【実施例1】
【0084】
化合物YOCNBの製造
下記化合物YOCNBを下記スキームに従い製造した。
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
(i)1−ブロモ−4−(メトキシメトキシ)−2−メチルベンゼン(1)の製造
【0088】
【化18】
【0089】
フレームドライ、アルゴン置換した500mL三口フラスコに、4−ブロモ−3−メチルフェノール(3.01g、16.1mmol)、無水ジクロロメタン(180mL)、ジメトキシメタン(5.0mL、56.5mmol)、およびP
2O
5(7.31g、51.5mmol)を加えて、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。撹拌後、前記混合物へNa
2CO
3を加えてろ過後、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(1)を2.80g(12.1mmol、収率75%)得た。
【0090】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ2.36 (s, 3H, c), 3.45 (s, 3H, a), 5.13 (s, 2H, b), 6.75 (dd, 1H, J
ef = 8.4 Hz, J
de = 2.8 Hz, e), 6.93 (d, 1H, J
de = 2.8 Hz, d), 7.39 (d, J
ef =8.8 Hz, f)
【0091】
(ii)1−ブロモ−2−(ブロモメチル)−4−(メトキシメトキシ)ベンゼン(2)の製造
【0092】
【化19】
【0093】
フレームドライ、アルゴン置換した300mL三口フラスコに化合物(1)(2.80g、12.1mmol)、NBS(2.81g、15.8mmol)、AIBN(1.00g、6.10mmol)およびCCl
4(150mL)を加えて、得られた混合物を95℃で5時間還流した。還流終了後、前記混合物をろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(2)を2.31g(7.44mmol、収率61%)得た。
【0094】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ3.47 (s, 3H, f), 4.55 (s, 2H, a), 5.16 (s, 2H, e), 6.88 (dd, 1H, Jbc = 3.2 Hz, J
cd =2.8 Hz, b), 7.15 (d, 1H, J
bc =2.8Hz, b), 7.45 (d, 1H, J
cd = 8.8 Hz, d)
【0095】
(iii)14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル 4−メチルベンゼンスルホネート(3)の製造
【0096】
【化20】
【0097】
100 mLナスフラスコにペンタエチレングリコール(4.8251g、20.25mmol)、およびテトラヒドロフラン(20mL)を加えて、そこへ2NのNaOH水溶液を8mL(pH=12)滴下した後、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。その後、前記混合物へ、TsCl(872.10mg、4.574mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液を滴下漏斗で40分かけて滴下した。反応終了後、前記混合物へ水(100mL)およびジクロロメタン(100mL)を加えて、ジクロロメタン(100mL)で3回抽出した。得られた有機相を合わせて、水(100mL)で2回、ついで飽和NaCl水溶液(100mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて、ろ過をした後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(3)を1.510g(3.848mmol、収率84%)得た。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ2.45 (s, 3H, a), 3.59-3.82 (m, 18H, e, f, g, h, i, j, k, l, m), 4.16 (t, 2H, d), 7.34 (d, 2H, J
bc = 8.0 Hz, b), 7.80 (d, 2H, J
bc = 8.4 Hz, c)
MS (ESI+) [M+H]+計算値 393.16、測定値 393.02
【0099】
(iv)14−アジド−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール(4)の製造
【0100】
【化21】
【0101】
フレームドライ、アルゴン置換した100mL三口フラスコに化合物(3)(1.5102g、3.848mmol)、NaN
