きなメリットとなっているものが有るので、そのメリットをそのまま発揮できる。
【0064】
次に、本発明の第2及び第3の実施の形態の浮体構造物について説明する。これらの浮体構造物は、
図2及び
図3に示すように、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過するろ過機構を備えて、推進装置を有して自航する船舶1A、1Bであり、このろ過機構の一部として、水面(満載喫水線等)W.L.より下又は上の空所区画7にフィルタ部材20を配設して構成される。
【0065】
この船舶1A、1Bは、側面を形成する外板2、底面を形成する底板3、上面を形成する上甲板4等を有して構成されている。この船舶1A、1Bは、燃料タンク8を有し、更に、特に
図2及び
図3では図示していないが、居住区、機関室、貨物倉、及び、バラストタンク等を有して構成されている。
【0066】
船舶においては、船舶のバラスト水の使用に伴い、このバラスト水の移動に伴う海洋生物の移動により、外来種による固有の生態系破壊が進んでいることを受け、国際海事機関(IMO)では船舶に積載されるバラスト水の排出においては、地域外の生物や細菌等の排出を規制することが検討されており、一部の国では排出の規制が行われているという事情がある。
【0067】
そのため、船舶が寄港する特定の地域においては、バラスト水を取水する際に、シーチェストと呼ばれる舷側または船底に設けられた船体の一部を利用した取水区画からバラストポンプで海水を取水し、水処理装置を通過させて生物や細菌等を除去もしくは死滅させた海水をバラストタンクへ注水したり、あるいは、バラスト水を外部に排出する際に、バラストタンクからの海水を、水処理装置を通過させて、生物や細菌等を除去もしくは死滅させてから外部に排出したりする必要がある。そのため、この海水等に含まれる生物や細菌等を除去もしくは死滅させて注水又は排出するのに使用するバラスト水の水処理装置を船舶に搭載する必要がある。
【0068】
この水処理装置の構成として、例えば、
図6に示すように、シーチェストと呼ばれる開口部10から配管11、取水配管13、配管14、ポンプ15を経由して、フィルタ装置17と水処理装置18で水処理した後の水をバラスト水として使用することが考えられている。このフィルタ装置17には、一般的に、大型のプランクトンなどを除去するために50μmメッシュ程度のフィルタ装置が含まれているが、フィルタ装置は一般に嵩張るため、水処理システムによっては、ろ過機能を持たない装置もある。
【0069】
このろ過機能を持たない水処理システムでは、フィルタ装置がないために水処理システムは全体として小型化でき、また、故障が少ないというメリットがあるが、その一方で、大型のプランクトン等を除去しないためにバラストタンク内に沈殿物が堆積しやすいというデメリットもある。さらに、沈殿物内に処理が出来なかった生物などが繁殖する危険性が有り、そのまま排出すると生態系を傷つける事になるため、その排出も規制の対象となるので、水処理が不十分になり易いという問題がある。
【0070】
これに対応できるように、本発明の第2の実施の形態の船舶1Aでは、
図2に示すように、水面W.L.より下の空所区画7を2つの小区画7a、7bに分割するフィルタ部材20を設け、分割された区画7a、7bの一方の小区画7aに、船舶1Aの外部に連通する開口部(シーチェスト)10と連通する配管11を設ける。また、それと共に、分割された小区画7a、7bの他方の小区画7bに取水配管13と配管14とポンプ15と配管16を設け、機関室等の区画に設けた水処理装置18と小区画7bを連通させて構成する。
【0071】
この空所区画7としては、少なくとも一部の壁面を縦通隔壁9、若しくは、横隔壁(図示しない)、若しくは、外部の水と接する外板2で構成されている区画を選択すると、つまり、船体構造の一部を利用した区画を、フィルタ部材20を設ける空所区画7として選択すると、改めて、フィルタ部材20を設置するための区画を形成する必要がなくなるので、好ましい。なお、一般的に、船舶は座礁に対応するために、二重底を備えているものが多いので、この二重底の空間を、フィルタ部材20を配置する空所区画7として利用することもできる。また、一般的に、船舶では没水区画以外でもポンプなどの専用注水設備により海水を注水できる区画を有していることが多いので、これらの区画をフィルタ部材20を配置する空所区画7として使用することで、ろ過が可能なろ過区画を容易に構成できる。
【0072】
この構成によれば、取水中は、水は、静水圧により開口部10から自動的にフィルタ部材20の上流側(
図2では下側)の小区画7aに流入して、フィルタ部材20を通過して小区画7bに入る。このフィルタ部材20でろ過された水は、ポンプ15の吸い込み側へ導かれてポンプで押し出されて水処理装置18に供給される。水処理装置18で処理された水は、船舶1Aに設けられているバラストライン(図示しない)及びバラストポンプ(図示しない)によりバラストタンク(図示しない)へ貯留される。
