(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、(C)上記一般式(1)の繰り返し単位を含み、高エネルギー線の照射により酸を発生させる部位を有する繰り返し単位を含まない高分子化合物を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
被加工基板上に請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に記述する。
本発明は、
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、更に下記一般式(a1)、(a2)、(a3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含有する高分子化合物、
(B)下記一般式(3a)で表される塩
を含有するネガ型レジスト組成物を提供する。なお、このレジスト組成物は架橋剤を含有しないことが好ましい。
【化6】
上記式(1)中、Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜8のハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアシルオキシ基、炭素数1〜6のハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数1〜6のハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基を示す。Lは水素原子又は鎖の中間にエーテル性酸素原子、カルボニル基、又はカルボニルオキシ基を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基であり、Rx、Ryはそれぞれ水素原子、又はヒドロキシ基若しくはアルコキシ基が置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換基を有してもよい1価芳香環基であり、Rx、Ryは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。なお、Rx、Ryは同時に水素原子になることはない。fは1〜3の整数、sは0〜2の整数を表し、aは(5+2s−f)の整数である。mは0又は1を表す。
【化7】
上記式(a1)、(a2)、(a3)中、R
12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、R
13は単結合、フェニレン基、−O−R
22−、又は−C(=O)−Z
2−R
22−である。Z
2は酸素原子又はNH、R
22は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。L’は単結合、又は−Z
3−C(=O)−O−を示し、Z
3は炭素数1〜20のヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Z
1は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
23−、又は−C(=O)−Z
4−R
23−である。Z
4は酸素原子又はNH、R
23は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。また、R
14とR
15が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよく、又はR
16、R
17及びR
18のうちいずれか2つ以上、あるいはR
19、R
20及びR
21のうちいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【化8】
上記式(3a)中、R
11は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、それぞれがフッ素原子、窒素原子、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ラクタム環、カルボニル基、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよい。Mは置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。
【0015】
上記式(1)で表される単位は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸脱離性基(−CRxRy−OL基)が脱離反応を起こし、そのもの自身によるアルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。
【0016】
酸脱離性基を含有する側鎖は芳香環に置換するが、この場合置換数fは1〜3の整数である。Lは水素原子又は鎖の中間にエーテル性酸素原子、カルボニル基、又はカルボニルオキシ基を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基であるが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、メチルカルボニル基、フェニル基を用いることが好ましい。
【0017】
更に、Rx、Ryはそれぞれ水素原子、又はヒドロキシ基若しくはアルコキシ基が置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換基を有してもよい1価芳香環基であるが、Rx、Ryは同時に水素原子になることはない。Rx、Ryの好ましい構造としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びその構造異性体、更にそれらにヒドロキシ基又はアルコキシ基が置換されたものが挙げられる。
【0018】
上記式(1)に示す芳香環は主鎖に単結合で結ばれていてもよく、また、カルボニルオキシ基を介しても、更にリンカーであるAを介して結合されていてもよい。sは0〜2の整数を表すが、0である場合にはベンゼン環、1である場合にはナフタレン環、2である場合にはアントラセン環である。
【0019】
Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子(エーテル結合)を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、好ましいアルキレン基の例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等を挙げることができる。エーテル性酸素を含む場合には、式(1)中のmが1である場合には、エステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、mが0である場合には、主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル性酸素が入ってもよい。
【0020】
上記式(1)で表される繰り返し単位の好ましい例を下記に例示する。なお、下記例中、Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【化9】
【0024】
本発明に用いられる高分子化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(a1)、(a2)、(a3)で表されるいずれか1つの繰り返し単位を更に含有する。
【化13】
上記式(a1)、(a2)、(a3)中、R
12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、R
13は単結合、フェニレン基、−O−R
