(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0018】
図1は、本発明における偽造防止媒体(以下、「媒体」という。)(S1)の一実施例を示す平面図である。
【0019】
媒体(S1)は、例えば、紙幣、証券、パスポート、身分証明書等の貴重印刷物であり、
紙、プラスチックカード等の印刷可能な基材(1)上における少なくとも一部のインキ受理領域(Z)内に、基材(1)と異なる色の印刷模様(2)を有している。印刷模様(2)は、拡散反射光下では、一つの画像として視認されるが、正反射光下で視認可能となる、秘匿情報を有している。なお、本発明では、正反射時における反射光を「正反射光」という。
【0020】
図2は、印刷模様(2)を説明する平面図である。印刷模様(2)は、文字、数字、模様等の有意味情報を表しており、
図2では、四角形状を表している。印刷模様(2)は、インキ受理領域(Z)内に、カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)が積層して成る。
【0021】
インキ受理領域(Z)とは、印刷模様(2)を形成するインキを拡散させる領域であり、例えば、多孔質の体質顔料を主体とした塗布液を塗工することで形成される。
図3は、
図2のX1−X1’におけるインキ受理領域(Z)の断面を説明する模式図である、
図3(a)に示すように、インキ受理領域(Z)を有しない基材(1)上に、印刷模様(2)を印刷した場合、印刷模様(2)を形成するインキは、基材(1)上に付着したのち、硬化する。
【0022】
一方、
図3(b)に示すように、インキ受理領域(Z)を有する基材(1)上に、印刷模様(2)を印刷した場合、印刷模様(2)を形成するインキは、基材(1)上に付着し、インキ受理領域(Z)の内部に分散したのち、硬化する。
【0023】
原理についての詳細は後述するが、本発明では、積層構造とすることで、積層箇所とその他の箇所で、インキ受理領域(Z)内における印刷回数が異なる。印刷回数とは、インキ受理領域(Z)にインキを付着させて、硬化させる回数のことであり、以下、「印刷回数」という。それにより、拡散反射光下では一つの画像として視認される印刷模様(2)が、正反射光下では、インキ受理領域(Z)内において、他の箇所と印刷回数が異なる潜像画像(6)が視認可能となる。よって、印刷模様(2)は、インキ受理領域(Z)内に形成する必要がある。
【0024】
インキ受理領域(Z)を生成する多孔質の体質顔料としては、例えば、アルミナ白、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム等の白色顔料が挙げられ、これら体質顔料10〜25重量%を、例えばオフセット用メジウム(ロジン変性フェノール樹脂、大豆油、亜麻仁油、鉱物油等ビヒクルにドライヤーや酸化抑制剤等の添加剤から成る)に分散させたオフセットインキで印刷し、厚さ1〜5μm程度のインキ受理領域(Z)とすることができる。
【0025】
上記オフセット用メジウムに代え、グラビア用メジウム、あるいはスクリーン印刷用、ロールコート用等とし、それぞれの方式で印刷又は塗工することも、可能である。
【0026】
次に、カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)のそれぞれの構成について説明する。
図4は、カモフラージュ画像(3)及び潜像画像(6)の構成を示す平面図である。
図4(a1)に示すカモフラージュ画像(3)は、模様部(4)と、模様部(4)の周囲に配置された背景部(5)から成る。
【0027】
カモフラージュ画像(3)は、模様部(4)と背景部(5)の濃度又は色が異なることで、文字、数字、模様等の有意味情報を表しており、
図4(a1)では、模様部(4)により文字「P」を表している。
【0028】
図4(a2)の拡大図に示すように、カモフラージュ画像(3)は、基材(1)とは異なる色のインキで形成されたカモフラージュ要素(3a)が万線状に配置されてなるか、又は、
図4(a3)の拡大図に示すように、カモフラージュ要素(3a)がマトリックス状に配置されてなる。
【0029】
模様部(4)は、基材(1)と異なる色の少なくとも第1のインキで形成される。カモフラージュ要素(3a)及び後述する潜像要素(6a)を配置するピッチは、印刷模様(2)の大きさ、印刷方式、要素の幅(W3)を考慮し、3000μm以下の範囲内で適宜設定される。
【0030】
ピッチが3000μmを超える場合には、ピッチが小さい場合と比べ、基材(1)が多く露出する。よって、用いる基材(1)によっては、基材(1)の正反射光における拡散性が影響することで、潜像画像(6)の視認性が低下し、好ましくない。
【0031】
なお、
図4では、カモフラージュ要素(3a)は一定ピッチで配置されているが、前述した範囲内であれば、一部異なるピッチとすることも可能である。
【0032】
カモフラージュ要素(3a)を配置するピッチを100μm未満とした場合は、
図5に示すように、複数配置されたカモフラージュ要素(3a)は、隙間なく配置されることから、肉眼では、カモフラージュ画像(3)を形成する模様部(4)及び背景部(5)は、いずれもベタ領域として視認される。
【0033】
カモフラージュ要素(3a)の画線幅(W3)と、後述する潜像要素(6a)の画線幅(W4)は、それぞれ20〜2000μmの範囲内で適宜設定することが可能である。
【0034】
各要素(3a、4a)の画線幅(W3、W4)が、20μm未満の場合は、用いるインキの濃度によっては印刷模様(2)の視認性が悪くなる。また、模様部(4)及び潜像画像(6)を積層して配置しづらくなり、好ましくない。
【0035】
各要素(3a、4a)の画線幅(W3、W4)が、2000μmを超える場合は、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)と、背景部(5)の拡散性の差が肉眼で視認可能となり好ましくない。
【0036】
背景部(5)は、模様部(4)の周囲に配置された領域であり、基材(1)と異なる色の少なくとも第2のインキで形成される。背景部(5)は、拡散反射光下では、潜像画像(6)と同一形状、かつ、同じ大きさの模様部(4)の形状を隠ぺいするために、模様部(4)の周囲に配置する必要がある。
【0037】
模様部(4)と背景部(5)を形成するインキの色は、等色でも異なっていても良いが、潜像画像(6)を、拡散反射光下で隠ぺいするために、模様部(4)と潜像画像(6)が積層されたところと、背景部(5)を等色とする必要がある。
【0038】