3(1.235g、19.02mmol)、および脱水DMF(25mL)を加えて60℃で4時間撹拌した。溶媒を留去した後、酢酸エチル(40mL)および水(40mL)を加えて、酢酸エチル(40mL)で20回抽出し、飽和NaCl水溶液(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えてろ過をした後、溶媒を留去した。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行い、化合物(4)を713.7mg(2.712mmol、収率70%)得た。
【0102】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ3.40 (t, 2H, J = 5.2 Hz, a), 3.60-3.77 (m, 18H, b, c, d, e, f, g, h, i)
MS (ESI+)[M+Na]+計算値286.14、測定値 286.07
【0103】
(v)tert−ブチル (14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル)カルバメート(5)の製造
【0104】
【化22】
【0105】
50mL二口フラスコに酢酸エチル(15mL)に溶かした化合物(4)(315.89mg、1.200mmol)、(Boc)
2O(418.78mg、1.919mmol)、トリエチルアミン(200μL、1.440mmol)、およびPd/C(38.29mg)を加えて、得られた混合物を室温で29時間撹拌した。前記混合物をろ過後、ろ液から溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(5)を375.0mg(1.112mmol、収率93%)得た。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ1.45 (s, 9H, a), 3.32 (m, 2H, b), 3.53 (t, 2H, J
jk = 5.2 Hz, k), 3.61-3.73 (m, 16H, c, d, e, f, g, h, i, j)
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 28.2, 40.2, 61.3, 70.0, 70.2, 70.3, 78.9, 156.0
HRMS (Fab+)[M+H]+計算値 338.2173、測定値 338.2178
【0107】
(vi)tert−ブチル−(1−(2−ブロモ−5−(メトキシメトキシ)フェニル)−2,5,8,11,14−ペンタオキサヘキサデカン−16−イル)カルバメート(6)の製造
【0108】
【化23】
【0109】
フレームドライ、アルゴン置換した50mLの三口フラスコにNaH(190.69mg、4.767mmol)、および脱水DMF(18mL)を加えて、得られた混合物を0℃で2時間撹拌した。その後、前記混合物へ化合物(5)(373.2mg、1.107mmol)および化合物(2)(344.43mg、1.111mmol)の無水DMF(5.5mL)溶液を加えて0℃で2時間撹拌した。前記混合物から溶媒を留去した後、得られた残渣へ水(50mL)およびジクロロメタン(50mL)を加えて、ジクロロメタン(50mL)で3回抽出した。得られた有機相を合わせて、水(50mL)で1回、次いで飽和NaCl水溶液(50mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて、ろ過をした後、溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクラフトグラフィーにより精製し、標題の化合物(6)を274.35mg(0.485mmol、収率44%)得た。
【0110】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 1.44 (s, 9H, r), 3.32 (t, 2H, p), 3.46 (s, 3H, a), 3.52-3.75 (m, 18H, g, h, i, j, k, l, m, n, o), 4.58 (s, 2H, f), 5.19 (s, 2H, b), 6.84 (dd, 1H, J
cd = 2.8 Hz, J
de = 8.4 Hz, d), 7.20 (d, 1H, J
cd = 2.8 Hz, c), 7.40 (d, 1H, J
de = 8.4Hz, e)
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ28.3, 40.2, 60.0, 70.1, 70.5, 70.6, 72.3, 94.3, 113.9, 116.6, 116.8, 133.0, 138.7, 156.0, 156.6
HRMS (Fab+)[M+H]+計算値 566.1959、測定値 566.1966
【0111】
(vii)(E)−メチル−3−(2−(20,20−ジメチル−18−オキソ−2,5,8,11,14,19−ヘキサオキサ−17−アザヘニコシル)−4−(メトキシメトキシ)フェニル)アクリレート(7)の製造
