(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1周波数変換手段、前記第2フィルタ、および、前記第2周波数変換手段のそれぞれは差動信号を処理するための1対の要素から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力測定装置。
前記第1フィルタの後段および前記第2フィルタの後段の少なくとも一方に、入力された信号を増幅して後段に出力する増幅手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電力測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(A)本発明の第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力測定装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る電力測定装置は、入力端子10、第1フィルタ11、ミキサ12、局発信号発生器13、フィルタ14a、ミキサ15、局発信号発生器16、第3フィルタ17、および、検波器18を有している。
【0022】
ここで、入力端子10からは、例えば、
図2(A)に示す70〜770MHzの帯域を有する信号が入力される。なお、
図2(A)に示す信号は、例えば、CATV(Cable Television)に使用される信号であって、70〜770MHzの帯域内に、例えば、6MHzの帯域幅を有するチャンネルを複数有している。それぞれのチャンネルの信号は、例えば、OFDM変調等の変調が施された信号である。
【0023】
第1フィルタ11は、入力端子10から入力された信号から、測定しようとするチャンネル(対象帯域)を含む所定の帯域の信号を通過させ、それ以外は減衰して出力する。
【0024】
ミキサ12は、局発信号発生器13から出力される局発信号と、第1フィルタ11から出力される信号を乗算して得られた信号を出力する。
【0025】
局発信号発生器13は、所定の周波数の矩形波を発生し、局発信号としてミキサ12に供給する。
【0026】
フィルタ14aは、ミキサ12から出力される信号から所定の帯域の信号を通過させ、それ以外は減衰して出力する。
【0027】
ミキサ15は、局発信号発生器16から出力される局発信号と、フィルタ14aから出力される信号を乗算して得られた信号を出力する。
【0028】
局発信号発生器16は、所定の周波数の正弦波を発生し、局発信号としてミキサ15に供給する。
【0029】
第3フィルタ17は、バンドパスフィルタ等によって構成され、ミキサ15から出力される信号から所定の帯域の信号を通過させ、それ以外は減衰して出力する。
【0030】
検波器18は、第3フィルタ17から出力される信号の波形を検出する。
【0031】
(B)本発明の第1実施形態の動作の説明
つぎに、
図1に示す第1実施形態の動作について説明する。本発明の第1実施形態では、ミキサ12に供給する局発信号として、一般的な正弦波ではなく、矩形波を用いることを特徴としている。この点について以下に説明する。
【0032】
図2(A)は、前述したように、第1実施形態に係る電力測定装置に入力される信号の一例を示している。この例では、入力信号は70〜770MHzの帯域幅を有している。このような入力信号に対して、ミキサ12に供給する局発信号として、例えば、
図2(B)に示す、80MHzの正弦波を用いる場合を考える。80MHzの正弦波を用いる場合、ミキサ12の局発信号は、一般的に、入力信号に対して大きな電力を必要とするため歪み特性を有する。局発信号発生器13から供給される正弦波は、
図2(C)に模式的に示すような高調波成分を有することになる。
図2(C)の例では、80MHzの基本周波数成分は、2次(160MHz)、3次(240MHz)、4次(320MHz)、・・・、の高調波成分を有することになる。
【0033】
ここで、対象帯域が70MHz近辺の信号である場合、当該信号は、
図1のミキサ12に入力される局発信号によって、例えば、低い周波信号(数十MHz)に変換されて出力される。しかしながら、同様の変換は、高調波成分である160MHz、240MHz、320MHz、・・・でも実行されることから、対象帯域でない150MHz、230MHz、310MHz、・・・等の各々の近辺の信号も、低い周波信号に変換されてしまう。測定対象以外の帯域が周波数変換されないようにするためには、例えば、