例えば、模様部(4)を形成する青色とし、潜像画像(6)を黄色とした場合、背景部(5)は、模様部(4)と潜像画像(6)である青色と黄色が積層したところと等色の緑色とする。カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)を積層した場合、二度刷りで形成された模様部(4)及び潜像画像(6)は、緑色で視認される。また、一度刷りで形成された背景部(5)も緑色で視認される。なお、一度刷りとは、印刷回数が一回のことをいい、二度刷りとは、印刷回数が二回のことをいう。よって、印刷模様(2)は全体が一様な緑色として視認可能となり、潜像画像(6)が隠ぺいされる。各インキは、複数種類のインキから成る構成でも良い。
【0039】
また、印刷模様(2)を1種類のインキで形成する場合には、模様部(4)と潜像画像(6)を積層した色と、背景部(5)の色を等色とするために、模様部(4)と潜像画像(6)を積層した濃度と、背景部(5)の濃度を同じ濃度とする。
【0040】
例えば、模様部(4)を形成する第1のインキ、背景部(5)を形成する第2のインキ及び潜像画像(6)を形成する第3のインキを、同じ色の1種類のインキで形成する場合、模様部(4)を濃度50で形成し、潜像画像(6)を濃度50で形成し、背景部(5)を濃度100で形成する。それにより、カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)を積層した場合、全体が濃度100の一様な青色として視認可能となる。
【0041】
さらに、模様部(4)と背景部(5)を形成するインキは、蛍光材料を含んでいても良い。蛍光材料とは、紫外線又は赤外線を照射した際に可視発光をする蛍光顔料又は蛍光染料のことである。蛍光材料をインキに含むことで、前述した正反射光下で潜像画像(6)が視認可能となる効果に加え、蛍光材料の励起光下においては、模様部(4)又は背景部(5)が蛍光発光して視認可能となる。
【0042】
模様部(4)と背景部(5)を形成するインキは、インキ受理領域(Z)に定着することが可能なインキであれば良く、例えばレーザ・プリンタで使用されるトナー、インクジェット・プリンタで使用されるプロセスインキとする。
【0043】
模様部(4)と背景部(5)の配置については、
図3で示した配置に限らず、拡散反射光下で、潜像画像(6)と同一形状の模様部(4)の形状が隠ぺい可能な配置であれば、適宜設定することが可能である。
【0044】
図6は、模様部(4)と背景部(5)の配置の一例を示す平面図である。
図6(a)に示すように、模様部(4)の一部と隣接するように、背景部(5)を配置してもよい。また、
図6(b)に示すように、模様部(4)は一つに限らず、複数配置しても良い。さらには、
図6(c)に示すように、背景部(5)の周囲に模様部(4)を配置する、
図4とは逆の配置としても良い。
【0045】
図4(b1)に示す潜像画像(6)は、正反射光下で視認可能となる画像であり、模様部(4)と同一形状、かつ、同じ大きさである。視認についての詳細は後述するが、模様部(4)の上又は下に、同一形状の潜像画像(6)を一致するように積層して配置し、その周囲に背景部(5)を毛抜き合わせで配置することで、拡散反射光下では、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)と、その周囲の背景部(5)が等色に視認されることで、潜像画像(6)を隠ぺいすることが可能となる。
【0046】
一方、正反射光下では、積層して配置した模様部(4)及び潜像画像(6)と、その周囲の背景部(5)で、基材(1)への印刷回数が異なることで、同一入射光に対する反射光の差により潜像画像(6)が視認可能となる。
【0047】
図4(b2)の拡大図に示すように、潜像画像(6)は、基材(1)と異なる色の少なくとも第3のインキで形成された潜像要素(6a)が万線状に配置されてなるか、又は、
図4(b3)の拡大図に示すように、潜像要素(6a)がマトリックス状に配置されてなる。カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)を形成するインキは、同じ色でも異なる色でも良い。以下、カモフラージュ画像(3)と潜像画像(6)が同じ色のインキとして説明する。
【0048】
本発明において、カモフラージュ要素(3a)及び潜像要素(6a)は、それぞれが画線、点、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組合せである。
図7は、カモフラージュ要素(3a)及び潜像要素(6a)の形状を示す図であり、一例としてカモフラージュ要素(3a)を示す平面図である。
【0049】
画線とは、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)に示すような、直線、破線、波線又は破線状の波線のことである。点とは、網目スクリーン、コンタクトスクリーン等により、印刷物上に構成された点である。点及び後述する画素は、直線状又は波線状に複数配置されて、点群又は画素群を形成する。
【0050】
点群又は画線群と成ることで画線状に構成されたカモフラージュ要素(3a)が、万線状に配置されることで、
図4(a1)に示すカモフラージュ画像(3)となる。点形状は、円形ドットに限定されるものではなく、ランダムドットや本出願人が先に出願した特開平11−268228号公報で提案している特殊網点生成法を用いて意匠性を加味した入力画像を網点(ハーフトーンスクリーン)から成る、連続階調網点に変換した自由度のある特殊網点形状を用いても良い。
【0051】
画素とは、図形、文字等の二次元画像を縦横の線で分割した、その最小単位のことである。画素形状は、
図7(e)、
図7(f)、
図7(g)、
図7(h)、
図7(i)及び
図7(j)に示すような、円形状、楕円形状、多角形状、文字形状のことである。
図7(h)に示した文字形状は、一般的に微小文字又は特殊網点と呼ばれるが、本発明では画素とする。さらに、
図7(i)及び
図7(j)に示すように、要素は、画線、点及び画素をそれぞれ組み合わせても良い。
【0052】
なお、積層して配置される、模様部(4)と潜像画像(6)を構成する要素は、同じ形状の要素で形成することが好ましい。模様部(4)と潜像画像(6)を、異なる形状の要素で形成した場合、拡散反射光下において、潜像画像(6)が視認可能となってしまう恐れがあり好ましくない。以下、本実施形態についてはカモフラージュ要素(3a)及び潜像要素(6a)を、
図7(a)に示す直線状の画線として説明する。
【0053】
次に、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)と、その周囲の背景部(5)が、印刷回数が異なることで、拡散性に差が生じる原理について説明する。
【0054】
図8は、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)と、背景部(5)の拡散性の差を示す模式図であり、
