特許第6274505号(P6274505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274505
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】汚れ監視センサー及び汚れ監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   G01N25/72 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-248723(P2013-248723)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105895(P2015-105895A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102679
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 健治
(72)【発明者】
【氏名】岸 由子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−096644(JP,A)
【文献】 米国特許第04383438(US,A)
【文献】 特開2007−263949(JP,A)
【文献】 特開平07−146263(JP,A)
【文献】 特開2010−237107(JP,A)
【文献】 特開2010−101840(JP,A)
【文献】 特開2005−189212(JP,A)
【文献】 特開2013−224890(JP,A)
【文献】 米国特許第04718774(US,A)
【文献】 米国特許第05992505(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成され、外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水が流されて、外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる評価チューブと、
前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、
前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測して、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの計測温度と前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着検出を行わせる温度センサーとを有する汚れ監視センサーであって、
前記評価チューブの前記中空部に差し込まれた、この評価チューブより熱伝導率の小さい加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させ、この評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする汚れ監視センサー。
【請求項2】
被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成され、外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水が流されて、外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる評価チューブと、
前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、
前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測して、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの計測温度と前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着検出を行わせる温度センサーとを有する汚れ監視センサーであって、
前記評価チューブの前記温度センサーとは反対側の前記管肉部に、前記中空部と合体させた形で挿入部を形成し、この挿入部に差し込まれる加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、弾性力により前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させるとともに、前記挿入部側の前記評価チューブの内面と前記ヒーター間に一定の隙間を形成して、前記評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする汚れ監視センサー。
【請求項3】
前記加圧部材は、金属又は金属以外の耐熱材料から形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の汚れ監視センサー。
【請求項4】
被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成された評価チューブと、
前記評価チューブが内部に取り付けられ、この評価チューブの外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水を所定流速で流すことにより、前記評価チューブの外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる通水セルと、
前記サンプル水の温度を測定する温度計と、
前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、
