(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の芳香族複素環化合物は、一般式(1)で示される。一般式(1)で示される芳香族複素環化合物を、芳香族複素環化合物(1)という。
【0026】
一般式(1)において、Xは酸素原子又はN−Rを示すである。Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を示す。また、a、cは1〜4の整数、b、dは1〜2の整数である。ここで、1価の置換基は、水素以外の原子又は基を意味する。
【0027】
Rのうち、隣接するものは一体となって環を形成してもよい。Rが1価の置換基である場合、Rとしては、ハロゲン原子、水酸基、置換又は未置換の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜30の置換アミノ基、チオール基、炭素数1〜30の置換スルホニル基、シアノ基、置換又は未置換の炭素数6〜48の芳香族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数2〜48の芳香族複素環基、置換又は未置換の炭素数8〜50芳香族炭化水素置換アルキニル基、置換又は未置換の炭素数4〜50の芳香族複素環置換アルキニル基、置換又は未置換の炭素数8〜50の芳香族炭化水素置換アルケニル基、置換又は未置換の炭素数4〜50の芳香族複素環置換アルケニル基、置換又は未置換の炭素数5〜30のアルキルシリルアルキニル基、置換又は未置換の炭素数3〜30のアルキルシリル基、置換又は未置換のケイ素数1〜30のシロキサン基、置換又は未置換のケイ素数1〜30のシロキサンアルキル基、及び置換又は未置換のケイ素数1〜30のポリシラン基が好ましい。
【0028】
Rがハロゲン原子である場合、好ましい具体例としては、フッ素、臭素、塩素、もしくはヨウ素が挙げられる。
【0029】
Rが未置換の脂肪族炭化水素基である場合、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基である。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等の不飽和炭化水素基が例示できる。
【0030】
Rが未置換のアルコキシ基である場合、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が例示できる。
【0031】
Rが置換アミノ基である場合、炭素数1〜30の置換アミノ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12の置換アミノ基である。置換アミノ基は2級であっても3級であっても構わない。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、オクチルアミノ基の如きアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、ピリジルフェニルアミノ基、ピペリジルナフチルアミノ基、ビピリジルアミノ基の如き芳香族アミノ基が例示できる。
【0032】
Rが置換スルホニル基である場合、炭素数1〜30の置換スルホニル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12の置換スルホニル基である。具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、エチルスルホニル基、オクチルスルホニル基の如きアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ピリジルスルホニル基、ピペリジルスルホニル基の如き芳香族スルホニル基が例示できる。
【0033】
Rが未置換の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である場合、炭素数6〜48の芳香族炭化水素基、又は炭素数2〜48の芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜18の芳香族複素環基である。
【0034】
未置換の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、オバレン、コラヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、テリレン、ナフタセノナフタセン、トルキセン、フラン、フロフラン、ジフロフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾフロベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピロロピロール、インドロインドール、ジピロロピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、テベニジン、キンドリン、キニンドリン、アクリンドリン、フタロペリン、トリフェノジチアジン、トリフェノジオキサジン、フェナントラジン、アントラジン、チアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、インドロカルバゾール、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基等が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、クリセン、フラン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、カルバゾール、インドロカルバゾール、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。縮合環である場合、2〜5個の環が縮合した縮合環であることが好ましい。なお、芳香環が連結される場合、複素環を含む場合は、芳香族複素環基に含める。芳香環は芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は両者を含む意味で使用される。芳香族化合物、芳香族基も同様である。
【0035】
ここで、芳香環が複数連結されて生じる基は、例えば、下記式で表わされる。
【化4】
(Ar
1〜Ar
6は、置換又は無置換の芳香環を示す)
【0036】
上記芳香環が複数連結されて生じる基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ターチオフェン、ビピリジン、ビピリミジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、フェニルフェナンスレン、ピリジルベンゼン、ピリジルフェナンスレン、ビチオフェン、ターチオフェン、ビジチエノチオフェン、フェニルインドロカルバゾール等から水素を除いて生じる基等が挙げられる。
【0037】