図8(a)は、
図2のX1−X1’断面における拡大図である。なお、本実施形態における拡散性とは、拡散反射光を入射した際の反射光のことである。よって、拡散性に差が生じるとは、同じ角度から、同じ光量の拡散反射光を入射した際に、反射光量が異なることをいう。以下、同じ角度から同じ光量の拡散反射光を入射することを、同一入射光という。
【0055】
図8(a)に示すように、印刷模様(2)は、基材(1)上に形成したインキ受理領域(Z)内に、模様部(4)及び背景部(5)を印刷したのち、模様部(4)の上に、潜像画像(6)を印刷することで形成される。つまり、印刷模様(2)内において、一度刷りで形成された領域と、二度刷りにより形成された領域が混在する。
図8(a)に示すように、一度刷りで形成された背景部(5)は、インキ受理領域(Z)内において、インキが散乱することなく付与されている。
【0056】
なお、本発明における散乱するとは、インキ受理領域(Z)の厚み(h1)に対して、縦方向にインキが分布しているか否かのことをいう。背景部(5)は、厚み(h1)に対して、縦方向の同じ位置にインキが分布していることから、散乱していないとする。
【0057】
一方、二度刷りにより形成された、模様部(4)及び潜像画像(6)が積層して配置された領域は、インキ受理領域(Z)内でのインキの分布が散乱する。具体的には、インキ受理領域(Z)の厚み(h1)に対して、縦方向の異なる位置にインキが分布していることから、散乱しているとする。
【0058】
図8(b1)に示すように、一度刷りで形成された背景部(5)に対し、蛍光灯等の光源(R1)を45度(α1)で照射した場合、正反射時となる45度付近(α2)で、強い反射光(R2)を返す。これは、インキ受理領域(Z)内で、インキが散乱していないことから、入射光に対して光が拡散することなく、反射されるためである。
【0059】
一方、
図8(b2)に示すように、二度刷りで形成された、模様部(4)及び潜像画像(6)が積層して配置された領域に対し、
図8(b1)と同様に光源(R1)を45度(α1)で照射した場合、正反射時に弱い光(R2)を返す。これは、インキ受理領域(Z)内で、インキの分布が散乱されることに起因して、正反射時に光が拡散されるためである。つまり、二度刷りで形成された、模様部(4)及び潜像画像(6)が積層して配置された領域が、一度刷りで形成された背景部(5)より、正反射光下では拡散性が高いことから、同一入射光に対する反射光量に差が生じる。
【0060】
よって、本発明の印刷模様(2)は、正反射光下において、一度刷りで形成された背景部(5)と、二度刷りで形成された、模様部(4)及び潜像画像(6)が積層して配置された領域の拡散性が異なることで、同一入射光に対する反射光量の差が生じ、一度刷りで形成された背景部(5)が、二度刷りで形成された、模様部(4)及び潜像画像(6)が積層して配置された領域より明るく視認されることで、明暗差により潜像画像(6)が視認可能となる。
【0061】
なお、本発明の印刷模様(2)は、背景部(5)を一度刷りで形成し、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)を二度刷りで形成したものとして説明したが、印刷回数に差があればこれに限定されず、例えば、背景部(5)を二度刷りで形成し、模様部(4)及び潜像画像(6)を三度刷りで形成しても良い。
【0062】
また、模様部(4)と潜像画像(6)が積層して配置されていれば、その積層順に限定はなく、潜像画像(6)の上に模様部(4)を積層した構成としても良い。
【0063】
次に、
図9を用いて、以上の構成から成る印刷模様(2)の視認状態について説明する。
図9(a1)及び
図9(a2)は、
図2に示す印刷模様(2)を、拡散反射光下で観察した際の模式図及び平面図であり、
図9(b1)及び
図9(b2)は、
図2の印刷模様(2)を、正反射光下で観察した際の模式図及び平面図である。
【0064】
図9において、カモフラージュ画像(3)及び潜像画像(6)を、同じ色の有色インキで形成した場合、
図9(a1)に示すように、拡散反射光下で媒体(S1)を観察した際、積層して配置された模様部(4)及び潜像画像(6)と、その周囲である背景部(5)は同じ色のインキで形成していることから、肉眼では等色で視認され、潜像画像(6)と背景部(5)を区別して視認することができない。よって、
図9(a2)に示すように、印刷模様(2)は、一様な濃度を有する画像として視認される。
【0065】
また、
図9(b1)に示すように、媒体(S1)を正反射光下で観察した場合には、前述のとおり一度刷りで形成した背景部(5)は、拡散性が低いことから、明るく視認される。一方、二度刷りで形成した模様部(4)及び潜像画像(6)が積層した領域は、背景部(5)と比べて拡散性は高いことから、暗く視認される。よって、正反射光下では、
図9(b2)に示すように、明暗の差により、潜像画像(6)である文字「P」が視認可能となる。
【0066】
以上、媒体(S1)は、インキ受理領域上に一度刷りと二度刷りというように、潜像画像(6)とその周囲の背景部(5)で印刷回数を異ならせて形成することで、拡散性の差により潜像画像(6)が視認可能となる。よって、インキ及び印刷機に限定することなく媒体(S1)を形成することが可能なため、傾けることで潜像画像が出現する従来の印刷物と比べ、非常に安価で簡易に作製することが可能となる。
【0067】
次に、印刷模様(2)の他の構成について説明する。
【0068】
図10は、印刷模様(2)の他の構成を説明する平面図である。前述した印刷模様(2)は、
図2に示したように、カモフラージュ画像(3)及び潜像画像(6)を単色のインキで形成していたが、各画像を複数色のインキで形成しても良い。
【0069】
図10に示す印刷模様(2’)は、有意味情報である文字「J」の有意味領域(2a)の周囲に、有意味領域(2a)とは異なる色の背景領域(2b)を有する構成である。印刷模様(2’)は、拡散反射光下では、有意味領域(2a)のである赤色の文字「J」と、青色の背景領域(2b)から成る一つの画像として視認されるが、前述した印刷模様(2)と同様に、インキ受理領域(Z)内に、カモフラージュ画像(3’)と潜像画像(6’)が積層して成る。
【0070】
カモフラージュ画像(3’)は、模様部(4’)と、模様部(4’)の周囲に配置された背景部(5’)から成り、模様部(4’)と背景部(5’)の濃度又は色が異なることで、文字、数字、模様等の有意味情報を表しており、
図10では、模様部(4’)により文字「P」を表している。また、潜像画像(6’)は、正反射光下で視認可能となる画像であり、その形状は、模様部(4)と同一形状である。
【0071】