【0112】
【化24】
【0113】
マイクロウェーブ用シリンジに化合物(6)(104.12mg、0.184mmol)、アクリル酸メチル(29.37mg、0.341mmol)、酢酸パラジウム(7.31mg、0.033mmol)、フッ化カリウム(36.87mg、0.635mmol)、トリフェニルホスフィン(15.21mg、0.058mmol)、トリエチルアミン(140μL、5.43mmol)およびDMF(10mL)を加え、得られた混合物をマイクロウェーブ(150W、170℃)で3時間撹拌した。反応終了後、前記混合物をろ過し、ろ液から溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチル(25mL)および水(25mL)を加え、生じた溶液を酢酸エチル(25mL)で3回抽出した。得られた有機相を合わせて、水(50mL)で2回、次いで飽和NaCl水溶液(50mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えてろ過をした後、溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(7)を19.52mg(0.0342mmol、収率19%)得た。
【0114】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 1.44 (s, 9H, u), 3.31 (m, 2H, s), 3.47 (s, 3H, a), 3.51-3.70 (m, 18H, j, k, l, m, n, o, p, q, r), 3.80 (s, 3H, h), 4.66 (s, 2H, i), 5.20 (s, 2H, b), 6.29 (d, 1H, J
fg = 15.6 Hz, g), 6.98 (dd, 1H, J
cd = 2.8 Hz, J
de = 8.6 Hz, d), 7.10 (d, 1H, J
cd = 2.8 Hz, c), 7.55 (d, 1H, J
de = 8.4Hz, e), 7.92 (d, 1H, J
fg = 15.6 Hz, f)
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ28.4, 40.3, 51.6, 56.1, 69.9, 70.2, 70.5, 70.8, 79.1, 94.1, 115.6, 116.7, 117.5, 126.8, 128.2, 139.1, 141.2, 156.0, 158.6, 167.5
HRMS (Fab+) [M+H]+計算値 572.3065、測定値 572.3065
[M+Na]+計算値 594.2885、測定値 594.2885
【0115】
(viii)(E)−S−(4−(2−((4−ニトロベンジル)アミノ)−2−オキソエチル)フェニル)−3−(2−(20,20−ジメチル−18−オキソ−2,5,8,11,14,19−ヘキサオキサ−17−アザヘニコシル)−4−(メトキシメトキシ)フェニル)プロプ−2−エンチオエート(8)の製造
【0116】
【化25】
【0117】
化合物(7)(不純物を含む)(67.96mg)をDMF(1.0mL)に溶解させ、そこへ、2NのNaOH水溶液をpHが12になるまで加えた。得られた混合物を室温で9時間撹拌した。その後、前記混合物へ酢酸エチル(10mL)加え、飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で3回抽出した。抽出後の水層に2Nの塩酸をpHが2になるまで滴下し、この溶液を酢酸エチル(30mL)で3回抽出した。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えてろ過をした後、溶媒を留去し、無色のオイルを22.38mg得た。フレームドライ、アルゴン置換した20mL三口フラスコに前記オイル(22.38mg、0.040mmol)、HBTU(20.11mg、0.0553mmol)およびDMAP(6.22mg、0.051mmol)を加えて、得られた混合物を室温で80分撹拌した。その後、前記混合物へ2−(4−メルカプトフェニル)−N−(4−ニトロベンジル)アセトアミド(18.27mg、0.060mmol)を加えて室温で5時間撹拌した。前記混合物へ酢酸エチル(20mL)および10%クエン酸(20mL)を加えて、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。合わせた有機層を10%クエン酸(20mL)で3回、次いで飽和NaCl水溶液(20mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えてろ過をした後、溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(8)を18.95mg(0.023mmol、収率56%)得た。
【0118】