図2(D)に太線で示すような、160MHz以上の信号を減衰する特性を有するフィルタを、第1フィルタ11として配置する必要がある。しかしながら、2次高調波以上を減衰して出力しないようにするためのローパスフィルタは、遮断特性が急峻である必要があることから、例えば、SAWフィルタ等の高価なフィルタが必要である。
【0034】
一方、本発明の第1実施形態では、局発信号発生器13からミキサ12に供給する信号としては、正弦波ではなく、矩形波を用いる。矩形波は、
図3(B)に模式的に示すように、基本周波数成分である80MHzの信号に対して、3次、5次、7次、・・・、等の奇数次の高調波成分が重畳された信号となっている。このような局発信号を、ミキサ12に供給すると、矩形波は、入力信号よりも大きな信号であっても奇数次の成分が主として含まれており、偶数次の成分は抑制された状態となる。このため、例えば、2次高調波成分は、
図2の場合に比較して非常に少ないため、周波数変換においては十分無視できるレベルとなる。
【0035】
以上のような理由により、第1実施形態では、ミキサ12では局発信号の2次以上の偶数次の高調波成分は十分に無視できることから、第1フィルタ11としては、例えば、
図3(C)に太線で示すように、3次高調波成分(240MHz)以上を減衰する特性を有すれば足りる。このため、局発信号として正弦波を用いた場合の特性(
図3(C)に破線で示す特性)よりも、遮断特性がなだらかでよいことから、第1フィルタ11として安価なものを用いることができる。
【0036】
ミキサ12から出力された信号は、フィルタ14aによって測定しようとするチャンネルに対応する対象帯域付近が通過され、ミキサ15に供給される。ミキサ15は、フィルタ14aから出力される測定しようとするチャンネルの信号を所定の周波数(例えば、数十MHz)に変換して出力する。第3フィルタ17は、ミキサ15から出力される信号から対象帯域以外の隣接周波数を更に減衰して出力する。検波器18は、第3フィルタ17から出力される信号の波形を検出する。この結果、所望のチャンネルの信号の波形を検出し、その結果に基づいて電力を測定することができる。
【0037】
なお、以上では、ミキサ12は、第1フィルタ11から出力される信号を数十MHzとなるようにしたが、これ以外の周波数(例えば、数千MHz)に変換するようにしてもよい。
【0038】
(C)本発明の第2実施形態の構成の説明
つぎに、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、
図4において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明を適宜省略する。
【0039】
図4では、
図1に比較して、フィルタ14aが第2フィルタ14に置換されるとともに、ミキサ22、ミキサ25、第2フィルタ24、移相器26,27が追加されている。これら以外の構成は
図1の場合と同様である。
【0040】
ここで、ミキサ22は、移相器26から供給される局発信号と、第1フィルタ11から供給される入力信号を乗算して出力する。
【0041】
第2フィルタ14は、ミキサ12から出力される信号から所定の周波数の信号を通過し、それ以外の帯域は減衰して出力する。第2フィルタ24は、ミキサ22から出力される信号から所定の周波数の信号を通過し、それ以外の帯域は減衰して出力する。
【0042】
ミキサ25は、移相器27から供給される局発信号と、第2フィルタ24から供給される入力信号を乗算して出力する。
【0043】
移相器26は、局発信号発生器13から出力される矩形波信号の位相を90度異なるように調整して出力する。
【0044】
移相器27は、局発信号発生器16から出力される正弦波信号の位相を90度異なるように調整して出力する。
【0045】
(D)本発明の第2実施形態の動作の説明
つぎに、
図4に示す第2実施形態の動作について説明する。第一の局発信号として、例えば、73MHzの矩形波を用いる場合を考える。入力端子10から
図5(A)に示すような70〜770MHzの帯域幅を有する信号が入力されると、第1フィルタ11によって、所定の周波数以下の信号が通過され、それ以外は減衰される。例えば、第1フィルタ11の特性が
図5(A)に太線で示す特性であるとすると、第1フィルタ11からは