Rが未置換の芳香族炭化水素置換アルキニル基又はアルケニル基、若しくは未置換の芳香族複素環置換アルキニル基又はアルケニル基である場合、炭素数8〜50の芳香族炭化水素置換アルケニル基又はアルケニル基、若しくは炭素数6〜50の芳香族複素環置換アルキニル基又はアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数8〜26の芳香族炭化水素置換アルケニル基又はアルケニル基、若しくは炭素数6〜26の芳香族複素環置換アルキニル基又はアルケニル基である。これらアルキニル基、又はアルケニル基に置換した芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、前記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基と同様である。具体例としては、フェニルエテニル、ナフチルエテニル、フェニルエチニル、ナフチルエチニル、チエニルエテニル、フラニルエテニル、チエニルエチニル、フラニルエチニル等が例示できる。
【0038】
Rが未置換のアルキルシリルアルキニル基である場合、炭素数5〜30のアルキルシリルアルキニル基が好ましく、より好ましくは炭素数5〜20のアルキルシリルアルキニル基である。具体例としては、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基、トリイソブチルシリルエチニル基等が例示できる。
【0039】
Rが未置換のアルキルシリル基である場合、炭素数3〜30のアルキルシリル基が好ましく、より好ましくは炭素数3〜20のアルキルシリル基である。具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基等が例示できる。
【0040】
Rが未置換のシロキサン基である場合、ケイ素数1〜30のシロキサン基が好ましく、より好ましくはケイ素数1〜20のシロキサン基である。具体例としては、ジシロキサン、トリシロキサン、テトラシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、ノナメチルテトラシロキサン、ペンタフェニルジシロキサン、ヘプタフェニルトリシロキサン、ノナフェニルテトラシロキサン等が例示できる。
【0041】
Rが未置換のシロキシアルキル基である場合、ケイ素が数1〜30のシロキシアルキル基が好ましく、より好ましくはケイ素数1〜20のシロキシアルキル基である。シロキサンアルキル基は、前記シロキサン基が、前記直鎖飽和炭化水素基に置換した基として解される。具体例としては、ジシロキサンエチル、トリシロキサンエチル、テトラシロキサンエチル、ジシロキサンブチル、トリシロキサンブチル、テトラシロキサンブチル、ペンタメチルジシロキサンエチル、ヘプタメチルトリシロキサンエチル、ノナメチルテトラシロキサンエチル、ペンタメチルジシロキサンブチル、ヘプタメチルトリシロキサンブチル、ノナメチルテトラシロキサンブチル等が例示できる。
【0042】
Rが未置換のポリシラン基である場合、ケイ素数1〜30のポリシラン基が好ましく、より好ましくはケイ素数1〜20のポリシラン基である。具体例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ペンタメチルジシラン、ヘプタメチルトリシラン、ノナメチルテトラシラン、トリフェニルシラン、ペンタフェニルジシラン、ヘプタフェニルトリシラン、ノナフェニルテトラシラン等が例示できる。
【0043】
Rが脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、置換アミノ基、置換スルホニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、芳香族炭化水素置換アルキニル基、芳香族複素環置換アルキニル基、芳香族炭化水素置換アルケニル基、芳香族複素環置換アルケニル基、アルキルシリルアルキニル基、アルキルシリル基、シロキサン基、シロキサンアルキル基、又はポリシラン基である場合は更に置換基を有していても良く、該置換基の総数は各々1〜4、好ましくは1〜2である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20アルケニル基、炭素数2〜20アルキニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜20の芳香族アミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、水酸基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数2〜20の芳香族複素環基、炭素数8〜22の芳香族炭化水素置換アルキニル基、炭素数4〜22の芳香族複素環置換アルキニル基、炭素数8〜22の芳香族炭化水素置換アルケニル基、炭素数4〜22の芳香族複素環置換アルケニル基等が挙げられる。
【0044】
具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、i-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基、クロロペンチル基、クロロヘキシル基、クロロオクチル基、クロロドデシル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ブロモブチル基、ブロモペンチル基、ブロモヘキシル基、ブロモオクチル基、ブロモドデシル基、ヨードメチル基、ヨードエチル基、ヨードプロピル基、ヨードブチル基、ヨードペンチル基、ヨードヘキシル基、ヨードオクチル基、ヨードドデシル基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、エチルアミド基、ジエチルアミド基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基、トリイソプロピルシリルエチル基、トリイソブチルシリルエチル基、トリメチルシリルエテニル基、トリエチルシリルエテニル基、トリイソプロピルシリルエテニル基、トリイソブチルシリルエテニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基、トリイソブチルシリルエチニル基、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、クリセン、フラン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、カルバゾール、インドロカルバゾール、ビフェニル、ターフェニル、ターチオフェン、ビピリジン、ビピリミジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、フェニルフェナンスレン、ピリジルベンゼン、ピリジルフェナンスレン、ビチオフェン、ターチオフェン、ビジチエノチオフェン、フェニルインドロカルバゾール、フェニルエテニル、ナフチルエテニル、チエニルエテニル、フラニルエテニル、フェニルエチニル、ナフチルエチニル、チエニルエチニル、フラニルエチニル等が例示できる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0045】
一般式(1)で示される化合物、すなわち芳香族複素環化合物(1)としては、上記一般式(2)で示される芳香族複素環化合物が好ましく挙げられる。一般式(2)において、X及びRは一般式(1)のX及びRと同意である。
一般式(2)で示される芳香族複素環化合物を、芳香族複素環化合物(2)というが、芳香族複素環化合物(1)に含まれるので、芳香族複素環化合物(1)で代表することがある。