前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測する温度センサーと、
通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの、前記温度センサーにより計測された温度と前記温度計により計測された前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着を検出する検出制御ユニットとを有する汚れ監視装置であって、
前記評価チューブの前記中空部に差し込まれた、この評価チューブより熱伝導率の小さい加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させ、この評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする汚れ監視装置。
【請求項5】
被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成された評価チューブと、
前記評価チューブが内部に取り付けられ、この評価チューブの外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水を所定流速で流すことにより、前記評価チューブの外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる通水セルと、
前記サンプル水の温度を測定する温度計と、
前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、
前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測する温度センサーと、
通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの、前記温度センサーにより計測された温度と前記温度計により計測された前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着を検出する検出制御ユニットとを有する汚れ監視装置であって、
前記評価チューブの前記温度センサーとは反対側の前記管肉部に、前記中空部と合体させた形で挿入部を形成し、この挿入部に差し込まれる加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、弾性力により前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させるとともに、前記挿入部側の前記評価チューブの内面と前記ヒーター間に一定の隙間を形成して、前記評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする汚れ監視装置。
【請求項6】
前記汚れが、スケール及び/又はバイオファウリングに起因するものであることを特徴とする請求項4又は5記載の汚れ監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水との間で熱の授受がなされる伝熱面の、水に起因した汚れを監視する汚れ監視センサー、及び、この汚れ監視センサーを備えた汚れ監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラや冷却水などの工業用水系で、工業用水が循環して使用される循環系においては、腐食、スケール、バイオファウリングといった3大障害が発生する。例えば、冷却水の循環水系において、腐食が進行すると、熱交換器や配管等の金属材料に貫通が生じて、設備の操業停止を招くという問題がある。また、同様な循環水系において、スケールやバイオファウリングが進行すると、熱交換器に、熱効率の低下や通水の悪化を引き起こすという問題も生じる。
【0003】
特に、水との間で熱の授受がなされる伝熱管においては、腐食やスケールが発生しやすい。この場合、伝熱管を模擬した監視センサーを考え、この監視センサーにて、腐食やスケールの発生を検出する必要がある。特許文献1には、かかる監視センサーを備えたモニタリング装置が記載されている。
【0004】
このモニタリング装置の監視センサーは、熱交換器の冷却水による汚れの、伝熱面への付着状況を監視するものであり、図9で示されるように、熱交換器の伝熱管と略同一の材料から形成され、外面側に、熱交換器の冷却水から採られたサンプル水W1が流される評価チューブ10と、評価チューブ10の中空部10c内に、差し込むようにして取り付けられる熱源となるヒーター11と、評価チューブ10の管肉部10a内の温度を計測する温度センサー12とを有している。この監視センサー200は、評価チューブ10とヒーター11とで伝熱管を模擬したものであり、例えば、ヒーター11の発熱部11aに対向する評価チューブ10外周面(以下、検出可能面Lという)に、スケールが付着することにより生じる温度上昇から、スケールの付着を検出し、このことによって、熱交換器等の伝熱管にもスケールが付着していることを予想するためのものである。
【0005】
この監視センサー200では、評価チューブ10を伝熱管と見なすために、評価チューブ10からサンプル水W1側への熱流束が、伝熱管の熱流束と同じとなるように、ヒーター11に供給される電力量をコントロールしている。
【0006】