潜像画像(6’)を、拡散反射光下で隠ぺいするために、模様部(4’)と潜像画像(6’)を積層した色と、背景部(5’)の色を等色とする必要がある。なお、本発明においては、積層して配置された、模様部(4’)及び潜像画像(6’)と、その周囲である背景部(5’)の色の差が、印刷模様(2’)において肉眼で識別できない状態においても、等色で視認されているという。
【0072】
よって、潜像画像(6’)は、前述した印刷模様(2)と同様に、模様部(4’)と潜像画像(6’)が積層した箇所と、背景部(5’)を等色に形成する。
【0073】
例えば、印刷模様(2’)が、濃度100の赤色である有意味領域(2a)と、青色の濃度100である背景領域(2b)で形成された場合、模様部(4’)のうち、潜像画像(6’)と積層して有意味領域(2a)に成る箇所(4a’)は、濃度50の赤色とし、潜像画像(6’)と積層して背景領域(2b)に成る箇所(4b’)は、濃度50の青色とする。
【0074】
また、背景部(5’)のうち、有意味領域(2a)の一部と成る箇所(5a’)は、赤色の濃度100とし、背景領域(2b)の一部と成る箇所(5b’)は、青色の濃度100とする。
【0075】
さらに、潜像画像(6’)のうち、模様部(4’)と積層して有意味領域(2a)と成る箇所(6a’)は、赤色の濃度50で形成し、模様部(4’)と積層して背景領域(2b)と成る箇所(6b’)は、青色の濃度50で形成する。それにより、カモフラージュ画像(3’)と潜像画像(6’)を積層した場合、拡散反射光下にでは、赤色の濃度100の有意味領域(2a)と青色の濃度100の背景領域(2b)から成る印刷模様(2’)が視認される。
【0076】
また、媒体(S2)を正反射光下で観察した場合には、一度刷りで形成した背景部(5’)は、拡散性が低いことから、明るく視認され、二度刷りで形成した模様部(4’)及び潜像画像(6’)が積層した領域は、背景部(5’)と比べて拡散性は高いことから、暗く視認される。
【0077】
よって、正反射光下では、印刷模様(2’)内に明暗の差により潜像画像(6’)である文字「P」が視認可能となる。
【0078】
以上、拡散反射光下で視認される有意味情報と、潜像画像(6’)の形状を異ならせることで、拡散反射光下と正反射光下において、画像がチェンジする構成とすることが可能である。
【0079】
なお、
図10では、印刷模様(2’)は、赤色のインキから成る、文字「J」形状の有意味領域(2a)と、青色のインキから成る背景領域(2b)で構成したが、これに限らず、一度刷りの背景部(5’)と、二度刷りの模様部(4’)及び潜像画像(6’)が、正反射光下で拡散性が異なる構成であれば、顔画像、風景等の階調画像や、複数色のインキを用いたカラー画像等、所望の画像とすることが可能である。
【0080】
次に、印刷模様(2)を階調画像とした構成について説明する。
【0081】
図11は、印刷模様(2’’)及び潜像画像(6’’)を、いずれも階調画像とした構成を説明する平面図である。
【0082】
図11に示す印刷模様(2’’)は、イエロー、マゼンタ及びシアンの三色のインクジェットインクから成る、カラーの階調画像である。印刷模様(2’’)は、拡散反射光下では、カラー画像である薔薇の花が視認されるが、前述した印刷模様(2、2’)と同様に、一度刷りで形成された領域と、二度刷りで形成された領域とに区分けされる。
【0083】
印刷模様(2’’)をカラーの階調画像とし、潜像画像(6’’)を階調画像とした場合、カモフラージュ画像(3’’)は、模様部(4’’)と背景部(5’’)の間に、模様部(4’’)と隣接して、さらに階調カモフラージュ部(7)を配置する。
【0084】
階調カモフラージュ部(7)は、拡散反射光において、背景部(5’’)と拡散性が同じであり、基材(1)及び背景部(5’’)と異なる色の少なくとも第4のインキで形成されている。
【0085】
それにより、拡散反射光下において、背景部(5’’)と階調カモフラージュ部(7)は区別して視認することができず、模様部(4’’)の周囲に形成された、カラーの階調を有する一つの背景領域として視認される。また、積層して配置された、模様部(4’’)及び潜像画像(6’’)は、その周囲である階調カモフラージュ部(7)及び背景部(5’’)と拡散性が異なることで、前述した印刷模様(2、2’)と同様に、潜像画像(6’’)が視認される。
【0086】
次に、
図12を用いて、印刷模様(2’’)の視認状態について説明する。
図12(a1)及び
図12(a2)は、
図11に示す印刷模様(2’’)を、拡散反射光下で観察した際の模式図及び平面図であり、
図12(b1)及び
図12(b2)は、
図11の印刷模様(2’’)を、正反射光下で観察した際の模式図及び平面図である。
【0087】
図12(a2)に示すように、拡散反射光下において媒体(S3)を観察した際、背景部(5’’)、階調カモフラージュ部(7)及び模様部(4’’)は、いずれも拡散性が同じことから、肉眼では区別して視認することができない。よって、
図12(a2)に示すように、印刷模様(2’’)は、カラーの階調画像として視認される。
【0088】
また、
図12(b1)に示すように、媒体(S3)を正反射光下で観察した場合には、前述のとおり一度刷りで形成した背景部(5’’)と階調カモフラージュ部(7)は、拡散性が同じであることから、同じ明るさで視認される。一方、二度刷りで形成した模様部(4’’)及び潜像画像(6’’)が積層した領域は、背景部(5’’)及び階調カモフラージュ部(7)と比べて拡散性は高いことから、暗く視認される。
【0089】
よって、正反射光下では、
図12(b2)に示すように、明暗の差により、階調画像である潜像画像(6’’)が、印刷画像(2’’)内に視認可能となる。
【0090】
次に、前述した媒体(S3)の作製方法について説明する。
【0091】
図13は、媒体(S3)の作製装置(M)を示すブロック図である。作製装置(M)は、入力部(U1)、編集部(U2)、記憶部(U3)及び印刷部(U4)を少なくとも備えている。
【0092】
入力部(U1)は、媒体(S3)の作製に必要なデータを取得し、編集部(U2)に送る手段である。
【0093】
編集部(U2)は、送られたデータを記憶部(U3)に格納するとともに、媒体(S3)の作製に必要な演算処理、画像処理等のすべてを行い、得られた結果を印刷部(U4)に送る。
【0094】
記憶部(U3)は、媒体(S3)の作製に必要なデータを、編集部(U2)の演算に必要な各種データ及びその演算結果を記憶する手段である。
【0095】
印刷部(U4)は、編集部(U2)から与えられたデータを、印刷して媒体(S3)を得る手段である。印刷部(U4)には、前述したインキ受理領域(Z)へインキを印刷することが可能な、レーザ・プリンタ、インクジェット・プリンタ、オフセット印刷機等の印刷装置を用いる。
【0096】
