(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275067
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ペリクル収納容器
(51)【国際特許分類】
G03F 1/66 20120101AFI20180129BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
G03F1/66
B65D85/38 R
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-33554(P2015-33554)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-156898(P2016-156898A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159433
【弁理士】
【氏名又は名称】沼澤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】関原 一敏
【審査官】
長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−034020(JP,A)
【文献】
特開2000−072949(JP,A)
【文献】
特開2007−012793(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104086943(CN,A)
【文献】
特開2001−100394(JP,A)
【文献】
特開2006−267179(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/147120(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/66
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの辺長が500mmを超えるペリクルを収納するためのペリクル収納容器であって、前記ペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部で嵌合して密閉する蓋体とで構成され、少なくとも該蓋体は真空成形または圧空成形された樹脂材料製であり、該樹脂材料は、難燃剤および樹脂材料の重量比で0.5%〜3%の黒色化材を含有し、不透明かつ黒色であることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項2】
前記難燃剤は、樹脂材料の重量比で5%〜25%含有することを特徴とする請求項1に記載のペリクル収納容器。
【請求項3】
前記難燃剤は、臭素系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペリクル収納容器。
【請求項4】
前記樹脂材料は、ABS樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のペリクル収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、ICパッケージ、プリント基板、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等を製造する際のゴミよけとして使用されるペリクルの収納容器であって、少なくとも一つの辺長が500mmを超える大型のペリクルに好適なペリクル収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSIなどの半導体或は液晶ディスプレイ等の製造においては、半導体ウエハあるいは液晶用ガラス板に紫外光を照射してパターンを作製するが、この時に用いるフォトマスクにゴミが付着していると、このゴミが紫外光を遮ったり、反射するために、転写したパターンの変形、短絡などが発生し、品質が損なわれるという問題がある。
【0003】
このため、これらの作業は通常クリーンルームで行われているが、それでもフォトマスクを常に清浄に保つことが難しい。そこで、フォトマスク表面にゴミよけとしてペリクルを貼り付けした後に露光を行っている。この場合、異物はフォトマスクの表面には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィー時に焦点をフォトマスクのパターン上に合わせておけば、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。
【0004】