22−、又は−C(=O)−Z
2−R
22−である。Z
2は酸素原子又はNH、R
22は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。L’は単結合、又は−Z
3−C(=O)−O−を示し、Z
3は炭素数1〜20のヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Z
1は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
23−、又は−C(=O)−Z
4−R
23−である。Z
4は酸素原子又はNH、R
23は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。また、R
14とR
15が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよく、又はR
16、R
17及びR
18のうちいずれか2つ以上、あるいはR
19、R
20及びR
21のうちいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0025】
上記式中、L’が−Z
3−C(=O)−O−である場合、Z
3で示される炭素数1〜20のヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基としては、具体的には以下のものを例示することができるが、これらに限定されない。
【化14】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0026】
上記式中、R
14とR
15が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよく、又はR
16、R
17及びR
18のうちいずれか2つ以上、あるいはR
19、R
20及びR
21のうちいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよいが、その場合には、下記式で示される基等が挙げられる。
【化15】
(式中、R
5は、上記R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21として例示した基と同じものを示す。)
【0027】
上記式(a2)、(a3)中に示されるスルホニウムカチオンの具体的な構造としては、下記に示すものが挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化16】
【0028】
上記式(a1)、(a2)、(a3)は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に連結されることで酸拡散が適度に抑制され、LERが低減されたパターンを得ることができると考えられる。また、酸発生単位がポリマーに連結されていることにより、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するというケミカルフレア現象が抑制され、LERの低減や、未露光部での望まないネガ化反応抑制による欠陥の低減などに効果的と考えられる。
【0029】
本発明のネガ型レジスト組成物は、下記一般式(3a)で表される塩を含有する。
【化17】
【0030】
上記式(3a)中、R
11は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、それぞれがフッ素原子、窒素原子、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ラクタム環、カルボニル基、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよい。Mは置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。
【0031】
上記式(3a)で表される塩の添加量は、レジスト組成物に含有される式(1)の高分子化合物100質量部に対して0.01〜20質量部、特に0.05〜15質量部が好ましい。
上記式(3a)で表される塩は、露光により発生した酸と交換反応を起こすため、酸拡散制御剤として機能する。この塩はイオン性化合物であるため、熱によって揮発することがない。一方、酸拡散制御剤として常用されるアミン化合物は、ベーク時や描画時に生じる熱によって、揮発するおそれがある。本発明のネガ型レジスト組成物は、酸拡散制御剤としてイオン性化合物を用いているため、ベークや描画の際に発生する熱の影響を受けず、パターン寸法の温度依存性が少ない利点がある。
【0032】
上記式(3a)で表される塩のアニオン構造として、具体例を以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されない。
【化18】
【0034】
また、式(3a)におけるカチオンとしては、上記[化15]に記載の一般式で示されるものが挙げられ、その具体例としては上記[化16]に記載のスルホニウムカチオンを例示し得る。
【0035】
上記本発明のネガ型レジスト組成物に含まれる高分子化合物は、高解像性を得るために、上記式(1)の繰り返し単位に含まれる酸脱離性基の脱離に伴う不溶化反応を有利に進めるため、適度なポリマーの熱振動を許容する単位である下記一般式(2)及び/又は(3)で示される繰り返し単位を含有することが好ましい。更には、後述する一般式(4)又は(5)で示される繰り返し単位を含有することもできる。
【0037】
上記式(2)中、R
1は上記式(1)の定義と同じであり、R
3及びbは上記式(1)のR
2及びaの定義と同じであり、好ましい具体例としても同じものが挙げられる。また、リンカーであるBは上記式(1)のAの定義と同じであり、好ましい具体例としても同じものが挙げられる。
【0038】
上記式(2)中、芳香環に置換する水酸基の数gは0〜3の整数であるが、後述するようにレジストポリマーには水性アルカリ現像液に対する溶解性と基板密着性を得るために、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位又は上記式(3)の繰り返し単位が必ず含まれることが好ましい。また、上記式(1)の繰り返し単位に含まれる酸脱離性基の脱離に伴う不溶化反応に対して高い活性を確保することで高解像性を得るためには、式(2)中のgが1以上であるものが含まれることが好ましく、より好ましくは式(2)中のgが1以上のものが50モル%以上含まれるものである。また、gが0のものは、溶解速度の調整と、ポリマーの熱振動の許容性の調整に用いることができるが、設計によっては含まれなくてもよい。
【0039】
また、上記式(1)と同様、繰り返し単位に含まれる芳香環は、主鎖に単結合で結ばれていてもよく、また、カルボニルオキシ基を介しても、更にリンカーであるBを介して結合されていてもよい。tは0〜2の整数を表すが、0である場合にはベンゼン環、1である場合にはナフタレン環、2である場合にはアントラセン環である。
【0040】
上記式(2)で示される繰り返し単位のうち、gが1以上であり、nが0かつBが単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、即ちリンカーのない場合の繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位に代表される水酸基が置換された芳香環に1位置換あるいは非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等を挙げることができ、より好ましくは下記一般式(6)で表される3−ヒドロキシスチレン又は4−ヒドロキシスチレン等である。
【化21】