【0046】
また、本発明は下記一般式(3)で示される芳香族複素環化合物にも関係する。
【化5】
ここで、X、R、a、b、c及びdは、一般式(1)と同意である。
【0047】
一般式(3)で示される芳香族複素環化合物の好ましい態様としては、下記一般式(4)で示される芳香族複素環化合物がある。
【化6】
ここで、X及びRは一般式(3)と同意であり、Rの少なくとも1つは1価の置換基である。
【0048】
また、本発明下記一般式(5)で示される芳香族複素環化合物にも関係する。
【化7】
ここで、X、R、a、b、c及びdは、一般式(1)と同意である。
【0049】
一般式(5)で示される芳香族複素環化合物の好ましい態様としては、下記一般式(6)で示される芳香族複素環化合物がある。
【化8】
ここで、X及びRは一般式(5)と同意であり、Rの少なくとも1つは1価の基である。
【0050】
一般式(3)又は(5)で示される芳香族複素環化合物は、一般式(1)で示される化合物を脱水素化反応して製造するための中間体として有用である。
【0051】
一般式(4)又は(6)で示される芳香族複素環化合物は、一般式(3)又は(5)のより好ましい化合物であり、一般式(2)で示される化合物を脱水素化反応して製造するための中間体として有用である。
【0052】
一般式(3)〜(6)で示される芳香族複素環化合物を、それぞれ芳香族複素環化合物(3)〜(6)というが、芳香族複素環化合物(4)は芳香族複素環化合物(3)に含まれるので、芳香族複素環化合物(3)で代表することがあり、芳香族複素環化合物(6)は芳香族複素環化合物(5)に含まれるので、芳香族複素環化合物(5)で代表することがある。一般式(3)〜(6)において、一般式(1)と同一の記号は一般式(1)と同様の意味を有する。
【0053】
本発明の芳香族複素環化合物(3)のうち、XがN−Rで示される化合物は、例えば、下記反応式(A)に示すような方法で、合成することができる。
【化9】
【0054】
すなわち、無置換又は置換基を有するジベンゾチオフェンをアルデヒド化した化合物と、Wittig塩を作用させることで、ジベンゾチオフェンにシクロヘキサノンが縮合した化合物を合成し、更に、無置換又は置換基を有するフェニルヒドラジン塩酸塩と反応させることで、一般式(3)で示される芳香族複素環化合物を合成することができる。
【0055】
また、芳香族複素環化合物(3)のうち、XがOで示される化合物は、例えば、下記反応式(B)に示すような方法で、合成することができる。
【化10】
【0056】
また、本発明の芳香族複素環化合物(5)は、例えば下記反応式(C)に示すような方法で、合成することができる。
【化11】
【0057】
下記反応式(D)に示すように、一般式(3)又は(5)で示される芳香族複素環化合物(3)又は(5)の脱水素化反応により、一般式(1)で示される芳香族複素環化合物(1)を合成することができる。
【化12】
【0058】
また、上記一般式(7)で示される芳香族複素環化合物(芳香族複素環化合物(7)という。)と一般式(8)で示される化合物とを反応させて、芳香族複素環化合物(1)を、合成することができる。
一般式(7)において、Xは一般式(1)のXと同意である。X
1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、-B(OH)
2、スルホニル基、トリフルオロメタンスルホナート、ノナフルオロブタンスルホナート、フルオロスルホン酸エステル、トシラートから選ばれる反応性基又は一般式(1)のRを示し、少なくとも1つはR以外の反応性基を示す。e、gは1〜4の整数、f、hは1〜2の整数である。一般式(8)において、Rは一般式(1)のRの1価の基と同意であり、Yは一般式(7)のX
1と反応して、X
1-Yとして離脱しX
1をRに置換可能とする基である。
【0059】
例えば、下記反応式(E)又は(F)に示すような反応方法が使用できる。
【化13】
【0060】
すなわち、上記一般式(7)X
1のうち、少なくとも1つが、例えばハロゲン原子のような脱離官能基である場合、一般式(8)化合物(R−Y)と脱ハロゲン化水素反応のようなクロスカップリング反応等で、一般式(1)又は(2)で示される芳香族複素環化合物を合成することができる。クロスカップリング反応は、例えば、Tamao-Kumada-Corriu反応、Negishi反応、Kosugi-Migita-Stille反応、Suzuki-Miyaura反応、Hiyama反応、Sonogashira反応、Mizoroki-Heck反応等が例示でき、必要に応じて選択して反応を行うことにより、目的物を得ることができる。その際、それぞれの反応に応じて金属触媒や反応溶媒、塩基、反応温度、反応時間等が選択して反応が行われる。その後、必要に応じて抽出等の後処理操作、精製操作を行うことにより、所望の純度の目的物を得ることができる。
【0061】
一般式(1)で示される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0070】
本発明の有機半導体材料は、一般式(1)の芳香族複素環化合物(1)を含むものであるが、この化合物を50wt%以上含有していることが好ましく、より好ましくは90wt%以上含有していることが良い。芳香族複素環化合物(1)自体が有機半導体材料であることも好ましい。有機半導体材料中に芳香族複素環化合物(1)ともに含まれる成分としては、有機半導体材料としての性能を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、電荷輸送性化合物からなる有機半導体材料であることが良い。
【0071】
本発明の有機半導体膜は、上記有機半導体材料から形成される。有利には、上記の有機半導体材料を有機溶媒に溶解し、調製された溶液を塗布・乾燥する工程を経て、形成される。この有機半導体膜は、有機半導体デバイスにおける有機半導体層として有用である。
【0072】
続いて、本発明の有機半導体材料から形成されるからなる有機半導体材料を備える有機半導体デバイスを、有機電界効果トランジスタ素子(OTFT素子)を例として、
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0073】
図1、
図2、
図3及び
図4は、本発明のOTFT素子の実施形態を例示するものであり、いずれもOTFT素子の構造を示す模式的断面図である。
【0074】
図1に示すOTFT素子は、基板1の表面上にゲート電極2を備え、ゲート電極2上には絶縁膜層3が形成されており、絶縁膜層3上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、さらに有機半導体層4が形成されている。
【0075】
図2に示すOTFT素子は、基板1の表面上にゲート電極2を備え、ゲート電極2上には絶縁膜層3が形成され、その上に有機半導体層4が形成されており、有機半導体層4上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられている。
【0076】
図3に示すOTFT素子は、基板1の表面上にソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、有機半導体層4、絶縁膜層3を介して最表面にゲート電極2が形成されている。