一方、上記監視センサー200において、評価チューブ10の温度を伝熱管の温度と同一とするように、温度に着目して、ヒーター11に供給される電力量をコントロールしてもよい。このことにより、伝熱管側の熱流束が分からない場合でも、スケール等の汚れの付着に関して、評価チューブ10を伝熱管と同一と見なすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−146263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、評価チューブ10の内径は、ヒーター11の外径より僅かに大きく形成され、両者の間には僅かな隙間が生じるとともに、評価チューブ10とヒーター11とは、共に、製作誤差があるため、評価チューブ10とヒーター11との接触状態には、ヒーター11の周方向に対してばらつきが生じていた。したがって、上述のように、温度に着目して、評価チューブ10を伝熱管と見なした場合、評価チューブ10外面から発せられる熱流束が評価チューブ10の周方向に均一とならず、評価チューブ10の検出可能面L内において、評価チューブ10の外面温度にばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0009】
このため、評価チューブ10の温度を熱交換器の伝熱面の温度と同一としても、このことは、検出可能面Lのうち、温度センサー12側に限られるものであり、例えば、検出可能面Lの他の場所では、熱交換器の伝熱管の温度以上に温度が上昇し、熱交換器の伝熱管には、スケール(温度に依存して付着する汚れ)が付着していないのに、検出可能面Lの特定の場所には、スケールが付着しているという事態が生じうる。このため、上記監視センサー200は、評価チューブ10の温度を伝熱管の温度と同一とするように、これを使用した場合、汚れの検出精度がよくないという問題があった。
【0010】
この発明は、以上の点に鑑み、評価チューブの温度を熱交換器の伝熱管の温度と同一となるように定めた場合でも、この伝熱管と同じように、評価チューブの外面に汚れを付着させることができる汚れ監視センサー、及び、この汚れ監視センサーを備えた汚れ監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1記載の発明は、被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成され、外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水が流されて、外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる評価チューブと、前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測して、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの計測温度と前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着検出を行わせる温度センサーとを有する汚れ監視センサーであって、前記評価チューブの前記中空部に差し込まれた、この評価チューブより熱伝導率の小さい加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させ、この評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする。
【0012】
この発明では、評価チューブの外面側にサンプル水を流した状態で、評価チューブの温度が、熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度と同一となるように、ヒーターへの通電量を調整し、その後、この通電量を固定する。この通電量の固定により、評価チューブからの熱流束は固定されるが、従来の汚れ監視センサーでは、ヒーターと評価チューブとの接触状態にばらつきがあるため、評価チューブから発せられる熱流束が、評価チューブの周方向について均一とならず、ヒーターに対向する評価チューブの外周面(以下、検出可能面という)内において、評価チューブの温度にばらつきが生じる。なお、最も高温部の伝熱管の温度には、例えば、実機の伝熱管について、計算により又は計測によって得られたものを使用すればよい。
【0013】
ところが、この発明では、評価チューブ内のヒーターは、評価チューブの中空部に差し込まれた加圧部材により、温度センサー側に加圧され、評価チューブ内の温度センサー側に密着した状態となっているので、評価チューブから発せられる熱流束は、検出可能面のうち、温度センサー側の部分(以下、この部分を初期検出面という)が最も大きくなる。このため、評価チューブの外面温度は、評価チューブの検出可能面のうち、温度センサー側の初期検出面が最も高くなる。したがって、スケールのように、付着が温度に依存する汚れは、まず、評価チューブの初期検出面に付着し、その後、初期検出面から遠ざかるようにして、検出可能面に順次付着していく。
【0014】
一方、温度センサーで示される評価チューブの温度を、最も高温部の伝熱管の温度と同一となるように、ヒーターへの通電量を調整した場合、温度の最も高い、評価チューブの初期検出面の温度が、最も高温部の伝熱管の温度と同一となり、スケールのように、付着が温度に依存する汚れは、まず、評価チューブの初期検出面に付着する。このため、評価チューブの外面には、最も高温部の伝熱管と同じように、汚れが付着することとなり、この監視センサーにより、実機の伝熱管の汚れが適正に監視できることとなる。
【0015】