【0073】
なお、このシーチェストと呼ばれる開口部10はバラスト水だけでなく、冷却水や雑用水を取水する用途でも利用される。
【0074】
また、本発明の第3の実施の形態の船舶1Bでは、
図3に示すように、水面W.L.より上の空所区画7を2つの小区画7a、7bに分割するフィルタ部材20を設け、分割された区画7a、7bの一方の小区画7aに、船舶1Bの外部に連通する開口部(シーチェスト)10と連通する配管11に、配管14、ポンプ15、及び配管16aを順に設ける。また、それと共に、分割された小区画7a、7bの他方の小区画7bに取水配管13と配管16bを設け、上甲板4の上に設けた水処理装置18と小区画7bを連通させて構成する。
【0075】
この構成によれば、取水中は、水は、小区画7aが水面W.L.より上にあるので、静水圧だけでは、流入してこないので、ポンプ15等の専用注水設備で空所区画7へ海水を注水する必要がある。このポンプ15からの吐出により、フィルタ部材20を通過して小区画7bに入る。このフィルタ部材20でろ過された水は、小区画7bから押し出されて水処理装置18に供給される。水処理装置18で処理された水は、船舶1Bに設けられているバラストライン(図示しない)及びバラストポンプ(図示しない)によりバラストタンク(図示しない)へ貯留される。
【0076】
この船舶1Bのように、水処理装置18をバラストタンクよりも高い位置にすると、静水圧によりバラストタンクの頂部まで注水することが可能となるためバラストタンクへ注水するためのポンプを不要にすることができる。
【0077】
これらの船舶1A、1Bでは、水処理装置18で処理されたバラスト水は必要に応じて各バラストタンクに供給される。通常、バラストポンプは複数台装備されているため、1台運転の場合にはもう1台のバラストポンプをろ過の為の区画へ海水を注水するためのポンプに利用することも可能である。つまり、ポンプ15をバラストポンプで兼用する構成にしてもよい。
【0078】
また、
図2及び
図3の構成では、バラストタンクに入れる水をフィルタ部材20を通過させて水処理装置18に入れて水処理してからバラストタンクに入れる構成としているが、バラストタンクから排出する水をフィルタ部材20を通過させて水処理装置18に入れて水処理してから外部に排出する構成にしてもよい。この場合は、
図2及び
図3における配管14をバラストタンク側に接続し、水処理装置18による処理後の水を配管11に導くように構成すればよい。
【0079】
また、船舶1A、1Bにおいては、バラスト水を取水又は排水するとき以外は、フィルタ部材に水を通す必要が無いため、フィルタ部材20の全部若しくは一部を取り外して洗浄又は交換等ができるように構成すると、万一の目詰まりが生じても容易に目詰まりを解消できる。
【0080】
また、第1の実施の形態の洋上係留浮体構造物1と同様に、高圧洗浄水噴射ノズルと高圧水配管若しくは高圧洗浄空気噴射ノズルと高圧空気管をフィルタ部材の上流側に設けても良いが、船舶1A、1Bの場合はバラスト水の注水又は排水のとき以外はこのフィルタ部材20がある空所区画7から水を排出できるので、フィルタ部材20の下流側に設けて、必要に応じて高圧洗浄水若しくは高圧洗浄空気を噴射することでフィルタ部材20の逆洗浄を行うことができる。また、空所区画7を、常時は没水しない区画で構成すると、水の取水が終了した後、フィルタ部材20の下流側から洗浄して、フィルタ部材20に付着した浮遊物を洗い流す事ができる。
【0081】
一方、シーチェストと呼ばれる開口部10は、海水で満たされていることが多いため、取水して水を移動していない状態が長くなると水生生物が付着してフィルタ部材20の目を潰してしまう可能性があるので、生物付着防止装置を開口部10の近傍に設けることが有効である。また、開口部10の周辺に船底防汚塗料を塗布したり、フィルタ部材20に目を潰さないように船底防汚塗料を塗布することで、その効果が増えることも期待できる。なお、このシーチェストと呼ばれる開口部10はバラスト水だけでなく、冷却水や雑用水を取水する用途でも利用される。
【0082】
上記のような、第2及び第3の実施の形態の浮体構造物で、船舶1A、1Bである場合には、バラスト水をこの空所区画7のフィルタ部材20で処理することにより、バラスト水を処理する水処理システムを、フィルタ装置17を設けずに、フィルタ部材20で代用させて、フィルタ機能が無い水処理装置18で構成することができるため、全体を簡素化及び小型化することができ、故障の減少を図ることができる。つまり、フィルタ装置を有していないメリットを活かしつつ、フィルタ部材20で沈殿物の削減を達成することができる。
【0083】
特に船舶においては、フィルタ装置を設置しないことで、フィルタ装置の配置のための構造強化による構造物全体の重量増加、及び、重量物が高所にあることで復原性を増すための船舶の形状の変更が生じるのを回避できる。これにより、船舶の小型化に寄与できる。また、フィルタ装置による圧力損失分のバラストポンプの仕様を変更したり、発電機を増強したりすることが不要となる。
