特許第6273203号(P6273203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友精化株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6273203-ジェル状組成物 図000007
  • 特許6273203-ジェル状組成物 図000008
  • 特許6273203-ジェル状組成物 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273203
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ジェル状組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20180122BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20180122BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180122BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20180122BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20180122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C08L33/02
   C08K5/053
   C08K3/00
   C08L71/02
   C08K3/16
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61K8/19
   A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-523808(P2014-523808)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2013068506
(87)【国際公開番号】WO2014007370
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-151748(P2012-151748)
(32)【優先日】2012年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 昭男
(72)【発明者】
【氏名】森光 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】西川 佑亮
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−213676(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055354(WO,A1)
【文献】 特開2008−081495(JP,A)
【文献】 特開平11−309365(JP,A)
【文献】 特開2007−297368(JP,A)
【文献】 特開2013−116890(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084469(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/046290(WO,A1)
【文献】 特開2013−018725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
A61K
A61Q
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体0.3〜3質量%と、多価アルコール3〜20質量%と、無機塩0.25〜5質量%とを含み、
前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、
(i)(メタ)アクリル酸およびアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合させて得られる重合体、又は
(ii)(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.001〜2/45質量部を重合させて得られる重合体であり、
25℃、周波数1Hz〜10Hzにおける周波数分散測定の損失正接(tanδ)と周波数(Hz)の関係を式:tanδ=a×周波数(Hz)bで表すとき、0>b 且つ aが0.1以上0.45以下である、
ジェル状組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載のジェル状組成物。
【請求項3】
多価アルコールが1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビタンおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のジェル状組成物。
【請求項4】
無機塩が、無機塩化物である、請求項1〜のいずれかに記載のジェル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を増粘剤として含む、スキンケア、ヘアケア等の化粧品に好適なジェル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の増粘剤としては、例えば、キサンタンガム等の天然物系、ヒドロキシエチルセルロース等の半合成物系およびカルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等の合成物系等の増粘剤が幅広く使用されている。特に、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等のカルボキシル基含有水溶性重合体は、少量の使用量で優れた増粘性を示し、化粧品の使用感をコントロールできることから、種々の化粧品に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、40〜75重量%のポリエチレングリコール、20〜55重量%のグリセリン及びカルボキシビニルポリマーからなることを特徴とするジェル状化粧料が開示されている。また、特許文献2には、アルキル変性されていても良い、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と多価アルコールを15〜30質量%含有する保湿のための化粧料が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのカルボキシル基含有水溶性重合体を用いた化粧料では、無機塩などの電解質が存在すると粘度が急激に低下するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335429号公報
【特許文献2】特開2010−64986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電解質を含むにもかかわらず、粘度が低下せず、肌に適用するときには従来にないプルプルした使用感を得られる一方、肌になじませた場合には滑らかな触感が得られるジェル状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体と、多価アルコールとを用いることにより、電解質の存在下でも粘度が保持され、肌に適用する際には適度な弾性を有しており、かつ肌になじませた際には滑らかな触感を示すジェル状の組成物が得られることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体0.3〜3質量%と、多価アルコール3〜20質量%と、無機塩0.25〜5質量%とを含み、
前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、
(i)(メタ)アクリル酸およびアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合させて得られる重合体、又は
(ii)(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合させて得られる重合体である、
ジェル状組成物。
項2.
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、
(ii)(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合させて得られる重合体である、
項1に記載のジェル状組成物。
項3.
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.001〜0.1重量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体である項2に記載のジェル状組成物。
項4.
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、項2又は3に記載のジェル状組成物。
項5.
多価アルコールが1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビタンおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載のジェル状組成物。
項6.
25℃、周波数1Hz〜10Hz における周波数分散測定の損失正接(tanδ)と周波数(Hz)の関係を式:tanδ=a×周波数(Hz)b で表すとき、0>b 且つ 0.5>a>0.05である、項1〜5のいずれかに記載のジェル状組成物。
項7.
無機塩が、無機塩化物(好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種)である、項1〜6のいずれかに記載のジェル状組成物。
項8.
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の1質量%、pH6.5〜7.5の中和粘稠液の粘度が1500mPa・s以下であり透過率が90%以上のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体である、項1〜7のいずれかに記載のジェル状組成物。
項9.
