(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記光硬化性接着剤(1)は、該光硬化性接着剤(1)を被着物(3)に1mm以上の厚みで塗布し、塗布後の上記光硬化性接着剤(1)の厚み方向(Z)に上記レーザ光(20)を照射して用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性接着剤(1)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記光硬化性接着剤は、エポキシ系接着成分を含有する。エポキシ系接着成分としては、加熱により硬化する一液型シアネート−エポキシ複合樹脂組成物等を用いることができる。エポキシ系接着成分は、例えばシアネートエステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、潜在性硬化剤(C)を含有することができる。
【0012】
潜在性硬化剤(C)は、例えば分子内に活性水素を有するアミノ基を1個以上有する変性ポリアミン(a)及びフェノール系樹脂(b)を含有する。変性ポリアミン(a)は、例えばポリアミン化合物とエポキシ化合物との反応により得ることができる。ポリアミン化合物は、例えば(1)分子内にそれぞれ反応性を異にする2個の第1級又は第2級アミノ基を有するジアミン、及び/又は(2)分子内に2個以上の第1級又は第2級アミノ基を有し、その1個がエポキシ基と反応した場合にその立体障害により残りの第1級又は第2級アミノ基のエポキシ基との反応性が低下する芳香族ポリアミン及び/又は脂環式ポリアミン及び/又は脂肪族ポリアミンである。ポリアミン化合物は、好ましくは、2−アミノプロピルイミダゾール化合物である。また、エポキシ化合物は、例えば分子内にエポキシ基を2個以上有するポリグリシジルエーテル化合物である。
【0013】
エポキシ系接着成分におけるエポキシ樹脂(B)の含有量が少なくなりすぎると十分な硬化性が得られなくなる。一方、エポキシ樹脂(B)の含有量が多くなり過ぎると、硬化物の物性が低下するという不具合が生じるおそれがある。したがって、エポキシ系接着成分は、シアネートエステル樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ樹脂(B)を1〜10000質量部含有することが好ましい。
【0014】
シアネートエステル樹脂(A)は、特に限定されるものではないが、次の(式1)で示されるポリマー、次の(式2)で示されるポリマー、及びこれらのポリマーのプレポリマーからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0016】
(式1)中、R
1は、非置換又はフッ素置換の2価の炭化水素基、−O−、−S−又は単結合であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、非置換もしくは非置換又はフッ素置換の炭素数1〜4のアルキル基等で置換されているフェニレン基である。
【0018】
(式2)中、nは、1以上の整数であり、R
4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基などである。
【0019】
また、上記の(式1)及び(式2)で示されるポリマーにおいて、そのシアネート基の一部がトリアジン環を形成したプレポリマーもまた、シアネートエステル樹脂(A)として使用することできる。かかるプレポリマーとしては、例えば、上記の(式1)のポリマーの全部もしくは一部が3量化したものを挙げることができる。
【0020】
シアネートエステル樹脂(A)は、次の(式3)で示されるポリマー、これらのポリマーのプレポリマーであることがより好ましい。ポリマーは、単独で使用してもよく、2種以上を組みあわせて使用してもよい。
【0022】
式中、R
6、R
7、R
8、及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子又は非置換もしくはフッ素置換のメチル基であり、R
5は、次の(式4)で示される基である。
【0024】
R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子または非置換もしくはフッ素置換のメチル基であるか、もしくは次の(式5)〜(式12)で示される基である。なお、(式7)におけるnは4〜12の整数である。
【0033】
シアネートエステル樹脂(A)は、4,4’−エチリデンビスフェニレンシアネート、2,2−ビス(4―シアナトフェニル)プロパン、及びビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂(B)は特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体、N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物を包含する。また、これらのエポキシ樹脂は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものあるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0035】