この発明の請求項2記載の発明は、被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成され、外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水が流されて、外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる評価チューブと、前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測して、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの計測温度と前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着検出を行わせる温度センサーとを有する汚れ監視センサーであって、前記評価チューブの前記温度センサーとは反対側の前記管肉部に、前記中空部と合体させた形で挿入部を形成し、この挿入部に差し込まれる加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、弾性力により前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させるとともに、前記挿入部側の前記評価チューブの内面と前記ヒーター間に一定の隙間を形成して、前記評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の場合において、前記加圧部材は、金属又は金属以外の耐熱材料から形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明の請求項4記載の発明は、被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成された評価チューブと、前記評価チューブが内部に取り付けられ、この評価チューブの外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水を所定流速で流すことにより、前記評価チューブの外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる通水セルと、前記サンプル水の温度を測定する温度計と、前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測する温度センサーと、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの、前記温度センサーにより計測された温度と前記温度計により計測された前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着を検出する検出制御ユニットとを有する汚れ監視装置であって、前記評価チューブの前記中空部に差し込まれた、この評価チューブより熱伝導率の小さい加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させ、この評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、通水セル内の評価チューブ外面側に、サンプル水を所定流速で流しつつ、ヒーターへの通電量をコントロールすることにより、評価チューブの初期検出面の温度を最も高温部の伝熱管の温度と同一とし、その後、この通電量を固定する。そして、検出制御ユニットは、温度センサーからの温度出力(評価チューブの温度)から温度計からの温度出力(サンプル水の温度)を引いた値(温度差)を算出し、この温度差が一定値(汚れが付着していない場合の温度差)を超えれば、評価チューブに汚れが付着していると判定する。
【0019】
この発明の請求項5記載の発明は、被冷却流体と冷却水との間で熱の授受がなされる熱交換器の伝熱管と同一材料又は略同一材料から形成された評価チューブと、前記評価チューブが内部に取り付けられ、この評価チューブの外面側に、前記冷却水から採られたサンプル水を所定流速で流すことにより、前記評価チューブの外面に、前記サンプル水に起因した汚れを付着させる通水セルと、前記サンプル水の温度を測定する温度計と、前記評価チューブの中空部内に差し込まれるとともに、通電により前記評価チューブの温度を前記熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度まで上げた状態で、通電量が固定されるヒーターと、前記評価チューブの前記ヒーターに隣接する管肉部内の温度を計測する温度センサーと、通電量固定の前記ヒーターにより加熱された前記評価チューブの、前記温度センサーにより計測された温度と前記温度計により計測された前記サンプル水の温度との温度差の増加に基づいて、前記伝熱管への前記汚れの付着を検出する検出制御ユニットとを有する汚れ監視装置であって、前記評価チューブの前記温度センサーとは反対側の前記管肉部に、前記中空部と合体させた形で挿入部を形成し、この挿入部に差し込まれる加圧部材により、前記評価チューブ内の前記ヒーターを、弾性力により前記温度センサー側に加圧して、前記評価チューブの内面に密着させるとともに、前記挿入部側の前記評価チューブの内面と前記ヒーター間に一定の隙間を形成して、前記評価チューブの外周部の温度のうち、前記温度センサー側が最も高温になるようにしていることを特徴とする。
【0020】
この発明の請求項6記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明の場合において、前記汚れが、スケール及び/又はバイオファウリングに起因するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明の請求項1、2、3、4、5又は6記載の発明によれば、評価チューブの周方向外面(検出可能面)のうち、評価チューブの温度センサー側外面(初期検出面)の温度を、他の部分に比べて高くでき、かつ、熱交換器の最も高温部の伝熱管の温度と同一にできるので、評価チューブの温度センサー側外面(初期検出面)に、熱交換器の伝熱管と同じように、汚れを付着させることができる。すなわち、これらの発明によれば、評価チューブの温度を熱交換器の伝熱管の温度と同一となるように定めた場合でも、この伝熱管と同じように、汚れを評価チューブの外面(初期検出面)に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】冷却水システムに、この発明の一実施の形態に係る汚れ監視装置を設置した場合の系統図である。