(式中、R
1は上記式(1)の定義と同じであり、kは1〜3である。)
【0041】
また、nが1である場合、つまりリンカーBとしてエステル骨格を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマー単位である。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル由来のリンカー(−CO−O−B−)を持つ上記式(2)で示される繰り返し単位のうち、gが1以上であるものの好ましい具体例を以下に示す。
【化22】
【0043】
上記式(2)で示される繰り返し単位のうち、gが0であるものとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン及びそれらの芳香環に上述のようにハロゲン原子、アシルオキシ基、アルキル基、アルコキシ基が置換した繰り返し単位を挙げることができる。また、gが0であり、(メタ)アクリル酸エステル由来のリンカー(−CO−O−B−)を持つものとしては、上記gが1以上である場合の好ましい構造に対し、ヒドロキシ基がないもの、ヒドロキシ基の水素原子がアシル基あるいはアルキル基が置換されたものが挙げられる。
【0044】
上記式(3)中、R
1は上記式(1)の定義と同じであり、R
4及びcは上記式(1)のR
2及びaの定義と同じであり、好ましい具体例としても同じものが挙げられる。また、リンカーであるCは上記式(1)のAの定義と同じであり、好ましい具体例としても同じものが挙げられる。
【0045】
上記式(3)中、Dは単結合又はフッ素で置換されてもよく、鎖の中間にエーテル性酸素原子、カルボニル基、又はカルボニルオキシ基を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の(v+1)価の脂肪族炭化水素基を示す。また、Rf
1、Rf
2は少なくとも1つのフッ素原子を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rf
1はDと結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
rが1の場合はポリマー主鎖と隣接位炭素がフッ素置換された炭素に結合したヒドロキシ基との間に芳香環が入る場合であり、Dの置換数は1又は2であり、ここでDが単結合でない場合、Dは隣接位炭素がフッ素置換されたヒドロキシ基を1又は2個持つ。
また、rが0である場合にはpは1、Cは単結合であり、Dはポリマー主鎖にカルボニルオキシ基を介して結合する。この場合も、Dは隣接位炭素がフッ素置換された炭素に結合したヒドロキシ基を1又は2個持つ。
【0046】
上記式(3)で示される繰り返し単位の好ましい例としては、下記のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化23】
【0048】
下記一般式(4)又は(5)で示される繰り返し単位は、芳香環を含有する環状オレフィンに由来する。
【化25】
【0049】
上記式(1)の繰り返し単位と、上記式(2)及び(3)より選ばれる1種以上の繰り返し単位と、上記式(4)及び(5)より選ばれる1種以上の繰り返し単位を同時に含むポリマーを用いたレジスト組成物より得たレジスト膜は、電子線又はEUVによってアイソパターンとアイソスペースパターンの両者を含むパターン露光を行った場合においても、照射されたパターンと形成されるパターンの寸法のパターン依存性を強く抑制することができ、かつ、高い解像性と両立することができる。
【0050】
上記式(4)及び(5)のR
5とd及びR
6とe定義は、上記式(1)のR
2及びaの定義と同じであり、好ましい具体例としても同じものが挙げられる。
【0051】
ポリマーを構成する他の繰り返し単位との関係からポリマーのアルカリ溶解性を上げるためにi及びjが1以上のものを使用する場合、下記誘導体は入手容易であり、目的の効果を好ましく達成することができる。
【化26】
【0052】
この場合、本発明のポリマーを構成する全繰り返し単位において、上記式(1)以外の繰り返し単位のうち少なくとも1つはフェノール性水酸基単位及び/又はフルオロアルコール基単位を有し、式(1)以外の繰り返し単位(式(a1)、(a2)、(a3)、(2)、(3)、(4)、(5))の合計は25〜95モル%、好ましくは40〜90モル%である。
【0053】
本発明のネガ型レジスト組成物に含まれる上記ポリマーは、水性アルカリ現像液によって溶解可能であるものであり、上記式(2)中g≧1である繰り返し単位、上記式(3)の繰り返し単位、上記式(4)中i≧1である繰り返し単位、及び上記式(5)中j≧1である繰り返し単位からなるグループは、アルカリ溶解性と基板密着性を与える繰り返し単位のグループである。このため、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対する、このグループに属する繰り返し単位の合計は25〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜80モル%である。なお、上記式(4)中i≧1である繰り返し単位、及び上記式(5)中j≧1である繰り返し単位の合計が、このグループの繰り返し単位のうちの半分以上を占める場合には、このグループの合計の下限は40モル%であることが好ましい。また、上記式(2)中g≧1である繰り返し単位と上記式(3)の繰り返し単位の合計が、ポリマー全体を構成する全繰り返し単位に対して20モル%以上である場合には、このグループ全体の上限は80モル%以下であることが好ましい。このグループの繰り返し単位の量が上記下限より低い場合には、現像時にスカムの発生が起き易く、また、レジストパターン間にブリッジが発生し易くなる。なお、特に、上記式(2)中g≧1である繰り返し単位が50〜70モル%含まれる場合には、高解像性を得易くなる。
【0054】
また、本発明のネガ型レジスト組成物は、酸の作用により脱離反応を起こす上記式(1)の繰り返し単位に含まれる水酸基によるネガ化によるものであるが、この効果を得るためには、上記式(1)の繰り返し単位は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して5〜75モル%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜60モル%である。上記式(1)の繰り返し単位が5モル%より低い場合、上記式(1)の繰り返し単位の酸による反応でのアルカリ溶解性変化が十分でなくなり、本発明の効果を得にくくなる場合がある。
【0055】
また、ポリマーの適度な熱振動の許容性を得るためには、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対する上記式(4)と上記式(5)の合計の含有量は、3〜30モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜20モル%である。
【0056】
また、上記式(a1)、(a2)、(a3)の露光により酸を発生させる繰り返し単位は0.5〜20モル%含まれていることが好ましく、1〜10モル%含まれていることがより好ましい。上記式(a1)、(a2)、(a3)の繰り返し単位が20モル%より多い場合、ポリマーのレジスト溶剤に対する溶解性が低下し、欠陥が発生する怖れがある。
【0057】
その他の含まれていてもよい繰り返し単位の例としては、下記一般式(13)〜(15)
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Yは酸素原子又はメチレン基を表し、Zは水素原子又は水酸基を表し、R’は炭素数1〜4のアルキル基を表し、wは0〜3の整数を表す。)