このペリクルは、一般に、光を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロースあるいはフッ素樹脂などからなる透明なペリクル膜を、アルミニウム、ステンレス鋼、エンジニアリングプラスチックなどからなるペリクルフレームの上端面に接着して構成される。また、ペリクルフレームの下端には、フォトマスクに装着するためのポリブデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着層、及び粘着層の保護を目的とした離型層(セパレータ)が設けられる。
【0005】
一方、このようなペリクル、特に、辺長が500mmを超えるような大型のペリクルを収納するためのペリクル収納容器は、ペリクルを載置するペリクル収納容器本体とそれに周縁部で嵌合し密封する蓋体との部材から構成されている。そして、これら部材は、厚さ2〜8mm程度の樹脂板を真空成形または圧空成形することにより製作されているが、この製法は、大型のものも一体成形できるために、内部に発塵源が少ないことに加え、生産性が高く低コストで製造できるという利点がある。
【0006】
ペリクル収納容器本体は、付着した異物の視認性向上のために、黒色が良いとされており、また蓋体は、内部に収納したペリクルを視認できるように透明または有色半透明が良いとされている(特許文献1参照)。そして、このような観点から、殆どの場合、収納容器本体は、黒色のABS樹脂が、また蓋体は、透明あるいは半透明のABS樹脂またはPMMA樹脂が用いられている。
【0007】
このような樹脂は、可燃性であるため、辺長が500mmを超える大型のペリクルを収納するペリクル収納容器では、可燃物としての容積や重量もかなり大きなものとなる。例えば、800x920mmマスク用のペリクル収納容器では、その重量が10kg/個であり、1220x1400mmマスク用のペリクル収納容器では、その重量が25kg/個ほどにもなるため、これらペリクル収納容器を一箇所に大量に保管した場合は、その安全性が問題となる。
【0008】
そこで、この対策として、素材を難燃性の材料である、例えば金属や難燃性樹脂に変更することが考えられる。しかし、金属の場合は、蓋体にアルミニウム合金などの軽量材料を使用したとしても、人手による開閉には重過ぎるため、作業上多大な負担がかかるという問題がある。そのため、下側部分のペリクル収納容器本体にほぼ限定されることになる。 一方、難燃性の樹脂材料の場合は、その材料としてPAN、PVCなどが挙げられるが、これら材料では入手できる板材のサイズに制約が多く、また、加熱成形に不向きなグレードが多いために、使用し難いという問題がある。
【0009】
このような観点から、難燃性を確保するためには、大型のペリクル収納容器の素材として実績のあるPMMA、ABSといった材質に難燃剤を添加する方策が最も好都合であるとされている。そして、添加される難燃剤としては、臭素系化合物、リン系化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物などの他、シリコーン系化合物などが挙げられるが、中でも、PMMA、ABSの樹脂に臭素系化合物が良く使用されているのが実情である。
【0010】
しかしながら、ペリクル収納容器の素材として難燃剤を添加した樹脂を用いた場合、太陽光、特に紫外線が存在する環境中でペリクル収納容器を保管すると、紫外線により難燃剤が分解し、劣化して、収納容器内部に収納されたペリクルに汚染(曇り)が生じるうえ、原材料樹脂の劣化も促進され、ペリクル収納容器の外観が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−100394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、ペリクル収納容器の素材として難燃剤が添加された樹脂を用いても、紫外線による難燃剤および樹脂の劣化がなく、収納されたペリクルが長期間に渡って清浄に保たれるペリクル収納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも一つの辺長が500mmを超えるペリクルを収納するためのペリクル収納容器であって、ペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部で嵌合して密閉する蓋体とで構成され、少なくとも蓋体は真空成形または圧空成形された樹脂材料製であり、この樹脂材料は、難燃剤および
樹脂材料の重量比で0.5%〜3%の黒色化材を含有し、不透明かつ黒色であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、難燃剤は、樹脂材料の重量比で5%〜25%含有することが好ましい。そして、この難燃剤は、臭素系化合物であることが好ましく、樹脂材料は、ABS樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペリクル収納容器の素材中に添加された難燃剤が紫外線により劣化することを最小限に抑えることができるため、収納されたペリクルの清浄度を長期間に渡って保つことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明のペリクル収納容器の概要を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明のペリクル収納容器の概要を示す