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の1質量%、pH6.5〜7.5の中和粘稠液100質部に対して0.25〜5質量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度が15000〜40000mPa・sであり、そのときの透過率が90%以上のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体である、項1〜8のいずれかに記載のジェル状組成物。
項10.
ジェル状化粧料である、項1〜9のいずれかに記載のジェル状組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるジェル状組成物は、電解質を含むにもかかわらず粘度が高く、透明度に優れ、肌に適用するときには適度な弾性を示し、プルプルした使用感を得られる一方、肌になじませた場合には滑らかな触感を有するため、例えば、スキンケア、ヘアケア等の化粧品に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例5について、周波数1Hz〜10Hz における周波数分散を測定し、各周波数におけるG’(貯蔵弾性率)およびG”(損失弾性率)からG”/G’=tanδ(損失正接)を求めた際のグラフを示す。
図2】実施例5および比較例6における周波数分散の測定結果を示すグラフである。
図3】実施例5および比較例6における歪分散の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のジェル状組成物は、特定のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体0.3〜3質量%と、多価アルコール3〜20質量%と、無機塩0.25〜5質量%とを含むことを特徴としている。なお、本明細書において「質量%」は「mass/mass%」を示す。
【0012】
本発明で用いられるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体は、(i)(メタ)アクリル酸およびアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合させて得られる重合体、又は(ii)(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合させて得られる重合体であり、特に(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.001〜0.1質量部を重合させて得られるものであることが好ましい。
【0013】
なお、本発明において、アクリル酸およびメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。すなわち、本発明において、(メタ)アクリル酸との記載は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。
【0014】
アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、炭素数が18〜24であるアルキルアルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらの中でも、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体の中和粘稠液および電解質存在下における当該液の粘度特性や質感が優れていることから、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、市販品を用いてもよく、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70(C18-24アルキルメタクリレート)等を用いることができる。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体において、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましく、より好ましくは1〜3質量部である。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が、(メタ)アクリル酸100質量部に対して0.5質量部以上であると、当該重合体を使用した組成物の増粘性が、より向上し、一方、5質量部以下であると、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の中和粘稠液における透過率が低くなるおそれが、より低減され得る。アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を特に化粧料成分として用いる場合には、多様な用途に用いられる観点から中和粘稠液における透過率も重要である。
【0016】
なお、ここでの中和粘稠液とは、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を水に溶解させた後、これをpH調整剤により中和して得られる液である。ここで用いるpH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物や、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類等のアルカリを挙げることができる。また、本明細書で“中和する”とは、pH6.5〜7.5に調整することを意味する。
【0017】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を得るために必要に応じて用いられる。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリアリルサッカロース等が好ましく例示される。ペンタエリトリトールアリルエーテルとしては、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテルが例示でき、中でもペンタエリトリトールテトラアリルエーテルが好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0018】
本発明において、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を使用する場合の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して0.001〜0.1質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.022質量部である。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.1質量部以下であると、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を含むジェル状組成物を、化粧料として用いる場合において、特有のプルプル感が、より好ましく発揮され得る。
【0019】
本発明において、(メタ)アクリル酸およびアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに、必要に応じてさらにこれらに加えてエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合させてアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を得る方法(すなわち上記(i)又は(ii)の重合体を得る方法)は、特に限定されず、これらの原料を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で撹拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0020】