図5(B)に示すような帯域の信号が出力される。
【0046】
ミキサ12は局発信号発生器13から出力される矩形波と、第1フィルタ11から出力される信号とを乗算して出力する。また、ミキサ22は、局発信号発生器13から出力され、移相器26によって位相が90度移相された矩形波と、第1フィルタ11から出力される信号とを乗算して出力する。この結果、ミキサ12,22からは、直交復調された信号が出力される。
【0047】
なお、ミキサ12,22から出力される信号は、
図5(C)に示すように、対象帯域の中心周波数が直流成分となるように周波数変換する。このとき、負の周波数成分に対応する領域(クロスハッチングを施した領域)は、ミキサ12,22から出力される信号が直交復調によって複素信号成分を有することから、負の周波数成分についてもそのままの状態で保持する。
【0048】
第2フィルタ14,24では、ミキサ12,22から出力される信号から、測定しようとする対象帯域の信号を通過させ、それ以外の帯域については減衰する。この結果、第2フィルタ14,24からは、
図5(D)に太線で示すフィルタ特性によって測定しようとする対象帯域以外が減衰された信号が出力される。
【0049】
ミキサ15は、局発信号発生器16から出力される周波数がF2の正弦波信号と、第2フィルタ14から出力される信号を乗算して出力する。ミキサ25は、局発信号発生器16から出力され、移相器27によって位相が90度移相された周波数がF2の正弦波信号と、第2フィルタ24から出力される信号を乗算して出力する。この結果、ミキサ15,25から出力される信号は、
図5(E)に示すように、
図5(D)に示す信号が周波数F2だけ周波数変換された信号となる。
【0050】
ミキサ15,25から出力された信号は、第3フィルタ17によって、第2フィルタ14,24を通過した隣接の帯域を抑圧し、
図5(E)に示す帯域信号(測定しようとするチャンネルの信号)が通過され、それ以外は減衰されて出力される。検波器18は、第3フィルタ17から出力される信号の波形を検出する。
【0051】
以上に説明したように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に矩形波によって周波数変換を行うようにしたので、第1フィルタ11として遮断特性が急峻でないものを使用できることから、製造コストを低減できる。
【0052】
また、第2実施形態では、直交復調および直交変調を行うようにしたので、入力信号の中心周波数と局発信号の周波数を同じ周波数にできるため、対象帯域を直流付近の周波数へ変換することができるため、電力を正確に検出することができる。
【0053】
また、第2実施形態では、ミキサ12,22によって、対象帯域が含まれる信号を直流付近の信号に変換するようにした。第2フィルタ14,24を構成する素子(コイルおよびコンデンサ)は、温度によって素子値が変化するが、変化の割合は周波数に比例する。このため、直流付近の周波数を通過させる第2フィルタ14,24に用いられている素子は、温度によって殆ど変化しないため、温度変化によらず、正確な測定を行うことができる。
【0054】
(E)本発明の第3実施形態の構成の説明
つぎに、
図6を参照して本発明の第3実施形態について説明する。なお、
図6において、
図4と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
【0055】
図6では、
図4と比較すると、第2フィルタ14,24の後段に直流成分除去素子31,41が追加されている。これ以外の構成は、
図4の場合と同様である。
【0056】
ここで、直流成分除去素子31は、例えば、コンデンサによって構成され、第2フィルタ14から出力される信号に含まれる直流付近の成分を除去し、後段のミキサ15に供給する。また、直流成分除去素子41も同様に、例えば、コンデンサによって構成され、第2フィルタ24から出力される信号に含まれる直流付近の成分を除去し、後段のミキサ25に供給する。
【0057】
(F)本発明の第3実施形態の動作の説明