【0084】
また、既存の空所区画7にフィルタ部材20を配置するので、既存の船舶における機器類の配置を変更する必要が無い。また、フィルタ装置を有しない水処理装置の沈殿物対策としてフィルタ機能を付与するために空所区画7を追設する場合においても、機関室内の配管変更が出ないため、工事は非常に簡便となる。
【0085】
次に、本発明の第4の実施の形態の浮体構造物について説明する。この浮体構造物は、
図4に示すように、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過するろ過機構を備えているが、推進装置を持たず自航はできないバージ1Cであり、このろ過機構の一部として、水面W.L.より下又は上(
図4では下)の空所区画7にフィルタ部材20を配設して構成される。
【0086】
このバージ1Cは、側面を形成する外板2、底面を形成する底板3、上面を形成する上甲板4を有して構成されている。このバージ1Cは、特に
図4では図示していないが、必要に応じて、居住区、機関室、処理水貯蔵タンク31等を有して構成されている。
【0087】
図4の構成では、水面W.L.より下の空所区画7において、この空所区画7を2つの小区画7a、7bに分割するフィルタ部材20を設け、分割された区画7a、7bの一方の小区画7aに、バージ1Cの外部に連通する開口部10と連通する配管11を設ける。この配管11には、空所区画7の水を排出できるように、空所区画7と外部(水中)を遮断するための閉止弁12を設ける。
【0088】
また、それと共に、分割された小区画7a、7bの他方の小区画7bに取水配管13を設け、この取水配管13に、配管14、ポンプ15、配管16を順に設けて、この配管16を空所区画7の上部の甲板21の上に設けた水処理装置18に接続して構成する。また、この処理された水を貯留する処理水貯蔵タンク31と外部の船舶1Zとの間に配管33を接続可能に設けると共に、この配管33にポンプ32を設ける。
【0089】
この構成では、空所区画7は水面W.L.より下に設けられているので、外部の水は静水圧により開口部10から空所区画7の一方の小区画7aに流入し、フィルタ部材20を下側から上側に通過して、空所区画7の他方の小区画7bに流入し、小区画7bに挿入された取水配管13と、空所区画7の上に配置された配管14を経由して、空所区画7の上に配置されたポンプ15に到達する。このフィルタ部材20でろ過された水は、ポンプ15から配管16を経由して水処理装置18に供給され、水処理装置18で処理された水は処理水貯蔵タンク31に送られて貯蔵される。そして、この処理水貯蔵タンク31に貯蔵された水は、ポンプ32と配管33により、処理済のバラスト水として、外部の船舶1Zに供給される。
【0090】
なお、外部の船舶1Zからバラスト水を受け入れて、フィルタ部材20を通過させたのち水処理装置18に入れて、水処理した後に、外部に排出するように構成することもできる。この場合は、外部の船舶1Zからのバラスト水の配管を小区画7aに接続し、水処理装置18の出口側配管を外部への排出配管に接続すればよい。
【0091】
この第4の実施の形態の浮体構造物で、バージ1Cである場合には、バラスト水の水処理を必要とする船舶1Zが水処理装置を備えることなく、その船舶1Zのバラストタンクに、このバージ1Cが係留されている海域の海水を水処理してから供給したり、その船舶1Zのバラストタンクに積み込まれていたバラスト水を水処理してから、このバージ1Cが係留されている海域に排出したりすることができる。
【0092】
次に、本発明の浮体構造物における水のろ過方法について説明する。このろ過方法は、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過する浮体構造物1、1A、1B、1Cにおける水のろ過方法であり、居住区、機関室、貯蔵タンク、貨物タンク、及び、燃料タンク8とは異なる空所区画7に設けられ、かつ、この空所区画7を2つの小区画7a、7bに分割するフィルタ部材20で、分割された小区画7a、7bの一方の小区画7aに流入する水をろ過して、分割された小区画7a、7bの他方の小区画7bに流出させて、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水をろ過する方法である。
【0093】
上記の実施の形態の浮体構造物1、1A、1B、1C、及び、浮体構造物における水のろ過方法によれば、外部から取り入れた水、又は、外部に排出する水を、フィルタを通過させてろ過する必要のある浮体構造物1、1A、1B、1Cにおいて、フィルタ装置を搭載する代わりに、空所区画7の内部にフィルタ部材20を設け、空所区画7内でろ過するので、広いフィルタ面積を容易に確保でき、ポンプ15の駆動力の増加、配置場所の確保の困難性、重量の増加、保守点検におけるコスト増加等のデメリットを解消できる。