【0077】
図4に示すOTFT素子おいて、本発明に係る有機半導体デバイスは、基板1の表面上には有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、絶縁膜層3を介して最表面にゲート電極2が形成されている。
【0078】
基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム枇素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン等の樹脂基板等が挙げられる。基板の厚さは、約10μm〜約2mmとすることができるが、特に可撓性のプラスチック基板ではたとえば約50〜約100μmがよく、剛直な基板、たとえばガラスプレートまたはシリコンウェーハなどでは約0.1〜 約2mmとすることができる。
【0079】
ゲート電極2は、金属薄膜、導電性ポリマ膜、導電性のインキまたはペーストから作った導電性膜などであってもよく、あるいは、たとえば重度にドープしたシリコンのように、基板そのものをゲート電極とすることができる。ゲート電極の材料の例としては、アルミニウム、銅、ステンレス、金、クロム、nドープまたはpドープされたシリコン、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマたとえば、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、カーボンブラック/グラファイトを含む導電性インキ/ペースト、または、ポリマバインダの中にコロイド状の銀を分散させたもの等を例示できる。
【0080】
ゲート電極2は、真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、導電性ポリマ溶液または導電性インキのスピンコート、インクジェット、スプレー、コーティング、キャスティング等を用いることにより作成できる。ゲート電極2の厚さは、たとえば、約10nm〜10μmの範囲が好ましい。
【0081】
絶縁膜層3は一般に、無機材料膜または有機ポリマ膜とすることができる。絶縁膜層3として好適な無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウムバリウム等が例示できる。絶縁膜層3として好適な有機化合物の例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)類、ポリ(アクリレート)類、エポキシ樹脂などがある。また、有機ポリマ中に無機材料を分散して、絶縁層膜として使用してもよい。絶縁膜層の厚さは、使用する絶縁材料の誘電率によって異なるが、例えば約10nm〜10μmである。
【0082】
前記絶縁膜層を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザー蒸着法等のドライ成膜法や、スピンコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷、インキジェット印刷、スタンプ法等のウエット製膜法が挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0083】
ソース電極5およびドレイン電極6は、後述する有機半導体層4に対して低抵抗なオーミック接触を与える材料から作ることができる。ソース電極5およびドレイン電極6として好ましい材料としては、ゲート電極2に好ましい材料として例示したものを用いることができ、例えば、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマおよび導電性インキなどがある。ソース電極5およびドレイン電極6の厚さは、典型的には、たとえば、約40nm〜 約10μm、より好ましくは厚さが約10nm〜1μmである。
【0084】
ソース電極5およびドレイン電極6を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げられる。製膜時または製膜後、必要に応じてパターニングを行うのが好ましい。パターニングの方法として、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法等が挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィー法等や、これら手法を複数組み合わせた手法を利用し、パターニングすることも可能である。
【0085】
有機半導体層4を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザー蒸着法等のドライ成膜法や、基板上に溶液や分散液を塗布した後に、溶媒や分散媒を除去することで薄膜を形成するウエット成膜法が挙げられるが、ウエット成膜法を用いることが好ましい。ウエット成膜法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷、インキジェット印刷、スタンプ法などが例示できる。例えばスピンコート法を用いる場合、本発明の有機半導体材料が溶解度を有する適切な溶媒に溶解させることにより、濃度が0.01wt%〜10wt%の溶液を調製した後、基板1に形成した絶縁膜層3上に有機半導体材料溶液を滴下し、次いで毎分500〜6000回転で5〜120秒処理することにより行われる。上記溶媒としては、有機半導体材料が有する各溶媒に対する溶解度と製膜後の膜質によって選択されるが、たとえば、水、メタノールに代表されるアルコール類、トルエンに代表される芳香族炭化水素類、ヘキサンやシクロヘキサン等に代表される脂肪族炭化水素類、ニトロメタンやニトロベンゼン等の有機ニトロ化合物、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル化合物、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系化合物、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等に代表される非プロトン性極性溶媒等から選ばれる溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0086】
上述の方法により、本発明の有機半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタ素子を作成することが可能である。得られた有機電界効果トランジスタ素子では、有機半導体層がチャネル領域を成しており、ゲート電極に印加される電圧でソース電極とドレイン電極の間に流れる電流が制御されることによってオン/オフ動作する。
【0087】
本発明の有機半導体材料をから得られる有機半導体デバイスの別の好適態様の一つとして、有機光起電力素子が挙げられる。具体的には、基板上に、正極、有機半導体層及び負極を有する有機光起電力素子であって、前記有機半導体層が上述した本発明の有機半導体材料を含む有機半導体デバイスである。
【0088】
本発明の有機光起電力素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機光起電力素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0089】