不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0021】
前記溶媒は、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を溶解しないものであって、当該反応を阻害しないものが好ましい。当該溶媒の具体例としては、例えば、炭化水素溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。炭化水素溶媒としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が例示でき、また、エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が例示できる。これらの中でもノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、酢酸エチルが好ましい。当該溶媒は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて(すなわち混合溶媒として)用いることもできる。溶媒の使用量は、特に制限されないが、撹拌操作性を向上させる観点および経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、例えば300〜5000質量部であることが好ましい。
【0022】
前記重合開始剤は、例えば、ラジカル重合開始剤が好ましく、具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも、高分子量のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体が得られる観点から、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートが好適に用いられる。
【0023】
重合開始剤の使用量は、重合反応が進行し得るよう適宜設定することができる。特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが望ましい。
【0024】
反応温度も適宜設定することができ、例えば、50〜90℃が好ましく、55℃〜75℃がより好ましい。反応時間は、反応温度によって異なるので一概にはいえないが、通常、0.5〜5時間程度である。
【0025】
反応終了後、反応溶液を例えば80〜130℃に加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を得ることができる。
【0026】
また、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体は、その1質量%中和粘稠液(pH6.5〜7.5)の粘度が、1500mPa・s以下であり、透過率が90%以上であることが好ましい。またさらに、当該中和粘稠液100質量部に対して0.25〜5質量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度が15000〜40000mPa・sであり、そのときの透過率が90%以上であることが好ましい。
【0027】
なお、ここでの「0.25〜5質量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度」とは、当該中和粘稠液100質量部に対して0.25、0.5、0.75、1、2、3、4又は5質量部の塩化ナトリウムを添加した8種の溶液のうち、最も高い粘度を示す溶液の粘度をいう。
【0028】
また、ここでの透過率とは、遠心分離器にて毎分2000回転で5分間の操作により脱泡した後、光路長1cmのセルを用いて、測定波長を425nmとして測定したときの値(つまり、純水を100%とした場合の425nmの透過量の比)をいう。
【0029】
また、ここでの粘度とは、BH型回転粘度計を用いて、25℃でスピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後に測定した粘度である。
【0030】
本発明に用いられる多価アルコールとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビタン、ポリエチレングリコール、マルチトール等が挙げられ、特に、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることが好ましい。多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明に用いられる無機塩としては、無機塩化物が例示できる。無機塩化物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等が例示でき、中でも塩化ナトリウムが好ましく用いられる。無機塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
なお、上記の通り、本発明のジェル状組成物は無機塩を含むが、無機塩は電解質であるので、ジェル状組成物中では電離してイオンとして存在している場合もある。本発明のジェル状組成物は、このような状態で無機塩を含むジェル状組成物も包含する。
【0033】
本発明のジェル状組成物は、例えば、上述の、特定のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を0.3〜3質量%、多価アルコールを3〜20質量%、無機塩を0.25〜5質量%となるよう、水に溶解させることにより得られる。これらの成分の溶解の仕方および順序は特に限定されないが、例えば、まず当該アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体を水に溶解させ、次に多価アルコールを加え、必要に応じて中和のためにアルカリ又はアルカリ金属水酸化物を加え、さらに無機塩を加える方法が例示される。なお、必要に応じて中和のために加えるアルカリ又はアルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0034】
本発明のジェル状組成物において、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の含有量は、上述の通り、組成物全体に対して、0.3〜3質量%であり、0.5〜2質量%であることが好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0035】
多価アルコールの含有量は、上述の通り、組成物全体に対して3〜20質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。
【0036】
無機塩の含有量は、上述の通り、組成物全体に対して、0.25〜5質量%であり、0.3〜4質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明のジェル状組成物は、上述の通り、電解質を含むにもかかわらず粘度が高く、透明度に優れ、肌に適用するときには適度な弾性を示し、プルプルした使用感を得られる一方、肌になじませた場合には滑らかな触感を有するものである。このような使用感および触感を実現できるのは、本発明のジェル状組成物の特徴的な物性による。特に、本発明のジェル状組成物は、(1)25℃、周波数1Hz〜10Hz における周波数分散測定で求められる損失正接(tanδ)と周波数(Hz)の関係を式:tanδ=a×周波数(Hz)b で表すとき、0>b 且つ 0.5>a>0.05との関係を満たすことが好ましい。
【0038】
損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)の比(G’’/G’)であり、粘弾性的な性質の指標の一つとして用いられる。損失正接の値が大きいほど反発弾性率が小さくなる。例えば、損失正接はゾル、ゲルの指標として用いられ、通常はtanδ>1でゾルとされる。
【0039】