1H NMR (400 MHz, ACETN-d
6)δ 1.40 (s, 9H, y), 3.19-3.22 (m, 2H, x), 3.46-3.69 (m, 23H, a, j, o, p, q, r, s, t, u, v, w), 4.56 (d, 2H, J=6.0 Hz, k), 4.72 (s, 2H, n), 5.29 (s, 2H, b), 6.84 (d, J
fg=15.6 Hz, g), 7.06 (dd, 1H,J
cd=2.4 Hz, J
de=8.4 Hz, d), 7.18 (d, J
cd=2.8 Hz, c), 7.46 (d, 4H, h, i), 7.54 (d, J
lm=8.8 Hz, l), 7.84 (d, J
de=8.8 Hz, e), 8.02 (d, J
fg=15.6 Hz, f), 8.19 (d, J
lm=8.8 Hz, m)
13C NMR (100 MHz, ACETN- d6)δ 28.6, 41.0, 43.1, 43.3, 56.2, 70.6, 70.7, 70.8, 71.2, 71.3, 71.5, 78.5, 94.8, 116.5, 117.9, 124.1, 124.2, 127.1, 129.0, 129.5, 130.9, 135.5, 138.5, 139.1, 141.5, 147.9, 148.5, 156.6, 160.0, 170.9, 187.6
HRMS (Fab+) [M+Na]+計算値 864.3348、測定値 864.3370
【0119】
(ix)2−(メチルチオ)ベンゾ[d]オキサゾール(9)の製造
【0120】
【化27】
【0121】
100mL二口フラスコに2−メルカプトベンズオキサゾール(2.047g、13.54mmol)、ヨードメタン(4.21mL、67.63mmol)、炭酸カリウム(1.189g、8.603mmol)およびアセトン(30mL)を加えて、得られた混合物を70℃で4時間還流した。その後、前記混合物をろ過し、ろ液から溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(9)を1.707g(10.34mmol、収率78%)得た。
【0122】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6)δ2.77 (s, 3H, e), 7.31-7.34 (m, 2H, a, d), 7.63-7.66 (m, 2H, b, c)
HRMS (EI+)m/z :[M]+計算値 165.025、測定値 165.025
【0123】
(x)3−メチル−2−(メチルチオ)ベンゾ[d]オキサゾール−3−イウム(10)の製造
【0124】
【化28】
【0125】
フレームドライ、アルゴン置換した50mL三口フラスコに化合物(9)(507.98mg、3.08mmol)、トリメチルオキソニウムテトラフルオロホウ酸塩(545.32mg、3.69mmol)、および無水ジクロロメタン(30mL)を加えて、得られた混合物を室温で24時間撹拌し、トリメチルオキソニウムテトラフルオロホウ酸塩(133.95mg、0.91mmol)をさらに前記混合物へ加え、さらに8時間撹拌した。前記混合物へエーテル(50mL)を加えると白い沈殿が生じ、前記混合物をろ取して前記沈殿物を集めた。前記沈殿物をエーテル(50mL)で3回洗浄を行い、標題の化合物(10)を469.62mg(1.759mmol、収率57%)得た。
【0126】
1H NMR (400 MHz, D
2O)δ 2.87 (s, 3H, f), 3.77 (s, 3H, e), 7.50-7.53 (m, 2H, a, b), 7.61 (m, 1H, c), 7.68 (m, 1H, d)
MS (ESI+)[M]+計算値 180.05、測定値 180.37
【0127】
(xi)(Z)−1−(4−カロボキシブチル)−4−((3−メチルベンゾ[d]オキサゾール−2(3H)−イリデン)メチル)キノリン−1−イウム(11)の製造
【0128】
【化29】
【0129】
フレームドライ、アルゴン置換した50mL三口フラスコに化合物10(50.75mg、0.190mmol)、1−(5−カルボキシペンチル)−4−メチルキノリン−1−イウム(53.02mg、0.164mmol)、無水ジクロロメタン(10mL)および、無水トリエチルアミン(60μL、0.78mmol)を加えると、得られた溶液がオレンジ色になった。この状態で得られた混合物を室温で3.5時間撹拌した。前記混合物へメタノールを加え、生じた固体を溶解させ、その後、混合物から溶媒を留去した。得られた残渣にアセトニトリル(10mL)を加えて溶かし、そこへエーテル(30mL)を加えて、得られた混合物を常温で一晩放置した。その後、混合物をろ過をして標題の化合物(11)を32.51mg(0.084mmol,収率44%)得た。
【0130】
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 1.47 (m, 2H, o), 1.68 (m, 2H, p), 1.97(m, 2H, n), 2.31(t, 2H, J
