特許第6274926号(P6274926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274926
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180129BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-53195(P2014-53195)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-177089(P2015-177089A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 研二
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−019219(JP,A)
【文献】 特開2001−308037(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0209443(US,A1)
【文献】 特開2009−032726(JP,A)
【文献】 特開平07−211670(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0269980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削予定位置に少なくとも金属を含む被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、
切削ブレードが被加工物に切り込む加工点に切削液を供給しつつ被加工物の切削予定位置を該切削ブレードで切削する切削ステップを備え、
該切削液は有機酸と酸化剤と防食剤とを含み、
該切削液中に含まれる有機酸によって金属が改質され延性が抑えられることを特徴とする切削方法。
【請求項2】
該切削ブレードには該切削ブレードの径方向に超音波振動が付与されつつ該切削ステップが実施される請求項1記載の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QFN基板やTEGが分割予定ラインに形成されたウェーハ等を切削するのに適した切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコン等の電気機器はより軽量化、小型化が要求されており、この小型化に適したデバイスとして半導体チップをパッケージングしてデバイスを形成するチップサイズパッケージ(CSP)と称する技術が開発され実用に供されている。
【0003】
CSPは、例えばQFN(Quad Flat Non−Lead Package)基板を個々のデバイスに分割することにより形成される。QFN基板は、所定の間隔で配設された複数の半導体チップと、各半導体チップを区画するように格子状に形成された電極枠と、電極枠から内側に魚の骨のように配設され各半導体チップの表面に形成されたボンディングパッドに接続された電極端子と、各半導体チップと電極枠とを包み込むようにモールディングされた樹脂層とから構成される。
【0004】
QFN基板を個々のCSPに分割するには、回転可能な切削ブレードを備えた切削装置によってQFN基板の電極枠を切断し、魚の骨のような電極端子を個々のデバイス毎に分離してCSPを形成する(例えば、特開2004−259936号公報参照)。
【0005】
一方、半導体ウェーハの分割予定ライン上には、半導体デバイスの電気特性を評価するためのTEG(Test Element Group)と呼ばれる例えば銅からなる特性評価用金属素子が複数形成される。分割予定ライン上に特性評価用金属素子を複数形成することで、半導体ウェーハを分割する際にTEGを切削除去することができる。
【0006】
QFN基板やTEGが分割予定ライン上に形成された半導体ウェーハ等、延性材である金属を切削予定位置に含む被加工物を切削ブレードで切削すると金属部分にはバリが発生する。発生したバリによって端子間が短絡したり、被加工物のハンドリング中にバリがボンディングパット上に落下する等してボンディング不良を発生させたりする等の問題が生じている。
【0007】
そこで、例えば、特開2001−77055号公報に開示されるようなバリ対策用往復切削方法、あるいは特開2007−125667号公報に開示されるようなバリ取り用ノズルを設けて、発生したバリを除去する様々な方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−259936号公報
【特許文献2】特開2001−77055号公報
【特許文献3】特開2007−125667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、切削加工で発生した金属のバリを除去するために従来様々な方法が提案されているが、従来の方法では発生した金属のバリを完全に除去するのは非常に難しいという問題がある。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも切削予定位置に延性材である金属を含む被加工物を切削ブレードで切削した際に、バリの発生を抑制可能な切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、切削予定位置に少なくとも金属を含む被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、切削ブレードが被加工物に切り込む加工点に切削液を供給しつつ被加工物の切削予定位置を該切削ブレードで切削する切削ステップを備え、該切削液は有機酸と酸化剤と防食剤とを含み、該切削液中に含まれる有機酸によって金属が改質され延性が抑えられることを特徴とする切削方法が提供される。