潜在性硬化剤に含まれる変性ポリアミン(a)の形成に用いられるポリアミン化合物は、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、メシチレン−2,6−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン、2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾールなどを包含する。
【0036】
上記のようなポリアミン化合物の中でも、特に、ポリアミン化合物が、(1)分子内にそれぞれ反応性を異にする2個の第1級又は第2級アミノ基を有するジアミン、及び/又は(2)分子内に2個以上の第1級又は第2級アミノ基を有し、その1個がエポキシ基と反応した場合その立体障害により残りの第1級又は第2級アミノ基のエポキシ基との反応性が低下する芳香族ポリアミン及び/又は脂環式ポリアミン及び/又は脂肪族ポリアミンであることが好ましい。かかるポリアミン化合物を使用することによって、接着性、硬化物性等が向上するからである。
【0037】
上記ジアミン(1)としては、例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパンなどが挙げられ、上記ジアミン(2)としては、例えば、m−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサンなどがあげられるが、これらのジアミンに特に限定されるものではない。
【0038】
また、ポリアミン化合物として、2−アミノプロピルイミダゾール等の第1級アミノ基を含有するイミダゾール化合物を有利に使用することができる。これらのポリアミン化合物を使用すると、低温硬化性が向上するからである。
【0039】
ポリアミン化合物との反応により変性ポリアミン(a)の形成に用いられるエポキシ化合物は、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、第二ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル化合物、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノグリシジルエステル化合物、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体、N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物を包含する。
【0040】
エポキシ化合物として、特に、分子内にエポキシ基を2個以上有するポリグリシジルエーテル化合物が好ましい。とりわけ、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)等のビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルが好ましい。
【0041】
ここで、ポリアミン化合物として1級及び2級アミノ基を併せて2個以上有するポリアミンを用いた場合には、変性ポリアミン(a)が、ポリアミン化合物が1モルとなる量に対し、エポキシ化合物をそのエポキシ当量が0.5〜2当量、特に0.8〜1.5当量となる量で反応させて得られる変性ポリアミンであることが好ましい。
【0042】
さらに、ポリアミン化合物として、上記ポリアミン(1)を用いて得られる変性アミンとイミダゾール化合物を用いて得られる変性アミンを組み合わせて使用する等、異なる変性アミン化合物及び/又はイミダゾール化合物を組み合わせて使用することができる。
【0043】
変性ポリアミン(a)と組み合わせて使用されるフェノール樹脂(b)は、例えばフェノール類とアルデヒド類より合成されるフェノール樹脂である。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドを挙げることができる。
【0044】
シアネートエステル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の使用量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、シアネートエステル樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ樹脂(B)1〜10000質量部、好ましくは10〜1000質量部、さらに好ましくは20〜500質量部である。