pq=7.2 Hz, q), 3.84(s, 3H, e), 4.58(t, 2H, J
mn=7.4 Hz, m), 6.20(s, 1H, f), 7.40(m, 1H, a), 7.49(m, 2H, b, c), 7.64-7.74(m, 2H, d, l), 7.98(m, 1H, h), 8.06(m, 2H, g, i), 8.32(d, 1H, J
ij=7.2 Hz, j), 8.64(d, 1H, J
lk=8.0 Hz, k)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6)δ24.0, 25.4, 28.5, 30.4, 33.7, 38.9, 53.7, 73.8, 109.0, 110.6, 110.8, 117.9, 123.4, 124.2, 125.9, 126.1, 126.4, 131.3, 133.3, 137.1, 143.6, 146.0, 149.9, 161.4, 174.4
HRMS(Fab+) [M]+計算値389.1870、測定値 389.1870
【0131】
(xii)化合物YOCNBの製造
【0132】
【化30】
【0133】
20mLナスフラスコに化合物(8)(58.51mg、0.069mmol)、ジクロロメタン(5mL)およびトリエチルアミン(1mL)を加えて、得られた混合物を室温で1時間撹拌して溶媒を留去して、化合物(8)の脱保護体を得た。続いて、フレームドライ、アルゴン置換した50mL三口フラスコにPyBOP(103.18mg、0.198mmol)、HOBt(30.95mg、0.229mmol)ならびに無水DMF(6mL)に溶かした粗化合物(11)(53.58mg、0.138mmol)および無水トリエチルアミン(42.1μL、0.302mmol)を加えて、得られた混合物を室温で5時間撹拌した。その後、前記混合物へ、化合物(8)の脱保護体の無水DMF(4mL)溶液を加え、前記混合物をさらに室温で4時間撹拌した。前記混合物から溶媒を除去した後、得られた残渣をHPLC(水/0.1%トリエチルアミン含有アセトニトリル)により精製し、化合物YOCNBを9.58mg(0.00811mmol、収率11%)得た。
【0134】
1H NMR (400 MHz, ACETN)δ 1.45 (m, 2H, o), 1.67 (m, 2H, n), 1.99 (m, 2H, p), 2.19 (m, 2H, q), 3.17 (m, 2H, s), 3.44-3.68 (m, 20H, s, t, u, v, w, x, y, z, 1, 10), 3.95 (s, 3H, e), 4.54 (d, 2H, J=6.4 Hz, 11), 4.59 (s, 2H, 2), 4.65 (t, 2H, m), 6.34 (s, 1H, f), 6.67 (d, 1H, J
67=15.6 Hz, 7), 6.83 (dd, 1H, J
34=2.4 Hz, J
45=8.8 Hz, 4), 6.95 (d, 1H, J
34=2.4 Hz, 3), 7.40-7.46 (m, 5H, d, 8, 9), 7.52 (d, 2H, J
1213=9.2 Hz, 12), 7.60 (d, 1H, c), 7.64 (d, 1H, J
45=8.8 Hz, 5), 7.73 (d, 2H, a, b), 7.91 (d, 1H, J
67=15.6 Hz, 6), 8.00 (m, 1H, i), 8.11-8.20 (m, 4H, h, j, 13), 8.46 (d, J=6.8 Hz, g), 8.71 (d, 1H, J=9.2 Hz, l)
13C NMR (100 MHz, DMF-d
7)δ25.8 26.4, 26.5, 39.6, 42.9, 43.0, 54.9, 70.2, 70.3, 70.6, 70.8, 70.9, 71.0, 71.4, 74.6, 111.3, 111.5, 116.1, 117.3, 118.8, 122.4 124.1 124.6, 125.0, 126.7, 126.8, 127.2, 129.0, 129.8, 130.8, 132.4, 132.6, 134.1, 135.2, 136.6, 138.3, 138.7, 139.4, 141.6, 144.5, 147.5, 148.7, 151.3, 158.7, 159.6, 161.3, 168.5, 169.9, 175.8, 187.7
HRMS (MALDI+)[M]+計算値 1068.4423、測定値 1068.4462
【0135】
[His−PYPWT−MBD1/His−PYP3R−MBD1の遺伝子を持つ大腸菌の製造]