本発明では、上記式(tanδ=a×周波数(Hz)b )において、0>b 且つ 0.5>a>0.05であれば、上記使用感および触感が特に好ましく得られることを見出した。当該aの条件(0.5>a>0.05)を満たす場合において、bは−0.2以下であることがより好ましく、−0.25以下であることがさらに好ましく、−0.3以下であることがよりさらに好ましい。また、上記bの条件(0>b)を満たす場合において、aは0.1以上0.4以下であることがより好ましく、0.15以上0.45以下であることがさらに好ましく、0.2以上0.45以下であることがよりさらに好ましい。これらのa及びbの好ましい条件は、組み合わせて満たされることが特に好ましい。
【0040】
特に、bが負の数(好ましくは−0.2以下)を示すことにより、本発明の特有の上記使用感および触感が好ましく得られているのではないかと考えられる。
【0041】
また、本発明のジェル状組成物は、さらに以下の(2)および/又は(3)の物性を示すものが好ましい。
(2)粘度が10000mPa・s以上
(3)線形歪みが30%以上
上記(2)の粘度は、BH型回転粘度計を用いて、25℃でスピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後に測定した粘度である。当該粘度は、12000〜40000mPa・sであることがより好ましく、14000〜30000mPa・sであることがさらに好ましい。
【0042】
また、上記(3)の線形歪みは、周波数1Hzでの歪み分散測定で求められる線形歪み(%)である。
【0043】
本発明のジェル状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含ませることもできる。例えば、化粧品に通常配合される他の成分を含ませることができる。このような成分としては、例えば、ミネラル、他の増粘剤、アルコール類、pH調整剤、保湿剤、油剤、塩類、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、香料等を挙げることができる。これらの成分は、ジェル状組成物を調製する際に、適宜配合され得る。本発明のジェル状組成物を化粧料として用いる場合の具体的な形態も特に制限はされない。例えば、化粧水、乳液、美容液、クリームパック、マッサージクリーム、ジェルクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングジェル、洗顔フォーム、日焼け止め、スタイリングジェル、アイライナー、マスカラ、口紅、ファンデーション等の化粧品として用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例、比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
[アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の合成]
製造例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)0.45g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体1)43gを得た。
【0046】
製造例2
製造例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を0.45gから1.35gに変更した以外は、製造例1と同様にして、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体2)44gを得た。
【0047】
製造例3
製造例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を0.45gから2.25gに変更した以外は、製造例1と同様にして、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体3)45gを得た。
【0048】
製造例4
製造例1において、アクリル酸45g(0.625モル)、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)0.45g、ノルマルヘキサン150g、2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)に加えて、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.02gを用いた以外は製造例1と同様にして、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体4)43gを得た。
【0049】
製造例5
製造例4において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を0.45gから1.35gに変更した以外は、製造例4と同様にして、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体5)44gを得た。
【0050】
製造例6
製造例4において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を0.45gから2.25gに変更した以外は、製造例4と同様にして、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体(重合体6)45gを得た。
【0051】
製造例7
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.02g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体(重合体7)42gを得た。
【0052】
製造例8
製造例7において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.02gから0.27gに変更した以外は製造例7と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体(重合体8)42gを得た。
【0053】
なお、各製造例で用いたペンタエリトリトールアリルエーテルは、全てペンタエリトリトールテトラアリルエーテルである。
【0054】
[アルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体の評価]
製造例1〜8で得られた重合体1〜8の増粘剤としての特性を評価するため、それぞれの1質量%中和粘稠液、およびそれらに塩化ナトリウムを添加し撹拌して調製した電解質添加溶液について、粘度および透過率を測定した。
(1)評価試料の調製
評価試料としての重合体について3g毎の所定個数を量りとり、それぞれ脱イオン水280gに撹拌下、徐々に投入して溶解させた後、さらに撹拌しながら6重量%水酸化ナトリウム17gを加えて均一溶液として重合体の1質量%中和粘稠液とした。これら中和粘稠液はpH6.5〜7.5であった。また、前記中和粘稠液の各300gに、塩化ナトリウム0.75、1.5、2.25、3、6、9、12および15gを添加し、撹拌、溶解して、塩化ナトリウム添加量の異なる各電解質添加溶液を調製した。なお、下記評価では、前記1質量%中和粘稠液および塩化ナトリウムを添加した各電解質添加溶液を1時間静置したものを評価試料として用いた。
(2)粘度測定
各評価試料について、BH型回転粘度計を用いて、25℃でスピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後の粘度を測定した。測定結果を表1〜4に示す。
(3)透過率測定
各評価試料について、遠心分離器にて毎分2000回転で5分間の操作により脱泡した後、光路長1cmのセルを用いて、測定波長を425nmとして透過率を測定した。通常、透過率が90%以上であれば目視において透明であるといえる。測定結果を表1〜4に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
実施例1