【0045】
また、潜在性硬化剤(C)の使用量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、シアネートエステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは5〜60質量部である。
【0046】
光硬化性接着剤は、取り扱いを容易にするため、種々の溶剤、好ましくは有機溶剤に溶解して使用することができる。適当な有機溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、イソ−またはn−ブタノール、イソ−またはn−プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0047】
また、光硬化性接着剤は、エポキシ系接着成分を加熱硬化させる光吸収性成分を含有する。光吸収成分としては、例えばカーボンブラック、黒色含金塗料、アジン系塗料、ニグロシン系化合物などの光吸収性物質を用いることができる。ニグロシン系化合物としては、例えば、ニグロシンの硫酸塩、リン酸塩等の水不溶性ニグロシン系化合物などを挙げることができる。光吸収性物質は、単独で使用してもよく、2種類以上の物質を混合して使用してもよい。光吸収性成分は、カーボンブラックからなることが好ましい。この場合には、光硬化性接着剤のレーザ光に対する硬化性がより向上する。
【0048】
無機フィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、ガラス、窒化ホウ素、二酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、炭素繊維、酸化鉄、ダイヤモンド等からなる。無機フィラーは、透光性を有することが好ましく、波長800nm〜1100nmの赤外線レーザ光の透過率が80%以上であることがより好ましい。この場合には、光硬化性接着剤の硬化性が向上する。無機フィラーの材質及び/又は含有量を調整することにより、硬化前後の光硬化性接着剤の熱伝導率を上述の所望の範囲に制御することができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
本例は、組成の異なる複数の光硬化性接着剤を作製し、その硬化特性を評価する例である。
図1に示すごとく、本例の実施例にかかる光硬化性接着剤1は、エポキシ系接着成分11と、光吸収成分12と、無機フィラー13とを含有する。光吸収成分12と無機フィラー13は、エポキシ系接着成分11中に分散されている。以下、光硬化性接着剤1の製造方法を説明する。
【0050】
(1)変性ポリアミンの合成及び潜在性硬化剤の調製
まず、フラスコに、1,2−ジアミンプロパン201gを仕込んで60℃に加温し、これにアデカレジンEP−4100E((株)ADEKAの商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)580gを、系内温度が100〜110℃に保たれるように少しずつ加えた[1,2−ジアミンプロパン1モルに対するアデカレジンEP−4100Eのエポキシ当量:1.12]。アデカレジンEP−4100Eの添加後140℃に昇温し、1.5時間反応させて変性ポリアミンを得た。得られた変性ポリアミン100gに対してフェノール樹脂30gを仕込み、180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、潜在性硬化剤を得た。
【0051】
(2)光硬化性接着剤の製造
シアネートエステル樹脂(ロンザ社製;シアネートLeCy)と、エポキシ樹脂((株)ADEKA社製;EP−4100E、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)と、光吸収成分(三菱化学製のカーボンブラック;750B)と、無機フィラー(シリカ)とを配合し、撹拌、溶解、混合、分散を行った。次に、この混合物に潜在性硬化剤を加えて、撹拌、溶解、混合、分散を行うことによって、
図1に示すごとく、エポキシ系接着成分11と光吸収成分12と無機フィラー13とを含有する光硬化性接着剤1を得た。なお、シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂と潜在性硬化剤の配合割合は、質量比で1:1:1である。また、無機フィラー13の配合割合は、後述の表1に示すごとくシアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂と潜在性硬化剤との合計量、即ちエポキシ系接着成分100質量部に対して55質量部である。また、光硬化性接着剤1中の光吸収成分12の含有量(質量%)、即ち、エポキシ系接着成分11と光吸収成分12と無機フィラー13との合計量に対する光吸収成分12の量を後述の表1に示すように調整した。このようにして、光吸収成分12の量が異なる5種類の光硬化性接着剤(試料X1〜X5)を作製した。