で示される単位を挙げることができる。これらの単位は、酸性を示さず、基板に対する密着性を与える単位や溶解性を調整する単位として補助的に用いることができる。
【0058】
即ち、(A)成分の高分子化合物は、式(1)で示される繰り返し単位を5〜75モル%、好ましくは10〜60モル%、式(a1)〜(a3)で示される繰り返し単位を0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%、式(2)及び(3)で示される繰り返し単位を5〜94.5モル%、好ましくは15〜86モル%、式(4)及び(5)で示される繰り返し単位を0〜20モル%、好ましくは3〜15モル%、その他の繰り返し単位を0〜20モル%、好ましくは0〜10モル%含有することが望ましい。
【0059】
本発明のネガ型レジスト組成物には、更に、
(C)上記式(1)の繰り返し単位を含み、高エネルギー線の照射により酸を発生させる部位を有する繰り返し単位を含まない高分子化合物
を含有することができる。このような高分子化合物として、例えば、上記式(1)の繰り返し単位と、上記式(2)及び(3)より選ばれる1種以上の繰り返し単位と、上記式(4)及び(5)より選ばれる1種以上の繰り返し単位を同時に含むポリマーからなる高分子化合物を挙げることができる。
【0060】
即ち、(C)成分の高分子化合物は、式(1)で示される繰り返し単位を5〜70モル%、好ましくは10〜60モル%、式(2)及び(3)で示される繰り返し単位を25〜95モル%、好ましくは40〜80モル%、式(4)及び(5)で示される繰り返し単位を0〜30モル%、好ましくは3〜20モル%、その他の繰り返し単位を0〜20モル%、好ましくは0〜10モル%含有することが望ましい。
【0061】
このような高分子化合物を、上記(A)の高分子化合物と併用することで、レジスト溶剤に対する溶解性や、現像液に対する溶解性の調整を行うことができる。また、解像性の向上が図られることもある。なお、(C)成分の高分子化合物の配合量は、(A)成分の高分子化合物100質量部に対し、0〜5,000質量部、好ましくは0〜2,000質量部、より好ましくは0〜1,000質量部である。
【0062】
上記ベースポリマーは、上述の通り、異なる高分子化合物を混合して用いることもできるが、混合しない場合には、それぞれの上記機能を持つ繰り返し単位を決定した後、それぞれの繰り返し単位の構成比を、レジスト膜とした際に好ましい解像性を与えるよう設計される。
【0063】
本発明のネガ型レジスト組成物に用いる上記(A)、(C)の繰り返し単位を含有する高分子化合物は、公知の方法によって、それぞれの単量体を必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合である。これらの方法については特許文献3等を参考にすることができる。
【0064】
上記(A)成分及び(C)成分の高分子化合物の好ましい分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、重量平均分子量が1,000〜50,000であり、好ましくは1,000〜20,000である。重量平均分子量が1,000より小さいと、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、ラインエッジラフネスが劣化する。一方、上記分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、ラインエッジラフネスが増大する傾向を示し、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、上記分子量を20,000以下に制御することが好ましい。
【0065】
更に、本発明に用いる(A)、(C)成分の高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0、特に1.0〜2.5と狭分散であることが好ましい。分子量分布が広い場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化することがある。
【0066】
本発明のネガ型レジスト組成物は、高エネルギー線照射における酸のケミカルフレアや、帯電防止膜材料をレジスト上に塗布するプロセスにおける帯電防止膜からの酸のミキシングを遮蔽し、予期しない不要なネガ化を抑制する目的で、更に下記一般式(8)で表される繰り返し単位及び少なくとも1個のフッ素原子を含む下記一般式(9)、(10)、(11)、(12)で表されるいずれか1つ以上の繰り返し単位を有する高分子化合物(D)を含んでもよい。また本材料を含有することで未露光部領域のアルカリ現像液に対するレジスト膜の溶解速度が大きくなる特性を有するため、現像欠陥に対する効果も発揮する。
【化27】
(式中、R
50は水素原子又はメチル基を表す。R
51は水素原子、又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を表す。R
52はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を表す。R
53はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R
53a及びR
53bはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表す。R
54はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基を表し、R
54が1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基の場合、炭素−炭素結合間に、エーテル結合(−O−)又はカルボニル基(−C(=O)−)が介在していてもよい。αは1〜3の整数である。βは0≦β≦5+2γ−αを満足する整数である。γは0又は1である。δは1〜3の整数である。X
1は単結合、−C(=O)O−又は−C(=O)NH−を表し、Eは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の(δ+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。)
【0067】
上記1価炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。上記アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。また、これらの基の炭素−炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子が介在していてもよい。
【0068】
上記式(8)中、−OR
51は親水性基であることが好ましい。この場合、R
52としては、水素原子、炭素−炭素結合間に酸素原子が介在した炭素数1〜5のアルキル基等が好ましい。
【0069】
上記式(8)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化28】
(式中、R
50は上記と同じである。)
【0070】
(式中、R
50は上記と同じである。)
【0071】
上記式(8)で表される繰り返し単位において、X
1は、単結合よりも、−C(=O)O−又は−C(=O)NH−であることが好ましい。更に、R
50が水素原子又はメチル基であることが好ましい。X
1にカルボニル基が存在することにより、帯電防止膜由来の酸のトラップ能が向上する。また、R
1がメチル基であると、よりガラス転移温度(Tg)が高い剛直なポリマーとなるため、酸の拡散が抑制される。これにより、レジスト膜の経時安定性が良好なものとなり、解像力やパターン形状も劣化することがない。