図5は本発明に用いられる一般的な有機光起電力素子の構造例を示す断面図であり、7は基板、8は正極、9は有機半導体層、10は負極を各々表わす。また、
図6は有機半導体層が積層されている場合の構造例を示す断面図であり、9−aはp型有機半導体層、9−bはn型有機半導体層である。
【0090】
基板は、特に限定されず、例えば、従来公知の構成とすることができる。機械的、熱的強度を有し、透明性を有するガラス基板や透明性樹脂フィルムを使用することが好ましい。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0091】
電極材料としては、一方の電極には仕事関数の大きな導電性素材、もう一方の電極には仕事関数の小さな導電性素材を使用することが好ましい。仕事関数の大きな導電性素材を用いた電極は正極となる。この仕事関数の大きな導電性素材としては金、白金、クロム、ニッケルなどの金属のほか、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)など)が好ましく用いられる。ここで、正極に用いられる導電性素材は、有機半導体層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する正孔輸送層を用いた場合においては、正極に用いられる導電性素材は正孔輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0092】
仕事関数の小さな導電性素材を用いた電極は負極となるが、この仕事関数の小さな導電性素材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、具体的にはリチウム、マグネシウム、カルシウムが使用される。また、錫や銀、アルミニウムも好ましく用いられる。さらに、上記の金属からなる合金や上記の金属の積層体からなる電極も好ましく用いられる。また、負極と電子輸送層の界面にフッ化リチウムやフッ化セシウムなどの金属フッ化物を導入することで、取り出し電流を向上させることも可能である。ここで、負極に用いられる導電性素材は、有機半導体層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する電子輸送層を用いた場合においては、負極に用いられる導電性素材は電子輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0093】
有機半導体層は芳香族複素環化合物(1)を含む。すなわち、一般式(1)で表される芳香族複素環化合物を含む本発明の有機半導体材料を用いて形成される。本発明の有機半導体材料はp型有機半導体材料(以下p型有機材料という)、n型有機半導体材料(以下n型有機材料という)又は両者に使用される。芳香族複素環化合物(1)を2種以上使用して、その1以上をp型有機材料成分とし、他の1以上をn型有機材料成分とすることができる。また、p型有機材料又はn型有機材料の一方は芳香族複素環化合物(1)を含まない化合物とすることもできる。
【0094】
有機半導体層は、式(1)で表される化合物を少なくとも1つ含む有機半導体材料を用いて形成される。式(1)で表される化合物は、p型有機材料またはn型有機材料として機能する。
【0095】
p型有機材料とn型有機材料これらの材料は混合されていることが好ましく、p型有機材料とn型有機材料が分子レベルで相溶しているか、相分離していることが好ましい。この相分離構造のドメインサイズは特に限定されるものではないが通常1nm以上50nm以下のサイズである。また、p型有機材料とn型有機材料が積層されている場合は、p型有機材料を有する層が正極側、n型有機材料を有する層が負極側であることが好ましい。有機半導体層は5nm〜500nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜300nmである。積層されている場合は、本発明のp型有機材料を有する層は上記厚さのうち1nm〜400nmの厚さを有していることが好ましく、より好ましくは15nm〜150nmである。
【0096】
p型有機材料は、芳香族複素環化合物(1)の内、p型半導体特性を示すものを単独で用いてもよいし、他のp型有機材料を含んでもよい。他のp型有機材料としては、例えばポリチオフェン系重合体、ベンゾチアジアゾール−チオフェン系誘導体、ベンゾチアジアゾール−チオフェン系共重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体などの共役系重合体や、H2フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)などのフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(TPD)、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(NPD)などのトリアリールアミン誘導体、4,4'−ジ(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)などのカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体(ターチオフェン、クウォーターチオフェン、セキシチオフェン、オクチチオフェンなど)などの低分子有機化合物が挙げられる。
【0097】
n型有機材料は、芳香族複素環化合物(1)の内、n型半導体特性を示すものを単独で用いてもよいし、他のn型有機材料を用いてもよい。他のn型有機材料としては、例えば1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(NTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンズイミダゾール(PTCBI)、N,N'−ジオクチル−3,4,9,10−ナフチルテトラカルボキシジイミド(PTCDI−C8H)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、2,5−ジ(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)などのオキサゾール誘導体、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物(C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94を始めとする無置換のものと、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([6,6]−PCBM)、[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([5,6]−PCBM)、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドヘキシルエステル([6,6]−PCBH)、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドドデシルエステル([6,6]−PCBD)、フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル(PC70BM)、フェニル C85 ブチリックアシッドメチルエステル(PC84BM)など)、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体にシアノ基を導入した誘導体(CN−PPV)などが挙げられる。