媒体(S3)は、前述した入力部(U1)、編集部(U2)、記憶部(U3)及び印刷部(U4)により作製することが可能だが、画像データを用いて媒体(S3)を印刷するために、さらに、通信インタフェース(U5)及び表示体(U6)を備えることも可能である。
【0097】
通信インタフェース(U5)は、図示されていないコンピュータ端末と編集部(U2)とを接続し、必要に応じてコンピュータ端末と編集部(U2)との間で情報の転送を行う。例えば、通信インタフェース(U5)により、あらかじめ登録された外部のデータベースサーバから画像、テキスト等、媒体(S3)の作製に必要な各種データを得ることが可能である。
【0098】
表示部(U6)は、入力されたデータ、演算結果等、媒体(S3)の作製に必要なデータ及び入力条件、コマンド等、作製者に必要な情報を表示する手段であり、例えばCRT、液晶ディスプレイ等を少なくとも一つ有する。
【0099】
図13の作製装置(M)を用いて、
図11に示す、カラーの階調画像である印刷模様(2’’)を有する媒体(S3)を作製する方法について、その手順を示した
図14のフローチャートを用いて説明する。
【0100】
まず、画像データ取得ステップST1として、印刷模様(2’’)の原画像である印刷模様データ(2D)と、潜像画像(6’’)の原画像である潜像画像データ(6D)を、それぞれ作製する。
【0101】
なお、本実施の形態で、データはいずれも記憶部(U3)内に格納されているものであるが、詳細に説明するために、以下模式的に図面に記載する。
【0102】
まず、印刷模様(2’’)の画像データを取得するために、印刷模様(2’’)の原画像である印刷模様データ(2D)と、潜像画像(6’’)の原画像である潜像画像データ(6D)を編集部(U2)が作製するか、又はあらかじめ作製及び/又は取得した印刷模様データ(2D)を入力部(U1)より取得し、編集部(U2)を介して記憶部(U3)に格納する。
【0103】
印刷模様(2’’)は、前述のとおり、カラーの階調画像であり、潜像画像(6’’)は、印刷模様(2’’)に積層して形成する階調画像である。
【0104】
なお、本実施形態では、入力部(U1)で取得する場合と、編集部(U2)で作製する場合を併せて説明する際には、入力部(U1)及び編集部(U2)により作製するものとして説明する。
【0105】
入力部(U1)により取得した原画像が、ビットマップによる二値画像データ又はアウトライン図形データ(以下、「デジタルデータ」とする。)でない場合には、デジタルデータへ変換する必要があるため、編集部(U2)では、原画像をデジタルデータへ変換するデータ変換手段をさらに有することが必要となる。
【0106】
よって、入力部(U1)は、印刷模様(2’’)の原画像である印刷模様データ(2D)を取得する入力部(U1)と、取得した原画像をデジタルデータに変換するデータ変換手段を一つの機器内に備えたスキャナ等の読取機器又はデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯端末等の撮像機器であることが、好ましい。データ変換手段を備えた入力部(U1)とすることで、画像の取得とデジタルデータへの変換を一度に行うことが可能となる。
【0107】
また、あらかじめ作製及び/又は取得した画像データを印刷模様データ(2D)として用いる場合、入力部(U1)は、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像を既にデジタルデータとして記録してあるCD−ROM、FD、USBメモリ等の情報記録媒体からデジタルデータを取得するMOドライブ、CD−ROMドライブ、FDドライブ、イメージカードリーダ等の入出力機器としても良い。
【0108】
この場合、前述のとおり、原画像は既にデジタルデータ化されているため、編集部(U2)を介す必要はない。よって、原画像を入力部(U1)により取得した後、編集部(U2)を介すことなく、記憶部(U3)に格納する。
【0109】
画像データにおける画素とは、格子状に配列して画像データを形成する点のことであり、色に関する情報を数値として持つものである。画素により画像を形成する画像形式は、TIFF形式、BMP形式等画素により画像を形成可能であれば画像形成に制限はない。いずれの作製又は取得方法においても、記憶部(U3)に格納した画像データは複数の画素から構成される。
【0110】
なお、本発明の媒体(S3)は、印刷模様(2’’)内に、潜像画像(6’’)を隠ぺいさせる必要があることから、印刷模様データ(2D)を、潜像画像データ(6D)より画像サイズが大きいデータとする。よって、作製した印刷模様データ(2D)と潜像画像データ(6D)の画像サイズは、編集部(U2)により、適宜設定を行う。
【0111】
次に、色分解ステップST2として、
図15に示すように、編集部(U2)で、印刷模様データ(2D)を色分解し、複数の分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)を作製する。作製した複数の分解画像データ(
2DC、2DM、2DY) は、記憶部(U3)に格納する。
【0112】
本発明における色分解とは、印刷模様データ(2D)を多色印刷可能なデジタルデータへ変換することであり、例えば、CMY分解として、編集部(U2)で、印刷模様データ(2D)を、シアン、マゼンタ及びイエローの3種類のデータである、シアン分解画像データ(2DC)、マゼンタ分解画像データ(2DM)及びイエロー分解画像データ(2DY)へと変換することである。
【0113】
なお、シアン、マゼンタ及びイエローにブラックを加え、CMYK分解として、シアン分解画像データ(2DC)、マゼンタ分解画像データ(2DM)、イエロー分解画像データ(2DY)及び図示しないブラック分解画像データへと変換しても良い。さらには、特色分解として、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック以外の特色の各分解画像データへと変換しても良い。
【0114】
色分解は、画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop)を用いることが可能である。また、特色分解は、特色分解装置(例えば、BARCO社の特色分解装置)を用いることが可能である。以下、本発明においては、色分解をCMY分解とし、シアン分解画像データ(2DC)、マゼンタ分解画像データ(2DM)及びイエロー分解画像データ(2DY)へと変換することとして説明する。
【0115】
次に、隠ぺい用カモフラージュ画像データ作製ステップST3として、編集部(U2)で、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)のうち、潜像画像(6’’)を隠ぺいさせる隠ぺい分解画像データと、潜像画像データ(6D)を重ねて、隠ぺい分解画像データ内における、潜像画像データ(6D)との重複箇所を除去し、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を作製する。