【0072】
上記少なくとも1個のフッ素原子を含む繰り返し単位は、下記式(9)〜(12)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【化29】
(式中、R
53はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R
53a及びR
53bはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表す。R
54はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基を表し、R
54が1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基の場合、炭素−炭素結合間に、エーテル結合(−O−)又はカルボニル基(−C(=O)−)が介在していてもよい。δは1〜3の整数である。Eは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の(δ+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。)
【0073】
炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。
【0074】
炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、前述したもののほか、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基としては、前述した1価炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換した基が挙げられる。
【0075】
炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の(δ+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基としては、前述した1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基等から更に水素原子をδ個除いた基が挙げられる
【0076】
上記式(9)〜(12)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化30】
(式中、R
53は上記と同じである。)
【0077】
【化31】
(式中、R
53は上記と同じである。)
【0078】
なお、上記(8)の繰り返し単位は、全繰り返し単位中、5〜80モル%、好ましくは15〜70モル%含有する。上記式(9)〜(12)で表される繰り返し単位は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよく、(D)高分子化合物の全繰り返し単位中、20〜95モル%、好ましくは30〜85モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0079】
高分子化合物(D)は、前述した繰り返し単位以外のその他の単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、特開2014−177407号公報の段落[0046]〜[0078]に記載されているもの等が挙げられる。高分子化合物(D)がその他の繰り返し単位を含む場合、その含有率は、全繰り返し単位中50モル%以下が好ましい。
【0080】
高分子化合物(D)は、公知の方法によって、それぞれの単量体に必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については特開2004−115630号公報を参考にすることができる。
【0081】
高分子化合物(D)の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜50,000であることが好ましく、3,000〜20,000であることがより好ましい。Mwが2,000未満であると、酸の拡散を助長し、解像性の劣化や経時安定性が損なわれることがある。Mwが大きすぎると、溶剤への溶解度が小さくなり、塗布欠陥を生じることがある。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフラン(THF)溶剤を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0082】
更に、高分子化合物(D)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.2であることが好ましく、1.0〜1.7であることがより好ましい。
【0083】
高分子化合物(D)の配合量は、(A)成分の高分子化合物(ベース樹脂)100質量部に対して0〜30質量部で、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。
【0084】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、基本的には架橋剤を添加することはないが、性能の微調整を行いたい場合には、ポリマー100質量部に対して0.5〜5質量部程度添加することもできる。化学増幅ネガ型レジスト組成物用の架橋剤はすでに多数のものが公知であり、特許文献1〜3にも例示されている。
【0085】
別途添加される好ましい架橋剤としては、アルコキシメチルグリコールウリル類、アルコキシメチルメラミン類を挙げることができ、具体的には、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン等が例示される。架橋剤は単独で用いて、複数種類を混合して用いてもよい。
【0086】
本発明のネガ型レジスト組成物に用いられる高分子化合物には、露光により酸を発生させる部位が含有されているため、レジスト組成物に酸発生剤を必ずしも添加する必要はないが、感度や解像性を調整する目的で、酸発生剤を添加することもできる。配合する場合、好ましい添加量としては、ポリマー100質量部に対して1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部の割合で使用できる。酸発生剤は、調整を行いたい物性に応じて適宜公知の酸発生剤より選択される。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0087】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
上記酸発生剤の具体例の中でも、アリールスルホネート型の光酸発生剤が、酸脱離性基が脱離反応を起こし、そのもの自身によるアルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発するのに適度な強度の酸を発生させるために、好ましい。また、発生酸を本発明のレジスト組成物に含有されるオニウム塩と組み合わせて交換反応を起こすことによりLERを改善するという効果を奏するために、光酸発生剤から発生する酸のpKaは−3.0〜1.5の範囲にあることが好ましく、−1.0〜1.5の範囲にあることがより好ましい。
【0088】
このような酸発生剤としては、下記に示す構造のスルホニウムアニオンを有する化合物を好適に用いることができ、対をなすカチオンとしては、上記[化16]に記載のスルホニウムカチオンを有する化合物を好適に使用することができる。
【化32】
【0094】