【0098】
本発明の有機光起電力素子では、正極と有機半導体層の間に正孔輸送層を設けてもよい。正孔輸送層を形成する材料としては、ポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などの導電性高分子や、フタロシアニン誘導体(H2Pc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物が好ましく用いられる。特に、ポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたものが好ましく用いられる。正孔輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜200nmである。
【0099】
また、本発明の有機光起電力素子は、有機半導体層と負極の間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を形成する材料として、特に限定されるものではないが、上述のn型有機材料(NTCDA、PTCDA、PTCDI−C8H、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物、CNT、CN−PPVなど)のようにn型半導体特性を示す有機材料が好ましく用いられる。電子輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜200nmである。
【0100】
また、本発明の有機光起電力素子は、1つ以上の中間電極を介して2層以上の有機半導体層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。例えば、基板/正極/第1の有機半導体層/中間電極/第2の有機半導体層/負極という積層構成を挙げることができる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。なお、正極と第1の有機半導体層の間、および、中間電極と第2の有機半導体層の間に上述の正孔輸送層を設けてもよく、第1の有機半導体層と中間電極の間、および、第2の有機半導体層と負極の間に上述の正孔輸送層を設けてもよい。
【0101】
このような積層構成の場合、有機半導体層の少なくとも1層が式(1)で表される本発明の化合物を含み、他の層には、短絡電流を低下させないために、本発明のp型有機材料とはバンドギャップの異なるp型有機材料を含むことが好ましい。このようなp型有機材料としては、例えば上述のポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体などの共役系重合体や、H2フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)などのフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(TPD)、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(NPD)などのトリアリールアミン誘導体、4,4'−ジ(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)などのカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体(ターチオフェン、クウォーターチオフェン、セキシチオフェン、オクチチオフェンなど)などの低分子有機化合物が挙げられる。
【0102】
また、ここで用いられる中間電極用の素材としては高い導電性を有するものが好ましく、例えば上述の金、白金、クロム、ニッケル、リチウム、マグネシウム、カルシウム、錫、銀、アルミニウムなどの金属や、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)など)、上記の金属からなる合金や上記の金属の積層体、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたもの、などが挙げられる。中間電極は光透過性を有することが好ましいが、光透過性が低い金属のような素材でも膜厚を薄くすることで充分な光透過性を確保できる場合が多い。
【0103】
有機半導体層の形成には、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法など何れの方法を用いてもよく、膜厚制御や配向制御など、得ようとする有機半導体層特性に応じて形成方法を選択すればよい。
【0104】
本発明の有機半導体デバイスは、本発明の有機半導体材料を用いたものである。有機半導体デバイスとしては、有機電界効果トランジスタ、又は有機光起電力素子であることが好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明につき、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。なお、化合物番号は上記化学式に付した番号に対応する。
【0106】
実施例1
【化37】
【0107】
窒素ガス気流下、1000mL の反応器に、ジベンチオフェン(1−A)(109 mmol,20.0 g)と脱水THF(100 mL)を加え、0℃にて30 分間撹拌した。これに、2N BuLi−ヘキサン溶液(60mL, 156 mmol)を滴下した。滴下終了後、混合物を6時間加熱還流した。室温まで冷却後、脱水DMF(20mL、160mmol)を滴下した後、一晩室温で撹拌した。反応混合物を6N塩酸(500mL)に注ぎ、酢酸で抽出し、有機層を水で洗浄して乾燥した。カラムクロマトグラフィーにて化合物(1−B)8.0gを得た。
【0108】
窒素ガス気流下、500mL の反応器に、3−ブロモプロピオン酸(1−C)(169 mmol, 25 g)とトリフェニルホスフィン(196 mmol, 51.42 g)、脱水アセトニトリル(70mL)を加えた。添加終了後、加熱還流下にて5 時間撹拌した。室温まで放冷後、反応液を濃縮した。姿勢した固体を酢酸エチルで洗浄し、wittig−salt(1−D) を65.2 g得た。
【0109】
窒素ガス気流下、500mL の反応器に、化合物(1−B)(37.7 mmol, 8.0 g)とwittig−salt(1−D)(3377 mmol, 1402 g)、脱水THF(75mL)、脱水DMSO(75mL)を加え、27℃(水バス)にて30 分間撹拌した。これに、60%水素化ナトリウム(112.1 mmol, 3.5 g)を少量ずつ注加し、6時間撹拌した。反応混合物を2N水酸化ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで洗浄し、更に酢酸エチル層を2N水酸化ナトリウム水溶液で抽出した。水層を合わせ、6N塩酸を加えてpH1に調整し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、溶媒を留去することによって、化合物(1−E)を9.6g得た。