【0012】
好ましくは、切削ブレードには切削ブレードの径方向に超音波振動が付与されつつ切削ステップが実施される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切削方法では、加工点に対して有機酸と酸化剤とを含む切削液を供給しつつ切削を遂行する。切削液に含まれる有機酸によって金属が改質されて延性が抑えられ、その結果バリの発生が抑制される上、切削液が酸化剤を含むことで切削液で金属表面に形成される膜質が変化し、金属は延性を失って除去され易くなり、加工性が促進される。
【0014】
更に、切削液が防食剤を含むことで金属の腐食(溶質)が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】切削装置の一例を示す一部破断斜視図である。
図2】切削ステップを説明する模式的斜視図である。
図3】超音波振動を付与可能な切削ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の切削方法を実施するのに適した切削装置2の一部破断斜視図が示されている。切削装置2の吸引テーブル4には、図示しない吸引源に連通する吸引部6が形成されている。吸引テーブル4はX軸方向に往復動可能であるとともに回転可能に配設されている。
【0017】
被加工物であるパッケージ基板の一種であるQFN基板10は固定治具(保持治具)8上に載置され、QFN基板10が搭載された固定治具8は切削装置2の吸引テーブル4上に載置される。
【0018】
QFN基板10が載置された固定治具8を吸引テーブル4上に載置し、吸引部6から吸引力を作用させると、固定治具8の図示しない吸引孔にそれぞれ吸引力が作用し、QFN基板10が吸引保持される。
【0019】
切削装置2には、スピンドル14の先端部に切削ブレード16が装着されて構成される切削ユニット12が配設されている。更に、切削ユニット12と一体的にY軸方向及びZ軸方向に移動可能なようにQFN基板10の切削すべき切削予定ラインを検出するアライメント手段18が配設されている。
【0020】
固定治具8を介して吸引テーブル4上に吸引保持されたQFN基板10は、+X軸方向に移動することによりアライメントユニット18の直下に位置付けられ、アライメントユニット18を構成する撮像ユニット20によって表面が撮像されて切削すべき切削予定ラインを検出するアライメントが実施される。
【0021】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態に係る切削方法について説明する。被加工物であるQFN基板10は、矩形状の金属フレーム24を有しており、金属フレーム24の外周余剰領域25及び非デバイス領域25aによって囲繞された領域には、図示の例では3つのデバイス領域26a,26b,26cが存在する。
【0022】
各デバイス領域26a,26b,26cにおいては、互いに直交するように縦横に設けられた第1及び第2切削予定ライン27a,27bによって区画された複数のデバイス形成部28が画成され、個々のデバイス形成部28には複数の電極(図示せず)が形成されている。
【0023】
各電極同士は金属フレーム24にモールドされた樹脂により絶縁されている。第1切削予定ライン27a及び第2切削予定ライン27bを切削することにより、この両側に各デバイスの電極が現れる。
【0024】
図2において、12は切削装置の切削ユニットであり、図示しないモータにより回転駆動されるスピンドル14の先端部に切削ブレード16が装着されて構成されている。切削ブレード16に隣接して、切削ブレード16が被加工物に切り込む加工点に切削液を供給する切削液供給ノズル30が配設されている。
【0025】
本実施形態の切削方法では、吸引テーブル4で固定治具8を介してQFN基板10を吸引保持し、切削ブレード16が被加工物であるQFN基板10に切り込む加工点に切削液供給ノズル30から切削液31を供給しつつ、吸引テーブル4を+X方向に加工送りして、切削ブレード16でQFN基板10の第1切削予定ライン27aを切削する。切削液供給ノズル30から供給される切削液31は少なくとも有機酸と酸化剤とを含んでいる。好ましくは、切削液31は更に防食剤を含む。
【0026】
切削ユニット12をY軸方向に割り出し送りしながら、切削液供給ノズル30から切削液31を供給しつつ切削ブレード16で第1切削予定ライン27aを次々と切削する。次いで、吸引テーブル4を90°回転してから、切削液供給ノズル30から切削液31を供給しつつ切削ブレード16で第2切削予定ライン27bを次々と切削してQFN基板10をCSPに分割する。
【0027】
本実施形態に係る切削方法では、少なくとも有機酸と酸化剤とを含む切削液31を切削ブレード16がQFN基板10に切り込む加工点に供給しながら切削を遂行する。切削液31中に含まれる有機酸により、QFN基板10に含まれるか金属を改質して延性を抑えながらQFN基板10を切削できる。そのため、この切削によって金属からバリ(突起物)が発生することはない。また、酸化剤を用いることで、金属の表面を酸化して金属の延性を下げ、金属表面の加工性を向上させることができる。
【0028】
有機酸としては、例えば、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基と少なくとも1つのアミノ基とを有する化合物を用いることができる。この場合、アミノ基のうち少なくとも1つは、2級又は3級のアミノ基であると好ましい。また、有機酸として用いる化合物は、置換基を有していてもよい。
【0029】