つぎに、第3実施形態の動作について説明する。ミキサ12,22の出力には、スプリアス信号が含まれていることがある。すなわち、直交復調におけるインバランスや、移相器26によって発生する位相ずれによって生じる直交成分の位相ずれによって、直流成分付近にスプリアスが発生することがある。この直流成分付近のスプリアスは、対象帯域の信号として観測され、測定結果に誤差を生じる場合がある。そこで、直交変調を行うミキサ15,25の前段にコンデンサ等の素子を挿入することで直流成分付近のスプリアスを除去することができる。このため、スプリアスによる測定誤差が生じることを防止できる。
【0058】
なお、
図6に示す例では、直流成分除去素子として、コンデンサを例に挙げて説明したが、これ以外の素子(例えば、ダイオード等)を用いるようにしてもよい。
【0059】
(G)本発明の第4実施形態の構成の説明
つぎに、
図7を参照して本発明の第4実施形態について説明する。なお、
図7において、
図6と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
【0060】
図7では、
図6と比較すると、移相器51,52が追加され、ミキサ12,22、第2フィルタ14,24、直流成分除去素子31,41、および、ミキサ15,25が、ミキサ112,122、第2フィルタ114,124、直流成分除去素子131,141、および、ミキサ115,125にそれぞれ置換されている。また、移相器51から移相器52の間の信号線が平衡線に置換されている。
【0061】
ここで、移相器51は、第1フィルタ11から出力される信号を2つに分配し、それぞれの位相差が180度となるように調整し、差動信号として出力する。
【0062】
ミキサ112は、隣接して配置される1対のミキサによって構成され、移相器51から出力された位相が180度異なる2つの信号のそれぞれに対して、局発信号発生器13から供給される矩形波を乗算して出力する。なお、移相器51とミキサ112を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。ミキサ122は、隣接して配置される1対のミキサによって構成され、移相器51から出力された位相が180度異なる2つの信号のそれぞれに対して、局発信号発生器13から供給され、移相器26によって90度移相された矩形波を乗算して出力する。なお、移相器51とミキサ122を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。
【0063】
第2フィルタ114は、隣接して配置される1対のローパスフィルタから構成され、ミキサ112から出力される信号に含まれる所定の周波数帯域の信号を通過させて直流成分除去素子131に供給する。なお、ミキサ112と第1フィルタ114を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。第2フィルタ124は、隣接して配置される1対のローパスフィルタから構成され、ミキサ122から出力される信号に含まれる所定の周波数帯域の信号を通過させて直流成分除去素子141に供給する。なお、ミキサ122と第2フィルタ124を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。
【0064】
直流成分除去素子131は、隣接して配置される1対の直流成分除去素子によって構成され、第2フィルタ114から出力される信号に含まれる直流付近の成分を除去してミキサ115に供給する。なお、第2フィルタ114と直流成分除去素子131を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。直流成分除去素子141は、隣接して配置される1対の直流成分除去素子によって構成され、第2フィルタ124から出力される信号に含まれる直流付近の成分を除去してミキサ125に供給する。なお、第2フィルタ124と直流成分除去素子141を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。
【0065】
ミキサ115は、隣接して配置される1対のミキサによって構成され、直流成分除去素子131から供給される信号と、局発信号発生器16から供給される正弦波とを乗算して出力する。なお、直流成分除去素子131とミキサ115を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。ミキサ125は、隣接して配置される1対のミキサによって構成され、直流成分除去素子131から供給される信号と、局発信号発生器16から供給され、移相器27によって90度移相された正弦波とを乗算して出力する。なお、直流成分除去素子141とミキサ125を結ぶ信号線は相互に隣接して配置される。