酸拡散制御剤は、感度調整と高解像性を得るために、事実上必須構成成分である。本発明のネガ型レジスト組成物は酸拡散制御剤として上記式(3a)で表されるカルボン酸塩を含有するが、その他の塩基性化合物を添加することも可能である。配合する場合、その添加量は、上記ポリマー100質量部に対して0.01〜20質量部、特に0.05〜10質量部が好ましい。また、用いることができる塩基性化合物は多数が知られており(特許文献1〜5のいずれにも開示がある)、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が知られている。これらの具体例は特許文献2や特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]や、特許第3790649号公報に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン−N−オキシド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0095】
本発明のネガ型レジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特許文献1〜5にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。また、特開2008−304590号公報(特許文献13)に開示されているようなフッ素を含有するポリマーを添加することもできる。
【0096】
なお、界面活性剤の添加量としては、レジスト組成物中の全高分子化合物100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、配合する場合は0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0097】
本発明のネガ型レジスト組成物の調製に使用される有機溶剤としては、高分子化合物、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0098】
有機溶剤の使用量は、全高分子化合物100質量部に対して1,000〜10,000質量部、特に2,000〜9,700質量部が好適である。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が10〜300nmのレジスト膜を安定して平坦度よく得ることができる。
【0099】
更に、本発明のネガ型レジスト組成物には、適宜、公知の溶解阻害剤などを加えることもできる。
【0100】
本発明のネガ型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(表層の材料がSi、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等であるシリコンウエハー等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で、60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0101】
被加工基板がフォトマスクブランクである場合、マスク回路製造用の基板(表層の材料がCr、CrO、CrON、MoSi等である石英基板等)に膜厚が0.05〜2.0μmとなるようにネガ型レジスト組成物を塗布し、ホットプレート上で、80〜130℃、4〜20分間、好ましくは90〜110℃、8〜12分間プリベークを行う。次いで上記で得たレジスト膜に対し、目的のパターンを形成するためにパターン露光を行う。フォトマスクブランクの加工を行う場合には、加工によって同一のものを多数製造するものではないため、通常電子線露光によってパターン露光が行われる。露光量は1〜100μC/cm
2、好ましくは10〜100μC/cm
2となるように照射する。次いでホットプレート上で、60〜150℃、0.1〜5分間、好ましくは80〜140℃、0.5〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0102】
なお、本発明のネガ型レジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持つため厳しいエッチング条件にも耐えることができ、かつLERが小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、被加工基板として、レジストパターンの密着性が取り難くパターン剥がれやパターン崩壊を起こし易い材料を表面に持つ基板への適用が特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物をスパッタリング成膜した基板上、特にはフォトマスクブランク上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0103】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0104】
[合成例1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、3,000mLの滴下シリンダーに4−ヒドロキシスチレンの50.0質量%PGMEA溶液890g、アセナフチレン47.7g、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン169.6g、トリフェニルスルホニウム−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート87.0g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)96.1g、溶媒としてγ−ブチロラクトン360gとPGMEA220gを加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の5,000mL重合用フラスコに、γ−ブチロラクトンを580g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下すると共重合体が凝集した。デカンテーションによりジイソプロピルエーテルを除去し、共重合体をアセトン2,250gに溶解した。このアセトン溶液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体を再度アセトン2,250gに溶解し、このアセトン溶液を22.5kgの水に滴下し、析出した共重合体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、白色重合体を700g得た。得られた重合体を
13C−NMR,
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化38】
重量平均分子量(Mw)=13,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.62
これをポリマー1とした。
【0105】
[合成例2]ポリマー2〜14及び比較用ポリマー1,2の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例1と同じ手順により、表1に示したポリマー2〜14及び比較用ポリマー1,2を合成した。なお、下記表1において、導入比はモル比を示す。また、ポリマーに導入した繰り返し単位の構造を下記表2〜5に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
[合成例3]ポリマー15の合成