図2】汚れ監視装置の通水セル中に設置されている、この発明の一実施の形態に係る監視センサーの縦断面図である。
図3図2の監視センサーの拡大横断面図である。
図4】加圧部材を示す図であり、(a)は、その側断面図、(b)は、その平面図、(c)は、加圧部材をパイプ内に差し込んだ場合の状態を示す側断面図、である。
図5】評価チューブ周りの温度を調べるために、評価チューブの管肉部に複数の温度センサーを設置する場合の、監視センサーの横断面を示す図であり、(a)は従来の監視センサーの場合を示し、(b)はこの発明に係る監視センサーの場合を示している。
図6】スケール付着試験を行う場合の、サンプル水となる模擬水の水質を表にして示した図である。
図7】評価チューブ周りの温度調査試験を行ったときの結果を示す図であり、(a)は、従来の監視センサーを用いた場合であり、(b)は、この発明に係る監視センサーを用いた場合である。
図8】スケール付着試験を行ったときの結果を示す図であり、(a)は、従来の監視センサーを用いた場合であり、(b)は、この発明に係る監視センサーを用いた場合である。
図9】従来の監視センサーの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る汚れ監視装置が設置されている冷却水システムを示している。
【0024】
冷却水システムCは、図1で示されるように、冷却塔100と、熱交換器101と、循環ポンプ102と、配管103とから構成されており、工業用水が冷却水Wとして循環使用されるものである。この冷却システムCでは、冷却塔100で冷却された冷却水Wが、循環ポンプ102で加圧されて、熱交換器101に送られ、この熱交換器101で被冷却流体Fと熱交換して暖められた後、再び冷却塔100に送られるように循環している。なお、図1中、符号100aは、冷却塔100の水溜であり、符号100bは、冷却水Wと空気Qとを気液接触させる充填材である。また、図1中、符号101aは、熱交換器101の伝熱管であり、この伝熱管101aの内面が、モニタリング対象となる、冷却水Wの伝熱面Aである。
【0025】
汚れ監視装置1は、熱交換器101の伝熱管101aの冷却水W側伝熱面Aに、冷却水Wに起因するスケールやバイオファウリングといった汚れが付着するか否かを監視するものである。この汚れ監視装置1は、図1で示されるように、冷却水システムC側から冷却水Wをサンプリングするためのサンプリングライン2と、このサンプリングライン2中のサンプル水W1を熱交換器101の伝熱管101a内と略同一条件で流す通水セル3と、通水セル3中のサンプル水W1を冷却水システムCに戻すリターンライン4と、通水セル3に取り付けられ、熱交換器101の伝熱面Aと同一温度条件で、サンプル水W1からの汚れの付着検出を行う監視センサー5と、検出制御ユニット6とを有している。
【0026】
サンプリングライン2は、配管2a中に、流量調整弁2bと、流量計2cと、温度計2dとを有している。配管2aは、一端側が、冷却水システムCの循環ポンプ102の出口側配管103と接続され、他端側が、通水セル3に接続されている。流量調整弁2bは、通水セル3中に一定流量のサンプル水W1を供給するためのものであり、流量計2cからの信号に基づいて、サンプル水W1の流量が一定流量となるように、その流量を調整する。温度計2dは、サンプル水W1の温度を計測し、その温度信号P2を検出制御ユニット6に伝達する。
【0027】
通水セル3は、監視センサー5の評価チューブ10(詳細は後述)の外面側に、熱交換器101の伝熱面A側の冷却水Wと、略同一温度で、かつ略同一の一定流速でサンプル水W1を流すものである。通水セル3は、図2で示されるように、円筒部3aの両端部を円板部3b,3cで閉じた形状をしており、上側円板部3bの中央には、監視センサー5が差し込まれた状態で取り付けられており、この円板部3bの監視センサー5を避けた位置に、リターンライン4の配管4aと接続されるノズル3dが設けられている。また、通水セル3には、その下側円板部3cの中央に、サンプリングライン2の配管2aと接続されるノズル3eが形成されている。なお、リターンライン4の配管4aの他端側は、冷却塔100の水溜100aに接続されている。
【0028】
監視センサー5は、図2及び図3で示されるように、評価チューブ10と、ヒーター11と、温度センサー12と、加圧部材13と、電気配線14a,14bとから構成されており、評価チューブ10の温度を、熱交換器101の伝熱管101aの温度と同一として、評価チューブ10への汚れの付着検出を行う、伝熱面の汚れ監視センサーである。この監視センサー5は、評価チューブ10の閉塞端10d側を、通水セル3の円板部3c近くまで差し込んだ状態で、かつ、通水セル3と同芯状態で、この通水セル3に取り付けられている。なお、監視センサー5は、通水セル3に着脱可能に取り付けられており、通水セル3の円板部3bと監視センサー5との間には、漏れ防止用の不図示のパッキン等が設けられている。
【0029】
評価チューブ10は、熱交換器101の伝熱管101aと同一材料又は熱伝導率の等しい金属材料(略同一材料)にて、一端が閉じた円筒状に形成され、サンプル水W1と接触する外面に、サンプル水W1に起因する汚れを付着させるものである。評価チューブ10の管肉部10aには、評価チューブ10の開放端側から、その長手方向に沿って、細長い挿入孔10bが形成されている。この挿入孔10bは、評価チューブ10の中程まで延びていて、端部に温度センサー12が取り付けられる。また、評価チューブ10には、内部の中空部10cに、ヒーター11が取り付けられる。さらに、評価チューブ10には、図3で示されるように、挿入孔10b側の管肉部10aから180度離れた反対側の管肉部10aに、中空部10cと合体するように、加圧部材13の挿入部10eが形成されている。この挿入部10eは、略半楕円の断面形状で、評価チューブ10の開口端側から閉塞端10d側まで延びている。
【0030】