【0066】
移相器52は、ミキサ115から出力される差動信号の一方の位相を反転して合成するとともに、ミキサ125から出力される差動信号の一方の位相を反転して合成する。そして、合成されたミキサ115からの差動信号と、合成されたミキサ125からの差動信号とを合成して第3フィルタ17に出力する。なお、ミキサ115と移相器52を結ぶ信号線は相互に隣接して配置され、ミキサ125と移相器52を結ぶ信号線も相互に隣接して配置される。
【0067】
(H)本発明の第4実施形態の動作の説明
第4実施形態は、ミキサ112,122、第2フィルタ114,124、直流成分除去素子131,141、および、ミキサ115,125のそれぞれは1対の素子によって構成されるとともに、1対の素子は隣接して配置される。また、これらの1対の素子同士を接続する信号線も隣接して配置される。1対の素子または信号線を通過する差動信号は、最終的に移相器52で反転されて合成されることから、1対の素子または信号線に対してノイズが付加された場合、ノイズは同相の信号として差動信号に付加されるので、差動信号が移相器52で反転されて合成される際に相殺されることになる。このため、第4実施形態では、電源回路や局発信号発生器からの漏えいによって発生したノイズ等に起因する誤差の発生を抑えることができる。
【0068】
(I)本発明の第5実施形態の構成の説明
つぎに、
図8を参照して本発明の第5実施形態について説明する。なお、
図8において、
図7と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
【0069】
図8では、
図7と比較すると、第1フィルタ11を所定の帯域から対象帯域を段階的に切り出すためにスイッチ61〜64およびローパスフィルタ65〜67に置換されている。これら以外の構成は、
図7の場合と同様である。
【0070】
ここで、スイッチ61〜64は、図示しない制御部によって制御され、ローパスフィルタ65〜67のいずれか1つを入力端子10と移相器51の間に接続する機能を有する。より詳細には、スイッチ61は、入力端子10の出力をスイッチ62の入力およびローパスフィルタ67の入力のいずれか一方に接続する。スイッチ62は、スイッチ61の出力をローパスフィルタ65の入力およびローパスフィルタ66の入力のいずれか一方に接続する。スイッチ63は、ローパスフィルタ65の出力およびローパスフィルタ66の出力のいずれか一方をスイッチ64の入力に接続する。スイッチ64は、スイッチ63の出力およびローパスフィルタ67の出力のいずれか一方を移相器51の入力に接続する。
【0071】
ローパスフィルタ65〜67は、入力端子10から入力される所定の帯域幅を有する信号から、それぞれ異なる帯域の信号を通過させて出力する。より詳細には、例えば、ローパスフィルタ65は、
図9(D)に示す第1帯域を通過する太線で示す特性を有している。また、ローパスフィルタ66は、第2帯域を通過する太線で示す特性を有している。さらに、ローパスフィルタ67は、第3帯域を通過する太線で示す特性を有している。
【0072】
(J)本発明の第5実施形態の動作の説明
つぎに、第5実施形態の動作について説明する。例えば、
図9(A)に示すような70〜770MHzの帯域幅を有する信号が入力端子10から入力されたとする。なお、この入力信号には、帯域幅が6MHzの対象帯域が複数含まれているとする。
【0073】
図示しない制御部は、測定対象となるチャンネル(対象帯域)が含まれる帯域を特定し、当該帯域を通過させるローパスフィルタを選択する。例えば、目的のチャンネルが70〜210MHzの範囲に属している場合には、第1帯域を通過するローパスフィルタ65を選択するようにスイッチ61〜64を制御する。また、目的のチャンネルが210〜630MHzの範囲に属している場合には、第2帯域を通過するローパスフィルタ66を選択するようにスイッチ61〜64を制御する。さらに、目的のチャンネルが630〜770MHzの範囲に属している場合には、第3帯域を通過するローパスフィルタ67を選択するようにスイッチ61〜64を制御する。例えば、70〜210MHzに属するチャンネルが測定対象に選ばれたときは、第1帯域を通過するローパスフィルタ65を選択するようにスイッチ61〜64が制御される。
【0074】