【0052】
次に、各試料の光硬化性接着剤の硬化試験を行った。
具体的には、まず、
図2に示すごとく、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなる厚み2mmの板状の被着物3に貫通孔31を開け、ディルペンサを用いて貫通孔31内に光硬化性接着剤1を充填することにより、被着物3に光硬化性接着剤1を塗布した。塗布後、レーザヘッド2(JDSU社製、商品名「IDL50」)からレーザ光20を光硬化性接着剤1に直接照射した。照射方向は、光硬化性接着剤1の塗布厚の方向Zである。本例で使用したレーザ光20の出力は3W、照射時間は5秒間である。このレーザ光20の照射により、光硬化性接着剤1を硬化させた。
【0053】
そして、硬化前後における各試料の熱伝導率を測定した。熱伝導率の測定は、(株)日立テクノロジーアンドサービス製の樹脂材料熱抵抗測定装置を用いて、ASTM D5470に準拠して行った。その結果を表1に示す。
【0054】
また、硬化後における各試料のタック(粘着性)の有無を評価した。具体的には、レーザ光20の照射後の光硬化性接着剤1の表面を手で触れて粘着性の有無を確認した。粘着性が無かった場合を「可」と評価し、粘着性があった場合を「不可」と評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
また、硬化後における各試料の表面の炭化を目視にて判定した。表面の炭化が全く観察されなかった場合を「良」と評価し、薄い炭化部分がわずかに観察された場合を「可」と評価し、はっきりと炭化が観察された場合を「不可」と評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より知られるように、光硬化性接着剤1中の光吸収成分12の含有量が0.1質量%以下の試料X1〜X4を用いた場合には、レーザ光20の照射による表面の炭化が抑制されていた(
図1及び
図2参照)。これに対し、光吸収成分12を0.5質量%含有する試料X5を用いた場合には、表面の炭化が確認された。したがって、光硬化性接着剤1における光吸収成分12の含有量は0.1質量%以下であることが好ましい。炭化をさらに抑制するためには、光吸収成分12の含有量は0.01質量%未満であることがより好ましく、0.005質量%以下であることがさらにより好ましい。光吸収成分12は微量でも添加効果があり、その含有量は0.001質量%以上であることが好ましい。また、表1より知られるごとく、光吸収成分12の含有量が異なるいずれの試料X1〜X5を2mmの厚みで硬化させても、硬化物に粘着性はなかった。即ち、試料X1〜X5の光硬化性接着剤1は、レーザ光20の照射により十分に硬化が可能である。
【0058】
次に、フィラーの種類及び配合量を変えて複数の光硬化性接着剤(試料X6〜X11)を作製した。これらの試料は、フィラーの種類及び配合量を表2に示すように変更した点を除いては、上述の試料X1〜X5と同様にして作製した。これらの試料X6〜X11についても試料X1〜X5と同様に厚み2mmでの硬化試験を行い、粘着性の評価と表面炭化の評価を行った。なお、試料X6と試料X8については、厚み5mmで硬化させた場合の粘着性及び炭化の評価も行った。光硬化性接着剤1の厚みを5mmにしたときにおけるレーザ光20の照射条件に関しては、出力が3Wであり、照射時間が10秒である。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2より知られるごとく、硬化前の熱伝導率が0.2W/m・K以上であり、硬化後の熱伝導率が0.5W/m・K以上である試料X8〜試料X10は、この範囲から外れる試料X6、試料X7、及び試料X11に比べて、硬化後に粘着性がなく十分に硬化しており、表面の炭化もほとんどなかった。硬化前後における熱伝導率を上記範囲に調整するためには、エポキシ系接着成分100質量部に対して、無機フィラー13を55質量部以上用いることが好ましく、無機フォラー13は、シリカ及び/又はアルミナからなることがより好ましい。一方、エポキシ系接着成分に対する無機フィラー量が増大すると、原料の混合が困難になるおそれがあると共に、混合後に得られる光硬化性接着剤の塗布が困難になるおそれがある。かかる観点から、無機フィラー13の含有量は、エポキシ系接着剤100質量部に対して85質量部以下であることが好ましい。また、表2より知られるように、炭化をより一層抑制するためには、無機フィラー13はシリカからなることがさらに好ましい。また、試料X8に示すように、上記熱伝導率の範囲を満足する光硬化性接着剤1は、厚みを5mmにしても、レーザ光20の直接照射により炭化を発生することなく、十分な硬化が可能である。
【0061】