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーに4−アセトキシスチレン39.26g、アセナフチレン6.14g、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン19.6g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)7.43g、溶媒としてメチルエチルケトンを90g加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の500mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを60g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を1,000gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン200gで2回洗浄した。得られた共重合体を窒素雰囲気下で、1Lフラスコ中、テトラヒドロフラン126gとメタノール42gとの混合溶剤に溶解し、エタノールアミン16.3gを加え、60℃で3時間撹拌した。この反応溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮物を300gの酢酸エチルと水80gとの混合溶剤に溶解させ、得られた溶液を分液ロートに移し、酢酸8.2gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、得られた有機層に水80g及びピリジン10.9gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、更に得られた有機層に水80gを添加して水洗分液を行った(水洗分液は計5回)。分液後の有機層を濃縮後、アセトン140gに溶解し、得られたアセトン溶液を水2,500gに滴下して、得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄を行い、2時間吸引濾過を行った後、再度得られた濾別体をアセトン150gに溶解し、得られたアセトン溶液を水2,800gに滴下して得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄、乾燥を行い、白色重合体を45.0g得た。得られた重合体を
13C−NMR,
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化39】
重量平均分子量(Mw)=3,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.58
これをポリマー15とした。
【0112】
[合成例4]ポリマー16の合成
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーにヒドロキノンモノメタクリレート67.5g、アセナフチレン8.87g、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン23.6g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)10.7g、溶媒としてメチルエチルケトンを120g加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の500mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを60g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を2,000gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン400gで2回洗浄した。得られた共重合体を濾過、乾燥を行い、白色重合体を45.0g得た。得られた重合体を
13C−NMR,
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化40】
重量平均分子量(Mw)=4,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
これをポリマー16とした。
【0113】
[合成例5]ポリマー17〜24及び比較用ポリマー3,4の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、A−1単位を含有するポリマーの場合は、ポリマー合成例15と同じ手順により、A−2単位を含有するポリマーの場合は、ポリマー合成例16と同じ手順により、表6に示したポリマー17〜24及び比較用ポリマー3,4の合成を合成した。なお、下記表6において、導入比はモル比を示す。また、ポリマーに導入した繰り返し単位の構造は上記表2〜5に示されている。
【0114】
【表6】
【0115】
[実施例、比較例]
ネガ型レジスト組成物の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー1〜24、比較用ポリマー1〜4)、酸発生剤(PAG−1〜3)、塩基性化合物(Q−1〜4、比較Q−1,2)、一部組成物には添加剤として架橋剤TMGU(テトラメトキシメチルグリコールウリル)、又はフッ素含有ポリマーFP−1を表7〜9に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、ネガ型レジスト組成物の溶液をそれぞれ調製した。なお、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を固形分量に対して0.075質量部添加した。
【0116】
フッ素含有ポリマーFP−1の構造を下記に示す。
【化41】
【0117】
表7〜9中の溶剤の、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ELは乳酸エチル、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルを表す。
また、使用した酸発生剤、塩基性化合物の構造を表10,11にそれぞれ示す。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
【表9】
【0121】
【表10】
【0122】
【表11】
【0123】
電子ビーム描画評価
(1)解像性評価
上記調製したネガ型レジスト組成物(実施例1〜41、比較例1〜14)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして80nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0124】
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、130℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ネガ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0125】
作製したパターン付きブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とした。また、400nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。EB描画における本発明のネガ型レジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表12,13に示す。
なお、下記の結果において、LS(ラインアンドスペース)は、ラインとスペースが1:1の間隔で並んだパターンの解像度であり、IL(アイソレーテッドライン)は、孤立した1本のラインパターンの解像度であり、IS(アイソレーテッドスペース)は、孤立した1本のスペースパターンの解像度である。
【0126】
【表12】
【0127】