ローパスフィルタ65〜67のいずれかを通過して帯域制限された入力信号(いまの例では、70〜210MHzの帯域幅の信号)は、移相器51によって差動化され、一方はそのままの位相の正相信号として出力され、他方は位相が反転されて逆相信号として出力される。このようにして生成された信号は、差動信号として1対の素子から構成されるミキサ112,122に供給される。
【0075】
ミキサ112,122は、移相器51から供給される帯域制限された信号を、局発信号発生器13および移相器26から供給される局発信号によって直交復調する。例えば、測定対象となるチャンネルが70〜76MHzの帯域であるとすると、図示しない制御部は、局発信号発生器13を制御して73MHzの局発信号(矩形波)を発生させる。この結果、70〜210MHzの信号は、−3〜137MHzの信号として出力される。
【0076】
第2フィルタ114,124は、ミキサ112,122から出力される信号から、1チャンネル分に相当する略−3〜略+3MHzの信号を通過させ、それ以外の帯域を減衰して出力する。この結果、1チャンネルに対応する帯域幅の信号だけが通過されて、直流成分除去素子131,141に供給される。
【0077】
直流成分除去素子131,141は、第2フィルタ114,124から出力される信号に含まれている直流付近の成分を除去してミキサ115,125に供給する。これにより、直流付近の成分に変換されたスプリアス成分が除去されることになる。なお、直流成分除去素子131,141によってスプリアス成分だけでなく、入力信号の一部も除去されるが、除去される信号は全体に比較すると微少であるので、電力測定の誤差としては僅少となる。
【0078】
ミキサ115,125は、直流成分除去素子131,141から供給される−3〜+3MHzの帯域幅の信号を、例えば、50MHzの局発信号(正弦波信号)によって直交変調する。この結果、直流成分除去素子131,141から供給される−3〜+3MHzの帯域幅の信号は、47〜53MHzの帯域幅の信号として出力される。なお、ミキサ115,125の局発信号の周波数は、後段の回路に応じて任意に設定することができる。
【0079】
移相器52は、ミキサ115,125から出力される差動信号を入力し、正相信号と逆相信号を合成して出力する。これにより、コモンモードで重畳されたノイズを相殺して減少させることができる。
【0080】
第3フィルタ17は、移相器52から出力される信号から、47〜53MHzの帯域幅の信号を通過させ、それ以外の信号、特に対象帯域の隣接の信号を更に抑圧して出力する。
【0081】
検波器18は、第3フィルタ17から出力される信号を検波する。これにより、所望のチャンネルである70〜76MHz帯域の信号の波形を観測し、電力を測定することができる。
【0082】
以上に説明したように、本発明の第5実施形態によれば、スイッチ61〜64によってローパスフィルタ65〜67を選択するようにしたので、測定対象となるチャンネルに応じて、最適なローパスフィルタを簡易に選択し、所定の帯域の中で対象帯域を正確に測定することができる。
【0083】
また、第5実施形態では、直交復調用の局発信号として矩形波を用いるようにしたので、ローパスフィルタ65〜67として遮断特性が緩やかなものを使用することができるとともに、ローパスフィルタの個数を減らすことができる。すなわち、直交復調用の局発信号として正弦波を用いた場合、例えば、局発信号が
図10(B)に示す70MHzであるとき、ミキサ112,122では、
図10(C)に示すように、歪み特性によって2次、3次、4次、・・・、の高調波が生成される。入力信号は70〜770MHzの広帯域信号であることから、これらの高調波が存在する位置にも信号が存在している。このため、高調波によっても直交復調が実行され、この直交変調によって生成された信号は所望帯域に周波数変換されてしまうため、測定誤差の原因となることから、高調波の存在する位置の信号をローパスフィルタによって減衰する必要がある。局発信号が70MHzの場合、最も周波数が低い高調波は2次高調波である140MHzであるので、
図10(D)に示すような140MHz以上を減衰するローパスフィルタによって入力信号を十分抑圧する必要が生じる。一方、局発信号として矩形波を用いる場合には、局発信号が70MHzの場合、最も周波数が低い高調波は3次高調波であるので、
図9(D)に示すように、ローパスフィルタの特性は、210MHz以上を減衰すればよい。このため、