図1のAA断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のペリクル収納容器の概要を示す
図1のBB断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のペリクル収納容器の蓋体を外した平面図である。
【
図5】
図5は、本発明のペリクル収納容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明のペリクル収納容器10は、少なくとも一つの辺長が500mmを超えるペリクルを収納するためのものであり、ペリクル収納容器本体11、蓋体12から構成されている。ペリクル収納容器本体11は、ペリクル20を載置するものであり、蓋体12は、ペリクル収納容器11に周縁部で嵌合し、密閉することでペリクル20を外部の塵埃から保護するものである。また、ペリクル収納容器本体11上に載置されたペリクル20は、フレーム側面に設けられた非貫通の孔(図示しない)に挿入したピン13と、そのピンを支持するピン支持手段14からなる固定手段によりペリクル収納容器本体11上に固定されている。
【0019】
ペリクル収納容器本体11および蓋体12は、厚さ2〜8mmの難燃剤を含有した樹脂板を真空成形または圧空成形して製作されると、品質、コストや難燃性の点から好適である。また、導電物質の添加や表面へのコーティングにより、帯電防止性能を付与することも異物付着低減の観点から好ましい。
【0020】
本発明のペリクル収納容器10では、少なくとも蓋体12は、その素材の樹脂中に難燃剤が添加されているとともに、不透明かつ黒色である。通常の蓋体は、透明または半透明の樹脂素材で構成されているが、蓋体12を不透明かつ黒色とすることで樹脂素材内部への紫外線の侵入を防止することができるからである。そのため、ペリクル収納容器10を構成する樹脂、特にその表面近傍の樹脂においては、含有されている難燃剤の劣化が防止されることになるから、難燃剤の劣化に起因したガス状物質の発生が抑制され、ペリクル収納容器内部や収納されたペリクルが汚染されることがない。
【0021】
本発明では、樹脂材料を不透明かつ黒色とするために、カーボンブラックなどの黒色化材を樹脂材料の重量比で0.5%〜3%含有することが好ましい。0.5%未満では黒色の度合いが薄くて不十分であり、また3%を超えて添加してもその効果に差が生じないからである。黒色化材としては、カーボンブラックの他に、二酸化チタン、四三酸化鉄などが挙げられる。
【0022】
ペリクル収納容器10に使用される素材の樹脂としては、様々なものが挙げられるが、特にABS樹脂が好ましい。何故なら、その剛性や成形性等のバランスが良いことに加え、紫外線の吸収が大きいために、逆に素材内部へ透過する紫外線がさらに少なくなり、含有する難燃剤の劣化も抑制されるからである。また、黒色とすることによって、ABS樹脂自体の劣化である黄変、退色といった外観上の劣化も防止されるから、さらに好ましい。
【0023】
一方、ペリクル収納容器に一般的に使用されているアクリル樹脂(PMMA)の場合は、難燃剤の添加によって難燃化することは可能であるが、樹脂自体の紫外線透過率が高いために、内部に含有した難燃剤の劣化が促進されやすいという不都合がある。また、樹脂素材自体を難燃性の樹脂材料とすれば、そもそも難燃剤を添加する必要はないが、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)の場合は、大判の材料の入手が困難であるほか、廃棄処理がしにくいという問題がある。さらに、ポリカーボネート樹脂(PC)の場合は、成形温度が極めて高く、大型品の真空成形または圧空成形による製造が困難であるという問題があり、これを採用することは容易ではない。
【0024】
樹脂に添加される難燃剤の種類については、有機系難燃剤として、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、デカブロモジフェニルエーテル(DBDE)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などの臭素系化合物やリン系化合物、塩素系化合物などが挙げられる。また、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの水和物、三酸化アンチモンなどのアンチモン系、ホウ素化合物などが挙げられる。ノンハロゲンの有機系としては、シアヌル酸メラミンの他、シリコーン系化合物なども開発されている。
【0025】