【0116】
まず、編集部(U2)で、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)及び潜像画像データ(6D)を、複数の画像データを用いて画像処理可能なデータとするために、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)に対して共通する位置情報である、位置座標を設定する。
【0117】
まず、シアン分解画像データ(2DC)に対して少なくとも三点を、基準点として設定する。
図16では、シアン分解画像データ(2DC)の四隅のうち、三点(P1、P2、P3)を基準点として設定する。なお、シアン分解画像データ(2DC)は複数の画素から構成されていることから、点とは、一つの画素のことをいう。
【0118】
シアン分解画像データ(2DC)は、まず、一つ目の基準点(P1)をゼロ点(0,0)の座標として設定した後、一つ目の基準点(P1)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(P2)とし、さらに、一つ目の基準点(P1)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(P3)とした。
【0119】
このように、P1、P2及びP3を、シアン分解画像データ(2DC)における基準点に設定する。次に、シアン分解画像データ(2DC)を構成する複数の画素に対して、ゼロ点(0,0)に対する距離を示す、固有の位置情報である位置座標を設定する。
【0120】
なお、TIFF形式、JPEG形式、BMP形式等の一般的な画像形式では、画素が必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ。よって、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)を構成するすべての画素が、必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ場合は、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)の縦横方向が自明であり、回転を考慮する必要がないため、基準点は一点のみでよい。以下、本発明では、各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)が、それぞれ三つの基準点を有した構成として説明する。
【0121】
次に、マゼンタ分解画像データ(2DM)、イエロー分解画像データ(2DY) 及び潜像画像データ(6D)に対して、シアン分解画像データ(2DC)に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設定する。なお、基準点の設定方法についての詳細は、特開2011−140217号において記載されていることから、省略する。基準点を設定した各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)は、記憶部(U3)に格納する。
【0122】
なお、はじめに、シアン分解画像データ(2DC)に対して基準点を設定したのち、マゼンタ分解画像データ(2DM)、イエロー分解画像データ(2DY)及び潜像画像データ(6D)に対して、共通する基準点を設定したが、これに限らず、三つの分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)及び潜像画像データ(6D)のうち、いずれか一つの画像データに対して基準点を設定したのち、残りの画像データに対し、共通する位置に基準点を設定することが、可能である。
【0123】
次に、編集部(U2)で、基準点設定後の各分解画像データ(
2DC、2DM、2DY)のうち、潜像画像(6’’)を隠ぺいさせる隠ぺい分解画像データと、潜像画像データ(6D)を重ねて、隠ぺい分解画像データ内における潜像画像データ(6D)との重複箇所を除去して、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を作製する。作製した隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)は、記憶部(U3)に格納する。
【0124】
図17は、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)の作製工程を示す模式図である。まず、潜像画像(6’’)を隠ぺいさせる隠ぺい画像データ(2DC’)を設定する。隠ぺい画像データ(2DC’)とは、潜像画像(6’’)を拡散反射光下において、隠ぺいさせるために用いる画像データのことであり、前述した、三つの分解画像データ(2DC、2DM、2DY)のうちの、一つの分解画像データのことである。
【0125】
図17(a)においては、一例として、潜像画像(6’’)をシアン分解画像データ(2DC)に隠ぺいさせる構成とするため、隠ぺい画像データ(2DC’)は、シアン分解画像データ(2DC)となる。なお、後述する手順と同様の作製方法により、他の各分解画像データ(2DM、2DY)に隠ぺいさせることも、可能である。その場合、隠ぺい画像データ(2DC’)は、潜像画像(6’’)を隠ぺいさせる、各分解画像データとなる。
【0126】
次に、
図17(a)に示す隠ぺい画像データ(2DC’)と、
図17(b)に示す潜像画像データ(6D)を重ねる。
図17(c)は、隠ぺい画像データ(2DC’)と潜像画像データ(6D)を重ねた画像データである。なお、以下、各画像データを重ねる場合、基準点データ同士を互いに重ねていることを指すものとする。
【0127】
次に、隠ぺい画像データ(2DC’)内における、潜像画像データ(6D)との重複箇所を除去し、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を作製する。
図11を用いて前述したとおり、カモフラージュ画像(3’’)は、潜像画像(6’’)と同形状の模様部(4’’)を有することで、模様部(4’’)と潜像画像(6’’)を積層して配置した際に、潜像画像(6’’)が隠ぺいされた印刷模様(2’’)を形成することが、可能となる。
【0128】
隠ぺい画像データ(2DC’)内における、潜像画像データ(6D)との重複箇所を除去する処理を行うことで、潜像画像(6’’)と同一形状の模様部(4’’)を有する画像データである隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)となる。隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)においても、共通する位置に基準点を有している。