【表13】
【0128】
(2)プリベーク温度依存性評価
上記(1)解像性評価における、スピンコーティング後のベーク温度(プリベーク温度)を110℃から100℃に変更した以外は同様の手順で露光、現像を行い、400nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を解像する露光量(μC/cm
2)を求めた。この時の露光量をE
100とした。次に、上記(1)解像性評価における、スピンコーティング後のベーク温度を110℃から120℃に変更し、露光量を上記E
100とした以外は同様の手順で露光、現像を行い、設計線幅400nmのパターンにおける実寸法を計測した。これをW
120とし、以下の式によりプリベーク温度依存性を求めた。この値はプリベーク温度の変化に伴いパターン線幅がどれくらい変動するかを示す値であり、値が小さいほど、プリベーク温度依存性が小さいことを示す。
プリベーク温度依存性=(W
120−400)/20
結果を表14に示す。
【0129】
【表14】
【0130】
(3)PEB温度依存性評価
上記(1)解像性評価における最適露光量をE
130とする。上記(1)解像性評価における、PEB温度を130℃から150℃に変更し、露光量を上記E
130とした以外は同様の手順で露光、現像を行い、設計線幅400nmのパターンにおける実寸法を計測した。これをW
150とし、以下の式によりPEB温度依存性を求めた。この値はPEB温度の変化に伴いパターン線幅がどれくらい変動するかを示す値であり、値が小さいほど、PEB温度依存性が小さいことを示す。
PEB温度依存性=(W
150−400)/20
結果を表15に示す。
【0131】
【表15】
【0132】
(4)ケミカルフレア耐性評価
上記(1)解像性評価と同様の条件でレジスト膜を作製し、1cm四方のネガパターンの中心に1μm四方のスペースパターンが形成されるような設計で露光し、現像を行った。1μm四方のスペースパターンが形成できた場合を○、形成できなかった場合を×とした。
結果を表16に示す。
【0133】
【表16】
【0134】
(5)PCD:Post Coating Delay(ポストコーティングディレイ)評価
レジスト膜を成膜直後に、400nmのラインアンドスペースパターンを解像する露光量と同じ露光量で、レジスト膜を成膜した後2週間経過してから、露光を行った場合の、線幅の差を測定し、1ヶ月当たりの線幅変動量をPCDとして表した。この値が小さいほど、レジスト膜成膜後の保存安定性に優れる。
結果を表17に示す。
【0135】
【表17】
【0136】
上記表12〜17の結果を説明する。本発明のレジスト組成物は、いずれも解像性、ラインエッジラフネスの値は良好な結果を示した。これに対して、比較例1〜6の架橋剤含有レジスト組成物や比較例13,14の酸発生単位がポリマーに含有されていないポリマーを用いたレジスト組成物は解像性が劣る結果となった。
また、比較例7,9,11の塩基性化合物としてアミン化合物を用いたレジスト組成物の場合、解像性、ラフネスの値が若干劣ることに加え、温度依存性が高いこと、ケミカルフレア耐性が低いこと、レジスト膜の成膜後の安定性に劣ることがわかる。
温度依存性が高くなるという結果は、ベーク温度が高くなると塩基性化合物が揮発してしまうため、同露光量でも線幅が太くなってしまうことが原因と考えられる。
成膜後の安定性についても、保存中に塩基性化合物が徐々に揮発していくことが原因と考えられる。
ケミカルフレア耐性が低い結果は、描画部で発生した酸が、描画部に存在するアミン化合物によってトラップされずに揮発した後、未露光部に再付着したため、望まないネガ化が進行してしまい、スペースパターンが形成されなかったと考えられる。塩基性化合物としてカルボン酸塩を用いた本発明のネガ型レジスト組成物の場合は、描画部から塩基性化合物が揮発することはないため、パターンの温度依存性は少なく、ケミカルフレア耐性評価においても良好な結果を示した。
上記温度依存性、保存安定性、ケミカルフレア耐性の改善には、比較例8,10,12のような沸点の高い塩基性化合物を用いることで解決するアプローチも考えられたが、この場合はラフネスの大きいパターンが形成される結果となった。
【0137】
(6)上層に帯電防止膜が形成されたレジスト膜のEB露光評価(参考例1〜6)
50A、特に200A以上といった大電流量でレジスト膜を描画すると、レジスト膜の帯電による静電反発で電子ビームの軌道が曲げられ、位置精度よくパターン描画ができない問題が生じることがある。この問題を解決するために、レジスト膜の上層に帯電防止膜を形成し、パターン描画を行った。
【0138】
上記(1)解像性評価における条件でレジスト膜を形成した後、導電性高分子組成物を滴下し、ACT−M(東京エレクトロン(株)製)でレジスト膜上全体に回転塗布した。ホットプレート上で、90℃で600秒間ベークを行い、膜厚60nmの帯電防止膜を得た。なお、導電性高分子組成物としては、Proc. SPIE Vol. 8522 85220O−1に記載の、ポリスチレンでドープされたポリアニリンの水分散液を用いた。この、帯電防止膜がレジスト層上に形成されたフォトマスクブランクを用いて、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、130℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ネガ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0139】
<最適露光量、限界解像性>
(1)解像性評価と同様の手法で評価した。
<表面抵抗率>
得られた帯電防止膜、レジスト膜の表面抵抗値を、Hiresta−UP MCP−HT450(三菱化学(株)製)を用いて測定した。
<感度変化率>
参考例1〜6の感度をそれぞれ、実施例1,21,22,39,40及び41の感度と比較し、偏差(%)として算出した。
<パターン形状>
パターン部の割断を行い、SEM画像を目視にて判定した。
<PCD:Post Coating Delay(ポストコーティングディレイ)>
帯電防止膜を成膜直後に、400nmのラインアンドスペースパターンを解像する露光量と同じ露光量で、帯電防止膜を成膜した後2週間経過してから、露光を行った場合の、線幅の差を測定し、1日当たりの線幅変動量をPCDとして表した。
以上の結果を表18に示す。
【0140】
【表18】
【0141】
フッ素原子含有樹脂を含まないレジスト組成物を用いた参考例1〜3においては、帯電防止膜組成物に含有される酸成分がレジスト膜に浸透することによって感度が大きく変動し、パターン形状も逆テーパー状になり、更にPCDの値も大きかった。一方、フッ素原子含有樹脂を含むレジスト組成物を用いた参考例4〜6においては、感度変化は少なく、パターン形状も矩形性を保った。PCDの値も良好であった。表面抵抗率は参考例1〜6において大差はなく、いずれも描画位置精度よくパターンを描画することができた。
以上の結果より、帯電防止膜をレジスト膜上に成膜して描画を行う場合にはフッ素原子含有樹脂を含むレジスト組成物を用いることが好ましい。
【0142】
以上説明したことから明らかなように、本発明のネガ型レジスト組成物を用いれば、高解像かつ、ラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。また、パターン寸法の温度依存性が少ない長所もあるため、これを用いたパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクの加工における高電流量によるフォトリソグラフィーに有用である。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。