本発明で用いる難燃剤は、上記で列挙したものを単独で、または数種類を併用した形で樹脂材料の重量比で5%〜25%程度添加して用いることが好ましい。難燃剤の量が5%未満であると難燃性の効果が十分に発揮されず、また25%を超えると樹脂素材の物性への影響が大きすぎて好ましくないからである。
【0026】
また、近年では、難燃剤の中に環境上の問題から規制物質となっているものもあるため、その点も考慮して選択することが好ましい。さらに、目標とする難燃性の程度としては、ペリクル収納容器の保管場所における要求水準に沿って設定すれば良いが、少なくともUL94規格でV−1を達成することが好ましい。
【0027】
本発明では、上記のような様々な難燃剤を適用することができるが、特に臭素系化合物を含有することが好ましい。臭素系化合物は、難燃化効果が高く、また他の難燃剤と組み合わせた場合でもその効果が高いためである。特に、臭素系化合物と三酸化アンチモンとの組み合わせは、難燃化効果が高く好適である。
【0028】
また、臭素系化合物は、紫外線に対して劣化しやすいという欠点はあるが、樹脂材質を不透明かつ黒色とすることによって、劣化する領域を表面だけにとどめることができるため、臭素系化合物の劣化を実質的に防止することができる。好適な臭素系化合物の例としては、難燃性能および環境規制上の理由から、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、TBBAオリゴマー(エポキシ系、カーボネート系)、臭素化ポリスチレン(BPS)などが挙げられる。これらの含有量は、難燃性の確保と樹脂物性維持の観点から、5〜25%の範囲とすることが好ましい。
【0029】
本発明のペリクル収納容器本体11及び蓋体12には、必要に応じて、リブなどの補強構造を設けることができるし、金属または樹脂製の補強手段、取扱いのためのハンドルや、蓋体を固定するバックルなどを設けることも良い。
【0030】
また、ペリクル辺長が1500mmを超える極めて大型のペリクル収納容器に剛性が特に要求される場合や、より難燃性を向上させたい場合は、蓋体12だけを上記の樹脂で製作し、ペリクル収納容器本体11を金属で製作した構成が特に好ましい。もっとも、ペリクル収納容器本体11を金属で製作した場合は、全て樹脂で製作した場合と比べて重量の点で不利となるが、蓋体12のように人手により開閉するなどの取り扱いが不要であるため、実質的な支障はない。
【0031】
金属を用いる場合は、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽量材料のほか、鉄鋼、ステンレス鋼などの高剛性材料を使用することができる。その場合、成形加工は、薄板を曲げ加工、プレス成型、溶接などして造形するか、または鋳造を利用しても良い。その表面には、防錆、発塵防止のために塗装を施すことが好ましく、特に、帯電防止性能を付与することに加えて、付着異物の視認性向上のために、黒色とされていることが好ましい。
【0032】
本発明のペリクル収納容器10では、ペリクル収納容器本体11にペリクル20を固定するための固定手段として、公知の様々な方法が適用できる。
図4に示した実施形態では、ペリクル収納容器本体11上にピン支持手段14を設け、それに支持されたピン13をペリクルフレーム側面に設けた非貫通の孔(図示しない)に挿入することでペリクル20を固定しているが、この他の公知の方法であっても良い。
【0033】
また、
図4に示した実施形態では、ペリクルフレーム21の下面にマスク粘着層22が設けられ、その下にはマスク粘着層22を保護するセパレータ23が取り付けられているが、マスク粘着層22がペリクル収納容器本体11に接触しないように、ペリクルフレーム21を支持する手段等を別に設けて、セパレータを省略した構成とすることも良い。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0035】
実施例では、先ず、厚さ5mmのABS樹脂板を用いて、ペリクル収納容器本体11と蓋体12を真空成形にて製造した。このペリクル収納容器10の寸法は、外寸940x1060x高さ90mmである。
【0036】
この実施例で用いたABS樹脂板は、臭素系難燃剤(商品名;フレームカット、東ソー(株))20wt%と、三酸化アンチモン(商品名;PATOX、日本精鉱(株))2wt%と、カーボンブラック(商品名;サンブラック、旭カーボン(株))1wt%とを混入し、押し出し成形にて製造した不透明で黒色のものである。
【0037】
次に、このペリクル収納容器本体11と蓋体12には、真空成形後に、周囲をNCルーターにて切削加工して仕上げ処理を施した。また、このペリクル収納容器本体11上には、ピン支持手段14を外面からボルト固定(図示しない)にて取り付けた。
【0038】