【0110】
【化38】
【0111】
窒素ガス気流下、300mL の反応器に、化合物(1−E)(35 mmol, 9.4 g)と脱水エタノール(50 mL)、脱水酢酸エチル(50 mL)、10%Pd/C(0.5 g)を加え、10分間窒素を行った。水素バブリング装置を用いて、溶媒に水素ガスを室温で10時間吹き込んだ。更に10%Pd/C(0.5 g)を加え、9時間水素を吹き込んだ。反応終了後、触媒を濾別した後、溶媒を留去することによって、化合物(1−F)を8.8g得た。
【0112】
窒素ガス気流下、200mL の反応器に、化合物(1−F)(32.6 mmol, 8.8 g)と2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(65.1 mmol, 12.0 g)、脱水ジクロロメタン(50 mL)を加え、室温にて5 分間撹拌した。その後、脱水ピリジン(97.7 mmol, 7.7g)を、室温にてゆっくりと注加し、8時間撹拌した。引き続き、塩化アルミニウム(65.1 mmol, 8.7 g)を室温にてゆっくりと加え、4 時間撹拌した。反応終了後、1NHClに注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄、乾燥し、溶媒を留去した後に、カラムクロマトグラフィーにて化合物(1−G)3.3gを得た。
【0113】
窒素ガス気流下、50mL の反応器に、化合物(1−G)(6.0 mmol, 2.5 g)とフェニルヒドラジン塩酸塩(12 mmol, 1.7 g)の脱水エタノール溶液(5 mL)を加え、室温にて5 分間撹拌した。その後、氷酢酸(4.8 mmol, 0.3 g)を注加し、90℃にて4.5 時間撹拌した。反応終了後、生成した沈殿を濾取し、エタノール、水で洗浄後、更にジクロロメタンで洗浄することにより、化合物(1−H)2.7gを得た。得られた化合物(H)のNMRスペクトルデータを
図7に示す。
【0114】
窒素ガス雰囲気下、300mLのナスフラスコに、化合物(1−H)(10.3 mmol, 3.4 g)とクロラニル(14.4 mmol, 3.5グラム)、キシレン(150 mL)を加え、6時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した固体を濾別した。濾取した固体をトルエン、ジクロロメタンで洗浄することで、化合物(化合物A101)を3.0g得た。得られた化合物(A101)のNMRスペクトルデータを
図8に示す。
【0115】
実施例2
【化39】
【0116】
窒素ガス雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物(101)(7.7 mmol,2.5 g)、DMF(120 mL)、62% NaH(8.4 mmol, 0.34 g)、ヨードオクタン(8.4 mmol, 2.1 g)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液にメタノールを少量加えて泡が出ないことを確認した後、反応混合物を水に注いで沈殿を濾別し、メタノール、ヘキサンで洗浄し、目的化合物(201)を2.4 gを得た。得られた化合物(化合物A201)のNMRスペクトルデータを
図9に示す。
【0117】
実施例3
【化40】
【0118】
窒素ガス気流下、10Lの反応器に、ジベンゾフラン(2−A)(3448 mmol, 580 g)と脱水THF(2260 mL)を加え、0℃にて30 分間撹拌した。これに、1.6 M BuLi−ヘプタン溶液(3414 mmol, 2134 mL)を滴下して加えた。−78℃にて30 分間撹拌した後、DMF(5173 mmol, 401 mL)を滴下して加えた。これを室温まで昇温した後、2 時間撹拌を続けた。反応溶液を6 M 塩酸に注加し、pH1 に調整した。これを酢酸エチルで抽出後、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮して黄白色固体である化合物(2−B)の粗体690 gを得た。
【0119】
窒素ガス気流下、20Lの反応器に、化合物(2−B)(3411 mmol, 690 g)とwittig−salt(1−D)(3377 mmol, 1402 g)、脱水THF(6 L)、脱水DMSO(6 L)を加え、27℃(水バス)にて30 分間撹拌した。これに、水素化ナトリウム(7164 mmol, 286 g)を少量ずつ注加し、20 時間撹拌した。1M 塩酸水溶液に対して反応液を注加し、これをトルエンで抽出後、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮して黄色粘性液体である化合物(2−E)の粗体1545gを得た。
【0120】
窒素ガス気流下、1 L のナスフラスコに、化合物(2−E)(198 mmol, 50 g)と脱水エタノール(280 mL)、脱水酢酸エチル(280 mL)を加え、室温にて1 時間撹拌しながら、窒素ガスバブリングを行った。引き続き、10%Pd/C(31 g)を加え、室温にて1 時間撹拌しながら、水素ガスバブリングを行った。その後、水素ガス雰囲気下(1L 風船使用、1 気圧)、室温にて22 時間撹拌した。セライト濾過により不溶物を除去、酢酸エチルで洗浄した後、得られた濾液を濃縮し、黄色液体である化合物(2−F)の粗体を得た。
【0121】
【化41】
【0122】
窒素ガス気流下、1 Lのナスフラスコに、化合物(2−F)(161 mmol, 41 g)と2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(322 mmol, 59.4 g)、脱水ジクロロメタン(415 mL)を加え、室温にて5 分間撹拌した。その後、脱水ピリジン(484 mmol, 39.1 mL)を、室温にてゆっくりと注加し、20 時間撹拌した。引き続き、塩化アルミニウム(322 mmol, 43 g)を室温にてゆっくりと加え、4 時間撹拌した。反応液を0℃に冷却したアセトンに注加して反応を停止した。しばらく撹拌した後、懸濁溶液をセライト濾過した。これにメタノールを加え、析出した固体をセライト濾過で取り除いた。得られた濾液を濃縮し、トルエンで抽出、1M 塩酸水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮し、メタノールで洗浄したところ、化合物(2−G)を46.4 g得た。
【0123】
窒素ガス気流下、300mLのナスフラスコに、炭酸セシウム(85.8 mmol,28.0g)、Pd
2(dba)
3(0.20 mmol,0.18 g)、キサントホス(0.48 mmol,0.28 g)、1,4−ジオキサン200mLを加え、化合物(2−G)(78.0 mmol,18.4 g)と1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(39.0 mmol,11.0 g)を加えて80℃で24時間撹拌を行った。室温に冷却した後、酢酸エチルと水を加えて分液操作を行い、有機層を水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥を行った。濾過後濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって化合物(2−H)を11.9 g得た。