ヒーター11は、外周面から均等に熱を発生させるとともに、供給される加熱電流Jの大きさに応じて発生熱量を変更し、評価チューブ10の温度を所定温度(伝熱管101aの温度)まで上げることができる電気ヒーターである。このヒーター11は、外径が、評価チューブ10の中空部10cの径よりやや小さい、長円柱状に形成されており、端部が評価チューブ10の閉塞端10dに当たるまで、中空部10c内に差し込まれて、評価チューブ10内に取り付けられる。このヒーター11は、上下両端部は発熱しないので、中間部が、発熱部11aとなる。なお、ヒーター11に加熱電流Jを供給する電気配線14aは、評価チューブ10の開放端側から取り出される。
【0031】
温度センサー12は、評価チューブ10の、ヒーター11に隣接する管肉部10a内の温度を計測し、計測した温度の違いに基づいて、評価チューブ10への汚れの付着検出を行わせるものである。この温度センサー12は、例えば、熱電対からなるもので、評価チューブ10の管肉部10a内に位置決め固定されていて、評価チューブ10の管肉部10a内の温度を計測し、その温度信号P2を、電気配線14bを介して、検出制御ユニット6に伝達する。なお、温度センサー12は、ヒーター11の長手方向中間部に位置決めされている。
【0032】
加圧部材13は、これを、評価チューブ10の挿入部10eを介して中空部10cに差し込むことにより、評価チューブ10内のヒーター11を、温度センサー12側の内面に密着させるものである。この加圧部材13には、例えば、図4で示されるように、細長いパイプ内を清掃可能な、耐熱性のワイヤーブラシが用いられている。この加圧部材13は、一定長さの金属製の支柱13aと、この支柱13aに、所定ピッチで植え込まれている細い金属製のワイヤー13bとから構成されている。ワイヤー13bは、図4の(b)で示されるように、支柱13aに直行する同一面内において、同一長さのものが同一ピッチで複数、円形状に植え込まれており、これらのワイヤー13bが、図4の(a)で示されるように、複数段に亘って、支柱13aに植え込まれている。この加圧部材13は、これがパイプ内に挿入されると、図4の(c)で示されるように、ワイヤー13bが弾性変形して、パイプ内をその弾性力で加圧する。
【0033】
したがって、この加圧部材13が、挿入部10eを介して中空部10cに差し込まれると、ワイヤー13bが評価チューブ10の内面やヒーター11の外面によって曲げられて、ワイヤー13bの弾性力Rによって、ヒーター11が評価チューブ10の温度センサー12側内面に加圧される。このことによって、ヒーター11の長手方向に沿った、ヒーター11外面の稜線側が、評価チューブ10の中空部10c内面に加圧されて密着され、ヒーター11に対向する評価チューブ10の外周面(以下、この外周面を、検出可能面Lという)のうち、評価チューブ10の周方向位置が温度センサー12側の部分(以下、初期検出面Kという)側において、評価チューブ10とヒーター11との間の隙間が最も小さくなる。
【0034】
すなわち、評価チューブ10とヒーター11との間の隙間は、評価チューブ10の周方向に、初期検出面Kの中心部から離れるに従って大きくなり、温度センサー12の180度反対側で最大となる。したがって、評価チューブ10の外面の温度は、初期検出面Kで最も高く、評価チューブ10の周方向に、この初期検出面Kから離れるに従って低くなっていく。なお、評価チューブ10の周方向に沿った初期検出面Kのうち、温度センサー12に最も近い中間部が、最も温度の高い部分となる。
【0035】
なお、加圧部材13は、これを、例えば、耐熱性を有するとともに、熱伝導率の小さい、湾曲して変形容易な板状弾性体から形成してもよい。また、加圧部材13は、耐熱性を有するとともに、熱伝導率の小さい、先端がしだいに尖った板状部材から形成してもよい。
【0036】
汚れ監視装置1の検出制御ユニット6は、CPU(中央演算処理装置)及び、RAM、ROMといったメモリー等を備え、プログラムによって動作するコンピュータを有しており、特徴的なの機能として、監視センサー5の温度センサー12から出力される温度信号P1とサンプル水W1の温度計2dから出力される温度信号P2とから、評価チューブ10への汚れの付着を検出する機能と、監視センサー5のヒーター11への通電量をコントロールする機能とを有している。なお、検出制御ユニット6は、ヒーター11へ供給する加熱電流Jの電源と、出力手段であるディスプレーと、入力手段であるキーボード等とを有している。
【0037】
つぎに、監視センサー5の作用効果について説明する。
この監視センサー5では、評価チューブ10の外面側にサンプル水W1を流した状態で、評価チューブ10の温度が、熱交換器101の伝熱管101aの温度と同一となるように、ヒーター11への通電量(加熱電流Jの量)を調整し、その後、この通電量を固定する。このことにより、従来の監視センサー200であっても、ヒーター11からの熱量を、評価チューブ10から均一な熱流束としてサンプル水W1側に放出できると考えられなくもない。
【0038】
ところが、評価チューブ10の内径は、ヒーター11の外径より僅かに大きく形成され、両者の間には僅かな隙間が生じるとともに、評価チューブ10とヒーター11とは、共に、製作誤差があるため、評価チューブ10とヒーター11との接触状態には、ヒーター11の周方向に対してばらつきが生じている。したがって、評価チューブ10の温度を伝熱管101aの温度と同一となるようにヒーター11を調整しても、従来の監視センサー200では、評価チューブ10の検出可能面Lからの熱流束は均一とならず、伝熱管101aの温度と同一となるのは、評価チューブ10の温度センサー12側のみであり、評価チューブ10の他の部分には、伝熱管101aの温度より、高いところが生じてしまう可能性がある。したがって、スケールのように、付着が温度に依存する汚れは、伝熱管101aに付着していないのに、評価チューブ10に付着してしまうという不都合が生じる。