有機酸として用いることのできるアミノ酸としては、グリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシルグリシン、ヒドロキシエチルグリシン、N−メチルグリシン、β−アラニン、L−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−アロイソロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロキシン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−カナバニン、L−シトルリン、L−アルギニン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、エルゴチオネイン、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等が挙げられる。中でも、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−ヒスチジン、L−リシン、ジヒドロキシエチルグリシンが好ましい。
【0030】
また、有機酸として用いることのできるアミノポリ酸としては、イミノジ酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンスルホン酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、β−アラニンジ酢酸、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸等が挙げられる。
【0031】
更に、有機酸として用いることのできるカルボン酸としては、ギ酸、グリコール酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉薬酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸、ピメリン酸、メルカプト酢酸、グリオキシル酸、クロロ酢酸、ピルビン酸、アセト酢酸、グルタル酸等の飽和カルボン酸や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸、安息香酸類、トルイル酸、フタル酸類、ナフトエ酸類、ピロメット酸、ナフタル酸等の環状不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0032】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、セリウム酸塩、バナジン酸塩、オゾン水および銀(II)塩、鉄(III)塩や、その有機錯塩等を用いることができる。
【0033】
また、切削液31には、防食剤が混合されても良い。防食剤を混合することで、QFN基板10に含まれる金属の腐食(溶出)を防止できる。防食剤としては、例えば、分子内に3つ以上の窒素原子を有し、且つ、縮環構造を有する複素芳香環化合物、又は、分子内に4つ以上の窒素原子を有する複素芳香環化合物を用いることが好ましい。更に、芳香環化合物は、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基を含むことが好ましい。具体的には、テトラゾール誘導体、1,2,3−トリアゾール誘導体、及び1,2,4−トリアゾール誘導体であることが好ましい。
【0034】
防食剤として用いることのできるテトラゾール誘導体としては、テトラゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、テトラゾールの5位に、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、又は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基が導入されたものが挙げられる。
【0035】
また、防食剤として用いることのできる1,2,3−トリアゾール誘導体としては、1,2,3−トリアゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、1,2,3−トリアゾールの4位及び/又は5位に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、或いは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基又はアリール基が導入されたものが挙げられる。
【0036】
また、防食剤として用いることのできる1,2,4−トリアゾール誘導体としては、1,2,4−トリアゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、1,2,4−トリアゾールの2位及び/又は5位に、スルホ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、或いは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基又はアリール基が導入されたものが挙げられる。
【0037】
上述した実施形態では、本発明の切削方法をQFN基板10に適用した例について説明したが、被加工物はこれに限定されるものではなく、分割予定ライン上にTEG(Test Element Group)が形成されたウェーハ、あるいは金属板のように金属のみからなる被加工物にも本発明の切削方法は適用可能である。
【0038】
本発明の切削方法を実施するに当たり、被加工物の種類によっては、切削液供給ノズル30から切削液31を供給するとともに、切削ブレード16に切削ブレード16の径方向に超音波振動与えながら切削ステップを実施するのが好ましい。
【0039】