製造例1で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に8gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度4質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0060】
実施例2
製造例2で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に1gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.5質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0061】
実施例3
製造例3で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に0.5gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.25質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0062】
実施例4
製造例4で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に8gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度4質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0063】
実施例5
製造例5で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に1gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.5質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0064】
実施例6
製造例6で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとをそれぞれ加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に0.5gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.25質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0065】
比較例1
製造例4で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水60gを加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に8gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度4質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0066】
比較例2
製造例5で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水60gを加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に1gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.5質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0067】
比較例3
製造例6で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水60gを加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えた。更に0.5gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.25質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0068】
比較例4
カルボキシル基含有水溶性重合体として製造例6で得られた重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水81gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとを加え均一にした後、6質%水酸化ナトリウム水溶液9gを加えジェル状組成物を調製した。
【0069】
比較例5
カルボキシル基含有水溶性重合体として製造例7で得られた重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水50gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとを加え均一にした後、6質量%水酸化ナトリウム水溶液9gをそれぞれ加えた。更に1gの塩化ナトリウムを含む水溶液31gを添加し(NaCl濃度0.5質量%)、ジェル状組成物を調製した。
【0070】
比較例6
カルボキシル基含有水溶性重合体として製造例8で得られた重合体2gを純水(脱イオン水)98gに撹拌下、徐々に投入して均一に分散させて、2質量%水溶液とし、この水溶液100gに純水85.5gと多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール5gとグリセリン5gとを加え均一にした後、6重量%水酸化ナトリウム水溶液4.5gをそれぞれ加えて、ジェル状組成物を調製した。
実施例1〜6および比較例1〜6で得られたジェル状組成物について、粘度、レオロジー、およびプルプル感、滑らかさを以下の方法により測定した。ただし、比較例4、5については低粘度でゲル状とならなかったため、レオロジーの測定はできなかった。
(1)粘度測定
各評価試料について、BH型回転粘度計を用いて、25℃でスピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後の粘度を測定した。
(2)レオロジー測定
各評価試料について、市販の粘弾性測定装置(レオメーター)を用いて周波数1Hz〜10Hz における周波数分散および周波数1Hzにおける歪分散を測定した。
【0071】
測定条件
レオメーター:TAインスツルメント製 AR−2000ex
プレート:60mm、4°コーンプレート
測定温度:25℃
歪分散測定:0.1%〜1000% (1Hz)
周波数分散測定:10Hz〜1Hz (歪み0.1%)
図1に示すように各周波数におけるG’(貯蔵弾性率)、G”(損失弾性率)からG”/G’=tanδ(損失正接)が得られる。なお、図1は実施例5を測定した結果を示す。
【0072】
このtanδと周波数(Hz)について、累乗近似式:tanδ=a×周波数(Hz)b で近似することによってa、bの値を算出した。
【0073】
下記官能評価の結果も勘案すると、プルプル感および滑らかさを好ましく両立する組成物は、0>b 且つ 0.5>a>0.05の範囲であると考えられた。
図2に実施例5および比較例6における周波数分散の測定例を示す。
図3に実施例5および比較例6における歪分散の測定例を示す。図3において、G”:損失弾性率の変局点における線形歪(%)を求めた。(図3では、矢印で示す。)下記官能評価の結果も勘案すると、線形歪が30%以上であれば、より好ましいプルプル感を示すと考えられた。
(3)プルプル感、滑らかさの評価(官能評価)
各実施例及び比較例で得られた各組成物を化粧料として、10名のパネラーによる官能試験により評価した。
【0074】
プルプル感については、直径5cmの円筒容器にサンプルを入れ、軽く左右に振って評価した際、10名中10名がプルプル感が強いと感じたものは◎、8名以上プルプル感があると回答したものは○、7名以下は×とした。また、滑らかさについては、手の甲に塗った際、10名中8名以上が滑らかであると回答したものは○、7名以下は×とした。
【0075】
以上の結果を表5に示す。
【0076】
【表5】
図1
図2
図3