【0039】
一方、この監視センサー5では、挿入部10eを介して、評価チューブ10の中空部10cに加圧部材13を差し込んで、ヒーター11を評価チューブ10内の温度センサー12側内面に密着させているので、これに対応した評価チューブ10外面、すなわち、初期検出面K側の熱流束を、評価チューブ10の検出可能面Lの中で最も大きくでき、評価チューブ10の初期検出面K側の温度を、他の部分より高くすることができる。したがって、スケールのように、付着が温度に依存する汚れは、まず、評価チューブ10の初期検出面Kに付着する。また、評価チューブ10の初期検出面Kは、周方向中間部の温度が、温度センサー12で示される温度と一致する。
【0040】
したがって、評価チューブ10の温度を、伝熱管101aの温度と同一となるように、ヒーター11への通電量を調整した場合、評価チューブ10の初期検出面Kの温度は、伝熱管101aの温度とほぼ同一となり、かつ、評価チューブ10の他の外面より高いため、スケールのように、付着が温度に依存する汚れは、評価チューブ10の初期検出面Kに集中的に付着する。このため、評価チューブ10の初期検出面Kには、伝熱管101aと同じように、汚れが付着することとなり、この監視センサー5により、実機の伝熱管101aの汚れが適正に監視できることとなる。
【0041】
なお、以上の説明では、伝熱面Aに付着する汚れを、スケールとして説明したが、これは、スライムによって形成されるバイオファウリングであってもよい。スライムは、30℃程度の伝熱面Aにはよく付着するからである。また、伝熱面Aには、スケールとバイオファウリングとが一体となって付着することもあるので、伝熱面Aに付着する汚れは、スケールとバイオファウリングであってもよい。
【0042】
また、加圧部材13は、これを、耐熱性を有すとともに、熱伝導率の小さい湾曲可能な薄い板部材で形成し、評価チューブ10に挿入部10eを形成しなくても、これを、評価チューブ10の中空部10cとヒーター11との隙間に差し込んで、ヒーター11を評価チューブ10の温度センサー12側内面に加圧するものであってもよい。
【0043】
つぎに、汚れ監視装置1の作用等について説明する。
まず、熱交換器101の伝熱管101aの温度を決定する。伝熱管101aの温度は、被冷却流体Fと冷却水Wとの温度、及び、被冷却流体Fと冷却水Wとの伝熱境膜厚さにより決定されるので、計算で求めてもよいし、実機の熱交換器101において熱電対等を用いて測定してもよい。この場合、伝熱管101aの温度は、その長手方向に向かって変化するので、最も高い温度、すなわち、被冷却流体Fの入り口側(冷却水Wの出口側)のものを採用する。
【0044】
つづいて、冷却水システムC側の冷却水Wを、サンプル水W1として通水セル3に流す。この場合、流量調整弁2bと流量計2cとにより、サンプリングライン2内にサンプル水W1を一定流量で流すことにより、通水セル3内のサンプル水W1の流速を一定とし、監視センサー5の評価チューブ10の温度が、サンプル水W1の流速変動によって、変動しないようにする。
【0045】
つづいて、監視センサー5の評価チューブ10の温度が、熱交換器101の伝熱管101aの温度になるように、ヒーター11への通電量(加熱電流Jの量)を増加させ、評価チューブ10の温度が伝熱管101aの温度に達すると、このときの通電量を固定する。このことにより、評価チューブ10の温度、すなわち、評価チューブ10の初期検出面Kの温度は、伝熱管101aの温度と略同一と見なすことができる。この場合、評価チューブ10の温度が変動する条件として、サンプル水W1の温度変動と、評価チューブ10の初期検出面Kへの汚れの付着が考えられるので、評価チューブ10の温度と、そのときのサンプル水W1の温度との差(温度差)が、一定値(冷却水Wの伝熱境膜に基づく値であり、具体的には、汚れの付着していない評価チューブ10の温度とその時のサンプル水W1の温度との温度差)より大きければ、評価チューブ10に汚れが付着したこととなる。
【0046】
すなわち、検出制御ユニット6は、監視センサー5からの温度信号P1に基づく評価チューブ10の温度と、温度計2dからの温度信号P2に基づくサンプル水W1の温度との温度差を算出し、この温度差が、一定値(冷却水Wの伝熱境膜に基づく値)より大きければ、評価チューブ10の外面に汚れが付着したと判断し、評価チューブ10への汚れの付着を検出する。このことにより、伝熱管101aの伝熱面Aにも汚れが付着していると推定できるので、この汚れ監視装置1では、伝熱管101aの伝熱面Aへの汚れの付着を容易に検出することができる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、熱交換器101の伝熱管101aを例にとって説明したが、例えば、ボイラーの伝熱管(蒸発管)の内面(伝熱面)の汚れを監視するために、この汚れ監視装置1をボイラーのブローダウンラインに設置してもよい。
【0048】
つぎに、監視センサー5の具体的な実験例について、従来の監視センサー200(以下比較例という)の場合と比較しつつ説明する。
まず、評価チューブ10周りの各位置における管肉部10aの温度に関する、テスト結果について説明する。
【0049】
図5(a)で示されるように、比較例となる監視センサー200の評価チューブ10の周りに、90度間隔で4つの挿入孔10b、すなわち、1の位置の挿入孔10b、2の位置の挿入孔10b、3の位置の挿入孔10b、及び4の位置の挿入孔10bを形成し、各挿入孔10bに、温度センサー12を取り付ける。また、図5(b)で示されるように、実施例となる監視センサー5の評価チューブ10周りに、90度間隔で3つの挿入孔10b、すなわち、1の位置の挿入孔10b、2の位置の挿入孔10b、及び4の位置の挿入孔10bを形成し、各挿入孔10bに、温度センサー12を取り付ける。この場合、1の位置の挿入孔10bが、加圧部材13によってヒーター11が評価チューブ10側に密着している側の挿入孔10bとなる。なお、監視センサー5では、3の位置の管肉部10aの厚さが薄いので、挿入孔10bは形成されていない。