図9(D)と
図10(D)の比較から明らかであるように、第5実施形態の方がローパスフィルタの遮断特性が緩やかにすることができる。
【0084】
また、正弦波を局発信号とする場合、140MHzの局発信号を用いる場合のローパスフィルタの遮断周波数は280MHzであり、同様にして280MHzの局発信号を用いる場合のローパスフィルタの遮断周波数は560MHzであり、560MHzの局発信号を用いる場合のローパスフィルタの遮断周波数は1120MHzとなる。このことから、正弦波を用いる場合には
図10(D)に示すように、4つのローパスフィルタが必要になる。一方、矩形波を用いる場合には、
図9(D)に示すように、3つのローパスフィルタでよい。このことから、第5実施形態では、矩形波を局発信号として用いることで、ローパスフィルタ65〜67として遮断特性が緩やかなフィルタを用いることができるとともに、フィルタの個数を減らすことができる。
【0085】
また、遮断帯域の成分が通過しなければ、ローパスフィルタ65〜67のカットオフ周波数は適宜設定すればよい。
【0086】
つぎに、
図11を参照して、第5実施形態において実行される処理の一例について説明する。なお、以下の処理は一例であって、このような処理を、例えば、論理回路を用いて実行するようにしてもよい。
図11の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0087】
ステップS10では、測定の対象帯域が指定される。例えば、70〜76MHzを帯域幅とする所定の対象帯域が測定者によって指定される。
【0088】
ステップS11では、対象帯域が属する帯域が特定される。例えば、前述した、70〜76MHzを帯域幅とする対象帯域の場合には、
図9(D)に示す第1帯域が特定される。
【0089】
ステップS12では、対象帯域に対応する周波数の局発信号が局発信号発生器13から出力される。例えば、局発信号発生器13は、対象帯域の中心周波数に対応する周波数を有する矩形波を生成して出力する。
【0090】
ステップS13では、ステップS11で特定された帯域が第1帯域の場合にはステップS14に進み、第2帯域の場合にはステップS15に進み、第3帯域の場合にはステップS16に進む。
【0091】
ステップS14では、
図9(D)に示す第1帯域を通過するローパスフィルタが選択される。より詳細には、
図8に示すローパスフィルタ65が選択される。
【0092】
ステップS15では、
図9(D)に示す第2帯域を通過するローパスフィルタが選択される。より詳細には、
図8に示すローパスフィルタ66が選択される。
【0093】
ステップS16では、
図9(D)に示す第3帯域を通過するローパスフィルタが選択される。より詳細には、
図8に示すローパスフィルタ67が選択される。
【0094】
ステップS17では、検波処理が実行される。これにより、対象帯域の信号が抽出され、検波処理が実行される。
【0095】
ステップS18では、測定を終了するか否かを判定し、測定を継続する場合(ステップS18:N)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS18:Y)には処理を終了する。
【0096】
以上のフローチャートの処理によれば、測定者によって指定された所定のチャンネルの電力を測定することができる。
【0097】
なお、
図11に示すフローチャートでは、測定者によって指定されたチャンネルの電力を測定するようにしたが、例えば、他のチャンネルについても順次同様の測定を繰り返し、全てのチャンネルの電力を自動的に測定するようにしてもよい
【0098】
(K)本発明の第6実施形態の構成の説明
つぎに、
図12を参照して本発明の第6実施形態について説明する。なお、
図12において、
図8と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
【0099】
図12では、
図8と比較すると、スイッチ64と移相器51の間に増幅器70が追加されている。また、直流成分除去素子131,141が直流成分除去素子133,143に置換され、第2フィルタ114,124と直流成分除去素子133,143の間に増幅器116,126がそれぞれ追加されている。これら以外の構成は
図8の場合と同様である。
【0100】