切削ブレードに超音波振動を付与可能な切削ユニットの断面図が図3に示されている。切削ユニット12Aのスピンドルハウジング32はボア34を有しており、このボア34中にスピンドル36が回転可能に収容されている。
【0040】
スピンドル36には切削ブレード44に超音波振動を付与する超音波振動子48が配設されている。超音波振動子48は、スピンドル36の軸方向に分極された環状の圧電素子50と、該圧電素子50の両側分極面に装着された環状の電極板52,54とから構成される。
【0041】
圧電素子50は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、リチウムタンタレート等の圧電セラミックスから構成される。このように構成された超音波振動子48は、環状電極板52,54に後述する電力供給手段によって所定周波数の交流電力が印加されると、スピンドル36に超音波振動を発生させる。尚、超音波振動子48は、スピンドル36の軸方向に複数個配設するようにしてもよい。
【0042】
切削ユニット12Aは、スピンドル36を回転駆動する電動モータ56を備えている。電動モータ56は例えば永久磁石式モータから構成される。電動モータ56は、スピンドル36の中間部に形成されたモータ装着部58に装着された永久磁石からなるロータ60と、ロータ60の外周側においてスピンドルハウジング32に配設されたステーターコイル62とから構成される。
【0043】
このように構成された電動モータ56は、ステーターコイル62に後述する電力供給手段によって交流電力を印加することによりロータ60が回転し、これによりロータ60が装着されたスピンドル36が回転される。
【0044】
切削ユニット12Aは更に、超音波振動子48に交流電力を印加するとともに電動モータ56に交流電力を印加する電力供給手段64を備えている。電力供給手段64は、スピンドル36の一端(右端)に配設されたロータリートランス66を含んでいる。
【0045】
ロータリートランス66は、スピンドル36の右端に配設された受電手段68と、受電手段68と対向して配設された給電手段70を具備している。受電手段68は、スピンドル36に装着されたロータリーコア72と、ロータリーコア72に巻回された受電コイル74とから構成される。
【0046】
このように構成された受電手段68の受電コイル74の一端には導電線を介して圧電素子50の電極板52が接続され、受電コイル74の他端には導電線を介して圧電素子50の電極板54が接続されている。
【0047】
給電手段70は、受電手段68の外周側に配設されたステーターコア76と、ステーターコア76に配設された給電コイル78とから構成される。このように構成された給電手段70の給電コイル78には、電気配線80を介して交流電力が供給される。
【0048】
電力供給手段64は、交流電源82と、交流電源82とロータリートランス66の給電コイル78との間に挿入された電圧調整手段84と、給電手段70に供給する交流電力の周波数を調整する周波数調整手段86と、電圧調整手段84及び周波数調整手段86を制御する制御手段88と、制御手段88に切削ブレード44に付与する超音波振動の振幅等を入力する入力手段90を具備している。
【0049】
交流電源82は、制御回路94及び電気配線92を介して電動モータ56のステーターコイル62に交流電力を供給する。周波数調整手段86としては、株式会社エヌエフ回路設計ブロックが提供するデジタルファンクションジェラレータ、商品名「DF−1905」を使用することができる。DF−1905によると、周波数を10Hz〜500kHzの範囲内で適宜調整することができる。
【0050】
以下、切削ユニット12Aの作用について説明する。電力供給手段64から電動モータ56のステーターコイル62に交流電力を供給する。その結果、電動モータ56が回転してスピンドル36が回転し、スピンドル36の先端部にねじ46で取り付けられた切削ブレード44が回転される。44aは切削ブレード44の切り刃である。
【0051】
一方、電力供給手段64は、制御手段88によって電圧供給手段84及び周波数調整手段86を制御し、交流電力を所定の電圧値に制御するとともに、交流電力の周波数を所定周波数に調整して、ロータリートランス66を構成する給電手段70の給電コイル78に所定周波数の交流電力を供給する。
【0052】
このように所定周波数の交流電力が給電コイル78に供給されると、回転する受電手段68の受電コイル74を介して超音波振動子48の電極板52と電極板54との間に所定周波数の交流電力が印加される。
【0053】
その結果、超音波振動子48は径方向に繰り返し変位して超音波振動する。この超音波振動は、スピンドル36を介して切削ブレード44に伝達され、切削ブレード44が径方向に超音波振動する。
【0054】
本実施形態の切削方法では、切削液供給ノズル30から切削液31を供給しつつ、高速回転する切削ブレード44にその径方向に超音波振動を与えながら被加工物を切削する。金属膜を有するサファイア、炭化ケイ素(SiC)、ガラス等の硬質脆性材料を切削ブレードで切削すると、切削面に欠けが生じるが、切削ブレードに超音波振動を付与しながらこのような被加工物を切削することにより、切削面に生じる欠けを抑制することができる。更に、切削液31を供給しながら切削することにより、バリの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0055】
4 吸引テーブル
8 固定治具(保持治具)
10 QFN基板
12,12A 切削ユニット
14,36 スピンドル
16,44 切削ブレード
26a,26b,26c デバイス領域
30 切削液供給ノズル
31 切削液
48 超音波振動子
50 圧電素子
52,54 電極板
64 電力供給手段
図1
図2
図3