【0050】
そして、実施例の監視センサー5と比較例の監視センサー200とを、それぞれ、内径20mmの塩化ビニール製の通水セル3に設置し、この通水セル3に、評価チューブ10の外面側の流速が0.5m/sとなるように、水道水(水温30℃)を通水した。つづいて、1の位置に設置した温度センサー12を用いて、評価チューブ10の温度が70℃となるように、ヒーター11への通電量を調整した後、これを固定し、その後、各位置における温度センサー12が示す温度を記録した。なお、監視センサー5及び監視センサー200とも、同様にして製作したものを、各3本ずつ用意して、それぞれについて同様に調査した。調査結果は、図7に示されている。
【0051】
図7の(a)で示されるように、監視センサー200を用いた比較例1では、2の位置や3の位置にある温度センサー12が70℃を超えた温度を示し、比較例2でも、4の位置にある温度センサー12が70℃を超えた温度を示している。また、比較例3でも、3の位置や4の位置にある温度センサー12が70℃を超えた温度を示している。したがって、監視センサー200の場合、ヒーター11をコントロールする1の位置における温度(伝熱管101aの温度)を超えて、評価チューブ10の温度が上昇するため、伝熱管101aには汚れは付着していないのに、評価チューブ10にスケールが付着して、監視センサー200が汚れを検出してしまうという不都合が生じる。
【0052】
一方、監視センサー5を用いた実施例1〜3では、図7の(b)で示されるように、2の位置や4の位置において、いずれの温度センサー12も70℃以上の温度を示していない。したがって、監視センサー5の場合、ヒーター11をコントロールする1の位置の温度(伝熱管101aの温度)が最高温度となり、この温度を超えて評価チューブ10の温度が上昇することはなく、スケールのような汚れは、伝熱管101aと同じように、評価チューブ10に付着することが分かる。
【0053】
つぎに、上記各3本ずつの監視センサー5,200を用いて、模擬水によるスケール付着試験を実施した場合の結果について説明する。なお、サンプル水W1となる模擬水には、図6で示されるように、pHが同一で、カルシウム硬度、酸消費量(pH4.8)、マグネシウム硬度、シリカ、及びアクリル酸系スケール防止剤を同一量だけ含んだ水に、オルソリン酸を、それぞれ、1、3、5、7mgPO4/Lだけ溶解している4種類のものを準備した。
【0054】
実施例の監視センサー5と比較例の監視センサー200とを、それぞれ、内径20mmの塩化ビニール製の通水セル3に設置し、この通水セル3に、評価チューブ10の外面側の流速が0.5m/sとなるように、4種類の模擬水を、各3日間ずつ循環させるようにして通水した。そして、評価チューブ10の温度が70℃となるように、ヒーター11への通電量を調整した後、これを固定し、その後、10分間隔で、温度センサー12からの温度を記録した。この場合、各模擬水の温度は、冷媒を用いて30℃で一定になるように調整しているので、評価チューブ10の温度上昇が、そのまま、評価チューブ10へのスケールの付着を示すこととなる。なお、実施例、比較例とも、それぞれ、3本ずつの監視センサー5,200について、スケール付着試験を実施している。
【0055】
図8(a)は、監視センサー200を用いた比較例の場合の、リン酸濃度に対する、評価チューブ10の「温度上昇の傾き」の大きさを示しており、図8(b)は、監視センサー5を用いた実施例の場合の、リン酸濃度に対する、評価チューブ10の「温度上昇の傾き」の大きさを示している。この場合、「温度上昇の傾き」とは、所定時間における評価チューブ10の温度上昇割合を示しており、この値が大きいほど、評価チューブ10へのスケールの付着割合、すなわち、検出可能面Lに対するスケールの付着部分の割合が大きいことを示している。
【0056】
図8(a)の比較例の場合では、リン酸濃度が1mgPO4/Lのときに、比較例3について、また、リン酸濃度が3mgPO4/Lのときに、比較例1と比較例3について、評価チューブ10へのスケールの付着が検出され、スケールの付着検出にばらつきが見られるが、図8(b)の実施例の場合では、何れの実施例でも、リン酸濃度が5mgPO4/Lのときから、評価チューブ10へのスケールの付着が検出されている。このことから、監視センサー200を使用する場合に比べて、監視センサー5を使用する場合の方が、安定的にスケールの検出ができ、精度の高いスケール検出ができることが分かる。
【0057】
また、アクリル酸系スケール防止剤が一定量入った状態で、評価チューブ10の温度が70℃で、リン酸濃度が1、3mgPO4/Lの条件では、一般的に、評価チューブ10へのスケールの付着は生じにくい。したがって、比較例の場合には、評価チューブ10の温度が、温度測定部分以外の場所で、70℃より大きくなっている所があるのではないかとも考えられる。このような監視センサー200を用いて、伝熱管101aに対する汚れの付着検出を行えば、伝熱管101aには汚れが付着していないにもかかわらず、監視センサー200により汚れを検出してしまうという不都合が生じ得る。
【符号の説明】
【0058】
1 汚れ監視装置
2d 温度計
3 通水セル
5 監視センサー
6 検出制御ユニット
10 評価チューブ
10a 管肉部
10c 中空部
10e 挿入部
11 ヒーター
13 温度センサー
14 加圧部材
101a 伝熱管
A 伝熱面
W 冷却水(加熱又は冷却される水)
W1 サンプル水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9