【0129】
よって、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)における模様部(4’’)に該当する箇所(4D)と、潜像画像(6’’)は、同一形状で同じ位置に配置されていることから、基材(1)上に出力した際には、潜像画像(6’’)は、同一形状の模様部(4’’)上にすべて積層して配置することが可能となる。
【0130】
次に、色設定ステップST4として、編集部(U2)で、印刷模様(2’’)を形成するために用いる画像データである、潜像画像データ(6D)を出力する際の、色材の色を設定し、色設定潜像画像データを作製する。作製した、各色設定画像データは、記憶部(U3)に格納する。
【0131】
色設定ステップST4では、潜像画像データ(6D)を出力する際の色材の色を、ST3にて隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を生成した際に用いた分解画像データの色に設定する。
【0132】
例えば、前述したST3では、一例として、シアン分解画像データ(2DC)を基に生成したことから、潜像画像データ(6D)を出力する際の色材の色を、シアンに設定する。色設定後の潜像画像データ(6D)は、色設定潜像画像データ(6D’)となる。
【0133】
なお、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)、マゼンタ分解画像データ(2DM)及びイエロー分解画像データ(2DY)については、既に色情報を有していることから、出力する際の色材の色を設定する必要はない。
【0134】
次に、カモフラージュ画像データ作製ステップST5として、編集部(U2)で、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)と、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を作製する際に用いなかった、残りの二つの分解画像データを合成し、カモフラージュ画像データ(3D)を作製する。作製した、カモフラージュ画像データ(3D)は、記憶部(U3)に格納する。
【0135】
ST2において
図15を用いて前述したように、カラーの階調画像である印刷模様(2’’)の画像データである印刷模様データ(2D)を色分解すると、
図18に示すように、シアン分解画像データ(2DC)、マゼンタ分解画像データ(2DM)及びイエロー分解画像データ(2DY)の3種類の画像データとなる。
【0136】
本発明では、一例として、その中の一色のシアン分解画像データ(2DC)に潜像画像(6’’)を隠ぺいするとし、シアン分解画像データ(2DC)を基に、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)と色設定潜像画像データ(6D’)を生成した。よって、隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)と、色設定潜像画像データ(6D’)を合成すると、シアン分解画像データ(2DC)となる。
【0137】
これは、媒体(S3)についても同様のことがいえ、カラーの階調画像である印刷模様(2’’)を色分解すると、シアン分解画像(2C)、マゼンタ分解画像(2M)及びイエロー分解画像(2Y)の3種類の分解画像となる。本発明では、一例として、その中の一色のシアン分解画像(2C)に潜像画像(6’’)を隠ぺいするとしたことから、シアン分解画像(2C)を、潜像画像(6’’)と、その他の領域であるシアン背景領域(7C)で構成する。潜像画像(6’’)とシアン背景領域(7C)を合成すると、シアン分解画像(2C)となる。
【0138】
前述のとおり、本発明の印刷模様(2’’)は、潜像画像(6’’)のみを二度刷りで形成することで、インキ受理領域(Z)内において他の領域と拡散性が異なり、正反射光下で観察した際に潜像画像(6’’)が視認可能となる。よって、
図18に示す潜像画像(6’’)のみを二度刷りで形成し、他の一度刷りにより印刷模様(2’’)を形成するために、潜像画像(6’’)以外の画像である、マゼンタ分解画像(2M)、イエロー分解画像(2Y)及びシアン背景領域(7C)を一つの画像として出力し、その上層又は下層に潜像画像(6’’)のみを出力する必要がある。
【0139】
よって、カモフラージュ画像データ作製ステップST5では、マゼンタ分解画像(2M)、イエロー分解画像(2Y)及びシアン背景領域(7C)を一つの画像として出力するために、マゼンタ分解画像(2M)の基画像であるマゼンタ分解画像データ
(2DM)と、イエロー(2Y)分解画像の基画像であるイエロー分解画像データ(2DY)と、シアン背景領域(7C)の基画像である隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)を合成し、一つの画像データとしてカモフラージュ画像データ(3D)を生成する。
【0140】
図19は、カモフラージュ画像データ作製ステップST5を示す模式図である。マゼンタ分解画像データ(2DM)、イエロー分解画像データ(2DY)及び隠ぺい用カモフラージュ画像データ(7D)は、共通する位置に基準点(P1、P2、P3)をそれぞれ有していることから、それぞれの基準点同士を重ね合わせた後、編集部(U2)において各画像を合成し、カモフラージュ画像データ(3D)を作製する。
【0141】
図20(a)は、カモフラージュ画像データ(3D)を示す模式図であり、
図20(b)は、潜像画像データ(6D)を示す模式図である。カモフラージュ画像データ(3D)は、シアン、マゼンタ及びイエローの色情報を有しているが、模様部(4’’)に相当する箇所のみ、シアンの色情報を有していない。
【0142】
一方、色設定潜像画像データ(6D’)は、シアンの色情報のみを有している。よって、カモフラージュ画像データ(3D)と色設定潜像画像データ(6D’)を積層して出力することで、色設定潜像画像データ(6D’)と模様部(4’’)が、シアン色を打ち消しあうことで、印刷模様(2’’)とした場合に、潜像画像(6’’)を、隠ぺいすることが可能となる。
【0143】
なお、前述のとおり、潜像画像(6’’)は、シアンに限らず、他の色とすることも可能である。例えば、マゼンタとした場合、カモフラージュ画像データ(3D)は、シアン、マゼンタ及びイエローの色情報を有しているが、模様部(4’’)に相当する箇所のみ、マゼンタの色情報を有していない。
【0144】