His−PYPWT−MBD1に関しては、まず、MBD1のDNA断片は、pGEX2T−MBD1をテンプレートとして、プライマー(配列番号32)およびプライマー(配列番号33)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片と、pcDNA3.1(+)−HA−PYP−NLSのそれぞれをHindIIIとBamHIで制限酵素処理し、ライゲーションすることでpcDNA3.1(+)−HA−PYP−MBD1−NLSを得た。シークエンス解析により、目的プラスミドの配列であることを確認した。
【0136】
PYPWT−MBD1のDNA断片はpcDNA3.1(+)−HA−PYP−MBD1−NLSをテンプレートとして、プライマー(配列番号34)およびプライマー(配列番号35)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片と、pQE−32空ベクターのそれぞれをSphIとKpnIで制限酵素処理し、ライゲーションすることでpQE32−His−PYP−MBD1を得た。シークエンス解析により、目的プラスミドの配列であることを確認した。His−PYPWT−MBD1のDNA断片はpQE32−His−PYP−MBD1をテンプレートとして、プライマー(配列番号36)およびプライマー(配列番号37)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片と、pET21b(+)空ベクターのそれぞれをNheIとXhoIで制限酵素処理し、ライゲーションすることでpET21b(+)−His−PYPWT−MBD1を得た。シークエンス解析により、目的プラスミドの配列(配列番号30)であることを確認した。
【0137】
His−PYP3R−MBD1に関しては、まず、pMALp5x−PYP3R−MBD1のDNA断片は、pMALp5x−PYPWT−MBD1をテンプレートとして、プライマー(配列番号38)およびプライマー(配列番号39)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片と、pcDNA3.1(+)−MBP−PYP3RのそれぞれをNdeIとKpnIで制限酵素処理し、ライゲーションすることでpMALp5x−PYP3R−MBD1を得た。シークエンス解析により、目的プラスミドの配列であることを確認した。
【0138】
His−PYP3R−MBD1のDNA断片は、pMALp5x−PYP3R−MBD1をテンプレートとして、プライマー(配列番号40)およびプライマー(配列番号41)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片と、pET21b(+)−His−PYPWT−MBD1のそれぞれをNheIとXhoIで制限酵素処理し、ライゲーションすることでpET21b(+)−His−PYP3R−MBD1を得た。シークエンス解析により、目的プラスミドの配列(配列番号31)であることを確認した。
【0139】
[His−PYPWT−MBD1の発現と精製]
100mg/mLのアンピシリンを20μL加えたLB培地(20mL)で、His−PYPWT−MBD1の遺伝子をもつ大腸菌(配列番号30)を37℃で16時間培養した。続いて、37℃に温めたLB培地(1L)に100mg/mLのアンピシリンを1mL加え、培養していたLB培地(20mL)を加えて37℃で3.5時間培養を行った。ここに1MのIPTGを300μL加えて20℃で16時間培養した。この培養液を5000rpm、20℃で12分間遠心分離を行い、上清を取り除き、Bind buffer(50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、1mM DTT、Protease Inhibitor cocktail 1粒、pH8.0)を20mL加え懸濁し、氷上で超音波により大腸菌を破砕した。その後、15000rpm、4℃で20分間遠心分離を行い、上清をろ過し、ろ液をNiカラムに添加した。1時間撹拌後、25mLのWash buffer(50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、5mM イミダゾール、1mM DTT、pH8.0)をカラムに2回添加することで洗浄操作を行い、25mLのElution buffer (50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、250mM イミダゾール、1mM DTT、pH8.0)をカラムに添加しHis−PYPWT−MBD1を溶出させ、精製を行った。
【0140】
得られたHis−PYPWT−MBD1をゲルろ過カラムクロマトグラフィーによって精製した。ゲルろ過用緩衝液としてHEPES buffer(20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4)を使用した。
【0141】
[His−PYP3R−MBD1の発現と精製]
前記「His−PYPWT−MBD1の発現と精製」において、His−PYPWT−MBD1の遺伝子をもつ大腸菌の代わりにHis−PYP3R−MBD1の遺伝子をもつ大腸菌(配列番号31)を用いた以外は、同様にして、His−PYP3R−MBD1を得た。なお、PYP3Rは、Cys39の近傍に位置し、負電荷を持つアミノ酸残基D71、D97およびE74を正電荷を持つアミノ酸残基アルギニン(R)に変更したPYP変異体である。