ここで、増幅器70は、スイッチ64から出力される信号を所定の利得で増幅して出力する。増幅器116は、第2フィルタ114から出力される信号を所定の利得で増幅して出力する。増幅器126は、第2フィルタ124から出力される信号を所定の利得で増幅して出力する。
【0101】
直流成分除去素子133は、コンデンサの出力にコイルが接続され、このコイルに対して直流電圧を印加することで、所望の直流バイアスを付加することができる。直流成分除去素子143は、コンデンサの出力にコイルが接続され、このコイルに対して直流電圧を印加することで、所望の直流バイアスを付加することができる。
【0102】
(L)本発明の第6実施形態の動作の説明
つぎに、第6実施形態の動作について説明する。なお、第6実施形態の動作は、第5実施形態と略同じであるので、相違点に着目して説明する。
【0103】
第6実施形態では、増幅器70を用いて入力信号を増幅することで電力を正確に測定できる範囲を広げることができる。すなわち、ローパスフィルタ65〜67やスイッチ61〜64により対象帯域の信号が損失するため、ノイズ成分に埋もれて正確な電力の測定ができないことがあるが、増幅器70によってミキサ112,122に入力される前の入力信号を増幅することで、信号レベルを増加させ、正確な測定を行うことができる。
【0104】
また、増幅器116,126によって第2フィルタ114,124の出力信号を増幅することで、移相器51や直交復調による損失を補うことができるので、正確な測定を実行することができる。
【0105】
また、直流成分除去素子133,143により、ミキサ115,125によって直交変調を実行する前段において、直流成分除去素子133,143から出力される信号に所望の直流バイアスを印加することで、直交変調の位相バランスを精度良く保つことができる。より詳細には、ミキサ112,122の位相ずれ等によって生じるインバランスを、直流バイアスを調整することで解消することができる。
【0106】
また、ミキサ115,125によって、汎用性が高い周波数帯域に直交変調することで、汎用性が高く、安価な第3フィルタ17によって対象帯域の隣接信号を十分に抑圧し、対象帯域の信号の電力を正確に測定することができる。
【0107】
(M)変形実施形態の説明
以上の各実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の各実施形態では、ミキサ12から出力される信号は、対象となるチャンネルの中心周波数が直流成分となるように変換するようにしたが、これ以外の周波数であってもよい。
【0108】
また、以上の第3〜第5実施形態では、直流成分除去素子31,41,131,141,133,143は、第2フィルタ14,24,114,124の後段に設けるようにしたが、前段に設けるようにしてもよい。
【0109】
また、以上の第6実施形態では、第2フィルタ114,124をミキサ112,122の後段に設けるようにしたが、直流成分除去素子113,143の後段に設けるようにしてもよい。
【0110】
また、第1実施形態においても、ミキサ12、フィルタ14a、ミキサ15をそれぞれ2つずつ設け、これらの間を差動信号によって信号を伝送するようにしてもよい。
【0111】
また、第6実施形態では、スイッチ64の後段および第2フィルタ114,124の後段の双方に増幅器70,116,126をそれぞれ配置するようにしたが、スイッチ64の後段および第2フィルタ114,124の後段のいずれか一方のみに配置するようにしてもよい。
【0112】
また、以上の各実施形態では、入力される信号の周波数帯域は、70〜770MHzとしたがこれ以外の周波数帯域であってもよい。なお、帯域の高域側の周波数(図示した例では770MHz)が、低域側の周波数(図示した例では70MHz)の3倍以上であれば、本発明の効果を期待することができる。
【0113】
また、以上の各実施形態では、ミキサ12の前段のフィルタとしては、ローパス以外の特性を有するフィルタ、例えば、バンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。
【0114】
また、以上の各実施形態では、局発信号発生器13が矩形波を出力し、当該矩形波をミキサ12,22,112,122に入力するようにしたが、局発信号発生器が出力した矩形波でない信号を矩形波に変換する手段を用いて、これらミキサに入力するようにしてもよい。