このように、本例によれば、光吸収成分12の含有量が0.1質量%以下であり、硬化前の熱伝導率が0.2W/m・K以上であり、硬化後の熱伝導率が0.5W/m・K以上である光硬化性接着剤1は、レーザ光20の直接照射による硬化が可能であり、塗布厚を大きくしても十分な硬化が可能であることがわかる(
図1及び
図2参照)。即ち、このような光硬化性接着剤1においては、光吸収成分12の含有量が少ないため、レーザ光20の透過率が上がり、表面における炭化が起こり難くなる。その一方で、無機フィラー13の含有により、光硬化性接着剤1の硬化前後の熱伝導率が上記範囲に調整されている。そのため、レーザ光20の照射による熱が光硬化性接着剤1の表面から内部に十分に伝わり、光硬化性接着剤1の十分な硬化が可能になる。
【0062】
本例のように、光硬化性接着剤1の被着物3への塗布厚みは1mm以上が好ましく、この光硬化性接着剤1の厚み方向Zにレーザ光20を直接照射することが好ましい(
図2参照)。この場合には、比較的大きな厚みで塗布した光硬化性接着剤1にレーザ光20を直接照射しても、表面の炭化をほとんど起こすことなく、硬化が可能であるという作用効果が確実に確認される。なお、光硬化性接着剤1を硬化させるためのレーザの出力条件、照射時間などは適宜変更可能である。また、レーザ光20の照射による硬化の困難性という観点から、光硬化性接着剤1の塗布厚みは、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
【0063】
また、光吸収成分12は、本例のようにカーボンブラックからなることが好ましい。この場合には、比較的短時間のレーザ光20の照射による光硬化性接着剤1の硬化が可能になる。光硬化性接着剤の硬化時間は30秒以下であることが好ましく、本例の試料X1〜X4、及び試料X8〜X10の光硬化性接着剤は、例えば10秒以下という短時間での硬化が可能である。
【0064】
(実施例2〜実施例5)
次に、光硬化性接着剤の使用例のバリエーションを示す。後述の
図3〜
図7に示すごとく、光硬化性接着剤1(実施例1の試料X1〜X4、試料X8〜試料X10)は、ねじ又ははんだ代替品、或いは封止材等として用いることができる。なお、以下の実施例2〜5において、同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0065】
(実施例2)
図3に示すごとく、光硬化性接着剤1をネジの代替品として用いる例について説明する。同図に示すごとく、本例の被着物3は、例えばケース3aとその蓋3bとからなる。同図においては図示を省略するが、ケース3aは箱状であり、内部に他部品を収容可能な空間を有している。ケース3aと蓋3bには、連通穴32が形成されており、この連通穴32内に、光硬化性接着剤1が注入され、実施例1と同様のレーザ光の照射により硬化される。従来、このようなケース3aと蓋3bとの接合には、ネジなどが用いられていたが、本例のように、光硬化性接着剤1を用いることもできる。これは、実施例1に示すように、光硬化性接着剤1(例えば試料X1〜X4、試料X8〜試料X10)が、塗布厚みを大きくしても、レーザ光の直接照射により、炭化等をほとんど生じることなく十分に硬化が可能であるためである。以下の実施例3〜5についても、同様に理由により各用途に適用が可能である。
【0066】
(実施例3)
図4に示すごとく、光硬化性接着剤1(例えば試料X1〜X4、試料X8〜試料X10)を注型材として用いることもできる。具体的には、本例の被着物3は、ハウジング3cとハウジング3c内に配置される部品3dとからなる。そして、ハウジング3cと部品3dとの間の空間33に光硬化性接着剤1が注入され、実施例1と同様のレーザ光の照射により硬化される。
【0067】
(実施例4)
図5及び
図6に示すごとく、光硬化性接着剤1(例えば試料X1〜X4、試料X8〜試料X10)をはんだの代替品として用いることもできる。
図5及び
図6に示すごとく、本例の被着物3は、回路基板3eと、この回路基板3e上に搭載された電子部品3fとからなる。
図5に示すごとく、この電子部品3fの周囲(例えば四隅)に光硬化性接着剤1が塗布され、実施例1と同様のレーザ光の照射により硬化される。また、
図6に示すごとく、電子部品3fと回路基板3eとを電気的に繋ぐリード線34がある場合には、光硬化性接着剤1の硬化により、この電子部品3fと回路基板3eとを接着すると共に、リード線34を封止することができる。
【0068】
(実施例5)
図7に示すごとく、光硬化性接着剤1(例えば試料X1〜X4、試料X8〜試料X10)を封止材として用いることもできる。同図に示すごとく、本例の被着物3は、コイル状に巻いたリード線3gである。このコイル状のリード線3gを光硬化性接着剤1により被覆し、実施例1と同様のレーザ光の照射により光硬化性接着剤1を硬化させる。これにより、コイル状のリード線3gを光硬化性接着剤1により封止することができる。