一方、色設定潜像画像データ(6D’)は、マゼンタの色情報のみを有している。よって、カモフラージュ画像データ(3D)と色設定潜像画像データ(6D’)を積層して出力することで、色設定潜像画像データ(6D’)と模様部(4’’)が、マゼンタ色を打ち消しあうことで、印刷模様(2’’)とした場合に、潜像画像(6’’)を、隠ぺいすることが可能となる。
【0145】
次に、出力ステップST6として、印刷部(U4)において、ST4で作製した色設定潜像画像データ(6D’)と、ST5で作製したカモフラージュ画像データ(3D)を基に、基材(1)上に画像を形成する。
【0146】
基材(1)は、多孔質の体質顔料を主体とした塗布液を塗工することで形成されたインキ受理領域(Z)を少なくとも有するものを用いる。本発明では、インキ受理領域(Z)
に積層して印刷を施すことで生じる、インキの浸透性の差を利用することで、拡散反射光下と正反射光下で、画像をチェンジさせている。よって、基材(1)はインキ受理領域(Z)を有する必要がある。
【0147】
なお、基材(1)がインキ受理領域(Z)を有していない場合には、出力ステップST6の前に、受理領域形成ステップST7として、印刷部(U4)により、基材(1)上の少なくとも一部の領域に、多孔質の体質顔料を主体とした塗布液を塗工した後、塗布液を乾燥させることで、インキ受理領域(Z)を形成する。
【0148】
受理領域形成ステップST7を設けることで、基材(1)を限定することなく、印刷模様(2’’)を形成することが可能となる。
【0149】
出力ステップST6は、まず、色設定潜像画像データ(6D’)を、基材(1)上にデジタル印刷方式により印刷し、潜像画像(6’’)を形成する。印刷方式は、インキ受理領域(Z)上に出力可能な印刷方式であれば特に限定されるものではない。
【0150】
次に、カモフラージュ画像データ(3D)を、潜像画像(6’’)と模様部(4’’)が同じ位置となるように、基材(1)に印刷した潜像画像(6’’)上に形成することで、印刷模様(2’’)が形成された媒体(S3)となる。
【0151】
なお、印刷順序に限定はなく、カモフラージュ画像(3’’)を先に形成した後、その上に潜像画像(6’’)を形成しても良い。
【0152】
また、色設定画像データ(6D’)とカモフラージュ画像データ(3D)の出力回数は、基材(1)上に印刷した、潜像画像(6’’)とカモフラージュ画像(3’’)の印刷回数に差があれば、特に印刷回数に限定はない。
【0153】
本発明の媒体(S3)の印刷方法は、オンデマンド印刷が好ましい。オンデマンド印刷で作製することにより、可視画像である印刷模様(2’’)と、観察角度の変化により視認可能となる潜像画像(6’’)を、媒体(S3)ごとに異なる画像として印刷することが可能となる。すなわち、印刷模様(2’’)及び潜像画像(6’’)を可変画像として扱うことが可能となる。
【0154】
なお、印刷模様(2’’)及び潜像画像(6’’)を可変画像として、媒体(S3)を作製する場合、画像データ取得ステップST1は、作製する複数の印刷模様データ(2D)、及び複数の潜像画像データ(6D)のうち、少なくとも一種類の画像データにおいて、少なくとも二つの異なる画像データを、入力部(U1)又は編集部(U2)で作製した後、記憶部(U3)に格納する。
【0155】
各画像を可変画像として、媒体(S3)を作製する場合、出力ステップST6の前に、画像データ取得ステップST1において、記憶部(U3)に格納した複数の画像データの中から、ユーザが可変画像とする所望の画像データを選択する、データ選択ステップST5.5をさらに有する。
【0156】
出力ステップST6は、データ選択ステップST5.5で選択した所望の画像データを基に、各ステップにより作製した、カモフラージュ画像データ(3D)と色設定潜像画像データ(6D’)を、印刷部(U4)から、異なる画像データとして出力する。作製した複数の媒体(S3)は、所望の画像が可変情報として付与された媒体(S3)となる。
【0157】
例えば、三つの媒体(S3)を作製し、カモフラージュ画像データ(3D)と色設定潜像画像データ(6D’)のうち、色設定潜像画像データ(6D’)を可変画像とする場合、画像データ取得ステップST1にて、五つの異なる画像データを、潜像画像データ(6D)として、入力部(U1)又は編集部(U2)で作製した後、記憶部(U3)に格納する。
【0158】
次に、隠ぺい用カモフラージュ画像データ作製ステップST3、色設定ステップST4及びカモフラージュ画像データ作製ステップST5にて、五つの異なる潜像画像データ(6D)ごとに対応したカモフラージュ画像データ(3D)である、五つの異なるカモフラージュ画像データを編集部(U2)で作製した後、記憶部(U3)に格納する。
【0159】
また、五つの潜像画像データ(6D)においても、色設定ステップST4にて、前述の方法と同様に、色設定し、色設定潜像画像データ(6D’)を作製した後、記憶部(U3)に格納する。
【0160】
次に、データ選択ステップST5.5で、画像データ取得ステップST1にて記憶部(U3)に格納した五つの潜像画像データ(6D)の中から、ユーザが可変画像とする所望の潜像画像データ(6D)を三つと、選択した潜像画像データ(6D)を基に作製した、色設定潜像画像データ(6D’)及びカモフラージュ画像データ(3D)をそれぞれ三つ選択する。
【0161】
最後に、出力ステップST6において、データ選択ステップST5.5で選択した三つの色設定潜像画像データ(6D’)及びカモフラージュ画像データ(3D)を、印刷部(U4)から、異なる画像データとして出力する。作製した三つの媒体(S3)は、可視画像である印刷模様(2’’)及び潜像画像(6’’)が、いずれも異なる画像(可変画像)として付与された媒体(S3)となる。
【0162】
以上、本発明の媒体(S3)の作製方法は、複数の媒体(S3)を作製する際に、画像データ取得ステップST1で複数の画像データを作製し、隠ぺい用カモフラージュ画像データ作製ステップST3、色設定ステップST4及びカモフラージュ画像データ作製ステップにより、異なる画像データを作製した後、データ選択ステップST5.5及び出力ステップST6で、所望の画像データを選び印刷することで、簡易に、画像を可変要素として付与することが可能となる。
【0163】
1 基材
2、2’、2’’ 印刷模様
3 カモフラージュ画像
3a カモフラージュ要素
4、4’、4’’ 模様部
5、5’、5’’ 背景部
6、6’、6’’ 潜像画像
6a 潜像要素
7 階調カモフラージュ部
S1、S2、S3 偽造防止媒体
Z インキ受理領域
M 作製装置
U1 入力部
U2 編集部
U3 記憶部
U4 印刷部
U5 通信インタフェース
U6 表示部
2D 印刷模様データ
2DC シアン分解画像データ
2DM マゼンタ分解画像データ
2DY イエロー分解画像データ
2DC’ 隠ぺい画像データ
3D カモフラージュ画像データ
6D 潜像画像データ
6D’ 色設定潜像画像データ
7D 隠ぺい用カモフラージュ画像データ