【0124】
窒素ガス気流下、100mLのナスフラスコに、化合物(2−H)(3.4 mmol,11.9 g)、五硫化ニリン(7.6 mmol,1.7 g)、脱水トルエン40mLを加えて、室温で10分撹拌後に、ヘキサメチルジシロキサン(51.7 mmol,8.4 g)を加えて90℃で21時間撹拌を行った。室温に冷却した後シリカゲルの層に反応混合物を通して濾液を濃縮し、濃縮物をそのまま次の反応に用いた。
【0125】
【化42】
窒素ガス気流下、200mLのナスフラスコに、炭酸セシウム(45.6 mmol,14.9g)、Pd
2(dba)
3(0.82 mmol,0.75 g)、2,2‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテルDPE(1.64 mmol,0.88 g)、化合物(2−I)(30.4 mmol,12.4 g)、脱水トルエン100mLを加えて、100℃で20時間撹拌を行った。室温に冷却した後セライト濾過を行い、濾液を濃縮してカラムクロマトグラフィーによって化合物(2−J)を7.3g得た。
【0126】
【化43】
【0127】
窒素ガス気流下、300mLのナスフラスコに、化合物(2−J)(22.4 mmol,7.3 g)、脱水DMF(150mL)を加えて撹拌し、氷浴で冷やしながらNBS(45.0 mmol,8.0 g)を加えた。2時間半後に氷浴をはずして室温下とし、一晩撹拌した。反応液にメタノールを加え、沈殿物を濾過した後、メタノールで洗浄を行い、化合物(2−K)9.2 gを得た。
【0128】
窒素ガス雰囲気下、300mLのナスフラスコに、化合物(2−K)(15.1 mmol, 7.3 g)とクロラニル(22.6 mmol, 5.6グラム)、キシレン(300 mL)を加え、6時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した固体を濾別した。濾取した固体をトルエン、ジクロロメタンで洗浄することで、化合物(2−L)を6.8 g得た。
【0129】
窒素ガス雰囲気下、300mLのナスフラスコに、化合物(2−L)(10.4 mmol, 5.0 g)と、脱水THF(80 mL)、ジイソプロピルアミン(80 mL)、1−オクチン(24 mmol, 2.7 g)、ヨウ化銅(4.0 mmol, 0.75 g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.1 mmol, 2.4 g)を加え、85℃で6時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶かして水で洗浄し、減圧濃縮、乾燥を行った。得られた固体をメタノールで洗浄することで、化合物(2−M)を4.7 g得た。
【0130】
窒素ガス気流下、100mLのナスフラスコに、化合物(2−M)(8.3 mmol, 4.5 g)、脱水トルエン(30 mL)を加え、室温にて1 時間撹拌しながら、窒素ガスバブリングを行った。引き続き、10%Pd/C(3.0 g)を加え、室温にて1 時間撹拌しながら、水素ガスバブリングを行った。その後、水素ガス雰囲気下(1L 風船使用、1 気圧)、室温にて22 時間撹拌した。セライト濾過により不溶物を除去し、得られた濾液を濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにより、化合物(B106)を得た。FDMS,m/z 548
【0131】
実施例4
本発明の有機半導体材料の特性を、
図2に示す構成の有機電界効果トランジスタを作成し、評価を行った。まず、約300nmの厚みの熱成長酸化ケイ素層を有するシリコンウェハ(nドープ)を、硫酸−過酸化水素水溶液で洗浄し、イソプロピルアルコールで煮沸した後、乾燥した。得られた熱成長酸化ケイ素層を有するシリコンウェハ(nドープ)上に、化合物(A201)のクロロベンゼン溶液(2Wt%)をスピンコート法により製膜した後80℃で熱処理を行う事により厚さ5 0 n m の化合物(A201)の薄膜を形成した。更に、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。ソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=2mm、チャネル長L = 50 μm の有機電界効果トランジスタを作製した。
【0132】
得られた有機電界効果トランジスタのソース電極及びドレイン電極間に、−100 V の電圧を印加し、ゲート電圧を−20〜−100 Vの範囲で変化させて、電圧−電流曲線を25 ℃の温度において求め、そのトランジスタ特性を評価した。電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流I
dを表わす下記式(I)を用いて算出した。
I
d=(W/2L)μC
i(V
g−V
t)
2 (I)
【0133】
上記式(I)において、Lはチャネル長であり、Wはチャネル幅である。また、C
iは絶縁層の単位面積当たりの容量であり、V
gはゲート電圧であり、V
tは閾値電圧である。算出した電界効果移動度は、8.0×10
−1cm
2/Vsであった。
【0134】
実施例5
化合物(A201)、(B106)と同様に、(A101)、(A216)、(A218)、(A221)、(A226)、(A501)、(A702)、(A805)を合成した。実施例4において、化合物(A201)のクロロベンゼン溶液(2wt%)の代わりに、(A101)、(A216)、(A218)、(A221)
、(A501)、(A702)、又は
(A802)のクロロベンゼン溶液(2wt%)を用いた他は同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタを作製し、得られた素子を実施例4と同様にトランジスタ特性を評価した。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例6
実施例4において、化合物(A201)のクロロベンゼン溶液(2wt%)の代わりに、(B101)、(B106)、(B147)、(B151)、(B166)、又は(B172)のクロロベンゼン溶液(2wt%)を用いた他は同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタを作製し、得られた素子を実施例4と同様にトランジスタ特性を評価した。結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
比較例1
実施例4において、化合物(A201)のクロロベンゼン溶液(2wt%)の代わりに、下記化合物(H1)のクロロベンゼン溶液(2wt%)を使用した他は同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタを作製した。得られた素子を実施例4と同様にトランジスタ特性を評価したところ、電界効果移動度は、1.1×10
−2cm
2/Vsであった。
【化44】
【0139】
上記実施例と比較例1の比較により、式(1)で示され芳香族複素環化合物を用いた有機電界効果トランジスタが高い特性を有することが明らかとなった。