【0142】
<ゲルシフトアッセイ>
化合物YOCNB(終濃度5μM)、His−PYP3R−MBD1(終濃度5μM)を含む50μLのHEPES緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、5%DMSO、pH7.4)を調製し、25℃で2時間インキュベーションし、ラベル化反応させてYOCNB−PYP3R−MBD1(終濃度5μM)を得た。YOCNB−PYP3R−MBD1(終濃度0、25、50、100、200、400、800nM)、二本鎖のDNA(DNA配列(配列番号42)とその相補鎖(配列番号43)、mC:メチル化シトシン)(終濃度50nM)、IGEPAL(終濃度0.05%)、グリセロール(終濃度5%)を含むHEPES緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、5%DMSO、pH7.4)を20μL調製し、25℃で30分間インキュベーションした。
【0143】
12%アクリルアミドゲルを用意し、180V、30分間プレランを行った後、サンプルを10μL添加し、TB buffer中、室温において180V、90分間電気泳動を行った。その後、SYBR green Iで30分間染色を行い、蛍光バンドを検出した。得られた結果を
図1に示す。
【0144】
His−PYP3R−MBD1の代わりにHis−PYPWT−MBD1を用いて得られたYOCNB−PYPWT−MBD1を用いた結果を
図2に示す。
【0145】
図1に示すように、化合物YOCNBでラベル化して得られたYOCNB−PYP3R−MBD1は、非メチル化DNAとは結合しないが、メチル化されたDNAとは結合することが確認された。
【0146】
一方、
図2に示すように、化合物YOCNBでラベル化して得られたYOCNB−PYPWT−MBD1は、非メチル化DNAとは結合しないが、メチル化されたDNAとは結合することが確認された。
【0147】
[化合物YOCNBの蛍光強度]
二本鎖のDNA(DNA配列(配列番号42)とその相補鎖(配列番号43)、mC:メチル化シトシン)(終濃度50nM)の存在下もしくは非存在下で、化合物YOCNB(終濃度200nM)を含む200μLのHEPES緩衝液(20mM HEPES,150mM NaCl,5%DMSO,pH 7.4)を25 ℃で30分インキュベーションし、蛍光スペクトルを測定した。
【0148】
得られた結果を
図3に示す。
図3に示すように、化合物YOCNBとメチル化DNAとを混合しても、化合物YOCNBのみの場合と、蛍光強度は、ほぼ同一である。従って、式(I)で表される化合物を用いるのではなく、プローブを用いる本発明の方法により、メチル化DNAを蛍光標識することが可能であることが、確認された。
【0149】
[YOCNB−PYPWT−MBD1またはYOCNB−PYP3R−MBD1を含むプローブによる蛍光強度変化]
化合物YOCNB(終濃度 5 μM), His−PYPWT−MBD1あるいはHis−PYP3R−MBD1(終濃度 5 μM)を含む30 μLのHEPES緩衝液(20 mM HEPES, 150 mM NaCl,5% DMSO,pH 7.4)を調製し、25℃でHis−PYPWT−MBD1の場合は10 時間, His−PYP3R−MBD1の場合は3時間インキュベーションし、YOCNB−PYPWT−MBD1あるいはYOCNB−PYP3R−MBD1をそれぞれ調製した。
【0150】
その後、二本鎖のDNA(DNA配列(配列番号42)とその相補鎖(配列番号43)、mC:メチル化シトシンあるいはシトシン) (終濃度 50nM)の存在下もしくは非存在下で、YOCNB−PYPWT−MBD1あるいはYOCNB−PYP3R−MBD1(終濃度 200 nM), 200 μLのHEPES緩衝液(20 mM HEPES, 150 mM NaCl, 5% DMSO, pH 7.4)を調製し、25℃で30分インキュベーションし、蛍光スペクトルを測定した。
【0151】
得られた結果を
図4に示す。
図4に示すように、野生型PYP由来のYOCNB−PYPWT−MBD1より、変異型PYP由来のYOCNB−PYP3R−MBD1により、メチル化DNAをより強い蛍光で標識することが可能であることが確認された。
【0152】
この点は、野生型PYPのPI値が4.79であるのに対し、変異型PYP(例えばPYP3R)のPI値が6.72であるため、負電荷に帯電しているDNAへの結合能が、野生型PYPより変異型PYPのほうが高いため、と考えられる。
【0153】
[pcDNA3.1(+)−HA−PYPWT−MBD1(1−112)の作成]