一方、このペリクル収納容器10に収納するペリクル20を次の仕様で製作した。すなわち、ペリクルフレーム21は、A5052アルミニウム合金を機械切削にて加工したもので、外寸756x940mm、内寸740x928mm、高さ5.8mmとし、表面には黒色アルマイト処理を施した。また、各長辺中央付近には直径1.5mmの通気孔を4箇所(図示しない)、各辺の角部付近に直径2.5mmの非貫通の治具孔(図示しない)を設けた。
【0039】
次に、このペリクルフレーム21の下面には、マスク粘着層22としてシリコーン粘着剤(商品名;KR−3700、信越化学工業(株))を厚さ1.3mmで形成し、その表面には離型剤を塗布したPETフィルムからなるセパレータ23を取り付けた。また、ペリクルフレーム21側面の通気孔は、PTFE多孔質膜製のフィルタをアクリル粘着剤にて貼り付けた(図示しない)。さらに、ペリクルフレーム21の上面には、ペリクル膜接着層24としてシリコーン粘着剤(商品名;KR−3700、信越化学工業(株))を塗布し、その上にフッ素樹脂(商品名;サイトップ、旭硝子(株))からなる厚さ約4.5μmのペリクル膜25を張設した。
【0040】
このように製作したペリクル20を異物検査の上、ピン13とピン支持手段14にてペリクル収納容器本体11上に固定し、蓋体12で密閉した。その後に、嵌合部周囲をPVC製粘着テープにてシールし、厚さ0.1の帯電防止PE製梱包袋に収納した。なお、ペリクル20の収納に際し、ペリクル収納容器10をClass10のクリーンルーム内で界面活性剤と純水にて良く洗浄処理し、乾燥した。
【0041】
最後に、このようにペリクル20を収納したペリクル収納容器10を室温22〜28℃、湿度30〜55%の範囲に空調された室内に搬送して、1年間静置保管した。なお、このペリクル収納容器10を載置したところは、1年を通して、ガラス窓越しに太陽光が差し込む環境であった。
【0042】
そして、1年後にこのペリクル収納容器10に収納していたペリクル20をClass10のクリーンルーム内で取り出し、外観、異物検査を行ったところ、ペリクル20に付着異物や損傷は全く見られず、清浄なままの状態が保たれていた。また、ペリクル収納容器10自体にも目立った外観上の変化は見られなかった。
【0043】
<比較例1>
比較例1では、先ず、実施例と全く同様にしてペリクル収納容器を製造したが、ペリクル収納容器蓋体の材質が上記実施例のものと異なっている。すなわち、蓋体に用いた板材は、ABS樹脂を押し出し成形したものであり、その材質は、臭素系難燃剤(商品名;フレームカット、東ソー(株))20wt%と、三酸化アンチモン(商品名;PATOX、日本精鉱(株))2wt%とを含有したものであるが、黒色化するためのカーボンブラックを混入しておらず、外観はやや白みがかった透明となっている。
【0044】
次に、このペリクル収納容器をClass10のクリーンルーム内で界面活性剤と純水にて良く洗浄、乾燥した後、実施例と同じ仕様のペリクルを異物検査のうえ収納した。そして、実施例と全く同一の環境にて1年間静置保管した。
【0045】
そして、1年後にClass10のクリーンルームにて、このペリクル収納容器からペリクルを取り出し、外観、異物検査を行ったところ、収納したペリクルの膜面には、大きな異物の付着は見られなかったものの、φ0.5〜3μm程度の異物が多数付着していた。また、ところによっては、この付着異物の密集度が高く、曇りや汚れのように見える部分もあったので、これは通常使用が不可能なレベルであった。さらに、ペリクル収納容器の蓋体は、やや黄ばんだ白色不透明となっており、商品として使用できる外観ではなかった。
【0046】
<比較例2>
比較例2でも、実施例および比較例1と全く同様にしてペリクル収納容器を製造したが、ペリクル収納容器の蓋体の材質が上記実施例および比較例1のものと異なっている。すなわち、蓋体に用いた板材は、ABS樹脂を押し出し成形したものであり、その材質は、臭素系難燃剤に替えて無機系難燃剤の水酸化マグネシウムを35wt%添加したもので、黒色化するためのカーボンブラックを混入しておらず、外観は白色不透明なものとなっている。
【0047】
次に、このペリクル収納容器をClass10のクリーンルーム内で界面活性剤と純水にて良く洗浄、乾燥した後、実施例や比較例1と同じ仕様のペリクルを異物検査のうえ収納した。そして、実施例や比較例1と全く同一の環境にて1年間静置保管した。
【0048】
そして、1年後にClass10のクリーンルームにて、このペリクル収納容器からペリクルを取り出し、外観、異物検査を行ったところ、収納していたペリクルには、異物の付着は無く、使用可能な状態が保持されていたが、ペリクル収納容器の蓋体が白色不透明であったために、外面がところどころ黄変した状態となっており、商品として使用できる外観ではなかった。
【符号の説明】
【0049】
10 ペリクル収納容器
11 ペリクル収納容器本体
12 蓋体
13 ピン
14 ピン支持手段
20 ペリクル
21 ペリクルフレーム
22 マスク粘着層
23 セパレータ
24 ペリクル膜接着層
25 ペリクル膜