MBD1のDNA断片はpET21b(+)−His−PYP−MBD1をテンプレートとして、プライマ―(配列番号44)およびプライマー(配列番号45)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片とpcDNA3.1−HA−PYPをそれぞれEcoRIとXhoIで制限酵素処理してライゲーションすることによりプラスミドを得た。得られたプラスミドは、シークエンス解析により、目的プラスミドのpcDNA3.1(+)v2−HA−PYPWT−MBD1(1−112)をであることを確認した。
【0154】
[pcDNA3.1(+)−HA−PYP3R−MBD1(1−112)の作成]
PYP3RのDNA断片は、pET21b(+)−His−PYP3Rをテンプレートとして、プライマー(配列番号46)およびプライマー(配列番号47)を用いてPCRにより得た。この増幅したDNA断片とpcDNA3.1(+)v2−HA−PYPWT−MBD1(1−112)をそれぞれHindhIIIとEcoRIで制限酵素処理してライゲーションすることによりプラスミドを得た。得られたプラスミドは、シークエンス解析により、目的遺伝子(配列番号48)を含むプラスミドのpcDNA3.1(+)v2−HA−PYP3R−MBD1(1−112)であることを確認した。
【0155】
[細胞の調整と遺伝子導入]
NIH3T3細胞(独立行政法人理化学研究所より購入)を10%ウシ胎児血清を含むイーグル最小必須培地(MEM)培地2mL中24時間培養し、培地を除いた後に、2mLのリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、MEM培地を2mL加えた。この細胞に、Lipofectamine3000(ライフテクノロージー社製)を用いて、pcDNA3.1(+)(HA−PYP3R−MBD1(1−112)の遺伝子断片を含まない空ベクター)及びpcDNA3.1(+)v2−HA−PYP3R−MBD1(1−112)の遺伝子を導入し、37℃で24時間インキュベーションを行った。その後、培地を除いた後、得られた細胞をハンクス平衡塩溶液(Hank’s Balanced Salt Solution、HBSS)1 mLで3回洗浄し、2μMのYOCNBおよび500nMのMitoTrackerを含むMEM培地1mLを加え、37℃で60分間インキュベーションした。更に、その細胞の培地に300μL(1mg/1mL)のHoechst33342を加えて、37℃で15分間インキュベーションを行い、HBSS(1mL)で3回洗浄し、10%ウシ胎児血清を含むMEM培地(1mL)を加えた。
【0156】
[蛍光イメージング実験]
上記の細胞の蛍光イメージングを共焦点レーザー走査型顕微鏡FV10i(オリンパス株式会社製)を用いて行った。YOCNB由来の蛍光像を取得する際には、473nmのレーザーを励起光として用い、490nm〜590nmの光を透過する蛍光フィルターを用い、60倍バイオ対物レンズを用いた。Hoechst33342の蛍光像を取得する際には、405nmのレーザーを励起光として用い、420nm〜460nmの光を透過する蛍光フィルターを用い、60倍バイオ対物レンズを用いて観測を行った。
【0157】
得られた結果を
図5に示す。
図5は、YOCNBを添加した細胞の蛍光像を示す。上段画像は、pcDNA3.1(+)(空ベクター)を導入した細胞の画像であり、下段画像は、pcDNA3.1(+)v2−HA−PYP3R−MBD1(1−112)を導入した細胞の画像である。図の左側の画像は蛍光像を示し、右側の画像は位相差像を示す。白枠の囲みは、核内から蛍光輝点が観測された領域を示している。
【0158】
空ベクターであるpcDNA3.1(+)を導入した細胞の核内から複数の蛍光の輝点は観測されなかったのに対し(
図5中左上参照)、pcDNA3.1(+)v2−HA−PYP3R−MBD1(1−112)を導入した細胞の核内から複数の蛍光の輝点が観測された(
図5中左下参照)。この結果から、YOCNB単独では、核内のDNAに結合し蛍光を発しないことが理解できる。一方、pcDNA3.1(+)−HA−PYP3R−MBD1(1−112)を導入した細胞では、YOCNBは細胞核内に発現している蛋白質HA−PYP3R−MBD1(1−112)を標識し、その蛋白質がメチル化DNAに結合し、その近傍のDNAにYOCNBの蛍光色素部位が結合し蛍光を発していると考えられる。
【0159】
図6は、pcDNA3.1(+)v2−HA−PYP3R−MBD1(1−112)を導入した細胞の蛍光像であり、YOCNB由来の蛍光像とHoechst33342の蛍光像を示している。左から、(a)YOCNBの蛍光像、(b)Hoechst33342の蛍光像、(c)YOCNBとHoechst33342の蛍光の重ね合わせ画像、および(d)位相差像を示す。
【0160】
図6(b)に示すように、Hoechst33342の蛍光は、核内から複数の輝点として観測された。その蛍光の分布は、YOCNB由来の蛍光(
図6(a)参照)と一致した。Hoechst33342はメチル化DNAの豊富なヘテロクロマチンと呼ばれる遺伝子領域を蛍光染色することが知られていることから、YOCNB由来の蛍光がメチル化DNA領域から観測されていると考えられる。